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シナリオ詳細

至福の味と、幻の味

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●至福の味と、幻の味
 天義(聖教国ネメシス)の首都、フォン・ルーベルグより離れた海沿いに存在する独立都市『アドラステイア』。
 外周、下層、中層……と各層は大きな壁により隔てられており、各々の層においてはそれぞれの生活が営まれている。
 ……そんなアドラステイアの『下層』に立する実験区画『フォルトゥーナ』。
『おい! 次はその馬車を出すんだ!』
 と、怒号が響く。
 しかしその怒号に涙を零しつつも、表情は笑顔な子供達。
「っ……わ、分かりました……』
 荷馬車に乗り、ティーチャーと共に馬に鞭打つ。
 ……その荷馬車の後ろの幌の中には、アドラステイアに無くてはならない『救済の秘薬イコル』が多数積まれている。
 そう、此処『フォルトゥーナ』ではイコルが製造されており、限られた者達しか立ち入ることは許さず、下層の中でもここだけ特別な壁に囲われている様な状況である。
 そんなイコルを接種した者達は……とっても安心して、心の平穏が保てるんだよ、と口を揃えて言う。
 そして……そんな薬を常用し始めたアドラステイアにおいて、最近よく聞き始めるようになったのは……様々な魔物達が出現した、という事件。
『……ふぅん。どうやら二つの点が線になって繋がった様だな……』
 下層、フォルトゥーナの近くで煙草を吹かしながら、独りごちるのは『探偵』サントノーレ・パンデピス(p3n000100)。
 そして彼は、鳥の足に一通の手紙をしたためて。
「んじゃ、ローレットに頼むぜ?」
 と、鳥を送り出すのであった。


「……むぅー……またなのですか……』
 ギルド・ローレットで手紙を開き、難しい顔をしているのは、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)。
 彼女が難しい顔をしているのはちょっと珍しいなぁ、と声を掛けた君達に。
「あ! いい所に来てくれたのです、イレギュラーズの皆さん!! 早速なのですが、頼み事があるのです! ほら、こっちに来て下さいなのですよ!」
 声を掛けたが最後、ユリーカに手を引っ張られていく……そして。
「あのですね、『アドラステイア』は皆さんも知ってると思うのですが、ここで子供達が良く接種する『イコル』というのは知ってるでしょうか?」
 幾度となくアドラステイアを訪れた君達は、名前やらは聞いた事があるであろう……それにユリーカは頷いて。
「そうなのです。このイコルについて調査していたアドラステイアの探偵さんが居て……製造施設の場所を割り出すことが出来た様なのです」
「とは言え造施設の中は完全に秘匿されており、中に侵入する事は難しい様なのです。ですがここからイコルの出荷が度々行われているのです」
「このイコルですが……最近はアドラステイアだけでなく、周域の所にも出荷されているみたいなのです。そしてイコルを大量に摂取した人達が、『白い獣』に変化してしまったというのも良く聞く話なのです」
「少なくともこのまま自体を放置しておくには危険で、探偵さんから『イコルの出荷を妨げるために、力を貸して暮れないか?』と言う手紙が来たのですよ!」
「この手紙には、出荷される荷馬車の時間が記載されているので、この時間にイコルを出荷する荷馬車が外に出た所で襲撃をし、出荷を未然に止めてきて欲しい訳なのです!」
「本当この手紙の探偵さん……ユリーカに、迷惑事ばっかりを持ち込んでくるのですが、でもこの『イコル』を蔓延らせ続けていい訳にはならないのです。という訳で皆さん、宜しく頼みます、なのですよ!』
 と、快活な笑顔で皆を送り出すのであった。

GMコメント

 皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)と申します。
 アドラステイア下層で生産される『イコル』。
 この生産施設を攻め入る事はまだ難しい様ですが、出荷を妨害する事は出来るでしょう……危険なイコルをこのままのさばらせておく訳にはいきません。

