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シナリオ詳細

<アーカーシュ>飛空島のファーストステップ

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●空飛ぶ島アーカーシュ
 天空に舞う島――アーカーシュと呼ばれるその大地へ、鉄帝の調査隊とイレギュラーズ達はついに降り立つ。
 レリッカの村を中心とした調査拠点を得た調査部隊は、早速周囲の探索へと出る子となったのだが、やはりそこに立ちふさがる問題は、謎の怪物――古代獣と呼ばれた怪物たちが跋扈していたことだ。
「つまり、危険と隣り合わせの新天地、という事であるな」
 と、あなた達に告げるのは、EAMD所長『 趣 味 爺 』ガスパー・オークソンだ。EAMDとは、鉄帝において古代兵器の発掘・解析・メンテナンス及びそれらの知見を活かした新兵器開発等を行っている機関だ。政府機関というわけではない、ガスパーの独立した研究機関であるが、しかしその実力のほどは確かであり、今回、まさに未知の古代遺跡であるアーカーシュの調査のため、鉄帝国から協力を要請され、現地に赴いたのである。
「しかし……ああ、まさか空飛ぶ島とはな! どのような技術が使われているのか実に興味深い。
 それが、魔術であっても科学であってもだ。まさに生ける古代遺産! これには私も、興奮を抑えきれない――!」
 熱弁するガスパー。とはいえ、その想いの熱さは、あなた達イレギュラーズにも伝わっていたかもしれない。なにせ、伝説の具現のような地なのだ。空を飛ぶ、不思議な島。かつての伝説に語られた勇者も訪れたかもしれない遺跡となれば、自然、探索の意気も上がるというもの。
「はいはーい。所長、それくらいで落ち着いてねぇ?」
 そういうのは、EAMDの構成員であるEAMD職員『むちむき怪力おねえさん』ノバリシア・ユードラだ。EAMDの構成員は、所長であるガスパーに、職員であるノバリシア、そしてEAMD職員『知勇兼備の女豹』アリディア・オルタニスに、ローレットに所属するイレギュラーズでもある【EAMD職員】 キャナル・リルガール (p3p008601)の四人を主としている。
「そういうわけだからぁ、皆には遺跡探索と護衛をお願いしたいのよぉ」
 ノバリシアの言葉に、キャナルは手渡された簡易な地図を覗き込んだ。レリッカの街の住民が作ったのだろう、付近の地図である。詳細に描かれていたわけではないが、ある程度のランドマークは記載されており、今回のイレギュラーズ達の目的地は、半ば崩壊しつつある、古代遺跡である。
「古代遺跡……地下施設っスか?」
 キャナルが尋ねるのへ、ノバリシアは頭を振った。
「うーうん? 違うわ、リルガール。大半は地上施設よ。
 そうねぇ、神殿、街、教会……そういう廃墟のようなものをイメージして頂戴?」
「なるほど、廃棄都市、って感じっスね」
 つまり、かつてはそこに町か、施設のようなものがあったのだが、年月とともに風化し、壁や石畳、建物らしき残骸が残っているような場所、という事だ。
「だから、ダンジョンアタック、みたいなのとはちょっと違うかな。開けた街の調査……みたいな感じでいいよ」
 そういうのは、アリディアだ。
「ただ、情報によると、やっぱり古代獣ってのが少しうろついてるみたいだし、足場もよくない……がけっぷちみたいな所に立ってるから、落っこちたら本当に、地上まで真っ逆さまになるよ。
 それと、なんか、ゴーレム? みたいなものの残骸がたくさん転がってるんだって」
「ゴーレム?」
 イレギュラーズの一人が尋ねるのへ、アリディアが頷く。
「うん。噂の、空から落ちてきて、アーカーシュの位置を指示したって言う、あのゴーレムと同型っぽい。
 機能は停止してるみたいだけど、なんかのタイミングで動き出すかもしれないから、そこだけは気を付けてよ」
「所長と、わたしと、オルタニスも同行するわぁ。所長は調査専門だけど、わたしとオルタニスはある程度戦えるから、皆のサポートくらいならできるわよぉ?」
 そういうノバリシアに、アリディアは笑う。
「久しぶりに暴れられそうでワクワクしてる! よろしく!」
「まぁ、何もないのが一番であるが……しかし遺跡に危険はつきもの。そうはいかないのは予想できる」
 ガスパーが頷きつつ、あなた達に頷く。
「これも鉄帝国のため……とは、うん、ぶっちゃけ建前だ。
 私が見たい! 私が知りたい! というわけで諸君、よろしく頼むぞ」
 わはは、とガスパーが笑う。少々私利私欲は混ざっているが、しかし遺跡発掘のロマンは、あなたたちイレギュラーズ達も同じくすることだ。未知のことに挑戦し、それを知るのはとても楽しい。そして同時に、大きな困難が立ちふさがるであろうことも、よくよく理解できている。
「了解っス。うーん、EAMDのみんなそろっての仕事は久しぶりっスね! 張り切ってやるっスよ!」
 キャナルがそういうって笑うのへ、あなたも頷いた。
 困難だが、楽しい仕事になりそうだ。イレギュラーズ達は、ロマンの眠る古代の飛空島、その第一歩をここに踏み出す――!

