PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ヴァレーリヤマンション

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●恐怖! 呪われたアパルトメント……!
 アパート『う゛ぁりゅーしゃ』。
 鉄帝国にいつからかあるという謎の、もぅマヂ謎のアパートに八人のイレギュラーズが挑んでいた。
「ココガその女のハウス、ネ……」
 仙狸厄狩 汰磨羈 (p3p002831)が妙にカタコトにしゃべりながらアパートの前に立った。
 鉄帝郊外にあるという廃れたアパルトメント。日本的に言うと『団地』と呼ぶとしっくりくるその建物は、所々ヒビが入ったりがらんとした馬置き場のトタン屋根がへこんでいたりやけに日当たりが悪く薄暗くじっとりしていたりと、下手するとオバケのひとりやふたり出てきそうな雰囲気である。
 ゼファー (p3p007625)は巻いた依頼書を胸の谷間からスッと取り出し、その紐をとく。
「別名『呪われたアパート』……ある日を境に、住まうものが一人また一人と減っていくというわ」
 同じく胸の谷間から依頼書をスッて出す汰磨羈。
「ある者は悪魔を見たと、ある者は炎にまかれ、ある者は光る虹に塗れ、ある者は奇怪な叫び声を聞いたと話しアパートから消えていく……」
 同じく胸の谷間にずぼって手を入れたマリア・レイシス (p3p006685)が、そのままおなかんとこから手が出てスーンとした顔になった。依頼書は足元に落ちている。
 それを拾いあげ、ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ (p3p001837)が開く。
「取り壊しの決まったこのアパート……しかし取り壊すにあたって呪いの真相を究明しなくてはなりませんわ。
 それにしても痛ましい事件の数々……一体何コフスカヤの仕業なのでしょう……」
 悲しげに目に涙を浮かべ、ポケットに目薬をしまいながら祈りを捧げるヴァレーリヤの頬には滴が伝っていた。
「ヴァリューシャ……」
 『ゎ、ぁ』て泣きそうな顔になりながら手を伸ばすマリア。
「アパートの持ち主は謎なんだ。持ち主不明のままずっと放置されているアパート……一体誰イシスが持っていたっていうんだい……!」
 マリアはクッて顔をそむけた。
「それも、この調査で分かる筈だ」
 依頼書をまるめ、胸の谷間にスッて淹れる汰磨羈。
「そうね。怪奇現象もモトが分かればただのモンスター退治と変わりませんし?」
 冗談めかした口調でゼファーも続け、胸の谷間に丸めた依頼書をスッて入れた。
「そそそそうですわ! けどままま万が一こここ子供のイタズラという線もあるので不審人物を見つけてもけけけ決して攻撃をくわえてはいけませんわよ!?」
 震える手で依頼書を丸め胸の谷間にスッ――トンておなかんとこから足元に落ちた。
「ゎ、ぁ……」
 ぷるぷる震えるヴァレーリヤ。依頼書を拾ってポケットにしまうマリア。
「何にせよ、困ってる人がいるなら是非はないよ! この呪いの原因を突き止めるんだ!」

GMコメント

 ごきげんよう。皆さんはバランスの良い依頼生活を送っていますか?
 肉や米ばかり食べずに野菜も食べろと言われるように、シリアスな依頼にばかり入っているとくっそふざけた依頼成分が不足し依頼失調症にかかってしまうかもしれません。なので今日は限界まで振り切って頭をどうにかしちゃいましょうね。普段からどうにかなってるひとはこのままアクセルを全開にしましょう。しっちょうしょう? なんのはなしでしたっけ?

●アパート『う゛ぁりゅーしゃ』
 まったくなにもいっさいこころあたりのない謎のアパルトメント(団地)に頻発する怪現象の謎を突き止めよう!

