シナリオ詳細
「メガネ……メガネはどこだ……?」「さぁこっちですわよ! さぁさぁさぁ!」
オープニング
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その日、ゲルツ・ゲブラーは眼鏡を失くしていた。
おかしい――確かに此処に在った筈なのに――
寝ぼけ眼の目をこすりながら手探りで探す。しかし無い。
「メガネ……メガネはどこだ……」
机の隅か? 床に落ちたか? それともどこか別の場所に置いてしまっていたか?
謎が謎を呼ぶ。しかしその時、ゲルツへと投げかけられる――声が一つ。
「さぁ――ゲルツ、こちらですのよ。こちらにメガネはありますわ」
それは女性の声だった。己も聞いたことがある声色……これは、まさか――?
「まさか、ヴァレーリヤか……? こんな所になぜ……」
「そんな事はどうでもよいではないですか。それよりも此方へ手を、早く。
さぁ……私を信じてこちらに手を伸ばして……」
優しく。まるで本物の司祭の様な穏やかな声色で話しかけるはヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ (p3p001837)――だろうか。姿はぼやけてよく見えないが、確かに知った声ではある。
なんで此処にいるんだとか色々ツッコミどころはあるのだが、しかし。
とにもかくにもメガネを手に入れてからだと手伸ばせ――ば。
「――待て騙されるな! それはヴァレーリヤの罠だ!!
本物の眼鏡はこっちだ!
いいかよく考えろ、そいつは……ヴァレーリヤだぞ!!」
別の方角からヴァレーリヤとは異なる声も発せられた――!
一体どういうことなのか! あ、でもヴァレーリヤを信用しちゃいけないのは、それはそうね。
「ゲルツこっちだ! こっちに来るんだ! ヴァレーリヤなんて信用したらダメだ!
こっちに本物メガネがあるぞ――お前なら感じられるはずだ、自分のメガネの在処ぐらい!」
「お待ちなさい、これは悪魔の声です! 誘惑に惑わされてはなりません――早く此方へ!」
「なんだお前ら、マジで……マジで何してるんだ本当に」
あちらこちらから投げかけられる無数の声――一体どれが真実でどれが虚言か――
ていうか何が起こっているのかって?
よし分かった説明しよう! 実は今――ゲルツ誘導イベントゲームが開かれているのである!! 主催者はサマー・レッドーネなる人物であり『なんか見たかったの!!』とかいう供述を繰り返しております。
そして――勝者には賞金を総取りできるというルールもあればヴァレーリヤが乗っからない訳がない。嬉々とした眼で彼女はゲルツを誘導せんとするのだ! ええ、そう! 明日の酒代の為に――!!
「こら! さっきから嘘八百ばかり……地獄に落ちますわよ!
ああそんなバナナまで仕掛けて何してるんですの!
そんな悪魔的所業、絶対許せませんわどっせーい!!」
「ぐあああああやりやがったなこの鬼! 悪魔! ヴァレーリヤ!!」
そしてゲルツの周囲では障害物や罠を設置してゲルツを行かせんとする勢力、それらを排してなんとしてでもゲルツをメガネに到達させんとする勢力、なんか面白いから囃し立てるの三勢力に分かれつつあった――!
あ、一応これ、直接ゲルツに触れたり、メガネを直に渡すのだけはルール違反である! 参加者は皆ゲルツを誘導だけしてあげてね!! 絶対だよ!! マジでこのゲーム何の為に開かれてるのか分かんなくなりそうだけど、考えるな感じろッ!!
次回。『頑張ってゲルツ! 貴方が負けたら、私の今日の酒代はどうなってしまいますの!? あと一歩でなんとかなるのですから、絶対に頑張るんですのよ! あ、昨日の酒代はもうちょっと待ってくださいまし!!』
――こうご期待。
- 「メガネ……メガネはどこだ……?」「さぁこっちですわよ! さぁさぁさぁ!」完了
- GM名茶零四
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2022年01月31日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費150RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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「うっうっ可哀想なゲルツ。一体どうしてこんな事に……一体誰がこんな……まあでも勝負と明日の酒代の為にとあらば致し方ありませんわね! ちょっとガチ目に勝ちに行きますわよ――!」
諸悪の根源。『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は涙ながらに前半を語り後半部分は隠し持っていた目薬を放り投げながら語るものである――! だれかー! この人を止めて――!
