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シナリオ詳細

<spinning wheel>あるじ無き王宮のおとぎばなし

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●あるじ無き王宮
 カチャン、カチャン……と金属が細かくぶつかる音がする。
 勘の良い者なら、それがフルプレートアーマーの装甲同士がぶつかりあう音だと分かるだろう。
 より勘の良い者なら、歩いている動作から出た音だと分かる筈だ。
 そしてそんな中でも、鍛冶仕事に優れた者や武器防具の構造に詳しい者であるなら、『中身が空っぽの鎧が歩いている』とわかるだろう。
「なるほど。これが『あるじ無き王宮』か……厄介なダンジョンだな」
 サイズ(p3p000319)は壁に背をつけ、そっと通路の奥を覗き込む。
 王宮とよぶに相応しい建物と、その城門が見える。
 城門の前には黒く禍々しい鎧が二体ほど歩いており、門前を警戒するようにうろうろとしていた。
 彼らの足元には破壊された白く神々しい鎧が転がっている。
 サイズは持ち前の鍛冶知識や修理知識から、女王より託された『やわらかい白銀』を使えば数十秒であの白い鎧を修復できるだろうと頭の中で計算していた。
「そして俺がこの場所の担当を命じられたのも、そういうこと……か」
 サイズは女王ファレノプシスとの会話を、心の中で想いだしていた。

●白と黒の戦争
「よく来て下さいました、サイズ」
 そう優しく声をかけてきたのは、美しき妖精の女王、『胡蝶の夢』ファレノプシスであった。
「また……あなたがたローレットを巻き込んでしまったのでしょうか」
「いいえ」
 サイズは頭を垂れたまま言った。
「悪いのはこの事態を引き起こしたやつです。巻き込まれたというなら、妖精郷こそが巻き込まれた側でしょう」
「…………」
 ファレノプシスはその言葉にはなんとも返さなかった。立場ある身ゆえの沈黙だろうと考えて、サイズもまた沈黙する。
「あなたには、やってほしい仕事があります」
「引き受けました。なんなりと」
 そしてだからこそ、内容を聞くまでもなくサイズは承諾できるのだ。

 大迷宮ヘイムダリオン攻略作戦。
 妖精郷の側から妖精の門アーカンシェルを開き、無数のダンジョンが連続することで出来ている大迷宮ヘイムダリオンを経由することで、深緑の中枢であるアンテローゼ大聖堂を目指すという作戦がとられた。
 それは侵入不可能な深緑へ侵入するための唯一の抜け道であるアーカンシェルを、妖精郷を危険にさらすことなく利用するための方法であった。
 その一環として、重要なポイントと位置づけられているのが『あるじ無き王宮』というダンジョンである。
 『あるじ無き王宮』はいわば物語の世界だ。
 黒い鎧だけで構成された『黒の勢力』がある日、白い鎧で構成される『白の勢力』の王宮を襲撃し陥落させてしまったという物語である。
 侵入者は『白の勢力』の生き残りにしてレジスタンスとして戦い、王宮を占領する『黒の勢力』を撃退するのだ。
 城のあちこちには破壊された白鎧が転がっており、彼らはいわば『死亡』と同等の状態にある。しかし妖精女王のもたらした『やわらかい白銀』というアイテムを使えば鎧を修復し、復活させることができるという。
 こうして次々に味方を増やし、最後には玉座の間を占拠している黒の首魁を倒すことでこのダンジョンをクリアすることができるだろう。

 『あるじ無き王宮』に広がる光景。それはまるで、占領された妖精城アヴァル=ケインが冬の王の力によって占領されてしまった日を思わせる。
「もう、あんなことは繰り返させない」
 サイズは拳を握りしめ、飛び出した。