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 空飛ぶ島アーカーシュ。まずは、拠点周辺の調査と行きましょう。

●成功条件
 遺跡の調査を完了し、帰還する。

●特殊失敗条件
 EAMD所長『 趣 味 爺 』ガスパー・オークソンの戦闘不能。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●状況
 空飛ぶ島アーカーシュ。その大地に降り立った皆さん。
 拠点となる村レリッカとも交流を持ち、早速周辺調査の開始と相成りました。
 皆さんが向かうのは、レリッカより少し離れた場所にある遺跡群。そこは、かつては街のようなものがあったのか、建物や壁らしき石の廃墟と、ゴーレムの残骸、そして古代獣たちの徘徊する場所です。
 同行するEAMDのメンバーと共に、まずはこの地を探索しましょう。
 危険な場所はありますが、レリッカに近いという事もあり、比較的安定した場所です。
 ピクニック感覚で、とは言いませんが、安全を確保できれば、風景を楽しみつつ休憩することなどもできるでしょう。
 今回の調査ですべてがわかることはありません。ですが、まずは第一歩を踏み出すものとして、新たなフィールドに挑戦してみてください。
 作戦決行タイミングは昼。周囲は、朽ちた石壁や石畳が並ぶ、廃墟のような遺跡になっています。
 特に戦闘ペナルティはありませんが、しいて言うなら、少々見通しが悪く、出会い頭に敵に遭遇する……なんてこともあるかもしれません。

●エネミーデータ
 古代獣 ×???
  古代獣と呼ばれる、特異な怪物たちです。
  見た目のバリエーションは豊富で、狼風の獣、猛禽類風の獣、類人猿風の獣、等が居ます。
  知能は獣並みで、群れで行動する程度の知能は持っていますが、高度な連携や、スキルの使い分けなどはあまり行いません。
  猪突猛進、突っ込んできて殴る、みたいな性能が多いため、まずはこの地で通用するか、力試しと行きましょう。

 仮称:アーカーシュ・ゴーレム ×???
  アーカーシュの古代遺跡に転がっている、ゴーレムです。古代兵器ですが、大半は機能を停止しています。
  遺跡内によく転がって言います。触らぬ神に祟りなし……とは言いますが、しかし今回は調査依頼ですし、ガスパーが好奇心を抑えられるとは思えません。
  起動してしまった場合、少々強敵になると思います。高熱線(ビーム)は火炎を伴うでしょうし、シンプルな外見とは裏腹に装甲も厚く、生命力も高いでしょう。
  今回遭遇する可能性の在る個体は、ほとんど故障しているため、完全全力を出せない所は救いです。
  単体で遭遇することが多いでしょう。仲間を起こされる前に、速やかに倒してしまうのが良いです。

●味方NPC
 EAMD所長『 趣 味 爺 』ガスパー・オークソン
 EAMD職員『むちむき怪力おねえさん』ノバリシア・ユードラ
 EAMD職員『知勇兼備の女豹』アリディア・オルタニス

 EAMDという、鉄帝で古代兵器の発掘・修理・運用・発展を研究する組織の人達です。【EAMD職員】 キャナル・リルガール (p3p008601)さんの関係者。
 今回は、鉄帝軍に協力を要請され、この地に降り立ちました。古代兵器の専門家ですが、アーカーシュの古代兵器にそれが通じるかは、まだまだ未知数な所があります。
 ガスパーには一切戦闘能力がありませんので、完全な護衛対象となります。
 ノバリシア、アリディアは戦闘可能なタイプで、ノバリシアは体力、攻撃力共に高めのパワーファイター、アリディアは回避や機動力、命中、EXAに優れるスピードファイターというような性能をしています。
 それなりに頼れますので、うまく使ってあげてください。特に指示が無ければ、ガスパーを守ることに注力します。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。

  • <アーカーシュ>飛空島のファーストステップ完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別EX
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年04月18日 22時06分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

セララ(p3p000273)
魔法騎士
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
業壊掌
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
Tricky・Stars(p3p004734)
二人一役
ジェック・アーロン(p3p004755)
天空の勇者
アクア・フィーリス(p3p006784)
憎悪の澱
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
キャナル・リルガール(p3p008601)
EAMD職員
星芒 玉兎(p3p009838)
星の巫兎

