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シナリオ詳細

再現性東京202X:変態糞親爺グラクロにタつ

完了

参加者 : 8 人

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オープニング

再現性東京202X:変態糞親爺グラクロにタつ
●グラクロの季節ですね。それはそれとしてチョコにはしゃぐ奴は許さねえ
 再現性東京。そこは練達の一区画に存在するものであり、さらにその一区画には希望ヶ浜と呼ばれる地域が存在する。
 それは嘗て異世界『地球』よりこの世界に召喚され、変化を受け入れなかった――受け入れられなかった――者達の聖域である。
 先のR.O.Oの影響で大きな被害が発生し、一部にて都市機能が復旧しないままの地域もあったりするのだが、今回の話とは別なので割愛。
 今回はこの希望ヶ浜での出来事だ。
 グラオ・クローネというイベントを間近にして、浮き足立つ人々。
 そんな彼らを襲う悲劇。
「チョコ~! チョコをくれ~!」
 チョコレイトを求めて彷徨う者にチョコを奪われる事件が発生。
 被害者はいずれも年若い少女。その大半は希望ヶ浜学園に所属する生徒だという。
 泣き崩れる彼女達が求めた先は――――

●「ちょっと誰かバーコードハゲで背中に妖精の羽生やしてお花のステッキ持ったパンツ姿のおっさんをどうにかしてきて。あわよくばチョコを奪還して」
「ごめん、今なんて?」
 『性別に偽りなし』暁月・ほむら(p3n000145) は戸惑いながら目の前の客達に向かって聞き直した。
 ここはカフェ『ローレット』。依頼を持ち込まれる場所だ。
 ほむらの隣には情報屋の若い男も同席している。ほむらは彼に同席を頼まれてこの席についていた。
 情報屋の男も困惑の表情を隠しきれない様子で、整った顔の頬を掻いている。
 目の前の客達は希望ヶ浜学園の生徒。交際しているらしい男女が情報屋とほむらに先程の依頼を持ち込んできた。
「だから、バーコードハゲで背中に妖精の羽生やしてお花のステッキ持ったパンツ姿のおっさんをどうにかしてきて。あわよくばチョコを奪還してほしいって言ってるの!」
「情報量が多い!」
 思わずツッコミに回ったのも仕方ない。なんだよそのおっさん。ただの変態じゃないのかよ。
 困惑気味の彼をよそに、情報屋の男は表情を柔和な微笑みに戻すと、改めて詳細を尋ねた。
「それで、どうしてこちらに依頼を?」
「友達から聞いたの。何でも解決してくれる人が居るって。犯人は全然捕まらないし、もうここにしか頼るしかなくて……。
 せっかく用意したチョコが悉く奪われるなんて! ああ……ごめんなさい!!」
「謝る事はないさ。それよりも、愛する君のチョコを奪うなんて……!」
「そういうのはここを出てから続きやってくれる?」
 なんかイチャイチャしだしたので、イラッとしたほむらはジト目しながら会話をぶった切った。嫉妬ではない。断じて。
 こほん、と男子生徒の方が咳払いを一つして、改めて情報屋達に向き直る。
「被害者は他にも多くて。彼女だけじゃないんだ……。どうか、捕まえてくれないだろうか。頼む」
 頭を下げる男女二人に対し、情報屋の男は「わかりました」と快諾する。
 詳細を聞き出した二人を見送った後、ほむらは情報屋の男に問う。
「いいの? あれ引き受けて」
「この時期の大事な事だしね。あとは、話を聞く限り夜妖の可能性が高そうだから」
「ふぅん。
 ところで、チョコって毎年どんだけ貰ってるの?」
「大体五~六個だね。まあ、ほとんど義理だけど」
 つまり、本命も混じっているのかこいつ。
 なんだか無性にイラッとしたほむらだった。

