PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ロックゴブリンの暴虐

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ロックゴブリンの恐怖
 ――とある岩山の洞窟に、多数のゴブリンが集まっているといた。
 小柄ながらもゴツゴツとした表皮、醜くひしゃげたその顔。
 額にはねじくれた角が生え、手にしているのは奇妙な形をした鈍器。
 防具は人間から奪ったものを。
 一匹当たりは臆病なクセに、集まればすぐに気を大きくする。
 雑魚。
 小物。
 されど魔物。
 それはまるで人間のように、単体では小さくても、群れれば大きな脅威となる。
 そんなゴブリンがこの夏の夜に岩山に集まって行うこと、それは――

●というわけでゴブリン退治なのです
「――ロックフェスティバルゥ?」
 集められたイレギュラーズの一人が、耳に聞いたその言葉を当然ながら疑った。
 ゴブリンである。
 ゴブリンといえば、あのゴブリンである。
 そのゴブリンが、ロックフェスティバルって何なのさ。
「ゴブリンじゃなくてROCKゴブリンなのです!」
 細かいことであるように思えるが、しかしなかなかの勢いで『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が訂正を入れてきた。
「ロックゴブリンは生き様もROCKなのです!」
 つまり、普通のゴブリンの生態に対してもROCKを貫くゴブリンらしい。
「何とこの夏のゴブリンロックフェスティバルは毎年チケット完売なのです!」
 チケット売るのか!
「転売ヤーも横行していてゴブリン社会で社会問題化しているのです!」
 転売ヤーまでいるのか!!
「会場では毎年屋台も並んでゴブリンB級グルメがズラリなのです!」
 B級グルメなんて生意気な!!!
「でもやっぱり人気なのはゴブリン大企業が参加しているB級グルメなのです!」
 ゴブリン中小企業の躍進は所詮夢なのか!!!!
「以上でROCKゴブリンがいかにROCKかお分かりいただけたと思うのです」
「それ以上にゴブリン社会の世知辛さが垣間見えた気がしたんだが」
 イレギュラーズに言われながらも、ユリーカはフフンとなぜか得意げだ。
「この間見た本に書いてあったので確実な情報です」
 いや、その本がただのトンデモ本である可能性もいやよそうこっちの勝手な予想で皆を混乱させたくない。
 イレギュラーズはそう思った。
「とにかく、大変なのはフェスティバル後なのです!」
「どゆこと?」
「ロックフェスティバルでロックゴブリンが盛り上がるとですね――」
「盛り上がると?」
「ロックゴブリンの興奮が最高潮に達してですね――」
「最高潮に達して?」
「暴徒と化して近隣の人里に押し寄せて破壊と略奪の限りを尽くすのです!」
「そこだけただのゴブリンなのかよ!」
 だが、これ実は結構、シャレになってない話なのでは?
「ふざけてるようで毎年この暴徒化でかなりの被害が出ているのです」
「マジかぁ……」
「なので、暴徒化が発生する前にロックフェスティバル自体をブチ壊してほしいのです」
 ゴブリン的に大人気のお祭りを横殴り。それはそれでまたROCKな。
「ロックゴブリン達が暴徒化したら、さすがに止められなくなるのです。その前に、何とかお祭りそのものを中止に追い込んでほしいのです」
「具体的な方法は?」
「イレギュラーズの皆さんにお任せするのです」
 ――といった感じで、夏のゴブリンロックフェスティバル、開幕間近!

GMコメント

サマーゴブリンロックフェスティバルのチケットは完売したので突撃します。
大体そんなシナリオです。天道です。

いやー、暑い。クソ暑い。これはもう、ロックしかない!
以下、このシナリオの概要でーす。

●成功条件
・ロックゴブリンの暴徒化を未然に防ぐ。
 方法は問いません。単純に戦闘でもいいしそれ以外でもOKです。
 ロックフェスティバルが終わってゴブリンが暴徒化する前に何とかしてください。

●敵
・ロックゴブリン(歌手)×5
 ROCKな生き様を貫くゴブリンです。
 歌手なので楽器を持っています。ギターです。全員ギターです。
 他の楽器なんて高度すぎてゴブリンには使えません。
 戦闘になった場合はギターで殴ってきます。
 低確率でショック・崩れ・混乱のいずれかを与えてきます。