GMコメント

●背景の解説
 深緑内部で起きている正体不明の異常事態に対応するため、ローレット・イレギュラーズは内部へと突入するためのルートを確保しようとしています。
 それは、『妖精の門』というゲートを使って深緑の外→妖精郷→大迷宮ヘイムダリオン→アンテローゼ大聖堂というルートを繋ぐことでした。妖精郷から直接アンテローゼへ繋げられないのは、その場にいるであろう脅威がそのまま妖精郷へ流れ込むことをさけるためのものでした。
 こうして、『未だ見えぬ敵』との戦いが始まったのです。

●今回のオーダー
 ヘイムダリオンの中でも重要な通過ポイントとなる『あるじ無き王宮』というダンジョンを攻略します。
 ここは物語世界へ入り込むタイプのダンジョンです。
 あなたは『白の勢力』のレジスタンスとなり、王宮を『黒の勢力』から奪還します。
 みなさんだけで突破するのは不可能ではありませんが、敵の勢力は強力かつ大人数なので味方を増やしていったほうがいいでしょう。

●白鎧(味方)
 白鎧とは『白の勢力』の兵隊でありあなたの味方です。中身のない空っぽな鎧でできています。
 初期状態では、白鎧は王宮のあちこちで『死亡』しています。
 しかし皆さんに配られた『やわらかい白銀』を使用することで白鎧を『復活』させることができます。
 復活した状態の白鎧は皆さんの味方として戦ってくれるほか、【治癒】や『かばう』の対象にもすることができます。
 白鎧の能力は個体ごとに異なりますが、おおまかに前衛・後衛・ヒーラーの三種に分かれています。

 また、『復活』には2~3ターンかかりますが、『鍛冶』『修理』『工業技術』『無機疎通』といった能力があれば消費ターン数を最小1ターンまで減らすことができます。
 非戦スキルが強化されていれば更に縮めることができ、一度に複数の白鎧を復活させる際などに活躍するでしょう。

●黒鎧(敵)
 王宮のあちこちに配置されている鎧たちです。彼らは通常のモンスター同様ダメージを与えることで破壊(死亡)させることができます。
 破壊にあたって近道とかはないようです。サイズさんが観察した限り普通に戦って倒すのが一番の近道だとわかったらしいです。

 黒鎧の性能は個体差がありますが、おおまかに強さが『一般兵』『精鋭』『仮初めの王』の三種に分かれており強いほど数が少ないようです。
 特に『仮初めの王』は一体しかおらず、これを倒すことでこのダンジョンをクリアすることができます。

 女王の話によれば、このダンジョンをクリアすると一本の道と一冊の本にかわると言われています。

  • <spinning wheel>あるじ無き王宮のおとぎばなし完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2022年04月04日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

サイズ(p3p000319)
カースド妖精鎌
志屍 瑠璃(p3p000416)
遺言代行業
オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)
同一奇譚
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
業壊掌
ハッピー・クラッカー(p3p006706)
爆音クイックシルバー
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
導きの戦乙女
只野・黒子(p3p008597)
群鱗
ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)
ヤドリギの矢