●というわけで、皆さんにはおじさんを退治していただきます
 希望ヶ浜の一画にある緑溢れる公園。
 時刻は夕刻。チョコを持った帰宅途中の女子を狙う時間帯だ。
 集まったイレギュラーズの格好は大抵が女子の姿である。魔法少女風だったり、女子高生風だったり。男? 男も例外なく女子の格好です。当然でしょ?
「と、まあ、そういう訳で、バーコードハゲで背中に妖精の羽生やしてお花のステッキ持ったパンツ姿のおっさんは夜妖の可能性が高そうなので、退治する事になったんだよ」
「情報量が多すぎない? あとパンツってズボンじゃなくて?」
「それはもう私がツッコんだ後なんだよ。それと、パンツは下着の方だ」
 イレギュラーズの質問に返した後、改めて今回の依頼を説明する。
「バーコードハゲで背中に妖精の羽生やしてお花のステッキ持ったパンツ姿のおっさん……長いのでもう属性過多おじさんって呼ぶね」
「一気に短くなったな」
「属性過多おじさんは若い娘を襲ってチョコを強奪するそうでね。被害者の大半は学園の女生徒。たまに大人も狙われたりするらしい」
「狙われるのに条件が?」
「チョコを持ってるのは前提条件として、女子高生が多く狙われててね。あとは魔法少女風のコスプレしてる子も狙われたみたい。だから今回は制服姿か魔法少女風が望ましいってわけ」
「そう言われてもなぁ……」
 自分の格好を見下ろすイレギュラーズ。なお、ほむらは学園の生徒としての制服だが、元々女子の制服を着ていたりする。
「あと、ロリ系も好みらしいよ。ロリ顔だけでもロリ体型だけでも反応するし喜ぶんだって。頑張ろ?」
「もうそれ色々キツくない?」
「仕方ないよ。夜妖だし」
 彼の返答を聞いて浮かぶ疑問。
「なんで夜妖だって分かったんだ? ただの変な人じゃないのか?」
「それが、何をされたのか分からない内にチョコを奪われたんだって」
 多分精神系のものを受け、その隙に奪われたのではないかとの事。どのような事を受けたのか、詳細は不明だが、対応するしか無さそうだ。
 手元に持つチョコを見ながら、溜息をつくイレギュラーズ。
 不確かな情報を元に動こうとした時、彼らの前に三人のおじさんが現れた。
 バーコードハゲで背中に妖精の羽生やしてお花のステッキ持ったパンツ姿のおっさんである。それも三体。
 両手を合わせ、お辞儀をするおっさん達。
「どーも、ロリ大好き妖精おじさんです」
「どーも、女子高生大好き妖精おじさんです」
「どーも、チョコ大好き妖精おじさんです」
 なんか背後に爆発音でも背負いそうな挨拶をしてきた。
 というか、最後のはただのおじさんでは?
「チョコをくれ~!!」
 イレギュラーズの持つチョコを狙って襲いかかってくるおっさん達。
 なんかもう色々アレだけど、やるっきゃない!

GMコメント

 なんか唐突に降って湧いたワードが「バーコードハゲで背中に妖精の羽生やしてお花のステッキ持ったパンツ姿のおっさん」だったんですよ。なんでなんですかね?
 そんなわけで、今回はコメディシナリオです。

●達成条件
 バーコードハゲで背中に妖精の羽生やしてお花のステッキ持ったパンツ姿のおっさん(夜妖)三体を全滅させる

●プレイングにて記載してほしい事
 服装について以下より選択してください。
・女子高生風
・魔法少女風
・ロリっ子風

 男も強制的に女装です。お覚悟ください。

●敵情報
 バーコードハゲで背中に妖精の羽生やしてお花のステッキ持ったパンツ姿のおっさん×三体
・【飛行】を持つ為、回避が高め。
・【魅了】や【混乱】を用いた神秘・中距離・範囲攻撃を放つ。
・ロリ系、女子高生、チョコそれぞれに反応するとテンションが上がって迫ってきます。

●ほむら
 多分イレギュラーズの活躍次第では空気になります。
 援護ぐらいはすると思いますが。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 そんなわけで、よろしくお願いいたします。

  • 再現性東京202X:変態糞親爺グラクロにタつ完了
  • GM名古里兎 握
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年03月04日 22時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)
炎の守護者
ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)
黒武護
リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)
木漏れ日のフルール
城火 綾花(p3p007140)
Joker
皿倉 咲良(p3p009816)
正義の味方
ハンナ・フォン・ルーデル(p3p010234)
天空の魔王
百合草 瑠々(p3p010340)
偲雪の守人

