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シナリオ詳細

亜竜種少年の武者修行

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 幻想ローレット。
 集まるイレギュラーズ達が関心を抱いているのは、『覇竜領域トライアル』……通称覇竜と呼ばれる地のことである。
 大陸南方の山脈にある竜種の領域には長らく踏み込む術がなかったが、R.O.Oで行った竜域踏破の情報を活かし、通用口を利用することができるようになった。
「覇竜領域……前人未踏って言われたこの地域について、私も情報を集めているところです」
 『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)も情報屋としてかなり板についてきているようである。
 そんな彼女は混沌中をあちらこちら巡って情報を集めているそうだが、ようやく踏み入ることができるようになった覇竜の地に興味津々だ。
 探索の結果至った『亜竜集落フリアノン』で亜竜種と交流を行ったイレギュラーズは、竜種の脅威が蔓延るこの領域の探索を進めつつ、さらなる力を得るべく、亜竜種達から依頼を受け、或いは力試しにと魔物討伐を行うことになる。

 さて、今回アクアベルが紹介する依頼は表向き、『亜竜集落フリアノン』に住む亜竜種少年からのもの。
「なんでも、武者修行をしたいとのことですが……」
 少しばかり苦い顔をするアクアベル。
 どうやら、この少年……双牙はヌンチャクを使った武術を修め、ゆくゆくは達人となるだろうと言われているのだが……。いかんせんまだ子供。発展途上といったところである。
 今回、単身で武者修行を希望した双牙だが、さすがに集落の大人達がそれを許さない。そこで、最近集落へとやってきたイレギュラーズ達に同行させようというのだ。実質的には集落民からの依頼となる。
 亜竜種達ですら、近場には恐ろしい魔物が多数存在しているという認識で、よほどの手練れでもないと満足に外を出歩くこともままならない。
「最悪、手練れの亜竜種の方々が助けてくれるかもしれませんが……、ローレットとして力を示したいところですね」
 亜竜種達とうまく付き合うなら、そして、覇竜の地で依頼をこなすならこれくらいの依頼はできて当然といったところか。
 ともあれ、集落民と双牙の信用を得る為にも、彼と一緒に魔物討伐に向かってほしい。
 アクアベルは改めてそうイレギュラーズ達へと願うのである。


 『亜竜集落フリアノン』周辺は閑散とした山岳地帯。
 依頼を受けたイレギュラーズは、そこを亜竜種の少年と共に歩いていた。
「外で修行できるなんて、漲るぜ!!」
 これでもかとヌンチャクを握りしめた双牙は嬉しそうにはしゃぐ。
 ローレットのイレギュラーズがどれだけの実力か、強く興味を抱いていたこともあるが、魔物討伐を思う存分できるのが嬉しいのだろう。
 この近辺には気性の荒い亜竜や魔物も多い。
 力ある亜竜種にとって力量を試す相手となるそうだが、その力は決して侮れない。
「魔物なんて全部蹴散らせるほど強くなるんだ!」
 そんな双牙の理想を耳にしながら、メンバー達は歩く。日ごろから厳しい修行を積んでいるらしい彼だが、その実力を示すことのできる機会だと意気込んでいたようだ。

 一行はやがて、開けた岩場に出る。
 そこは円形の空間で、広さは直径数百m程度はありそうだ。頭上は空が見えており、地面は硬い岩盤。存分に立ち回れそうである。
 シャアアァァ……。
 そこに聞こえてくる魔物の声。近場にそれらの巣でもあるのだろうか。
 空中で爛々と目を輝かせているのは、蛇の魔物……いや、亜竜だ。
 それらは皆背に翼を持っており、ただの蛇でないことが窺えた。
 シャアアアアアアアアッ!!
 そして、そのうちの1体は2つの頭を持っていた。
 我先にと獲物に食いつこうとする亜竜達に対し、双牙が前に出て。
「修行の成果、見せてやる!!」
 闘志を漲らせたをフォローしつつ、イレギュラーズは強い力を持つ亜竜達の討伐へと当たり始めるのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 『覇竜領域デザストル』シナリオスタートです。
 まずは、この地の実状などを知る為、周辺探索を兼ねつつ魔物討伐を願います。

