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シナリオ詳細

平和の狭間に悪を気付き

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●平和の狭間に悪を気付き
 天義(聖教国ネメシス)の首都、フォン・ルーベルグより離れた海沿いに存在する独立都市『アドラステイア』。
 各層を隔てる塀は高く、中心に行くにつれて高所に成り行く構造からか、下層から中層を眺めることは出来ず、中層からは下層を眺める事が出来る。
 そして……ここは中層。
 下層と比較すれば家々は確りとした建材で建てられており、裕福とまでは行かないものの普通に満足出来る生活を送れるくらいには富を持って居る。
 下層に住まう人々達から言うなれば、憧れの生活を過ごしている中層の者達。
 そして、中層に住まう子供達は当然のことながら『ファルマコン』の強い神奉者が多い。
 神様、ひいては指導者である大人(ファザー・マザー)に気に入られようと行動を起こす者も。

『みんなー! いいかー! 今日もじゅんかい、がんばるぞー!!』
『『『おーー!!』』』

 中層にある聖銃士養成学校の寄宿舎の校庭にて、夕刻に響きわたる、子供達の威勢の良い掛け声。
 彼等は大人になったら、立派な聖銃士になるんだ……と言う考えを刷り込まれ、指導者達の指示の元アドラステイアの『正義』を徹底的に刷り込まれる。
 そして、その正義を『理解』した子供達は、中層を巡回。
 ファルマコンを信じない旅人や、仲間をその手で粛清しようと……己が信じる正義感の下に歩き回る。
 ……そして。
『はぁ……はぁ……』
 息を切らしているのは、同じく子供。
 服は傷つき、肩には傷痕が遺る。
『……くそっ……何で、信じてくれねぇんだ……『ファルマコン』なんて、本当に居るかどうか判らねぇのに……』
 舌打ちする少年。
 ……つい先日、中層に潜入してきた旅人から伝えられた、『ファルマコン』は架空の神であるという事。
 最初は信じていなかったものの……どうやら彼は人の話を信じやすい、純朴な少年の様で……次第にその話を信じてしまう。
 そして、その旨を周りの仲間達にも伝えた所……叛逆者の烙印を押され、粛清対象へと早変わりしてしまったのだ。
『……おい、居たぞ! あそこだ!』
『っ……!』
 見つかり、再び逃げる彼。
 しかし中層に居る限り……少年が助かる道はほぼ残されて居ないのである。


「皆さん……あの、すいません。ちょっとお話を聞いて貰っても、宜しいでしょうか……?」
 と、ギルド・ローレットで、『深森の声』ルリア=ルミナス(p3n000174)は頭を下げる。
 それに頷く君達に何度も何度も頭を下げながら。
「皆様も『アドラステイア』は聞いた事があると思うのですが……皆さんのおかげで、この中層にどうにか足を踏み入れる事が出来たのです」
「中層は下層とは違い、極々普通の生活を送る子供達と、それを指導するティーチャーの方々が住んでいます。そして……子供達の一部は、立派な『聖銃士になろう』と寄宿舎での集団生活を行っており、勉強と訓練に励んでいる様なのです」
「勿論、彼等の理念の下にあるのは、架空の神である『ファルマコン』の役に立ちたい……という一心の模様です。そして神を信じない者は粛清の対象であると言う様な事態になってしまっています」
「……ただ、一部私達の様な旅人(ウォーカー)が流入し、子供達の一部がファルマコンは偽物だ、と考え始めているのも出て来ている様です。ですが……それをこの中層で言えば、『叛逆者の烙印』を押され、捕獲されると共に『疑雲の渓』に突き落とされるのは間違いありません」
「真実を知った子供達が酷い目に遭うのは、見ていられません……どうか皆さんには、子供達を救っていただきたく……中層に向かって欲しいのです」
 悲しげな表情を浮かべるルリア。
 子供達が多い世界『アドラステイア』、被害にあうのも『子供達』。
 真実を知った子らが粛清され、神への信仰心は更に凝縮されていく状況は……危険な事態を招きかねない。
「……アドラステイアの中に居る限り、この子達は巣くわれないでしょうが……アドラステイアの外周には、同じように神を信じなくなった人達がいる様です。そこまで連れて行ければ、きっと大丈夫だと思います……どうか、宜しくお願いします」
 そうルリアはもう一度、深く頭を下げた。