 ●成功条件
  アドラステイア下層にて、イコルを出荷する荷馬車を妨害(止める)事です。

 ●情報精度
  このシナリオの情報精度はBです。
  依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 ●周りの状況
  イコルを出荷する荷馬車には、御者として子供が2、3人と指導役(逃げないように、というお目付役も含む)のティーチャーが一人います。
  彼等を妨害した上で、荷馬車の荷物を破壊(火で焼く等)すれば、依頼としては成功になります。
  ただ、イコルの出荷を妨げようとすると、ティーチャーが『聖獣』を呼び寄せるので、子供達とティーチャー、聖獣との三つ巴の戦いになります。
  
  また、ティーチャーは子供達にイコルを過剰摂取させる事で、子供達を聖獣化させる事もあります。
  子供達はティーチャーの指示には従順に従うので、それも止めなければ戦力が増強されてしまう事になりますので、ご注意下さい。

 ●討伐目標
 イコル出荷の御者の『子供達』
   アドラステイア下層、フォルトゥーナにて働く子供達です。
   今回の子供達は配送がお仕事の様で、彼等は作り方等を知って居る訳ではありません。
   ただお仕事をした後に、ティーチャーがくれるイコルの為に頑張って働いているという状況です。
   その為かなりイコルを長期摂取しており、イコルを大量摂取すれば聖獣化してしまいます。(聖獣化した場合は、下記の呼び寄せられた『聖獣』と同様の戦闘能力になります)
   戦闘能力はそこまで高くありません……ティーチャーから与えられた護身用の短刀だけが、子供達の武器となります。
   しかしその武器には、ティーチャー達による毒が塗り込められているので、ダメージを受けると毒のバッドステータスを受けてしまいます。
 
 お目付役の『ティーチャー』
   子供達を指導し、イコルを外の世界に売ってお金を稼いでいる奴です。
   とは言え、彼等も上の指示に従い行動しているだけで、製造には関わっていません。
   子供達を上手く利用して、稼いでいるという悪知恵だけで出来て居るような奴らなので、正義はありません。
   ……こいつらは笛を吹き、下層に居る近くの聖獣を呼び寄せるのが主たる行動になります。
   自衛する手段として、剣鎧位は装備をしているものの、熟練度は低めです。
   ただ、鎧を装備しているのより強い盾……そう、子供達を自分の盾にしてくるので、そういった意味では一番手強い相手かもしれません。
 
 呼び寄せられた『聖獣』
   大人より一回り大きい位の体躯をした獅子の獣です。
   その背中に白い両翼を生やしており、下層に住む子供、ティーチャー達からは『自分達を守ってくれるすげーやつ!』の様に考えて居ます。
   なので、聖獣が暴れて周りの建物を壊したりしても、下層の人達は咎めることをしません……むしろ自分も、と拳を振り上げてくる可能性すらあります。
   戦闘能力は高く、素早さで相手を翻弄すると共に、その爪と牙で閃撃を穿ち、攻撃してきます。体力も高めです。

 尚、このシナリオは〆切りまで短めですので、ご注意下さい。

 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • 至福の味と、幻の味完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年02月28日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
Lumière Stellaire
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)
アネモネの花束
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)
神殺し
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
オウェード=ランドマスター(p3p009184)
黒鉄守護
刻見 雲雀(p3p010272)
最果てに至る邪眼

