シナリオ詳細
ともだちの、こえ
オープニング
●ともだちの、こえ
天義(聖教国ネメシス)の首都、フォン・ルーベルグより離れた海沿いに存在する独立都市『アドラステイア』。
各層に隔てられた層構成のその街は、各層毎に特色の有る生活が育まれている……そして、そんなアドラステイアの下層には、戦争やらで親を失った孤児達が多く棲まう。
そしてそんな孤児達は、同じ境遇の仲間達とはピンと感じるような所がある様で。
『ほーら、こっちこっちー!』
『もー、まってくれよー。はぁ、はぁ……はえーってー』
と下層、スラム街の様相を呈する街並みの中を、大声を出し合ってかけっこしてみたり、鬼ごっこをしたり……と、棲まう子供達はその様な厳しい環境であったとしても、楽しむ術を見つけている。
そして、そんな子供達を見守るティーチャー達も。
『ほらほら、そんなにどろんこになると、貴方のティーチャーに怒られるよ? ほら……泥はちゃんと拭きなさい』
『もー、せわしたがりなんだからー……でも、はーい』
彼等を見守る大人達は、自分達の子供を見るが如くやんちゃな子供達の面倒を見て、泥を拭いたり汚れを拭ったり……。
……そんな子供達のやんちゃな遊びも、夕方になれば帰る時間。
『みんなー、それじゃーまた明日、あそぼーね!』
手を振りバイバイして、別れてちょっと。
『……う、うぅぅ……ウワァァアア……!!』
別れた仲間の行った方角から、突然響きわたるのは……苦しみの咆哮。
「ん……あれ? ねえ、ティーチャー。なんか声があっちのほうでしたんだけど……」
「そうね……何かしら。ちょっと見てこようかしら」
と居合わせたティーチャーが子供の手を引いて、その声のした方向へと向かう。
見通しの悪い建物を折り返して進んで行くと……そこには。
『グ……グルゥゥゥ……』
獰猛に唸り声をあげる、白き翼を背に生やしたライオンの様な生物。
白き身姿、白き羽根……それが聖獣だ、というのは直ぐに分かるが、こんな街角に居るわけが無い。
……そして、その白獅子の頭部には……先程別れた時の少年がつけていたリボンが。
『……え? あれ……ねえ、アンナ?』
と少年がぽつりと言葉を紡ぐ。
しかし白獅子は……。
『グゥゥ……ガルゥゥアアアア!!』
言葉を解釈する事無く、そのまま白獅子の聖獣は……子供とティーチャー達に牙を剥こうとするのであった。
●
『もう……また一方的な依頼の文章を飛ばしてくるのです……本当、困った人なのですよ……」
と、ギルド・ローレットにて『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は、難しい表情を浮かべる。
そんな彼女が困っている様なので、君達が声を掛けると。
『はっ……みなさん、ユリーカが困っているのに気付いて声を掛けてくれたのですね! 本当に助かるのです!! それじゃー早速なのですが、説明させて貰います、なのですよ!!』
目を爛々と光らせたユリーカに捕まっ……いや、手を引かれた君達が連れてこられたのは、カウンターの裏。
ともあれユリーカは、皆に一枚の手紙を差し出す。
手紙の送り主は、アドラステイアで潜入調査をしている探偵からのもの。
アドラステイアから時たま手紙を飛ばし、イレギュラーズ達へ依頼解決を請う。
勿論アドラステイアの現況からすれば、そういった難題を解決出来るのはイレギュラーズ達に任せるしか無い……というのは理解出来る。
そして今回の手紙も又……そんなアドラステイアが直面する窮状を訴えかけていて。
「ここに居る皆さんはもう良く知っているかもしれないのですが……アドラステイアに蔓延る『イコル』という薬は知って居ますよね?」
「このイコルを継続接種していると、いつの間にやら辞められなくなって、そして……終いには『白い獣』に変化してしまうのですが……どうもそんな『白い獣』が街中で突如現れて、暴れ回るという事件が発生してしまっているらしいのです」
「この白い獣、街中で発生すると周りの大人達はおろか、子供達も喰らってしまう凶暴な獣なのです。下層の人達からすれば、白き獣は『聖獣』と言う形で聖なる獣として考えて居るので、一度被害が起きると拡大の一途になりかねないのです……なので、イレギュラーズの皆さんには、『聖獣』の出現次第、しっかりと退治してきて欲しい、って訳なのです!!」
そして、最後にユリーカは腕組みしながら。
「探偵さん、確かにこうやってアドラステイアの困りごとをこっちに報せてくれるのは助かるのですが……解決はコッチ任せというのは考え物なのです。とは言えアドラステイアの人達が困っているのに、指をくわえて見ている訳にも行かないですし、色々思う所はあると思うのですが、皆さん宜しく頼みます、なのです!」
と、ぺこり頭を下げるのであった。
- ともだちの、こえ完了
- GM名緋月燕
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年03月19日 22時21分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●ともだちはどこ?
