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シナリオ詳細

雪影の幻影

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●雪影の幻影
 極寒の北海と、深い雪に覆われた地、鉄帝国北部ヴィーザル地域、ノルダイン地方。
 この地域に住まう人々は厳しい生活を強いられており、2月も間近の今となっては蓄えた物資もかなり心許なくなる頃。
『いやぁ……本当に助かったよぉ……』
『別にいいんだよ。困った時はお互い様だしな。ああ……あんたの村、スパイスの余りはねぇか? その辺りがもうちょっとで無くなりそうなんだわ』
『んー……ちょっとだけど余裕はあった筈だぁ。判った、次来た時には、それを持たせるなぁ』
『頼むな。後は……無事に村に帰れる事を祈っとくぜ?』
『そうだなぁ……最近この辺りで、襲われたって話も聞くしなぁ……ま、昼間の内に急いで行けば、見通しも良いし大丈夫だろぉ……んじゃぁなぁ……』
 背負う鞄に、融通して貰った保存食を一杯にして、その対価を約束して、村への家路を辿る青年。
 勿論足元は深雪が積もっており、歩いて行くだけでも一苦労。
 しかし村の皆が待ってくれているから……だからこそその足取りをしっかり踏みしめ、確実に村へと向かう。
 ……だが、そんな青年の姿を見つけたのは、不遜な影。
『……おい、あいつ……何か持ってる様だぜ?』
『ああ……ん……どうやら食べ物の様だ。塩漬けにして干した干物っぽいな』
『おお、そりゃあいい上等物じゃねぇか。丁度一人だしよ、油断してる様だから……一気に仕掛けようぜ?』
『ああ……いいねぇ。んじゃぁ、始めるとしようか!』
 巨躯の躯をした、クマの様な獣人種達。
 その体は白い毛に覆われており、雪化粧の世界の中に置いては……保護色とばかりに姿はかなり紛れており、青年は此方に気付いていない模様。
『……良し。んじゃ、行くぜ?』
 その手に猟銃の様な物を構え……青年の少し前方に向けて放つ。
『う、うわぁっ!?』
 突然の銃撃に、その場に転ぶ青年。
 そして転んだ彼に向けて、一気に熊獣人達が接近し、彼を取り囲む。
『へへへ……その荷物、渡して貰おうかぁ?』
『渡さないってんならなぁ……? 判ってんだろうなぁ……?』
『ひ……ひぃぃぃ……』
 怯えに怯える青年……1対多の状況下では、勝ち目すら無い。
 勿論一般人である彼に戦う力などある筈もなく、恐怖の表情は引きつるしかなかった。


「あー……イレギュラーズの皆さん! こっちこっちなのですよ!!」
 ぶんぶんとギルド・ローレットで手を振るのは、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)。
 彼女の仕草に気付いた君達を引き連れ、ユリーカは世界地図の北部を指さしながら。
「今回皆さんには、ここに向かって貰いたいのです! 懲りずにノーザンキングスの者達が、この地域に住まう人々を苦しめ続けているので、それをどうにかしてきて欲しい、って訳なのですよ!!」
「今回のノーザンキングスの奴等は、シロクマさんの『グレメール』という一族さんの様なのです。こいつらその白毛で雪降り積もるノルダインの地を根城にしていて、遠くからでは姿が見えにくいという特徴を持っているのです」
「それに加えて姿が見えにくい状況下、猟銃のような物をまずはぶっ放して攻撃してくるという奇襲作戦を仕掛けてくるのです。先手を取っての奇襲を行い、銃撃に気を取られている間に、一気に取り囲んで包囲し、ボッコボコにするという緻密かつ脳筋な作戦を取ってくる奴らだから、本当に要注意なのですよ!」
 そこまでユリーカは言うと共に。
「北国に住んでる皆さんは、常に厳しい生活を強いられており、助け合って生きているのです。それを横から掠め取っていく彼等の極悪非道な行いを許す訳には行かないのです。という訳で、宜しく頼むのですよー!!」
 目をキラキラさせながら、ユリーカはえいえいおー、と拳を振り上げるのであった。

