PandoraPartyProject

シナリオ詳細

とある少女のお願い事

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「今日は卵焼きにしましょうねえ」
 母がそう言ったので、少女はとても楽しみにしていた。
 卵焼きといえば、超鳥の卵。大きな卵をお箸でといて、じゅわりとフライパンに流し込む。スクランブルエッグかな。もしかしたら目玉焼きかも。少女は思わずよだれを垂らしそうになって、慌てて口元を拭った。
 超鳥の卵は滅多に取れないから、この前父が取ってきてくれた時は跳び上がるほど喜んだものだ。だって彼らは執念深い。父も傷だらけで取ってきたから心配だったけれど、傷は全部浅いものだってピンピンしていたから大丈夫だろう。
 楽しみだなぁ。卵焼き――
「あ、あらぁ。卵、この前使っちゃってたの忘れてたわ……」



「みんな、色々とお疲れ様だね」
 リリィリィ・レギオン(p3n000234)がカウンターに肘をついて、皆を見回す。
「最近は練達での復興もあるし、あちこちに行って大変なトコ悪いんだけど……とある人から依頼が届いているんだ。デザストルに住んでいるミス・ユリって子なんだけどね。彼女の依頼はとっても簡単。傍の岩山にある巣……超鳥と呼ばれている大きな鳥の巣から卵を取ってきて欲しいって、其れだけさ。いない時にそっと取ってきてもいいし、敢えている時に突っ込んで戦闘してもいいし……まあ、卵が一つ足りなくなると流石に向こうも気付くと思うから、戦闘は避けられないと思うんだけど、兎に角卵を指定の位置まで持って行ったらおしまいさ」
 ね、簡単でしょ?
 そういってリリィリィは笑ったが……疑いの視線を複数受けて、諦めたように肩を竦めた。
「そんな目でみないでおくれよ。僕は悪い事してないもん。……相手になる超鳥は、つがいだ。ちょっと隠しただけじゃないか」
 桜色の唇を尖らせるリリィリィ。いや、一体と二体では随分な違いだと思うのだが……
「オスメスの区別はつかないと思うけど……片方は後ろから神秘で、片方は盾役になって戦いを仕掛けてくると思う。闘える鳥って凄いよね。でも彼らは卵を傷付けないように立ち振舞うから、其の辺は利用できるんじゃないかな」
 例えば、傷を負わせたくない人の傍に卵を置いておくとかね。
「これで隠してる事はもうないよ。受けてくださる? 巧くいけばもしかしたら、ご相伴に預かれるかも知れないよ」

GMコメント

 こんにちは、奇古譚です。
 君も私も初めての覇竜。だけどターゲットは鳥の卵です。


●目標
「超鳥の卵を運搬しよう」


●立地
 覇竜領域に聳える岩山です。
 坂道を登って入れる洞窟のような場所に、超鳥が巣を作っています。ダチョウのような見目です。
 卵は成人男性が両手でよいしょ、と持てる程度の大きさです。大きいですが、余り重くはありません。
 周囲はまばらに木が生えた平原のような立地です。闘うには丁度良いかも。


●エネミー
 超鳥x2

 犬のように鼻が利く巨大な鳥のつがいです。
 卵がないと怒り狂って、侵入者を追ってきます。
 片方(メス)は【識別】のついた神秘技(はばたき)で【凍結】を付与してきます。
(このBSは累積するとより上位のBSになります)
 もう片方(オス)は盾役で、イレギュラーズの前に立ちはだかりますが、二頭共に癒しの術は持っていません。
 そして、卵を何より大切に扱います。
 卵の取り扱い次第ではより有利に立ち回れるかもしれません。


●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。


 アドリブが多くなる傾向にあります。
 NGの方は明記して頂ければ、プレイング通りに描写致します。
 では、いってらっしゃい。

  • とある少女のお願い事完了
  • GM名奇古譚
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年02月26日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
クーア・M・サキュバス(p3p003529)
雨宿りのこげねこメイド
メイメイ・ルー(p3p004460)
約束の力
如月=紅牙=咲耶(p3p006128)
夜砕き
ネーヴェ(p3p007199)
星に想いを
浅蔵 竜真(p3p008541)
マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ(p3p009452)
想光を紡ぐ