リプレイ

●いざ、空の大地へ
「すごい、この島、空に浮いてる…… 」
 そう、僅かに目を丸くして言うのは、『憎悪の澱』アクア・フィーリス(p3p006784)だ。それが事実であると告げるように、崖から見える景色は青い。海の青ではなく、空の青であり、時折薄い白いわたあめみたいなものが見える。それが雲だと言っても、きっと地上の人々は信じまい。雲は時折風に吹かれて、この場所にもやってくる。霧に包まれたような感覚に、アクアは今度は目を細めた。
「……ふしぎ。あ、たしか……イレギュラーズとして、呼ばれた時も、浮いてた……よね?
 ここ、あそことはまた、違うところで、いいの? 」
「うむ、空中庭園だな! そことは全く違う場所、という認識で構わない」
 と、言うのはガスパーだ。EAMD所長であり、今回の遺跡探索のアドバイザーでもある。まぁ、アドバイザーと言っても、ここは未知の地。『鉄帝の発掘兵器に詳しい人物』ではあるものの、アーカーシュの専門家ではない。もちろん、発掘兵器に詳しいだけでも、随分と頼りになるのだが。
「つながりがあるかどうかは、これからの調査で判明することだ。
 まぁ、私はあまり関係はないと思っているが……それも神のみぞ知る、といった所だろう。
 いや、神のみぞ知る、ではない。ここから、我々が知る事実に変えねばならん!」
 ぐっ、と拳を握るガスパー。随分とテンションが上がっているようである。まぁそうだろう、空飛ぶ島、等は伝説やおとぎ話の類だ。とは言え、アクアにとっては、ガスパーの熱はちょっとびっくりするくらいのものではあったけれど。
「所長、落ち着いてほしいっす。アクアさん、引いてるッスよ」
 というのは、『EAMD職員』キャナル・リルガール(p3p008601)だ。ガスパーと同じ、EAMDに所属する職員でもあるキャナルは、同時にローレット・イレギュラーズの一員でもある。
「ワクワクする気持ちは分かるっすけどね。みんなで一緒に行動するの、久しぶりッス!」
 EAMDの職員は、ガスパーとキャナル、そしてノバリシア とアリディア の四人が参加している。実質中心人物四名によるフルメンバー参加であり、同時に、EAMDにとっても、アーカーシュが興味深い島であることを示唆していた。
「その気持ちはワカルよ!
 突如現れたナゾの飛空島! 今は忘れ去られた遺跡群! ワレワレ調査隊を待つものとは!」
 楽しげに笑うのは、『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)だ。イグナートは、にっ、と笑うと、
「まさに冒険だね! それに、見たことのない物がタクサンある!」
 イグナートの言葉に辺りを見てみれば、なるほど、地上では見たことのないようなモノが沢山ある。例えば草花。動物。魔物に至るまで。
「この花とか、地上で売ってる奴に似てるかも」
 『魔法騎士』セララ(p3p000273)が、足元の赤い花を見ながら言う。地上でも、贈答用に売られているポピュラーな花だが、それに比べては、些かやせ細っているようにも見える。
「多分、原種、って言う奴だと思うわ」
 ノバリシアが言った。
「今の人間が使っているものは、ほとんど品種改良されたものよ。原種はすごく小さかったり、収穫量が少なかったり、美味しく無かったりするの。それを改良して、大量生産ができるようにしたり、味を良くしたものが、今出回っているものだわ」
「なるほど、だからちょっと花が小さいんだね。あと、確かに……村で貰った黒パンは、地上のに比べたらぼそぼそしてたかも」
「ここの皆が食べてる麦とかも、品種改良されてないから、ってこと?」
 『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)が言うのへ、ノバリシアは頷いた。
「多分。使っているのは、私達が栽培している麦の原種だと思うわぁ」
「そっかぁ。ボクたちが食べてるのも、先人の知恵のおかげ、って奴なんだね」
 むむむ、と焔が唸る。ガスパーが笑った。
「うむ! 私は流石に農耕系は専門外だが、技術の蓄積と発展という点では、その大変さも理解できる。
 もしかしたら、地上から品種改良された植物などを持ち込むと、村のものに喜ばれるかもしれんな。
 また村に訪れる機会があったら、持ち込んでみると良い」
「そっか、もしかしたら、村の生活が豊かになるかもしれないからね!」
「もって行くとしたら、そういう品種改良された植物とか、家畜も? 後は、服とかもかな?」
「服飾の技術も発展しているからな。是非技術を伝えてやるとよい。
 この村の住民が、発展のための努力をしなかった、とは言わない。
 だが、地上にはこの村のより多くの人間がいるわけで、多くの人間が切磋琢磨して発展してきたという事実を比べれば、どうしてもこの村の技術発展が遅れるのは仕方あるまい」
「うむ。一人で修行するのにも限界がある。美少女的にも、やはり対人稽古を、さらに言えば百人組手ををした方が良いであるからな!」
 はっはっは、と『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)が笑う。
「吾も昔は、よく多くの者から恐れられ襲われたものだ……もうずいぶんと昔のことのように感じる。懐かしいな……ふふ、一度はカフェで優雅にティータイムをしていた時に挑戦者に襲われたこともあった。中々の手練れであったが、ミルクティーが覚める前に迎撃したものよ……」
 ふ、と何か懐かしい思い出に浸る様に百合子が言うのへ、アリディアが呟いた。
「え、楽しそう……いやいや、こほん。
 というわけで、この飛空島の未来は、みんなにかかってる、といっても過言じゃないかもね。
 探索もそうだし、生活もそう。
 というか、今日は遺跡探索なわけだけど、みんなちゃんと準備してきた?」
 遠足のようなノリで言うアリディアへ、『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)は頷いた。
「ああ、もちろん。好奇心が掻き立てられる仕事だな。実に興味深い。
 まぁそれだけ未知の危険もあるだろう。皆、油断するなよ」
 その言葉に、仲間達は頷く。周囲は、セラミックや石だろうか? そのように感じる材質で作られた、道や壁の跡地、が広がっている。上空から俯瞰してみれば、多くの建物が密集した痕跡のように感じるだろう。この遺跡が何なのかは不明だが、もしかしたら、街のようなものがあった……のかもしれない。
「さておき、シェフの私が作ってきた弁当も全員分あるぞ。昼休憩をお楽しみに」
 モカが言うのへ、アリディアが笑った。
「おっ、それは楽しみ!」
 少しだけ緊張をほぐしながら、一同はあらためて、遺跡に臨む。
「あらためて見ると、実に奇妙な感じですわね」
 『星の巫兎』星芒 玉兎(p3p009838)が言う。
「確かに、遺跡だけなら、見たことはあります。
 でも、これが空に浮かんでいるとなると……本当に、奇妙、としか言えない感覚が致しますわ」
 どっしりとしたように見える大地は、しかし少し視線を外せば、青い空が眼下に見える。これが浮いているのだ、と脳が理解を拒否するかのような、むずむずとした感覚。脳がバグっている、と俗に言われるような奇妙な感覚は、玉兎だけでなく、他の仲間達も感じていた所だろう。
「わたくし、星読みなのですけれど……星を見る時に、あの雲の中にも大地があるのやも……と思ってしまいそうで、困ってしまいますわね」
『それは確かに! 楽しそうだけど、こんなのが沢山浮いてたら大変だ!』
 『二人一役』Tricky・Stars(p3p004734)の虚が笑う。
『でも、楽しそうではあるんだよな。
 所長さんの気持ちもめっちゃ分かるわ〜!
 おっかない獣が彷徨いてなきゃ、俺もガキみたいに彼方此方走り回ってたよ、絶対。
 何が出てくるのか楽しみだね』
「警戒を怠るなよ、虚」
 Tricky・Starsの稔が言う。
「情報のない場所なのは確かだ。俺には不気味に感じる。情報がない故に、余計にそう思うのかもしれないが……」
 何かを感じるような言葉に、ガスパーは頷いた。
「ふむ……未知のものに関する恐れだろう。それは悪い事ではない。
 好奇心と恐れ、そう言った相反する感覚が、調査には必須だ。君のようなものが居てくれれば、私も安心して好き放題でき……いや! 調査ができる!」
「今少し本音が出たな……?」
 稔が肩を落とす。
「さておき、慎重なのは悪い事じゃないよ」
 『白砂糖の指先』ジェック・アーロン(p3p004755)が言う。
「古代遺跡、それも長い間人の手が入らなかった場所。
 学に疎いアタシですらその価値を理解するよ…… 。
 同時に、危険な場所であることも、理解できる。
 鉄帝だって、EAMDのみんなをはじめ、大規模な調査隊を組むほどだ。アタシ達、ローレットの手も借りてね。
 だから、慎重なぐらいでちょうどいいのかもしれない」
「そうよぉ。うちの所長、結構無茶するから、どうかお願いねぇ。
 わたし達も可能な限り止めるからぁ」
 ノバリシアが言うのへ、キャナルは苦笑した。
「まぁ、うちのメンバー、やっぱりこういうの、好きなんで。
 暴走しそうになったら、ご迷惑おかけするッス」
「まぁ、佳かろう。それが求道者というものであるな!」
 百合子が笑う。
「さて、ガスパー殿。貴殿は吾と共に、このワイバーンに乗っていただきたい!
 いざという時守れるようにな。足場もよくない。落ちることはまずないが、万が一地上に向けて落ちてしまえば、救出は容易でもないしな!」
「おお、覇竜領域にいるというワイバーンか! 見事のものだな……では、頼むぞ!」
 いそいそとワイバーンの背に乗ってみるガスパー。百合子はうむ、と頷いた。
「じゃあ、行こう、みんな! 遺跡探索しゅっぱーつ!」
 セララが片手をあげて、みんなが「おーっ」と返事をした。かくして、アーカーシュ第一の遺跡探索が、幕を開けたのである。

