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シナリオ詳細

骨鳴洞窟と3人のこどもたち

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●3人のこどもたち
 ぴちゃん――という水音が反響した。鍾乳洞のさがった洞窟にはうっすらとした青白い微光が点々とし、それ以外の部分はひどく暗い。
 額から角をはやした亜竜種の少年アンディは、壁にはえた青白い発光キノコへと顔を近づける。
「中は明かりがあるって聞いたけど、これじゃ殆ど見通せないな……ボブはどう、見える?」
 振り返ったアンディに、ヌッと黒いリザードマンタイプの亜竜種少年が答えた。
「オイラは暗視能力があるからな、よおく見えるぜ。キャシーは別の意味で『見えて』るんじゃねえか?」
 ボブもまた振り返ると、びくびくとしながら突いてきていた青白い鱗のリザードマン亜竜種が口を開いた。
「音は……する。反響してるの、わかる……。けど、途切れる時が、あって……そのキノコのせい、かな」
 キャシーにはエコーロケーション能力があった。響く音を立てれば洞窟内の構造がある程度分かるし、何者かが近づいてくればそれも分かる。が、彼女の言うとおり青白く微発光するキノコには音を吸収する性質もあるらしく、反響を頼りに構造を探るにも限界がありそうだった。
 アンディは首をかしげ、キノコのひとつをつつく。
「ここにはいろんな種類のキノコが生えてるみたいだ。光るのや、音を吸収するのや、匂いを出すものとか……」
「通りでさっきから鼻がきかねーわけだぜ」
 ボブが鼻をすんすんとやって顔をしかめた。
「場所によって探索能力を使い分けたほうがよさそうだ。けど、危険は少ないし……もう少し奥まで行ってみようか?」
 首をかしげるようにして言うアンディ。ボブは乗り気だったが、キャシーは嫌そうだ。
 けれど断りきれずについていこう……とした、その時。
 ハッと後ろへと振り返った。
 暗闇から浮き出るように現れる、リザードマンタイプの頭蓋骨。それがカパッと口を開き、カチカチと笑うように音を鳴らした。
 悲鳴があがり、子供達が走り出す。

●覇竜領域トライアル
 前人未踏の覇竜領域内で、ローレットは亜竜種たちの里を発見した。
 友誼を図るための手段として、この領域で生き残れるだけの力を示すことを求められたのだ。
 これは、そんな中で生まれた依頼のひとつである。

●骨鳴洞窟への探索
 亜竜集落ペイトの食堂に、あなたたちは集められていた。
 額からうにょっとした角をはやした短髪の女性が、やってきたあなたを見つけて手を振っている。ゆるく羽織ったジャケットとパンツスーツ。どこかデキる女風の眼鏡をかけているが、さっきからずっと肉まんを囓っていた。横にはピラミッドのように積み上げられた肉まんがあり、絶えずそれを食べ続けている。
「よくきてくれた、ええと……ローレットさんだったな?」
 亜竜種女性はそう言うと、簡単に自己紹介をしてくれた。
 ペイトで暮らし、外の世界を観察した経験から余所者にも慣れているということで依頼の仲介人をしているらしい。
「今回やってもらうのは、骨鳴洞窟への救出仕事だ。ペイトの子供が三人ほど探索にいってしまって帰ってきていないのだ。なかなかタフな連中なので死んではいないと思うが……何日も放置すればそれも危うい」
 言葉の上では心配ないと言っているが、肉まんを食べる手を止めてむっつりと顔をしかめる様子にはありありと不安がにじみ出ている。もし子供達が死んでしまっていたらどうしようと考え、不安のあまり口に出来ないと言った様子だ。
「あの洞窟にはできるだけ近づかないようにしているんだ。なぜなら、アンデッドが住処にしているという噂があらうからなんだ」

 骨鳴洞窟はその名の通り、骨だけになった亜竜種アンデッドが出没する洞窟である。
 内部には様々なキノコが自生し、その性質から複数の探索スキルを組み合わせていかないと手詰まりを起こすというリスクもある。
「あの洞窟に現れるアンデッドモンスター……私達はあれを『スケルトン』と単純に呼ぶんだが、人間種さんたちは『デミドラゴスケルトン』と区別して呼んでいるらしい。人間種のスケルトンとリザードマンタイプのスケルトンは形状からして異なるからな」
 骨の身体に骨の武器を扱うデミドラゴスケルトン。
 そんなモンスターの現れる洞窟に子供だけで潜り込んで返ってこないというのは、確かに不安だろう。
「子供達を連れて脱出してくれればいい。手持ち式のランタンくらいは貸せるが……道具を使わずに探索できるスキルがあると楽になるだろう。そのあたりはローレットさんたちで話し合ってくれ」
 あとのことはよろしく頼む。そう言って、女性は惜しみつつも肉まんタワーの一部をそっと差し出してきた。

