シナリオ詳細
イナズマを食い止めろ!
オープニング
●
ギュイイイイイイイイイイイン!!
機械の駆動音がその研究所に響き渡る。
「警報じゃと!?」
「なんじゃ、何事じゃ!?」
思わぬ事態に、研究者達が叫び、戸惑う。
彼らは練達にて、巨大ロボットの開発に携わっている者達だ。
以前、彼らは3倍の速度で動くとかいう赤いロボットの製作に携わっていたのだが、呼び寄せたローレットイレギュラーズ達に撃破されたことで次なるロボットの開発に勤しんでいた。
前回の問題点などを踏まえて新たに設計図を作製、製造は順調と思われたが……。
練達ではこのところ事件も多発していた。R.O.O事件による影響で大きな混乱がおき、研究所でも停電、システムの不具合などが連続して起きていたのだ。
さらに、先日の竜種たちによる襲撃もまた練達に大きな被害をもたらし、研究所もあちらこちらが破壊されてその修復作業などに追われていた。
そんな折だ。開発中の巨大ロボット「イナズマ」に異常が発生したのは。
イナズマは瞬足での起動を実現すべく、混沌の技術も使った魔導エンジンを積んでいる。一度魔力を籠めれば、発電を起こして半永久的に動くことができ、かつ高出力を生み出せると研究者達はその開発に絶対の自信を持っていたのだが……。
グオオオオン、グオオオオオオオオン!!
自律回路が勝手に動き出し、巨大ロボットは研究所内で暴れ始めてしまう。
「早く、回路を遮断するのじゃ!」
「……ダメです、イナズマ、遮断を拒絶してます!」
「「なにいっ!!」」
巨大ロボットを見上げる研究者達は、このまま所内にいるのは危険と判断し、やむなく外へと避難するのだった。
●
練達某所。
現状、竜の襲来もあって、あちらこちらに瓦礫が確認でき、場所によっては今なお煙のようなものが立ち上っている。
「ひどいもんさ。竜ってやつは文字通り話にもならない」
『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)は開口一番、肩を竦める。
遥か前方には、目的地である研究所。
そこでは、土煙が巻き起こっており、壊れた建物から人型のロボットが見え隠れしている。
「あそこの研究所で、研究員からヘルプ要請が出ていてね。イナズマってロボットを止めて欲しいそうだよ」
イナズマは全長10mほどのロボットで、電撃をメインとした攻撃手段を持つ。
先の竜種襲来では出撃準備が間に合わなかったこともあり、急ピッチで仕上げに全力を尽くしていたのだが、それが裏目に出てしまった。
AIがシステムトラブルを起こし、勝手に出撃して暴れ始めてしまったのだ。停止信号も受け付けず、今もなお暴れているらしい。
「以前、ローレットに依頼してロボットが破壊されたこともあって、かなり強化しているのが厄介だね」
出力はもちろんのこと、装甲を強化し、前回以上の耐久力を得ているそうだ。
また、イナズマは支援の為のビットを出現させ、多角的な攻撃を行う。ビットは3体呼び出せるが、破壊されても補填できるとのこと。なお、回数制限はあるそうだが、研究員達はそこまで語ってくれなかったそうだ。
「できるなら、研究所から外に出さないよう倒したいね」
竜種の襲来の直後であることを考えれば、練達の民にこれ以上負担を強いるわけにはいかない。可能な限り被害が小さくなるよう立ち回り、このロボットを停止させたい。
「説明は以上さ。……アタシは街の復興の手伝いに行ってくるからね。頑張るんだよ」
イレギュラーズから背を向けたオリヴィアは軽く手を振り、復興進む街中へと消えていったのだった。