リプレイ


 覇竜。
 卵。
 ――『天穿つ』ラダ・ジグリ(p3p000271)は戦闘予定地となる平原に草花と僅かな樹木以外何もない事を確認し、そして終わった途端脳裏を巡る嫌な記憶にふるりと頭を振った。
「どうし、ました?」
 『ひつじぱわー』メイメイ・ルー(p3p004460)がおずおずと顔を覗き込んだので、ラダは何でもないよ、と頭を振って笑みを見せる。何でもないならよいのだけれど。メイメイは心配そうな顔で、けれども追及はしなかった。これからのクエストに関する事なら、きっとラダは隠さないだろうと思ったからだ。
「其れにしても、こころなしか――覇竜集落からの依頼って、お酒や食べ物関係のものが多いような気がしますね。どう思います? 利香」
 『めいど・あ・ふぁいあ』クーア・ミューゼル(p3p003529)が己の主人に問うと、『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)はそうね、と同意に頷く。
「こんな荒廃した地で満足いくものなんて、三大欲求くらいのものでしょう。いわば寝て食って……おっと失礼。まあ兎に角、食物を捜すのも困難なんじゃないですか? 巨大な鳥の大きな卵。良い蛋白源になりそうですから、合理的ではあります」
「成る程! 流石利香です!」
「其れを抜きにしても、楽しみにしていた好物が実はありませんでした……という辛さは拙者にも覚えがあるでござる。腹を空かせた幼子の為にも、疾く卵を持って帰らねばならないでござるな」
 『闇討人』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)が頷く。彼女は“好物がありませんでした”という経験よりも“見た目でお酒をお断りされました”の経験の方が圧倒的に多いけれども、辛さはきっと似たようなものだろうと。
「思った、のですが……もしかして、鶏の卵って、こちらには、流通、していない……のでしょうか?」
 利香とクーアの会話にどきどきする心臓を抑え込んだ『うさぎのながみみ』ネーヴェ(p3p007199)が、ふと浮かんだ疑問に首を傾げる。其れとも大きいから、ご褒美用とかそういう事なのでしょうか。
「荒れ野ですからね。餌を調達するのも大変なのかもしれません」
 利香が言う。成る程、とネーヴェは得心した。ならば荒れ野に順応した生き物の卵を頂くのが、一番速い淡白の補給法であるかもしれない。
「いや、でもデカすぎるだろ」
 『刺し穿つ霊剣』浅蔵 竜真(p3p008541)が思わずツッコむ。両手で抱えるような卵なんてそんな……え? 幻想にもいる? そんなばかな……いやまあ、俺だって味が気にならない訳ではないが!
「……ふふ。卵焼きは大人も子どもも食べられる、魔法のお料理。其れは亜竜種の皆様も同じなのかも知れませんね」
 『音撃の射手』マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ(p3p009452)が竜真の様子を伺って静かに笑う。其の瞳は閉ざされているが、歩みは衰えない。
「超がつくくらいですから、余程大きいのでしょう。作戦は先程お話した通りで構いませんね?」
「ああ。みんなが誘導してくれれば、其の間に私が卵を運び出す」
「追って来たら戦闘、……ですね。出来るだけ殺さないように」
「そう、ですね。命を頂くのですし、…きっと、また、卵を頂く事も、あるでしょう、から」
 メイメイが頷いて、手をあげる。えいえいおー。
 そんなゆるふわな仕草に一同は笑いながら、岩山へと向かった。



 岩山はしん、としていた。
 いい意味でも、悪い意味でも、何もないように思えた。自然が開けた穴なのだろうか。岩山はまるで岩を積み上げたかのような見目をしていたが、入ってみると空洞が大きく開いている。野放しになった岩が所々で危なげに山を作っていて、其の中に細かな砂礫と小さな石をかき分けて作られた道が辛うじて見える。恐らくこれが、超鳥の巣に続いているのだろう。
「本当に……荒野に適応した鳥の巣、という感じですね」
「ええ。とても、静かです」
 メイメイは利香に頷いて、しもべの鳥を呼び出す。小さな鳥はちゅん、と一度鳴いて周囲の岩に声を反響させると、ぱささ、と忙しなく翼をはためかせて飛んだ。そのまま吹き抜けのようになっている上部まで一気に飛翔する。
「拙者もギフトを使うでござる。……気配がないから置いて行った、なんて事にはならないから安心するでござるよ」
 咲耶が両手で印を結んだ。後ろ暗いものほど、膝に傷のあるものほど、特に深い闇を好む。岩山の薄闇に溶け込むように、桜の花が散るように、咲耶の気配がふっと沈んで消えた。
 其れと同時に、ピイ、とメイメイのファミリアが鳴く声がして――