GMコメント

●オーダー
 あなたは亜竜集落ペイトにて子供たちの救出依頼を受けました。
 彼らを助け出すため、あなたは骨鳴洞窟へと挑みます。

●骨鳴洞窟とスケルトン
 洞窟内は薄暗く、探索スキルを阻害する様々なキノコが生えています。
 例えばエコーロケーションを使って探索していると音響吸収キノコが邪魔するエリアがあるので、そこは超嗅覚や暗視によってカバーするといった具合です。複数の探索手段を用意して挑みましょう。

 洞窟内は子供が棒を振り回しても大丈夫なくらい幅が広く、分岐もいくつも存在しています。
 こうした横穴は見逃すと探索に不利になったり、前後を挟まれたりといった危険があるので、チームを最大4分割くらいまでできるように備えておいて分岐を見つけ次第手分けして探索するといった手段をとるとよいでしょう。

 内部に発生するスケルトンは洞窟内を住処とし、侵入者に襲いかかる性質があると噂されています。
 子供達はなんとか洞窟内を逃げ回って生き延びていると思われます。彼らを見つけて保護し、洞窟から脱出しましょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 骨鳴洞窟と3人のこどもたち完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年02月05日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)
炎の守護者
ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)
白き寓話
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
星芒 玉兎(p3p009838)
星の巫兎

リプレイ

●骨鳴洞窟
 横穴が数え切れないほど広がるペイトには、危険な空洞もいくつか存在する。
 集落を拡張する際にそうした空洞に接続してしまい大人達が封鎖するなんていうことも珍しくはないだろう。
 骨鳴洞窟もそのひとつだ。
 本来地上に通じている洞窟だが、亜竜種アンデッド『デミドラゴンスケルトン』の住処ともなっているこの場所に、子供達がそうと知らず好奇心から入り込んでしまったという。
 『竜首狩り』エルス・ティーネ(p3p007325)はぴちょんと音の反響する洞窟の中を進みながら、その長く細い暗闇に目をこらした。
「そういう話は、ほかでもよく聞くわね。亜竜種も私達と同じ人間ということなのかしら」
 ここでいう人間とはウォーカーたちすら含む多種族全般を指すことばだ。そしてだからこそ、『亜竜種の子供達』という存在に同情的になるのだ。
「無事でいてくれるといいのだけど……」
 暗視能力をもつエルスにとってこの程度の闇を見通すのは何も問題がない。
 問題があるとすれば、『可能性を連れたなら』笹木 花丸(p3p008689)のように暗視能力をもたない人間たちだろう。
「前払いの肉まんも貰っちゃったし、気合を入れていかないとねっ!」
 エルスの不安を振り払うようにあえて弾むような声で言うと、レイヴァンとかいうパチモンブランドのサングラスを装着した。
 それだけで若干ではあるが暗闇が見通せるようになる。
 なら僕もと、マルク・シリング(p3p001309)が目元をすっぽりと覆うタイプのゴーグルを装着する。
「あまり捜索に時間は掛けられない。積極的に手分けして、出来るだけ広い範囲を探ろう」
 視線のわかりづらいゴーグルの反射。それゆえに表情もまた読みづらいが、マルクに焦りの色は……ないように見える。焦って慌てたところで事態の解決には至らないと経験で知っているかのような冷静さだ。
 そして『手分けして』と言っているが、手分けの手順やメンバーも既に編成済みである。
 まだその時が来ていないだけだ。
「やっぱり人も竜も変わらないのね。わんぱくなのはいいけれど……早く助けないと」
 三人の考えをまとめるように言った『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)は、懐から赤いフレームの眼鏡を取り出した。インスタントマジックの付与された眼鏡だ。それを手首のスナップだけでチャッと開くと目元に装着する。洞窟の壁面に手を付け、漠然とした意志を読み取り始める。
 壁がものを語るわけではないが、本来ついているはずのホコリが落ちていたり、地面に洞窟内部からではない土のあとがあったりといった些細な違いを見つけ始める。
「ここを誰かが通ったことは確実……だけど、痕跡は少しずつ薄れてるわ。やっぱり手分けをするしかなさそうね」
「ヴァイスでもそこまでしか分からないのか……自分の脚が頼りだね」
 ナイトゲイザーを目に投与し終えた『炎の守護者』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)が、ぱちぱちと瞬きをして振り返る。
 若干の暗視効果を得た今は洞窟内の様子がよく見えるが、ずっと奥まで見通せるというほどではない。徐々に深くなる暗闇の向こうで、骨の頭が待ち構えている想像をした。子供達がてにかかっている悪い想像も、同時に。
 ぶるりとおもわず身が震えたチャロロは、その不安を払拭するためにか『おかえりを言う為に』ニル(p3p009185)へ話を振った。
 それを察したのだろうか。暗視効果をもつ首飾りをしたニルが、肩から提げた小さな鞄から葉に包んだ肉まんを取り出して見せた。
「ニルは、帰ってきたアンディ様たちと、一緒に食べたいなって思うのです」
「持ってきたの?」
「そのつもりじゃなかったのですけど……」
 ニルはすこし照れたように笑って、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)に視線を移した。
 彼もまた、リュックサックに入れていた同じ肉まんを取り出してみせる。
「不安な時にこういうものを食べると落ち着くからな。あの仲介人からいくつか貰っておいた」
 その際に『自分の分はいらないから』とことわったイズマに、仲介人はイズマにもあげるので子供達にもとピラミッド詰みにした肉まんを一部わけてくれた。ここで渋るほど狭量な人間ではないということなのだろう。
 強くなければ生き残れないというある意味の割り切りをする一方で、弱い同胞は救われて欲しいという考え方をもつ。そのあたりは混沌の民がもつ一般的な倫理観だといえた。
「わんぱくな子供と振り回される親。見慣れた光景ですわ」
 そんな風に言いながら、『星の巫兎』星芒 玉兎(p3p009838)は扇子を畳んだまま蝋燭のように翳すと、その先端から満月のような光を放った。
 光で照らしだしたのは自分の視界を確保するためでもあるが、同時に洞窟内の地質を調べるためでもあった。
 壁面に明かりを近づけ、上から下へとなぞるように光をあてていく。
 光の照り返しかたや指で触った感触などから、それが固い岩盤であることをおおまかに察していた。
「おそらくですが、自然にできた空洞をスケルトンたちが利用したのでしょう。この岩盤を砕くのはかなりの労力がいりますから」
 そこからわかることは、スケルトンたちは意図的に横穴を作って潜伏したり、洞窟を拡張して罠を作ったりといった手の込んだことはしてこないだろうということ。
 そして自生しているキノコの様子からして、それなりの長い年月洞窟の形をかえてはいないだろうということだった。
 耳元……というか頭頂部に手を翳す玉兎。兎の耳がぴんとたち、音をひろうべくぴこぴこと小刻みに動く。自分達のものをのぞき、足音のようなものは聞こえない。
 どこかのキノコに音が吸われているのだろうと、玉兎は察した。
「油断せぬように。それと……早速分岐がありますわ」
 あらためて正面に明かりを照らすと、左右にわかれた洞窟の道が見えた。