- イナズマを食い止めろ!完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年02月25日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
練達へと至ったイレギュラーズ。
「フリアノンでの戦闘はそれなりに経験してきたけど、イレギュラーズとしての仕事は今回が初めてになるわね」
フリアノンの戦士団見習い『炎の剣』朱華(p3p010458)は、戦士団メンバーに舐められぬようにと考えて。
「朱華が……じゃないわね。朱華達が、任された役目を確り果たして魅せるわよっ!」
依頼解決に力の入る朱華の他にも、今チームには亜竜種が加わっていて。
「わぁー!! これが、ロボット!! とっても大きくてかっこいい!」
「うわあああ……! アレが巨大ロボットってヤツだね!? 凄い凄い! まるで竜種みたいな大きさだ!」
現場である研究所で暴走するロボットの姿に、竜の頭骨を模した被り物で頭を覆った『深き森の冒険者』玖・瑞希(p3p010409)やピンクのポニーテールに八重歯が印象的な『嶺上開花!』嶺 繧花(p3p010437)がテンションを高める。
「すっごいカッコいいわっ! 竜種みたいに大きくて何より強そうだわっ!」
朱華もその巨大ロボットに思わず歓喜する。
「これ、生き物じゃなくてゴーレムなんだよね。雷で動くんだっけ?」
「ゴーレムっていうのともまた違う、ロボットっていうやつなんでしょ?」
瑞希、朱華は興奮しつつ、暴走してでも練達の技術はやっぱりすごいと絶賛する。
一方の、亜竜種以外のメンバー。
「巨大ロボットとは……」
元の世界で軍人であった女性、『天空の魔王』ハンナ・フォン・ルーデル(p3p010234)は困惑を隠そうともしない。
「AIですか……私の元居た世界では存在しなかった技術ですね。自立し自らで判断を行い行動する機械……」
「なんでそんなにロボットに情熱かけてんだか……」
『死にながら息をする』百合草 瑠々(p3p010340)は大儀そうに大きく息を吐く。
「しかも、暴走してんだから訳ねえだろ。ああ、めんどくせぇ」
毒づきすらする瑠々。
とはいえ、他メンバーは思った以上に巨大ロボットそのものには寛容だ。
「巨大ロボットって素敵だわ、ロマンって言うのかしらね?」
「うむ、ロマンだな。巨大ロボットの開発に尽力したい気持ちは良く分かる」
狐耳と尻尾、金の長髪と瞳を持つ『狐です』長月・イナリ(p3p008096)がそれをうっとりと見上げると、厄狩りを務めていた仙狸女性、『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)も同意して温かい視線をロボットへと向ける。
「ダメだダメだダメだ!」
そこで、水色髪の小柄な青年、『魔刻福音』ヨハン=レーム(p3p001117)が大声を上げた。
「雷撃を主軸とするまでは良いが武装が多すぎる! ビットとサーベルだけで事足りるじゃあないか、僕としては余分な攻撃手段は極力カットしてだな……」
どうやら、彼の論点はロボットの存在云々の先にあるらしい。
「それでこう、角も2本、サーベルも2本ときて何故ビットが3つあるんだ! このアシンメトリは許せないな!」
ヨハンのこだわりはさらに続く。
「左右対称に浮かばせるモノだろう? 3つ目のビットの位置はどうするんだ! どちらかに寄るのか! 全く!」
グオオオン、グオオオオオオン!!
