PandoraPartyProject

シナリオ詳細

甘い顔にはご用心!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●『楽しい』を探して
 ふん、ふん、ふふん♪
 ご機嫌な鼻歌を響かせて、少女が何かをいじっていた。
「こんな感じでどうッスかね?」
 何もない空間へと手を伸ばし、ぺたぺた、ぺた。
 けれど不可視ではあるが何かがあるらしく、その手は確かに何かに触れている。
 少女が回り込んだりしながらぺたぺたと触りまくること暫し。
「あ」
 唐突に手首の先からが『消え』――不可視の何かを掴んだ少女は、『扉を開くドアノブのように』何かを回す。
 ――ガチャン。
 何かが解ける音がして、少女は現れた『穴』へとピョンっと飛び込んだ。
「ふふふ、見ていろッスよー。エンジョイしまくってるアッシを見せつけてギャフンと言わせてやるッスからねー!」
 くふふっと楽しげに笑った少女は落ちていく。
 ウサギ穴に落ちた少女のように、深く、深く。

 トンッと軽い音を立てて踵を地につけた少女は、辺りを見渡す。
 まず目に入ったのは大きな茶器たちだった。空のティーカップは湯船に出来そうなくらい大きくて、紅茶やミルクのお風呂が楽しめそう。磨かれたカトラリーも少女より大きく、これでは立派な武器である。
 けれどもタワーのようなアフタヌーンティーセットへと視線を向ければ、大きすぎる菓子たちが並ぶ様子に少女は目を輝かせる。 
 そこは『大きなお茶会のテーブルの上』であった。お茶会のテーブルが、どこまでも続くフィールド。ふぅんと小さく口にした少女にも、ひとつ心当たりが浮かんだ。
「グラオ・クローネ用ッスかね?」
 絵本にあった灰色王冠の甘い物語。ROOもゲーム世界ならではの期間限定フィールドを用意して、年に一度のチョコレートの祭典で盛り上がるのだろう。
 となれば、少女はまだ閉鎖されていて、開かれるのを待っていたフィールドに一番乗りで到着したことになる。
「えーっと、座標は……っと」
 きっと此処はまだ誰も知らない場所だから、座標を送りつけて驚かせてやろう。
 最初に教えるのは誰がいいかな。どうしようかな。
「エイラはお姉ちゃんって感じだし……あと……ルフランは拗ねそう」
 ふたりの顔を思い浮かべた少女はメッセージを発信しようとした。
「……改めてお誘い文面を考えるのって、難しいッスね」
 うーんっと真剣な表情で悩む少女は気が付かない。
 すぐ近くに脅威が接近していることになど――。


 >>To.ルフラン
 >>To.エイラ
 (***・***・***)
  この座標に来て欲しいッス!
  きっとびっくr
             >>From.Iduna

 ――――
 ――

 明らかに中途半端なメールを受け取った『波濤なる盾』エイラ(p3x008595)と『決死の優花』ルフラン・アントルメ(p3x006816)のふたりは、指定された座標へとすぐさまアクセスし駆けつけた。
「どうしたの、イヅナさん!?」
「イヅナぁ、何かあったぁ? 大丈夫?」
 見たことのないフィールドに驚いたものの声をかければ、大きなティーカップの後ろからひょこりと発信者の少女が顔を出す。
「イヅナさん!」
「来ないで欲しいッス……!」
 鋭い声に、駆け寄ろうとしたルフランの足が縫い付けられたように止まる。
「アッシ、今汚れてるから……ふたりも汚れちゃうッス」
「汚れてるって……え、どういうこと?」
「……笑ったら駄目ッスよ」
「笑わな……って、なぁに、その姿。あっ、ごめん笑っちゃった」
「エイラぁ! ルフランがひどいッス!」
 まさかドロドロのチョコレートまみれの姿で出てくるとは思わなかったルフランに、頬を膨らませたイヅナ。ふたりを交互に見たエイラは「とりあえずぅ、イヅナぁ。チョコ、落とそっかぁ」と提案するのだった。

