シナリオ詳細
古代機動兵器にテンション爆上げ!
オープニング
●
砂漠地帯のラサにおいて、人の生活領域はオアシスの周囲のみがほとんどであり圧倒的に小さい。
その広大な国土はほとんどが砂に覆われていて、数々の遺跡が今なお砂に埋もれたままとなっている。
数々のトラップが仕掛けられたままとなっていることもあり、遺跡には埋もれた財宝などが誰にも見つかることなくそのままとなっている。
傭兵の地に蔓延る盗賊達とて、これらの遺跡の存在をただ眺めているだけではない。
自分達の知恵を振り絞り、挑む者達だっている。
もちろん、トラップの攻略難易度があまりに高く、屍の山となり果てる盗賊団も少なくはないのだが、少ないながらもその攻略に成功した者達だって存在する。
「はァ、はァ……」
激しく息づく色黒肌の盗賊団団長ドダイ。
この遺跡の攻略で団員を半数ほど失ってしまったが、彼はめげることなく遺跡のトラップに挑み続けた。
一念岩をも通すとは言ったもの。彼は遺跡の奥で眠っていたそれらに、大きく目を見張る。
「こいつは……」
ドダイら生き残った盗賊団が見たのは、巨大な人型機動兵器であった。
●
傭兵首都ネフェリスト。
今回の依頼を受け、ローレットイレギュラーズが集まっていたのだが……。
「今回は遺跡群調査って聞いたのだけれど……」
カイン・レジスト(p3p008357)は同じイレギュラーズのメンバーの傍にいた人々に驚く。
そこには、色白肌で白衣を着用した初老の男性達。ラサの地では相当浮いた存在である5名の科学者達だったのだ。
「おい、機動兵器はどこだ!」
「わしゃもう機動兵器に目がなくてのう」
血気盛んに叫ぶ科学者を宥めつつ、オリヴィア・ミラン(p3n000011)が話を始める。
「確かに遺跡群調査なんだが、どうやら盗賊団に先を越されてしまったらしい」
なんでも、その近辺を根城とするドダイ盗賊団なる集団が遺跡の一つを攻略し、その奥にある宝物庫にまで踏み入ったのだ。
そこに収められていたのは……なんと古代の機動兵器。ゴーレムを思わせる無骨な姿をしているが、自律した運用の他、乗り込んで操縦も可能らしい。
盗賊団はそれらを自分らのものとすべく、日々操縦技術を磨いているという。
その噂が瞬く間にネフェリストへ。さらに、傭兵となる者達やイレギュラーズを伝って練達にも届く。
「むほー、早く見たくてたまらんぞい」
いち早く巨大ロボットを開発する科学者達もそれを聞きつけ、いても立ってもいられず、このネフェリストにまで駆け付けたらしい。
この近辺は今なお盗賊も多い場所。むこうみずにも好奇心に突き動かされてやってきた彼らを放置すれば、遺跡へと突っ込んで盗賊らに色々と利用されかねないほど危なっかしい。
「悪いが、守ってやってくれないか」
余計なお荷物になりそうな科学者達だが、今回の古代機動兵器の調査が進めば、巨大ロボットの開発にも大いに活かせることだろう。
少しばかり手間のかかる依頼だが、イレギュラーズにとっても全く利益がないわけではなさそうだ。
「もしかしたら、この近辺にまた別の機動兵器が眠っているかもな」
盗賊達が別の遺跡を攻略し、新たな機動兵器を得てしまうと面倒なことになる。今のうちに彼らを抑えておきたいところだ。
その盗賊……ドダイ盗賊団を相手にするとなると、彼らの駆る機動兵器を相手にせねばならない。
無骨でゴーレムを思わせる機動兵器だそうだが、近距離だと杭、遠距離だと散弾を放つとのこと。いずれも大きさやタイプは異なるが、シリーズは共通しているようで、その攻撃手段は変わらないらしい。
「むふー、楽しみじゃのう!」
鼻息を荒くしている科学者は置いといて。
「少し面倒だが、科学者の重りをしながら盗賊掃討って話さ。引き受けてくれるかい?」
オリヴィアの話を受け、依頼の受注を決めたメンバーは科学者を引き連れ、現地へと向かうのことにした。
●
傭兵某所。
依頼を受けたイレギュラーズは科学者達が好き勝手に移動しないよう見張りながら、目的地である遺跡を目指す。
しばらくして、その遺跡へと到着すると、入口付近では砂埃を上げて動き回る機動兵器の姿が確認できた。
「やっぱ、この兵器は最高だなァ!」