だが、その間に巨大ロボットイナズマWは一層大きく暴れ、周囲に周囲へとビットを排出し、目に見えるほどに研究所を破壊していく。
「……って、いつまでも感心してる場合じゃなかったわね」
朱華もそうだが、興奮していたメンバーもさすがに冷静になって。
「だがまぁ、うん。緊急停止処置を拒絶されて以下略という展開まで実演しなくても良いのでは?」
「正直な話、人のコントロールを必要とせず自立して行動する兵器というのは、少し安全面などで心配になりますね……」
汰磨羈の言葉に、ハンナが目頭を揉みつつ。
「……いやまあ、その心配事が目の前で実現してしまっているわけですが……」
「まぁ、是非も無いな!」
汰磨羈は笑顔すら浮かべ、武装を展開する。
「ひとまずロボットの破壊を目標にして動くことにしましょう」
ハンナが遠い目をするその先には避難する研究者達の姿が。
「一つ貸しだ、ボケジジイ共」
練達の薬局が壊れたままだと、いつもの薬がもらえないから困ると瑠々はぼやき、一足早く動き出す。
「ああいった科学者は大体破壊されても嬉々としてデータ採取をしたのち改良版を作り始めるものですよ……」
折角ロボットが作られても、暴走してしまうようでは目も当てられない。
「人知を超えた存在だとしても、領域に住んでた彼らが迷惑を掛けちゃった以上、出来る限り朱華は復興を手伝うって決めたんだからっ!」
「――え、アレと戦うの……? ほ、本当に……」
「倒さないといけないのは残念だけど、こんなに大きいのが暴れてたら、大変だものね」
同じ亜竜種の朱華が身構えたのに繧花が驚くが、瑞希もすでに全身に死霊の力を纏っていて。
「まだまだ、復興中だから。残念だけど、壊してでも止めるよ!」
「……やってやろうじゃあないか。四の五の言っても始まらないし、覚悟を決めるしかないね!」
瑞希の一言に、繧花も腹をくくって両腕に装着した紅蓮の竜甲の具合を確かめつつ研究所内に向かう。
「でも、ロボットがもっとも輝くのは半壊状態とか、ボロボロ状態になった時だと私は思うの……」
嬉々としてその破壊に乗り出すイナリの後ろ、ヨハンもナンセンスなロボットの完全破壊をと魔術所を手にして。
「なに、手を抜いて起動停止する程度のロボならば研究員たちも憤慨ものだろう?」
貴重なロボットの無事を安堵するよりも、力量不足が許せないというのが研究者だとヨハンは語る。
「フ、練達の生き物とはそういうものだ。さぁ行こうか!」
仲間を促すように、ヨハンもまた所内へと駆け出すのである。
●
空中を素早く飛び交う3体のビット。
グオオオオオオン!!
中央にいたのは研究者達の出した停止信号を拒絶し、暴れ回る巨大ロボット「イナズマW」だ。
研究所内へと入り、イレギュラーズ達は散開する。
(下手に味方と距離をとらないよう立ち回りませんと)
飛行できるハンナだが、仲間からのリカバリーが利きづらくなると考え、仲間の位置を気にかけつつ飛び回るビットを注視する。
ゆっくりと神弓に矢を番えたハンナはそれらが一直線になるタイミングを見て弓を引き、砲弾の如き一矢を飛ばして本体ごと撃ち抜いてみせた。
徒手空拳での戦法である瑞希だが、彼女も弓の名を冠する技を使う。
「危ないよ、気を付けて!」
立ち回る仲間達に注意を促してから、瑞希もまたビットを狙う。
一撃に貫通力はないものの、怨念を束ねた一射は確実にビットへと突き刺さる。ビット自体は装甲が厚いというわけでもなさそうだ。
汰磨羈もまたビット狙いだが、複数体が狙えるタイミングを見定めてから霊気を練り上げて。
「私は欲張りなんでね。両方同時に叩かせて貰うぞ」
激しくスパークさせた妖刀を握る汰磨羈は刹那空を駆け、ビットと本体を切りつけていく。
グオオオオオオオン!!