「ふたりが来るまでにちょっと見て回ったんスけど」
 イヅナは見たものをふたりへと伝える。
 イヅナの見立てではここは期間限定イベント用フィールドであり、一般開放前なため、抜け穴か座標を直接入力しないと入れない。
 そして困ったことに、凶暴(?)なモンスターが闊歩しており、イヅナはチョコレートまみれになってしまった。
「アレ、バグッスよ」
 指差すのは、ドシーンドシーンと歩き回る『チョコレート』。
 きっと他のお菓子同様大きなお菓子として用意された筈なのにモンスターとして動き出し、見つかると襲いかかってくるのだそうだ。
「たぶんこのままだと皆がイベントを楽しめないと思うッス」
 せっかく見つけた楽しそうな場所なのだ。出来れば皆も楽しめるような場所にしたい。
 だからふたりには、アレを倒してくれそうな知り合いに連絡をつけてほしい。
 強いチョコレート臭を漂わせ、イヅナはお願いするッスと両手を合わせるのだった。

GMコメント

 ごきげんよう、イレギュラーズの皆さん。壱花と申します。

●目的
 チョコレート・モンスターたちの殲滅

●フィールド
 『可笑しなお菓子の国』という、バレンタイン期間限定用のフィールド。
 地面は果てしなく続く、チェス盤めいたテーブル。
 自分よりも大きな茶器に、お菓子たち。
 本来ならば、お腹いっぱいお菓子を召し上がれ☆なフィールドなのですが、開発途中でバグが発生してしまったのか、チョコレート・モンスターが闊歩しています。
 このフィールドはバレンタインに一般開放される予定なので、皆がバレンタインを楽しむためにもモンスターのお掃除が必要となります。また、モンスター(特に液体)がチョコレートをぶちまけると辺り一帯がチョコレートまみれになりますので、転ばないように気をつけてくださいね!

●『パラディーゾ』火星天 イヅナ
 シナリオ『<ダブルフォルト・エンバーミング>熱砂の蜃気楼』にて倒されたパラディーゾ、原動天『リュカ』をアニキと慕っている褐色肌の少女。バグNPC。
 本人にその記憶はありませんが、元盗賊の娘。『リュカ』に拾われたところから『イヅナ』は歩み始めました。
 そして今、イレギュラーズたちと友達になり、アニキの願った生き方が出来るよう、楽しいことを模索し――新フィールドを掘り当てました。

 短剣でチョコレートたちと戦います。固いのを粉々にするのは得意ですが、その後だったり液体の相手は苦手です。火星天なのでBSに掛かりにくいのですが、【チョコレート】には掛かります。というか既に掛かっています。

・関連シナリオ『砂漠の睡恋花』
 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/7145

●チョコレート・モンスター ×30体
 人型(ジンジャーブレッドマン)、動物型、液体(ドロドロ)のチョコレートたちです。ROOの危機を乗り越えたイレギュラーズたちなら、高火力で叩けば倒せることでしょう。
 しかしチョコレートなので、粉になっても再生します。(不殺必殺でもすぐに襲いかからないだけで再生します。)塵も残らない勢いで消し飛ばすことによって完全に消滅します。尚、砕いたり脆くしてから高火力ドーン!等が効果的です。
 1体1体の大きさは2~3mです。まとまって行動はせず、自由に徘徊しています。
 BS【チョコレート】…リスポーンしても数日間チョコレート臭が消えなくなります。

人型、動物型
・『殴る』『突撃』…固くて痛いです。
・『Cビーム』…チョコレートを噴射します。【チョコレート】【ショック】【魅了】

液体
・『Cスプラッシュ』…アツアツのチョコレートの雨が広範囲に降り注ぎます。
          【チョコレート】【業炎】【魅了】【泥沼】
 ※C=チョコレート

 一足お早くチョコレートシナリオとなります。
 それでは、楽しく素敵で物理的に甘いプレイングをお待ちしております。

  • 甘い顔にはご用心!完了
  • GM名壱花
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年01月25日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