●成功条件
 亜竜の殲滅。
 双牙の生存。

●概要
 亜竜集落フリアノンで出会った亜竜少年双牙と共に魔物狩りを行います。
 双牙をフォローしつつ立ち回ることになるでしょう。彼にイレギュラーズの力を示してあげてくださいませ。
 
●敵……亜竜×6体
○ウイングヒュドラ(略称:双頭翼蛇)×1体
 2つの頭と翼を持つ全長4mほどの蛇。
 毒の牙での噛みつき、連続噛みつき、回し蹴り、麻痺睨みなど主に体躯を活かした攻撃を仕掛けてきます。
 
○ワイアーム(略称:翼蛇)×5体
 翼を持ち、脚を持たない蛇。ワームと呼称されることもあります。
 低空から噛みつき、尻尾叩きつけ、尻尾締め付けなど、素早い動きで攻め立ててきます。

●NPC……礫・双牙(れき・そうが)
 逆立った水色の髪から竜の角を生やす11歳の亜竜種少年。
 ヌンチャクを使った武術を修めておりますが、まだまだ修行中の身といったところです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 亜竜種少年の武者修行完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年01月31日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
リースリット・エウリア・F=フィッツバルディ(p3p001984)
紅炎の勇者
クーア・M・サキュバス(p3p003529)
雨宿りのこげねこメイド
ジェック・アーロン(p3p004755)
冠位狙撃者
シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)
天下無双の貴族騎士
暁 無黒(p3p009772)
No.696
ウテナ・ナナ・ナイン(p3p010033)
ドラゴンライダー
エア(p3p010085)
白虹の少女

リプレイ


 イレギュラーズは竜骨の道から繋がる通路をたどり、亜竜種の集落へと至る。
「覇竜での依頼、か」
「デザストル! ついにきちゃいましたね!」
 幻想の貴族騎士『竜食い』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)が漏らした呟きに、付け髭を付けた猪突猛進娘『泥沼ハーモニア』ウテナ・ナナ・ナイン(p3p010033)が大声で応じて。
「これはドキドキハーモニアです!! 色んな竜や亜竜が見たいですね!」
 これからどんな相手とまみえることになるのか、ウテナは興奮冷めやらぬ様子だ。
 さて、依頼内容は覇竜少年との修行だ。
「亜竜ひしめくこの地で武者修業とは」
 その向上心や良しと、猫耳と尻尾を持つ『めいど・あ・ふぁいあ』クーア・ミューゼル(p3p003529)は大きく頷く。
「フリアノンの亜竜種の戦士は、周辺に住まう亜竜や獣を相手に実戦の経験を積むのですね……」
 こちらも幻想貴族『紅炎の勇者』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)は確かに覇竜領域ともなれば、ただの獣であれ生息生物は相当な戦闘能力を秘めていそうだと考える。
 そんな敵と直接実戦に臨むのは、フリアノン期待の新星である亜竜種礫・双牙少年だ。
「よろっすよ、双牙くん! これから共闘する暁 無黒っす! 気軽に無黒って呼んで下さいっすよ!」
「はりきっていきましょう! よろしくお願いしますね双牙さん!!」
 少年の姿をした猫又『No.696』暁 無黒(p3p009772)やウテナが挨拶すると。
「ああ、よろしくな!」
 一行に対し、双牙は元気に挨拶を返す。
「お互い修行の身、一緒に頑張るっす!」
「わぁ、双牙さん張り切ってるねっ。それじゃあリリーも、えいえいおー!」
 元気な挨拶で無黒が双牙と親睦を深め、妖精を思わせる小さな『自在の名手』リトル・リリー(p3p000955)が掛け声を上げた。
「ふふ、双牙君は元気一杯ですね」
 銀髪ゴシック衣装の『特異運命座標』エア(p3p010085)は気合入れるメンバーが多い中、落ち着いた態度をとっていて。
「わたしは攻撃が苦手なので、双牙君の事頼りにしてます」
 少年に期待を寄せつつ、エアはサポート支援を行う構えだ。
「修行か……頑張るね。確かに、強くなるには実戦が一番だ。里の大人を心配させすぎない程度に頑張りなよ」
 蒼白の肌を持つ白い長髪の『龍眼潰し』ジェック・アーロン(p3p004755)も、少年の意気込みに協力的な姿勢を見せる。
 ただ、いくら有望でも一人でも無謀であり、イレギュラーズに依頼は回ってきて良かったとジェックは小声で本音も漏らす。
「覇竜領域の情熱、見せて頂くのです!」
 己の満たしうる紅蓮を求めて修練しているというクーアもまた、是非協力しましょうと改めて意気込みを見せていたのだった。

