PandoraPartyProject

シナリオ詳細

春の星歌会

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●星の唄の一族
 『正義』。ネクストにおける天義。
 この国には『星の一族』と呼ばれる貴族の一族がある。それは貴族エストレージャ……秀でた能力で星に祈りを捧げる星祈りの一族である。秀でた能力は様々……時には絵描き、時には数式、時にはそう……少女シュテルン・エストレージャのように歌で祈りを捧げる者もいる。
「シュテルン、星歌会の準備は出来ているのか?」
 エストレージャの屋敷、その自室で準備するシュテルンへ部屋の外から声をかけているのは、その兄タハト・エストレージャ。
「大丈夫、です。今日はたくさん歌えるように……頑張り、ます!」
 タハトの声にそう応える少女こそシュテルンである。彼女は歌に秀でている代わりか、その言葉は少し不自由そうにしていた。
「シュテルンなら大丈夫よ、お兄様は心配性だわ」
 そこへ現れたのはもう一人のシュテルン……彼女と双子のウィソン・エストレージャだ。
「俺も何もシュテルンがヘマをするとは思っていない。ただ……シュテルンの歌は一族の誇りだ、何者かに狙われて拐われでもしたら一族にとってこの上ない屈辱になるだろう、それだけは避けねばなるまい」
「まぁ……そうなればお祖父様も黙ってはいないと思うけれど!」
「まぁな」
 エストレージャの絶対権力者であるバーロンを思えばどんな手を使ってでも孫を取り戻すべく働くことは容易である。正義でも孫思いで有名な公爵バーロン・エストレージャは過去にもそれを匂わせる行動を見せている。
 例えば孫の誰かが誘拐されれば金の力で全世界を探し回らせ、犯人を捕まえて見せしめに正義のとある広場でその首を晒し上げると言うバイオレンスさを見せある意味恐れを持たれている一族でもある。
「お祖父様の逆鱗に触れてはいけない……正義の民なら解りきっていることでは?」
「だと良いがな。まぁ、少し気になっただけだ」
 シュテルンの歌はその辺りの歌手が歌うものとは一線を引いたもの……何せ歌を聞いた者の望んだ未来の幻影を見ることが出来るのだから……。


「エストレージャ主催の歌唱会『星歌会』の警備のクエスト……」
 R.O.Oのクエスト一覧を見ていたとある特異運命座標はピコンと増えた依頼内容を読む。
 正義の貴族エストレージャ主催の歌唱会の警備。難易度はそこまででもないが……
「望んだ未来の幻影が映る歌かぁ……」
 その依頼には何ともそんな不思議な歌声について書かれていた。

NMコメント

 月熾です。
 二本目のクエストテイルはのんびり系、シリアスでもいけるでしょう。
 基本は個別描写になりますが、合わせでも可能かと思います。

●世界説明
 ネクスト『正義』でのお話になります。

●目標
 『星歌会』の警備
 歌を聞き望んだ未来の幻影を見る
何れかでも達成していれば成功となります。

●出来る事
 シュテルンの歌を聞いて「望んだ未来の幻影を見る」事が出来ます。
 それは悪いものでも、良いものでも。
 それがあなたの望む未来だと言うならば。

●NPC
 シュテルン・エストレージャ
 17歳。歌声に優れた少女。その代わり言葉が拙い素直な少女。

 ウィソン・エストレージャ
 17歳。シュテルンの双子の姉妹。シュテルンの歌の第一のファンだと自称している。

 タハト・エストレージャ
 22歳。シュテルン達の兄。数式の天才。口では悪く言いがちだがいつも姉妹の心配をしている。

※困った際は彼らと交流されるのも可能です。

●サンプルプレイング
 望んだ未来が見える幻影……本当にそんな唄を歌えるのだろうか?
 俺が望む未来は……一番の特異運命座標になって、平和な世の中になったら嫁さんもらって幸せに暮らすこと!
 なんだよ普通だって良いだろ? 普通にだって良いことはあるんだぜ!

 まさか本当に見れるなんて思ってなかったぜ……
 でもこれを叶えるためにはもっと努力しなきゃ……だよな!
 うおぉぉぉ!! 俺はいつか本当に強い特異運命座標になってやるぜ!!

  • 春の星歌会完了
  • NM名月熾
  • 種別クエストテイル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年04月07日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談10日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

セージ(p3x006136)
美城・誠二のアバター
譛晏?芽!動(p3x007193)
不明な接続エラーが発生しました
ヴィオラ(p3x008706)
月の裏側
メネロー(p3x010430)
レオナのアバター

リプレイ



「へぇー望んだ未来を幻覚とはいえ見せてくれるなんてすごいじゃない!」
 そう歌姫に関心の声を上げたのは『レオナのアバター』メネロー(p3x010430)。
 彼女自身も願いを聞き届けるランプの精のような存在であるからかシンパシーを感じたのだという。
「さって警備の依頼って聞いていたけど、これって私たちが聞いたりしても大丈夫な感じなんだよね?」
 それなら遠慮なく聞かせて貰うね! とメネローはステージ前に設置されたベンチへ腰掛ける。
「すっごく綺麗な歌声……凄く聞きほれちゃうねぇ……」
 メネローは聞き入る。そして……次第に意識がふわりふわり。