リプレイ

●命よりも大切な
 天義首都、フォン・ルーベルグより離れた海沿いの独立都市『アドラステイア』。
 各層の巨大な壁によって隔てられた街は、各々の層独特の生活が既に根付いており、下層は下層の、中層は中層の生活が送られている。
 ……だが、そんなアドラステイアの中でも、下層の一角に設けられた実験区画『フォルトゥーナ』は他とは違う、独特な雰囲気が漂う。
「……ここみたいね。あの薬の製造元は」
 半身を隠しながら、『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)がぽつり零す。
 実験区画『フォルトゥーナ』……そう、この区画内で作られているのは、アドラステイアにて接種されている『イコル』という薬。
 赤い錠剤の形をしたその薬は、接種した者曰く……心がすっきり落ち着き、幸せな気持ちを抱かせるというもの。
 一度接種した者はその薬の効き目に更に求め……二度、三度……段々と常用し、手放せなくなってしまう。
 そしてその薬を接種し続けた者の一部は……突如凶暴化し、獣の姿へとなってしまうのである。
「そうじゃな。イコルの話はワシも何度も聞いておるぞ!」
「ん……イコルは人を聖獣化に変えるひどい薬……飲んだ人は、心も身体も変えられてしまう……」
「そうじゃな……変わってしまった者は、聖獣と化してしまうと言うのう……その様な副作用がある薬を飲むのに不安などは感じなかったのかのう?」
「そのあたりはわからないけど……でも、こどもたちも、おとなたちも、みんなほしがってる。なんだろう……そういったふあんを、かんじてないみたい」
 『守護の導き手』オウェード=ランドマスター(p3p009184)に『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)が首を傾げる。
 確かにリュコスの言う通り、その様な副作用があると知れ渡れば普通は止めようとするだろう。
 だが、アドラステイアに棲まう人々は飲むのを止めようとしない……その幸福感を失うのを恐れるが如く。
「全く。同じ人間のする事とは思えねぇな。天義じゃ汚職に塗れた奴らをごまんと見てきたが、こいつはその中でも群を抜いて最悪だぜ」
「ええ……このイコルは強い依存症と、聖獣へ身体を書き換える効果の両方が特徴。既に聖獣化が進んでしまい、殺さなければならなかった子はたくさん……今迄も、聖獣になった子を戻す方法が見つかれば……と思ったこともまた、沢山……」
 『鳥籠の画家』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)の言葉に、目を伏す『医術士』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)。
 今迄に聖獣化してしまい、助けられなかった数多の手を見てきたココロ。
 助けたい……そんな強い想いがあるからこそ、この依頼に駆ける思いも強い。
 そんなココロの声を聞きながら『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)が。
「本当、子供は世界の未来を託すものなのだ……とアドラステイア絡みの仕事をする度に言っている気がするぞ。早くあの組織を壊滅させたいね……まぁ、飲食店の厨房に巣くうゴキブリの駆除並みに大変そうだがね」
 苦笑するモカに、『最果てに至る邪眼』刻見 雲雀(p3p010272)も。
「本当だね。やっぱり世界というもの問わず、ろくでもない連中というものは存在するものだ。仮にこの件を解決したところで、氷山の一角に過ぎないのだろうけど、見て見ぬ振りをするのは何かしらの良い方向になると信じたい所だね」
「ああ。何にせよ、救ってやれる命があるなら手を伸ばさねぇ道理はねぇぜ!」
 笑う雲雀と、拳を振り上げるベルナルド、そしてリュコスも。
「そうだね……こんなお薬が持ち出されるのが許せるわけないよね?」
 と言うと、イーリンとココロが。
「ええ。今こそチャンス到来。大量のサンプル確保だわ。上手くやれば治療が大きく前進し、救える日とも増える。そうでしょう? ココロ」
「はい。イコルを止め、治療法の確立を目指す大きな一歩を踏み出せるかもしれません」
 と言うと、リュコスが。
「そうなの? 回収できたら、イコルのたいこーやくが作れるかもしれない……? 頭いい! そうなったらすごい役立つね。こわさず持って帰れるようにがんばろー!」
 目をキラキラさせながら、気合いが入るリュコス、そして。
「始めましょう、神がそれを望まれる」
「ええ……行きましょう、お師匠様」
 イーリンにココロも頷いていく。
 そしてオウェードが、ユリーカから預かったメモと、時の刻を見比べる。
「ふむ……後十分位か」
 と言いつつ、再度フォルトゥーナの方に視線を配る。
 巨大な扉は未だ閉じられているが、聞き耳を良く立ててみると……中から。
『ほら、そっちの荷馬車には10箱だ。ほら、運べ!!』
『うぅ……は、はい……ティーチャー……!』
 荷馬車に荷を積んでいるであろう声が聞こえてくる。
 その声を聞きつつ、『Utraque unum』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)は先に調べておいた周囲の地図を皆に見せながら。
「今回は荷馬車だからな……荷馬車は車両ほど滑らかな方向転換や後退は難しい。だから、前面の三方を抑えれば、身動きが取れなくなる筈だ。それに障害物がある道は通りたくないだろう……となると、この辺りのルートを通る可能性が高いと思う」
 幾つかのルートを赤く記すアーマデル。
「ふむ……馬車の通過ルート……この辺りで一本になっている様じゃが?」
「ああ。この下層を出る門も限られているからな……このフォルトゥーナがある場所から一番近いのはここだろう。勿論迂回して出て行く可能性もあるが……奴らは襲われると思っていない筈」
「そうじゃな……あいわかった。では、その方針で行くとしよう!」
 オウェードが頷いた……その瞬間。
 ゴゴゴゴゴ、と低い音を立てながら、フォルトゥーナの門が開くのであった。