天義首都、フォン・ルーベルグより離れた海沿いの独立都市『アドラステイア』。
高い壁で隔てられた各層毎に、独自の生活が育まれており、特に……下層においては、戦争やらで親を失った孤児達が多く住んでいる。
更に、それを養うティーチャー達の下、助け合いながら生活をしていた。
「ここがアドラステイアなんだ……内情の話は聞いてるけど、思ったより普通に……生きているんだね、みんな」
と、周りで普通に生活している人々を眺めて『嶺上開花!』嶺 繧花(p3p010437)が呟くと、それに『新たな可能性』ヴュルガー(p3p010434)も。
「ああ……説明を受ければなるほどと思えるが、ずいぶんと変わった思想の街の様だな、アドラステイアというのは。だが、そんなところの人々を助けようと言うイレギュラーズ達も同様に変わっているな」
はは、と苦笑しながら肩を竦める。
勿論今回の依頼……ユリーカが困っていたからほっとけない、というのもあっただろう。
だけど、こんな特異な街を救いたいと考えて居るのは、イレギュラーズなりたてのギュルガーからすれば、目にも奇妙に映った事だろう。
勿論一朝一夕に街を救うだなんて事は難しい事であり、この依頼をこなしたとしても、直ぐに状況が改善されるという事はない。
しかし、一つずつ依頼を解決していく事により、少しずつではあるが、彼等を救うことに成る。
だが、そんな生活をしている子供と大人達を蝕むのは……多幸感を与えてくれるという赤い錠剤『イコル』と、聖なる者と言われて居る『聖獣』の事件。
「Uh……こんかいあらわれた聖獣は、イコルのふくさようでへんかしちゃった人間で、まちがいないんだよね……?」
と、『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)が小首をかしげると、それに頷く『横紙破り』サンディ・カルタ(p3p000438)。
「ああ……ったくよ、天喜ぶもそうっちゃそうだが、アドラステイアもかわんねぇな……誰を守るための『神』なんだかよ」
と舌打ちを撃つ。
イレギュラーズ達にとって、このアドラステイアの神『ファルマコン』から分け与えられるという名目の『イコル』は大切な物であり、街に棲まう人々はイコルを食べて『聖獣』化するなどとは、まだ信じられていない状態である。
そんな状況を手紙経由で知った『酔狂者』バルガル・ミフィスト(p3p007978)と『善なる饂飩屋台』御子神・天狐(p3p009798)が。
「全く、調査依頼かと思ったら、納期ギリギリの状態で運んでくるクソ営業みたいな依頼じゃないですかこれは……ま、善良で幸福で完璧な存在な連中に、一杯食わせるのも乙な物、という事で」
「本当じゃのう。無知と妄信は罪とは良く言うが……既にこの子らが聖獣化する運命は変えられないのじゃな……この子らに罪は無い。その無垢の目を隠し、毒沼に沈める邪悪こそが裁かれるべき罪じゃろうて」
「そうだね。わかってても、何度みててもなれないし、たぶんずっとなれないと思う……でも、なおす手段がないなら倒すしか、ない。その覚悟はできてるつもりだし……これ以上いのちをうばわせないために、ぼくたちが来たんだ」
と、並々ならぬ思いを抱くリュコスに、繧花、天狐も。
「うむ。同胞の血で全身が穢れる前に止めてやらねばならぬ。少なくとも現状それこそが救いであろう。せめて穢れを知らぬまま逝くが良い、無垢の子よ」
「そうだね……うん、やっぱり見捨てられないよ。今、繋げられる命を一人でも多く、私たちの手で!!」
と、リュコスに刺激される形で、強く想う。
そしてヴュルガー、『最果てに至る邪眼』刻見 雲雀(p3p010272)と『Utraque unum』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)も。
「ま……これが稼業と言うのならやるしかないな。私が選べる選択肢など、もう無いのだからな」
「ああ……幼い子供だったものに手を掛けるのは、流石に罪悪感を覚えるけれど……完全に人を喰らう存在になってしまった以上は、ね……より一人でも多くの人を助けるのが俺達の今やるべき事。悲しむのも思い悩むのも、全部事が終わってからだ」
「そうだな。今はこうするしかないのが歯痒くはあるが……成るべく苦しめないように、俺は俺の力を振るおう」
そんな仲間達の言葉に、サンディはああ、と頷いて。
「それじゃ皆、準備は良い様だな……じゃ、やりますか」
と、スラムなる雰囲気が漂うアドラステイア下層を駆け巡るのであった。
●ともだちは、どこに?
