シナリオ詳細
紡がれる縁
オープニング
●
覇竜領域デザストル――
竜種が住まうとされるかの地は只人寄り付かぬ未踏の地と言えた。
ローレットの長であるレオンがかつての現役時代に訪れた際も死ぬような目にあったという……まぁその折は元々酒に酔っていたという話もあるのだが、ともかく。そういった手練れの者ですら迂闊に入り込めば何が起こるか分からぬのがデザストルだ。
しかし――そのデザストルの地に集落が発見される。
R.O.Oでの物語を経て観測されていた情報から遂にイレギュラーズ達が辿り着いたのだ。
それが亜竜集落フリアノン。
デザストルに住処を持つ『亜竜種』達の集落である……
●
「よぉ――アンタらが姫様の言ってた外の連中か!」
そして。亜竜集落フリアノンにて――一人の亜竜種がイレギュラーズ達を待っていた。
彼の言う『姫様』というのは珱・琉珂の事である。フリアノンの里長を務める彼女の事をそう呼ぶ者もいるようだ……尤も、トラブルメイカーでもある為に琉珂以外に里長代行が何人か存在する様でもあるが。
ともあれその琉珂の方針もあってか、発見された亜竜種の里では外界との交流が始まってもいた。外より辿り着く者達がいたのも何かの縁だと――故に、フリアノンからは訪れたイレギュラーズに対して依頼が舞い込む事もあり……
「まぁ楽にしてくれよ。知ってるか知らねぇか分からねぇから言っておくが……俺たちはこのフリアノンに住んじゃあいるが、ちっとばかし外に出ようとすりゃあ俺たちにとっても危険な場所が多いのが――デザストルだ」
「……やっぱり亜竜種にとっても危険なんだな、ここは」
そしてフリアノンでの依頼人たる亜竜種は語る。
ここ亜竜集落フリアノンはデザストルに存在する数少ない(他と比べて比較的に、だが)安全地帯にしか過ぎないのだと――山脈地帯の方へと向かえば亜竜や強力な魔物達が跋扈していよう。奥へと進めば亜竜種ですら危険な場所もある。
「んでもって、な。ここから西に少し進んだ場所にワイバーン・デミグラントスっていう亜竜の巣がある。こいつらはワイバーンの中でも攻撃性が高い連中でな……お前さんらにはこいつらの巣に赴いて『やってもらいたい事』があるんだよ」
「――ワイバーンっていうのは、竜に姿が似たヤツ、だよな?」
「ああ。あくまで姿だけだがな」
デザストルには竜種、亜竜、亜竜種という三つの違う種族がいる。
竜種は正真正銘のドラゴン。混沌世界屈指の最強種族。
亜竜は竜種に似た姿を持つ、しかし存在からして竜とは異なる『魔物』
亜竜種は竜の因子を身に宿す『人間』――と言った所だろうか。
とにかく、名前が似てはいるが亜竜と亜竜種もまた異なる存在。で、そんな亜竜の巣でやってもらいたい事とは?
「ああ――デミグラントスの卵を採ってきてほしいんだよ」
「……卵?」
「デミグラントスは狂暴かつ繁殖性もそれなりにあってな……ほっとくと数が増えちまう。そしたら亜竜種が襲われねぇとも限らねぇんだよ――だからそれを防ぐためにもな、卵の段階からなんとかしちまうのが一番なんだ」
……成程。確かに成長した個体を相手にするよりも卵の段階から対処するのは合理的だ。
しかし卵を狙ってこい、か。なんだか随分前にも似たような依頼があった事がある様な――いやまぁそれは良いとして、しかし。
「卵を『壊す』でもいいんじゃあないか、それは?」
「確かに本来なら『壊す』でもいいんだが――それじゃあ確認出来ねぇからな」
「なんの?」
「お前さんらがこの領域で本当に生きていけるか、さ」
覇竜領域は混沌世界でも屈指の過酷地帯である。
この地ではたしてイレギュラーズ達が真に生きていけるのか。己ら亜竜種と友誼が結ばれるに相応しい存在か――それらの力があるか見極める為にもこの依頼が出されているのであろう。
亜竜のいる地へ行けるか? 行って目的を果たし、生還しうる力があるか?