「ギィエッ! ギィッ!」

 ――鳥とは思えない鳴き声も、した。
「いました。……。……でっ、かい、です」
 感覚を共有しているメイメイは、其の大きさに慄く。きっと小鳥から見ているから、余計に大きく見えるのだ――そう仮定しても、大きい。巣も、卵も大きい。
「卵は……五つ、あります。一つを大切に守っている、訳では……ないよう、ですね」
「余計に殺さない理由が出来たな。行ってみよう」
 竜真たちが歩き出す。メイメイもファミリアとの五感共有を一旦中断して、注意深く坂道を登っていく。
 これは自然に出来た洞窟なのか。誰ともなくぽつり、呟いた。雨水が石に孔を開ける。ない話ではないが……この洞窟となるまで雨水が石を削るとなると、気が遠くなるほどの時間がかかりそうだった。
 段々と砕けた石は大きくなっていく。時にそっと脇へ避けながら、イレギュラーズ達は進む。
「あ、そうだ。ラダさん」
「ん? どうした利香」
「はい、これ」
 小瓶を投げて渡す利香。匂い消しの香です、と付け足す。
「甘い香りがしますが、警戒心を麻痺させるものです。完全に追跡を中断させる……とまではいきませんが、ある程度の時間稼ぎにはなるかと」
「ほう。……そんなものが市場に出回っているのか? 聞いた事がないが」
「其れは当然です。こう、ギフトで尻尾から――って何言わせるんですか、えっち」
「えっ……!?」
「にゃふふ、ラダさんのえっちー」
 利香とクーアがからかうのを、こら、とラダは二人をたしなめて咳払い。
「こほん。兎に角有難く頂いておく。先にこれを使って近付いた方が良いんだな?」
「そうですね。先に超鳥の前に出るのは勿論私と竜真さん……引き付け役ですが、何事もないとは限りません。保険はあった方が良いでしょう?」
「……そう、だな。有難く受け取っておく」

 ラダが香を塗りながら岩山を上がる。其の隣には咲耶がいる。……ふと咲耶が振り返ると、人差し指を唇に当てて静かに、と合図した。
 一同は座り込むと、ラダと咲耶が示した先を伺う。

「ギィエッ! ギィイッ!」
「ちゅん、ちゅんちゅん」
「ギィッ!」

 メイメイのファミリアーが飛んでいる。其れを嘴を鳴らして追い払おうとしている、巨大な鳥が二頭。――本当にでっかいな。騎乗用にもならない大きさだな。
 利香が竜真に目配せをする。竜真は刀を確認し、周囲の広さを確認し、頷く。利香の指があちら、と指差す。其処にはおあつらえ向きの、外に向かって開いた大穴が合った。成る程、此処から飛び降りればわざわざ来た道を戻る必要はない。
 メイメイとネーヴェ、マグダレーナ、そしてクーアは二人でより物陰に隠れる。彼女らは竜真たちが引き付けた後の支援役だ。

「……よし、行こう」

 竜真と利香が飛び出す。エッグハントの開始だ。



「全く、愛し合う二人の邪魔をするのは性分にあってないのですが……これも仕事ですので! 愛の結晶、おひとつ頂いていきますね!」
 ラダが物陰からそっと出てきたのを確認すると、利香はラダたちとは反対方向にある岩を粉々に砕き、轟音を立ててみせた。メイメイの小鳥に気を取られていた二羽の超鳥が、思わず其方に目を向ける。
 利香自身も気配消しの香を身にまとっているため、石に気を取られた超鳥には気付かれていない。恐らくオスであろう鳥がメスに巣を任せ、岩へと近づく。嘴で様子を伺う、其れを見ていたメスの前に、突然竜真が割り込んだ。
「悪いな。少しだけ――鼻に来るぞ!」
 突然現れた二本足の生き物に驚く超鳥の鼻っ面に、竜真は布で作った球を投げた。ぼふん! と超鳥の嘴で弾けた其れはいわば利香たちの匂い消しとは逆の匂い布。鋭い嗅覚に強烈な香りを浴びて、思わず超鳥が咆哮した。
 頭を振るう超鳥のメス。振り返ったオスの前には利香が回り込んでいた。
 そしてラダと咲耶が――