リプレイ


 長い長い通路の先。
 そこにはあるじなき城の門がある。
 手早く門番の黒鎧を倒した『群鱗』只野・黒子(p3p008597)たちは、早速白鎧の修復にとりかかっていた。
「妖精武器サイズ、本気で行くよ!」
 腕まくりのような動作をして、修復作業をはじめる『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)。
 鎧はかなりの損傷を受けていたが、『やわらかい白銀』を使えばかなり短い時間で修復が可能になるだろう。
「鍛冶仕事というものは本来かなりの時間をかけて行うものですが、驚くべき速さですね」
 黒子はサイズの手際を称賛するように頷いた。ほんの数秒で鎧のひとつが完全に修復され、すっくと立ち上がり敬礼するように手を上げたのだ。
 黒子の見立てでは、鎧とインゴットがそれぞれ特殊な魔法でできているようで、素人がやっても一分もたたずに修復されることだろう。黒子たちのように技術や知識を持っている者なら更に早い。
「成程――御伽噺に遊戯を足す。
 悦ばしいものだ。
 数多の願いが無機物に宿ったと解せる。
 さて――此度の我等は如何にして戦場を駆けるか」
 『希望ヶ浜学園美術部顧問』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)が彫刻家がもつような道具を指の間に挟み、独特の声で笑う。
 普段の彼女とは若干ことなる、今日のオラボナは彫刻家モードだ。
「配置されたユニットを適切に仲間に加え、対戦相手の王を獲る。
 そのままボードゲームのアイデアに使えそうな地下迷宮。もっと早く来たかったですねえ、これは。
 異常事態の最中ゆえ、いささか不謹慎ではありますが――楽しい、かな」
 苦笑する『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)。対して『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)は快活に笑ってこたえた。
「確かにね! 非常事態ってことは分かっててもワクワクするよ!」
 これからいくつもの『鎧の騎士』を助け、そして仲間にし、軍団を作って黒の勢力から城を取り返すのだ。これがワクワクしないわけがない。
 より楽しいのは、鍛冶技術を持つメンバーがサイズの他にも何人も集まったことだ。
 そういった側面が表にでる機会が少なかっただけで、結構多くのローレット・イレギュラーズにそういう技術をもつ者がいたということだろう。
「オレは鎧とか剣とかを扱わないからナジミが薄かったけど、自分で使ってると自然に技術が身につくものなのかな?」
「どうだろうな」
 『導きの戦乙女』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)が腕組みをし、そして己の剣の柄を軽く叩く。
「鍛冶技術自体はそこまで特別なものじゃあない。へこんだ鎧の修復や剣の研ぎ直しは誰でもできる範囲だろう。まあ、私はそうだというだけだが……」
 結構パワープレイの多いブレンダのこと。鎧や剣を修復するタイミングも人より多かったのかも知れない。壊すことに長けると直すことにも長ける、というちょっと皮肉みたいな話である。
「いやー助かるね! 私ね、そういう技術とかないからね! ハッピーボディはへこんだりしないから!」
 幽霊の尾(?)をふよふよ振ってみせる『爆音クイックシルバー』ハッピー・クラッカー(p3p006706)。
 彼女も彼女でダメージを受けやすい戦い方をしているが、身体をぶった切られてもその場でくっつく幽霊ボディのせいで鎧や剣というものをろくに扱ってこなかったようだ。
「それはそうと妖精郷が大変だと困るんだよねぇ!!! いろいろと困るんだよねぇ!!!
 具体的には親友やそこに居る人(サイズさん)との色々がですね!!!!」
 両手をばたばたやってオーバーリアクションで喋るハッピー。
「それは俺も同じだ。むしろ警備隊の先輩達も心配だしな……」
 『ヤドリギの矢』ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)が暫く難しい顔をしていたが、キッと顔をあげて決意の表情を見せる。
「目指すはアンテローゼ大聖堂。大迷宮をなんとしても突破するぜ!」
 門の内側では早速敵の気配が溢れている。
 こちらの接近や侵入はバレているのだろう。が、こちらもそれを承知で突入するのだ。正面突破は望むところである。
 ミヅハは勢いよく門を開いた。
「さあ、行こう!」


 城正面での戦いをなんとか切り抜けた八人は城のあちこちに散り、まずは白鎧を回復させ味方を増やす作戦に出た。
 というのも、黒鎧の数があまりに多すぎるせいでこちらのガス欠が先に来そうだったためである。オラボナやハッピーといった継戦能力の高い味方はいるが、彼らだけを敵のボスに当てたとしても少々厳しいことになるだろう。敵の群衆に飲まれ、身動きできずに各個撃破されるという展開も充分ありうる。
「それに幸いにして、こちらには技術者が揃っていますからね」
 薄笑いを浮かべ、芸術的速度で鎧を修復してみせる瑠璃。
 一体のみならず複数体を同時に、そして高速で復活させる手際は流石だが、その裏にはミヅハによる『テスタメント』の支援があったことは忘れてはならない。
「この力を使えるのは一度だけだ。壊れた白鎧が集まってる場所を見つけられてよかったぜ」
 そう言いながら塔の上から身を乗り出すミズハ。
 お城東側にたっている塔は見張り台の役割をもち、本来なら外敵に備えるはずなのだろうが、お城の内側から攻め込んでくる黒鎧たち相手に防戦をしかけながら修理の時間を稼ぐ形になった。
 窓から弓矢を放ちつつ、螺旋階段を駆け上がってくる黒鎧めがけて樽で作った転がり罠を作動させるミヅハ。
 樽が黒鎧に激突し、中身のワインごと爆ぜる。
 あとには燃えさかる階段が残されるという寸法だ。
「瑠璃、修理は終わったか!?」
 振りかえるミヅハ、対して、瑠璃はパチンと指を鳴らした。
「ご覧の通りですよ」
 瑠璃の後ろには複数の白鎧の騎士が立ち上がり、剣やマスケット銃を構え窓の外や階段の下へと攻撃を開始した。