「アンディ! ボブ! キャシー! きみたちを助けにきたんだ!」
 洞窟を進みながら、チャロロはあえて大きな声を出した。
 敵が潜んでいるであろう場所で声を張るのはあまり褒められた行為ではないが、今回に関しては『あえて』である。
 イズマがそれに応じる声がないことを確認し、深く頷く。これでよしという頷きだ。
 代わりにこちらへと接近してくる足音を察知した。固い物をぶつけながら移動する音は、スケルトンの走行音に非常に近い。
「くるぞ」
 イズマは黒い革手袋を外して鋼の拳を露わにすると、あえて先行させていた小さなネズミを通路の端へとよせ、接近速度をはかりながらタイミングをつかむ。
 相手は夜目がきくのか、こちらへ走りながら骨の短剣を構えていた。
「皆、どこにいる? 迎えに来たぞ、一緒に帰ろう!」
 大声で叫びながら、『フォルテッシモ・メタル』をから大きな音を出す。イズマの能力によって甲高く響く音は、音を吸収するキノコがあったとしてもそれなりに遠くまで届くだろう。
 そしてその音を聞いて派手に動いたり声をだしたりする存在は、『子供達ではない』。
 通路を曲がり、短剣を振り込んでくるスケルトン。イズマはその剣を鋼の拳で打ち払うと、チャロロがすかさず赤い鋼の拳をたたき込んだ。
 狭い場所での戦闘を考え機械盾は収納。『機煌宝剣・二式』も一度分解して短いメイスのような形に変えていた。
 なんといっても相手は骨の塊。刺す肉がないかわりに打撃に弱そうな構造ときている。刃がなくてもいい状況なのだ。
「そこだ!」
 チャロロはよろめいたスケルトンがもう一体にぶつかった瞬間を狙い、足払いの要領でメイスを振り込んだ。
 すね部分にある骨の接続を破壊されたスケルトンが転倒。
 それでも攻撃を続けようとするスケルトンたちを、チャロロは持ち前のフットワークで上手に阻んだ。
 そして、イズマによるスタンピングが頭蓋骨を粉砕する。
 静かになったところで、追撃の音がないことを確認するとイズマはゆっくりと腕を下ろした。
「なるほど……」
 玉兎が感心したように頷き、そしてスケルトンの一部をつまみあげる。
「声を発するのは、子供達に助けが来たことを知らせるため。であると同時に、子供達を探し回っているであろうスケルトンをおびき寄せるため……ですわね?」
 『そういうことだ』とイズマが頷き。『そういうことだったの!?』とチャロロが二度見した。
「この状況下で助けを呼ぶ声をあげれば、内部構造を熟知しているであろうスケルトンに発見されるのは確実。子供達は気配をできるだけ殺してわたくしたちの到着を待つでしょう」
 それに、と言って先端に光を灯した扇子をスケルトンたちがやってきた方向へと向ける。
「こちらからスケルトンがやってきたということは、その進行ルート上に子供達はいなかった、あるいは発見できていないということ」
 そして、少し進んだ先にある横道へと扇子を向けた。
「であれば、優先して探すのはこちらですわね」
「ああ。けれどスケルトンが奥まで探せていない可能性もある。一旦二手に分かれよう」
「なら、作戦通りに」
 エルスが長い髪を後ろでまとめ、先行して歩き出す。
 子供達がいる可能性が高いほうへ、エルス&玉兎のペアが向かった方が救出と発見の確率が高まる。なぜなら、光を出し続ける玉兎は相手からも見つけやすく、完全な暗視能力を持つエルスは逆に子供達を発見しやすいからだ。
 そのあたりは、頭の回転の速いエルスのこと。イズマが途中まで語ったところで察しを付けていた。
「待っててね。今いくから」
 聞こえはしないかもしれないが、エルスは己への決意としてそう呟いた。

