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シナリオ詳細

再現性東京202X街:屋上の上の闇間

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●再現性東京202X街:屋上の上の闇間
 新年ムードも落ちついた、1月の再現性東京。
 昨年末に起こった事件故に、昼下がりに空が暗闇に包まれて不安に駆られる人もいれば、夜歩いていたら、化け物に襲われた、と大声で触れて回る人も居る。
 ……しかしそんな異常も、今となっては段々と日常に近づきつつあり、それ位で大きく騒ぐな……なんて事を言われてしまう事もしばしば。
 そんな幽霊騒ぎが以前起きていた所の一つ、国道37号線のトンネル。
 確かにトンネルと言われると、幽霊騒ぎとは無縁ではいられない……かくいうこのトンネルも、過去度々幽霊騒ぎがあった。
 そして、そんな幽霊騒ぎがあった場所には、人の闇である幽霊達も……吸い寄せられてしまうのかもしれない。
『……ウウゥゥ……』
 深夜のトンネルに聞こえてくるのは、何か苦しそうな呻き声。
 その鳴き声が夜な夜な響きわたれば、一時は落ちついていた怪談の噂話もまた、再燃し始めてしまう訳で。
『あのトンネル、深夜の刻に訪れると魔物に襲われる』
『魔物が姿を表すには、トンネルの上にある墓地で大きな声を上げると出てくる』
 ありそうな噂話から、荒唐無稽な噂話……様々な話が発生し、そんな噂話を聞いた近くの大学に通う学生達も。
『おもしろそーじゃん。なぁ、今日いってみねー?』
『いーじゃんいーじゃん。んじゃ、善は急げだって事で、今日の夜集合なー』
 卒論間近故に、息抜きがてらに行こーぜ、という謎のテンション。
 そして彼らは、トンネルの上の墓地に足を踏み入れ……。
『……ギャーー!!』
 と、断末魔の悲鳴を上げるのであった。


「……お、みんなー。こっちこっちー!! ほらほら集まってー!!」
 いつもの日常を過ごす、カフェ・ローレット。
 そしていつもいる綾敷・なじみは、顔なじみの君達を発見するとすぐに、声を掛け、集める。
 そして集められた先には、『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリアの姿。
「今日みんなに集まって貰ったのはね、フォルトゥナリアさんが昔参加してくれた、国道の怪談話の依頼に、ちょっと気になる点があるからなんだよね。ね、フォルトゥナリアさん!」
 笑顔を向けるなじみに、フォルトゥナリアはこくりと頷きつつ。
「以前、とある幽霊トンネルの依頼があったんだけど……そのトンネルの上に墓地とお寺があるって話しだったの。トンネルに出る幽霊さんも、上のが干渉してきた結果出現した幽霊じゃないかもしれないのよね」
「それで、時々私もここに赴いて、調査をしていたのよね……そして、ついこの前に再現性東京に起きた事件。その結果、一度退治した夜妖らが、また集結しつつある様なのよ」
「更に悪い事に、そんな夜妖の噂話に尾ひれが付くように、またこのトンネルの怪談話が出てくるようになったの。そんな怪談話を聞いて、そこに向かってしまう人も……まぁ出てくるのは間違いないでしょうね」
「今の所は未だ被害が出ていない様だけれど、このままじゃ被害が出るのも時間の問題……という訳で、皆さんに協力をして欲しい、って訳なの」
 と、フォルトゥナリアがそこまで言うと、なじみはうんうんと頷きつつ。
「そうだね! まぁ、みんな怖い物見たさっていうのもあるのかもしれないんだけどさー……だからってむざむざ放置しておく訳にいかないよねー? って言う訳でさ、みんな、フォルトゥナリアさんに力を貸して上げて欲しいんだよ、宜しく頼むね!!」
 満面の笑みと共に、なじみは皆の背中を叩いて送り出すのであった。

GMコメント

 皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)と申します。
 今回は、以前ありました国道に現れる夜妖対峙のアフターとなります。
 再現性東京202Xとなり、過去の怪談も違った形で再構成されてしまっている様です。