GMコメント

 皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)と申します。
 アドラステイア中層……下層に比べると、極々普通の生活を送れている子供とティーチャー達の様ですが、生活が裕福になるに従い、神への信仰心も強く、過激になっている様です。

 ●成功条件
  アドラステイア中層で逃げている子供『フェイクス』君を守りながら、アドラステイアの外周まで逃げるのを誘導する事です。

 ●情報精度
  このシナリオの情報精度はBです。
  依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 ●周りの状況
  アドラステイア中層と下層が舞台になります。
  中層は極々普通な街並みが続き、中世ヨーロッパの様な石造りの街並みを想像して貰えれば問題ありません。
  一方下層はスラム街になり、人々は苦しい生活を送っています。
  
  今回の自警団的な、子供達で構成された『聖銃士見習い』の者達は、子供でありながら訓練を受けており、叛逆者を『殺す』事を軸に行動します。
  ただ中層でしか活動せず、下層に逃げられれば彼等は手出し出来ません。彼等の手をいかに掻い潜り下層に脱出するかがポイントです。
  尚、下層では、特段目立つ動きをしなければ追いかけられる事は無いでしょうが……下手に目立つ動きをすれば、下層の子供達やティーチャー達に襲われる可能性があります、その辺りはご注意下さい。

 ●討伐目標
  聖銃士見習いの『子供達』&救援を求められた『ティーチャー達』
   ティーチャーの『ファルマコン』の教えに従い、神を信じ続ける子供達です。
   聖銃士の訓練を受けており、中層に居る普通の子供達に比べれば、攻撃能力は二回り程高くなっています。
   ただ身体能力は子供のまま(何故か一部は上回っている子も居る様ですが……)です。
   尚、子供達は周りの大人(ティーチャー)達に助けを求める事があります。
   当然大人達は、ファルマコンを信じる者しかおらず、その声に応えて攻撃等をしてきます。
   武器等は持たないものの、その身体を押さえつけたり……と、その身体を使って抑えつけて、子供達が粛清を与えようとするのを手伝う様な事をしてくるでしょうから、ご注意下さい。

 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • 平和の狭間に悪を気付き完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年02月23日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
あたしの夢を連れて行ってね
ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)
白き寓話
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
高貴な責務
リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)
神殺し
只野・黒子(p3p008597)
群鱗
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
橋場・ステラ(p3p008617)
夜を裂く星
オウェード=ランドマスター(p3p009184)
黒鉄守護