「……そんな、スイカ割の感覚でこんな誘導イベントなんて始まるなんてどうして……ヴァレーリヤさんも当然の如く参加していますし……マリアさん、せめて手綱はしっかり握っ」
「あぁ……誘導するヴァリューシャも可愛いなぁ……ねぇねぇすずな君、どうしてヴァリューシャは今日も天使なんだい? あ、ヴァリューシャだからか。流石だなぁ……」
あ、だめですねこれ――『竜断ち(偽)』すずな(p3p005307)は無の視線を相変わらずの様子である『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)へと向けるものである――分かってるんですよ。どうせすぐ『うんうん、そうだねヴァリューシャ!』でなんでも許すんです!
「しかし――このようなイベントを企画するサマー・レッド・ーネとはいったい何者なのでしょうか? サマー・レッド・ーネ……夏あか……えっ区切りが違う? それは失礼」
「『みたかったの!』の一言でこんな目に遭わされるゲルツ氏の尊厳とは一体……
ま、まぁ今さら止められる様な動きもないですし、起きたことは仕方ないか……」
なにはともあれこれ自体がイベントならと――『永久の新婚されど母』マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ(p3p009452)や『蛇に睨まれた男』蛇蛇 双弥(p3p008441)もまたノーメガネゲルツを見据えるものである。これも依頼だ、許せよゲルツ……
「メガネ……メガネ……ねむい……」
と。当のゲルツはあっちこっちをふらふら。
メガネを追い求めるその姿はまるで迷子の如く。
「……なるほどメガネが無いと困りますよね。
わたくしも普段見えるものが見えない気持ちは良く分かります。
――しかしながらこれも依頼であれば」
やむを得ません、と。瞼を閉じた状態のままにマグタレーナは往くものだ。
だが。単純に声を張り上げても仕方ない――故に。
「ゲルツ! こっちでございますわ、こっち! ほら!! ゲルツの好きなピーナッツを用意しましたのよ!! 柿ピーの中から厳選したピーナッツばかりですのよ!! ほらどうしましたの、ゲルーツ!! 右ですわよ右――!! どうして信じないですの!!」
「左。左の方へ数歩。そうですそうそう…………おや。ヴァレーリヤさんの声の反対を述べるという――安直かと思ったのですが、存外に効いていますね。というか、意識混濁状態でも信用されてない節が……?」
「ヴ、ヴァレーリヤ……? どこだ、逮捕する……」
マグタレーナは(目が\マークになっている)ヴァレーリヤの動きに沿いながら対抗の一手を紡ぐものだ。ヴァレーリヤはゲルツの好物な気がしないでもないピーナッツを――メガネルート上に点々と撒きながら声でも誘導している――けれどあれ?
なんか効いてないぞどうして!!?
こんな清廉潔白な司祭を信じないなんて、バチが当たりますわよゲルツ!!
「はっ!? ピーナッツを道しるべにするとは……流石はヴァリューシャ……! やはり天才だったか! これならピーナッツに眼がない(ヴァリューシャが言ってるから間違いない!)ゲルツ君はイチコロだよ――!
ゲルツ君! さぁ! ヴァリューシャを信じて突き進むんだ!
大丈夫! 怖くないよ! あ、あともうちょっとこっち向いてくれるかい? そうそう!」
「おっとこんなところに丁度良い酒のツマミが。いやーやっぱり酒にはピーナッツでありますねー」
「あー!! エッダなにしてますの――!!」
ともあれ。そんなヴァレーリヤの様子を『ふふ、さすヴァリュ!』とマリアはカメラ片手にハイテンションだ――が。
自然とメガネのある場所に到達するという完璧かつ100点のピーナッツ誘導作戦……は『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)によって妨害されておりますわー! こらー!!