 皆さんはほんとになんでか全然わかんないけどアパルトメントの中で様々な怪事件にあいます(ヴァレーリヤのせいです)
 時には重要な秘密をみつけ後頭部をガッてやられることもあるかもしれません(ヴァレーリヤのせいです)
 時にはウォッカまみれの部屋が火事になるかもしれません(ヴァレーリヤのせいです)
 時には窓ガラスがパリーンして謎の人影に襲われるかもしれません(ヴァレーリヤのせいです)
 しかし皆さんはほんとなんでかわかんないけど原因が分からず恐怖に翻弄されることでしょう(ヴァレーリヤのせいで)

 そうです
 そろそろ皆さんもお気づきの頃かと思いますが、ここはヴァレーリヤさんが住んでいたせいでありとあらゆる被害にあった住民達が去ったことで呪い扱いされたアパルトメントなのです。
 今回ヴァレーリヤさんは必死で証拠隠滅をはかるしマリアさんは気付いたそばから隠蔽しにかかると思いますが、皆さんは『たたりじゃ!』『のろいじゃ!』て言いながら恐怖に翻弄されるプレイをお楽しみください。
 そして最後はアパルトメントはもろとも崩壊します(ヴァレーリヤのせいですしここネタバレです)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はVです。
 VはなんのVなんですか? せんせいおしえて?

  • ヴァレーリヤマンション完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年04月17日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
※参加確定済み※
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
※参加確定済み※
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
※参加確定済み※
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
※参加確定済み※
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
佐藤 美咲(p3p009818)
無職
フィノアーシェ・M・ミラージュ(p3p010036)
彷徨いの巫

リプレイ

●恐怖のヴァレーリヤマンション
 呪いのアパートはおどろおどろしい雰囲気に包まれ、かなりの部屋数があるにも関わらず誰も住んでいないのではと思えるほどの静けさに見た者たちは思わず身を震わせた。
 あるものは不敵に笑い、あるものは恐怖を露わにし、あるものは冷静に見つめ、あるものは今日の晩ご飯のことを考えていた。
 いつもうけるローレットの依頼と同じように挑み、そして解決して帰るものだと……誰もが思っていたのだ。
 このときまでは。

「これは……これは……まずいよ……」
 『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)は小声で呟きながら、顔を覆っていた両手をゆっくりと下ろした。
 はるか過去(どのくらい過去かはおぼえてない)の回想が蘇る。話せば長くなるがあれは……。
 『マリィ、私まんしょんにすみたいですわ!』
 『わかったよヴァリューシャ、買うね!』
 ごめん二行で済んだ。
 プレートにも思いっきり『う゛ぁりゅーしゃ』って書いてあるし。
(いやいやいやいや、気のせいかも知れないじゃないか。一緒に浴びるほどお酒飲んだ後だからきっと記憶が混濁してるんだ! そうだよねヴァリューシャ!)
 願いを込めて振り返る。
 『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)の両目がバタフライしていた。
 嘘という瞳の大海原を三頭身のヴァレーリヤがざっぱざっぱしていた。
「いいいいったいどどどどうしたことかしらまさか、私を疑っていますの?
 たまたま偶然この近辺で頻繁に目撃されているだけの、世界で最も聖女に近いと言われるこの私を!
 私はこの物件とは、何の関係もございませんわ!!!」
 自らの襟を掴んでヤクザ脱ぎ(一瞬で上半身の服をほぼ全部脱ぐ妙技。ヤクザの幹部になると身につく)で『無実!』て書かれたTシャツ姿になるヴァレーリヤ。
「そそそそうだよヴァリューシャは無関係! ヴァリューシャは無罪!」
 同じ動きで『潔白!』て書かれたTシャツ姿になるマリア。
 『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は「ほーん」ていいながら抱えてたポテチの袋からもう一枚ポテチをつまんでサクサクやった。
「マァー、これでも私は、怪異退治のエキスパート。大船に乗ったつもりでいてくれ」
 今日一番の知的なイケメンフェイス(つまりここから下がっていく)を見せた汰磨羈が、サッと手をかざして歩き始めた。
「まずはこの私から行こう。なあに……私一人で解決してしまっても構わんのだろう?」