●遺跡捜索
「えーと、この遺跡……名前はついてないんだね」
 焔が、周辺の地図を見ながらそういう。周辺の地図と言っても、村の付近の大雑把なものしかない。この飛空島を開拓するのは、これからなのだ。
「うん。一番近い遺跡、って言うと此処って事で教えてもらったんだけど、やっぱり村の状況じゃ詳しい発掘なんかも難しいらしくて」
 アリディアが言う。確かに、村の状況を考えて、大規模な発掘調査はなかなか難しいだろう。
「だから、今回の発掘で、名前とか付けてもいいって言ってたよ。よかったら、名前つけてみたら?」
「え? いいの? 炎堂遺跡とかつけてもいいの?」
「いいとおもうけど……地図に乗って、歴史の教科書とかに、乗るかも、しれない……」
 アクアが言った。
「ヘタな名前は付けられないね!」
 イグナートが笑う。
「しかし、辺りを見てみると……」
 モカが言った。
「なんというか、遺跡という点に関しては、地上とさほど変わりはない……のかな?」
「そうッスね。EAMDの発掘調査とかで行った遺跡と、すごく印象が異なる……ってわけじゃないッス」
 キャナルが頷き、続けた。
「でも、その分色々と分かることもあるっすよ。たとえば、この壁のサイズからすると、この遺跡を立てたのは、多分うちらと同じサイズの生命体だろうな、とか」
「ああ、確かに。巨人が住んでたとしたら、壁が小さいものね」
 むむ、とセララが唸る。少なくとも、この遺跡に限っていえば、人と同じサイズのものが作り上げたことに違いはないだろう。人類が住んでいたかどうかは、まだわからないし、それがどういう経緯をたどってアーカーシュにたどり着いたのかもわからないが。
「でも、建物のサイズで比べられちゃうと、ボクのいた世界のタワーマンションとかが遺跡になったらどうなるんだろ」
「たわーまんしょん?」
 玉兎が小首をかしげる。
「うん。こーんな高い建物でね、何十人も人が住める建物なんだ」
 ぴょーんと飛び跳ねて、高さをアピールするセララに、まぁ、と玉兎が声をあげた。
「京(みやこ)のお城や、練達の建物でも、随分と高いものだと驚きましたけれど。
 別の世界には、まるで天に届くような塔に人が住んでいるのですわね。
 もしかしたら、遺跡になったら後世の人間は、巨人が住んでいたのかもと勘違いしてしまうかもしれませんわ」
 くすくすと玉兎が笑う。
『確かに、タワマンが遺跡になったら怖いよなぁ』
 虚が笑った。
「ある世界には、神の世界に届くように作ったバベルの塔、何て神話があるらしいが」
 稔が言う。
「存外、タワーマンションだったのかもしれないな」
「古代人が住んでる集合住宅がシンワになった、って考えると、なんか面白いやらカナシイやら」
 イグナートが苦笑する。
「それだと、ここも案外古代人の居住地だったかも、って事?」
 焔が小首をかしげた。
「そうッスねぇ、かもしれないッス」
 キャナルが頷く。
「じゃあ、この、割れた陶器の破片……これも、昔の人が使った、食器……だったり、するのかな」
 むむ、とアクアが唸る。
「そう、考えるのも、楽しい……かも……」
「そう! それが遺跡発掘の浪漫である!」
 と、百合子の背後、ワイバーンにまたがったガスパーが言う。
「何事も、始まりは『面白い』『楽しい』からはじまるもの。フィーリス君はわかっておるな!」
「所長、アクアさんが引いてるッス……」
「ごめんねぇ、フィーリス。うちの子達、語ると熱くてぇ」
 ノバリシア がそういうのへ、アクアはふるふると首を振った。
「とは言え、楽しいばかりではいられそうもないな……」
 百合子が呟くのへ、頷いたのはセララだ。
「うん。ファミリアーのカーちゃんが、古代獣を見つけた!
 10匹くらい。イヌみたいな奴だよ。ただ、骸骨みたいな頭してる……」
「ホワイトヘッド(白骸犬) って奴かな」
 資料を確認しながら、ジェックが言う。村の調査記録をまとめたものだ。村人たちが遭遇した古代獣たちの情報も載っている。
「見た目通り、イヌっぽい奴ら。戦い方も、狼の群れって感じだよ」
「なら、アーカーシュでオレ達の力が通用するか、力試しと行こうか!」
 イグナートが言うのへ、仲間達は頷いた。
「ガスパー殿、貴殿は吾が必ず守る。故に、このままワイバーンに騎乗したまま、動かないでほしい」
 そう百合子が言うのへ、ガスパーは頷く。
「うむ! 私は戦闘はからっきしだからな! そのあたりは、君たちの指示に従おう!
 ノバリシアとアリディア、君たちもローレットの皆の指示に従うのだぞ」
「了解よぉ」
「オッケー! リルガール、アタシたちはどう動けばいい?」
「先輩たちは、ガスパー所長の傍についてあげててほしいッス!
 護衛を最優先に!」
「わかった! うーん、古代獣とかいうのと思いっきりやりたかったけど……今回は仕事だからね!」
 二人が百合子の死角をカバーするように、ガスパーを庇う。
「来るぞ。迎撃準備だ」
 稔の言葉に応じるように、仲間達は構える。果たして、曲がり角の先から、駆け寄ってきた10の獣たち。セララの報告通り、白い骨のような顔をしたその獣は、確かに報告のあった『ホワイトヘッド(白骸犬) 』に間違いない!
「数が多い……けど、その分一匹一匹は大したことがない、ともいえる!」
 モカが声をあげ、敵の合間を駆け抜けた! 同時、繰り出される一撃は、眼にも止まらぬ速さでホワイトヘッドたちの身体に強烈な打撃をくわえていく! モカが駆け抜けた後には、その打撃によって本来の動きを制限された獣たちが、困惑の声をあげていた。
「ほう、あの速度で急所を狙い、敵の能力を減じたか……!」
 ガスパーが感嘆の声をあげる。一方、聖剣を携え、ホワイトヘッドを顔面から一刀両断に叩ききるのアh、魔法少女の力を存分に発揮する、セララだ!
「ボクたちは、この位じゃ止められないよ!」
 にぃ、と笑い、ホワイトヘッドを切り裂くセララ! ぎゅわ、と悲鳴を上げたホワイトヘッドが倒れるのへ、残るホワイトヘッドが襲い掛かる! 鋭い骨の牙が襲い来るのを、セララは聖乙女の盾で受け止めた。きぃん、と甲高い音が成る。
「おっと、キミたちのコウゲキはオレがうけようか!」
 イグナートが声をあげ、その闘気を爆発させる! 名乗り口上のごとく膨れ上がった闘気でこちらに敵の意識を集中させながら、イグナートは手近にいたホワイトヘッドを、力強くぶん殴った! 近くの壁にぶち当たり、ホワイトヘッドの骨の頭部が砕けて落ちる。
「おっと、遺跡を傷つけたらまずいかな?」
「非常事態って奴だよ、気にしないで!」
 アリディアが笑う。ホワイトヘッドたちも、ただやられているわけではない。必死に攻撃を繰り返すが、しかしロマンと探求心に燃えるイレギュラーズ、その脚を止めるには至らない。
「さぁて、ボクたちの炎には――」
「耐え、られない、よ」
 焔とアクアが、同時に手を突き出した。放たれた、焔の炎、アクアの影が同時に迸り、ホワイトヘッドを飲み込み、その内に燃やし尽くす! 散りすら残らず消えたホワイトヘッド、二人の力に、遺された獣たちが本能的な恐怖を感じていた。だが、撤退するほどの頭はなかったらしい。或いはその恐怖を推してなお勝算を感じたか。いずれにせよ、その判断は間違いだったといえるだろう。
「血の匂いが濃い方が分かるのか、よい子だ 」
 ぐるる、と唸るワイバーンを、百合子は頭を撫でてやった。ワイバーンは、百合子の意を汲むように、最も死に近い、手負いのホワイトヘッドを睨みつける。
「では、人馬一体……いや、人竜一体の騎乗戦闘をお見せしよう!
 ガスパー殿、振り落とされるなよ!」
 ワイバーンが雄叫びをあげると、その手負いに向って飛翔した。ワイバーンが、上空から急降下するのへ、その意気尾を乗せた百合子の拳が突き出され、手負いに突き刺さる! 充分な威力を発揮したそれが、ホワイトヘッドを絶命させたのを確認し、ワイバーンは満足げに、くるる、と鳴いた。
「見事」
 百合子もまた、満足げにワイバーンをなでてやる。
「はは、スリリングだな!」
 ガスパーが愉快気に笑う。
 さて、ホワイトヘッドの数は確実に減じていった。イレギュラーズの攻撃を、彼らは抑えられない。さっさと逃げておけばよかったのだろうが、今となってはそれを後悔する時間もあるまい。
「悪いッスね! 今日は身内がいるんッス! いつも以上にやる気を出さなきゃ、先輩たちに合わせる顔がないんッスよ!」
 キャナルが吠え、手にした銃を乱射する! 銃撃の驟雨が、残るホワイトヘッド達を撃ち貫いた。うち一体が絶命し、残るホワイトヘッド達は威嚇の声をあげながら突撃! 決死の反撃を行うものの、それがイレギュラーズ達の命をとるには程遠い。
「『羽仁和邇』 、不愉快でしょうが、今は言う事を聞いてくださいまし」
 騎乗した式神をなだめつつ、玉兎は言った。飛び込んできたホワイトヘッドの牙を紙一重で躱すと、すぐにその手を突き出す。その手に集まる、凝縮された魔力。零距離で放たれる衝撃波が、ホワイトヘッドを吹き飛ばし、遺跡の壁にたたきつけた! ホワイトヘッドがそのまま動かなくなる。
「残りわずかですわ」
 玉兎が言うのへ、稔が頷く。
「よし、足を止める。撃ち抜け」
 掲げた手から放たれる、終焉の帳。不吉の紫がホワイトヘッドを包み込み、その体力を奪う刹那、ジェックの銃弾が次々とホワイトヘッドたちの頭を粉砕した。
「悪いね、獣狩りは何度も経験してるんだ」
 ふ、とジェックの銃から硝煙が立ち上る。かくして、遺跡における第一戦を制したのは、イレギュラーズ達であった。