 ●成功条件
   墓地にて姿を表す『落ち武者』の夜妖達を退治する事です。
   又、墓地に後ほど来てしまう大学生の集団も守りきる事が必要となります。

 ●情報精度
  このシナリオの情報精度はBです。
  依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 ●周りの状況
  国道の上にある墓地が今回の舞台です。
  国道が下に通っているのもあり、深夜の刻においても静寂に包まれる……という事はありません。
  それ故に人気を感じ取る事は難しく、やってくる大学生達の気配を戦闘中に感じ取るのは難しいでしょう。
  ちなみに、大学生達は、いつ来るか分かりません……怪談スポットに来るという事で、最初は威勢良いですが、墓場に足を踏み入れる頃には超弱気になってしまっています。
  又、今回の夜妖達は、この地の陰の気配が集まることによって具現化したものの様で、辛うじてヒトガタはしていますが、人語は解する事が出来ません。
  ただ、本能的に『弱い人』を察知する事が出来、それに集中的に攻撃を行う……という行動を取ります。
  この『弱い人』というのは単純な力の強さではなく、『心の強さ』も含みます。
  幽霊と遭遇して、弱気になっている大学生達なんて、格好のターゲットになってしまうでしょう……。

 ●討伐目標
   瘴気に包まれた夜妖の武士
     人の恨み辛み、陰の気が集まることによって具現化してしまった武士の様な姿をした夜妖です。
     辛うじてヒトガタはしていますが、ふわふわとその周囲は雲のようになっています。
     それ故か、動きもまるで雲の如く、音も無く左へ、右へと動き回避力が高い様です。
     ただ武器は刀の様な物を持っており、その一閃を喰らうと出血と共に、相手の体力を吸収する攻撃&回復の手段を持って居ます。

 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • 再現性東京202X街:屋上の上の闇間完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年01月30日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
ノワール・G・白鷺(p3p009316)
《Seven of Cups》
フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)
挫けぬ笑顔
郷田 京(p3p009529)
ハイテンションガール
昼子 かぐや(p3p009597)
ガンカタ巫女
山本 雄斗(p3p009723)
命を抱いて
國定 天川(p3p010201)
決意の復讐者