・ロックゴブリン(客)×たくさん
 ROCKな生き様を貫くゴブリンです。
 客なのでタオルを持っています。汚いタオルです。全員汚いタオルです。
 汚いタオルはゴブリンの汗を吸って重くなっているので鞭扱いとなります。
 戦闘になった場合はタオルで殴ってきます。
 低確率で毒・混乱・怒りのいずれかを与えてきます。
 なお、ロックゴブリン(客)は常時恍惚・混乱・狂気状態です。

●舞台
 洞窟の中ですがやたらと広いです。
 軽く戦闘を行なえる程度の広さは余裕であります。
 洞窟の最奥は一段高くなっており、歌手が歌うステージ扱いとなります。
 歌手はこのステージ上にいます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • ロックゴブリンの暴虐完了
  • GM名天道(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年08月01日 21時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)
受付嬢(休息)
アグライア=O=フォーティス(p3p002314)
砂漠の光
アリソン・アーデント・ミッドフォード(p3p002351)
不死鳥の娘
ブーケ ガルニ(p3p002361)
兎身創痍
エイヴ・ベル・エレミア(p3p003451)
ShadowRecon
最上・C・狐耶(p3p004837)
狐狸霧中
イアン・フォン・ベルヌウェレ(p3p006209)
赤銅

リプレイ

●火を噴くロックフェスティバル
 事前に聞いていた話ではあったが、その洞窟はか~なり広かった。
 奥には一段高くなっている場所がある。
 あれがステージで間違いないだろう。雑に組み上げられたかがり火が燃えている。
 そして、
「はぁ~、もうこんなに集まっとるんか……」
 物陰からフェスティバル会場を眺めて、『兎身創痍』ブーケ ガルニ(p3p002361)が感嘆の声を漏らした。
 そこにはゴブリンが集まっていた。
 やたらとゴブリンが集まっていた。
 しかも見える範囲では全員が首に小汚いタオルを巻いて、場に渦巻く何とも言えない臭いがここまで届いてきていた。
「……始まるみたいだぞ。みんな、準備はいいな?」
 ステージ上にいびつな形のギターを持ったゴブリンが上がるのを見て、『赤銅』イアン・フォン・ベルヌウェレ(p3p006209)が他の全員へと促す。
 場にいるイレギュラーズ、イアンを除く七人全員が揃ってうなづいた。
 今まさに、ステージ上ではロックフェスティバルが始まろうとしている。
 すでに客席側のゴブリン達は汚いタオルを振り回し、盛り上がり始めていた。
「ゴブゴブ!」
「ゴブゴブゴブゴブ!」
「「「ゴーブゴブ! ゴーブゴブ!」」」
 盛り上がり始めていた。
「「…………」」
 イレギュラーズほぼ全員の目が、そこにいる『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)の方へと集められる。
「……何だよ」
 居心地の悪さを感じてギトーが問うと、ほぼ全員が声をそろえた。
「「ゴブゴブ言わないのかなって」」
「在来種と一緒にすんじゃねぇ!」
 外来種には外来種のプライドがあるらしい。
 とはいえ、ゴブゴブ言うのがゴブリンのスタンダードなのかは定かではないが。
 ギュイイイイイイイイイイン!
 そのときだ。
 洞窟内に音が響いた。ステージ上、小汚いギターを持っているゴブリンが奏でた音だ。
 いよいよ、ロックフェスティバルが始まるらしい。
 イレギュラーズは揃ってうなずいた。待っていたのは、まさにこの瞬間だった。
「「その演奏、待った――――!」」
 叫び、そして飛び降りる。
 彼らが陣取っていたのは、ステージ直上にある岩陰だったのだ。
「ゴブ! ゴブゴブ!?」
「ゴブー!」
 いきなりの声に、ゴブリン達は驚愕する。
 今がまさに隙。
 この一瞬を見逃すまいと、イレギュラーズはステージの上に堂々と立った。
「ロックンロールの達人、ロックゴブリンズ! ――だがその腕前、混沌じゃ二番目だ!」
 まず叫んだのは、『悪意の蒼い徒花』クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)。
 観客から寄せられる「だったら一番は誰だ」という視線に、彼女は答えた。
「――我ら!」
 親指で自分達を示し、そして、
「さぁ、バンド対決よ! まさか逃げるなんてロックじゃないこと、しないわよね?」
 挑発を交えて、『不死鳥の娘』アリソン・アーデント・ミッドフォード(p3p002351)がステージ上のゴブリンに指を突き付けた。
 観客席からざわめきが起きる。
 一方で少し離れた場所からはソースの焼けるいい匂いが漂ってきていた。
 B級グルメ、そういうのもあるか!
「いいぞーゴブ! やれーゴブ!」
 観客席からも、対バンを望む声が上がった。
「勝負から逃げるなんてロックじゃないゴブー!」
 その声はたちまち客席全体へと広まって、対バン希望が観客の大半を占める。
「――任務、完了」
 実は客席で最初に対バン希望の声を上げたのはゴブリンではない。
 あらかじめ、他のイレギュラーズとは分かれて客席に交じっていた『ShadowRecon』エイヴ・ベル・エレミア(p3p003451)の仕業であった。
 やっていることはまるっきりサクラだが、これが恐ろしいほど効果的だったのだ。
 相手はすでにボルテージが上がりきっているロックゴブリン達。
 それは言うなれば揮発しきった油に等しく、火をつければ爆発的に燃焼する。
 だが、だからこそ暴発の危険もある。
「大丈夫、今のところ大丈夫です」
 周囲に渦巻く感情を探りながら『砂漠の光』アグライア=O=フォーティス(p3p002314)がステージ上のイレギュラーズに告げる。
 場のテンションの高さを利用して対バンに持ち込むのはよいが、それより先にゴブリン達が暴徒化してはどうしようもない。
 実は案外、テンションの塩梅が難しかった。
 だがそれも大丈夫と分かれば、もはややることはただ一つ!
「ロックとは魂の咆哮。存在のぶつけ合い。本当のロック、今ここで教えてやる」
 サングラスをかけた『狐狸霧中』最上・C・狐耶(p3p004837)が肩に担いだエレキギターでステージをガツンと叩き、そしていよいよ対バンが始まる。
 夏のロックフェスティバル、開演!