リプレイ

●其れ其れの正義を抱く
 天義首都、フォン・ルーベルグより海沿いに離れた地に存在する独立都市アドラステイア。
 各層を隔てる高い塀が印象的なこの都市は、各層毎に人々の生活が根付き、その思いや考えも様々。
 ただ……下層よりも中層の方が、この地にて信じられている神【ファルマコン】への神奉心が強い。
 その為には何を犠牲にしても良い……と考えるような者達が多い。
「……今回は中層で、神を信じる事に疑念を抱いた『叛逆者』を救ってきて欲しい……という事ですね」
 ふぅ、と深く息を吐くのは『群鱗』只野・黒子(p3p008597)。
 当然主流とは外れた考えは異端者と認識される。
 神を信じる事を否定すれば、異端者、即ちこのアドラステイアに棲まうには相応しくない者であり、粛清せねばならない……と言うのが、アドラステイアのほぼ全ての賛意になろう。
「さて……中層への道が開けたとはいえども、やる事は下層に潜入していたころとあまり変わらずね?」
「そうじゃな。前回は下層での陽動じゃったのう……」
 『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)に『守護の導き手』オウェード=ランドマスター(p3p009184)は髭を撫でながら回顧。
 数週間前、下層において中層に向かう仲間達を陽動する作戦が行われたのは記憶に新しい所……そのお陰でイレギュラーズ達は中層で活動を開始出来た訳である。
 勿論、まだまだ大手を振って何かをする……という訳には行かないが、一つ一つ中層の操作を進めているという状況。
 今の所判明しているのは、中層に棲まう人々は下層のようにスラム街と化している訳ではなく、中層は人並みの生活を送れているという事。
 下層からの搾取なのか、上層からの施しなのかは分からないものの、言える事は下層よりも遥かに神を信じているという事になる。
「……アドラステイアの中層は初めてだけれど、こうしてみると……見た目だけは普通の町なのね? もっとも、行われている事を考えれば、普通とは程遠いのだけれども……存在しない神を信仰させて、従わない人を排斥する。さて……上層の猜疑心と恐怖心はいかばかりでしょうね?」
「うむ。中層でこの様にかなりの苛烈さじゃ。上層に行けばどれ程であろうな……アドラステイア解放の為には、その辺りも念頭に置いて動かねば成るまい」
 『「Concordia」船長』ルチア・アフラニア(p3p006865)に頷くオウェード。
 ただ、そんな神奉するアドラステイアの人々の考えを理解出来ない『Utraque unum』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)。
「俺の故郷の神は概ね肉体を持つものだったが、神のすべてが肉体……実体を持つとは限らない。ヒトの心より生まれ出て、差し伸べる手を持たない者も居るだろう。だが……ヤツらの言う『ファルマコン』はどうだろう? 少なくともまだ居ないと思うが……将来的には分からないな」
 肩を竦めるアーマデルに。
「そうだね……中層は下層より、ファルマコンをしんじてる人たちが多いってきいたけど……よそから人が入るようになってきて変わってきたのかな?」
「その様ですね。拙達を含め中層へと進む事が出来て、また少しずつ状況が動き出しているという事でしょうか……とは言えども、子供が子供を襲う粛清に魔女狩り。上にいく程激化する、と……」
「そうだね。きょうは追われている子をたすけるために来たんだし、がんばるぞー!」
 『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)と『竜眼潰し』橋場・ステラ(p3p008617)が会話を交わすと、アーマデルは。
「ま、子供達の、ヒトの血と肉と悲嘆を捧げられ続ければ、神に似たモノが生まれるやもしれん。ヒトの想いを束ねて生まれる存在もあるのだろうからな」
 と肩を竦め、そして『医術士』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)も。
「天義の国は弱り切り、北の鉄帝はアドラステイアのすぐ向こう側から領土を蚕食する領土を伺っている。世の中は魔種と手下が溢れかえり、危険に満ちている……その一方、ここは隔絶された様な状態。外から見ればきれいに見えてても、硝子で出来た城のようなものよね。こうして今回、安寧がまがい物だって気がついた子がいるのだから」
 と頷く。
 そしてヴァイスが。
「まぁ、こうして中層への道が開けたのだから、下層とやる事は変わらずとも目的をしっかりと果たしましょう」
 と仲間達を促し、ココロはそれに。
「そうね……連れて帰れば、その事実は他の子供達にも疑問を持たせるきっかけになる筈。私達が硝子の城に皹を入れるのよ」
 と、深く頷く。
 ……と、その時。
『おい!! あっちだ、あっちに逃げたぞ!!』
『おいかけろー! 神の教えにそむくのには、せいさいをだー!!』
 遠くの方から聞こえる、少年達の叫び声。
「……どうやらあっちの方に居る様ですね……急ぎましょう」
 とステラは皆を促し、イレギュラーズ達は声のした先の方角へと急ぐのであった。