 ――卵を取った。

 ラダは卵を選定し、一つをそっと取る。大きな其れをしっかりと持ち直すと、
「卵は取った! 平原で待ってるぞ!」
 一堂に聞こえるように言って、変化を解いた。馬の四つ足で勇ましく駆け、一思いに横穴から跳躍する。咲耶も其れを援護するように後ろから追って、横穴から跳び……其の姿を消した。

 ――侵入者!
 ――卵を取られた!

 メスが高く、狐のように鳴く。其れは敵襲の鳴き声。オスは其れに気付いたけれども、竜真が真ん前に立っているゆえに合流出来ない。
「悪いな! 暫くは此処で通せんぼさせてもらう」
 怒りに超鳥が鳴く。嘴で竜真を攻撃しようとしたところで、遙か後方から放たれた神秘の呪言が鳥の身体をのけぞらせた。
「――大丈夫ですか?」
 マグダレーナだ。メイメイとネーヴェ、クーアもそれぞれ飛び出し参戦している。
「ああ、助かった」
「良かった。少しだけ引き付けて、私達も平原へ向かいましょう。下手に地形を壊して崩れてはいけません」
「さんせーい!」
 光弾を超鳥の脚に降り注がせていたクーアが遠くから賛成の声をあげた。元気な方ですね、とマグダレーナは笑う。
「兎に角、ある程度弱らせたら平原へ。合図は……私が」
「ああ、頼んだ」



「……っと、この辺で良いか……咲耶、いるか?」
「いるでござるよ」
 ラダは石山からほど近い平原へ辿り着くと、咲耶を呼ぶ。
「卵はどうする。隠すか?」
「其れが良いかと。いざとなった時に怪我人も其処に隠れれば、鳥もきっと追うては来れぬでござるよ」
 丁度ラダが立ち止まったのは、ひょろりと伸びる一本の木の下。自然の生命力に恐れ入りながら、其の木陰に大きな卵を置く。咲耶にナビゲートされて進んできた道を振り返れば、思ったよりも近くに岩山が見えた。
「案外近かったな」
「でないと合流が難しいでござるし、前の見えないラダ殿を長時間走らせる訳にはいかぬでござるからな。堪忍召されよ」
「勿論大丈夫だ、ありがとう。さて……」
 人型の影が、岩山から降りて来るのが見えた。あれはきっと仲間たち。其れを追う巨大な影は――二体。
「私は後方に構える。咲耶、前衛を頼めるか」
「あいわかったでござる。任されたでござるよ」

「はあっ……はあっ……!」
 ネーヴェはまだ、走るのが得意ではない。かつて病に伏していた身、体力の総量そのものが人よりも少ないのだ。
「は……ううっ……!」
 其れでも走る。其れが、イレギュラーズとしてやるべき事だから。あの人に、こんなに元気になったのって伝えるためにも――
 視線は下を向いていた。だから遅れている事にも気付かなかったネーヴェだったが、はし、と手を掴まれて初めて、視線を再び前に戻した。
「だい、じょうぶ、ですか……!」
 メイメイだった。
 ――ああ、そうだ。わたくしは一人ではない。ネーヴェは泣きそうになるのを、目を細めて堪える。わたくしには、仲間がいる。だから大丈夫。助け合える人たちがいるから。
「はい……! だい、じょうぶ……です!」
 メイメイはうっすらと笑みを浮かべ、うん、と頷いた。ラダの影が見える。多分咲耶も傍にいる筈だ。6名は彼女らと合流すると、休憩する間もなく陣を敷いた。
「傷の深い方はおられますか? おられたら卵の傍へ」
 マグダレーナが呼び掛ける。彼女には凍気が効かない。傷を負ったものがいるなら前に出る、と。
「今のところは大丈夫かな」
「俺もだ。マハロヴァの援護のお陰で庇うような傷はない」
 庇い役を務めた利香と竜真が頷く。
「わたくしも、大丈夫、です」
 ネーヴェが前に出る。息を整える。寒い空気がひゅう、と喉を鳴らすけれど、そんな事で弱ってはいられない。だってわたくしは、戦えるのですから。
「治癒は、任せて下さい……! 治して、みせます!」
 メイメイが言う。ラダの隣、後衛に立って。
「まあ、私は傷付く程強くなるタイプなのですが……」
 ほいっと。
 クーアが卵に保護結界を付与する。戦いの余波で砕けてしまうなんて事は避けたい。
 ぎい、ぎい、と超鳥が威嚇して鳴いている。よく似ている二羽だが、鼻っ面に白い粉がたかれているほうがメスだ。後方から羽撃いて、凍えるような風を一堂に浴びせる。寒風の中、クーアがいの一番に飛び出して、オスを捉えた。
 其れは一呼吸の間に終わる。まるで地から天へ立ち上るいかづちのように――雷炎が踊り狂った。猫メイドのシルエット。晴天の霹靂が如く、クーアの逆さ雷桜が咲き誇る。
 ネーヴェが其れを追う。またも霹靂が降り落ちる。天に全てを置き去りにして、雷撃はオスを狙い定め撃った。光と音が同時に鳴り響いて、超鳥たちの悲鳴をかき消す。
 其処に更に竜真が刀を構え、――