リプレイ

●屋根よりも上に
 新たなる年を迎えて一月ほどが経過した、一月下旬の再現性東京。
 昨年の様々な事件により、住まう人々の意識は……少しずつであるが、怪異に対しての抵抗がなくなりつつある。
 そんな年明けの再現性東京、国道37号線。
 朝も夜もひっきりなしに車が往来するこの道は、怪談スポットとは言われて居るものの、活気があるため余りそんな雰囲気を感じる事は出来ない。
 ただトンネルの灯りはぼんやりと照らすオレンジ色で……深夜の刻ともなれば、その灯りと相俟って、不気味な雰囲気が醸し出されている。
 こんな場所にて半年前ほどに起きたのは、武者と思しき幽霊が出てくるという騒ぎ。
「そういえばあったわね……あの事件が起きてから、もう半年も経っているのね」
 と、そのトンネルに向かう道すがら、『狐です』長月・イナリ(p3p008096)は思い出すように目を細める。
 勿論、その時同じ依頼に参加していた『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)も。
「そうだね、懐かしいよね……あの時は近くの小学生達が、面白そうな怪談話だーって来てしまったのよね……今回の大学生達も、本質的には同じような意識なのかな?」
「そうだと思うわ。怖い物見たさ、って言葉もあるし……それで自分の命を奪われちゃ、元も子も無いと言うのに……」
 息を吐くイナリ。
 この地に限らず昨年末の事件から、再現性の世界において怪異による事件事故は、様々に起こり始めている。
 それら事件を虱潰しに対処為ていく事しか、今の所対処手段が無いのは……中々に厳しい所。
 とは言え今は一月末……寒風は吹くし、日によっては雪も降る。
「いやぁ~……肝試しをするには季節外れ、すこーしばかり寒い時期ではございませんかね? はたまた、未だに浮ついたニューイヤームードが抜けてらっしゃらないとか?」
「本当よ。こんな時期に肝試し……べ、別に羨ましくなんかないわよ!」
 『《Seven of Cups》』ノワール・G・白鷺(p3p009316)に、何故か『ガンカタ巫女』昼子 かぐや(p3p009597)が強い口調で否定。
「ん……どうしたどうした?」
 大きく笑う『ハイテンションガール』郷田 京(p3p009529)に、ぷいっと顔を背けながらかぐやが。
「そりゃまぁ……進学の道も考えて無かったと言えば嘘になるけど、皆を護る為に戦うのも性に合ってるし……自分の直感とお告げを信じれば、最悪の未来は阻止出来る筈なんだから!」
 大学生という彼等に対し、色々と思う所があるのかもしれない。
 ともあれ、そんな怪談スポットである国道37号線のトンネルに辿り着いたイレギュラーズ。
 そこで一旦地図を見て……トンネルの上に上がる階段を探す。
「えーっと……ここがここだから……あっちかな?」
 『燃えよローレリアン』山本 雄斗(p3p009723)が皆を先導して、山肌を登る階段へと移動。
 数十段上り、折り返し……丁度トンネルの上辺りの場所に辿り着くと、そこに広がっていたのは墓場。
「墓場か……まぁ人は生き死にするんだ。墓場があるのは当然か」
「そうだな。だが下が国道って言うのはあんまり聞かねえな。騒々しいんじゃねえのか?」
「ああ、確かにな……そしてここに出るのは落ち武者の霊、と……中々ミスマッチなもんだ」
「え、そうかな? 墓場に出る武士の幽霊って、メジャーな怪談じゃないのかな?」
 『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)と『疲れ果てた復讐者』國定 天川(p3p010201)が肩を竦めたて苦笑する一方、首を傾げてきょとんとしている雄斗も居たり。
 墓場と武者……ちょっとミスマッチな感じを覚える人も居れば、それが普通だって思える人も居る。
 感じ方は人それぞれだけど、そんな幽霊話を面白可笑しく体験しようとするオカルトな大学生達が居るから、今回の様な事件が起きてしまった……のかもしれない。
「半年ほど前の事件の時も、武士の夜妖が下のトンネルに出て来てたのよね。その時も元はと言えば、トンネルに武者の霊が出る、とかいう怪談話からだった……例え嘘だとしても、噂話が広まっていけば、その思いがこうして夜妖となって出て来てしまうのかしらね?」
「んー……そっか。確かにメジャーな怪談話ってことは、それだけ多くの人が噂しているから油断は出来ないね。でもこの大学生達も、少し前にマザーの暴走で大変だったというのにどうして肝試しなんかするかな? 息抜きならもっと他にゲーセンとかカラオケなりに行けばいいのに」
「ま、そういうのに飽きちまったのか……俺達は普通の大学生とは違うんだよ、なんて事を考えてるのかもな」
 雄斗にヴェルーリアとかぐやの言葉。
 ……ともあれ、この墓地に武士の霊が出るというのは、なじみが言うからには確かなんだろう。
「まぁこれ、学生たちにとっちゃ、丁度良い怪談話になっちまうんだろうな……若者の青春をトラウマにしない為にも、きっちりと仕事しねぇとな」
 天川は、その小太刀を僅かに抜く……空の灯りが、僅かにそれにキラリと煌めく。
「まぁいずれにせよ、厄介者にはご退場願いましょう。無事に無傷で帰るまでが肝試しですから」
「そうだね。夜妖を倒し、大学生の方の命も助ける。両方とも人数がわからないのは痛いけれど、やれることをやっていきたいね」
「ふふん、まっかせといて、ユーレイだろうが夜妖だろうが、殴って蹴って燃やせるんなら一緒一緒! あっはっはー!」
「ああ。昼子神社の名に懸けて、悪霊退治にいざ参らん! なんてね」
 そして、ノワール、かぐや、京にかぐやは派手に笑い飛ばす中、真摯な表情の世界は墓場の周りを一瞥。
「……どうやらもう現れた様だぜ? さぁ、景観を損ねる夜妖は、至急始末させて貰おう」
 彼の言葉の通り、目前からは……禍々しい瘴気が立ち上り始めていた。