 汰磨羈は数ある部屋のなかからただの直感で334号室の扉に手をかけると、汰磨羈式ピッキング(ドアノブにチョップを入れる。ドアノブごと無くなれば鍵は開いたも同然である)で中へと入る。
 が!
「こ、これは……!」
 汰磨羈を待っていたのは想像を絶する光景であった。
 びっくりするほど荒れまくった室内には大量の酒瓶と虹。そして脱ぎ散らかした祭服。あと転がってる聖書。
 テーブルに放置された『まりぃ』って書かれたちゅーるを手にし、汰磨羈はほぉーんと言ってチュールを開けてぺろぺろしはじめた。
「証拠は、どうやら揃ってしまったようだな……マリア!」
「ふふっ、気付いてしまったようだね……」
 ザァッと振り返る汰磨羈。
 玄関に立っていたのはマリア。
 マリアは後ろ手にドアへ鍵(あったっけ?)をかけるとゆっくりと身構える。
「勘の良い猫はきらいだよ……」
「猫は勘の良い生き物だ。どうやら、ローレット猫対決の決着をつける時がきたようだ」
「ねこじゃないんだよ! 君だってたぬきじゃないか!」
「たぬきジャナイ!」
 汰磨羈は装備したあのあれからなんかすごいあのやつをこうあれしたあれがう゛ぁーってなるあのあるじゃんいつものあのすごいやつそうあれを出しながらう゛ぁーって――。
「そぉい!」
 天井裏に隠れていたヴァレーリヤが逆さに飛び出し汰磨羈の首をガッ。更に両目に辛味オイルをう゛ぁう゛ぁーってやった。
「う゛ぁーーーー!?」
 両目を押さえた汰磨羈は高速回転しながら窓から飛んだ。

 仲間がマンションの一室から発射されて馬置き場(自転車置き場みたいなやつ)に頭から刺さったのを見たとき、『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)はこれマジヤベエと確信した。いままでマジヤベエなんて単語発したことないけど。
 ゆっくりと腕組みをし、シリアスな表情をつくる『彷徨いの巫』フィノアーシェ・M・ミラージュ(p3p010036)。
「これは……本気の装備で挑まねばならないようだ」
 フィノアーシェは低い声で言った。
 お塩が大量に入った袋と。
 ミトンの鍋掴みと。
 鈍い金色をした両手鍋と。
 あとハートっぽいエプロンを装着して。
「この完全装備でな!」
「え、お酒飲んでる?」
 マンション暮らしの独身男性が見る白昼夢みたいな格好してるフィノアーシェを、イグナートは二度見した。
「呪いにはあつあつのおでんを喰らわせれば良いと聞いた」
「ねえ酔ってる? 酔ってるの? コワイよ!」
 味方のナチュラルな狂気に怯えるイグナートをしりめに歩き出すフィノアーシェ。
 迷うことなく向かったのは、つい先ほど汰磨羈が発射された部屋であった。
「見ろ、ドアノブが外れている。呪いか……」
「すごい最近物理的にやられたように見えるけど」
「物理的な呪いか……」
 真顔で言うフィノアーシェを二度見してから、イグナートはそっと扉を開いてみた。
 そこに広がっていたのは……。
「「!?」」
 部屋の風景を端的に説明しよう。
 地面に真っ赤な液体で書いた魔方陣。
 壁一面に『HELP』の文字。
 天井中央からぶら下がる2m大の麻袋。
 地面に倒れてる牛。
 ラジカセで流れるホラー映画のテーマソング。
「あれ? なんだか聞いてたのとチガウな……」
 イグナートが小首をかしげていると、フィノアーシェがずかずかと部屋に上がり込んで目につくテーブルをせやぁって言いながら蹴り倒した。
「え、なに!? 酔ってるの!? お酒入ってる!?」
「ひるむな。これは幻影だ」
 フィノアーシェがテーブルの倒れたところを指さすと、牛からテーブルの脚だけがのびていた。
 まるで嘘がバレた人みたいにフッと消えた幻影。あとから現れたのは荒れ果てた部屋の様子であった。
「酒瓶がこんなに転がって……服も……それに壁や床も虹色に……一体誰に荒らされたんだ。酷い事件が起こったに違いないね!」
 イグナートがそう推理していると、フィノアーシェが塩の袋を部屋の隅にざばーってやっていた。
 二度見するイグナート。
 狂って奇行に走るひとは怖いが、ナチュラルに奇行にはしるひとはもっと怖いと実感で学んだ。
 そしてフィノアーシェは黙々とカセットコンロを部屋の真ん中に置き、鍋を火にかけ始めた。
 蓋を開くと大量のちくわが入っており、フィノアーシェはその周りをなんとも形容できない不気味なダンスを踊りながら回り始める。
 知り合いじゃなかったら秒で帰ってる光景である。
 が、それらに意味があったと知るのは……。
「はっ! わかったぞ、この犯人はヴァ――」
「ヴァ!?」
 瓶の口んとこに湿った布を詰めたなんかが回転しながら飛んできた。布には、火がついていた。
「「ヴァーーーーー!?」」