ビット共々、イナズマWは電撃放射に放電と連続攻撃を繰り出す。
「――イナズマスパークだっけ? これ」
「まぁ、ビットは劣化版とはいえ範囲攻撃が多くて逃げ場がないな」
避けづらい範囲攻撃に、顔を顰める繧花。
迂闊に散開すれば、同意するヨハンの回復支援が受けられなくなると懸念していたのだ。
続き、両手にサーベルを手にした本体が大振りに刃を振りかざすが、その前に瑠々が立ち塞がる。
「おい、反抗期なら別の場所でやれ」
すでに、聖域で自身を覆っていた瑠々はイナズマWを煽ると、敵の攻撃が彼女へと集中し始める。
盾となる瑠々が抑える間、他メンバーはビットの排除を優先する。
いつの間にかイナズマWの死角へと回り込んでいた繧花が手甲を纏った拳でビットへと殴り掛かっていく。
多少の被弾は覚悟の上。繧花は積極的にビットの破壊を目指す。
事前情報によれば、ビットが減れば本体が補充するそうなのだが……。
「10メートルの体に、2メートルのビットがそう何個も積まれてはいないでしょっ」
「そうだね。普通に考えれば、こんな大きいビットが何個も収容できるはずはないね」
繧花やヨハンが考える通り、この機体に搭載できるビットの数はかなり限られるはず。
もっとも、練達の研究者が質量無視の魔法を籠めてなければという前提だが。
「なくはないが、魔法が使われたロボなら、もうちょっとファンタジックにだね……」
マントをつけていたり、魔法陣を……と呟いていたヨハンは一つ咳払いし、改めてビットを見やる。
「……というわけでぶっ壊すわね♪」
その間にも、イナリもビットの破壊を行う。
まずはビットを破壊して手数を減らす、もしくは火力を減衰させることが狙いだ。
(消耗品の装備とはいえ、自律行動してないのなら……)
イナリは相手のエネルギーを枯らすことで電撃を使った技が発動できなくてはと睨む。
「……まぁ、想像の範囲内の考察だけどね」
それでも、仲間と掛け合ったところ、そう考えるメンバーは少なくない。
絢爛に、華やかにと、自らに強化を施したイナリは優雅でありながら無駄のない動きでビットへと神木でできた剣で連続斬りを浴びせかけていく。
続き、朱華が仲間との間隔を図りながら、長剣で周囲の敵を切り刻む。
広範囲に渡る朱華の斬撃がついに、ビット1体を地面へと叩き落とした。
癒しの円陣に祝福の陽光と主に瑠々の回復に動くヨハンは笑顔を浮かべ、回復の合間を縫ってホーミング性能付きの炎弾を撃ち込み、ビットを大きく燃え上がらせるのである。
●
その後も、イレギュラーズは順調にイナズマWとビットを攻め立てる。
「一直線に」
戦場を動く瑞希は再び、仲間達へと注意を促してから一条の雷撃を発射する。後方の本体だけでなく、手前を貫通したビットは見事に撃ち抜かれて機能を停止し、床へと転がってしまう。
グオン、グオオオオン!!
数が減ったことで、イナズマWは背中のビット格納部を開放し、新たなビットを2つ補填する。
「何処に目え付けてんだ? ウチはここだ」
新たなビットの動きは素早く、それらも瑠々目掛けて次々に雷を放射していく。
加えて、イナズマWのイナズマアタックが彼女を襲う。
連続した攻撃でまともにその一撃を食らった瑠々はパンドラを削って倒れぬよう踏ん張り、上体を起こす。
「ちゃんと首を狙って殺せよ? じゃねえと……死ねないじゃねえか」
瑠々がなおも敵を煽るが、メンバー達はその隙にビットの格納庫となるイナズマWの背部へと攻撃を集中させる。
直接、攻撃を仕掛ける朱華は、あまりに巨大なロボットに圧倒されかけるが、気を強く持つ。
「敵が幾ら大きくたって負けるわけにはいかないわ、フリアノンの戦士の名に懸けてっ!」
周囲を飛ぶビットも纏めて、朱華が激しく斬りかかり、特にロボット背部は執拗に切り付け、傷めつける。
汰磨羈もスキルによって戦場を俯瞰し、仲間、ビット、ロボットの位置関係の把握に努め、敵2種のみを直接貫通で狙える位置を見定めてから攻撃を繰り出す。
タイミングをしっかりと合わせ、汰磨羈はビットとロボットを合わせて刀身から霊気を放射した。
舞い散る白桜の花弁。深く深く刻み込まれた斬撃によって、イナズマWの背部から黒煙が噴き出す。
「よし!」
グオオオオオオ!?