「――という感じで、少し戦闘をしたら強さを判ってくれたのか、鳥は巣に戻って行った。これが戦利品の卵だ」
「わああ……!! たまご!」
「ありがとうございます、子どもの我儘ですみません……ああ、こちらお茶です、どうぞ」
 ラダたちが少女のもとを訪れたのは、其れから程なくしての事だった。
 超鳥たちも卵を持つ身。死ぬ訳にはいかないと判断したのだろう。数手やりとりして間も無く、メスがオスを牽制するように鳴き、二頭は傷付いた身体を引きずって岩山へと帰って行ったのだった。
「皆さんも食べて行かれますか? 冒険でお疲れでしょう」
「え、いいの?」
「……でも、お茶を……いただき、ましたし」
 クーアは食べたい! という顔をしている。が、メイメイは少し心配顔。
「大丈夫ですよ。あの鳥の卵は男10人が食べてやっとなくなるんですから。一度手に入ったら、村中にお裾分けして回っているんですよ。さ、ユリ、手をあらっていらっしゃい。お料理しましょう」
「お料理! する! おにいちゃん後でね!」
 竜真が話したイレギュラーズの小さな冒険譚をキラキラした目で聞いていた少女が、母親の言葉を受けて水場へ駆けていく。
「……お手伝いが出来る、良い子、ですね?」
「そうですね。でもあれは、自分が食べたいからというのもあるのでは?」
「ふふふ、ありそう! でも其れは言わないお約束よ」
 ネーヴェが其の後ろ姿を優しく見送って言った。マグダレーナが悪戯っぽくいうと、利香が其れを制する。それに、と白い指でカップの縁をなぞりながらネーヴェを見て。
「ネーヴェちゃんだって食べたいんでしょ? たまご」
「うっ。……だ、だって、亜竜の卵焼きなんて、気になるじゃないですか!」
「正直なのは良い事なのです。勿論私もたまご食べたい」
 うんうん、とクーアが頷く。
「そう、ですね。……亜竜の卵焼き、なんて、想像した事も、ありません、でした」
「普通の卵焼きみたいに食べて良いのか? 醤油かけて」
「竜真はソイソース派か? 私は塩だ。卵のうま味が引き出される」
「二人とも判ってないわね。素材だけで美味しいに決まってるでしょ?」
「……」
「……」
「……」
 出た! どんな世界でも起こり得る「卵焼きに何かける?」戦争だ!
 黙り込んでしまったラダ、竜真、利香の三人を、後の五人はなんとかなだめすかして火種を消そうとするのだった。
 小分けにした卵の黄身を混ぜていた少女が、不思議そうに大人たちを見ていた。大人にはね、いろんなしがらみがあるんだよ。

 ――けれど結局は、美味しく……頂きます!

成否

成功

MVP

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした。
無事に卵を1つ奪取、親鳥は傷を折って撤退しました。
致命傷になるような傷は負っておりませんので、暫く卵と共に静養すれば超鳥の傷は癒えるでしょう。
目玉焼き、もとい、卵焼きになにをかけるか戦争が終わる日は来るのでしょうか。
来ないと思う。

MVPと称号を付与しております、ご確認ください。
ご参加ありがとうございました!

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