●中央教会へ
「んー、ビアンキーニのお弁当は美味しいわねぇ♪」
 ノバリシア が、サンドイッチをほおばりながら微笑む。戦闘から以降、一行は遺跡の探索を続けていた。わかったのは、やはりここには、人ないしはそれに近い生命体の生活の痕跡があったという事だ。となると、やはりここは街に近いものだったのだろう。
 となれば、アーカーシュには、調査隊以前から、人が住んでいた可能性がある。だが、今のところそれが分かる調査資料はほとんどない。書物の類は劣化してたか存在しないし、石板の類も風化して文字もほとんど読めない。
 そんな調査の合間にも、古代獣との遭遇はあった。既存の情報通りの敵から、未知の古代獣まで。今回アクアが見つけたのは、黒っぽい、不定気の影のような古代獣だ。戦闘能力はないようで、アクアを見つけたらすぐ逃げ出してしまった。
「へんなの……が、居たの……。
 不思議な、生き物、なの。混沌で、見たこと……ない、の」
 と、小首をかしげるアクア。調査中の民家の残骸らしき影にたまっていた『黒い変なの』の報告に、ガスパーは喜んだ。
「新種か。レアかもしれんな……あ、後で報告書の記載を頼むぞ!」
 アクアはこくこくと頷く。そう言ったものを見つけたのは、イグナートもそうだ。といっても、此方は雑草、と片付けられてしまうような外見をした、素朴な草だった。
「ガスパー! ガスパー! これって固有種かな!? 鉄帝にはない植物だと思うんだけれど! 」
「ほうほう、資料がないと何とも言えんが、もしかしたら既に途絶えた系譜の植物かもしれん!
 とにかく、怪しいものは全て報告頼むぞ!」
 ガスパーも楽し気に応える。やはり未知の地、未知の場所。変わったものの発見は多い。さておき、そんな発見と探検を経て、一行は休憩をとっていた。というわけで、冒頭のノバリシアのセリフに場面は戻る。一行は、モカの用意したお弁当を食べつつ、恐らく街の広場的な場所であっただろう、開けた場所で休憩をとっていた。
「本当に、不思議な場所だね」
 スケッチをとりつつ、ジェックが言う。
「遺跡の風景、それにとっても近い空と雲。本当に、ここは空の上の大地なんだ」
「ほんとっス。まさかうちも、EAMDやローレットの仕事で空の上に来ることになるなんて……」
 キャナルも、感心したようにそういう。ローレットの冒険のステージは、ついにここまでやってきたのか、といった所だ。
『それで、この後はどこを探すんだ?』
 虚が言うのへ、焔が頷く。
「うん。この先に、大きな建物があるんだよね。朽ちててわからないけど、結構、豪華な……。
 お城とか、教会なのかな?」
「そっか、結構大きな町だものね。そういうのがあっても違和感ないよねー」
 セララがうんうんと頷く。
「教会だとしたら、天義みたいな街で、お城だったら幻想みたいな街だったのかな?
 どうして空の上に、そんな場所があるんだろう。ここにいた人たちはどうしたんだろう……」
 むむむ、と焔が唸った。答えは出ない。が、その答えを探すために、今一同はこの空の上の大地を進んでいるのだ。
「おお、そうだ、ガスパー殿」
 百合子が言う。
「ここまでにも何度か見かけたが、ゴーレムの直接調査は一体迄、としてほしい」
「え」
 ガスパーが声をあげた。
「な。なぜ……なぜ!?」
 ぎゃあ、と悲鳴をあげそうなガスパーを、百合子は制した。
「気持ちは分かる。吾も、目の前に屈強な美少女の群れがおり……その中から一人としか戦えぬ、と言われたら、『なんでそんな酷い事を』と思うであろう。
 が、これも貴殿の、そして吾らの安全を守るためのご理解願いたい」
「ごおれむの戦闘能力は、未知数ですわ」
 玉兎が言った。
「正直、複数との戦闘は避けたいのです。
 わたくしたち自身も、これまで古代獣と何度か戦っていますから、それなりに損耗はしております。
 万全の状態ならともかく……と考えれば、今回の調査では一体まで、としていただきたいのです」
「むむ……確かにそのとおりであるな……」
 ガスパーが肩を落とした。
「仕方あるまい。まだまだ調査の機会はあろう。
 今回は君たちの指示にしっかりとしたがうぞ。未知の地では、専門家の意見が一番だ」
 自身も専門家であるが故に、探検のスペシャリストであるイレギュラーズ達の意見が正しい事を理解してるのだろう。ガスパーは素直に従った。
「よーし、それじゃあ、教会に行く前に、ちゃんと休んでおかなきゃね!」
 セララが言うのへ、焔も頷いた。
「うん!
 あ、ジェックちゃん、描き終わったらそれ見せて見せて!」
「え……うん、ま、いいよ」
 ジェックは少しだけ、恥ずかし気に頷いた。
 