GMコメント

 皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)と申します。
 シロクマさんと雪山で遭うなんて……ちょっと怖い状況ですが、知性を持つシロクマ獣人さんは更に危険な存在ですね。

 ●成功条件
  ノーザンキングスに属するシロクマ獣人の一族『グレーメル』の迎撃及び、
  襲撃された人の救出になります。

 ●情報精度
  このシナリオの情報精度はBです。
  依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 ●周りの状況
  今回はノーザンキングスの村から村の間の雪原帯が舞台となります。
  村の交易で干物類をカバン一杯に背負った青年一人がグレーメルの奇襲により殺されようとしているので、そこに割込む形となります。
  青年は突然の銃撃を受けて恐怖に転倒……更に深い雪故に動きが取りづらい状態です。
  勿論皆様も雪深い舞台となりますので、足元の対処をしっかりしないと雪に足を取られる……という事にもなりかねませんので、ご注意下さい。
  ちなみに時刻は昼過ぎた辺りなので、周囲の視界は良好です。ただ事前に割り込む事は出来ないので、ご注意下さい。

 ●討伐目標
  白熊の獣人種『グレメール』一族
   全身白い毛に覆われた白熊の獣人種です。
   ただ手先は器用な様で、猟銃を数体ですが扱う事が出来ます。彼等は身を低くして姿を隠して居るので、事前に発見する事は難しいでしょう。
   その銃撃は牽制として最初は行いますが、敵対してくる相手が居ると判れば普通にそれで攻撃してきます。
   かなりの遠距離からの銃撃なので、村の青年の救出・保護とは両立出来ません。
   
   又、銃を使わない脳筋な白熊獣人達は、普通に接近してぶん殴る攻撃がメインです。
   特殊な能力は無いものの、単体攻撃力が高く性格も荒々しいので、こいつらの説得をする事は不可能です。
   正しく力には力で対応する……という事で皆様の力が頼りとなります。
 
 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • 雪影の幻影完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年02月14日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
不動 狂歌(p3p008820)
斬竜刀
ウルフィン ウルフ ロック(p3p009191)
復讐の炎
エドワード・S・アリゼ(p3p009403)
太陽の少年
エア(p3p010085)
白虹の少女
百合草 瑠々(p3p010340)
偲雪の守人