●イレギュラーズ・オンステージ!
 ロックゴブリンフェスティバル、対バン――ゴブリンのターン!
「ゴブゴォォォォォォォォォォォォォブ!」
 ギュイーン! ギュインギュインギギギギ――――ン!

 うるさい。

「ゴブゴブ! ゴーブゴブゴブゴブゴブ! ゴーブ!」
 ギュオンギュオンジャカジャカジャカジャカジャカ! ギュギ――――ン!

 とても、うるさい。

「ゴブッ! ゴブゴブゴブゴブゴブゴブ! ゴブゴ! ゴブッ! ゴブゴブゴブゴブ! ゴォォォォォブ!」
 ギュイィィィィィィィィィン! ギャンギャンギャンギュイギュイキュイキュイキュイピロリロリロリロギュイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!

 どうしようもなく、うるさい。

「「「ゴブゴブゴオオオオオオオオオオオオオオオオオブ!」」」
 だが客は盛り上がっていた。
 もう、何と形容すべきかも分からないくらいに盛り上がっていた。
 客ゴブリンのほとんどが、興奮して臭いタオルを振り回す。
 観客席にまぎれていエイヴが、逃げ場のない中で臭いにやられて顔を青くした。
「これは、暴れたくなっても仕方がないというか……」
 本音を言えばもう逃げたい。
 だが逃げ場はない。ないのだ。
 それに自分にはまだ与えられた役割がある。
 ステージ上にいる仲間達を支援する。そのために、彼はここに立ち続ける。
 今まさに、歌手ゴブリンの演奏はクライマックスに達しつつあった。
 しかし聴けば聴くほどひどい曲だ。
 ギターを奏でているのではなく、ただ鳴らしているに過ぎない。
 音楽と騒音の境界線上を絶え間なくタップダンスしている、そんなチャレンジング。
「うむむむむむむ……」
 これには、アリソンが随分渋い顔をしていた。
 曲も曲だが、それに見事に乗せられている観客もまた観客だ。
「その不満、もうちょい待ってステージにぶつけたらええんちゃう?」
「なるほど!」
 だがブーケのアドバイスを受けて、彼女はポンと手を打った。
「ゴブゴォォォォォォォォォブ! ゴブゴブゴブゴブ! ゴブ!」
 ギャリィィィィィィィィィィィィィィィィィ――――ン!
 そして丁度、ステージでは歌手ゴブリンの曲が終わったところだった。
「「ゴーブ! ゴーブ! ゴーブ! ゴーブ!」」
 客ゴブリン達が心を一つにしてタオルを振り回す。
 すさまじいまでの熱気。狂乱。
「わわ、わわわわ!」
 感情を探査しているアグライアが、膨張する興奮に思わず焦りの声を出す。
 だが――ここからだ。

 チュドォォォォォォォォォォォォォォン!

