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シナリオ詳細

雪に薫る湯気の影

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●雪に薫る湯気の影
 鉄帝国北東部、『ヴィーザル地方』。
 厳しい波、寒風が吹きすさぶ海が間近に荒れ狂い、この地に住まう人々の多くは荒波に負けない様に船に乗り、漁獲物で生計を立てている村がまぁ多い。
 しかし、そんな漁獲物以外で生計を立てている村も居る。
『いらっしゃいませぇ~……ほーら、暖かい温泉に入って行きませんかぁ~!』
『皆さん寒い雪の中お疲れ様でしたぁ~。暖かいお風呂に入って暖まっていって下さいねぇ~!』
 柏手を打ちながら、村を訪れる人々を招き入れる。
 そう……ここは珍しく『温泉』が湧き出る地域。
 土地資源に恵まれたこの地は当然ながらその資源を有効に活用し、『ノクローズ温泉郷』と言う名で上手く周りに売り込んでいる。
 勿論、寒風吹きすさぶ厳しい土地故に、訪れる人はそこまで多く無い……だからこそ知る人ぞ知る秘湯的な扱いで、鉄帝国の様々な地からちらほらと、ではあるが人々は訪れてくれていた。
 ……しかしながら、そういう噂話を聞きつけたら、それに酔ってくる無粋な輩も居る訳で。
『ほぅー……中々景気良い話じゃねぇか? それを横取りすりゃぁ、坊主丸儲けって訳か……面白え!!』
 片目に傷を負い、筋骨隆々な男がニヤリと笑みを浮かべる。
 そして彼は、配下の者共に。
『よーっし、んじゃあ一丁殺っちまおうぜぇ!! 村の奴らを全員殺しゃー、何であろうと俺達のもんだしな!!』
『おーーっ!!』
 意気揚々と武器を掲げるは、ノーザンキングスに属する『セーヴルー』一族。
 そして彼らは、村人達が寝静まった深夜の刻に村へと向かうのであった。


「イレギュラーズの皆さん、ここ最近ほんっとうに寒いですよね! そんな寒い日には、暖かい温泉に入るのがいいのですよ!!」
 と、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は、集まったイレギュラーズの皆に声を掛ける。
 確かにこんな寒い時期に温泉に入るのは至高。
 ただ今回、『灰色狼』アセナ・グリ(p3p009351)が持ち込んできたのは、そんな温泉の噂話。
「ええと……ヴィーザル地方のノルダインの一角にある『ノクローズ温泉郷』って皆知っている? ここって鉄帝国に最近話が伝わり始めた、温泉で村おこしをしている村の様なの」
「やっぱり雪と言えば温泉だと思うのよね? まだ知名度も少ないこの村に、折角だから皆と一緒に言ってみたいな、って思ったの。でも……何か嫌な気配がするのよね?」
「これが杞憂だったらいいんだけれど、こういう嫌な勘って当たるものなのよね……という訳で、一緒に来て欲しいって訳なのよ」
 獣の勘ならぬ、ブルーブラッドの勘。
 そして、ユリーカも。
「まぁイレギュラーズの皆さんにはいつもいつも御世話になってますし、粉にも起こらなかったら慰安旅行って事で構わないのです! という訳で、皆さん宜しく頼みます、なのですよ!!」
 満面の笑みを浮かべ、ユリーカは皆を極寒の温泉へと送り出すのであった。

GMコメント

 皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)と申します。
 雪国の温泉って……風情あって良いですよねぇ……。
 私はスキーに行った後に、絶対に温泉に行ってます。