「うーん成程! つまりゲルツが拾う前にメガネを粉砕しちゃえばイイんだよね? え?ダメ? メガネもゲルツの一部? つまりゲルツの本体はメガネっていう事……? ソウなの……? まぁイイヤ! とにかくゲルツこっちに来るんだ!」
「ゲルツさんこちらですよ――メガネはこちらに在ります。さぁこちらを信じて……」
だがそれで終わりではない。正規ルートに進ませんとする者達の妨害に回るのは――『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)もである! 駄目ですよイグナートさんゲルツ(メガネ)を壊したりしちゃ!!
しかしそうはいくまいと『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)は正規ルートへの誘導を試みるものだ――ヴァレーリヤの作戦がエッダに妨害され『ヴァリューシャ~!』とマリアが鳴いている今、己が動く他あるまい!
数多の策謀ひしめき、数多の思惑がゲルツを中心に鳴動する――ゲルツイベント。
はたして勝利の女神はどちらに微笑む事か……!
●
さて。一応まず纏めておこう!
ゲルツをメガネに誘導するゲルツメガネ部隊は、ヴァレーリヤ、マリア、すずな、オリーブ。一方でゲルツのメガネ取得を阻止する妨害部隊はイグナート、エッダ、双弥、マグタレーナである――そしてその中のイグナートに動きが見えて。
「オレはね。知ってるよ、ゲルツの好きなコト……そう。ゲルツはスキーが好きでたまらないんだよ。それなのにセンスが絶望的に無いんだ……イヤァあのスキー依頼の時は面白かったなぁ。マァつまり!」
つまり――ゲルツの進行方向上にスキー板を置いておく作戦である! それは例えば猫が炬燵に眼が無いように。フリスビーを投げれば犬が追いかけていくように。そう、ゲルツにとっての本能が疼くはずだ――ッ!
えっ眼が見えてない?
あれだけスキーが好きなんだから何とか気付いてくれるって! タブン!
「ゲルツ! なぁ、オレたちトモダチだろう? ナラ気付いてくれる筈だ――
オレ達が一緒に滑った時のスキー板だよ! 覚えてるダロ!!?」
「うう……スキー板だと……? そうだ今はスキーの季節……」
「ああまずい! ゲルツさんがイグナートさんに誘惑されています! ダメです! こっち、こっちですよゲルツさん! そこら辺にいるお金に眼が眩んだ汚い奴らの言う事を聞いてはいけません! そこの酒クズ共も! 猫耳にゃんにゃんはえてたやつも! みんなみんな信用しちゃいけません! 私だけの言葉が真実ですよ――!」
「はーん!? すずな君? なんかどさくさ紛れに凄い事言ってないかい???
ていうかアレは虎耳だよ! 虎耳だったんだ! 信じてよぉ!!
あ、ゲルツ君は私達を信じるんだ! 友情パワーだ――!!」
――しかし! それに対抗するのはすずな(とマリア)の一声である!!
ええい周りの血気盛んなレベルの熱意に怖気づいている場合ではないのだ。これも仕事なら真面目にこなすまで……いや私は普通に正しく誘導する側で、特に賞金とかはどうでもいいんですけども。でもまぁ貰えるならそれはそれで……
少なくともヴァレーリヤさんとかに全額渡ったら明日には消えてしまいますし……それよりも小夜さんとフィーネさんにおいしいものでも買って帰れた方がとっても有意義だと思いますしぃ?
――なんだかちょっとやる気が出てきたかもしれません。
後そこでにゃんにゃんが何か言ってますが無視してイグナートさんを成敗しますよ!
「ウワァ! 刀、刀は危ない!!」
「大丈夫です。なぁに、これは峰打ちだから平気でござるよ! タブン」
口調も変わってすずなは辻斬り(峰打ち)へと転職してる!