リプレイ

●追う者と追われる者の違いなんてないんだ本件に限っては
 ――意味が、わからない。
 世間ではグラオクローネとかいうイベント。向こうでは所謂バレンタインなのだろう。
 自分には関係ない。そのはずだった。
 目の前で展開されている、バーコードハゲで背中に妖精の羽生やしてお花のステッキ持ったパンツ姿のおっさん三体が飛ぶ姿。
 視覚の暴力なそれらに、自分達の持つチョコを求めて襲いかかられている現状。
「地獄か?」
 げんなりとした様子で『血反吐塗れのプライド』百合草 瑠々(p3p010340)は吐き捨てる。
 彼女に同調するように、『魔刻福音』ヨハン=レーム(p3p001117)も軽蔑の目を夜妖に向けていた。
「変態糞親爺ってこの日に聞いて良い言葉じゃないよね、狂ってる」
「激しく同意だ」
 二人がが着ているのは女子高生の制服だ。瑠々は昔着ていた時を思い出して軽く吐き気がしてきたのをなんとか飲み込む。
 ヨハンは他の選択肢の中では一番マシなものを選んだつもりだ。足下がスースーするのが気になるし、風でめくれそうになるのも気になる。が、今はそれよりも。
「バーコードハゲで背中に妖精の羽生やしてお花のステッキ持ったパンツ姿のおっさん、お前どうしてその姿を取る事を決めたの? 夜妖の中でも相当な社会的少数者でしょこれ。
 やべぇ薬キメたやつの見間違いであってほしかったよ。今からでもそういう事にして良いと思うから、そういう事にしよ?」
 残念ながら出来ないんだ。現実を見よう、ヨハン。
「ガッデム!」
 なんでだろう。ヨハンは目の端に水が溜まりそうな気がした。
 『Joker』城火 綾花(p3p007140)は目の前で飛ぶ夜妖を見て、口を一瞬だけ強く結ぶ。
「グラオ・クローネってもっとこう……華のある感じだと思ってたけど、これはちょっと、無いわね」
 変態的な格好の客への対応に慣れているとはいえ、いざあのように揃って来られると嫌悪感もひとしおというか。
 そんな彼女の格好も女子高生風である。
 綾花憧れのセーラー服! その下にはバニースーツを着込んで完全装備! え、なんで?
 本人曰く、「違和感は無いわよ!」との事らしいが、見えないので、まあヨシ!
 現役女子高生な『正義の味方』皿倉 咲良(p3p009816)は先程から夜妖を見ては顔をしかめている。姿にというより、その性根に。
(いくら夜妖とはいってもさ、いい年こいた紳士として恥ずかしくないのかな? 大人でしょ? 人のものを勝手に奪って取り上げちゃいけませんって幼稚園児保育園児でも知ってることだよ)
 残念ながらお嬢さん、夜妖に人間の常識求めちゃいけないんだ。残念ながら。
 そうこうしている内に、三体の内一体が女性高生姿な三人を見つけて飛んできた。
「女子高生だーー! チョコをくれーー!」
 反射的に四人で逃げながら、ヨハンが叫ぶ。
「うわぁ! やめろ、僕は男だぞ!」
「あっ、てめえズルいぞ!」
 瑠々の文句を聞き流し、夜妖が鼻息荒くヨハンへ返事する。
「男でも女子高生姿が似合ってればいいんだよ! 可愛いねえ!」
「思いっきり変態じゃないか!! 帰れ!!」
「夜妖って帰る場所どこなのかしら?」
「気にするところそこじゃなくね?!」
 ツッコむ瑠々に対し、綾花はどこ吹く風で更に疑問を口にする。
「ところで女子高生ってどんな風にすればいいのかしら?」
「今更かよ?!」
 瑠々のツッコミが忙しい。多分今回の任務で一番胃が痛くなるんじゃなかろうか。大丈夫かなこの子。
「瑠々さん、ツッコミ大変だね……」
「そう思うなら助けろ!」
 咲良の言葉に対する瑠々の返答は尤もであった。