 さて、休憩を終えて、教会跡地へ。もちろん、教会跡地と命名したが、そこが教会かどうかは未だわからない。庭園のような場所には、大きなゴーレムの残骸が一つ、転がっている。道中にもいくつか見かけたが、この様に万全のように見える状態で眠っているのは稀だ。
 一行は、教会内部にへと入る。落ちた天井から空が見えた。がれきにまみれた床を進むと、礼拝堂用能な場所にたどり着く。
「……だが、何か荘厳な……神秘的なものを描こうとした痕跡はあるな」
 稔が言う。壁には絵画のような跡がある。風化と古代獣が暴れたせいだろう、ところどころ剥げ落ちており、実態像は分からない。
「強いて言うなら、天から、何かが降臨しているような図……?」
 ジェックが、絵画を眺めながら言う。確かに、中央に何かがおり、それは天から何かがおりてくるかのような、そのような描写に感じられた。
「もしかしたら、このアーカーシュを描いたかもしれないね」
 イグナートが言う。
「なるほど……地上から見た、この島、って言う事?
 じゃあ、この島、は……地上に、何か……してる?」
 アクアが小首をかしげた。
「或いは、地上から、島を見上げているのかもしれませんわね」
 玉兎が言う。
「もしかしたら、神がこの島に住んでいる、と地上の人は思ったのかもしれない……とか。それを現す絵画とか。全体像が見えませんから、なんとも言えませんけれど」
「ふぅむ、絵画のことは詳しくないので何とも言えないが、これは修復は出来んのか?」
 百合子が言うのへ、稔が頭を振った。
「絵画修復は、元のイラストがわかってこそだ。大元がわからないのにそれをやっては、新たに絵を描くのと変わりはない」
「って事は、まだ何もわからない……って事かぁ」
 焔がしゅん、とするのへ、キャナルは頭を振った。
「いえいえ、こうやって絵画を作れるほどの文明を持った生命体がここにいた……と言うことが分かったんスよ」
 そう言って笑う。
「すぐには全部は分からないっス。こうやって、一歩一歩、探り探り。これが調査のだいご味っスよ!」
「お、リルガールもわかってきたか!」
 そう言ってアリディア が笑うのへ、キャナルも笑った。
「そりゃね、面子で一番の若輩とはいえウチもEAMDの端くれスからね!」
「そっか、一歩一歩、だね! ひとまずそういうことが分かっただけでも、大きな一歩なんだ!」 
 セララがうんうん、と頷く。
「ひとまずこんな所かな?」
 ガスパーがこほん、と咳払い。
「それで……メインディッシュというか……庭園のゴーレムを調べたいのだが……!?」
 ワクワクとした様子を隠そうともせず、ガスパーが言うのへ、
「うむ。一つだけであるぞ? 所長殿?」
 百合子が言う。ガスパーはこくこくと頷いた。
「わかっておる! では、百合子殿! 早速ウマ……いや、ワイバーンをゴーレムの下へ!」
 とせかすので、百合子はワイバーンに命じて移動を開始した。ゆっくりとそうするのへ、仲間達もついていく。
 庭園の真ん中、なにか神聖なオブジェがあったであろう場所に、そのゴーレムは横たわっていた。比較的傷もないようだが、油断はできない。
「ガスパー、これどうやって調べるの?」
 イグナートが尋ねるのへ、ガスパーは頷いた。
「うむ! まずは外観……それから分解したいな!
 機械構造は、魔進系のゴーレムと同じだろうから……動力、頭脳の辺りを重点的に見たい!」
「となると、頭と心臓であるか」
 百合子が頷く。ゆっくりと近づくのへ、ガスパーはワイバーンから飛び降りた。百合子もおり角を確認してから、一緒に近づく。
「おお、やはり。例の、アーカーシュ発見のきっかけとなったというゴーレム、あれと同じタイプだ」
 ガスパーはこほん、と咳払い。
「すまんが、何かあったらよろしく頼むぞ」
 その言葉に、イレギュラーズ達は身構えた。ガスパーがゆっくりと近づく。つるりとした装甲を確認すると、メンテナンスハッチのようなものが巧妙に隠されていることに気づいた。
「開くのであるか?」
 百合子が尋ねるのへ、ガスパーが頷く。
「うむ、恐らく……」
 そう言って手を伸ばした刹那――ぎゅい、と音がして、ゴーレムの目が輝いた。それに即座に反応したのは、当然近くにいた百合子だ。
「いかん!」
 百合子は声をあげると、ガスパーの首根っこを掴んだ。そのままワイバーンの背中に放り投げると、自身も飛び乗ってワイバーンの腹をける。ワイバーンは、調教されたとおりに緊急上昇――その後を追って、赤い光線がゴーレムの眼から放たれる! 熱線だ! 強烈な熱が、空気を焼いて赤熱したように見せた。
「緊急……起動……。
 戦闘……機動……開始……」
 ぶぅん、と不気味な音が鳴り響き、ゴーレムが立ち上がる。
「うおっ、起動しよったのか!?」