 仲間たちが入っていった部屋が爆発炎上し発射されてきたイグナートとフィノアーシェが馬車置き場の天井(トタン屋根)に突き刺さったのを見た『またしても何も知らない』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)はこの依頼チョベリバだと思った。チョベリバって単語を発したこと生まれてから一度も無いけど。
「この依頼……チョベリバだな」
 人生初チョベリバである。
 モカは前髪をふぁさあっっとかきあげると、豊満な胸を揺らしながら歩き始めた。
「どうやら、ファミリアー使いであるこの私の出番が来てしまったようだな」
 胸の谷間から顔を覗かせる二匹のネズミちゃん(清潔に洗浄済み)。指でネズミちゃんの頭を押し込んで隠すと、モカは無駄なキャットウォークでアパートへと歩き始める。
「おっと、一人で行くつもりかしら?」
 アパート入り口に背を預けて立っていた『雪風』ゼファー(p3p007625)が、長い脚をつっかけて行く手を塞ぐ『話は聞かせて貰ったぜ』のポーズで振り返った。
 すごい関係ないけどこのポーズすごい似合うね。
「こんな言葉を知ってるかしら? ……『好奇心は狸を殺す』」
「猫だが!?」
 後から声がかかるが、ゼファーはスルーし、シリアスフェイスでアパート内部を見る。
「もしかしたら私達はとんでもない怪異の世界に足を踏み入れたのかもしれないわ」
「かもしれないな」
 目を瞑って肩をすくめ、歩いて行くモカ。その横に並んで歩き始めるゼファー。
 その先に、『合理的じゃない』佐藤 美咲(p3p009818)がアパートの壁に背を預けて足をこう……めっちゃぷるぷるさせながらつま先を向かい側の壁にぎりぎりこすらせて『話は聞かせて貰ったぜ』のポーズをとっていた。
「ひ、ひとり……ぐああ足が!」
 足がつったらしく悶絶する美咲。
「無理しなくても……」
「若いコらには分からないんスよ! 十年という歳月を甘く見るんじゃないッスよ!」
 今日で一番のシリアスフェイスで顔をあげる美咲。今日イチをここで使っていいのか?
 気を取り直して立ち上がり、依頼書を胸の谷間にスッて入れると、なんか安堵した顔で振り返る。
 そして眼鏡を外してわざわざもっかいかけて、そしてちゃきっと中指でブリッジを押した。
「呪いや幽霊なんてのは、大抵酔っ払いの見間違いかプラズマで説明がつくものなんでスよ」
 キメ顔の美咲の腹部にそっと指を近づけるゼファーとモカ。
「キメ顔したのは謝りますからおなかはやめてください!」
 美咲が今日イチの顔を更新した。