 チームを分離して、エルスは洞窟の中を進んでいく。
 あちこちにあるキノコが時折怪しい光を放ち、光を遮るような闇の煙を発することもあったが、道自体はまっすぐにのびているせいで迷うことはない。
 仮に行き止まりに至るなら引き返せばいいだけだ。
「止まって」
 目を細めたエルスがそう言って手を翳す。
 玉兎は何事かと眉を動かしたが、エルスは道の先を指さしていた。
「キノコから闇が湧き出て光を遮ってるみたい。けど、暗視能力でなら見通せるわ」
 わざわざ闇の性質を説明しただけということはないだろう。玉兎が先を促すと、エルスは『武器を抜け』のハンドサインを出しながら言った。
「子供達……いいえ、一人だけ見える」
「なら、急いだ方がいいですわね。横道から足音がしますわ」
 足音が何を意味するか、考えるまでもない。エルスたちは走り、そして通路の先でやや広いスペースに行き当たった。
 石から作られたであろうテーブルのようなもの。周りには朽ちきった材木のようなものがおちている。天井には光をはなつキノコがあり、テーブルに深い影を作っていた。
 が、確認するのはそこまでだ。
「来るわよ!」
 エルスは指輪に軽く口づけをすると、素早く銀の鎖鎌へと変化させた。ヒュンとワンスナップで勢いを付け、そして放つ。
 部屋の入り口へと姿を見せたスケルトンへ魔力を込めた鎖鎌を叩きつけるためだ。
 それを予期したのか骨の盾で防御する姿勢をとるスケルトン――だが、衝突した次の瞬間走った呪力のペンデュラムがスケルトンの脚へと巻き付き、強制的に転倒させる。初撃はあくまで囮だったようだ。
 玉兎は予め抜いていた霊刀を振り抜き、込められた神秘の力をスケルトンめがけてたたき込む。
 凄まじいエネルギーの奔流が一発で相手の盾ごとボディを粉砕。わずかにぴくりと動きこそしたものの、そのままスケルトンは動かなくなった。
「さ、もうすぐお家に帰れるわよ」
 エルスは振り返り、テーブルの下へと視線を向けた。ひょっこりと青いリザードマンタイプの少女が姿を見せる。キャシーだろう。
「今度はもう少し安全な…もしくは一人でも大人がいると楽しく探検出来るかもしれないわよ? 子供達だけだと皆心配しちゃうから。お姉さんと約束っ!」
 エルスはウィンクをしてそういった。