 一方でこちらはお城の地下室。
 ここへ追い詰められたであろう白鎧たちを、オラボナは丁寧な手付きでひとつひとつ修復していた。ただ『やわらかい白銀』を押し当てて損傷箇所を塞ぐだけでなく、白鎧に予め彫り込まれていた模様を素早く再現するサービスつきである。どうやらそれには効果があるようで、立ち上がる白鎧たちには覇気があった。
「総てが【戦争】だろう。
 ――貴様等、此度の御伽噺、物語は我等の手に。
 ――虚構の王を引きずり出し、真実を突き付けるのだ。
 Nyahahahaha――!!!」
 オラボナは相変わらずふつうのひとには分かりづらい語彙で喋るが、地下室の入り口で戦うイグナートにはなんとなくの雰囲気でわかったようだ。
 地下室入り口には複雑に張り巡らされたワイヤーが仕掛けられており、進む黒鎧の動きを地味に阻害する。
 ――だけでなく。
「時間稼ぎはオレの仕事だからね! キッチリこなすよ!」
 マスケット銃を構える黒鎧の射線を横切るように走るイグナート。ワイヤーをキュッと手で掴むと複雑なカーブをかけ、時にはワイヤーを足場にして黒鎧たちの間を複雑怪奇に跳ね回る。
 そして死角をとっては強烈な握力から繰り出されるパンチで鎧をベコンとへこませるのだ。
 このワイヤーフィールドはイグナートひとりで設置したものではない。オラボナと共同で素早く設置した防御陣地なのである。
「完成だ!」
 オラボナがまるでオーケストラの指揮者のように両腕を振り上げると、その後ろでマスケット銃を構えた白鎧たちが一斉射撃を開始する。

 一方こちらはお城の側面に作られた兵士の詰め所。攻め込まれた際には全員が出撃していたためか白鎧の数はそこまで多くないが、探してみると結構な数を集めることができた。
「白と黒の戦い……さしずめチェスと言ったところか。
 復活があるから将棋の方が近いかもしれんがな。
 では戦場最強の駒、クイーンとして動かせてもらおうじゃないか」
 こきりと首をならし、そして人差し指で親指の付け根を押さえるような仕草でパキキと拳を鳴らす。
「これを」
 黒子が背負っていたナップザックから『やわらかい白銀』を取り出すと、そのインゴットのひとつをブレンダに投げてパスしてくる。
 ソレをブレンダはキャッチすると、すぐそばで横たわる白鎧に目をやった。胸の辺りに大きな穴の空いた鎧だ。中身は空っぽだが、もし人間であれば心臓をひとつきにされた形だろう。
「ならばその偽りの心臓――再び動かしてやろう!」
 インゴットを握りしめると、ぐにゅりと形を変える。それを拳の表面に伸ばすと、思い切り鎧の胸部に拳をたたき込んだ。
 ドゴンという音と共に広がる白銀。
 ナップザックから取り出したハンマーや回転型形態研石を使ってごりごりこまめに修復していた黒子がそちらを二度見した。
「……鍛冶、技術?」
「なんだ? 鎧は熱くして叩けば大体直るだろう?」
「否定はしませんが……なるほど、同じ技術でも人によって千差万別ということですか」
 実務主義、あるいは結果主義の黒子からするとちょっとしたカルチャーショックだが、今は味方が増えるという結果が共通しているので何も問題は無い。
 ヒーラータイプの白鎧がそれぞれ立ち上がり、『自分達は何をすればいい?』という様子でブレンダたちを見る。
「指揮をとるなど随分と久しぶりだが……何とかしよう」
 と、その時。ドゴンと兵舎の扉が突き破られる音がした。黒子がブレンダを見る。
「それで、作戦は?」
「プランBで行く」
「……なるほど」
 プランAを聞いた覚えがない。と思ったが口に出さなかった。よかったきっと不幸なプランCもいなかったんだね。
 とか思っているとブレンダが剣をとり、『我に続け!』と叫んで黒鎧たちに突撃していた。