●再来する亡霊
『……ウゥゥ……』
 突如、墓地に響きわたる呻き声。
 その呻き声は、不幸な事に丁度墓場に足を踏み入れてしまった大学生達の耳にも届く。
『……え?』
『おい、何か今声が聞こえなかったか?』
『ば、ばばばばばばかな事言うなよ! あの怪談話って、あくまでも噂だろ? 本当な訳ねーじゃん!!』
『そ、そーだよなー……び、びびってなんかねーし!!』
 明らかに動揺を隠せないで居る大学生連中。
 そんな大学生連中の声に気付いたのか、瘴気と共に蠢く漆黒の影が……イレギュラーズ達と大学生達との間の辺りに蠢く。
 そしてそれらの影は人の形に具現化すると共に……闇の体に刀を持った武士の姿で具現化する。
『で、でででででたぁああ!!』
 大声で慌てふためく彼等。
「早速現れやがったか……ったく、仕方なないね!」
 そんな彼等の元へ、一足早く後退するのは世界、イナリ、京、かぐやの四人。
 影を過ぎ去り、大学生達の所に辿り着く。
 ……とは言え、驚いている状態の大学生達からすれば、彼等彼女らもなんでこんな所にいるんだよ、って思えてしまう訳で。
『うわぁあ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいいいい!!』
 と恐怖に涙目を浮かべながら、許しを請う大学生達。
 その心の弱さは、夜妖達にとっても……極上の獲物である事を明らかにする。
「先ずは落ち着きなさい! 大人でしょう!!」
 とイナリが強い口調で大学生達に声を掛ける。
 更にかぐやも、間に挟み込んだ夜妖達に向けて。
「おい、あーしの地元で舐めたマネしてんじゃないよ悪霊が!!」
 と叱りつけるように声を上げる。
 とは言え夜妖達からすれば、自分達に怖がっている大学生達の方が獲物にしやすい……故に、大学生に向けて攻撃を始める。
 そんな夜妖達の攻撃をカバーリングするのは京。
 一人で全ての攻撃を受け止める事で、敵の注意を完全に自分へと惹きつけつつ……他の仲間達も同列の陣へと加わる時間を稼ぐ。
 そしてヴェルーリアは、己を発光させながら大学生達に向けて声を掛ける。
「こんばんわ。今日は肝試しに来たの? 今日はちょうど危険なオバケが出て来てるけど、それを倒せる私達も要るから、ある意味持ってるね」
『持ってるって、何なんだよぉ……』
「ふふ……大丈夫、私達は君達の味方だから安心して。透けても無いし脚もあるでしょ? とは言えここは危険だから、大人しく私達に守られるか、君達を国道のあたりまで送っていく人が居るから、その人の指示に従って欲しいな。怖い中ここまで来たのも勇気だけど、ちゃんと危険を避けるのも勇気だからね?」
 とヴェルーリアがそう言葉を掛けている最中にも、夜妖達からの攻撃が重なる。
 一旦京とかぐやのふたりがその攻撃を受けつつ、天川、ノワールが移動し、二人と交代。
 更に雄斗も。
「フォーム、チェンジ。疾風!」
 とヒーローの如く変身すると、特撮番組が如く大学生を護る様、瞬間移動から繰り出す一撃を放つ。
 流石に夜妖達にその攻撃が効かない……という事は無く、一体が少し後方に下がり、他の夜妖達はイレギュラーズとの間合いを少し取る。
「今がチャンスの様ね。京さん」
「りょーかい。ハロハロー、大学生さん達? ごめんねー、楽しいイベントの予定だったみたいだけど、残念! 京ちゃんでしたー! あっはっはー! まぁ、スーパービューティフルな美少女の京ちゃんをミレアと思って満足してね! という訳でみんなを力尽くだけど連れていってあげるから! こっちこっちー!」
 怪談スポットなのに、明るくハイテンションな京の言葉。
 恐怖に怯えている大学生男子達を、大柄の体と腕で易々と掴み、女子数人はかぐやが引っ張って行く。
 そして墓地を出たところにおいておいた馬車へと運び、有無を言わさずぶち込んでいく。
『な、何なんだよぉ!!』
 怪談話の恐怖に加え、大学生達を易々と運んでいった京に更に驚きを隠せない大学生達。
 ……そんな大学生達にニッ、と笑みを浮かべながら。
「ま、今の所は正義の味方って感じかな! ま、ここでちょっと待ってるんだよー!」
 笑い飛ばしながら、馬車のドアを閉じる京。
「良し……後は夜妖達をさっさとぶっ飛ばすだけだね! 一気阿世に攻めていくよ!」
「OKOK!」
 かぐやに京は頷き、二人は急ぎ墓場へと移動。
 勿論その間、夜妖達を世界とイナリの二人も足止めに加わる事で、夜妖が万が一にも大学生の下に行かないように対応を行う。
 そして二人が戻ってくれば……後は夜妖を逃がさず退治するがのみ。
「さーてと、夜妖の数は……っと。ふぅん、10体って感じ? 多すぎず、少なすぎずでいい感じじゃない! 雄斗はどっちから行くのかな?」
「俺は左の方から攻撃していくから、そっちは右からで!」
「了解!」
 素早い京と雄斗の二人が敵よりも先陣を切り、左サイドと右サイドの両面から多数の弾丸砲と、至近距離に接近してからの、破壊一閃で各々攻撃。
 総じてダメージを受ける夜妖の群れ……続き彼等はその刀を振るい、イレギュラーズ達の血飛沫を求め、反撃してくる。
 漆黒の中に迸る鮮血と、それを吸収する魔刀により、体力の回復を同時にやってのける武士達。
「正しく攻撃こそ最大の防御……という訳ですか。面白いですね」
 そんな敵の攻撃手法を笑うのはノワール。
 そして彼は、敵から間合いを取るように移動すると。
「しかし……エンターティナーたるもの、オーディエンスが多ければ興が乗ると言うものです。少し、サービスしちゃいましょう」
 まるでマジックを披露するかの様に、少し離れた位置より黒いキューブを作り出し、夜妖一体を包み込んでいく。
 苦しみもがく夜妖……その周りの者達は、彼を救う事はどうやら無い模様。
「仲間を助ける義理は無い……という事か。全く、相変わらず夜妖ってのはよく判らん……ま、俺のやるこたぁ決まっているがよ!」
 そう天下は二振りの小太刀を手にし、武士の関節部を狙い済ました双撃を繰り出す。
 更にイナリが、同じ敵に向けて連続斬撃を叩き込み、影を何度も何度も斬り付けていく。
 続いてヴェルーリアは神たる光で戦場を包み込む事で、漆黒の身を総じて光で灼き、かぐやも不意を突く奈落の一撃で、敵の隙をついた一撃を繰り出していく。
 ……流石に一巡の程度では、夜妖達が倒れる事は無い。
 むしろ攻勢を強め、体力の回復効果を効率的に進めようとしてくる。
 敵の攻撃を受ける仲間の具合を見て、世界は一人。
「怪我は俺に任せておけ」
 と回復に専念。
 仲間達の具合、状態を見定めながら、適した力で回復を行う。
『ウゥゥ……』
 そんなイレギュラーズ達の連携の成果もあり、中々倒れない為に恨み節を呻く夜妖達。
 しかし、その恨み節に対しかぐやから。
「罪を憎んで人を恨まず。けれど、恨みや憎しみが積もって生まれたアンタたちは、どうやって救えるのかしらね?」
 巫女であるが故、救える手段がないかを考えてしまう。
 だが、夜妖となった者達……彼等を救う為には、彼等を倒し、止める事が今の所の最善手。
 そうしてイレギュラーズ達は欲張ることはせず、一匹ずつを確実に仕留めて行く。
 そして、最初の内はまだ聞こえていた大学生達の恐怖の声が、聞こえなく鳴り始めた頃。
 イレギュラーズに対峙する夜妖は、もはや残り1体となり、彼も手負い。
「さぁ……後は貴方様だけの様ですね?」
 ノワールの宣告。
 夜妖は……ただただ呻き声を上げて、刀で攻撃するばかり。
「冷静な判断力も最早無し……と。仕方ありません。ならば、大人しく成仏させてあげましょう」
 構えると共に、その全ての力を魔力へと変換し、放つ一撃。
 その一撃を食らえばもはや影の身を維持する事は出来ず……全ての夜妖は影も形もなく、喪うのであった。