「――試されている、という訳か」
良いだろう。ならばとくとご覧あれ。
数多の戦いを潜り抜けてきた――自分たちの力を。
- 紡がれる縁完了
- GM名茶零四
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年01月31日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
「ええと、なんだっけ? デミグラワイバーン……なんか美味そうな名前してるな。
やっぱ味とかも濃いんだろうかな。ちっと楽しみになってきたぜ……」
「ははっ。ワイバーンの卵は、覇竜領域でも名物の扱いらしいね。
命がけのグルメが信頼関係の証明とは……中々アグレッシブだけれども」
『竜剣』シラス(p3p004421)は思わず濃厚な味わいを想像せざるをえなかった――正式名称はデミグラントスなのだが略すと確かにデミグラワイバーンである。じゅるり。
まぁ味はともかくマルク・シリング(p3p001309)も含めたイレギュラーズ達は件の依頼場所へと向かっていた。が、その道中。卵云々以前に覇竜の光景に眼を輝かせている人物もどうやらいる様であり。
「おぉ~! ここがデザストルか!
うーむ、初めて来たけどいい場所じゃないの。
この荒野に吹きすさぶ風、俺に似合うと思わねえか?」
「はいはい。テンション上げるのはいいけど、迷子にはならないようにしましょうねぇ。悪い子から連中の今晩のディナーになっちゃうんですから。あ、これ覇竜の間では子供を寝かしつける時に語られる覇竜ジョークらしいわよ」
マジで!!? 『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)は『雪風』ゼファー(p3p007625)の言に驚愕せしめるものである――ただ千尋の気持ちも分からないではない。
人類未踏。他に誰も……と言うと言い過ぎかもしれないが、しかし多くの人々が知らぬ光景を己は今見る事が出来ているのだ。過酷なれど絶景たる覇竜領域の山脈は実に素晴らしい。
が、ゼファーの言う様にやはり油断は出来ないものだ。迂闊に油断すればワイバーンの腹の中に納まってしまうというのも……冗談話では済まぬかもしれぬ。
故に慎重に彼らは歩を進めるものだ。
ゼファーは道中の様子を鑑み、万一の際の逃走ルートを既にシミュレート。
例えば険しい道の中でワイバーンとの戦闘になってしまえば不利は否めないからだ――こちらに有利な地形がないか、せめて対等に戦える場所は? もののついでに岩に目印を刻みて迷わぬ様にもしておこうか。
千尋もまた後々、いざ重要な場面で転んだりしないよう厄介な障害物がないか確認していくものだ。
そして――シラスやマルクは布を被る。
周囲の風景と似たような色合いの布を、だ。ワイバーンが空を飛翔しているのであれば、これが保護色となって多少は奴らの目から逃れる効果もあるやもしれぬと。ただ、それらに加えて念のためマルクはファミリアーの鳥を召喚して低空を飛行させている。
「あんまり高く飛ばすと、それこそワイバーンに見つかりそうだしね――」
「しかし卵運び……という名前の割には、随分と命に関わってくるレベルの危険性が付いている様な! 価値がはたして合っているのでしょうか!?」
「くっふふ。危険は十分、しかし亜竜種の信頼をも得ることが出来るとすれば報酬も十分と言えるでしょう――さぁさぁ楽しい楽しい鬼ごっこと参りんしょうか」
同様に。いい感じの布がないかと『航空猟兵』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)も探し、土色の布を被りてゆく――なんとも亜竜の巣に往くのは不安もあるのだが、しかし『Enigma』エマ・ウィートラント(p3p005065)の言う様に一応報酬も十分と言える面も存在していた。
なにせこれは今まで接触のなかった亜竜種との関わりを得ることが出来るのだから、とその時。
「おお。ここが件の巣――の、入り口か、な?