リプレイ

●北を巡る略奪者
 極寒の海が広がる、鉄帝北部ヴィーザル地方。
 寒々とした海には氷が浮かび、見るだけで心の底から凍えそう。
 勿論周囲の陸地は一面の雪で覆われてしまっており、風が吹けば細雪がさらさらと眼前に流れ込んでいく様な具合。
 そんな厳しい極寒の環境の中で生活するここ、ノルダインの住人達は……村同士で資材・食料など、生活に必要な物を融通し合う事で、後もう少しすれば芽吹くであろう春を忍んで待ち構えている。
 だが……そんな耐え忍ぶ人々を食い物にしよう……という行動を起こそうとする者達が出てきてしまうのは、この様な厳しい地であるからこそ……。
「さて、と……今回の仕事は、白熊獣人に襲われる若いのを助けるコトか。真面目に生きている堅気の皆様を襲うなんざぁ、ふてぇ野郎だな」
 強面を、一際険しくするのは『侠骨の拳』亘理 義弘(p3p000398)。
 ええ、とそれに頷くのは『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)。
「全くです。まぁノーザン・キングスの悪党を始末するだけなら何時もの事です。とは言え今回は、かなり深い積雪を誇るノルダイン地方……歩くだけでも足を取られる位ですから、厄介な事この上ありません」
「ああ、そうだな。ま、白熊故にそういう土地が得意だとか、大方そういう事なんだろう。地の利を活かす位の頭はあるって訳か……」
「そうですね……寒さは平気でも、滑りやすい部分には対処が必要です。靴にスパイクを付けるくらいはしておいたほうが良さそうですね」
 肩を竦めた義弘に、足元にスパイクを巻き付けるオリーブ。
 白熊獣人故に、雪の上での四足歩行の移動はお手の物。
 一方で、極々普通に暮らして居る一般人達からすれば、この環境は住まうには厳しい……それは、人の姿をしているイレギュラーズも同じ事。
 だからこそ助け合って生きている……その助け合いを横から掠め取っていこうとするのが、今回のノーザン・キングス、『グレーメール』一族なのだ。
「チッ……わざわざ戦えない商人一人をよってたかって強盗かよ。見下げた奴らだよな。こんな寒いんだから、熊なら大人しく冬眠でもしてろってーの」
 と『暴れ博徒』不動 狂歌(p3p008820)が蔑む様に言葉を吐き捨てる。
 それに『狐です』長月・イナリ(p3p008096)が。
「えっと……普通のシロクマは、確か冬眠しない筈なのよ。それにシロクマの毛って白って思って居る人が結構いるみたいだけど、実際の所は透明で、皮膚の色は黒なのよね。これ、豆知識よ?」
 どこから手に入れたのかは判らないけれど、シロクマ豆知識を披露するイナリに、狂歌は。
「え、白熊は冬眠しない? ……い、いや、勿論知ってるぜ。所謂言葉の綾だ、き、気にすんな!」
 取り繕う狂歌に、イナリはふふふ、と優しく笑いながら。
「まぁ……何にせよ今回の白熊たちは盗賊の類いをしているって言うのは紛う事無き事実なのよね。白雪の上に居ると、保護色で面倒臭いのは間違い無いのよ……」
 うんざりした風に溜息を吐く。
 そして、『復讐の炎』ウルフィン ウルフ ロック(p3p009191)が。
「此奴らの目的は、食料等の食い物なのか、それとも……」
 逡巡するロック……だが、明確にその意思を紡ぐ『特異運命座標』エア(p3p010085)。
「目的が何であっても、ダメです! 襲われている人を放ってはおけませんから、急ぎましょう!!」
 いつもの落ちついた雰囲気とは違い、積極的なエア。
 それを知る『ドキドキの躍動』エドワード・S・アリゼ(p3p009403)が。
「いや……エアのやつ、すげーやる気だな? これは……オレも先輩として、頑張らねーわけにはいかねーかな!!」
「そうです! 困っている村人さんを、放ってはおけないのです!!」
「おう、そうだな! 依頼主のにーちゃんも困っているみてーたし、その、白熊のおっちゃん達は、人からものを盗るのが当たり前になっているみてーだ。見た感じこの辺り、殆ど食料もなさそうだし、十分に生活するには厳しそーな感じだもん。生きる為に必死なんだろーけど……見過ごせねーぜ! ここは大人しく引き籠もって貰うから!!」
 元気一杯、気合い一杯なエドワードとエア。
 一方で冷静にロックと義弘が。
「此奴ら全員の処分は目的次第。この厳しい環境で『生きる為』に行っているのなら考えよう。だが……『楽しむ為』に行っているのなら、我も楽しませて貰うとするか。我は略奪者になるがな」
「ああ。ヤクザとして見過ごせねぇ。殴り倒すしかねぇな」
 そんな仲間達の言葉を聞きつつ、『死にながら息をする』百合草 瑠々(p3p010340)は。
「ったく……んでこんな所に人がいんだよ。交易なんだろ? 護衛も付けないで歩くだなんて、こいつも悪いだろうが」
 苦虫を噛みつぶしたかのように苛立ちを見せる瑠々だが、オリーブがそれに。
「……まぁ交易とは言いますが、実の所は村同士の助け合いみたいな物です。厳しい環境ですから、代表者一名だけを出して、最低限の被害に抑える……という意図も有るでしょう」
「とは言ってもよぉ……不用心過ぎるぜ。ああ……もう、イライラする。薬飲んでトリップしないとやってられねぇぜ……」
 纏う苛立たしい雰囲気を、更に燃え上がらせつつ……イレギュラーズ達はユリーカより聞いた雪原の上へと急ぐのであった。