 真っ白な背景の中、メネローの目の前に立っているのは白いドレスに騎士のような鎧を組み合わせた衣装を着るレオナだった。
 メネローもといレオナには少しだけ物思いに耽る題材があるらしい。それはこれまで通り戦士として更に磨きをかけていくか、それとも……外に出たこの機会をキッカケに自分の可能性を試してみるか。
「……このような形で現れる、か」
 このアバターとて女性らしさの何かを掴みたい気持ちで出来上がったようなものだった。
 戦士としての道はレオナが父祖より導かれ、そして彼女の意志もこれからも揺れ動くことはないのだろう。だが、それでも。と夢は魅せてくる。

「……ははは」
(自分の花嫁姿なんてなんだか気恥ずかしいな、全く)
 また見えてきたのは慎ましやかに微笑むレオナのウェディングドレス姿。自分らしくない姿が、見たこともないような姿を見るのに耐えられず目を逸らしてしまう。
(煌びやかに祝われる花嫁としてなのか、慎ましやかな恋愛に興ずる女人としてなのか、そういった物へも興味がないとは言わん……が)
 こうも面と向かうとなかなか、である。
「……まー、それもどちらもってのは無理な話なんだけどねー」
 どっちもを合わせたのが先程のドレスに鎧と言った姿なのだろうがそれは宛ら姫騎士のような出で立ちだった。そうそう、かっこいい戦士と可愛い花嫁さんを同時にだなんてかなり難しいだろう。
 それでもこのサガに生まれたからか、時折可憐な夢を見てしまうのは。

 次に瞬きをしたときにはステージの前のベンチに戻ってきており、少女の曲が一曲終わっていたようだ。
「は〜あ! なるほどね」
 とにかく自分が悩んでいることは確認できた。
「そろそろ警備としての依頼である以上そういった事はしっかりとやらないとね!」
 メネローはベンチから立ち上がり周辺の警備へと務めることにした。





「警備?」
「警備ですって。まー私とロートスさんなら楽勝でしょう」
 【菫蓮】の二人。ロートスと呼ばれていた『不明な接続エラーが発生しました』譛晏?芽!動(p3x007193)と彼をそう呼んでいた『月の裏側』ヴィオラ(p3x008706)はタブレットを見て顔を見合わせる。
「いや、そういうのはいいから俺ぁハウスでぐーたら……」
「……なんですか、たまにはお外に出たっていいでしょ」
 譛晏?芽!動のあんまりな言葉にヴィオラが拗ねたように頬を膨らませると
「あっハイ。行く、行くからそんな露骨に残念そうな顔をするな」
 彼は慌てた様子を見せた。
「別に直接的な脅威があるわけでもなさそうですし? 武装を伴って歩いておけばいいでしょ」
 というわけでレイピアを腰につって歩きます。ついでですし、デートもしたいです! とヴィオラは楽しそうに提案した。
「小遣い稼ぎの仕事をデートと称していいのかは甚だ疑問だが……ユカリが楽しそうならそれでいいか」
 ヴィオラのことをユカリと呼ぶ譛晏?芽!動は仕方ないなと言いたげに、ヴィオラはやりました! と目に見えるように喜んでいた。

「それにしても未来を見せる歌ですか。幻影でしたっけ? 本物の未来だったら色々と大助かりなんだろうなあ」
「俺はユカリ以外の歌を聞くのは久々かもわからんね」
「流石に私もそんな不思議な効能を持つ歌は歌えませんし、レアですよ、レア! 折角だから二人で聞いてきましょ!」
「はいはい」
 ヴィオラにグイグイと引っ張られつつも隣のコイツも楽しそうだしまぁ……俺も少しばかりは楽しんでみるか。と譛晏?芽!動も満更でもなさそうな様子を見せつつ、二人揃ってステージ前に設置されていたベンチに座る。
(……嫌な未来だったら、見たくないかもだけど)
 それはポツリとヴィオラの脳裏に過る。良い未来だったなら良いけれど『望んだ未来』と言っている辺りがそういう事もあり得ることを少し想像させてしまうのだ。

 二曲目の旋律はバラードテイストな曲。二人が望む未来のカタチが各々見えてくる。
「あ……」
 ヴィオラは……ユカリは彼、ロートスの手を握り一緒に笑い合っている自分を見た。
「……」
 自分が望んでいること……彼女が望んでいることは……今隣りにいる貴方の名前を、普通に呼べる世界に一緒に帰ること。混沌という大地と、仮想空間という枷から開放されること。だと言った。
 それは彼にリアルのどんなことを聞いてもはぐらかされて来た経緯が関係しているのかもしれない。
「こっちで二人で楽しいことをするのは勿論嬉しい……けど、けどね?」
 混沌でのあなたがどんな方なのか、どんなことをしているのか……他にもたくさんたくさん知りたいことが多いんだから!
「今なら……」