はっは~~! なかなか雰囲気あるじゃな〜い?」
「うん――ならここからは、班を分けて……だね」
少し大きめの、洞窟の様な入り口を見つけた『ハイテンションガール』郷田 京(p3p009529)は感じる覇竜領域の空気に高揚感を得るものであり――しかしここからが本番だと『赤い頭巾の断罪狼』Я・E・D(p3p009532)は周囲を窺うものだ。
立てる聞き耳。ワイバーンの動く音は聞こえない……が。
「……寝息が聞こえるね。うん、いるかも」
「おいおいマジかよ――ま、起きてねぇだけマシと思うしかねぇわな」
存在自体は『いる』事をЯ・E・Dは感じていた。
さすれば声を抑えながら千尋も巣を観察。
……いた。ワイバーンの尾だろうか、が目に映って。
「さて、っと……じゃあ計画通りに行こうか。うん――必ず一つは持って帰ろうね」
一度だけ呼吸を整える様に深呼吸を行えば。
マルクが言を述べ、それを皮切りにイレギュラーズ達は――往く。
さぁ卵運びの時間だと。
●
先にЯ・E・Dが言ったように、イレギュラーズ達は二班に分かれる計画を練った。
マルク、シラス、京、ブランシュで一つの班。
もう一つがエマ、千尋、ゼファー、Я・E・Dの集いだ。
実際に別れるのは卵を入手して以降。どこまで気付かれない様に出来るか、そして素早くこの場から離脱できるか……二つとも無事に入手することが出来れば万々歳ではあるが。
「あれがデミグラントスの卵――か。結構大きめだね。ただ、幻影で再現できないサイズじゃあない」
であればと。卵に接近するマルクがまずは卵自体を観察するものだ。
それは偽装……つまりは幻影の術を用いてワイバーンが卵の消失に気付く時間を長引かせる為である。無論、幻影の効果時間は一分であるが故にその時間にも限度はあろう。
だが。発覚を最大一分延長させる事の出来る意味は大きい。
故に少しでも精巧に作るべく観察を続けて……
「おっとその前に……はい、保護結界だよ。よく考えたらこれで卵を割らないようにできたよね」
「そうでごぜーますね。ま、とはいえ万が一があるので気を付けるべきではありましょうが」
そしてその中において、Я・E・Dは卵を保護結界で包み込む。
こうしていれば不慮の事故を防ぐことは出来るものだ……とはいえエマの言う様にうっかり戦闘の流れ弾などの余波で壊れないとも限らないのは注意するべきか。まぁ、それでも只普通に運ぶよりも安心感は段違い。
そして準備が整えば接近する。
近くで蜷局を巻いて寝るワイバーンの親を起こさぬ様に。
ゼファーと千尋。それに京が卵に手を伸ばして――
「オッケィ! さぁここからはスピード勝負だぜ――ゼファーちゃん、先導頼む!」
「よっしゃ。モノは抑えたからあとはずらかるのみ! 私についてらっしゃい!」
「さぁってと。後は運びきれるかどうか、かねぇ……! なんとしても持ち帰ってやるんだから……!」
さすれば往く。
千尋は卵を毛布に包み、運び屋としての矜持を抱きながら跳躍するものだ。そしてその道筋を先導するのは此処までの道のりを記憶し、観察し続けていたゼファーである――京もまた、長い紐にて卵を抱えて固定すれば後は脱兎の如く。
卓越した疾走にて巣を離脱せん――ッ!