団長らしきスキンヘッドで色黒な男が楽しそうに巨大な機動兵器を乗り回す。その周囲でも小型の機動兵器が4体、動き回っていた。
「団長、何かがこっちにやってきますぜ!」
どうやら、量産機にもスコープらしきものが搭載されているらしく、こちらの接近をすぐに察知されていたらしい。
「よぉし、それじゃこの兵器の実力を奴らに見せつけてやれ!」
「「おおっ!」」
テンション高く叫ぶ盗賊達。
「おおっ、格好は悪いが、動いとるのう!」
「ロマンあるな、いいぞいいぞ!」
こちらも科学者達が目を血走らせて叫ぶ。
彼らを抑えつつも、イレギュラーズは向かい来る機動兵器と盗賊達を相手とることになるのだった。
- 古代機動兵器にテンション爆上げ!完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年04月20日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
ラサ……傭兵へと至ったイレギュラーズ。
『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)は遺跡群調査と聞いていたのだが、思いもしない事態となっていて。
「……出土した古代の機動兵器相手、と言うのもまた乙な物かな?」
期待していた調査こそ満足にできそうにないが、それでもカインは遺跡からの出土品はまんざらでもないと感じていた。
今回の事態に胸躍らせるメンバーは多い。
「練達や鉄帝ならともかく、ラサでこんな機動兵器が見れるとはな!」
『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)は思わず声を大きくし、機動兵器との遭遇が待ちきれない様子。
「砂地で大型機動兵器とやりあうのか……ロマンがあるじゃないか!」
「古代の機動兵器……中々面白そうじゃない?」
自らもまた人型機動兵器である『ヘビーアームズ』迅牙(p3p007704)が嬉しそうに叫ぶと、『紅蓮の魔女』ジュリエット・ラヴェニュー(p3p009195)がよくラサで掘り出し物が確認されるから飽きないと今回の1件にも興味を示す。
「なんですっけ、ロボットは男のロマンだとかなんだとか、本当ですか???」
よくわかっていない妖怪男子18歳、『割れぬ鏡』水月・鏡禍(p3p008354)は近場の仲間に問う。『夕陽のガンマン(少年)』スティール・ダンソン(p3p010567)は冷静に彼へと返答していたようだった。
「あちこちで古代兵器が見つかりだしてきて、何かおかしくないでありますか?」
このところ、古代兵器が見つかるタイミングが並びすぎている
そこで、『空の守護者』ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)がそう思っていた疑問を投げかけ、これは嫌な予兆ではないかと表情を陰らせる。
「全ては鉄帝のためにでありますよ」
傭兵、練達に情報がいって遅れをとるわけにはいかぬと、鉄帝にもこうした古代兵器の情報が流れるよう努力したいと彼女は鉄帝への忠義も語っていた。
「古代機動兵器……R.O.Oのエクスギアエクスみたいなものか、興味が湧くのも解るよ」
そんな仲間達の反応に、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は微笑ましく見つめていたが……。
「砂漠の遺跡も大したもんだが、まさかそのお宝が盗賊団に取られてしまうとは痛恨だな」
錬の言葉にメンバー達が表情を陰らせる要因が大きく2つある。
「期待してた遺跡探索が先を越されてた、てのはやっぱり癪だね」
「邪魔な科学者が付いてくるのも、面倒ね」
一つはカインが言うように、先にドダイ盗賊団なる盗賊らが遺跡を攻略してしまい、その古代機動兵器を得てしまったこと。もう一つはジュリエットの言葉通り、その兵器を目にしたいとはるばる練達から兵器開発の科学者がついてきていることである。
「盗賊を野放しにするのも研究者が怪我するのも望ましくない。何とかして丸く収めよう」
双方の問題をうまく解決できるようイズマが力を尽くす構えを見せると。