うぉぉなんてわんわんだ! イグナートを追っ払う様にすずなが追いかけて――その時。
続けざまに動きを見せたのはオリーブだ。
まずはと。オリーブは声を掛けつつもこれだけでは効果が薄いと……剣をも持ち出す。え? いや別にこれで相手をブッ叩いたりするわけじゃないですよ? 辻斬りすずなさんじゃないんですから……ただちょっと、こうしてガリガリと音を出して……
「そう――これは機械の音を醸し出しているのです。
或いは黒板の引っ掻き音とも言えるかもしれません。
こちらに近付いては危険と示すのですッ――」
「むぅ……これはなんという音……確かにこれは耳に響きますね……!」
さすればその音の効力はマグタレーナも理解する所であった。
確かに効果がある。ゲルツも自然と、危なげな場所には足を運ばぬ様に方向転換し……と?
「うおー! そうは問屋が卸さないであります!
ゲルツのメガネ賞金で飲みまくるのは自分でありますよ!!」
「うわーエッダ君、何をするんだい! ヴァリューシャのピーナッツを返せー!」
場にマリアを吹っ飛ばしながら突っ込んできたのは――エッダである!!
ヴァレーリヤが滅茶苦茶に撒いたピーナッツを頬袋が出来る程に詰め込んだエッダはそのままの勢いにゲルツの前へと躍り出る! えっ? 触れなきゃいいんでありましょう?
――故にここで役立つのが彼女の宿す錬鉄の搆えだ。
これは動きを先読みし先に手足を出すことによって触れずに制する空間制圧術……っ!?
「はっ、馬鹿な。見えてないから効かないだと……!!」
だが誤算があった。そうゲルツは――メガネ捜索モードで効いてないのである!
「全く! 貴方達、すぐそうやってゲルツをおもちゃにして!
ゲルツのことを、一体何だと思っていますの! 一人の人間ですのよ!?
そんな風に扱って――恥ずかしいとは思わないんですの!!?」
「全くだよ! 君達はもうちょっと反省するべきだね!!
ああ、怒ってるヴァリューシャも素敵だなぁ……」
「全力でこの二人にだけは言われたくない」
で、あれば。聖女ヴァリューシャが皆を叱り飛ばすんだよ!(byマリア)
双弥君が凄い怪訝な表情で此方を見てくるけれど些細な事だね、ふふん!(byマリア)
「と言う訳で見なさい! 私が渾身込めてなんとか間に合わせたゲルツ玩具箱……げふん! そう、カボチャの馬車は用意して差し上げましたわ。さあ、お行きなさいシンデレラ! 王子様(メガネ)のところへ!」
「これがヴァリューシャの切り札! ツルツルスロープ!!
やはり天才だったようだね! さぁゲルツ君乗るんだ!
希望の明日へレディゴー!」
「ソレはもうカーリングって感じにナルんじゃないの? 全然大丈夫ジャなさそうだけど?」
「というかもう率直に思うのですが、誘導方法が愉快過ぎませんか?
あの、そろそろフォローも限度が来そうなんですが」
完全にゲルツで遊ぶ気満々のヴァレーリヤ(+天才的アイディアに目を輝かせるマリア)があらば、イグナートやオリーブも流石にゲルツの身が心配になるものである――あっ、滑り始めたぞ!
「くっ。しかしこの程度で諦める訳が――ぬぁ!!?」
「おおっと、足が滑りました。これは失敬」
と、その時。諦めぬエッダがまだ動こうとするが――オリーブの妨害だ!
イグナートの設置していたスキー板を利用してエッダを引っかける。いえこれは放置しておくと危ないと思ってどけようとしただけ。ええ。偶々妨害側の人に当たってしまっただけです――
「うう、いろんな声が聞こえる……俺は一体どっちに進めば……」
「ゲルツ――お前の信じる道を進めばいいさ。それこそが真実だ」
混迷する場外戦況。その中でめっちゃ滑りながら迷うゲルツへと声を掛けたのは双弥だ。
優しく声を掛ける彼だが……勿論そんな訳はない。
「よーしよしよし。精霊達よ頼むぞ~……
そうだ、ゲルツをな、少しな、やっちまうだけでいいから……」
周囲の悪戯好きそうな精霊たちを味方に付け、ゲルツを罠に嵌めんとする。
このままでは埒が明かぬからと。例えばちょっと風を吹かせたりするだけでもいいので……っておいおい。
「そーれヴィーシャ、おいしいおいしい豊穣のおさけでありますよー。
これが飲みたければいいこだからこっちに寝返るでありますよ……」
「エッダ、馬鹿にしないでくださいまし! そんなモノで私が寝返ると思っているのですか――最低三本はあるんでしょうね!?」
勿論でありますよ。わぁいエッダは流石私の事を分かっておりますわ!