そして、アドラステイア下層を駆けるイレギュラーズ。
耳を澄まし、悲鳴や叫び声などが無いかをアンテナ高く敏感に感じ取りながら、左へ右へ……。
「さて、何処に居るんだ……? 早い内に見つけないと、子供達も被害に有っちまう……」
と、その表情の中には僅かな焦りを滲ませるサンディ。
それを補助する様、雲雀は周囲を広く見渡して、周囲の状況と人の集まり具合を鋭く察知しつつ、聖獣化してしまった敵を誘導するのに良さそうな所に目星を付け、仲間達に共有する。
スラム街故、ボロボロな建物や、テントの様な棲まいが立ち並んでいる下層……とは言えど、ここに棲まう人達も居るからこそ、被害は最小限に抑えたい。
ただ雑多なる街並みは、周囲に何もないというような拓けた場所はかなり少なかった。
「流石に被害無しで、というのは難しそうだな……仕方ないか」
とアーマデルは一つ舌打ちした、その瞬間。
『グガァアア……!』
人の声とは違う、何か獣のような咆哮。
「あっちの様ですね……」
とバルガルが声の鳴った方向を指さし、仲間達と共にその方向へと急ぐと……。
『……え、あ……あ……』
『あ、あの……あ……アンナ……?』
崩れ墜ちるように座り込んでいる子供達と、その前で唸り声を上げている……白き翼を背に生やした、ライオンの様な生物。
アンナと声を掛けられるが、その獣は。
『ガルゥゥゥ……!!』
獰猛かつ言葉を掻き消すかのように、猛々しき咆哮を上げる聖獣。
『ひ、ひぃぃ……っ!!』
いつもは聖なる存在として崇め奉る対象だが……こう獰猛たる雰囲気を見せつけられては、流石に恐怖の方が先に顕わになって仕舞う。
そんな聖獣を視認すると。
「皆、急ぐよ!!」
と繧花の言葉に頷き、アーマデル、天狐、ヴュルガーと共に聖獣と子供達の間に立ち塞がる。
聖獣は立ち塞がったイレギュラーズに、邪魔するなと言うが如く声高らかなる咆哮を上げて威嚇。
その声に更に怯え、目を伏す子供達。
……そんな子供達に向けて、サンディとバルガルが。
「お前達。これから聖獣による儀式が行われる。この儀式は、非常に神聖なものであり、儀式の場に聖獣以外が居てはならないのだ。だから、今から私の言うとおりに移動しなければならない。これはファザー、マザーの言葉であり、残るというのなら……それは神への背信と見做す。密告も受け付けよう」
「いいか、忠告する。これは他の戦士達への神聖な儀式だ。手を出すこと勿れ。かの聖獣を刺激するな。声を沈め、その足音を殺し、そっと離れろ」
聖なる儀式を強調するよう厳粛な言霊で言い放つ。
勿論、普通の格好では説得力が少ないだろうと、サンディは聖銃士の格好での言葉。
当然子供達は、その言葉にこく、こく……と頷き、二人の誘導に従い、その場から離脱を開始。
誘導する方向は当然、聖獣とは逆方向……そうはさせん、と聖獣は地を蹴り立ち塞がる者達に噛みつき掛かる。
血飛沫が舞い、それを去り義和に見てしまった子供が悲鳴を上げるが、サンディは。
「あれは聖獣の贄である。神が定めた栄誉の通り、戦い、食われる使命を全力で果たす者。キミ達にはまだ速い」
と、聖獣の攻撃をも聖句に包み込み、子供達を雲雀が見繕った避難場所へ誘導する。
そして子供達が聖獣の前から消えると共に、雲雀は避難場所とは逆側の人気無く人家が少ない所の方向を指さして。
「それじゃ、俺達はこっちへ行こう! 先導するからついてきて!」
雲雀が先陣を切ると天狐が。
「では始めるとするかの。その意思、その本能。全て受け止めてくれようぞ」
と天狐が口上を述べて怒りを買いつつ、己の防御を高めて囮となる。
そして天狐に続きヴュルガー、繧花も敵に攻撃を与えつつ後方を抑えつつ誘導に続く。
……とは言え、そんなイレギュラーズ達の行く先には、何も知らない他の子供達やティーチャー達。
『な……聖獣様が暴れている!?』
驚いている彼等が立ち尽くしていると、それにリュコスとアーマデルがすぐに寄り添い。
「ここは、あぶない……にげて!」
「そこのティーチャー! この子達を連れてこの通りから離れていってくれ! ここは危険だ!!」
と大声を上げて、聖獣の誘導先に居る者達を避難させていく。
流石に何毎もない状態だったら、お前達は誰だ、と言う言葉と共に言う事を聞かなかっただろう。