 ●成功条件
  ノーザンキングスに属する『セーヴルー』一族の、村の襲撃を撃退する事です。

 ●情報精度
  このシナリオの情報精度はBです。
  依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 ●周りの状況
  周りは根深い雪で覆われた『ノクローズ温泉郷』が今回の舞台です。
  温泉郷とは言いますが、小さな村一つの構成なので、山奥の秘境温泉旅館……みたいな感じの場所になります。
  皆様は事前に温泉郷に到着しており、その日の夜に『セーヴルー』一族が攻め込んでくるという流れになりますので、温泉も十分愉しんで戴けるかと思います。
  尚、『セーヴルー』一族が攻め込んでくる時間は深夜の刻故、村の人々は全員寝静まっている状態です。
  事前に避難させようとしても、『そんな訳ねぇ』と避難してくれる可能性は殆どありませんので、防衛戦の作戦を立てて戴ければと思います。

 ●討伐目標
  強奪戦闘民族『セーヴルー』一族
   片目に傷を負った、隻眼の大男率いる戦闘民族です。
   武器は様々ではありますが、基本的には力尽くで振り回したり、叩ききったりというパワープレイな攻撃手段がメインです。
   当然そんな攻撃手段で攻撃すれば、温泉施設の被害も免れませんので、出来る限りそれを止めて戴く必要があります。
   こんな出で立ち故攻撃力と体力が高いですが、回復手段は持って居ません。正しく『攻撃こそ最大の防御』というイメージを地で行く戦闘方法になります。

 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • 雪に薫る湯気の影完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年01月29日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
夜式・十七号(p3p008363)
蒼き燕
アセナ・グリ(p3p009351)
灰色狼
イルマ・クリムヒルト・リヒテンベルガー(p3p010125)
生来必殺

