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シナリオ詳細

ローレット航海便 ネオフロンティア編

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●帆をはり錨をあげよ! みんながまっている!
 海洋に点在するいくつもの島々が見えるだろうか。
 このように陸地の離れたネオ・フロンティア海洋王国の貿易は船によって支えられている。
「船長。やっぱりこの商売はムリですぜ」
 地図を前にぐでーんと背もたれによりかかるは名も無き水夫。
「そう思う? 実はワシもそう思ってる」
 地図を挟んだ反対側。テーブルに両手で頬杖をついているのは名も無き船長である。
 彼らの地図には赤いラインが引かれ、それぞれ海洋王国首都の港から始まり二つに別れ、東西にぐにゃっと移動したのちそれぞれ小島へと至っていた。
 それだけならよいものを、途中に大きなバツ印。刺さったピンにはドクロの飾りがついていた。
「船長、端から確認してみましょうや」
 首都の港を小指で叩く無名水夫。
「うちらの船は?」
「小舟が二隻」
 同時に振り向けば、なんだかぼろっちい小舟が港に二隻停泊していた。
 見張り番代行のおっさんも『これは流石に盗まねえだろ』と堂々とビールをがぶ飲みする始末である。
「乗組員は」
「いない」
 同時にテーブルの下をのぞき見る二人。
 二人は片足に包帯をぐるっぐるに巻いて、松葉杖をテーブルに立てかけていた。
「お金は?」
「これだけ」
 テーブルの上に置いたコイン袋。
 直前に辞めていった水夫たちの解雇手当で吹っ飛んだせいで随分軽かった。革袋が可哀想にしんなりしている。
「……無理じゃないっすかねー!」
「まーまーまー!」
 両手を翳して立ち上がる無名水夫と無名船長。足の痛みにうずくまる。
「この商売が成功すれば持ち直せる」
「船は、人員は」
「ぼろい小舟でも最低限やれる。人員は……最近話題の『何でも屋ギルド』に頼もう!」
 カフェの壁を振り向く。
 そこには新聞が掲示されていた。
 『ギルド・ローレット。海洋王国に本格進出!』

●船があるなら持って行こう!
「早速海洋王国から依頼が舞い込んだわ。今すぐ出られるのは……ん、丁度八人。ぴったりね」
 海洋都市の港町。
 オシャレなカフェラウンジにて、『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)はイレギュラーズを集めていた。
「任務は簡単。港で特定の商品を売って、必要な物資を買い付け、二つの船に分かれて積み荷を運び、それぞれの目的地へと届けること」
 船の受け取りキーを二つテーブルに置いて、プルーはウィンクをした。
「海路の途中には海賊も出るらしいけれど、多少叩けば退散していくはずよ。こうした仕事をコツコツ成功させていけば、ローレットの海洋王国での立場もよくなっていく筈。ひいては自らのため。しっかり、おねがいね」

GMコメント

 このシナリオは【商売パート】と【海戦パート】の二パートに分かれています。
 それぞれに分けて相談・プレイングを進めていきましょう。

【商売パート】
 海洋都市の港で『物資の買い付け』と『商品の売りつけ』を行ないましょう。
 両方ひとりでやろうとするとプレイングのリソース不足が危ぶまれるので、手分けしてどっちかを、そして一部の商品にスポットをあてて行なうことでよりよい結果が出せるでしょう。

●買い付けリスト
・航海中の食料
・酒(届ける物資)
・日用雑貨(届ける物資)
・冷凍食品(魚)
・ソーセージ(保存食用)

●売りつけリスト
・高級茶葉(貴族ばかうけ)
・マーマイト(くっそまずいペースト)
・蜂蜜(なんにでも使えるあまーいシロップ)
・リムペットマイン人形(海洋のレジェンド水夫をモチーフにした人形。壁にくっついて爆ぜる。お風呂で遊ぼう)
・ころころパンちゃん(相手に向かって転がっていく手のひらサイズの爆弾。海洋のボマーにばかけ)

【海戦パート】
 東チームと西チームに分かれて船を出します。
 それぞれの海路に海賊が出てきますので、それらと戦うプレイングを用意しておきましょう。
 このとき船の操縦技術や航海術があると海賊の先手をとることができ、よい船を持っていると各種ステータスに大きなボーナスがつきます。これらのボーナスを有効にしたい場合は船の持ち主を操縦者にしておいてください。