 ――しかし。
「とは言ったもののこれは……」
 山岳地帯で亜竜との遭遇はさほど珍しくないそうだが、クーアは出くわした敵が多かったことに少しばかり警戒心を強める。
「出たな、俺がぶっ倒してやるぜ!」
 意気揚々と叫ぶ双牙とイレギュラーズの前には、6体の亜竜。翼持つ蛇達が飛来しており、うち1体が双頭のそれだ。
「複数体が相手かぁ、それに皆は攻撃寄り……よし、速攻で行こっ!」
 リリーが敵の位置関係把握の為に空中へとファミリアーを飛ばす間、集まるメンバー達は戦略について確認し合う。
「危険な状態でなければ、双牙君にとって有意義な物となるよう、戦闘は彼に任せたい所ですね」
 エアの主張に、皆同意する。
「将来を期待している彼ですから、それなりに動けるはずっす。足りないのは実戦経験っすね」
 こればかりはやってみないと経験を積むことができないからと、無黒が遠い目をする。
「双牙君が突出しないよう工夫する必要もありそうです」
 そこで、エアが彼の後ろへと近づいて。
「わたしの事、守って下さいね」
「任せとけ!」
 鼻息荒く、ドヤ顔してヌンチャクを構える双牙は気合十分だ。
「護衛対象である双牙は守らねばな」
「ええ、双牙さんをフォローしつつ、確実に数を減らして殲滅しましょう」
 その後ろ、シューヴェルト、リースリットが口にした考えに、クーアが同意する。
「流石に命あっての物種。いざとなったら、双牙さんだけでも護り抜きましょう」
 最悪の場合は双牙の命を最優先に、亜竜を殲滅すべきだろう。
「っと、気を引き締めてっと……村の人から任された期待の新人君っすからね」
 我に戻った無黒がうっしと気合を入れ、双牙と並び立つ。
「準備完了! よーし、行くよっ!」
「さっそく戦闘開始です!」
 リリーの準備が整ったところで、ウテナは仲間とタイミングを合わせて亜竜へと仕掛けるのである。


 シャアアァァ……。
 現れた亜竜はいずれも翼を生やした蛇。双頭のウイングヒュドラと複数のワイアームだ。
「まずはワイアームからですね!ㅤどんな亜竜なのかわくわくハーモニアです!」
 ウテナを始め、動きの速い面々がすぐさまワイアームを狙う。
「今回のチームは火力重視の方々が揃っているようなので、速攻で行きましょう」
 クーアは敵よりも早く仕掛け、一度集中してから電流と炎熱を使った術式によって狙ったワイアームを上空へと打ち上げる。
 勢いのままに、跳躍したクーアがそいつへと追撃を仕掛け、敵を強く踏みつけて地面へと叩きつける。
「数を減らした方が守りやすいし、攻めやすいからね」
 ジェックも攻撃対象を重ね、地面に落ちた敵を見据える。全てを見通す摂理の視は全てを見通す視座だ。
 巨体が暴れるだけでも十分厄介な相手であるが、脚を持たぬ生態とあって空を自由に動き回られるよしはマシだと、ジェックは実際墜ちた1体の姿で確信する。
 狙撃銃を構えたジェックは小さく相手をあざ笑い、引き金を引く。
 ジェックの一発はまさに死神の狙撃。
 狙った翼を撃ち抜かれたワイアームは翼を羽ばたかせるも、思うように飛び上がれずにいたようだった。
 ワイアーム達はそちらにばかり注意を向けてはいられない。
 低空を浮かぶ陸鯱に跨ったシューヴェルトが迫っていたからだ。
 彼は陸鯱から飛び上がり、媒体飛行によってさらに接敵した上で呪いの力を籠めた蹴りを叩きつける。
 そのスキルは飛竜をも地に落とすとされる一蹴。
 だが、相手も覇竜で生き延びている亜竜だ。呪詛に侵されながらもそいつは再び飛び上がっていた。