パンジー(p3x000236)
今日はしたたかに
ザミエラ(p3x000787)
おそろいねこちゃん
ハルツフィーネ(p3x001701)
闘神
ルフラン・アントルメ(p3x006816)
決死の優花
とっかり仮面(p3x007195)
よう(´・ω・`)こそ
シュネー(p3x007199)
雪の花
エイラ(p3x008595)
水底に揺蕩う月の花
アマト(p3x009185)
うさぎははねる

リプレイ

●倒しちゃえ!
 大きな大きなティーカップ。
 たくさんのティーカップが積まれたカラフルなタワー。
 幾重にも花弁が重なったようなケーキスタンド。
 そのどれもが大きくて、そしてそこに淑やかに鎮座する愛らしいケーキを始めとしたお菓子たちも、何もかもが大きかった。そう、まるで『Drink Me』を飲んでしまったお伽噺の少女にでもなったかのように。
「皆様はもう先に戦っていらっしゃいますのよね?」
 探索するだけでもとても胸が踊るが、それは後のお楽しみ。甘い香りを胸いっぱいに吸い込んで、わたくしも加勢致しますと『雪の花』シュネー(p3x007199)は意気込んだ。
 発信された救援要請を受け取ったイレギュラーズたちは、特殊なフィールドへと次々と到着していた。途中送信されたイヅナのメールとは違い、『決死の優花』ルフラン・アントルメ(p3x006816)と『水底に揺蕩う月の花』エイラ(p3x008595)の発信したメールは完璧で、何をすればいいのかがちゃんと記してあった。
 件の発信者たちは既に探索して敵――闊歩するチョコレート・モンスターを倒して回っていること。そして皆にも到着次第手分けをして倒してほしいこと。それが確りとメールに綴られていたため、受け取ったイレギュラーズたちは到着してすぐに行動に移せたのだった。
「お茶会にはとても良い雰囲気の場所ですね」
 さした日傘をくうるりと回し、『闘神』ハルツフィーネ(p3x001701)はカラフルなドラジェがたくさん乗った硝子のグラスを見上げた。パステルカラーの可愛らしいドラジェたちは、可愛らしいのにその一粒一粒がハルツフィーネの顔よりも大きい。
 けれども小人になった気分でお茶会をするのならぴったりだし、ハルツフィーネはこういった雰囲気は好きであった。きっとお茶会をしたらとっても楽しいし、お腹いっぱいお菓子が食べられるのも魅力的。――しかし、ひとつだけ不満がある。
「クマさんはいないのでしょうか」
 もしその場に執事や給仕を行うものがいたのなら、きっと『いますよ』と返ってきたことだろう。けれど彼等はそこになく、ハルツフィーネの側には彼女の『クマさん』が寄り添うのみだ。
「……クマさん柄の茶器とか、カトラリーとか……」
 探せばあるかもしれない、とハッと閃いたハルツフィーネ件のチョコレートを探しながら茶器のチェックもしていきましょうか、とエナメルの靴がカツリと楽しげに踵を鳴らした。
「季節限定イベント用のフィールドにバグが発生。このままじゃ皆が楽しめないから、ちゃーんとお掃除しなきゃね」
「バレンタインのフィールド……とってもとっても楽しそうなのです。でも、これじゃあ、みんな楽しめなくって困っちゃいますね」
 猫耳揺らす『今日はしたたかに』パンジー(p3x000236)と兎耳揺らす『うさぎははねる』アマト(p3x009185)は、元よりこのステージにピッタリのような愛らしさ。
 けれどもドシーンドシーンと歩くチョコレート・モンスターの音がピコピコ揺れる耳が拾ったならば、ふたりはその手に『悲奏サイレンス・カリオン』と『マジカル★イースターエッグ』を構えて迎え撃つ。
「これは、本当に大きなチョコレートですね。食べられるのでしょうか?」
「どうなのかな。匂いはチョコレートそのものだけれど……とにかく、数をへらさなきゃ。なるべく巻き込まないようにして……と」
「あちらからも来ます! アマトはあちらを攻撃しますね」
「うん、お願い!」
 ふたりは背中合わせに、ジンジャーブレッドマンに似たチョコレート・モンスターへ出会い頭のご挨拶(ファースト・アタック)をお見舞いした。