 海賊の規模はそれぞれ2~4人。
 重火器などで攻撃をしかけ、飛行によってのりうつるというものです。
 こちらがある程度攻撃を加えると退散していくため逆略奪のようなことは(よほどのことじゃないと)できないと考えて置いてください、迎撃オンリーでいきましょう。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • ローレット航海便 ネオフロンティア編完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年08月09日 22時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)
穢翼の死神
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
清水 洸汰(p3p000845)
理想のにーちゃん
キュウビ・M・トモエ(p3p001434)
超病弱少女
ブーケ ガルニ(p3p002361)
兎身創痍
ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)
片翼の守護者
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
アベリア・クォーツ・バルツァーレク(p3p004937)
願いの先

リプレイ

●海の国は潮風を散歩する
 老若男女入り乱れの喧噪は、海洋港町の日常だ。
 潮の香りと海鳥の声は、物売りの威勢良いうたい文句にかすれてゆく。
 無限とも思えるほど広大な海は、彼らにとってもはや当たり前すぎる光景なのだ。ゆえに、外から来た者を見分けるのは簡単だ。
「おーっ、海の広さが段違いだなー!」
 船の手すりから身を乗り出して、『雲水不住』清水 洸汰(p3p000845)は帽子のつばをあげる。
 いま乗っているのは借りた船だ。今にも沈みそうなボロ船……と言われてはいるが、洸汰の冒険心をかき立てるに十分なほど立派な船である。
 大海原にこぎ出したとて、沈むことはないだろう。
 『神話殺しの御伽噺』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)も似たような気持ちなのか、髪が波と潮風にあわせて大きく波打っている。
 洸汰はふと、船の持ち主であり依頼人でもある商人たちを想った。
「船長さん達、マジで困ってるのなー。そういうのは、オレが見逃しやしないぜ!」
「小さな悩みの解決からコツコツと、ね。何事も一歩ずつ……」
 『超病弱少女』キュウビ・M・トモエ(p3p001434)が靡く髪を押さえ、次に口を押さえた。
「うっきもちわる――」
 仰向けにぶっ倒れたトモエ。
「うわー! トモエが死んだー! えーせーへー!」
 エクスマリアの髪タンカで運ばれていくトモエ。
 船の上で腕組みをして、『紅獣』ルナール・グルナディエ(p3p002562)はふと空を見上げた。
「うむ、商売の手伝いとは新鮮だなぁ。まぁ、俺を含めたイレギュラーズ面々が手伝うんだし……大丈夫か」

「ああ、簡単じゃない」
 『サフィールの瞳』リア・クォーツ(p3p004937)はフリーになった船を使って港のそばをくるくると回っていた。
 依頼人の水夫に聞いたというが、ちょっと聞いただけで乗りこなせるほど船舶の操作はシンプルじゃない。リアに才能があったのだろう。
「あたしの手にかかればボロ船だって豪華客船もびっくりよ! ちょっと楽しくなってきたかも!」
 最初はどうも乗り気じゃなかったリアも、船が自由に動かせるとなって気分が乗ってきたらしい。
「あたしの事はキャプテン・クォーツと呼びなさい!」
「いえっさーキャプテン・クォーツ♪」
 グーにした手を突き上げる『お節介焼き』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)。
 船がはしると風が吹き抜け、馬車とはまた違う快感があるものだ。
「良いわねこういうお仕事! 私ね、港町出身で交易商人さんをいっぱい見て育ったから、ちょっと憧れてたのだわ♪」
 帆の部分に腰掛けるようにのった『穢れた翼』ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)。
 独特な様式をした翼を動かし、流れる潮風に晒している。
「買い付けとか売り付けとか何だか商人みたいだね」
『そういう依頼もあるだろう』
「迷惑かけない様に頑張らないとね』
 ティアは魂と会話をしながら、届きそうな雲に手を伸ばした。
 船は港をぐるっと周り、市場のある場所へと静かにつける。
 橋にぶつかるぱかんという音は、船の中身が空っぽなことを示すようでもの悲しい。
「小さな襤褸船、船長さんも水夫さんも足をやってもうてて、只でさえ素寒貧なんに俺達雇って……しょっぱいわぁ」
 本当に空っぽの倉庫を見て、『兎身創痍』ブーケ ガルニ(p3p002361)は眉を下げた。
 依頼主にとってはこれもひとときのホバリング。されと起死回生の一手である。
「ちゃあんと、お仕事成功させてウマい酒飲ましてやらんとね」
 ブーケは腰に手を当てて、いまいちど胸を張ってみた。