●白い地の銃撃者
『……ふぅ……』
 真っ白な雪の上を、背負子を背負って歩く青年。
 後もう少しで越せる冬をどうにか耐えきろうというのが、その量からは見て取れるし……勿論それは彼だけで無く、彼と共に住む村の人の分も含まれている。
 そう……彼は村人達の期待をその身に背負い、村人達が生きる為の希望を繋いでいたのだ。
 しかし、そんな量を背負っていれば、当然雪原の上に姿はハッキリと目立ってしまう訳で。
『……くくく。あいつ、何やら沢山の食料を背負い込んでいる様じゃねぇか』
『みてぇだな! あんなに食料を一人で背負ってよぉ! 無防備な事この上ねーぜ! まぁ誘ってんなら、襲撃しない訳にはいかねぇよなぁ!』
『面白え! んじゃぁ早速始めるとしようぜぇ!』
 と、青年をギリギリ視界に納められる位の所で、笑い合っているシロクマの獣人達。
 当然その身は人より二回りほど大きくて、かなりの威圧感を与えてくる。
 ……そして、そんな両者の影の下に辿り着いたイレギュラーズ。
 共に離れた所に立つ両者……いや、既にシロクマ達は戦闘態勢に入り始めており、身を低くしてその手の銃を構える。
 銃口が狙うは……かの青年の少し先の雪原。
『……っしゃぁ、行くぜ!』
 次の瞬間、火花をふく銃口。
 気付かずに歩いていた青年は、突然銃撃され、その場に転倒。
 背負った荷物は雪の中に埋まり、重心が後方になってしまい、上手く動けない。
 そして転倒した彼の元に向けて、次々と別のシロクマ獣人達が雪原を駆けて襲撃を仕掛けていく。
 身動きとれない所に、一気に接近してくる獣人……流石に恐怖を覚える事態。
 だが、それよりも一足早く動き出したイレギュラーズ。
 義弘、イナリ、ロック、エドワード、エアの五人は青年の下へと駆けつける一方で、瑠々は大きな音が鳴り響くクラッカーをパァーン、と鳴り響かせる。
『!?』
 破裂音に気付いたシロクマ獣人達が一瞥してくるところへ、更に瑠々が。
「おい、そんなの殺すよりこっちの方が金もあるぞ! 小娘一人殺せねーのか毛むくじゃら共!」
 とシロクマ共に挑発。
 ……とは言え既に襲撃を仕掛けているシロクマ共は、そのまま青年の方向への進軍を進める。
 一方の銃撃シロクマ達は、瑠々に銃口を向ける。
『何だか良く判らねえ奴らが来たが、さっさとぶっ放して殺してやれ!』
 シロクマの誰かがそう仲間達に指示をすると共に、絨毯爆撃を行う。
 瑠々はその攻撃を全力で防御態勢を取り、ダメージを最低限にしつつ、時折召喚獣にて己を回復する。
 そして瑠々が惹きつけている間に、狂歌とオリーブの二人は……身を潜めながら、銃撃シロクマに向けて距離を詰める。
 二陣のシロクマに、イレギュラーズ達も二陣で挑む。
 ……そして、ギリギリ青年の元に先行して到着したエア。
『な、何なんですかっ!?』
 混乱している彼にエアは有無を言わさぬ勢いで。
「大丈夫ですかっ? さぁこちらへ! まずはこの場から離れますよっ!」
 と彼に肩を貸して、背負子の荷物と共にその場から退避。
 無論、駆け寄るシロクマ達は、それを追いたてようとするが……。
「させん……」
 すっとその間に立ち塞がり、妨害するロック。
 行く先を妨害されたシロクマ達の一部が、迂回して追い立てようとするものの。
「自慢じゃないが、目鼻に耳も、お前さんらより効くようになってな? 今更ながらに……マンガ見てぇになってんな、俺」
「ええ……私達の勘を上回る事が出来るのなら、大した物です」
 義弘とイナリ二人が立ち塞がり妨害。
 同時にエドワードはエアと共に青年をピッタリマークし、万が一攻撃が来ても大丈夫な様にカバーリングを継続。
 青年の近くで立ち回るイレギュラーズ達、それを遠くから銃撃するシロクマ達。