 別の個体に狙われている『炎の守護者』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)はジリジリと一定の距離を保ちながら睨み合う。
 彼の見た目は十歳程の少年。所謂ショタだ。しかし、今回の任務では少年の姿から少女の姿に変身している。
 ふんだんにフリルのついた白い服。甘ロリと呼ばれる服装に身を包んでいる彼は、様々なお菓子が入ったグラクロお楽しみセットを胸に抱えて夜妖を睨む。
「この変態! お変態! いえ……お変質者?
 皆様の想いが詰まったチョコを奪い取るなど許せませんわ!」
 なんでお嬢様風口調になってるの。多分、何か色々あったんだろうなぁ。
「ぐふふ……ロリ……ロリっ子だぁ……おじさんにチョコをおくれぇ……」
「まぁ……なんて絵に書いたようなお変質者さまなの……」
 話に聞いた通りすぎて思わず顔をしかめる。
「それにしても、目に悪い相手ですわね……。
 せめて服をお召しになるかその羽とっていただけませんか?」
「それは出来ないなぁ。アイデンティティーだからねぇ……」
 どういうアイデンティティーだよ。
 胸中で思わず毒づくのも無理らしからぬ事。
「このチョコがほしかったら私を倒してくださいまし!」
「ひゃっほぅーい!」
「喜ぶんじゃありませんわよ!」
 変態だもの、喜ぶから仕方ないよ。
 襲いかかってこようとする夜妖と、構えるチャロロの前に、一つの影が躍り出てきた。
「か弱い乙女に襲いかかろうなんて許しがたい蛮行!」
 ふわりと広がるスカート(ただし、下着は見えない)。腰に結ばれて揺れるリボン。
 風にたなびく金の髪。頭には蔓で飾り付けをした小さなとんがり帽子。
 ステッキを持って、緑の魔法少女――――『木漏れ日の魔法少女』リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)がそこに立っていた。
「チョコを奪われた乙女達の為にも、そして今新たに犠牲にしようとする乙女を護る為にも、成敗いたします!」
「さりげなく乙女扱いされた……」
 ぼそっと呟かれた言葉を無視し、リディアはチャロロに話しかける。
「加勢いたします。お一人では大変でしょうから」
「ありがとう。でも、いいの? 確かあともう一体居たよね?」
「あちらは多分大丈夫かと思います」
「え、そうなの?」
「だって、あの方が居ますから」
 そう言ってリディアが指差した先には、彼女と同じく魔法少女風の衣装に身を包んだ二人の姿があった。

 魔法少女。それは女児の憧れの存在。大きなお友達からもラブコールが起こる事もあるが、それはそれとして。
 敵と対峙する魔法少女であるというからには、決め台詞である名乗りがあってもおかしくはない。
(そう、おかしくはないのです!)
 うんうんと頷く『天空の魔王』ハンナ・フォン・ルーデル(p3p010234)は無理矢理自分を納得させる。
 頭を抱えたくなる衝動と闘いながら、彼女は閉じていた目をカッと開いて名乗りを上げた。
「魔法少女マジカルバレット☆ハンナ華麗に参上☆ミ
 女の子を襲う悪いおじさんは、私が撃ちぬいちゃうゾッ☆ミ」
 きゅるん、とした目で笑顔になってウインクを一つ。極めつけは腰に手を当てて目元にピース。
 フリルのついたスカートを履き、上は動きやすいシンプルさながらも袖にはしっかりとつけられたフリル。両手に嵌めたグローブには☆のマークが描かれていた。魔法少女(物理)かな?
 背中には白い翼があり、天使のような魔法少女と言っても違和感は無い。
 普段の自分から魔法少女へとテンションを振り切った彼女の勢いは強く、覚悟を決めた目をしていた。
 そして、彼女と同じように魔法少女風の衣装に身を包んだ最後の一人が元気に名乗る。
「プリティ★プリンセス★むっちぃ! だよぉ!」
 『最強砲台』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)が(脂肪を寄せて上げた)胸を揺らしてウインク。
 名乗りの間にある星が真っ黒なのは気のせいかな? 気のせいって事にしておこう。
「うぼぁ」

 バーコードハゲで背中に妖精の羽生やしてお花のステッキ持ったパンツ姿のおっさん は (精神的)ダメージ を 受けた!

 口から血を吐いた夜妖の様子に「失礼しちゃう!」と怒るムスティスラーフ。
 ヨハンやチャロロの姿はセーフだったのに失礼な判定である。
 そして彼は胸の谷間にラッピングされた小さな箱を挟んだ。
「さぁ、チョコレートだよ、受け取って!」
「嫌だぁ!!」
 全力で拒否された。むっち傷ついちゃう! 女の子(仮の姿)だもん!
 ムスティスラーフの姿に恐れを成したのか、逆に夜妖の方が逃げ出した。それを追いかけるムスティスラーフ。
「待って! このチョコはね、チョコ風呂に使ったチョコを再度チョコにした僕の出汁と愛が詰まったチョコレートなんだ!
 僕の愛、受け取ってよね!」
「なんだよその悪意しか無いチョコは!」
「失敬な! 純愛(たっぷりなチョコ)だよ!」
 始まった追いかけっこを眺めるしか出来ないハンナと、すっかり空気になってる『性別に偽りなし』暁月・ほむら(p3n000145)。
 どうしよう、という目で顔を見合わせつつ、とりあえず彼らも追いかける事にしたのだった。