リプレイ

●北の癒しを
 鉄帝国北部に広がるヴィーザル地方。
 冬のこの季節になれば、ほぼ常に寒風が吹きすさぶ。
 そして、そんな地方で生きる人々の生活の糧と言えば、主たるは海に出て海の幸を取る漁業。
 そんな厳しい環境故に、それで命を亡くす者も居れば、その釣果だけをかっ攫って我が物にし、正しく漁夫の利を得ようとする様な輩達が出てくるのもまた日常。
 ……しかしここ、『ノクローズ』の村は漁業に手を割く訳でもない。
 地中深くから湧き出した温泉という資源を活かし、温泉郷をこの地に産み出す事で、他の苦しむ地域とは違う特色を産業にして生きる糧を紡いでいる。
 そんな温泉郷の生活を『楽して稼げる』、となど思ったノーザンキングスの者達が出てくるのは……まぁ、仕方ない事だろう。
「……全く、蛮族共が温泉旅行とはな。反吐が出る」
 と、かなり辛辣な言葉を吐き捨てたのは『紅い怨念』イルマ・クリムヒルト・リヒテンベルガー(p3p010125)。
 それに『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)も。
「そうでありますな。この様な美しい温泉郷を作り上げたのは、こののクローズ村の村民の方々の成果であります。そんな温泉で喧嘩とは……無粋極まるでありますね」
 二人の言う通り、ただ温泉があるだけでは努力せずに生活の糧を稼げる訳はない。
 人々が泊まる旅館を建てたり、宿泊する人への食事を周りの村から購入してきたり、岩を組み上げて露天風呂を作ってみたり……そんな村人達の努力をすっ飛ばし、甘い汁だけを吸おうという魂胆は……許せるものでは無かった。
「本当、奴らには極寒の雪原で野垂れ死ぬのがお似合いだ。ここで散って貰おう」
「ええ。湯治の醍醐味を知らないと言うのなら、わかるまで言い聞かせてやるであります。殴って」
 鉄拳制裁の拳を握りしめる二人。
 そう、強く怒りの思いを抱く二人に対して、村人達が丹精込めて作り上げた温泉施設の門構えを見渡しながら。
「おお、これは……見事な温泉だ……」
「そうね。見事な温泉ねぇ……これならゆっくりとくつろげそうね?」
「そうだね。最近ハードな仕事が続いたし、ありがたいよね!」
 『蒼き燕』夜式・十七号(p3p008363)と、『灰色狼』アセナ・グリ(p3p009351)に、『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)は満面の笑みで答える。
 更に。
「温泉! 冬となればこれほどありがたいものはないな!」
「ええ。慰安旅行ですか……宵ですね。厳しい戦いも多かったので、有り難い話です」
「そうだな。仕事に託けて慰安旅行が出来るというのなら、参加しない手は無いよな。露天風呂にゆったりと浸かりながら舞い散る雪を眺めるだなんて……中々に乙なものじゃないか?」
「そうですね。温泉に浸かって美味しい物を食べて、お酒も呑んで……たまにはそんな贅沢も良いでしょう。しかし、イレギュラーズが8人組で送られた先において、何も起きない筈がありません。経験から判ります。いつも、間違いなく、絶対に、面倒が起きるのです」
「そうだな。人が集まるのは当然として……賊も集まってくるものよな」
 『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)、『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)、『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)の三人の会話。
 それにアセナが。
「そうなのよね……ゆっくりしたいと思うのだけれど、何だか嫌な予感はするのよね。なんだか凄く落ち着かない……尻尾の毛も立っているし。こんな気持ちじゃ、心身ともにくつろげないじゃない……」
 言いようのない不安を口にするアセナ。
 彼女を元気付ける様にマリアが。
「そうだね。アセナ君の嫌な予感が外れるといいのだけど……」
 と元気付けると、それに世界が。
「ん……事件なんて滅多に起きるものじゃないし、今回は存分にだらだらさせて貰う気だが?」
 と苦笑する。
 ……だが、そんな世界の目前を。
『……にゃー』
 とててっ、と真っ黒な黒猫さんが横切っていく。
「っと、危ない……なんだ猫が横切っただけか」
「……それって良く、不吉な事が起きる前兆とか言うが、大丈夫か?」
「大丈夫だ。多分」
 百合子に乾いた笑いを浮かべる世界。
 ともあれ、今回はアセナの胸騒ぎが杞憂ならばそれで良しで慰安旅行になれば良し。
 ノーザンキングスの者達が来るのならば、温泉客を装いながら、しっかりと彼等を撃退すれば良いだけの事。
「そうだな。ま、酒は私はまだ飲めないから遠慮させて貰うが、少しは湯を満喫したってバチは当たらないだろう?」
「ええ……いいと思います。そして面倒を起こしたのがノーザン・キングスの連中なら……生きて帰しませんから」
 並々ならぬノーザン・キングスに対する怒りを滲ませるオリーブ。
 そんなイレギュラーズ達の内なる思いは様々だけれども……努力している村人達を護る為にイレギュラーズ達は、『ノクローズ温泉郷』の門を潜るのであった。