明らかにイナズマWに異変が生じ、背部のビット射出が機能しなくなったようだ。
こうなれば、イナズマWとの戦いに専念できるよう、邪魔なビットを先に排除したいところ。
瑠々が身を張ってくれているが、すでにパンドラを使っており、いつまで持つかはわからない。
それでも、彼女の抑えを頼りとする繧花。
「このまま、全てのビットの撃破を」
戦況から見ても、作戦方針の変更はないと彼女は確認し、ビットへの攻撃を続ける。
常にイナズマWの死角へと位置取れるよう意識して移動する彼女は、コンビネーションによる打撃を直接ビットへと叩き込んで。
「これで……!」
体内の気を両手に集中させた繧花は渾身の力で光柱を放ち、ビット一つを沈黙させた。
程なくして、イナリは戦闘用の式によって一時的に身体能力を向上させ、ビットへと連続斬りを浴びせかけ、地に墜とす。
「明らかに、ビットに頼っている部分は大きいわ」
「やはり、ビットは厄介ですね」
イナリに同調するハンナも、地上から魔力の大砲でビットを撃ち抜く。
念の為と、ハンナは本体背部を巻き込む形で一撃を放っていたが、ビットを無力化させただけでなく、本体によるビット補充ができなくなっていたことを再確認していた。
そのハンナの一撃によって、背部から内部の配線、骨組みなどが外からでも視認できるように。
無論、イレギュラーズ達がこれを狙わぬわけがない。
「雷で動くなら、自分で使う以上に溢れたら止まるんじゃないかな!」
瑞希自身はさほど攻撃力がなく、厚い装甲を貫く力はないと自認しているが、内部が見えている状況なら有効打を放つことができる。
グオオ、グオオオオ!!
放射した雷撃によって、イナズマWの挙動に異変が起こる。自分に余る力が溢れ、回路を焼いてしまっていたのだ。
「あと、キミは呪殺にまでは対応できないよね?」
背部面の修復にも相手はリソースを割いているようだが、そういった不調を自己修復する力はないと瑞希は踏み、死者の怨念を束ねて撃ち放つ。
内部の不調ばかりにとらわれてばかりもいられない。
「二足歩行ロボットの弱点はやっぱり脚部よね」
「ああ、こういうロボットは関節の辺りが大体狙われるときついんだよな」
イナリは脚部へと狙いを変え、膝裏を狙って大剣を叩き込む。
抑えを行う瑠々も同意しながら、敵の勢いを利用したバックハンドの一撃で脚部の破壊を目指す。
再び、イナリが重い一撃を打ち込んだことで右膝が破損し、イナズマWのバランスが大きく崩れた。
「多脚型とか、タンク型とかちょっと面白い……じゃなくて頑丈な代物にしないさいよね!」
グオオオオオオオオオオオオ!!
土埃を立てて研究所内に倒れたイナズマW。それに瑠々は安堵するが、相手はなおも両手にサーベルをもって切りかかってくる。
「さて、エンジンは無傷で残してやった方が良さそうな気はするが。まぁ、努力目標としておくか!」
それでも、仲間達が内外への攻撃によって動きを大幅に止めてくれたこともあり、できないことではないと汰磨羈は確信する。
相手の転倒に巻き込まれぬよう一旦退避していた汰磨羈は、
白桜の花弁を舞わせて最接近し、斬りかかっていく。
その上で、彼女は霊気を練り上げて気力を回復しつつ追撃する。
現状、エネルギー補填の手段のないイナズマWにはできない芸当だろう。
「範囲攻撃ばかりだからダメなんだ! 僕の誘導弾を参考にするんだな!」
エネルギーを食う攻撃手段ばかりのロボットにヨハンはダメ出ししつつ、再びホーミング・ファイアーボールをぶつけて爆撃を浴びせ、牽制する。
それが誘爆せぬよう、汰磨羈は背部からさらに深部へと攻撃を食い込ませる。
エンジン周囲の電気系統を滅多切りにし、全身への電力供給を完全にカットしてしまう。
グオ、オオォォォォ……。
最後の最後まで暴れていたイナズマWだったが、ようやくその目から光が消え、活動を停止したのだった。
●
なんとか、イレギュラーズ達はイナズマWを止めることはできたが……。
「おお……」
「なんということだ……」
戻ってきた研究者達はロボットの惨状に愕然としてしまう。