 ガスパーが叫ぶ。百合子はワイバーンに命じ、ゆっくりと着陸した。
「あの熱線(ビーム)……ただものではないな!」
 百合子が声をあげる――セララが飛び出した!
「ごめん、全力で行くよ!」
 宣言通り、全力で叩き込まれた聖剣! だが、ゴーレムがかざしたその手が、セララの一撃を受け止めて見せた!
「――硬い!」
 セララが叫ぶ。どうやら敵の装甲は相当厚いようだ。モカが飛び込み、そのケリの一撃を見舞うが、ゴーレムはそれをなんという事のない表情で受け止めて見せる。
「確かに、だ! なら、私は搦め手でいくよ!」
 モカの鋭い蹴りの一撃が、ゴーレムの関節を狙う。ばぎり、と音を立てて、比較的柔らかい所にそれが突き刺さった。ゴーレムが、僅かに姿勢を崩す。だが、反撃とばかりに、そのレンズに熱量をためる。熱線だ!
「ジェック君、目を潰せ! 焔君は炎で、アクア君は影で、装甲の隙間を狙え!」
 稔が叫ぶのへ、皆は頷いた。
「そうだね、その眼(レンズ)……まずは破壊させてもらうよ」
 ジェックは狙撃銃の照準を覗く。ほんのわずかの時間で狙いを定めると、引き金を引いた。放たれた銃弾は、ただ真っすぐにゴーレムのレンズを狙う。あざ笑う死神の如きその銃撃、レンズに突き刺さった銃弾が、放たれたゴーレムの熱線の機動を変え、あらぬ方向へと放たれた。その放たれた熱に負けじと、焔は自身の身体に炎を纏わせた。
「どれだけ装甲が分厚くても、それ語と焼いちゃえば問題なし、だよね!」
 焔がその手にした武器を振るう。炎は斬撃の形となって、ゴーレムの装甲を焼き切った! ぢゅん、と音を立てて、鉄が熱に負けてとける音がする。切り裂かれた形に開いた傷口から、ゴーレムの内部構造が見える。
「突破口! 開いたよ!」
「じゃあ、そこから、影を送る……!」
 アクアの影から伸びた影の手が、その傷口からゴーレムの体内へと侵入した。内部の歯車、それを掴んで離さないように、影が動くと、ゴーレムの動きがわずかに鈍る!
「おっけー! 後はそのあいた弱点、撃たせてもらうっスよ!」
 キャナルが手にした銃をポイント、一気にトリガを引き絞った! 放たれた光線が、傷口から内部を抉る! 如何に強固な装甲といえど、内部はさほど硬くはあるまい! 弱点を狙われたゴーレムが、強烈な打撃に身体を震わせた!
「……って、内部にダメージ与えすぎるのもよくないっスか!? 所長!?」
 キャナルが叫ぶ。
「コアを狙おう、と思ったけど……避けた方がいい?」
 照準を覗きながらジェックが尋ねるのへ、ガスパーは頭を振った。
「安全最優先!」
「了解」
「了解っス!」
 ジェックとキャナル、二人が銃弾をぶち込む! 内部で暴れる鉄の弾が、ゴーレムの腹の中を激しくかき乱いした!
「じゃあもう一発! セララスペシャルだぁっ!」
 セララが聖剣を携え、跳躍! 今度は装甲に阻まれはしない! ゴーレムがようやく掲げた右腕、その付け根の弱い部分を狙って、セララが聖剣を鋭く振りはらう! 斬! 閃光が走り、ゴーレムの右腕が切り裂かれ、地に落下した!
「倒しますわ! イグナート、続いて!」
「リョウカイ!」
 玉兎が声をあげるのへ、イグナートが続く。接近した玉兎が、足元へ向けて術式を凝縮!
「彼の武人もたまらず泣きだすという泣き所、ゴーレムの貴方はどうかしら?」
 ゴーレムの脚部、すねのあたりに向けて、その凝縮した魔力を零距離でぶち込む! その衝撃に、ゴーレムがたまらず姿勢を崩し――、
「鉄の塊だってなら、倒れたらオキアガレナイよね!」
 上空から迫るイグナートの拳が、ゴーレムの顔面に突き刺さった! 強烈な二人の一撃に、ゴーレムはたまらず仰向けにぶっ倒れる! ずん、と音が響き、辺りに土煙が舞った! 同時――上空よりワイバーンと共に迫る、百合子の姿が!
「ガスパー殿、あの空いた穴をぶち抜けばよい、であるな?」
「うむ、やってしまえい!」
 ガスパーの声に、百合子はワイバーンの背を蹴り上げて跳躍! さらに速度を増し、拳を構え――、
「白百合清楚殺戮拳――梅花散零」
 それは、零れ落ちる梅花のごとし。振り下ろされた拳は舞い落ちる花弁。拳は倒れたゴーレムの腹を貫き、そのまま大地を抉らんがごとく衝撃を与えた!
 轟! 大地が泣く! この時、アーカーシュの高度がちょっと落ちたとか落ちなかったとか。冗句はさておき、ゴーレムはその内部機関を激しくスパークさせ、再び大地にその四肢をさらけ出した。じじ、と眼が点滅し、すぐに消えた。
「へぇ、鮮やかなもんだ」
 アリディアが感心した様子で声をあげる。
「そうねぇ、所長にも怪我はないし……みんなに護衛を依頼したのは正解だったわね」
 楽しげに笑うノバリシア。ゴーレムの討伐は、ここに完了したのであった。