「満足に遺跡調査できなかった怒りは、ぶつけさせて貰おうかな!」
「引き受けた仕事は完遂するわよ」
盗賊に憤るカイン。科学者に嘆息するジュリエット。
他メンバー達も皆それぞれ思うことを抱きながらも、ついてくる科学者と共に、遺跡入口傍で機動兵器を乗り回す盗賊の群れを目の当たりにするのだった。
●
まだ少し遺跡まで距離があるが、広がる砂が歩く者の足をとり、吹き付ける風と合わせて視界を塞ぐ。
それらの対策として、例えばハイデマリーはホバー移動するよう低空飛行する。
ハイデマリーは合わせて空へと鳥を飛ばして視点を確認し、超視力と併用して視界を確保する。
カインはというと、こんなこともあろうかと取り出した防塵用のゴーグルを装着。加えて、戦闘が始まってすぐイズマが使う手はずとなっているイズマの飛行魔法を頼りとする。鏡禍などもその構えだ。
「俺は飛ばない機動兵器の迅牙だ」
なお、迅牙は自らの存在に強いプライドを持っており、頑なに飛行することを固辞していた。
「ふむ、見た目としてはスーパー系に近い気がするが」
迅牙にとって、ロボットの分類もまた重要であり、折角のロマンも30点減らしい。
「ゴーレムとしてはちょっと武骨なデザインだけど、機能美というものがあるものね」
一方で、ジュリエットは一定の評価をしていたらしいが、それはさておき。
それらの機動兵器は現状、手中にしている盗賊達が戦力の増強に利用している。
「……その大型機動兵器共々ぶっ潰してやるぜ! ……まあ、老人共を護衛しながらだがな」
改めて、気合を入れていた迅牙らイレギュラーズの後方には……。
「むほー、興奮するぞい」
「ついにご対面じゃな!」
練達からやってきた科学者達は古代の機動兵器にハッスルし、突っ込んでいきそうな勢いだ。
「……気持ちは分かるし見学は止めないけど、安全の為に射程距離外の遠距離からの見学に留めて」
そこで、カインが取り出したスコープを貸しつつ、彼らの説得に当たる。
「あんな大きな機動兵器相手に遮蔽なんて意味がないだろうし、安全を期す為にはきっとそれが最適だから」
「む、むう……」
科学者も全員がそうした道具を用意しておらず、未所持者が借りていたようだ。
とはいえ、彼らも直に機動兵器を触りたいらしく、盗賊など関係なく近づきたいと進み出る者も。
「戦闘中は絶対に近付かないこと! 遠くからの観察に留めてほしい」
流れ弾で命を落とそうものなら、2度と見ることはできない。イズマも双眼鏡を渡しつつ釘を刺す。
職人である錬もそんな彼らの気持ちが理解できなくもないが、古代機動兵器にどんな武装が積んでいるか分からないことを考えれば素直に守られてほしいと願う。
「気持ちは分からないでもないが、俺たちの盗賊退治依頼が優先だ。職人の好で俺が解説してやるから聞き分けてくれよ?」
「ぐぬぬ……」
イズマや錬に説得されてなお、身体をうずうずさせる科学者達。とはいえ、死の危険にはさすがに二の足を踏んでしまう。
「戦闘中の様子は俺が観察して後で詳しく見せるから、今は我慢してくれ!」
イズマは念を押して忠告し、仲間と共に盗賊の掃討を始めるのである。
●
砂塵舞う中で盗賊達も、イレギュラーズの接近を察して。
「機動兵器の実力を奴らに見せつけてやれ!」
「「おおっ!」」
機動兵器の力を見せつける絶好の機会だと、盗賊達もテンションは高い。
「むおおお、高ぶるのう!!」
なお、観戦する科学者達もこれ以上なく興奮していた。
彼らを守るように立ち回ることを意識し、錬は秘めた力を開放して力を高める。
続けて、彼は戦場全域を俯瞰することでとりわけ機動兵器の挙動を確認する。駆動音を立てたそれらは砂塵に紛れて迫ってきていた。
「さて、敵に対処するぞ」
仲間を捉え、イズマがカンタービレを奏でると、その祝福のハーモニーを耳にしたメンバーがふわりと浮き上がる。
ゴーグルを装着したカインはホバリングする程度の高度を保ち、まずは敵の駆る機動兵器のスペックをはかろうとする。
(陸戦専用だろうね。でも、かなりのパワーを持つ様だ)
本体のスペックを調べるカインだが、一度では武装まで把握できない。とはいえ、機体分析ばかり行うわけにもいかぬと、カインはある程度敵から距離をとって射線の確保に動く。