ヴァレーリヤ、寝返る――あ、だめだこれマジで負けるぞやばいやばい! それに!
「へへ。レッドーネ様への貢ぎ物も沢山撮れたであります……あーんな写真やこーんな写真まで……例え負けてもスポンサー様との繋ぎが取れればなんとでも巻き返せるんでありますよ……へへ」
「ふふ。これだけあればきっと夏あ……サマー・レッドーネ氏に買い取ってもらえるね!
やったよ酒代だぁ!!」
「うわ汚い。流石鉄帝脳、汚いぞ手段が!」
「何を言うでありますか。本気はここからであります――
そう。もうこうなっちまったらメガネ直接破壊工作に出るんでありますよ――!!」
うわあああエッダやマリアが強硬手段に出てきたあああ!!
このままじゃもう滅茶苦茶である――そんな事になるぐらいなら。
と思って用意しましたのはこちら。アシカールパンツァ~!
それはパンツァーファウスト型クラッカー。巨大な音と光を立てるクラッカー。
ええつまりそういう事ですね――3、2、1ファイ……
「おや。この激しい音と悲鳴は――それから誰かが転んだような音と――破砕音?」
さすればマグタレーナが衝撃を捉えた。
クラッカーの音。それから……メガネが余波で壊れちゃった音。
おやっ?
「これは――一言でいうと宜しくないのでは――」
マグタレーナ、直感する。
どう動こうが最終的にゲルツにメガネが戻ってくるならOKだと思うが。
そもそも壊れたりなんかしたら――
「――これはどういう事態だ?」
直後。冷たい、刃の様な声が場に響き渡る。
それは予備のメガネ置き場に偶々辿り着いてメガネinした……
「あ……あらー、シンデレラ。舞踏会はもう良いんですの?
折角の機会なんですもの。もっと楽しんで行っても良いのではなくて?
まだまだ十二時には程遠い……」
「イタタタダダダ何か俺に乗って……げっ! ゲルツ!!」
ゲルツであった。衝撃で床に転がった双弥を足で抑えて――彼は紡ぐ。
『お前達の遺言はそれだけでいいのか――?』と。
……ヴァレーリヤ曰く『あれ程笑顔のゲルツは初めて見ましたわ』との事だったとか。
●
一行で説明します――とんでもない事になっております。
キレたゲルツ・ゲブラーは止められません!
しかしどさくさ紛れに逃げんとするオリーブさんは閃きました――
――マヤコフスカヤさんがやりました!!!
「だろうな」
「酷い! オリーブの言う事は問答無用で信じるんですの!!?
そんな子に育てた覚えはありませんわ――! オリーブの家の子になってしまいなさい! それに百万歩譲って私の責任だとしても! メガネを隠したら一儲けできるって、双弥が! 私は騙されただけですの、何も悪くございませんわっ!」
「違う! ヴァレーリヤが悪い! 俺は、俺は悪くねぇ!」
罪の擦り付け合いが始まった。なんて醜い内ゲバなんだ……
「やれやれ。この騒ぎでははたして賞金が出るか謎ですね……
もし出ても今日の酒代の前に昨日の酒代の清算ですか」
まぁ。いずれにせよすっきりしてこそ、明日のお酒も美味しいでしょうかね――?
マグダレーナは語る。阿鼻叫喚の渦の中で、半ば諦め口調の吐息交じりに零せば。
せめて身だけでも綺麗にしようかと、シャボンスプレーを謝罪代わりに……
「全部悪いのはそこの酒クズ司祭! ヴァレーリヤ・ダニーロヴナ・マヤコフスカヤとかいうやつです! ついでに保護者のマリア・にゃんにゃん・レイシスも! この人なんて少し前猫耳が付いてたんですよ――怪しくないですか!!」
「そ、それは何か関係あるのかい!!? あと虎だからね!