 銃撃者達は、至近戦をしている仲間のシロクマ達を補助しようと援護射撃。
 瑠々の挑発もあり、射撃の方角はバラバラ。
 そして、オリーブと狂歌はいつの間にか間合いをつめていき。
「何でこの段ボールに隠れるだけで見つからないんだろうな? いや、今はそんな事はいいや、一気に行くぜ!」
「ええ」
 狂歌の事に頷き、オリーブと共に二人、一気に銃撃シロクマ達へ襲撃。
『……何っ!?』
 完全に不意を突かれた形になるシロクマ達。
「俺は不動鏡花だ。なぁ、お前らそんな所でちまちま撃ってないで、俺と遊ぼうぜ腰抜け熊野郎ども!」
「ええ……卑怯な行い、許す訳にはいきません」
 狂歌は己が力を全て雷撃に返還し、一閃と共に叩きつけて一体に大怪我を負わせる。
 更にオリーブも、幻想を穿つ竜撃の一手を叩き込み、二撃合わせ、確実に一体の息の根を止める。
『何だと……!?』
 流石に仲間が二発で死に絶えるなんぞ思って居なかった様で、目を見開き、恐怖を露わにする。
 一方、後方から瑠々は絶えず。
「おい、何でコロせねえんだ? てめぇらみたいな銃なら狙えるだろ? ほら、此処が頭だ。良く狙えよ。首も狙え、心臓もだ! 人体には急所が幾らでもあるんだ。ウチを殺してみろよ!」
 その身をアピールし、己を殺せ、と挑発。
 銃撃シロクマ達はどうにか反撃しようとするものの、オリーブと狂歌が至近で仕掛けてくるのもあり、上手く瑠々を狙えない。
 そう、銃撃側を混乱させつつも、同時に青年を守る側も並行して乱戦が繰り広げる。
「聞こう? お前等は、厳しい環境で生きるために行っているのか? それともただ、楽しむ為に行っているのか?」
 とロックはそうシロクマ達に問いただすが、戦う彼等は。
『うるせえ! ごちゃごちゃいってんじゃねえ!!』
 と聞く耳は持たない。
「ま、話を聞いて貰える何て思っちゃいねぇがな。とにかく、てめぇらをさっさと叩きつぶして行くがのみだ」
「そうだな! ほらよ、小さい子供のオレ位なら倒せるんじゃねーの? ま、そんな巨体じゃ捕まえられなんかしねーだろうけどな!」
 どっしりと構え、敵を纏めて旋回しながら巻き込んでいく義弘と、軽い身のこなしで動き回りながら遊撃手の如く鋭い一撃を食らわせていくエドワード。
 更にイナリは炎を纏いし体験でシロクマの身を切り刻み、傷だらけになった所へロックが。
「仮初めだが我は不死性の怪物だ……グレメールの獣ども、我と死ぬまで踊り続けても良いんだぞ?」
 と、右腕に闘気の焔を纏わせ、その拳を腹に叩きつけて……敵の身を雪上に跳ね飛ばす。
 そうイレギュラーズ達が攻撃する中、エアは青年を離れた所に避難させた上で、彼に身を低くする様に指示。
「ちょっと怖いかもしれませんが……大丈夫。わたしが絶対に守りますから……少しだけ、我慢してて下さい」
『わ、わかりました……!!』
 恐怖の中、彼女の言葉に一筋の光明を見出している様で……その指示に従う青年。
 彼が大人しく従ってくれているのもあり、他のイレギュラーズ達は戦闘だけに集中出来る状況。
 そして混乱している銃撃のシロクマ達は、接近してきたシロクマ達の援護射撃をするに至らず、どちらも半ば混乱した状況。
 その混乱の中で的確にシロクマ達を仕留めていき……シロクマ達が奇襲を仕掛けてから十数分。
『く、く……くそがっ……!!』
 苛立ち咆哮を上げる彼に、イナリはさらりと笑顔で。
「シロクマの毛皮って、意外と高く売れるらしいわね……貴方達の皮も高く売り払えるかしらね? ちなみに鮮度が命だから、全身の皮膚を剥ぐまで生きて貰おうかしらね?」
 笑顔と、言う言葉の対比に更に恐怖を燃え上がらせるシロクマ達。
 しかし逃げるには最早遅く……シロクマ達は、イレギュラーズ達の前にほぼ全てが倒れ行くのであった。