●救いを求めた声
「さて、と……もう武士の霊達は居なくなった様だな」
 息を吐き、武器を降ろす世界。
「それじゃ被害者の様子でも見てくるとする?」
「ああ……そっちは任せた」
 雄斗の言葉に世界は頷き、そして京が持ち込んだ馬車の中に放り込まれた大学生達の下へ。
『う……ううう……』
 すっかり怯えてしまっている大学生達。
 そんな彼等に、天川は優しげな口調で。
「怖かったか? ま……そりゃそうだ。お前達が普通出逢う様な奴らじゃないしな……」
『あ、あったりまえだろぅ……な、何なんだよあんた達はよぉ……』
 言葉を絞り出すので精一杯な大学生達。
 その頭をぽんっ、と叩きながら。
「俺は探偵でな。ああいう質の悪い悪戯をしている連中の調査を依頼されて来たんだ。見ての通り、生身でなんとか出来る作りもんだ。でも、巻き込まれるたぁ運が悪かったな」
『い、悪戯だぁ!? あんなん悪戯な訳ねーよぉ……』
 流石にあんな恐怖を迎えれば、はいそうですかと信じるのは難しいだろう。
 しかし決して天川は言葉を荒げず、同様の口調のまま。
「ま……そうかもな。でももう大丈夫だ。ほら、帰ってゆっくり休め。なんなら全員家まで送ろうか?」
『……わ、判ったよぉ……』
 食い下がるかと思ったものの、大学生達の肝は全然据わていなかった様で、さっさと馬車を降り、走り逃げ帰っていく。
 ……そんな大学生連中の逃げ帰る背を眺めながらヴェルーリアは。
「また同じような事が起きないと良いけど……再現性東京で、怪談が続く限りは難しいのかもしれないわね……」
 と息を吐くしかなかった。

成否

成功

MVP

郷田 京(p3p009529)
ハイテンションガール

状態異常

なし

あとがき

ご参加頂いた皆様、ありがとうございました!
今回のシナリオ、前の依頼を見返すと半年前でした。
その時には、マザーの事件等が起きるだなんて思いもしませんでした。
そう考えると、半年の間にも色んな事件が起きたものですね……。

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