「こっち向きなさいよ無視すんな! 幽霊は寂しいと暴れるんだぞ!!!!!」
 こいやこいやーと叫びながら両手で手招きジェスチャーをするハッピー。
 彼女の胴体を黒鎧の剣が横一文字に切り裂くが、まるで霧をはらうかのように剣はすりぬけ、一方のハッピーはすぐに元の形状へと復帰した。
「幽霊に物理攻撃は効かないって教わらなかっ――痛あ!?」
 マスケット銃がハッピーの額を貫いていき、おでこを抑えて涙目になるハッピー。
 黒鎧たちは顔を見合わせ、今度はマスケット銃を備えた黒鎧たちによる連続射撃を浴びせまくった。
 EXFの高い敵ならとりま試行回数を増やせば倒せるだろうという割と浅い判断をとったらしい。
 ハッピーのEXF成功率はまさかの10割なのでこれらは完璧に無駄撃ちである。そのうち【必殺】攻撃持ちの黒鎧が到着してぶん殴るか、あるいはハッピーを取り押さえて動けなくするだけに留めるかという判断をすることになるのだが……ハッピー的にはそれまでの時間が稼げれば勝ちだ。
 どう勝ちなのかといえば……。
「終わったぞ!」
 サイズが後方から走ってくる。それも大勢の白鎧の軍団を引き連れて。
「うおお!? 予想の何倍も連れてきた!? さすが!」
 グッジョブ! と振り返り両手でサムズアップするハッピー。その頭にたたき込まれてすり抜けるメイス。
 サイズの腕にかかれば大勢の白鎧を一度にそして短時間で復活させることも可能である。一部は自力で動けないかわりに腕が大砲になるなどのへんな改造がされていたが、数がいるからできる特化改造であった。
「今度はこっちの番だ。行け!」
 サイズが白鎧たちに命令を下すと、一斉射撃で黒鎧たちを圧倒し始める。