●過ごすには厳しく
 ……そして。
『うぅ……』
 顔を伏せ、雪原の上で攻撃を受けないよう、ひたすらに耐えていた青年。
「大丈夫ですか? もう……起きて貰っても大丈夫ですよ?」
 と優しくエアが肩を叩く。
『ほ……ほんとう……?』
「ええ、シロクマさん達は倒しましたから……もう問題ありません」
『わ……判った……』
 頷き、身を起こす青年。
 ……周りには死屍累々と倒れるノーザンキングス達の骸。
「本当、災難だったな。だが、ここに居たら、他のノーザンキングス達に襲われかねん。余計なお世話かもしれねぇが、協力してくれや」
 と肩を叩き、彼と共に村へと向かう。
 ……小一時間程して、やっと青年の村に到着すると……村人達からは心配の声と共に。
『良く帰ってきたなぁ……無事、じゃぁ……ないよな……?』
「まぁ……な。でも、ちゃーんとオレ達が護ったから! 取りあえずは安心してくれ!」
 エドワードの言葉に、頷きながらオリーブも。
「そうですね。とは言え出来るアフターケアはここまでです。後は……春が来るまでは大変でしょうが、頑張って下さいね」
 と、村人達を励ます。
 ……その一方で、ロックは仲間達を見送りつつ、一人だけ生き残らせておいた、『グレメール』のシロクマ一体を少し離れた所まで移動。
 彼が目を覚ますまで、暫しの時間が経過するが……ロックは静かに、一歩離れた所でじっと待つ。
 ……そして。
『……ぅ……?』
 ぼんやりと目を覚ました彼の視界に、漆黒の装束に身を包んだロックの姿。
『……う、うわぁああ!?』
 仲間達を殺した仇が目の前で座っているのに、驚き慌てふためく彼。
 そしてロックは。
「再度……聞こう。お前達は、何故襲った?」
 端的に問いかけるロックに、彼は。
『う……うるせえ! てめぇらに関係あるかよ!!』
「ああ……確かに考え無くても良い所だ。だが、お前達にも退けぬ理由があると思ってな?」
『んな訳……あるかよ!!』
 仲間を殺された怒りからか、素直に話を聞きたくない……という事もあったのだろう。
 そんな彼等の動きに対し、ロックは。
「……そうか。ならば仕方ない」
 と次の瞬間、彼の首を刎ねるロック。
「……此処は鉄帝国。力ある者が正しい世界なのだからな」
 絶命した彼に振り返る事無く、その一言を吐き捨てたロックは……跡形を残さずに、その場から姿を消すのであった。

成否

成功

MVP

エア(p3p010085)
白虹の少女

状態異常

なし

あとがき

ノーザンキングスの困ったシロクマ退治にご賛歌頂き、ありがとうございました!
もうすぐ3月……あともう少しの北国の生活、皆様のお力のお陰で、この辺りは……大丈夫になった事でしょう。

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