●いや、これは仕方なくない?
「ねえ、僕帰って良い?」
「ダメだよヨハンくん。こいつらからチョコを取り返さないとなんだから」
 ヨハンの零した言葉を咲良が一蹴する。
「むっちとかが何とかするでしょ。何とかする所も見たくないよ」
 追いかけっこが始まった魔法少女風衣装組の様子を目の端に捉えながら、真顔で言うヨハン。
 もうじきムスティスラーフが夜妖に追いつきそうだ。彼も飛んでいるから捕まえるのは容易いだろう。怖いのはその後だけど、見ない事に出来ないかなぁ、無理だろうなぁ。
 なお、こんなやり取りをしているが、ヨハンもしっかり仕事はこなしている。炎弾を放ったりして瑠々が食い止めている夜妖に命中させていたりする。えらい!
 少しでも気を逸らそうと、咲良はスカートの裾を左手で少しだけ摘まんで持ち上げる。現れた白い太腿に、悲しいかな、おじさんの目が輝いた。
 個装された一口チョコを右手で持ち、スカートを揺らしながら誘いをかける。
「ねぇおじさん、アタシと甘いことコト……しよ……?」
「こっちにも美味しそうなチョコがあるわよー? 欲しかったらここまでおいで?」
 反対側から誘う綾花は、制服の胸元を少しはだけて谷間にチョコを挟んでいる。グラクロお楽しみセットから出したものだ。
 チョコを見てテンションが上がるおじさんへ、嫌悪と共にヨハンの炎弾が容赦なくぶつけられる。ナイスショット!
「初歩的な事に引っかかるとか、アホすぎない?」
「欲望に忠実すぎるわね……」
 咲良の溜息と綾花の呆れたような声。
 地面に落ちた夜妖は、しかしすぐに立ち上がる。
「まだまだぁ! チョコをくれ~~!」
 再び瑠々に襲いかかってくる夜妖。彼女が落としやすいと思われたのは、慣れてなさそうと思われたからなのか。
「とっととくたばれ!」
 舌打ちした瑠々がカウンターとして繰り出した一撃は、夜妖の勢いのある攻撃に上乗せされて敵に返された。

「ロリっ子だぁ~~! チョコをくれ~~!」
 リディアが加わった事でロリッ子が増えたとテンションを上げる夜妖。
「失礼です。ロリではありません。顔が幼いだけのロリJKです!」
「その姿では説得力ありませんわよ、リディアさん」
 魔法少女風の衣装を指摘して、短く溜息を零すチャロロ。
 その間にも迫ってこようとする夜妖に向けてステッキを振るリディア。見た目では分からないが、これで恐らくは相手の何かを封じた筈だ。変わらず飛んでいるので、それ以外を封じている事になる。
 チャロロが前に出て、拳を繰り出す。先程の瑠々と同じように、相手の攻撃を上乗せして返すその拳の技を、夜妖は顔面からまともに食らった。
 手から伝わる振動に一瞬の嫌悪感。とはいえ、任務だから仕方ない。
「チョコはどこですか? まさかとは思いますけど、既に食べちゃったとか言いませんよね?」
「食べちゃったよ☆」
「チャロロさん、ボコりましょう」
「うん」
 頷きあい、じりじりと近付く二人。
 さぁ、ボコるぞ! と意気込んだ時、突然の轟音が響き渡った。

 轟音の主はハンナのもの。
 彼女の放つ魔力が大砲のように打ち出され、夜妖を狙う。
 ムスティスラーフもそれに合わせて移動し、夜妖に当たるように誘導する。
 衝撃で吹っ飛ばされる夜妖だが、ムスティスラーフが見失わない。
「ときめいている相手を見失う事は無いのさ。もちろん自分も見失っていないよ!」
 彼曰く、そういう事らしいが。
「嫌だぁ! こっちに来るなぁ!」
 他の組とは明らかに真逆の追いかけっこの中で叫ぶ夜妖。
 笑顔で追いかけているムスティスラーフの足が夜妖に追いつく。
 恐怖で顔が引きつっている夜妖の体を自分に向かせるムスティスラーフ。目にハートマークが浮かんでないかい?
 近付いてくる顔に、夜妖が悲鳴を上げる。だが、その悲鳴はムスティスラーフによって塞がれた。
 周りが目を背ける中、ムスティスラーフの必殺技が夜妖を貫いた。精神と物理の両方の意味で。
 致命的な一撃は夜妖に大ダメージを与えた。
「えいっ」
 ハンナの手から打ち出された魔力の大砲が、遠慮無く叩き込まれていくのであった。