●幸福たる秘薬
「よし、子供達。それじゃあ馬を引くんだ! しっかりと働いた子にはイコルを上げるからな!」
『本当!? うん、がんばる……!』
 ティーチャーの指示に、目を光らせ馬を牽く、子供達。
 この荷馬車はアドラステイア外の街に出荷するイコルを積んでいる様で……フォルトゥーナから街の外へと出る為の門に向けて、荷馬車を走らす。
 そんな荷馬車の動きを、隠れながら追跡するのはイーリンと、クロウタドリの姿に変質したベルナルド。
「……うん。アーマデルが見込んでいたルートを進んでいるわね。となると……この辺りで襲撃が良さそうね」
「分かった。その旨仲間達に伝えておくな」
 モカは短くイーリンと打合せし、それを別の場所で待ち構える仲間達に伝達。
 そして仲間達は、何カ所か決めておいた待ち伏せ場所の中、相手の荷馬車が辿り着きそうな所に移動し、待ち構える。
 当然、いつ彼等の動きが変わるとも知れないので、追跡している二人は常にその情報を仲間達と連携する事で、違う方向に向かったときにはすぐに修正する様にする。
 そんなイレギュラーズ達の偵察に荷馬車の者達は気づくことはなく、アドラステイア外に向けてのルートを進んで行く。
 そして……後もう少しでアドラステイア下層を出る、少しごみごみとした場所へ差し掛かり、行く先には大きな木材が転がっていて。
『何だぁ? 誰だこんな所に、木材を置いてったヤツはよ……』
 溜息を吐きながら、子供達から少しだけ先を歩き、その木材を道から取り除こうとするティーチャー。
「……みんな、準備はいい?」
「うむ……では始めるとするかのう!」
 雲雀にオウェードが頷き、そして……不意を突く形で雲雀は気配を遮断した上で、忍び足で接近。
 同時に、ココロとイーリンが用意した馬車を突撃させ、更に雲雀がティーチャーの目前に不意に姿を表し。
『……ん? うわぁあっ!?』
 雲雀の接近に全く気付かれぬまま、ティーチャーを弾き飛ばす衝撃術が放たれ、ティーチャーは子供達から少し離れた所に吹き飛ばされる。
『え? あ、ティーチャーが!!』
『なんだおまえたちー! あ、これをうばいにきたやつらかー! そんなの、ぜったいにさせないぞー!!』
 引き剥がされたティーチャーを心配しつつも、己の仕事を全うしようと、イコルを守る為に立ち塞がる子供達。
 そんな子供達に向けて、ココロが姿を表すと毅然とした口調で。
「その薬、君達本当は無いだか知らないんでしょ! 飲み続ければ、人が人で無くなるのよ!!」
 とイコルの副作用を子供達に告げる。
 だが……子供達は。
『そんな訳ないもん! イコルはぼくたちのごほうびなんだ! ごほうびを奪うのは、みーんな敵だー!!』
『そうだそうだ!! ぜーったいにこれは渡さないんだからね!!』
 どうも子供達は、イコルを飲み続けると毒になる……というのを聞いていない、もしくは信じるに値しないもの、だと思って居る模様。
 一方、吹き飛ばされたティーチャーは、僅かながら不味いという表情を浮かべつつ。
『この……これは緊急事態だ!! 誰か、来てくれっ……!』
 とその懐から笛を取り出し、口元に運ぶ。
「させるかっ!」
 と咄嗟にモカがその笛を奪おうとティーチャーの下に駆けるが……ほんの僅か間に合わず、笛の音がその場に響きわたる。
「くっ……! 助けなんざ呼ばせるかよ。テメェの不正義を呪いやがれ!」
 咄嗟にベルナルドが音を掻き消すように騒音を響きわたらせ、笛の音を妨害する。
 ただ、ほんの一瞬響いた音は掻き消す事は出来ない。
 でも、そのまま彼の顔面に一撃を食らわせ、笛を破壊がてらに吹き飛ばし、その笛はアーマデルが脚で踏みつけ破壊。
 更なる追撃を呼ばせない様にはしたものの……遠くの方がざわつき始め。
『ガルゥ……!!』
 そのざわつきの中に、獰猛なる獣の鳴き声も響きわたる。
「しかたない……まずは、馬車をつかいものにさせないようにするよ! ティーチャーはたのんだよ!!」