 イレギュラーズのスタンスとしては、双牙を守りながらの亜竜討伐。ただ、彼もまた率先して攻撃に参加していくのが注意すべき点でもある。
「俺達が受け持つのはまず『ワイアーム』っすね。前衛は双牙くんに任せるっす」
「おうっ!」
 すでに戦う仲間達の後姿を見ていた無黒。
 その呼びかけを受け、双牙が手近なワイアームへとヌンチャクを叩きつける。ただ命中させることに意識を置き、胴体をメインに殴打を浴びせていた。
 対し、ワイアームは素早く、蛇の尻尾をしならせてくる。
 その攻撃の予兆を無黒は逃さず。
「攻撃手段が近接だけなら、何とでもなるっすね!」
 先手を打つ無黒はワイアームの攻撃を止めるべく、指先から魔性の茨を伸ばす。
 茨はワイアームの体から翼にも絡み、浮力を失った敵は地面へと落ちてしまう。
「そら落ちるっすよ! 今っすよ双牙くん!」
「おす、おりゃあっ!」
 激しく叩きつけた双牙のヌンチャクはクリーンヒットしたが、別のワイアームが彼へと食らいつく。
 そこで、エアが天使の歌を響かせ、フォローして。
「双牙君、無茶はしないで下さいね? わたしも回復くらいなら出来ますが……」
「あ、ああ」
 傷つく双牙はエアに逡巡した態度も見せたが、戦意は衰えていない。
「回復は任せるっすよ! だから思う存分ぶち込んでやるっす!」
 治癒魔術が使えるようにと身構える無黒。
(双牙君のお手並み拝見です♪)
 エアも笑顔を見せつつ、フォロー程度の支援に留めて見守る構えをとっていた。

 双牙を気に掛けるメンバーがいる一方で、他メンバーは亜竜の掃討に力を尽くす。
「乱戦であの大物に暴れられるのは少々困りますね……」
 小さい方から倒すべきと主張するリースリットだが、巨躯のウイングヒュドラがかなり邪魔な存在。
「双牙さん!」 
 そこで、ウテナが双牙へと呼びかける。どうやら、自分の戦い方を教えようとしているらしい。
「うちの武器はこれです!ㅤはいそうです植木鉢です!!」
 自分と同じ戦法をする人など見たことなく、参考になるかはわからないがと言いながらも、ウテナはウイングヒュドラ目掛けてノーモーションで植木鉢を叩きつけた。
「!?!?!?!?」
 2つの頭と尻尾をじたばたさせつつ飛んでいくウイングヒュドラは、岩場に激突して止まっていた。
「まぁ、世の中には色んな人がいるってことで問題なし!」
「あ、ああ……」
 戦いの最中、呆気にとられる双牙は置いといて。
「アバターカレイドアクセラレーション……」
 気を取り直したリースリットが仲間を巻き込まぬような位置から
魔術による霧氷を展開し、敵陣を包み込む。
 相手は蛇。リースリットの思惑通り、相手は身体のあちらこちらを凍り付かせ、動きを鈍らせる。
「やることはどシンプル!」
 そのうちの1体、動きを止めて思うように飛べずにいたワイアームに、敵から距離をとっていたリリーが魔導銃を向ける。
(双牙さんが狙ってるのを狙えば、事故は防げるはず)
 呪いを込めた弾丸を放ったリリーの一発。
 撃ち込まれた敵は空中や地面を動き回るも、凍った箇所がなかなか溶けずにいたようだった。