それよりゲルツ君……許しておくれよ……!
すずな君は連れて行っていいから! 私とヴァリューシャだけは見逃してくれ!」
何自分だけ逃げようとしてるんですかにゃんこ――!
すずなの慟哭。マリアの抵抗。しかし問答無用である――全員。全員だ。全員裁く。
「ハハハ! ショウジキ、ちょっと悪かったと思ってる! ちょっとだけね!」
「いい度胸だ――そこで待っていろ、後でじっくりと叱り飛ばしてやる」
そしてイグナートもゲルツに捕まり。双弥達が折檻を受けている横で正座中。
後ろ手で縛られて、石を抱いて『ハンセイ』中だ――と。
「待て。裏口から逃げようとしているエッダ、お前にも話がある」
その時。ゲルツの目は見逃さなかった。
エッダ・フロールリジよ。どこへ行こうというのか?
「違うんであります。自分は実はそろそろ、そろばん塾と空手教室の時間なので……
ええと、そうつまり…………話せば分かるでありま」
分からなかった。
暴れ果てるゲルツ。
最後は周囲一帯が焼け野原になったとかならなかったとか……
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
依頼お疲れさまでした!!
え、賞金が出たかって? 今回の(ゲルツの大暴れも含めて)その修繕に当てられたかもしれませんね……或いはそれでも足りなくてヴァレーリヤさんのツケが増えたかな……?
MVPは離反工作(?)とかサマ・レッドーネへの写真(?)を沢山撮った貴方へ……
ともあれありがとうございました!!
GMコメント
また!! またヴァレーリヤさんが!! 以下詳細です!!
●依頼達成条件
ゲルツメガネイベントを完遂せよ!!
●シチュエーション
突如、ゲルツの眼鏡は何者かにより盗まれました!!
なんでもサマー・レッドーネという謎の人物が関わってるそうです。もしかしたら直接の下手人はヴァレーリヤさんって人かもしれませんが……まぁ犯人が誰かは捨て置きましょう――捨て置くんだよ!!
ともあれ重要なのは、皆さんがゲルツメガネ誘導イベントのプレイヤーという事なのです!
●ゲルツ誘導イベント???
スイカ割りとかの時に声だけで誘導するアレがありますよね。アレです。
皆さんには『ゲルツを正しい方向に誘導してメガネを取らせる』側と『ゲルツを間違った方向に誘導して惑わせる』側に分かれて頂きます――ッ! そして勝者には賞金が支払われるのです!! やったね!!
あ、でも一応ルールはあります!!
まずゲルツに直接触れたり、眼鏡を直接手渡してはなりません。
ゲルツに出来る感傷は言葉だけです。
――しかし逆に言えばゲルツに触れなければ何をしても構いません。
例えば地雷を設置したりバナナを設置したり、(コミカルの範囲で)相手プレイヤーにタックルをかましたりするのはOKです! とにかく相手側の狙いを妨げつつ、己がチームの狙いを達成してください!!
それとゲルツは突然の事態に混乱状態に陥っている様です。
あんまり深く事態を把握できておらず『メガネ……メガネ……』と彷徨い歩きます。
●ゲルツ・ゲブラー
ラド・バウの闘士でもある人物です。起きたらなんか変なイベントに巻き込まれてました。
先述の通り寝起きの為か、不思議と頭がずーとぼんやりしているようです。暫く皆さんの誘導などに疑いもせずに乗っかってしまう事でしょう。
――まぁ事の真相が分かったら(つまりシナリオ終盤ぐらいで)多分ブチギレるのでお気を付けください。
ゲルツは結構つよいぞ!!
●サマー・レッドーネ
この企画の主催者であり謎の人物です。サマー・レッドーネ……何者なんだ……
●情報精度
このシナリオの情報精度はEです。
何が起こるか分かったもんじゃないです!! いえーい!!
明日の酒代は果たしてどこへと出るのか……ファイッ!!(カーンッ!)
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