●故に影あり
『あっちだー! おいかけろー!!』
 中層の街角に響きわたる、子供達の声。
 普通の町なら、子供達の追いかけっこかな……という風に思えるかもしれないけれど、これは異端者を追いかける声。
 その声に気付いた周りのティーチャー達も、異端者を追い詰めるために目を光らせている。
 そんな町の人達全ての監視の目が光る中……追いかけられている子供、『フェイクス』。
『はぁ、はぁ……な、なんでだよっ……何でみんな信じてくれねえんだよぉ……』
 と涙を目に浮かべながら、家と家の間の隙間で呼吸を整えている。
 純朴な心根を持った彼が、旅人に伝えられた『ファルマコン』は架空神である事……それを伝えた結果が、こうなってしまった。
 友人に真実を伝えたら、裏切り者の汚名を被され、追いかけられる事態は……彼にとってとてもショックな事態。
『……おい! あそこだ、あの隙間に居るぞ!!』
 間を覗き込んだ聖銃士見習いの少年が、隠れているフェイクスを発見し、仲間達を呼ぶよう大きな声を上げる。
 その声に集まり始める子供、大人。
『っ……!』
 急ぎ逆の方向へと逃げるフェイクス……そこに、イレギュラーズ達が到着。
『……っわっ!!』
 大人も混じるイレギュラーズ達に、こっちに待ち構えられていたか、と唇を噛みしめ踵を返そうとするが……当然逆側からは、追いかけてきた子供達。
「だいじょうぶ? ぼくたちも、ファルマコンはかくうの神様って、知ってる……いっしょに、逃げよう?」
 手を差し伸べるリュコスに、ココロも。
「ええ、わたしたちは貴方の味方……すぐには信じてもらえないだろうけど、御願い、今は何も言わずにわたし達についてきて?」
 と呼びかける。
 リュコスとココロの呼びかけに……追いかけられ続けて、藁をも縋りたい状況なフェイクスは……こくりと頷き、彼女達の背後へ。
『おい、そいつをだせー!!』
『かくまうのかー? かくまうのなら、おまえたちも叛逆者だぞ!!』
 先に抜けてきた子供達がわーわーそいつを引き渡せ、と叫び立てる。
 そんな子供達に、開口一番ココロが。
「ねえ……あなたも、ファルマコンを見ていないよね? それでも……居るって信じられるの?」
 と彼等の目をじっと見据えながら言う。
『えっ……み、見てないけど、でも、いるってティーチャー達が言うんだもん! それに間違いは無い筈だ!』
 ほんの一瞬、迷いは見せるが、すぐに反論する子供達。
 そう子供達を惹きつけて居る内に、ヴァイスは周りの敵の気配を探り……自分達に敵意を持って居る物が居るのが少ない方向を導き出す。
 そしてその情報を元にステラが鼠の使い魔を召喚し、ヴァイスの指示した方向を先行して偵察させ……ルートの下見と確定を迅速に行う。
 ……そして、子供達から少し遅れて、近くに居た大人達も合流すると。
『お前達! いいからそいつをこっちに引き渡せ! 抵抗するなら、力尽くで奪うまでだぞ!』
 と言い放つ。
 勿論大人達も、ファルマコンを信じている訳で……万が一にも説得は難しいだろう。
「本当……仕方ねえ奴らだ。ちょっと痛い目、見て貰うしかないな」
 と鋭く睨み付けると共に、その場に英霊から奏でる未練の音色を奏でる。
『……う、うわぁぁ!?』
 不意を突いたその攻撃に、身は痺れ、動きが鈍る。
「今です。フェイクス様、すいません」
 黒子がフェイクスを肩に抱え、そしてルチアが。
「今の内、急ぐわよ!」
 と鼠が先行して偵察してくれた、下層に向けたルートをイレギュラーズ達は駆ける。
 痺れて動けない子供、大人達は数刻遅れつつも。
『みんな、あっちだ! おいかけろー!! みんなー、そっちにはんぎゃくしゃがにげたよー!! おいかけてー!!』