●ぽかぽかの湯旅
『いやぁー……そんな遠くから来て頂けたんですかぁー! 本当、ありがとうございますですよぉ~!』
 と、訪れたイレギュラーズ達をお客さんとして、歓迎する村の人々。
 彼等からすれば、村が襲われるだなんて思って居ないので、極々普通にお客さんとして歓迎をするがのみ。
 それにこんな厳しい環境だからこそ、あまり訪れるお客さんは多く無い模様で、他のお客さんはと聞くと。
『いやぁ~……今日は来てないですねぇ~……』
 と苦笑する村長兼、温泉施設の館長さん。
 そんな村人達の歓迎を受けたイレギュラーズ達は、先ずは温泉へと入浴。
 眼前に広がる一面の雪景色……そして湯気が立つ温泉が、その身をぽかぽかに暖めてくれる。
 ……そんな温泉に肩までゆったりと浸かりながら、マリアは。
「あぁ……いい湯だね……これは生き返るよ……」
 すっかり温泉を満喫するマリアに、十七号も。
「そうだな……本当に良い湯だ。ゆっくり浸かるとしよう……そういえば、マリアはお酒は呑まないのか?」
「ん? ……まぁ、何もなければ飲んでもいいんだけど、今回は遠慮しておこうか。一応はね、警戒しておかなきゃだし! それにしてもいい湯だなぁ……」
「確かにな……アセナの嫌な気配というのが気になる所だ。今迄のローレットの依頼に的が居なかった事は少ないからな……ゆっくりしたら早目に寝て、仮眠を取って置くとしようか」
「そうだね。村を襲うなら、村の人々が大部分寝静まっているであろう深夜に来るってのが常套手段だ。その時に眠かったりして実力が発揮出来ないなんて事が無い様にしないとね……終わった後なら、迷う事無くくつろげるだろうしさ」
「そうね……この胸騒ぎが終わったら、いっぱい寛ぐんだから。お婆ちゃんはいつだって、のんびりしたいのよ」
「うんうん、良く判るよ。その為にも常に警戒は怠らないようにしよう」
 アセナの言葉に皆頷き、温泉を満喫。
 その一方で世界は温泉に入る事無く、温泉郷の中や外を散策。
 雪国の隠れ里にあるからこそ、余り見る事の無い光景を楽しみながら散策。
「……」
 目を閉じ、寒風を感じながら聞こえる音に耳を澄ます。
 雪が吹きすさぶ寒い音が聞こえる中に……うっすらと聞こえてくる話し声。
『……えば…………楽…………殺せば…………』
 本当に微かな声だし、意味を聞き取るのもかなり難しいけれど、複数人の声が躱されている模様。
 しかしその声の主が何処に居るかは判らないし、どういった奴かも判らない。
「……ま、違う所のノーザンの奴らかもしれんしな。取り合えず、目星は付けておくとしよう」
 微かに声が聞こえた方向を見据えると共に、その方角をメモしておく。
 その方角を仲間達と共有し、時は夕刻、夜と何事も無く過ぎていった。