 覇竜に生息する亜竜を相手に気を抜けば、瞬く間に餌にされてしまいかねない。
 ただ、歴戦のイレギュラーズは相手の生態を元に、冷静な判断で討伐に当たっていて。
「他に弱点があればいいのだけれど」
 そう考えていたジェックだが、素早さで狭い視界をカバーしていることに気付く。
 つまり、背後から攻めれば相手は容易い。後頭部から狙うのは敵の目、口といった感覚器官。
 ジェックは双牙を気にかけながらも発砲し、敵の頭を撃ち抜いて撃破してみせた。
 一見、順調に討伐を進めているようにも見えたが、敵は中々に手強い。
 シャアアァァ……。
 素早く尻尾を伸ばすワイアームの胴をシューヴェルトが蹴り砕く間に、迫ってきたウイングヒュドラが連続して噛みついてくる。
 リースリットが魔眼の力を使って抑えを試みていたが、視界の狭い双頭の蛇はなおもシューヴェルトへと素早い回し蹴りを繰り出す。
 彼はパンドラの力を頼りとして戦場に留まり、陸鯱へと跨っていた。
 ワイアーム1体が迫っていたが、そちらはリリーが呪いの弾丸をばら撒いてフォローを入れる。
 用意したスキルをループして使用するだけ、リリーはと戦法についてシンプルに考えていたが、最初に飛ばしたファミリアーを使った戦況確認に、仲間や双牙のフォローと、意外にやることは多いと感じて。
「……がんばろっと」
 改めて、リリーは気を引き締め、その場の最善手を導き出して実行する。
 その間も、植木鉢を使うウテナはそこから急成長させた大きな茨をワイアームにぶつけ、その動きを止める。
「あとは先輩達がなんとかしてくれるはず!ㅤうちは決定打とか作れないので!」
 仲間との連携は大事だと胸を張るウテナ。なお、連携するのは2回目とのことだ。
 そして、ウテナの抑える敵と合わせ、リースリットが今度こそウイングヒュドラの気を逸らさぬよう焔の魔法剣で食い止めつつ、霧の如く氷の魔術を展開する。
 ウテナの茨に絡まれた1体が凍ったまま絶命していたが、双頭の蛇は身体を凍らせながらも激しく首を振るって抵抗し続けていたようだった。
 戦いを長引かせれば、亜竜が新たな被害を及ぼす可能性が高いと、クーアは速攻を心掛けて。
「火力による殲滅、これが私の望む戦い方! 火付け人の全力、見せてやるのです!」
 手早く仕留めるべくクーアは仲間と各個撃破を続け、電流と炎熱の術式を魔法剣として敵へと撃ち込み、激しく燃やした1体を完全に沈黙させた。
 ……と、その時だ。
「やああああっ!」
 敵の数が減ってきたと、双牙がイレギュラーズよりも前に飛び出す形でワイアームへと攻撃を叩き込み始めたのだ。
 ウイングヒュドラは思った以上に注意散漫で、躍動して攻撃する双牙に注意を向けていた。
「まずいな」
 シューヴェルトが戦略眼で彼の動きを逃さない。その統率能力もあって、皆が一斉に動き出す。
「…………!」
 ワイアームへと攻撃する直前、双牙へと再度ウイングヒュドラが迫っているのを見て、ジェックが死神の弾丸を。リリーが呪詛の弾丸を叩きこむ。
 シャアアアアアアアアッ!!
 それでも、ウイングヒュドラは止まらない。双牙へと毒の牙を食い込ませる……と思いきや、エアが彼を庇って見せた。
「突出しちゃダメですっ! 命を捨てるつもりですか!!」
 それまで演技をしてでも双牙を見守ろうとしていたエアだったが、さすがにギフトと自己修復を行いながら彼を叱責する。
「あ……」
 今度は助けられたエアに、思わず戸惑いを見せる双牙。
 やや向こう見ずな彼も、さすがに戦闘の恐怖というのを実感したようだった。
 とはいえ、双牙が狙っていたワイアームはウテナの茨が分泌した麻痺毒によってぴりぴりと体を痺れさせていて。
「双牙さんも頑張ってください!ㅤ今だいぶ狙いやすいので!!」
 それを好機とみた無黒が声を上げる。
「チャンス! 畳み掛けるっす! いくっすよ双牙くん!」
「お、おう!」
 気を取り直す双牙が敵に飛びかかると同時に、双牙が指先から伸ばす茨でダメ押しに敵の動きを止めると、双牙が相手の頭を狙ってヌンチャクを叩きつける。
 昏倒する敵はそのまま息絶えたのを確認し、笑顔を見せる双牙へと無黒が呼びかけて。
「さぁ、次行くっすよ双牙くん! これはあとで祝勝会っすね!」
「おうっ!」
 1体を倒したことで、彼も勢いに乗っていたようだ。
(……リリー達がついていくことになってよかった)
 相手の強さを見極めるのもまた強さ。リリーは事なきを得たのを確認し、すぐさまウテナが縛り付けたワイアーム目掛けて射撃を叩き込む。
 流れるような所作で、殺人剣を操るリリーは幾度も刃を突き入れ、その命を完全に絶ってみせた。