 と急ぎ追跡を開始すると共に、子供達の声に反応し、周りの大人達も集まり始める。
 最初の内はどうにか逃げ果せるが、流石に下層に向かう為の門は多数ある訳でも無く……段々と大人子供達は集結し始め、イレギュラーズ達に立ちはだかる。
「っ……回り込まれた様ね」
 先陣を走るステラが立ち止まり……周りを再確認。
 大人達は、この上層に普通に棲まう一般人達の様で丸腰ばかり。
 一方で子供達は、聖銃士見習い故か、武器を手にしている。
 ……そんな二軸の敵対者に、先頭に立ったヴァイスが。
「もう……何がいいのか悪いのか、それもわからないのかしら……? お仕置きよ」
 どこか諦めた風に言葉を零しながら、相手の陣容を見渡しつつ……斬り込んでいく。
 とは言えその刃は立ちはだかる敵を倒す為ではなく、気絶させる為。
 急所を狙わず、気絶させる事に重点を置いた一撃で、立ちはだかる子供達に攻撃する。
 ……流石に見習いで未熟な子供達は、それら攻撃に対した抵抗を取る事も出来ずにバタバタと気絶為ていく。
 それに周りの大人達は。
『っ……こいつらは、絶対に許せん!』
『いいか、皆!! 全員で一人を狙え!! 抑えつけ、動きを止めろ!!』
 一人の言葉に皆が頷き、1対多の数の暴力でイレギュラーズ達を抑え込もうと躍起になる。
 勿論、イレギュラーズ達は身体能力に長けている……だが、束になって掛かられれば、容易に解く事は出来ない。
 むしろイレギュラーズ達を倒さずともフェイクスだけを奪い取れば、彼等にとっての目的は果たされる訳で。
「う、U--rrrr……こ、こないでっ!!」
 叫びとも唸り声ともつかない声を上げながら、リュコスは近づいてくる相手を空へ跳ね上げて吹き飛ばし、捕縛を回避。
 それと同じく、アーマデル、ステラ、オウェードの三人も束を組んで襲撃してくるよりも先に一人でも多く吹き飛ばしたり気絶させたりする事で、己が身を確保。
 ……数百人という単位で徒党を組んできた大人達だが、全て振り解かれ……流石に躊躇。
『な、何なんだよこいつらは!?』
 流石に驚愕の表情を浮かべている彼等に、自信満々戦線布告の如く。
「残念じゃが、この少年はワシらイレギュラーズが預かった!」
「わたしを倒さなければ追いつけない! さぁ、来るなら来なさい!!」
 オウェードとココロの声に、唇を噛みしめる相手。
 だが、子供達は。
『みんな、あきらめないで! 『ファルマコン』さまのために、ぼくたちががんばらないといけないんだ!!』
『そうだそうだ!! てぃーちゃーたちも、おねがい!!』
 敬虔に信じる子供達の声に刺激され、ティーチャー達も再び戦意を取り戻す。
 徒党を組み、更なる数でぶち当たっていく彼等と、それを助けるかの様に、剣銃を振るう子供達。
 流石に小さくない傷を負う仲間達ではあるが、ルチアは一歩後ろに控え。
「大丈夫。私が絶対に落とさせはしないわ」
 と常に回復し、その傷を完全に癒していく。
 そして……攻撃為てきた大人と子供を気絶させていき、残るは後十数人位にまで減った頃合いを見計らい。
「……このまま此処で対処し続けても、時間だけを浪費する事になります。下層への門まで後少し……一気に駆け抜けましょう」
「そうね。無理に相手を倒し切る必要は無いわ。下層まで追いかけてくるかは分からないけど、この場を突破するわよ!」
 黒子とルチアの言葉に皆、頷く。
 そして、敵の一瞬の隙を突き、一斉に敵陣を突き抜けていく。
『あっ……!! お、追いかけてー!!』
 子供達の叫び声よりも迅速に、中層の町を降るイレギュラーズは……追っ手を振り切り、下層への門を潜るのであった。