 ……そして、日付の変わった深夜の刻。
 温泉施設の職員の方々も大体が寝静まっており、静けさに包まれている。
「……そろそろかしらね」
 感じる不穏な気配を一層強く感じたアセナは布団を出る。
 着替えると共に施設の外に出れば……そこには仲間達の姿。
「あら……皆も?」
「ええ」
 静かに頷くオリーブにくすりとアセナは笑いつつ。
「ふふ、一緒なのね。じゃあ、お散歩がてらにお外を歩きましょうか。何事も無ければ、布団に入って寝てしまえば良いのだし」
「そうですね。世界の感じた気配が気になる。そっちの方向を先ずは調べるとしましょう」
 そして二人は、夕方の頃に声がした方向を見渡せる位置に移動。
『良し……皆寝静まっている様だな。んじゃぁ……一気に仕掛けるとするか』
『そうだな! よし、行くぞ!』
 先ほど迄はうっすらと聞こえていた声が、はっきりと聞こえる。
 そして次の瞬間……村の裏手の方角から、一斉に仕掛けてくる『セーヴルー』一族。
 一番人が織らず手隙かと思ったのだろう……だが、彼等が仕掛けてきた方角にすぐ回り込んで立ち塞がるのは百合子。
『何っ……!?』
『くそっ、察知しやがった奴らがいやがったか! でもよ女の一人や二人、殺せばいいだけのことだ、一気に行くぞ!』
 怯む事無く、そのまま攻め込んで来る彼等。
 重そうな斧を全力で振り回して、力尽くで攻撃してくるのだが……その一撃を、拳一発で弾き飛ばす百合子。
『な、何っ!?』
 驚愕の表情の彼等に足し意、百合子は。
「クハッ! 楽な獲物と思うたか! 弱き者しかかれぬ雑魚共め! 否というなら、まずは吾の首を狩ってみせよ!」
 小馬鹿にする様な笑顔と共に、温泉とは逆の方向に走る。
『くそが……ふざけやがって! あいつらを殺す。絶対に殺す!』
 仲間達に大声で指示を与える隻眼の大男と、それに頷き、百合子を追いかける彼の一味。
 ……当然大声で叫ぶ彼等なので、他の場所で警戒している仲間達にも響きわたり。
「皆、あっちだ行こう! あ、施設の皆さんは、待ってて! 私達が必ずここを護るから!」
 そうマリアは仲間達と温泉施設の人達に呼びかけると共に、約束しておいた村の外の背後に木々の生い茂る雪原へと駆ける。
 百合子に誘い出された敵一味は、脇目を振ること無く追いかけていき、両者の待ち伏せ場所へと誘導されていく。
 到着した所で踵を返し、対峙する百合子……そして、追い詰めたと勘違いした敵一族は。
『へ、へへへ……追い詰めたぜ。もう、こっからは逃がさないからな!』
 ニタリ笑顔を浮かべる彼等だが、百合子の笑顔は変わらない。
「追い詰めた? ふっ、貴殿等の背後を見て見るがいい!」
『んぅ……?』
 振り返る彼等の背後に、いつの間にか回り込んでたいたのは……イルマとエッダ。
「背後を顧みる事無く、猪突猛進。いや、猪と比べる程も無い位に、貴公らの脳細胞は小さい様だな」
「ええ、全く。わざわざ敵の居ない温泉なぞを襲おうというのは、多少場数を踏んでいたとて数にも入らぬ弱兵の集まりであります様でありますからね?」
 そんな二人の挑発にうるせぇえ、と怒号を揚げる彼等。
 しかし売り言葉に買い言葉の如くエッダは。
「違う? ハハハ、ご冗談。違うと言うなら、貴様らがその得物で何を手に賭けようとしていたのか言って見ろ。『私はつよいひとにケンカを売るのが怖いチキン野郎なので、武器を持ってない人しか襲えまちぇんバブバブ』以外の事を喋れる者だけが前に出ろ」
 かなり辛辣に罵倒するエッダに、逆上を更に燃え上がらせていく敵陣。
 ……そうしている間に、他の仲間達が敵の退路を防ぐ様に包囲。
『アニキぃ、なんだかいつの間にか囲まれてますぜぇ!』
 それに気付いた敵陣の一人が、悲鳴を上げる。
 そんな彼等へ最後通牒の如く。
「こちらはギルド・ローレット! お前たちは何者だ!? 敵意あるヴィーザルの部族と言うのなら、略奪の前に先ずは我等と決闘をせよ! 部族の誇りを賭けてみろ。こちらから申し込む!」
「そうよ。折角人が楽しんで居る所に襲撃だなんて、お婆ちゃんはすっごく怒っているわ。泣いて謝りながらお宿でマッサージしてくれるまで許しませんよ!」
 十七号とアセナが言い渡すも、敵陣は聞く耳持たず。
『うるせえ!! てめぇらをぶっ殺せば全て解決だ!! てめぇら、死ぬ気で戦え!』
 隻眼の男の号令直下、一斉に攻撃を始めるセーヴルー一族。
 破壊力高い一撃、二撃が連続するが、それら攻撃をカバーリングするはイルマとオリーブ。
「……大した策略は持って以内か。ならば、より効率良く殲滅するに限るな」
「ええ……容赦はしません」
 そしてイルマが敵の足元にライフルの一射を喰らわせ足止めを行うと共に、立ち止まった奴に鮮血の猛襲を叩きつける。
 更に十七号は刀に気を込めてから繰り出す破壊力抜群の一閃を叩きつけると、加えアセナの魔力を載せた光の一射が、その胸を撃ち抜く。
 イレギュラーズの連携で一体が瞬く間に倒れると、流石にその実力差に目を見開く隻眼の男。
「本当、どうしてノーザンキングスは盗賊まがいの連中が多いんだ! 誇りはどこへやった! 戦う力を持たない者ですら、必死に努力し生き抜いているんだ! キミ達ほどの力があれば、自分達が食って行くことくらいなら出来るだろうに!」
『……っ』
 マリアの言葉に一瞬、隻眼の男を見返す敵陣。だが。
『……し、知るかっ!!』
 歯切れ悪く、反論する隻眼の男。
 そんな彼等の一瞬の隙をついて、百合子は隻眼の男の懐へ瞬時に移動。
『何っ!?』
「やぁやぁ吾こそは白百合百裂拳の咲華百合子なり! それなるは一番の使い手とみた! 吾と尋常に勝負せよ!」
『く……そがぁ!!』
 至近距離故、その大きな武器のリーチは逆効果。
 一方で百合子の武器は己が拳……リーチはその拳が届く範囲故、素早く立ち回る事が可能。
 勿論、周りの部下達は守るべく踵を返すが、それを許さぬイレギュラーズ。
「敵前で背後を見せるなんて、自殺行為だぞ?」
 と言いつつ、敵を白蛇で一網打尽に噛みつかせて動きを妨害。
 しかしダメージを喰らった敵陣は回復する事も無い。
「そうか。回復する手段も無いと……戦での準備不足は負け犬の十八番だな」
「ええ。まぁ、弱い者しか相手に出来ないのですから、それも自然な事であります。退く意思も無い様ですので、完膚なきまでに叩き潰すまでであります」
「そうですね。さぁ……怒濤の如く叩き潰しましょう。彼等に生きる芽は与えてはなりません」
 イルマに頷くエッダとオリーブ。
 百合子に隻眼の男を任せつつ、取り巻く配下達を次々と叩きつぶして行く。
 そして……十数分経過した頃には、残るは隻眼の男。
『く……くぅ……』
 片膝突いた彼は、最早瀕死の状況。
「馬鹿馬鹿しい。不愉快だ。死んで詫びるが良い」
 そんなエッダの宣告と共に青薔薇の拳が……敵を打ちのめした。