●お金は人で回っている
 船の道のりは長い。
 それも二つの船で東西の島や港へゆくとなれば、相応の水や食料や、気持ちを和らげるあれこれが必要になるもの。もっと言えば、海洋の港で売られる珍しいものを家族の土産に買っていきたい気持ちだって生まれるだろう。
 そのうえで、ものを買ってよそで売るという物流産業に携わることになる。
「荷物持ちとかぐらいはできそうかな」
『転けるなよ?』
「飛ぶからいいもん」
 そんなわけで、『荷物持ち』は買い付け作業の中でも結構大事なお仕事になったりする。
 ティアは船からおろした荷車を引いて、器用にぱたぱたと地面すれすれの高さを飛んでいる。
 というのも、港は海鳥が多く船用のロープがわたされたり家々の間に洗濯物が干してあったり露天の天幕が並んでいたりと、高くを飛行していくにはちょっぴり不便そうだったからだ。
 荷車には届け先に要求されている酒や日用雑貨。ジャガイモや冷凍された魚なんかが大量に積まれていた。
 積みきれないものや軽いものはリアが紙袋にいれて抱えている。
「ふーん? 華蓮は結構詳しいのね? 頼りにさせてもらうわ」
 リアが話しているのは商売のおはなしである。
 華蓮がいうには、こういう港は様々な人が通りものの価値が非常に変動しやすいのだそうだ。
 そのため商人の中には固定値で価格を設定せず、あえて高い値段を最初に要求するのが常識……ということもあるらしい。
「ぼったくってあくどく儲けようって人もゼロじゃないけど……互いに適正価格を見つけようとする商人の知恵みたいなものでもあるのだわ」
 華蓮は持ち前の商業知識と商人的センスで適正価格を見抜き、言葉巧みに値段をつり上げようとする商人相手には同じ言葉で迎撃した。
 コインは武器にも食料にも子供のお土産にもなる。
 それを守り武器にもできる商人は、兵士とおなじだけ価値ある力をもっているのだ。
「ふぅん……相場に対してお得? 疑わしいのだわ? 不当に安く買おうって話じゃないわ、適正価格で買いたいだけなのだわ」
 と、こんな調子である。
 ラサバザールなんかでは泣かすほど値切るのが粋みたいな噂話も聞くが、海洋の穏やかな風土ではむしろウィンウィンが好まれるのかもしれない。
 一旦適正価格で買ってみると、『毎度! 他にどんな商品を探してるんだい?』と会話が流れ、安く買える店を紹介してくれたりする。何事もバランスなのだろう。
 一方で、ブーケは別の形で買い付けをスムーズに進めていた。
「(ぼったくるような商人も、道草売りつけてくるような商人もおるけど……それでもいいものを売って客に喜ばれたいってのは商人の性やもの)」
 と、商人を褒めたり小気味よく乗せたりして日用雑貨の買い付けを進めていた。
 ときそばの前半がごとし、みたいな雑な説明では味気ないので一部をご紹介してみよう。
「トイレットペーパーがこんなに? 運ぶの大変だったやろ。紙も綺麗やねー!」
 とまあミエミエではあるが、口達者でないぶん熱意でせめる姿勢だ。
 なにより魅力的なのはパッと花が咲いたような笑顔で、彼が笑うたび商人がちょっとずつオマケしていき、思ったよりもずっと安く買い付けが済みそうだった。
 もっと言うと、彼があまりにへろへろな身体してるせいで『お使いできて偉いねえ』みたいな、はじめてのおつかいばりの褒め方をされていた。あと食べ物をやたらくれた。
「皆親切やなー」
 あくどい心を持たなければ、人は案外親切にしてくれるものなのかもしれない。