 いきなり上がる派手な火柱。
「「ゴブ!!?」」
 それは、客ゴブリン達の度肝を抜くのに十分な効果を発揮した。
「アリソン、ナーイス!」
 クロジンデがサムズアップ。
 火柱はアリソンが己の能力によって生み出したものだった。
 さぁ、掴みはOK!
 ここからはイレギュラーズの出番だ!

 ブオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォン!

 会場に響く、戦いの音。
 法螺貝を吹き鳴らしたのは、このステージを最も疎んでいる男。
「何だ何だテメェらは! 全然少しもなっちゃいねぇぞ、オイ!」
 ギトーである。
「何がロックゴブリンだ、在来種の分際で! 外来種の脅威を教えてやるぜ!」
 怒りを滾らせる彼の傍らから、今度はクロジンデが飛び出してくる。
「そのギター、借りるのだー!」
「ゴブ!!?」
 彼女は身を躍らせて、ステージ上に残っていた歌手ゴブリンからギターを強奪。
「うーん、ボロい!」
 あまりといえばあまりな評価を下しながら、ギターを鳴らし始めた。
「ロックとは、ゴブリンよりきつね。ここにいる連中はそれすら知らないと見えます。いいでしょう。教えてやりますよ、真のきつねロックをね」
 そして、独自の理論を展開して、狐耶もまたステージの前へと出る。
「ほんじゃ、魅せよっかー」
 ブーケはゆるい調子で言いながら、しかししっかりポーズをとる。
 ステージへと上がっていったイレギュラーズ。
 彼らは全員、声を揃えてこの言葉で自分達の出番を開始した。

「「「俺/私/ボクの歌を聴けェェェェェェェェェ!」」」

 ギャギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!
 かき鳴らされたギターの音。
 それは、先の歌手ゴブリンの演奏同様に酷いものだった。
 あ、これ歌手の力量以前に楽器がダメダメすぎる。
 奪ったクロジンデはすぐさまそれを悟った。そして、ちょうどいいやと思った。
 何故ならば彼女は楽器の弾き方など知らない。最初から知らない。
 だからつまり――これできっぱりと胸を張れる!
「ロックは技術じゃね――――!」
「自暴自棄にしか見えない開き直りなのに何だかすごいパワーを感じる!?」
 隣で自前のギターを弾くアリソンが、クロジンデをそう評した。
 実際、ただの開き直りである。
 ただしステージ上でどこまでもノリにノッてる状態での開き直りだ。
「ロックは曲じゃねー! 歌じゃねー! 生き様だー!」
「曲だし! 歌だし! でも生き様なのも合ってるけど!」
 クロジンデとアリソンのギター演奏が勢いを増していく。
 こうなると、狐耶も負けていられなかった。
「いいでしょう、きつねロックの真価を見せてやりますよ」
 物言いこそ静かだが、彼女は一気にそこで最前へと押し出てきた。
 するとどうだ、客ゴブリン達の視線が一気に狐耶の方へと向けられ始めたではないか。
 アリソンも十分なスター性、カリスマを感じさせるが、狐耶はさらにその一歩先、もはや聴衆の信仰を集めかねないほどの存在感を見せつけた。
「やりやすいわぁ」
 そこに、ブーケが便乗する。
 彼は狐耶の後ろに立つことで己を主張することに成功した。
 ブーケが放つフェロモンが、メスゴブリンのハートをズキュンとさせる。
「そーれ、っと!」
 そしてタイミングを見計らって、ブーケは脱いだ上着を観客席へ投げた。

 GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!