 とリュコスが子供達の握る手綱をバサッ、と切り離しながら、荷馬車との間に割り込む。
『じゃまするなー!』
『じゃまするなら、ころすだけだぞー!!』
 と子供達は、妨害するリュコスに毒塗りの短剣で攻撃しようと振りかぶる。
 しかしその攻撃を、魔力塊により作られた剣で打ち返すイーリン。
「まったく……聞き分けの悪い子達ね? まぁ聞く耳を持たないのなら仕方ないわ……勉強の時間よ。どっちが正しいか、教えてあげる」
 と少しだけ冷たい口調で子供達に言い放つ。
『うるさいうるさーい!!』『イコルを奪う罪人はぼくたちの手でしゅくせーだー!』
 と子供達は一層増長し、イレギュラーズ達へ反撃の狼煙を上げる。
「……仕方ありません」
 そんな子供達に、唇を噛みしめながら、ココロは光の柱を間欠泉の様に噴出させ、子供を包み込む。
 その一撃は相手を倒す事無く、不殺にする一撃。
 子供一人がそれに包まれその場に気絶すると、周りの子供達は。
『な、何これ……!?』
『こわい……で、でも……ぼくたちがしっかりしないと!』
 イコルを運ぶという仕事を与えられているからか……使命感を抱いている子供達。
 決して降参する事無く、子供達はイレギュラーズ達に反撃の短剣を振るう。
 更に少し離れた所のティーチャーからは、子供達に向けて。
『いいか、お前達! わたしのもとにきたら、イコルをはずんであげよう!! だから、目の前の奴らを殺してくるんだぞ!!』
 と殺害指示を与え、子供達はうん、わかったと目を輝かせて頷く。
 あの甘美なイコルを貰えれば、凄く嬉しい……だからこそ張り切るのは自然な流れだろう。
 でもイコルを過剰に与えられれば、子供達もまた聖獣化してしまう……だから、止めねばならない。
 しかし士気高揚した子供達は、己が身を捧げる事も厭わずに、全力で攻撃をしてくる。
 更に、遠くの方から聞こえた聖獣の叫びが、数刻の後に近づいてきて……とうとう、その場に到達する。
『ガル……ゥゥウ!!』
『うわー、聖獣さまだー!!』
『聖獣さまに見られて戦うなんて、こうえいだー! よーっし、ぜったいにころすぞー!!』
 更に士気を高揚させる子供達。
 ……そんな子供達の暴れ様は、まさに手が付けられない子供が駄々を捏ねるが如く。
「仕方ないな……子供達はこっちに任せて、聖獣は頼めるか?」
「うむ! アーマデル、ベルナルド仕掛けるぞ!」
「ああ……」「了解だ!」
 モカにオウェードとアーマデル、ベルナルドが頷き、聖獣を三人で対応。
 一方、雲雀はティーチャーに対峙、更にイーリンも……気絶した子供を足蹴にしながら、ティーチャーに対応。
 子供、ティーチャー、聖獣の三つの敵が様々な方向から攻撃するという……乱戦の様相を呈している。
 勿論、決してティーチャーのイコルは子供達に与えぬ様、両者の距離は確実に引き離す。
 更に子供達も荷馬車の中に在るイコルを食べない様に、荷馬車との間に立ち塞がる事でそれをも許さない。
『くそー……じゃましやがってー!!』
『なんだよー、おまえたちだってイコルほしーだろ!! しあわせになるのに、いやなのかよー!!』
 と子供達は叫ぶが、イレギュラーズ達は耳を貸さない。
 そして聖獣に対峙する三人は、容赦無く全力で攻撃し、短時間の間に倒していく。
「良し、こいつは討伐完了だ!」
「そしたら、今度はティーチャーを! 下層の人たちに囲まれて逃げられなくなったら大変だからね!!」
「分かった!」
 リュコスの言葉に、ベルナルドが頷き、先程の三人はティーチャーへの攻撃へシフト。
 子供達を盾にする事も出来ず、自衛手段も未熟なティーチャーはイレギュラーズ達に大した抵抗も出来ずに倒れる。
『あ、ティーチャーが!!』
『ティーチャー、だいじょーぶ!!』
 と子供達が一気に驚愕の表情を浮かべたところへ、ココロが。
「ごめんね……ちょっと痛いかもしれない。でも、その命は奪わないから……だから、倒れて……」
 苦しそうな表情を浮かべたココロの不殺の一撃が、次々と子供達を気絶させていくのであった。