だが……さすがに聖獣が牙を剥き追い立てている状況を目の当たりにしてしまえば、一般人達は勢いに負けて逃げろ、の言葉に従わざるを得ない。
そして聖獣を誘導し、避難する先に居る者達を追い払いながら進んでいく事十数分。
聖獣を一番被害が少ない所まで引き込んで……そこで振り返り、四方を取り囲む。
『グガァァ……!!』
石ころが転がる地面をガリガリと掻きながら、獰猛に唸り声を上げる聖獣。
その頭部には、他の聖獣とは違い……リボンが結ばれているのが、彼女があの『少女』であった証。
「……あのリボンが人であった証か……」
「うん……かわいそう。でも……たすける方法は、倒すしか、ない……だから……ここで、しっかり……たおすよ」
アーマデルに少し悲しげに頷くリュコス。
天狐はそれに頷きながら。
「うむ……そうじゃな。生憎所詮、タンクの真似事ではあるがな……土壇場の耐久力なら引けは取らん! 何度立ち上がって貴様を止めてくれるぞ!」
と更なる守りを固めつつ、更に聖獣に挑発を重ねる。
それに聖獣はうなり、地を蹴り天狐に食らい付く。
……再び血飛沫が迸るが……唇を噛みしめ、決して倒れようとはしない。
「苦しかろう! 辛かろう! 自我を蝕まれ無差別におそう獣となってしまうのは! 今の貴様を突き動かすのは怒りか? 恨みか? 本能と言う名の虚無か? それが何であろうと構わぬ。意思の疎通が出来ぬとも構わぬ。悔いが残らぬよう、その全てを一つ残らず吐き出すがよい!」
と、噛みつかれながら、どこからともなく屋台を呼び出し、敵へと衝突させて傷付ける。
ともあれ、天狐に食らい付いている間に素早くリュコスが。
「Uhh……とまってぇ!!」
唸り声を上げながら、聖獣に近接し、蹴り上げの一撃を叩きつける。
そして空に浮かんでおり動きが制限された状態の聖獣に、アーマデルが連携して英霊達の悲しき音色を聖獣に放ち、蝕む。
更に雲雀は敵の弱点を鋭く見定めた上で、動き無く敵を弾き飛ばす衝術で更に敵の下方から撃ち込んでいく。
素早い三人の連携攻撃でかなりダメージを受けた聖獣が地面へと落下……流石に立ち上がるまでに隙が生じるので、そこに。
「キミには誰一人殺させはしない! ここで必ず止める! ……その手を汚させたり、するもんか! キミはそんな事を願ってない……そうでしょ!?」
と繧花の紅蓮なる猛襲を嗾け、更にヴュルガーが相手の体勢を崩す一閃を叩きつける。
その後も、聖獣の動きを敢えて喰らいながら攻撃していくイレギュラーズ。
致命傷を喰らわない様に耐えつつ、確実に一撃、一撃を積み重ねていき……そしてこの広場に誘い込んで数刻後。
「すみません……お待たせしました」
「ん……子供達はもう大丈夫?」
「ああ……日が沈んだら街に戻るよう言いつけておいた。後は……こいつを倒して、決着を付ける」
子供達を避難させていたバルガルとサンディも合流し、8人が勢揃い。
そんなイレギュラーズ達の加勢に、傷ついた聖獣は怒りの唸り声で威嚇。
「悔しいかの? ……そうじゃな。本来であれば、御主はこの様になる事はなかった。イコルはこの様に毒になるのじゃ……故に、見逃す事は出来ん。ここで……倒れて貰うぞ」
天狐の宣告、それに反攻の牙を剥く聖獣。
その攻撃を受け止めながら、入れ替わるようバルガルとサンディの魔性の一撃が連続して決まり、羽根を薙ぐ。
『グギャゥウウ!!』
今迄よりも一際悲壮なる声が上がり……体勢をも崩す聖獣。
「つらいよね……でも、ほうちできない。だから……たおれて……!」
とリュコスの黒き大顎が大きな口を開けて……聖獣をがぶり、と喰らい尽くすのであった。
●こえを、きいて
そして……聖獣が倒れし跡。
「……イコルなる薬物、こんなものを子供に与える連中……許し難いな」
とヴュルガーが溜息を吐くと。
「……イコルを長期摂取すればこうなるんだ。聖獣全てが、元はヒトであるとは限らないようだが……兄妹が、友人が、隣人が……お前自身が、明日には聖獣になるかもしれないんだ」
更に消え失せた骸にアーマデルが吐き捨てるように呟き、更に雲雀も。
「そうだね……イコルを飲み続ければ、この様に聖獣化してしまうんだ。同じ目に遭う様な人を一人でも少なくしたい所なんだけど……ここまでイコルが蔓延って居る状況だと、一朝一夕には難しいんだろうな……」