「ここね」
 玄関どころか外までまる焦げになった334号室だったものを前に、ゼファーと美咲は腕組みをして並んでいた。
 ササッと左右を見回す美咲。
「あれ!? モカ氏は!? さっきまで一緒だったっスよね!?」
「トイレ行くって言ってそれ以降見てないわ」
「サボりやがったあいつ!!!!!!!!!!!!!!!!」
 美咲が今まで出したことない声質と口調で叫んだ。
「さ、入るわよ」
 ドアノブごとどっかいった扉を開き、中を覗き込む。
 それは凄惨な事故現場あるいは火力に極振りしたメシマズ嫁の夕餉であった。
 部屋のいたるところが炎で炙られたように焼け、その中央には全ての具材がくろくなったおでん鍋が置かれている。
「これって……」
「静岡名物の黒はんぺんってやつね」
「黒すぎません?」
 そこへ、二人の女が現れる。
「なんということ。これは呪いに違いないですわ」
 丁度モカひとりぶんが入りそうなゴミ袋を引きずったヴァレーリヤ。
「本当だね! これは呪い! ダークなやつ! オカルトだよ!」
 二匹のネズミ(清潔に洗浄済み)を両手に吊すマリア。
 同時に振り返ったゼファーと美咲の視線がゴミ袋に集まった。
「それは?」
 ゼファーの当たり前の問いかけに、ヴァレーリヤはシリアス顔で髪を耳へとかけるしぐさをする。
「中には、何も入っていませんでしたわ」
 びりっ。
 敗れるゴミ袋。
 どさっ。
 投げ出される腕。
「「…………」」
 流れる沈黙。そして血液的なもの。
 腕がゆっくりと動いて何かを地面に書いてこときれたが、そこへマリアが「う゛ぁあああん!」て言いながらヘッドスライディングした。
「確実に入ってるじゃないのそれもモカが!」
「ヤったんスか!? ヤったんスか!?」
 詰め寄る二人にヴァレーリヤとマリアが同時に両手をあげた。顔のパーツが二人ともおもいっきり中央に寄ってふるえている。
「言い逃れをしても無駄っスよ。ダイイングメッセージがこのとおり――」
 指さした美咲。
 地面に書かれていたのは
 『犯人は■ヤ■■ス■■』
「ヤス!!!!!!!!!!!!!」
「ゆるせないよヤス!」
「今すぐヤスを追いますわよ!」
 走り出そうとしたヴァレーリヤとマリアの襟首を同時にむんずっとつかむゼファー。二人はしゃかしゃか地面をつま先でひっかいた。
「どう考えてもマヤコフスカヤを消した後でしょうが」
 ビッと後ろでモカの手がサムズアップした。生きてるじゃん。
「ゼファーさん、離してあげてください。もう証拠は揃っていまス。いちから説明しましょう」
 眼鏡をくいってやると、美咲は探偵が関係者を集めて推理を披露するときのテーマを流し始めた。
「まず第一発けウヴォア!?」
 ヴァレーリヤフルスイング(手にした酒瓶の口部を両手でもって相手の脇腹に思い切り振り込む必殺技である)で窓から飛んでいく美咲。
 ゼファーが身構える。
「ちょ、待ちなさい暴力は――」
「暴力ではありませんわ! めり込むタイプの交渉術ですわ!」
「人類は対話を重んじる生き物なんだ。話し合いで互いを知っていこうよ!」
 『好感度』とラベルに書かれた酒瓶を手にジリジリにじり寄るマリアたち。
 ステゴロで人を殺せるゼファーでもこの二人相手では分が悪い。
 と、その時。
「そっちがその気なら交渉に応じるッスよぉ!」
 拡声器ごしの声がした。
 何事かと窓から顔を出してみる三人。
 顔つきが変わった美咲がトラックのハンドルを握り、全速力でアパートへと走っていた。
 トラックの荷台部分には『好感度』と書かれている。
「踏み込むペダルに誠意を込めて、骨まで届け好感度!」

 その日、近隣住民は空にあがる炎と黒い雲をみた。

●ここまで一息で読ませる暴挙
 完全に崩落しきったアパートの残骸。その中心で完全投降姿勢をとったヴァレーリヤとマリアがいた。
「こ、これは何かの陰謀でございますわ!」
「ヴァリューシャは悪くないんだ! 全てこのアパートの邪悪オーラのせいなんだ!」
「「ゆるして!!」」
 両手をばんざいして叫ぶ二人を、仲間達は取り囲んでいる。
 腕組みして右となりに視線をやるイグナート。
「どうする……?」
 同じく腕組みしたモカがそのまた隣に視線をやる。
「どうすると言われてもな……」
 視線を受けたフィノアーシェが一度空を見てから、そのまた右隣へ向いた。
「おでんは真っ黒だが」
 空っぽになった鍋を持ち上げ、美咲が首を振ってそのまた右隣へ向いた。
「そう言うと思って……こちらをご用意したっス」
「うぇーい!」
 汰磨羈がくそでかリアカーをひいて現れる。
 セットされているのは透明なバスタブ。ゼファーがよくやったわといってどんぐりなげると、『たぬきちがう!』て言いながら汰磨羈がはたきおとした。
 それをスルーしてゼファーがバスタブに温度計を差し込む。冗談じゃねー温度が表示された。
「おでんはないわ。けれど心配無い……あなたたちがおでんになるのよ!」
「「いーーーーーやーーーーーーー!」」
 首をぶんぶんふりながらもバスタブの縁へ連れて行かれるヴァレーリヤ。縁に両手両足をフル活用してつかまるヴァレーリヤの後ろから、汰磨羈が掌底をかました。
「う゛ぁりゅーーーーーしゃーーーーーーー!」

 後日談。
 解体を予定していたアパートが勝手にぶっ壊れてくれたことで手間が省けたらしく、後日瓦礫は払いのけられあらたなアパートの建設が始まった。
 もうあの謎のアパートから人間が発射されたり爆発したり炎上したり悲鳴が聞こえたりする呪いはなくなることだろう。
 そんなふうに話ながら、作業員のひとりがアパートにかけるであろうプレートを建設資材のまえに立てかけた。
 プレートにはこうある。

 ――『マリアマンション』

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 完!

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