 ──一方で。
「ほぉ……」
 譛晏?芽!動は空を飛んでいた。
「ロートスさん、空を飛ぶのこんなに気持ちいいんですね!」
「そーだなー」
 唐突な展開に目が回りそうだったが譛晏?芽!動は思い出す。
(そうか……これが俺の望む未来……)
 隣で笑うのは”幼き日のユカリ”。
 ああ、『昔みたいにお前の歌を聴きながら、愛機に乗って大空を飛びまわっていたい』……だなんて。
「確かに望んだかもな……」

 ふと瞬きしたら二人共ステージの前のベンチに戻ってきていた。
「ロートスさん、未来……見えました?」
「ん? ああ、まーね」
 どんな夢を見ていたのかはわからないが、機嫌の良さそうな彼をヴィオラは見逃さなかった。
「私も見えました! あなたの名前を普通に呼んでいたんです!」
「!」
 ヴィオラの言葉に彼は少し驚いた様子を見せた。
 彼の様子に今なら……とグッと勇気を振り絞る。唇が震えて立って今がその時……きっと、きっと!
「あの、ずっと言えてなかったんですけど……。私、リアルでも会いたいなって……思うんです。此処での暮らしも楽しいですけどね?」
 彼に望んでいたことを言った。言ってしまった。望んだ未来が見えて叶うような少しだけでも彼のことを知れるような気がしたから……そんな勢いだった。

「……悪ぃ。色々とフクザツな事情があってな。向こうじゃ会えねぇんだ」
 少しだけ、少しだけ悪い予感を感じながら……。でも、それが嘘だって、思いたかった。
「……はい」
 泣きそうな声を抑えて絞り出した彼女の声はやはり悲しみを隠しきれなかった。

 叶うならば応えたい。
 しかし己は仮想空間でしか自我を表層に出すことを許されない存在であるがゆえに。また今日も彼女の言葉を煙に巻く。このどうすることも出来ない感情を抱く彼は誰も気づかないような一瞬だけ、泣きそうな笑みを見せた。





 『美城・誠二のアバター』セージ(p3x006136)は少女に見覚えがあった。
「『こちら』のシュテルンはこんな催しを開いてるんだな」
 セージの物言いは混沌の彼女を思っての発言だろう。
「……では警護に回りながら、シュテルンの歌に耳を傾けよう」
 周りには多くの客人の姿も見える。彼らの邪魔にもなりたくないと密やかに耳を傾ける。

「ん……」
 見えてきたのは……花畑だった。
 一面に咲き誇るブルースター。その花畑の中心に居たのは『彼女』だった。
「あ……」
 セージは彼女に近づく。彼女は話しかけてくれるけど何を話してくれているのかはまるで世界から音がないように聞こえなかった。
「俺にくれるのか?」
 彼女が積んでいたブルースターを差し出されて漸くそう答えると、彼女は満面の笑みを浮かべていた。
「……ありがとう」
 セージは壊れ物を扱うようにその花を受け取る。潰してしまわないように、折らないように気をつけて。
「お、おい!」
 すると今度は彼女がセージの手を引いて走り出した。突然のことで驚いたが、どうやら来てほしい場所がある様子だった。

「夕日か……」
 ブルースターの花畑の最端、崖の向こうに見えるのは今にも沈みそうな夕日だった。
 すると風がそよりと吹き付ける。優しい風だ。
「望んだ未来……そうか」
 セージは自分が望んでいる未来を自覚した。
 ヒーローが必要がない、誰かが理不尽に悲しむことのない世界……人の悪意が、弱者に向かない世界。そんな世界で、過ごしたい。大事な人たちと……今隣で微笑む彼女と一緒に。
 戦う必要がなく、誰かの悪意を向けられるようなことのない……
「……弱気になってしまうな。全く」
 思いかけてポツリと吐き捨てるように呟く。
「でも、それが数少ない望みなんだろうな。争うことや、守ること……そんなことを考えなくていい世界」
 ヒーローが望むことではないが。セージは乾いた笑いを溢した。

 セージの意識がステージに戻る。
 すると目の前に突然『彼女』が立っており驚いたがネクストだったことをすぐ思い出した。
「……君の歌、綺麗だったよ」
 彼女はネクストのシュテルン……面識はないはずだが。と、当たり障りのない会話をしてみる。
「ありが、と……ねぇ、少しだけ手を貸して?」
「?」
 手に握られたのはメモ用紙に描かれたブルースターの絵。
「ウィソン、描いてくれた。なんでかあなたにあげたい、だったの」
「俺に?」
 セージが何故だろうかと考えていると、シュテルンはニコリと微笑みそのままこの場を後にした。


 ブルースターの花言葉は……
 幸せな愛、信じ合う心、望郷、星の精、早過ぎた恋、身を切る想い。

成否

成功

状態異常

なし

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