「ちゃんとメールしておいたよ、イヅナさん。手分けして倒してくれるはずだから、思ったよりも早く終わっちゃうかも」
 甘そうなキャンディたちをチョコレート・モンスターにぶつけたルフランの横を「助かるッス!」と口にして駆けたイヅナが、ジンジャーブレッドマン型のチョコの首を切り落とした。
「それにしてもさっきのイヅナさんってばチョコまみれで……あっだめ思い出すと笑っちゃ、ふふっ」
「ルフラン、笑ったら駄目だよぉ。イヅナがぁ、すごい顔してるよぉ」
「あっごめん……って、イヅナさん何してるの?」
「今、ルフランに呪いを掛けたッス。ルフランは絶対にチョコレートまみれになるッス」
「ええ!?」
 勿論イヅナにはそんな能力はないから、両手をルフランに向けて『チョコレートまみれになれーチョコレートまみれになれー』と念じるだけである。
「ええー、やめてよー。とにかく倒すの頑張ろ? ね? 頑張ろ、おー!」
 呪い(?)を送るイヅナの腕を掴んでオーっと一緒に上げるが、イヅナは「頑張るッスけど、ルフランはチョコレートまみれになるッスよ」とまだまだジト目である。
「ふふ、みんなチョコレートになっちゃったらぁ、エイラもチョコレートになっちゃおうかなぁ。エイラならぁチョコレートゼリーかなぁ?」
 ぷかぷか浮かばせたくらげで遠くの敵を引き寄せて、エイラが伸びやかながらも楽しげに口にする。近くの敵の引き寄せは、ルフランの担当だ。ふたりが引き寄せ、イヅナが駆けてチョコレート・モンスターにトドメをさしていく。
「あ! ドロドロがいるッス!」
「ああー、やっぱりいるよね、チョコだもんね……」
「イヅナぁ、短剣刺さるぅ?」
「アッシ、アレはパスッス。刺さっても切れ味鈍るッス……」
 それじゃあこっちに向けるねぇと、エイラがドロドロのチョコレート・モンスターへとくらげ火を当てて注意を引いた。
 そこに。

 ――ガガガガガガガガガガガガ!!

 突如響くガトリング音!
 びちゃびちゃと飛び散るチョコレート!
「正義のヒーローとっかり仮面ただいまさんじょーだぜ!」
「ひえ……!」
「チョコ飛び散ってるぅ~」
「だいじょーぶかー、ルフラーン! みんなー!」
「とっかり仮面さんだ!」
 積み上げられたティーカップの上、何かがキラリと輝く。
 そう、あれはガトリング。正義のヒーロー『よう(´・ω・`)こそ』とっかり仮面(p3x007195)が構えるガトリングである!
 高い位置で逆光になっている彼の姿が見えないイヅナが「何スかアレ。アザラシ?」と目を細めているが、ルフランは元気に手をブンブンと振っている。
「とっかり仮面さん! あたしが集めたチョコレート・モンスターへお願い!」
「了解だぜルフラン! いくぜー! 遠慮なくうつぞうつぞー!」
 ダダダダダダダダダダダダダダダ!!! と盛大にガトリングがうなれば、射線上にいるチョコレート・モンスターたちがびちゃびちゃ飛び散ったり、チョコ片が飛び散っていく。
 チョコレートの嵐は、まだまだ収まらない。すごいアザラシッスね……と何とも言えない視線を向けながらもイヅナが攻撃を受け流して距離を取ったチョコレート・モンスターが『爆ぜた』。――正しくはチョコレート・モンスターに突き刺さった硝子のナイフが、だが。
 それと同時に滑り込むのは、特徴的な煌めく髪。素早く集められたチョコレート・モンスターたちの中に飛び込んで、細かな硝子片がキラキラと舞い散りながらチョコレート・モンスターたちを切り刻んでいく。
「やっほーイヅナ! お久しぶりね!」
 ずばばばばーんっと弾け飛ぶチョコレート片たちを確認することもなく跳ねるようにイヅナに近寄った『硝子色の煌めき』ザミエラ(p3x000787)は、彼女の手を取るとブンブンと上下に振った。
「ザミエラ! 来てくれたんスね!」
「当たり前じゃない。元気そうだし……それにこんなに甘い匂いさせちゃってもう!」
 私もお揃いになっちゃおうかな、なんて明るく口にすれば、イヅナは勝手に匂いがするようになるッスよ……と少しだけ遠い目をした。
 ルフランとエイラがチョコレート・モンスターを集めれば、その戦闘音でイレギュラーズたちが集まってくる。……集まってくるのはイレギュラーズたちだけでなくチョコレート・モンスターたちも来てしまうのだが、探し回るよりは一網打尽にできるならしてしまった方が早く終わって都合が良い。
「みなさま、ここにいたのですね。アマトも加勢するのです」
 メールを受け取ったイレギュラーズたちも全て揃い、お掃除大作戦は加速した。