●そしてさらなる冒険へ
「いやぁ、大量大量!」
 すっかりバラバラに解体されたゴーレムの前で、実に楽し気に声をあげるガスパー。その鮮やかな手際の良さに、イレギュラーズ達も感心半分、呆れ半分と言った所か。
「随分とスムーズにカイタイしたんだね。やっぱり経験?」
 イグナートが尋ねるのへ、ガスパーは頷いた。
「それもあるが、元に戻さんでいいと考えると、多少は無茶をしても良いからな! わーっはっはっは!」
 つまり、再生を度外視してとにかくバラバラにしたらしい。
「いや、それもどうなんっスか、所長……?」
 キャナルが呆れるのへ、
「ま、データはちゃんととってあるから、大丈夫だよ」
 アリディアがケタケタと笑う。
「それより、これを見てくれ。恐らくゴーレムの思考ユニットの一部だ。頭脳部の一部だよ」
 放り投げたそれを、百合子が受け取る。
「未知のユニットだ。名前を付けてよいぞ?」
「吾がであるか?」
「面倒ならほかの奴に命名させても構わんよ。
 さておき、ゴーレムだがな。恐らく復元が可能だ」
「作り直せるの?」
 セララが尋ねるのへ、ガスパーが頷く。
「うむ、ある程度のパーツは、鉄帝でも調達できるだろう。無理そうなのは、アーカーシュに放棄されているゴーレムから回収する必要があるが……うまく復元できれば、村での労働力にできるだろうな!」
「まぁ、あのゴーレムが畑仕事を?」
 玉兎が目を丸くして、くすくすと笑った。
「なんだか牧歌的で、面白いですわね」
「うん! それこそ、漫画とかアニメみたいだよ!」
 セララも笑った。
「ってなると、今後の探索の、とりあえずの目標が見えてきたかな」
 焔が言った。
「ゴーレムの材料を集めたり、未知の場所を探索したり、地上から物資を届けたり、になるね」
『ああ! 何せこの島の冒険ははじまったばかりだからな!』
 焔の言葉に、虚が頷く。
「ふふ、楽しみだね。ワクワクしてくる」
 モカが笑った。
「さて。それじゃあ、今日の調査はこれくらいにしようか」
 ジェックが言った。
「今日の所は充分探索できたよね。絵も色々かけた。いいお土産になると思う」
 調査は充分な成果をあげたといっていいだろう。まだまだ分からないことだらけでも、この一歩は偉大な一歩になるはずだ。
 飛空島のファーストステップ。
 イレギュラーズ達は、それを今、確かに踏み出したのだ。
「空が、近い……。
 新鮮で、気持ちいい、の」
 アクアが呟くと、空は優しい風を送って、一同を歓迎してくれた。
 これから始まる冒険の成功を、祈願するような優しさだった。

成否

成功

MVP

咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 ここから、アーカーシュの探索が始まります――!

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