一秒でも二秒でも早く距離を稼ぐのだ――さすれば。
『――ガァァアアアッ!!』
後方より金切り声が聞こえた――
卵の消失に気付いたワイバーンが怒り狂っているのか。その雄叫びは天に轟くが如く。
翼を広げて飛翔する音が後方から響くものだ。
「おっと、気付いたみたいだね……次の策だ。もう一つ幻影を出す――僕達はとにかく前へ!」
ならばと。マルクは続けざまにもう一つの幻影を生み出すものである。
今度は卵を持った亜竜の再現。空を飛翔する姿を生み出して、彼方へ往く様に。
行く先は自分達とは逆方向の山影へ。敵の目を逸らしている内に、更に時を稼ごう。
駆け降りる。来た道を、二つの班に別れながら。
勿論やがて追いついてくるワイバーンもいるものだ、が。
「チッ。流石に卵が目立つな……仕方ない、ここは俺が時間を稼ぐ。皆は先に行っててくれ」
「ブランシュもワイバーンを足止めするでありますよ! 囮になるであります!」
立ちはだかるのはシラスにブランシュだ。
ワイバーンの卵は人が一人で抱える事が出来るサイズ……ではあるが多少大きい。持ってきていた布による隠蔽にも限度があろう――更には来た時とは異なり血眼になって探してくるワイバーンがあらば、行きの時より効果は薄れている可能性もあった。
故に二人がワイバーン達を足止めする。
あえて目立つように立ち回りながらシラスは攻撃衝動を引き起こす高熱をもってしてワイバーンの気を引き、ブランシュは空を飛翔。超速度へと達する神速の身から生じる真空の刃が奴らの翼を穿つものだ――
「さぁ来るであります! 卵を取ったのは、このブランシュでありますよ!
手の鳴る方へ――って、わわわ! なんだか沢山来たのであります――!!」
が。そのブランシュの瞳に映ったのは、巣穴や周囲から駆けつけてくるデミグラントス達であった。先の金切り声によって集まってきているのか――まだ距離はあるがしかし、二体、三体……まだ増えそうだ!
「これが覇竜領域か~まるでテーマパークに来たみたいだぜ!
テンション上がるなぁ~……ってね、あっはっはー!」
増える危機。最早笑うしかないと、京は卵を支えつつ――しかし速度は緩めない。
なんとしてでも持ち帰るのだ。低空を滑空する様に飛行しながら、全力疾走。
走れや走れー! 後ろから死神が迫ってきてるぞ、はははのは――っ!!
●
炎の息吹。鋭利なる爪。空を自由に舞う速度。
成程、これが亜竜か。
他の地域にも魔物は出るが……しかし覇竜領域に住まう存在は、一つ以上『上』であると。
「だけどよ――絶望するって程じゃあねぇよ、なぁ!」
シラスはその肌に直感していた。
だが同時に打倒出来ない程の存在とも思えなかった。それはシラスの実力が非常に洗練されており、卓越した技量をその身に宿しているが故もあるが。ワイバーンと一対一で戦ったのならば乗り越えられぬ程ではない――
自らに怒りを抱いて接近してくる個体あらば撃ち落とす。
三撃一閃。鼻っ柱に己が拳を叩き込めば、亜竜と言えど痛みに顔を歪めるものだ。
『――!!』
「ぬーぐぐぐ! しかし数が増えてきたのであります……!
これはちょっときついでありますね……!」
「ブランシュちゃん、交代しようか! へいパスパス!!」
とは言え――ではシラスやブランシュが追いかけてくる全てのワイバーンを撃破せしめるかと言えばそれは過酷であった。そも、数が段々と増えているのだ……それらを足止めするのにもやはり限度がある。
ワイバーンの身体能力の高さもあらば抗う程に傷が増えていくのも当然の事。
故に道中にて卵を運んでいた京がブランシュと交代する――ブランシュが卵を取りて、その身を追いかけんとしたワイバーンを、交差した瞬間に京が打ちのめした。
「っらぁ!! 来るなら来いやー! 亜竜だからって京ちゃんが怖がると思うなよ――!」
全身から生じる超高温の火炎。それらがスパークし雷撃を身に纏えば――蹴り穿つ。
卵が美味しいって聞いちゃあ、京ちゃんとしては黙ってらんない……! 絶対手に入れるんだ!
「へっ亜竜の連中、怒り狂ってやがるぜ。だが『イスレース2000実質最速』『ローレットの鼠小僧』と言われたこの俺を捉えられるかな? さぁ来いよッ!! 遊んでやるぜ――ッ!!」
同時。駆け抜ける千尋の速度は最高天に到達しようとしていた。
ゼファー先導のままにガン逃げ全力。無論、敵からの攻撃が飛んでこぬとも限らぬ故に、背後や上空への警戒を無にしている訳ではないが――しかしその力の逃走一択に注がれていた。
必ずコレは届けてみせる。これからのデザストルとの信用の為にも!