 ――――
 ――

「わあぁ! 沢山来すぎちゃった! イヅナさん助けて! みんな助けてー!」
「ビーム打とうとしてるッスよ!? こっちに来たらアッシたちが巻き込まれるッス!」
「わ、すごぉい。チョコレートなのにビームを撃つのね!」
 わーわー騒ぐ、ルフランとイヅナ。側に居たザミエラは何だか楽しそう。
 パンジーはササッと大きなティーカップの裏に隠れてビームを避けたが、とっかり仮面はガトリング乱射に夢中になっている間に浴びてしまう。しかし気にしていないのか、「うひー、チョコまみれだぜー!」と楽しげに笑ってガトリングをお見舞いしていた。
 液体のチョコの雨が降る中、もふっと抱きかかえて庇ってくれるクマさんに、ハルツフィーネは「クマさん、ありがとう」と頭だけは守れるようにと日傘をさしてあげる。
 そうしてふと視線を横へと向けた時、彼女は見つけてしまった。ノッシノッシと歩いてくる新手のチョコレート・モンスター――木彫りのクマタイプのチョコレートを――!
 ここで会ったが百年目、という言葉がある。縁もゆかりもなく、宿敵というわけではないが、出会ってしまったら戦わねばならない相手というものがある。
「クマさん……、いけますね?」
 こくりと頷くクマがハルツフィーネを守るように前に出、テディベアタイプのクマと木彫りタイプのクマの仁義なきチョコレートバトルが始まった――みたいなノリなバトルであった。
「うええべとべと! 引き付けてるからどかんと誰かー! ぴえーん!」
「もう少しです、頑張りましょう!」
「ルフラン様、あとちょっとの辛抱なのです!」
 えいやーっとアマトがチョコレート・モンスターを打ち砕き、ちゃっかりティーカップに隠れてビームを避けたシュネーはビームを浴びてチョコレートまみれでべそべそしているルフランへと癒やしを与えた。ルフランもルフランでべそべそしながらもちゃんと林檎を降らして役目を果たしている。
「お、ルフランもチョコリス状態だな!」
「どーーーーんっといくわよ!」
「これで、消えて頂戴!」
 ルフランに当たらない範囲でガトリングが乱射され、またもチョコレート・モンスターの群れへと飛び込んだザミエラと勇敢に前に出たパンジーが一掃する。
「イヅナぁ、エイラもチョコ味になっちゃったよぉ」
「殆どの人たちがお揃いッスね!」
 此処に居るイレギュラーズたちはみんなチョコレートの匂いに鼻が慣れてきてしまっているけれど、外に出たら少し大変かもしれない。なんて事を考えて、くすくす笑いながら短剣を振れば、合わせるようにエイラが金の瞳を光らせた。
「クマさんはチョコレートがかかっても可愛いですね」
 木彫りクマに勝利を果たしたハルツフィーネは少しご機嫌で。
「それじゃぁくまさん、砕くのはお願いねー」
「任せてください。クマさんの得意分野です」
 チョコレートアイスになったチョコレート・モンスターをどーーんっと粉砕した。