「まあ……、災難でしたね。ご無事で何よりです」
ハンナは相手を慰めつつ、次からは外部から強制停止機構などの取り付けを勧める。
とはいえ、黙っていられないメンバーもいたようで。
「もう、ダメだよ! せっかくのカッコいいロボットも、アレじゃ悪役でしょ!」
やっぱり、人が乗り込んで操作する形でなければと、繧花が研究者達を諭す。完成した際は乗せて欲しいと、彼女は本音ものぞかせていた。
「おい、今度は暴走しない安全な物を作れや。この国くらいしかウチの行き場はねえんだ」
瑠々もまた一気に不満を捲し立てる。
「此処が無くなったら、ウチは行き場がなくなる。てめえらの研究材料になる気もないけど、一度だけなら研究に協力してもいい」
「む、むう……」
「ただし、暴走させない、人に危害を加えない事が条件だ。旅人の体好き勝手弄れるんだ。いい条件だろ?」
瑠々の提案は研究者達にとっても悪いものではない。
もちろん、危険な行いをセーブすべきという制限付きだが。
それでも、巨大ロボットというものに、期待を寄せるメンバーは多い。
「もっとロボットのお話聞きたい! 竜種に対抗できるロボットも研究してるの?」
「そうじゃ、今度こそ街を守れるロボットを作らねばの!」
研究者の返答に瑞希は目を輝かせて。
「竜種みたいなロボットもあったら、かっこよさそうだよね!」
「デザインはともかく、後程戦闘レポートを綴るわ」
イナリはそのレポートに先程の戦いから得られた情報に基づく改善点、改造点を記すとのこと。
「次はもっと強い機体になる事を願ってね」
「おおっ!」
「是非頼むぞい!」
より良い巨大ロボット製作に、研究者達は意欲を燃やしていたのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは巨大ロボットのビット格納について目をつけ、結果として破壊する糸口を作った貴方へ。
今回はご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
『練達』復興シナリオをお届けします。
●目的
巨大人型ロボット「イナズマW」の活動停止。
●概要
世界を股にかけることができる巨大ロボットを秘密裏(と本人達は考えている)に開発していた研究者達。
だが、練達へと竜種が襲撃したことで研究所にも被害が及び、一部システムにエラーが出て巨大ロボットのAIが暴走して動き出しています。
暴走を始めたロボットが研究所を破壊してしまう前に撃破、あるいは動きを完全に止めていただきますよう願います。
●敵……巨大ロボット+ビット
○巨大ロボット「イナズマW」×1体
全長10mほど。スラっとしたスタイリッシュな機体。
2本のイナズマが頭の角、両肩、胸部、腰、両腕両足などに刻まれています。ロボ好きなら目を輝かせそうですが、暴れる巨大ロボットは脅威以外の何物でもありません。
武装は両手握るツインサーベル、一直線に相手を貫くイナズマシュート、広範囲に電撃を飛ばすイナズマスパーク。全身に電撃を纏ってのイナズマアタックなど、巨躯を活かした攻撃を行います。
また、後述のビットが減れば、補充も行います。
○ビット×3体(初期)
全長2mほど。ひし形からイナズマ型に削ったようなデザインをしています。
自律して行動可能で、本体を援護するように敵対者へと攻撃を仕掛けます。
攻撃方法は直線状に放つ放射、広範囲に電流を撒き散らす放電と本体と同様の攻撃を行いますが、いずれも劣化版です。
倒しても3体になるまで本体が補充してきます。回数制限はあるそうですが、具体数は不明です。
●NPC……研究員
練達の研究員達。多くは年配の人間種のようです。旅人の話を元に、巨大ロボットを開発しています。
拙作、「3倍で動くという赤いロボット」に登場した人達と同一人物です。
今回は研究所から退避しており、戦闘には介入しません。
事後は戻ってくるので、何か言葉をかけるとよいでしょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
Tweet