「賢い連中ではなさそうだけど、卵をブチ破ってでも侵入者を殺す――なんて短絡的な連中じゃあないのが幸いかしらね。親としての本能があるのかしら。それならそれで好都合だからいいんだけど、ね!」
「ただ、凄い勢いで数が増えてるでごぜーますねぇ……とッ!」
さすればゼファーは只管に千尋を導く様に駆け抜けるものだ。
背中は任せた――と。ただ、流石繁殖力が高い個体と言うべきか……時間が経つごとに数が凄い事になっている。一体をエマの掌底が一閃し距離を離すも――このままでは追いつかれる、か。
二つの班に別れた事によりどちらかが辿り着けば良いという作戦ではあるが。
反面、卵を護る戦力も二分されている形だ。
ワイバーン達が追いすがってきた数によっては、窮地に陥る可能性もまた高くなっている――くぅ。もう少しで山脈を超え、視線を区切れそうな林の中に入るというのに!
「もう一押しだ。なんとしてでももう少し逃げ切ってみせる……
ブランシュさん、こっちへ。最後の策だ――これでなんとか凌ごう。
『卵』をこっちに!」
「むっ! アレでありますね、分かったであります!!」
では、と。直後マルクが卵を運ぶブランシュへと近づき――卵をその手に。
が。それもまた幻影であった。
幻影であれば直接触れる事は出来ないが故に、動く幻影にてまるで持ちながら逃げている様な姿を――奴らに見せるのである。ただ、卵がそれなりに大きいが故に腕の中に隠す事は出来ない……ブランシュも持っており、マルクも持っているというような二つの姿が見える事だろう。
『――!?』
だが、それでもワイバーンの目にはどちらを追うべきかという逡巡が生まれるものだ。
もっと近くで見れば違和を感じ、幻影だと分かるかもしれないが……しかし空を舞う彼らには人の姿は米粒の様に。彼らの空を舞う長所こそが戸惑いを生み出していると言えたか――マルクが必死で逃げる様子もあれば更に迷うモノ。
結果として本物を運ぶブランシュへの負担が減る。
「討伐依頼じゃないから殺すより逃げろだよ。全部相手にも出来ないしね。
あなた達には悪いけど、卵は美味しくいただくからね――」
そしてその行動はЯ・E・Dも行っていた。
離れた方角に遠ざかる幻影の人影を動かすのである。
刹那でも隙が出来れば結構。その横っ面に、雁字搦めに縛り上げる光の糸を放たん――
更には邪魔な岩でもあらばショートカット代わりにと魔砲一閃。
「大きな音が出るから行きではしなかったけど、もう気遣う必要もないしね」
「オゥ! ナイスドリームシアター&カノン! さぁあと一歩行くわよ――!」
さすればゼファーがそこを一直線に駆け抜けるものだ。
ただ、これ以上の策はもうない。後は実際に逃げ切る事が出来るかどうか――!
「っ、ぉ――! 流石にキ、ツイなこれ以上は……!」
「ふぅッ! だが、あともうちょい――っとぉ!!?」
最早殺到の勢い。幻影などによる遅延策がなければどうなっていた事か……
留め続けていたシラスの身も限界であり。
卵を持ち駆け抜けていた千尋も、傷を多く負っていた。身を挺して卵を護り続けていたからである――それでもあと一歩と、尽力し続けていた、が。
『――!!』
防衛の、刹那の隙を突いてワイバーンが千尋へと到来せん。
エマの掌底による撃が数に押されて間に合わぬ。正面から来た個体はゼファーが叩きのめしているが、しかし――それでも怒るワイバーンが彼へと爪を届かせれば。
「――シットッ!」
その、余波にて。包んでいた毛布が切り裂かれるものだ。
卵が転げる。Я・E・Dの結界により割れこそしなかったが、転げるソレを回収できるだけの暇がないッ――くそ、あと一歩でもう一つ手に入ったというのに!