 残るウイングヒュドラはリースリットが抑える。
 痺れをもたらす相手の視線が仲間に向かぬよう、敵の側面や背面に回り込んでいたのだが、それが逆に複数の目を持つ敵の注意を散漫にさせてしまう。
 先程から仲間へと茶々を入れていたこともあり、クーアがその視線の先へと回り込む。
 シャアアアッ!!
 注意を引くことはできたが、殺傷力の高いウイングヒュドラがクーアへと激しく噛みつく。
 クーアも気合で耐えようとするが、運命の力を削らざるを得なかったようだ。
 ただ、体力を大きく減らした状態となったのはクーアの思惑通り。
「窮鼠はときにねこすらも噛む。なれば、追い詰められたねこはより恐ろしいのが道理というものなのです!!」
 双牙も無事であり、無黒がカバーに着いたまま。復讐の力を得て、クーアは徹底的にウイングヒュドラを追い込む。
「うち陰湿! 陰湿ハーモニアですね!」
 傷つくウイングヒュドラを、ウテナが茨で縛り付けて離さない。
 束縛した相手目掛け、皆、力の限りを尽くして攻撃を繰り返す。
 思った以上に双頭の翼蛇に手を焼いていたリースリットだったが、ここぞと魔晶剣に風の精霊の祝福と加護の力をのせ、一気に開放する。
 もう1人の自らの可能性を纏い、一気に畳みかけるリースリット。
 シャアアアァァ……。
 荒ぶる風にその体を切り裂かれ、ウイングヒュドラもようやく地に落ち、舌を垂らして息絶えた。
 ようやく難敵を撃破し、リースリットも大きく息をつくのだった。


「っしゃあああ!」
 飛来してきた亜竜の殲滅を確認し、双牙は高く腕を突き出す。
 そんな彼へと、メンバー達は歩み寄って。
「双牙君、助けてくれてありがとうございました」
「助かった。ありがとう」
 何はともあれとエアが礼を告げると、双牙も助けてくれた礼を返す。
「修行もはかどって良かったですね!!」
「やはり、翼を狙って正解だったな」
 いい形で修行を終え、絶賛するウテナ。ジェックは相手の機動力を奪うことで、効率的に討伐ができると実戦を振り返り、アドバイスする。
「流石ですね、双牙さん。……それにしても、この周辺に生息する生物はやはり強い」
 リースリットも彼を褒めつつ、しっかりと主観を語る。
「どんなに強い戦士でも、一対多ではやはり不覚を取ってしまうもの。修行も複数人で戦うのが良いのでは、と思いますが……どうでしょう?」
「あ、ああ……」
 強くなることには貪欲な双牙。褒められてもなお、鼻を高くせずにメンバー達の話に耳を傾けていたようだ。
「でも、リリー達はこれからもっと強い相手と戦うことになるんだよね……」
 そう思うと、双牙のような向上心は必要かもしれないと、リリーは考えていた。
「それはそうと、フリアノンに戻るとしようか」
 長居をしていては、今回の亜竜以上の魔物に遭遇する可能性もあるというシューヴェルトの主張もあり、一行はすぐにその場から集落に向かっていったのだった。

成否

成功

MVP

リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは攻撃にサポートと幅広い活躍を見せたあなたへ。
 今回はご参加、ありがとうございました。

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