●信仰の影
「中層は突破出来たのう……さて、ここからが本番じゃな」
 下層に着いたオウェードは、一呼吸し、周りを見渡す。
 中層とは違い、スラム街の様な様相を呈する下層。
 ただ、物陰に隠れて観察している限りは、誰かを探せ……という様な命令が下っている様には見えない。
「……下層と中層は、連携が取れていないのかな?」
 と小さくココロが呟くが、黒子は。
「少なくとも、大鉈を振って探せ……という風には見えませんね。とは言えまだ中層から連絡が来ていないだけかもしれません。逆に時間を此処で掛けてしまえば、また同じ羽目になる可能性もあります」
 黒子の言う事に、皆も納得。
 ……そして黒子に背負われたフェイクスが。
『……あの、な、何で……僕を助けてくれたの……?』
 一先ず落ちついた所で、純粋に疑問を投げかけてくる。
 そんな少年に、リュコスが。
「ん……君がしんじてること、まちがってないよ? それをみんなにおしえるために、たすけたんだ」
 安心させるように、微笑むリュコス。
 そして。
「ま、まだ安心は出来ないな……下層を出て郊外に出るまでは、ファルマコンを信じるのはごまんと居る。さっさと離れた方がよさそうだ」
「そうね。フェイクス、もうちょっと我慢してて」
 アーマデルとルチアの言葉にうん、分かった……とこくり頷くフェイクス。
 そしてイレギュラーズ達は、出来る限り町の人が居ない所を見定め、大回りになりながらも進んで行く。
 偶に下層の住人と遭遇したとしても、特段の反応をしなければ彼等が疑問に思うことは無い。
 そして……空の陽射しが地平線へと落ちる頃……やっとアドラステイアの外周へと辿り着く。
「ウム……どうやら振り切れた様じゃ。さて……もう大丈夫じゃよ?」
 とオウェードが呼びかけ、黒子が彼を降ろす。
「うん、これで安心だね! こわくなかった? だいじょうぶ?」
 とリュコスが心配の声を掛けてくると、それに頷くフェイクス。
 ……ずっと背負われていたとは言え、かなり彼には疲弊が見て取れる。
「さて……お前さんは、これからどうするのかね?」
『え……?』
 オウェードの言葉にきょとんとするフェイクス。
「架空の神、それは確かじゃ。しかしアドラステイアの者達は聞く耳を持たん。この外周ならば、お前さんと同じ考えの者も多くいるじゃろう。しかし中に入れば話は別じゃ」
「そうね……暫くの間は、此処に居た方が良いんじゃない? 話位は通しておくわよ?」
 ルチアの言葉に、暫し悩む少年。
 中層を脱出したからには、中層に戻る事は至難の技だろう。
 ……とは言え身よりの無い彼では、出来る事も限られてしまう。
『……うん……分かった……』
 こくりと頷く少年は、覚悟を決めた様な表情。
 アドラスティアの高い塀は神への信仰心の高さを示すが如く、それを乗り越えるには……多大な労力が伴う。
 とは言え彼が出来る事は今はほぼ何もない、外周の人々と共にその時を待つ事が精一杯。
「うん……がんばってね!」
 そうリュコスは彼の背中を押し、励ますのであった。

成否

成功

MVP

ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
高貴な責務

状態異常

なし

あとがき

アドラステイア中層からの護衛、お疲れ様でした。
少年は無事に外周に避難出来ました。
彼波小さな叛逆者でしたが、彼の言霊が少しでも大きくなって、アドラステイアに響きわたってくれる事を願います/・。

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