 メスゴブリン達の黄色い声、黄色いではなく黄ばんだ声だった。
 投げ込まれた上着を手に入れんとしてメスゴブリンがそこへ群がった。
「あ、ヤバイかもです」
 アグライアが危険を察知した。
 どこまでも上り詰めていく興奮の感情が、ついに危険域に達したのだ。
 敵意や害意こそ感じられないものの、熱気が高まりすぎている。
 もう、いつ暴動が起きてもおかしくない。
 だがそれだけ、イレギュラーズの面々が客ゴブリンをノセているということだ。
「ゴブ、ゴブー!」
 客ゴブリンの一匹が、我を忘れてステージに乗り込もうとする。
 しかしその首根っこを後ろから掴む手があった。
「……おっと、悪いがお触りは厳禁だ」
 イアンであった。
 客席前列へと何とか回り込んだ彼は、アグライアと同じく客の暴徒化を防ぐ役割を担っていた。
 客席はゴブリンだらけで、押しも押されぬという状態だが、それでも彼は堅実に己の役割を果たしていく。
「そこ、入っちゃダメです!」
 アグライアもイアンとは違う場所でゴブリンを抑え続けていた。
 一方、ゴブリンを煽っているのがエイヴだ。
「見ろゴブ! あの指使い、たまんねぇゴブ!」
 彼はあまり得意ではない大声を上げつつ、ステージ上の仲間を称賛する。
 その声は、もはや熱気のうねりに呑み込まれてしまっているが、しかしイレギュラーズバンドを応援するサクラという役割を投げる理由にはならない。
 この、非常に微妙なバランス。
 エイヴは応援することで客ゴブリンを煽り、アグライアとイアンは煽られすぎて暴れだしそうなゴブリンを抑える。
 常に限界ギリギリのバランスを保ち続けなければならないのが、辛いところではある。
 しかし、暴徒化を阻止するためには必要なことだ。
 それに――
「オイ、あんたらよォ!」
 ギトーが狐耶よりさらに前に出た。
「ゴブゴブゴブゴブ! 甘えてんじゃねぇぞォ!」
「「「ゴブ!!?」」」
 もうすぐ、イレギュラーズの演奏も終わる。

●悪貨は悪貨を駆逐する
「こんなところで好きに暴れて、そんなだからただのゴブリンなんだよ!」
 ただのゴブリンに向かって、ギトーが熱いメッセージ(七割罵倒)を贈る。
「聴け、在来ゴブリン! ゴブリンであることに甘えてんじゃねぇ!」
 ゴブリンに甘えるな!
 それは痛烈なメッセージ(八割悪口)だった。
「真のゴブリンだったら、ゴブリンであることに逆らってみやがれ!」
 ゴブリンに逆らってみろ!
 それは灼熱のメッセージ(九割虚偽)だった。
「そんなこともできねぇのに、ゴブリン名乗んじゃねぇ! このゴブリンが!」
 ゴブリンに逆らえないならゴブリン名乗るな、このゴブリンが!
 それは真摯なメッセージ(ゲシュタルト崩壊済み)だった。
「そうよ! 暴れるしか能がないならそんなの駄々っ子と一緒よ!」
 そしてアリソンがギトーに続く。
「どんなに世知辛くても、自分を貫かなきゃダメよ! 暴力じゃなく、もっと別の形で。もっといいやり方で! ゴブリンだったらできるはずよ!」
 ゴブリンだからできないのではないか。
 ギトーは思った。しかし、それを口にすることはなく、彼は法螺貝を吹いた。

 ブオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!

「そうよ、できるはずよ! だって今、私達は一つになれているんだから!」
 そしてさらに、キメとばかりにアリソンが天を指さし、

 ドカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!

 背後に派手な火柱が巻き上がった。
「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」」」
 そしてゴブリン達がこれまでにない歓声を上げる。
 そこに暴力はなかった。
 そこに狂乱はなかった。
 あるのは二つ。興奮と、一体感だった。
 その日、ゴブリン達は知った。
 ただ無軌道に暴れるだけでは得ることのできない一体感。音楽の真の楽しさを。
 イレギュラーズ達が奏でたものが本当に音楽と呼ぶにふさわしいのかどうかは非常に、とても、多大に、かなり疑問が残るところではあるが、とにかくゴブリンは暴れるだけではない楽しみ方を知ったのだ。
 そして、単純極まりないゴブリンだからこそ、次からはこの楽しみをもう一度得られるよう模索するだろう。
「さぁ、この対バン、勝ったのはどっちだ―――!」
 奪ったギターを高く掲げて、クロジンデが客に問う。
 すると巻き起こる大きな拍手。答えは分かりきっていた。
 客ゴブリンも、歌手ゴブリンも、イレギュラーズの音に魅せられた。それが結果だ。
「もう、暴れたりしたらダメだぞー。きつねは見ているからね」
 そして狐耶のダメ押し。
 このステージを通してすっかりファンを獲得した彼女の一言を、ゴブリン達は律義に守るだろう。
 来年もロックフェスは開かれるに違いない。
 だがそこで、誰かが暴力を振るうことはなくなるだろう。
 何故ならばゴブリン達は真のロックの喜びを知ったのだから――
 一方、
「うげぇ……」
 買ってみたゴブリンソース焼きそばを食べたブーケは、顔を青くして卒倒した。
 ゴブリン用のB級グルメが人の舌に合うワケないじゃないですか。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでした!
外来種ゴブリンというパワーワード。今回は以上のような結果となりました!

またいずれかのシナリオでお会いしましょう!

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