イズマが初手で仲間の援護を行っている間、こちらも僅かに浮き上がっていた鏡禍が先に群がってくる量産機や盗賊達の引きつけを始める。
砂塵の影響で視界はかなり悪いものの、鏡禍はエネミーサーチによって曲刀を振り回す盗賊団団員や量産機の位置を確認する。
できるだけ、後衛陣……特に科学者からは距離をとっておきたいところ。ある程度前に出て接敵したのを確認してから、鏡禍は名乗りを上げた。
多くは鏡禍へと刃を繰り出し、あるいは量産機の杭、散弾で攻撃を仕掛けてくるが、一部はスコープで捉えていた科学者へと向かう。
敵に囲まれる形となった鏡禍はすぐに動けぬ状況だったが、そこにイズマが駆け付けて。
「相手になるよ。よく狙うといい」
敢えて目立つようイズマはフォルテッシモ・メタルをカラフルに光らせ、自身の場所を示す。
「ぐへへ、丸見えだぜ!」
イズマに乗せられた盗賊達は彼目掛けて刃を振り下ろす。
錬も一緒になり、科学者から注意をそらすようにと、式符から鍛造した無数の木槍で個別に敵の体を貫く。
「お前たちの相手は俺だ。観客相手に手を出させる訳には行かないな?」
「なら、俺達の引き立て役になりやがれェ!」
自分達こそが劇の主役だと、盗賊団団長のドダイが古代機動兵器アルファムを乗り回す。
ホバー移動可能な機体で砂上でもスムーズに動き、砂埃を上げて右腕の杭を突き出すのである。
その間に、他のメンバー達が盗賊団の討伐に当たる。
「他の者は知らないが、俺の様な機動兵器は空を飛んでは駄目なんだ」
迅牙は科学者寄りの位置で地に足をつけたまま、踵のローラーを激しく回転させて地面を走り、細かく移動して敵と対する。
飛行しないことにこだわる迅牙だが、彼は科学者を守ることを優先しつつも、構えたライフルより魔弾を放って盗賊どもを撃ち抜いていく。
無事であったとしても、有効射程範囲を維持する迅牙の放つ魔弾は確実に盗賊達を穿ち、その体を凍らせていく。
そうなれば、多くの敵の攻撃を引きつけていた鏡禍の負担も幾分か和らぐ。
機動兵器の火力が高いが、まずはあぶれた団員が先。
鏡禍は閉じた聖域を展開して防御を高めてから集中し、それを活かした攻勢で盗賊達を叩く。
「相手の数がそこそこいるのが厄介ね」
順調に攻め立ててはいるが、手早く倒さねば被害が大きくなると判断したジュリエットは盗賊どもの足を止めるべく、無数の見えない糸で切り裂き、次なる敵を黒いキューブで包み込んで耐えがたい苦痛を与えていた。
防御、護り向きではないと自認するハイデマリーもまた敵の妨害に動く。
攻撃集中するハイデマリーは敵陣へと鋼の驟雨を降らせ、盗賊どもの態勢を崩し、その構成を削いでいた。
糸やキューブ、弾丸をまともに受けて早くも崩れ落ちる盗賊達。
それらへともう1人の自身の可能性を纏って力を開放したカインが少し間隔をとり、収束性を高めた魔力砲で盗賊達を薙ぎ払う。
「「ぐああああっ!!」」
叫ぶ盗賊達はぱたり、ぱたりと砂の上に伏す者も出始める。
「ほら、観客はただの徒歩の賊に興味はないとの仰せだぞ!」
錬が言うように、観客の興味は……。
「ほう、ホバリングとな」
「杭打ちとは力業じゃの」
科学者の興味は盗賊になど微塵もなく、彼らの駆る古代兵器にのみ注がれている。
自分達の力を示すことのできぬ盗賊達が集まる所へ、錬が式符を炎の大砲に変えて火弾を発射する。
敵陣へと落ちた火弾はすぐに破裂し、大きな爆発を巻き起こす。
「「のわあああああっ!!」」
機動兵器に乗れなかった団員らは耐える術を持たず、黒焦げになって倒れていったのだった。
●
残る敵は機動兵器組。
「ぐはは、くらえ!」
ただ、盗賊達もその力をかなり持て余しており、滅茶苦茶に武装を振り回している印象だ。
イズマや鏡禍が敵を科学者へと向かわせぬよう引き付ける間、錬が職人魂で相手の動きを解説する。
「むぅ、あの武装は!」
加えて、彼はドリームシアターを使い、古代兵器の俯瞰戦闘映像を幻影として見せてくれる。
「左腕の散弾……ふむふむ」
イメージ依存とはいえ、見た物をそのまま出力するだけならさほど難しくない。科学者達も食い入るように幻影を見つめていた。
さて、暴れる量産機はジュリエットが刹那の疑似生命をけしかけることで、混乱を始めて。