 いっぽーそのころ売りつけチーム。
「やぁ、そこの綺麗なお嬢さん、高級な茶葉は如何かな? 午後のお茶やティーパーティーにぴったりの高級茶葉は……」
 ルナールが甘い言葉で港の人々を呼び止めては、茶葉を少しずつ売っていた。
 元々高級な品で、一箱売れただけでも大きな利益が出る。
 そんなわけで、ルナールはひとつひとつピンポイントに売っていく作戦に出たようだ。
「友人や知り合いを招いてティーパーティーを開けば自慢できる一品。それにプレゼントにも最適だ、素敵なプレゼント用にまとめ買いはどうかな?」
 『あっちで売ってる蜂蜜を入れればもっとコクがでて上手いので一緒に購入がお勧めだ』なんていう追加宣伝もつけていく。
 勿論声をかけて即売れるということもない。
 なんでかといえば港の市場じゃ声をかけて高級品を直で売りつけるキャッチセールスみたいな人が沢山いて、慣れてると話しかけたそばから逃げることもあるからだ。
 ゆえに根気。
 あえて変な言い方するならナンパと一緒で、めげずに数をこなせる者が勝つ。
 その一方で蜂蜜を売っていたトモエは、安く沢山とにかく大勢の人に手に取らせる作戦に出た。
「たかが蜂蜜と侮るなかれ。古来より蜂蜜は万能薬として扱われてきたものです。海に出る皆さんのための栄養補給にもオススメですよ」
 蜂蜜を一瓶手に取り、木箱の上で高く掲げて演説する。
 語り出したトモエの調子たるや立て板に水。
 特定の人の興味にヒットしそうなワードを小刻みに挟んでは声をあげ、人を集め、集まったひとを見た人を吸い寄せ、あれよあれよと人だかりを作っていく。
 勿論他の商人だって黙っては居ない。お互いの客を声と言葉と立ち振る舞いで奪い合うレイドバトルだ。
 かくしてトモエは在庫を売り切り、はけていく人の波と空っぽの木箱を前に、口を押さえた。
「大量の人を相手にしてたら人酔……うっ」
「うわー! トモエがまた死んだー!」
 仰向けに倒れるトモエ。御神輿スタイルで運ばれていくトモエ。

 商売の基本というほどでもないが、物品に価値をつけることを『売る』と表現するならば、誰をターゲットにするかは重要だ。
 例えばくっそまずいペーストのマーマイト。
 子供は絶対買わないし、子供の多い家庭でも嫌な顔をされるだろう。
 そこでエクスマリアは逆に、高齢者を中心にした販売戦略を組み立てた。
 おじいちゃん的な人が喜びそうな歌をうたい、興味を持った人々を集めていく。ここまではトモエと同じだが、手に下のはマーマイト。そして推すのは栄養価。
 実際くそまずいだけあって栄養価は半端なく高く保存性も高い。時代によりけりだが高齢者好みのアイテムかもしれない。
 エクスマリアの幼げな容姿からの上目遣いがどうやら刺さったらしく、売り上げもいい具合だ。スムーズな売りつけが出来たといえるだろう。強いて言うなら性的魅力やそれに伴う誘惑がターゲットと噛み合わず邪魔になるのであえて外したくらいである。
 逆に、子供だけをターゲットにしたのが洸汰である。
「さあさあ、坊っちゃんも嬢ちゃんも、保護者さんも諸々纏めて、寄ってらっしゃい見てらっしゃい! リムペットマイン人形だ!」
 人によっては軽く引くようなできばえの子供向け玩具、リムペットマイン人形。しかし対象を子供に絞ったなら、あとはノリと勢いと、保護者の納得さえあればいい。
 洸汰は持ち前の人当たりの良さや声の大きさ(影響の大きさの意味。声量の意味もちょっとはある)で人を集め、爆発するさまを見せて一緒に楽しむというやり方で子供たちのハートを掴んだ。
 元々の個数も少なかったがゆえか、リムペットマイン人形はすっかり売り切れることになったのだった。