●食べちゃえ!
 かなり念入りに歩き回り、もうチョコレート・モンスターがいないことを確認し、後は掃除だけだとを言おうとしたイヅナに衝撃が走った。
「え……食べるんスか……?」
「え? 食べないの?」
 きょとんとさも当然のような顔をしたルフランを見て、他のイレギュラーズたちへも視線を向ける。
「甘くて美味しいわよ、イヅナ。……ねぇだれか大きめ容器とか持ってない?」
「イヅナぁ~、せっかくだからぁ少し食べちゃおっかぁ?」
「みなさまが頂くのなら、アマトも口にしてみようと思いますっ。みなさまと食べるチョコレートはきっと『おいしい』ですよねっ」
 ザミエラもエイラもアマトも食べる気らしい。
(ええっ、イレギュラーズってみんなそうなんスか!?)
 バッと向けた視線の先ではハルツフィーネが何やらクマを置こうとしているし、シュネーは既に味見をしているし、持ち帰ろうとするザミエラにパンジーが私も持ち帰ろうかなと話している。作り直して、奉仕活動の一環として信者たちへと配るのだそうだ。
 イレギュラーズたちは皆自由だ。……自由すぎる。
「イヅナは……そうだな、イノシシとかを倒したら食べない派か?」
「……食べるッスね」
「そういうことだ」
 とっかり仮面にそう言われれば、「言われてみればそうかも」な気分になってしまった。……これ以上のツッコミは不要だと思ったのかも知れない。ひとりで抗うより、流されてしまった方がきっと楽だ。
「イヅナ様は何が好きですか?」
 好きなおやつを出しますよ、と甘い色の瞳を和らげて微笑んだアマトに、イヅナはぱちりと瞳を瞬いた。
「うーん、甘いのは何でも好きッスけど……あ、そうだ。クッキーがいいッス。クッキーにチョコをつけて食べるのはどうッスか?」
「わあ、名案!」
「クッキーですね」
 ポンッとアマトが出したクッキーにチョコレートをコーティングすると、いくらでも食べれてしまいそうだ。
「イヅナも良かったら持って帰ったら?」
 お菓子作りとかしてみるのもきっと楽しいわよとザミエラが笑う。
「アッシ、料理はしたことがないッス」
「それなら尚の事やってみなくちゃ!」
「クマさん型のお菓子作りなら、私もお手伝いしますよ」
「わたくしもお手伝いします!」
 みんなが手伝ってくれるのなら、出来るのだろうか。
(イヅナはやっぱりアニキにチョコ、供えるのかなぁ)
 首を傾げるイヅナを見て、事前に尋ねると隠されてしまうかもしれないから当日聞いてみようかな、なんてエイラは思う。お姉ちゃんはお見通しなのだ。
 甘いチョコを囲み、みんな明るく笑い合う。
「今日はすっごく楽しかったよね!」
「明日ももっと楽しくするッスよ! でもその前に、ここの掃除ッスね」
 チョコレートを食べて休憩したら、散らかしたチョコレートの片付けをしなくてはならない。イレギュラーズたちと一緒にえいえいおーと腕を振り上げたイヅナを見て、しおれかけた花がまた新たに咲いたのを見つけたような心地で、ルフランは幸せそうに笑った。流した涙で固まらない地もあれば、流した涙を受けて咲く花もあるのだ。
 賑やかにチョコレートを味わう仲間たちを見て微笑んだパンジーは、そっと手を組み瞳を伏せて神へと祈る。
 ――当日のイベントも成功しますように。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

皆さんのお陰で期間限定フィールドのお掃除が出来ました。
一緒にワイワイ出来た時間も、イヅナにとっての楽しい思い出のひとつです。

お疲れさまでした、イレギュラーズ。

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