 形成は逆転した。圧倒的な数によって追い詰めていたはずの黒鎧は、瞬く間に数を取り戻した白鎧側の勢力に押され次々に破壊(死亡)。
 多少の犠牲をはらいつつも、ローレット・イレギュラーズ率いる白鎧軍団は玉座のある部屋へとたどり着いていた。
「…………」
 玉座の間。
 そこには通常とは異なる厳めしい作りの黒鎧たちが並び、玉座にはその中でも特に大きく厳めしく、そして王冠のような形状の兜をした『仮初めの王』が座っている。
 頬杖をついていた『仮初めの王』はゆっくりと立ち上がり、控えていた黒鎧たちに攻撃の命令を放った。
「チェックといった方がいいか? それとも王手か? ――ここが正念場だ。全てを出し切れ!」
 ブレンダは先陣を切って突っ込むと、ブレンダ率いる前衛部隊が思い切りぶつかっていく。まるで押し寄せる津波のような圧力で精鋭兵たちをのけぞらせると、ブレンダが精鋭の剣を強引に払いのけ、炎のあがる剣を相手の腹にたたき込んだ。
 と、そこへ登場したのがミヅハを先頭にした射撃部隊である。
 部屋側面の壁を爆破によって破壊すると、あいた穴からマスケット部隊による一斉射撃を開始。
 率先して『イチイバル』の大弓を構えたミヅハは『仮初めの王』を守って立ちはだかろうとした精鋭黒鎧をその矢によって貫いた。ガシャンと崩れ落ちる精鋭兵。
 黒子はここぞとばかりに『リコシェット・フルバースト』を周りのマスケット兵とあわせて発射。
 周囲を守ろうと展開した黒鎧たちが一斉に転倒していく。
「ヒーラー部隊、前へ」
 黒子が合図を出すと、黒鎧の反撃によって負傷した白鎧たちへと僧侶のような形をしたヒーラー白鎧たちが治癒スキルを発動させた。
 鎧がじわじわと修復する中、瑠璃がここぞとばかりに『仮初めの王』へと突撃。
 しかし狙いは『仮初めの王』ではなく、その取り巻きだった。
「もう数手で『詰み』ですね」
 先を読んだ瑠璃は『名乗り口上』のスキル効果を発動。周囲の黒鎧たちを引きつけると、あえて誰のカバーも受けずにその攻撃を受け止めた。
 そうすることで、『仮初めの王』を守る者はいなくなる。
 イグナートとサイズが迂回するようなルートで迫った。
「――!」
 『仮初めの王』は両腕を大砲のような形に変形させると、イグナートとサイズめがけて連射。
 殺人的な反撃は――しかし。
「その首を落とすのは誰でも構わぬ。Nyahahahaha!!!」
 イグナートの前に躍り出たオラボナが思い切りHPで受けた。
 これが『仮初めの王』のとっておきだったのだろう。おそらく軽く一人か二人は倒れるだけのダメージが撃ち込まれたはずだが、オラボナはそれを完璧にクッションしてみせたのである。
 一方のハッピーも、落とされこそしたがそのダメージをサイズにまで届かせないだけのカバーを達成してみせた。
「痛ったー! 死ぬほど痛ったー! あっもう死んでるんだった! ということで――今だやれぇい!」
 ビシッと指をつきつけるハッピー。それにこたえ、サイズは鎌に謎ユニットを装着。
 『用途不明のユニットが接続されました、直ちに使用を中止してください』という警告音声を無視して魔力のビーム砲を発射した。
「――!?」
 まさかとっておきの反撃が止められると思っていなかったのだろう。砲撃をモロにうけた『仮初めの王』は腹に大きな穴をあける。
 そこへ、イグナートが思い切り殴りかかった。
「そこだ――!」
 王冠の形をした兜を拳でへこませ、そして吹き飛ばす。
 『仮初めの王』はがくりと膝をつき、そしてうつ伏せに倒れた。

 拳を振り抜いた姿勢のまま、イグナートは深く息を吐く。
 それまであったお城も、玉座の間も、大勢の黒鎧と白鎧も、消えていた。
 ただまっすぐのびた一本の道と、足元に落ちた一冊の本。
 サイズが本を拾いあげると、『白き鎧と勇敢なる鍛冶師たちの英雄譚』と妖精の文字で表題が書かれている。
 横から覗き込むハッピーとミヅハ。
 本を開いてみると、ブレンダが兵を指揮して突撃したり、オラボナがオーケストラのように兵を立ち上がらせたり、瑠璃が盾になり兵達を攻撃させる様が挿絵と共に描かれている。黒子があちこちで仲間を的確に補佐してまわる様子もだ。
 ブレンダや黒子たちは顔を見合わせ、そして小さく笑った。
「君たちは勇敢な騎士だったよ。お疲れ様」
 ブレンダの言葉は、仲間達の総意でもある。
「さあ、先へ進もう!」
 ミヅハたちは本を手に、ダンジョンの先へと突き進む。

成否

成功

MVP

志屍 瑠璃(p3p000416)
遺言代行業

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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