●海賊退治も商人のつとめ
 急にガチな話をすると、海賊というもんは文明が進んでも普通にいるもんで、小学生がスマホをいじり戦場をラジコン飛行機が無限旋回する時代にあってもいたりする。仕事はシンプルで、武装した人たちが船で商船や豪華な個人船を取り囲み武力制圧の末金品を奪ったり身代金をとったり、大量の商品物資を押さえて『物質』交渉をしたりする。
 ここネオフロンティア海洋王国周辺海域にもきっちり海賊はいるが、ノリがちょっと違うらしい。
「ははは! このキャプテン・クォーツの名を心に刻み付け、海の底へ沈み逝けぇ!!」
 ものどもかかれー! とばかりに銀色の剣を突き上げるリア。
 相手の海賊船と優位を奪い合うべく船を小刻みに操作し、併走状態に持ち込む。ごりごりと打ち合う船体。
「船での戦闘も多いよね」
『海洋の依頼は海での依頼が多いからな』
 ティアは小さく息をつき、マストの位置まで飛び上がると両手の上に怨念を集め始めた。
 海の底よりわき上がる死者の念が小さな竜巻のように固まり、細く長く槍の様相をなす。
 空をはらうようにしたティアの動きに合わせ、死霊弓は海賊船へと放たれた。
 対抗するように大砲や機関銃の射撃が浴びせられるが……。
「迎撃ー!」
「アイアイサー!」
 ブーケがどこか楽しそうに飛びはね、砲弾の雨を踊るように回避していく。
 弾幕に紛れて飛行し船へと飛び移ってきた海賊の剣。それを盾で引き受けると、備え付けのレバーを引いて盾に仕込まれた火器装備を発射していく。
 はねのけたところに華蓮が加わり、叩き付けるような焔式で炎に包んでいく。
 あちあちと身体を叩きながら戻っていく海賊。
「キャプテン、奴らただの商人じゃねえ」
「ボロ船乗ってるからチョロいと思ったが、死んじゃわりにあわねえ。ずらかるぜ!」
 急いで離れる船にマジックミサイルをばしばしうって追い払う華蓮。
「これでもう安全なのだわ!」
「キャプテン・クォーツの勝利やー!」
「ははははは!」
 すっかり上機嫌になったリアは、舵をきって笑った。
 気持ちの良い風をうけ、目を瞑るティア。
「海賊も少なくて、楽だったね」
『もう一方はうまくやっているかな?』

 エクスマリアのまとまった髪のハンマーが海賊をゴルフボールよろしく吹っ飛ばした。
 ひゃーんと言って放物線を描き、海へ落ちる海賊。
 まるで力を誇示するかのように、髪でつくった両腕でムンとまっするぽーずをとってみせるエクスマリア。
 近づいてくる船に向けてディスペアー・ブルーを撃ちまくった。
「風向きがいいな……」
 一方でルナールは自前の小型船を巧みに操作し、海賊船と優位を奪い合っている。
 船の勝負で軍配があがったのはルナールの方だった。
 鋭く突っ込んで船体をこすりつけようと狙った海賊船の動きを読んで、船側面へ回り込み相手の船体を大きく横揺れさせることに成功したのだ。
 よろめく海賊たち。
「やっぱり海洋ともなるとそういう海賊とかが出るのね。キャプテンルナールの舟はまだ綺麗だからわかるけど……節操のない」
 トモエはここぞとばかりに杖を振り上げ、ドゥームウィスパーを発動させた。
 海賊たちを襲う不吉なささやき。大きくよろめいた所に当てたものだから、エクスマリアのディスペアー・ブルーと相まって海賊たちは大混乱に陥った。
 狙いをおかしくして船の甲板に落下する海賊。
 洸汰はそれをとらえると、ダッシュで距離を詰めた。
「わりーけど、無賃乗船(タダのり)はおことわりだぜ!」
 起き上がったばかりの海賊に豪快なバットスイング。
 海賊は野球ボールよろしく吹き飛び、放物線を描いて海へ落ちていった。
 おー、と額に手を翳して唸る洸汰とエクスマリア。
 ルナールは船の安全と海賊の撃退を確認すると、小さく頷いて本来の進路へと戻っていった。
「あとは荷物を島へ届けるだけだな」
「そうね。あっ、舟に揺られながら攻撃魔法とか撃ってたら船酔――」
 口を押さえて仰向けに倒れるトモエ。
「うわー! トモエがまた死んだー!」

 かくして、イレギュラーズたちはきっちりと船の商売を終えた。
 たんまりできた稼ぎは足を折ってじり貧だった依頼主へ、その一部はイレギュラーズたちへと渡される。
 またひとつ、この世界に価値が巡ったのだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。商売パートにとっても熱が入っていらっしゃったので、リプレイも商売パートをちょっぴり太めにお送りしております。
 皆さんの買い物風景や物売り風景、とっても素敵でしたね。
 またのお越しをお待ちしております。

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