 赤い眼鏡ごしにぱちくりと瞬きをするヴァイス。
 彼女は地面にかがみ込み、床に手を当ててなでるような動作をしている。
 ニルが心配そうに覗き込むと、ヴァイスが『大丈夫よ』と小さく呟いてこたえた。
「この先に、靴の痕跡がつづいてる。亜竜の集落でみた革製の靴よ」
「ヴァイスさんの能力って、そんなことまで分かるんです?」
「まさか」
 ヴァイスは肩をすくめ、そして立ち上がって手を払う。
「いろんな要素から推理をしてるだけ。これだって、間違ってるかもしれないのよ」
「それでも重要な手がかりですっ」
 ニルは期待を込めたまなざしを送るが、ヴァイスはそれにどう応えるべきか迷った。
「『二手に分かれてしまった』……かな?」
 花丸が回答を先周りするように言うと、ヴァイスが肩をすくめる。肯定の意味だ。
「それは、どうしてだい? 一緒に逃げそうなものだけど」
 マルクが当然の疑問を口にすると、花丸は薄暗い洞窟の前後へと視線を巡らせた。
「二人の走る速度が一緒なら、そうだったかも。けど必死に逃げる人はその速度にばらつきが出るの。先にいった人がどっちに向かったかは考えるかもしれないけど、分からないならなんとなくで選ぶよね」
「なるほど。そうやってはぐれるのか……」
 マルクははそこまで言ってから、ヴァイスとニルに顔を向ける。
 ここからは更に二手に分かれようというまでもなく、ニルが向かって右側の通路へと入っていった。

「アンディ! ボブ! キャシー! 助けに来たよ!」
 あえて大声を出して進むマルク。
 しかしその足取りはゆっくりとしたものではない。全力といわないまでも疾走中だ。
 そして、走りながらキューブ状の魔術エネルギー体を形成。一部のモードを視線誘導に切り替えると拡散して発射した。
 なぜなら、前方からスケルトンたちの走ってくる明確な音が聞こえたからだ。一匹に命中――した途端に指輪をキラリと光らせ、視線誘導によって地面に埋め込んでいたエネルギー体を吹き上げるように発射した。
 前方からの攻撃を警戒して盾を構えていたスケルトンの腕や腰が破壊され、がくりと傾く。
 そうなれば殴り放題だ。花丸は素早く前に出るとスケルトンを殴りつけ、その骨のボディを粉砕した。
 砕け散るスケルトン。そしてその奥に見える狭い部屋らしくエリアへと呼びかける。
「スケルトンは倒したよ。出てきて!」
「ほ、本当か!?」
 声が帰ってくる。少年のものだ。ひょっこりと出した顔の特徴からしてボブだろう。
「勿論。なぜなら?」
 ビッと自分を親指でさす花丸。
「花丸ちゃんが来た!」

 花丸たちがボブを確保したちょうどその頃、ヴァイスとニルはかなり広い空間へと出ていた。
 キノコがいくつも生えており、なかにはバラのつぼみが開いたようないい香りを放つものもある。
 そこがどういう場所なのかはわからないが、部屋の隅からスケルトンがゆっくりと起き上がる。
「死んでも動くのはどういう気持ちなのかしら。できれば争いたくないのだけれど……聞いてはくれなさそうね」
 ヴァイスははあとため息をつくと自然界からエネルギーを引き出し、それらを解き放った。
 骨の斧を握って突撃してくるスケルトンへと放たれたエネルギーは暴風となり、一匹を破壊――した途端部屋の別の場所からスケルトンが現れヴァイスへと襲いかかった。
 両手に斧を持ったそれを、ニルは開いた両手で阻んだ。否、その両手から出現したクレヨンで描いたような可愛らしい魔方陣で。あるいは、魔方陣から放たれる極寒の吹雪によって。
 斧による攻撃が届くより早く吹雪を喰らったスケルトンは転倒し、起き上がろう――とした所へニルは新たな魔方陣を描き出し、クレヨンで描いたような剣を握り込んだ。
「えいっ!」
 見た目のかわいらしさとは裏腹に、スケルトンのボディを真っ二つに砕く威力。スケルトンは残骸をまき散らし、そして……そこまでだった。
 ニルは鞄から肉まんを一個取りだし、そして手招きをする。
「もう大丈夫ですよ。ずっと洞窟にいたなら、おなかすいてますよね」
 物陰。というか金属製の大きな箱から、おそるおそるアンディが顔をみせた。
「もう、あまり無茶しちゃだめよ?」
 ヴァイスはそんなアンディに手を差し伸べ、のびた手がそれを掴んだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 こうして、三人の子供達は無事救出・保護されました。

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