●湯気立つ郷
「……ふぅ。終わった様でありますな」
 息を吐くエッダに頷くマリア。
「そうだね。疲れた……あと、汗が冷えて寒いね……」
 戦闘している最中に掻いた汗が、動かなくなると途端に冷えてしまう。
「ええ……何だかどっと疲れました。ですがまぁノーザンキングスのこいつらの後始末は自分に任せて頂いて構いません」
「え? 本当にいいのでありますか?」
「はい。幸い自分は寒さには強いので」
 オリーブの提案に、エッダが。
「それなら、もう一度入り直すと致しましょう。一緒に飲む人、この指とまれ!!」
 今迄の落ちついた雰囲気から、急激に元気良くなるエッダ。
「そうですね。やっと心身落ち着けてお風呂に入れるわぁ。お酒も飲めるし……」
「うんうん。もう飲んでも良いよね? ヴァリューシャにお土産も買って帰らないといけないし、残り時間で思いっきり楽しまないとね!」
 アセナやマリアがお酒に飛びつき、そそくさと村へと帰る。
 当然施設の村人達からは……感謝と共にお酒の大盤振る舞い。
 深夜の刻故、景色は余り楽しめないけれど……空に光輝く星々は、寧ろ綺麗に瞬いて見える。
 更に酒をお盆に浮かべて風呂に入りながら一献傾けるのは……至福の時。
「……ふむ。遊んで、休んで良い慰安旅行であったな」
「そうだな。まぁ……この様に仕事終わりにゆっくり出来るのは良い事だ」
 百合子に軽く笑みを浮かべる十七号。
 ……そして朝日が出てくるまでゆったりと湯浴みし、今迄の疲れを癒すのであった。

成否

成功

MVP

エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト

状態異常

なし

あとがき

湯治……いや、ノーザンキングス以来に参加頂き、ありがとうございました!
皆様の英気を養う依頼なんてのも、いいですね……。
少しでも皆様が楽しんでくれたのなら、こちらとしても幸せです。

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