「近づくな!」
「う、うわあああ!」
味方へと杭打ち、散弾と攻撃する盗賊達。団長ドダイもアルファムを駆って気を大きくしていた為か、部下の統率にまで気を配ってはいない。
「落ち着いて対処すれば問題ないでありますね」
硬そうな兵器を纏めて、ハイデマリーが死の凶弾、魔弾で穿ち、2体が動きを止めてしまう。
ハイデマリーが動きを止めた機体と合わせ、まだ暴れる量産機と合わせて照準に定めた迅牙がライフルで纏めて狙撃する。
彼は続き、何処からともなく呼び寄せた大型ビームキャノンをつかみ取って。
「量産機と言えど、完全にスクラップにしてやるさ」
そう呟いた次の瞬間、前方へとすさまじいビームが放たれる。
ビームが直撃した2機は回路が焼き切れ、スクラップと化してしまう。コクピットの盗賊は砂の上に転げ落ち、泡を吹いてしまっていた。
カインは残る量産機とアルファムのコクピットを意識しながらも、魔砲を発射していたが、敵も弱点を意識してか腕で受け止め、反撃に出ようとする。
「見せてもらおうか、古代機動兵器の動きとその操縦テクニックを!」
だが、イズマがその杭打ちの一撃をしっかりと受け止める。
そのコクピット目掛けてイズマは邪剣による三連撃を繰り出し、操縦する盗賊を仕留めてしまう。ただ、傷はかなり大きかったようで、彼はすぐ絶気昂で自らを癒していた。
「あうう……」
転がるように地面へと落ちた盗賊。
ジュリエットは五体満足の量産機を目にしながらも、敢えてハイデマリーが動きを止めた機体へと近づく。
「私のギフトで組み直せば……」
「ハハハハハァ!!」
彼女は何やら手を加えていたが、そこにアルファムを駆るドダイが笑いながら散弾を放ってくる。
さらに近づいてきたアルファムの杭がジュリエットを襲う。
パンドラ復活しながらも、彼女は量産機を自律駆動できるゴーレムとして運用して。
「…………!」
「「おおっ!」」
ゴーレムと化した量産機がアルファムへと杭を打ち付ける模様に、科学者が釘付けになる。
「やはり散弾が邪魔そうですね」
残るアルファムの引き付けに当たる鏡禍は防御力を高めつつ、左腕に攻撃を集中させる。
砲身が曲がり、あるいは詰まればそれだけで暴発の危険すらできる。
「量産機とは違うのだよォ!」
ドダイは左腕が満足に起動しないと判断し、右腕の杭を振り回す。
杭を使うとなれば、接近戦メイン。距離をとるメンバーがアルファムへと攻撃を集める中、ジュリエットが仕掛ける。
「出し惜しむものでもないし、私の最大火力で焼き払ってあげる」
殲滅聖光。灰は灰に、敵も灰に。
右腕に刻まれた回路から展開する術式がアルファムへと集まる。
高まるエネルギーに焼かれるアルファム。装甲の厚さもあり、灰とはならなかったものの、コクピットのドダイはその熱をまともに浴びていたようだ。
「ぬ、ぐ、ぐああああァァ!」
全身を焦がしながら外へと逃れたドダイだったが、砂の上に転がった直後、意識を失ったようだった。
●
盗賊達を掃討して。
「戦闘終わったな? ヨシ!」
「よし、大丈夫じゃな!」
「もう辛抱溜まらんぞい!!」
職人魂が首をもたげた錬。同じく、イレギュラーズの勝利を確認した科学者達も飛び出し、錬と共に機動兵器の方へと向かう。
「一緒に機動兵器を調べるぜいえーい!」
「「いえーい!!」」
両者大盛り上がりで、大破した機体までじっくりと調べ始める。
「戦いの模様も出力しておいたよ」
イズマは戦闘中に観察、記憶した模様を念写し、それを研究者達へと見せ、解説も加える。
「ほうこれは……」
「魔法や電力……練達らしき技術も感じられるのう」
まずは武装、動力や回路といった部分を細かく分析、構造把握に努める。
その間、迅牙は彼らに好きなだけ観察させる為にと、遺跡付近に新たな盗賊が出ないか警戒を行う。いわゆる歩哨である。
「それに私も気になるのよね、この兵器」
奪った量産機を使っていたジュリエットはそれを敢えて解体してみせる。
バラすのも組み直すのも得意というジュリエットだ。彼女の手腕もさることながら、機動兵器の構造、挙動について確認できることに科学者達が一層息を荒くしていた。
「ジュリエットさん、こっちも動かしてもらっていいですか」