●盲目的な影
「……ふぅ」
 汗を拭い、息を吐くオウェード。
 死した聖獣、半分程が気絶した子供とティーチャー……そして、数箱のイコンが収納された箱。
 ……ただその静けさは長くは続かない。遠くの方から。
『……あそこだ! 皆、集まれ!!』
 先のティーチャーの一笛に、不審を感じて様子を見に来た、ティーチャーの仲間達。
 ……イレギュラーズ達に倒されたのが異常事態だと判断し、彼らも又笛を鳴らして、更なる仲間を呼び寄せる。
「流石に頃合いね……イコルは一箱持って行って! アーマデルとモカは、守護を御願い!」
 と言うと共に、即座にイーリンは荷馬車に火を放つ。
 瞬く間に火が回る荷馬車……その一箱だけをココロに渡すと共に、ココロはアーマデルとモカと共に、その場から離脱する。
 そして、先程声を上げたティーチャーに向けては、ベルナルドが敵を弾き飛ばす衝撃波を放ち、建物へと叩きつけると共に気絶させる。
「こっちだ!」
「ええ。子供を一人でも多く連れて行くわよ!」
「了解じゃ!」
 イーリンの指示の下、背負える限りの気絶した子供を背負い、その場から脱出するオウェード……イコルは炎に包まれ、燃え尽きて行く。
 今回の出荷を妨げる事は出来たものの……まだまだイコルはアドラステイアに蔓延り続ける。
 しかしイコルを確保した事によって……その解決の一歩は確実に進み始めた。

成否

成功

MVP

ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
Lumière Stellaire

状態異常

なし

あとがき

アドラステイアの闇に斬り込む依頼に参加戴き、ありがとうございました。
皆様のプレイングの結果、今回は子供達を避難させる事が出来ました。
ただ、いままでイコルをほしさに頑張っていた子供達……彼等が上手く生活出来るかは、皆様がどう今後関わっていくか、に掛かっています。

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