……だが悲観するべき状況と言う訳でもなかった。
一方でブランシュは到達していたからである。
ワイバーン達の追跡を振り切れる様な森へと。卵を無事に抱えながら――
●
「誰か! 誰かこの卵を料理してくれたもう!
――俺スクランブルエッグしかできないよ! 京ちゃん、なんかない!!?」
「任せろー! とっておきの目玉焼きを作ってやるぜ――!」
「目玉焼きですか!? ブランシュも目玉焼き、出来るのです! 手伝うのです!」
「それよりもワイバーンの肉誰か回収してきてない? ここはいっちょワイバーン親子丼でしょ――親も子も喰らってやるわよ! え、野蛮なメニュー? だって散々な目に遭いましたしィ!?」
帰還したイレギュラーズ達――卵を持ち帰り強さと信頼を示せ、ば。
『――じゃあその卵は好きにしていいぜ!』
そんな事を依頼主から言われたので、卵をどう調理するかの議論になっていた。千尋が助けを求め、京やブランシュが唸り、ゼファーはいっそのこと先の苦労を喰らうべく親子丼にせんと企むものである――
「ははは。危険な道中だったけれど、なにはともあれ無事に戻ってこれて良かったよ」
「そうだな――あっ。すっげー悩んだけど、ここはシンプルにパンケーキなんてどうだ?
食材が良いとソレだけで絶品になるんだぜ」
「或いは、卵かけごはんが鉄板かなぁ……あ。砂糖とかも使ってプリンもいいかも」
更にマルク、シラス、Я・E・Dも其処に。
苦労したが故にこそ、その苦労の品で作った味わいはまた――素晴らしいものになるだろう。
そして。
「そーいえばあくまで果ての迷宮での話でごぜーますが。
ドラゴンのお肉を食べた事がごぜーましたねぇ」
五体もいた。ああ、此方の竜は一体どのような味がすることか――
エマは言う。まだ見ぬ未知の味が此処にはあるのだと、思いながら。
覇竜領域の山脈を眺めながら――想像に思いを馳せていた。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ。
これでもかと言うぐらい幻影を使用されていて、効果的だったかと思います。
覇竜領域が解禁されれば、今後はこういったワイバーンとの本格的な戦闘も増えてくるのでしょうね……
これから如何な物語が紡がれていくことか。
ともあれありがとうございました!
GMコメント
亜竜の卵を持って帰ってきてもらう依頼……? うっ! 頭が……!
ともあれ詳細です! ご縁があればよろしくお願いします!
●依頼達成条件
ワイバーンの巣から卵を持ち帰る事!
●フィールド
覇竜領域デザストル西部側の山脈地帯です。
この一角に後述するワイバーン・デミグラントスの巣があります――
皆さんにはそこから『卵』を持ち帰ってきてもらうのが目的です。
険しい山脈地帯の中を進む事になりますが、亜竜の巣の方角は依頼人より情報がありますのでその方面に進んでいればやがて見つけることが出来るでしょう。巣は山脈の一角に、ぽっかりと横穴があるらしく、そこを巣としているようです。
探索や冒険に特化した技能があると更にスムーズに進むことが出来るかもしれません。
また、巣に親がいるのか、いないのか?
それはシナリオ開始段階では不明です――しかし卵を最低一個は持って帰ってきてください。
●ワイバーン・デミグラントス×??
非常に狂暴なワイバーンの一体です。
攻撃性が強く、また繁殖性もある為、亜竜種達も困る事があるのだとか。故に彼らがこれ以上増えないようにするためにも卵を奪取する必要があります。ちなみにこの卵を用いて料理すると、まろやかで美味だそうです。
卵はそれなりの大きさがありますが、人間一人で運べる程度のサイズです。
運搬性能他、なんらかの技能などによってスムーズに運ぶことも可能となるでしょう。
デミグラントス(親)は空を飛び、炎のブレスを吹く事もあります。
肉体も強靭であり鋭い爪や牙によって攻撃したりする事もあるでしょう。
また、高い金切り声を挙げて同胞を呼ぶこともあるようです――ご注意を!
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
Tweet