鏡禍はちょっとと言いつつもかなり興味を抱き、アルファムの操縦を頼む。
ジュリエット自身の術式によって動きを止めたアルファムだが、彼女は量産機の部品などを流用してアルファムも組み直し、起動してみせる。
さらに、ジュリエットはそちらの操縦もこなし、興味を持つ面々の好奇心を満たしていた。
ハイデマリーはギフトを使い、見聞きした情報を並列思考によって処理し、確認、精査を行う。
(お互い、有益すぎる情報は全体公開したくないのではと思ったのでありますが……)
幸い、仲間達が科学者へと説明なども行っていることから、ハイデマリーとしてはそれをチェックすることは難しくない状況だった。
それもあって、ハイデマリーはできるだけ多くの情報を得ようと集中していた。
ところで、カインは仲間と科学者数人を連れて遺跡内へ。
盗賊達がほとんど罠を起動させており、簡単に最奥に至ることはできたが、すでに盗掘された跡とあって目ぼしい物を発見できずにいた。
「何か見落としでもあれば……」
新たな遺跡に挑む前に、カインは気が済むまでこの遺跡を調べつくすことにしたようだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは量産機を奪って見せた貴方へ。
今回はご参加、ありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
こちらは、カイン・レジスト(p3p008357)さんのアフターアクションによるシナリオです。
古代兵器、それを手にした盗賊。それに興味持つ練達科学者……。
絡み合う思惑を、ローレットイレギュラーズの手腕として見事に収めていただきますよう願います。
●目的
古代機動兵器の無力化。
盗賊達の撃破。
練達科学者の生存。
●概要
傭兵のとある遺跡に騎乗するタイプの古代機動兵器が数体発見され、それらをこの近辺を根城とする盗賊一団がそれらの古代機動兵器を利用して戦力を増強しているそうです。
その噂が練達にも届き、ロボットを研究している科学者達が何としても実物を目にしたいと、わざわざ傭兵の遺跡にまで出向いてきたようです。
逸る気持ちを抑えられぬ科学者達を宥めつつ、古代機動兵器を程ほどに無力化し、盗賊一団の撃破を願います。
事後は今回の遺跡の調査が可能ですが、盗賊団による盗掘の後とあって、めぼしいものは発見できないと思われます。
●戦場
傭兵の砂漠に埋もれかけた遺跡の入り口付近が戦場となります。
砂埃舞い、視界と足場の悪い中での戦いです。
●敵……ドダイ盗賊団×15体
○古代機動兵器アルファム×1体
団長ドダイが搭乗。ドダイはスキンヘッド、色黒肌の人間種、30代男性。
全長10m程度ある無骨な見た目をした機動兵器。飛行はできず、ホバー移動で思った以上に滑らかに動きます。
コクピットは胸部にあるようで、外から確認はできますが、外部からの攻撃はシャットアウトできる魔力のバリアの様なものがコクピット周囲に展開しています。
杭となった右腕の二の腕を突き出し、殴り掛かる他、左腕から散弾を浴びせかけてきます。
○量産機動兵器×4体
全長4mほど。人型ですが、頭部のコクピットが露出しています。
アルファムの簡易量産型といった印象で、同じく杭となった右腕、左腕の散弾で攻撃してきます。
○盗賊団団員×10体
機動兵器の数が足りないことで、あぶれた団員達です。量産機は彼らが交替で乗り回している様子。
曲刀を振り回す他、遺跡内から弾薬などを補給するなどといった行動をとります。
●NPC……練達科学者×5名
白衣姿をした初老のご老人方。3名人間種、2名旅人。
混沌のロストテクノロジーに強い興味を持ち、近代の街並みからわざわざ荒れ地の傭兵にまでやってきた老いてなお好奇心の塊。
戦闘能力皆無ですが、戦いの中に身を乗り出そうとするので何かかしらの対策は必要でしょう。
なお、眠らせて戦闘を一切見せないなどすると、事後に強い不満を口にしますので、ある程度対策は考える必要があるでしょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
それでは、よろしくお願いいたします。
Tweet