「そうだな……病でもなく、薬物を長期摂取するなんて、ろくな事じゃない。街の人全てが薬を摂取し続けるだなんて異常な状況は……いつかはやめさせねばならないな」
「そうだね……」
とアーマデルと雲雀が会話している中、天狐はその亡骸の場所に跪く。
そこには……聖獣の頭につけられていたリボンが転がっている。
それを拾い上げた天狐が、ぽつり。
「……忘れない限り、人は生き続ける故な……このリボンは、あの子達に返す。御主の心は……彼等の中でいつまでも生き続ける事じゃろうて……な」
と天狐の言葉に、リュコスも。
「そうだね……聖獣になった子のともだち……ショックを受けているよね? そのはず、だよね……? だから……様子をみにいってみる。リボン……いい、かな?」
「そうじゃな……頼むぞ」
リュコスに先程のリボンを渡す天狐。
更に繧花は聖獣の残した爪痕をすくい取り、下層をある程度見渡せる所へと埋める。
「……痛かったよね。苦しかったよね……でも、もう苦しまなくていいんだ。ここで……アドラステイアの、友達の声を聞きながら……穏やかに眠って下さい、ね」
手を合わせる繧花に、アーマデルも。
「……そうだな。もう苦しむ必要は無い。穏やかに眠れ……」
と語りかける。
……そして、皆が彼の冥福に祈りを捧げた後に。
「さて、と……本当はもう少し調査を進めたい所じゃな。大手を振って動く事は出来ぬが、少しでも情報を得たいところじゃし……皆はどうするかの?」
「そうですね……自分もちょっと見回ってみましょう」
と頷き、巡回に街を巡るのであった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
アドラステイア依頼に参加頂き、本当にありがとうございました。
子供達にとって、今迄の友達が突然聖獣かして襲い掛かるなんて……悪夢な事この上ありませんね。
子供達が、これからも強く生きてくれる事を願ってやみません。
GMコメント
皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)と申します。
アドラステイアに蔓延るイコル……今回の聖獣は、下層に棲まう人達には信じてもらえないでしょうけれど、どうやら子供が変化してしまったものの様です。
●成功条件
アドラステイア下層に突如現れ、暴れる『聖獣』を退治する事です。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●周りの状況
今回の舞台となるのはアドラステイア下層です。
皆様が到着するタイミングでは、子供・大人達が聖獣に襲われ掛けて居る瞬間……となります。
普通ならば、聖獣に襲われていれば逃げそうなものですが……聖獣が聖なる存在と信じ込まれているアドラステイアの人達は、それで直ぐに逃げよう……という事にはなりません。
とは言え戦場にかれらが居る状態で戦うとなると、彼等に被害が出る可能性は十分にありうる事になりますので、彼等を守りながら聖獣と戦う作戦を組み立てる必要があります。
●討伐目標
イコルに毒された白獅子の『聖獣』
イコルの長期接種によって、姿を変えてしまった子供の成れの果てです。
一体のみですが、聖獣化して凶暴化してしまっています。
過去の子供の面影は多少はありますが……彼に声を掛けたとしても、凶暴化した性格の前には塗り潰されてしまい、決して耳を傾ける事はありません。
凶暴化した彼を救う事は、今回は最早出来ません……その為、彼を倒す他には対処する方法がありません。
ちなみに彼の武器としては、素早い敏捷性で動き回るので攻撃の回避能力が高いのと共に、逃げ惑う人を優先的に襲いかかる性格を持っています。
鋭い爪で人の脚を裂き、動きを鈍らせた所で食らい付き、噛みつき喰らい尽くす……という行動を繰り返します。
尚、このシナリオは〆切りまで短めですので、ご注意下さい。
それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。
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