 結論から言うと、ムスティスラーフが一体に精神的な大ダメージを与えた事でイレギュラーズの攻撃が通りやすくなったのである。
 フルボッコされていくバーコードハゲで背中に妖精の羽生やしてお花のステッキ持ったパンツ姿のおっさんに、ほむらは少し、スプーンの先っちょほどの少しだけ、同情したのだった。
 まさかこんな事になるなんて誰も思わないよ。

●チョコの行方や如何にして
 倒された夜妖の跡を眺める。残念ながらチョコは取り返せなかったが、討伐したので依頼人にはそれで溜飲を下げてもらうしかない。
 先程まで視界の暴力を受けたイレギュラーズは疲れた顔を見せていた。約一名、疲れではなく残念そうな顔をしているが。そう、ムスティスラーフである。
「夜妖って倒すと消えちゃうんだよね、残念。
 消えなかったら持ち帰って楽しめたのにね」
 何をする気だ、とは誰も口に出来なかった。先程のムスティスラーフの戦いぶりを見れば何となく察しはつくのだ。
 戦闘で乱れた衣服を直しつつ、綾花はあっさりとした調子で話す。
「いやー中々悪夢のようなグラオ・クローネだったわね!」
「まったくだ。混沌に来て初めてのバレンタインがこれとか人生やめてえな。いつもながら」
 舌打ちしつつ、服の裾を摘まむ。
「おい誰か火ィ持ってないか。オッサンにマークされた制服滅菌しておきたいんだが」
「いや、火を近づけたら流石に燃えるからね。後で渡してくれればこっちで処分するよ」
 ほむらのツッコミ混じりの言葉に、瑠々は「まだ着なきゃならねえのかよ」と大きく息を吐いた。
 彼らの近くでは、自身の魔法少女風な姿に関してある意味ダメージを受けている二名が並んで崩れ落ち、ぶつぶつと呟いている。
「私は……一体何を……本当に何をしているんだ私は……」
「私はロリじゃない……ただ顔立ちが幼げなだけの女子高生なんです……ええ、そうなんですよ……決して敵はロリに反応したわけではないんです……」
 ハンナとリディアである。二人とも無表情である。なんとも怖い。
「絶対に知り合いには黙っておきましょう……ええ、記憶の底に封印しましょうそうしましょう」
 ハンナさん、忘れてるようですが、記録は映像化されるんですよ。ご愁傷様です。
 「ところでさ」と切り出したヨハンに何人かの視線が集まる。
「この仕事ってなんか特別手当とか労災が出ても良いと思うんだけど僕にもチョコ貰えない? ダメ?」
 ちらっちらっ
 ヨハンの視線が女性陣に向く。
 女性陣の大半は「あ?」という顔だ。
 肩を落とす彼の背中をポンと叩く手。振り返れば笑顔のムスティスラーフが立っていた。
「あ、チョコいる? 多分普通の人だといらないと思うけど」
「一応聞きますけど、それ何か入れたりしてます?」
「………………………………てへ♡」
「遠慮します!!」
 声をあらん限りに出して叫ぶヨハン。正しい反応をありがとう。
 泣きそうな顔をした彼を見て、溜息をつく瑠々。
「どうしてこんなにもチョコだの欲しいんだろうなァ。男って奴は。その辺男子は何か知らない?」
 話を振られ、残る男子であるチャロロは目を泳がせる。
「あ、あはは……。それより、無事なチョコがあれば、どうせならみんなで分けようか? 友チョコってやつもあるし」
 彼の言葉に咲良が賛同を示す。
「いいね! 幸い、年の近い人も結構多そうだし……! ハンナさんやリディアさんもどう?」
 咲良の呼びかけでこちらに戻ってくる二人。
 友チョコの交換に関して意欲を見せ始める女性陣。
 チャロロやヨハンも、そしてほむらも、「この際友チョコでもいい……!」と、ありがたく貰える幸せを噛みしめる。
 ムスティスラーフが自分のチョコを掲げて問う。
「そうだ、僕のチョコもどう?」
「「「全力で遠慮します!!!!」」」
 男性三人の悲痛な叫びが公園にこだました。

成否

成功

MVP

ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)
黒武護

状態異常

なし

あとがき

視覚の暴力に負けず、お疲れ様でした。
なんていうか、ひどい……戦いだったね……。
皆様に少しでも楽しいグラオ・クローネとなりましたら幸いです。

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