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シナリオ詳細

<果ての迷宮>虚構の自分との邂逅

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 幻想、王都《メフ・メフィート》の中央に口を開く果ての迷宮。
 その踏破には現状、幻想貴族が名代とするローレット所属イレギュラーズが主に臨む。
 最近はROOの事件の注目度が高かったものの、そちらの1件が解決を見たことで、再び果ての迷宮にも関心が寄せられる。
「穴を掘って待っていた甲斐があったってものだわさ!」
 小柄な幻想種女性、『総隊長』ペリカ・ロズィーアン(p3n000113)は昨日の攻略に引き続き、次の階層へと挑めることに喜ぶ。
 今回は果たして何が待っているのか。ペリカは心躍らせながらその攻略へと臨む。

 今回、挑むのは28階層。
 前回の攻略からさほど時間が経っていないこともあって事前情報がない状況だったが、メンバー達はペリカと共にそのフロアへと突入する。
 そこで待っていたのは……。
『この場へと踏み入る冒険者達よ……』
 どこからともなく聞こえてくる声に、皆周囲を見回す。
 頭上より聞こえてくるその声はさらにイレギュラーズ達への呼びかけを続ける。
『虚構の存在に打ち勝つ自信はあるか……?』
 イレギュラーズがそれぞれ戦いの意志を示すと、そこにイレギュラーズと同じ10名の人型が姿を現す。
 慎重になっていたペリカは意思表示を示さなかった為か、対応する人影は出ない。
「一体、何なのだわさ?」
 ペリカは現れた人影にあまり反応を見せなかったが、イレギュラーズ達は驚きの表情を見せていた。
 それらは不思議にも、イレギュラーズがROOで活動する姿……アバターと同じ姿をしていたのだ。
『虚構の自分に打ち勝ってみせよ……』
 イレギュラーズがその後呼びかけるも、それっきり声は途絶えてしまい、何も応答しなくなる。
 現れた人影はそれぞれの元となったメンバーと対する構えをとる。
 試練なのか、障害なのか、それとも純粋に敵として想像された存在なのか、何もかもが不明である。
 しかしながら、先へと進む為に必要とあらば、ここは倒す他ないだろう。
「ここは、皆にお願いするのだわ!」
 幸い、戦いを強いられることがなかったペリカはバックアップに当たる様子。
 ペリカがいてくれることもあり、イレギュラーズも全力で己の影とも言える存在と対することができる。
 メンバー達が戦いの意志を示すと、虚構の存在もまた戦闘態勢をとる。こちらがチーム戦を望めば、対応する相手がチームとなって対する様だ。
 対峙するイレギュラーズと虚構陣。
 それらは同時に動き出し、交錯し始めるのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様、こんにちは。
 GMのなちゅいです。果ての迷宮は1年ぶり、28階層を担当させていただきます。

●概要
 虚構の自分を撃破し、フロアを突破してくださいませ。
 また、誰の名代として参加するかの提示も願います。

※セーブについて
 幻想王家(現在はフォルデルマン)は『探索者の鍵』という果ての迷宮の攻略情報を『セーブ』し、現在階層までの転移を可能にするアイテムを持っています。これは初代の勇者王が『スターテクノクラート』と呼ばれる天才アーティファクトクリエイターに依頼して作成して貰った王家の秘宝であり、その技術は遺失級です。(但し前述の魔術師は今も存命なのですが)
 セーブという要素は、果ての迷宮に挑戦出来る人間は王侯貴族が認めたきちんとした人間でなければならない一つの理由にもなっています。

※名代について
 フォルデルマン、レイガルテ、リーゼロッテ、ガブリエル、他果ての迷宮探索が可能な有力貴族等、そういったスポンサーの誰に助力するかをプレイング内一行目に【名前】という形式で記載して下さい。
 誰の名代として参加したイレギュラーズが多かったかを果ての迷宮特設ページでカウントし続け、迷宮攻略に対しての各勢力の貢献度という形で反映予定です。展開等が変わる可能性があります。

●状況
 フロアへと突入すると、なぜかROOのアバターを思わせる敵が現れます。未作成の方はアバターデータを作成していただくか、プレイングでどういった相手と戦うか記述を願います。
 基本的には1対1で交戦することになりますが、希望があれば、タッグ戦、チーム戦もOKです。その場合、タッグ名、チーム名か、共闘する相手の記述を願います。

 アバターを思わせる敵対相手は自分の考えで行動します。
 ただ、こうやって動くだろうなというプレイングがあれば、自分のアバターに近い動きをしてくれるかもしれません。
 
 10人対10人での戦いの結果、8人以上が勝利で突破できます。

●敵……虚構の存在×10体
 前述のとおり、その姿、能力は参加メンバーがROOにおけるアバターのような姿をとっています。
 ROOとの因果関係はありませんが、不思議と参加者の心理内に残る姿を映した……という考察もありますが、不明です。
 能力に関しては、GMが傾向から判断し、実際の判定では適宜調整します

●NPC……ペリカ・ロジィーアン
 おなじみ、果ての迷宮踏破の総隊長で、年齢不詳の幻想種女性。
 今回は戦闘不能者の回収、手当などバックアップに当たってくれます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <果ての迷宮>虚構の自分との邂逅完了
  • GM名なちゅい
  • 種別EX
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年01月21日 22時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
咲々宮 幻介(p3p001387)
刀身不屈
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
ヲルト・アドバライト(p3p008506)
パーフェクト・オーダー
イロン=マ=イデン(p3p008964)
善行の囚人
オウェード=ランドマスター(p3p009184)
黒鉄守護
ティヴァ(p3p010172)
笑顔を守るために
ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)
タナトス・ディーラー

リプレイ


 幻想の中央に位置する果ての迷宮。
 この地の深部を目指し、新たなる探検が始まる。
「果ての迷宮! 初めて来たですよ」
 銀髪ポニーテールの秘宝種『航空猟兵』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)はテンション高くその入り口ではしゃぐ。
「果ての迷宮……話には聞いていましたが、自らの足で挑むのは初めてなのです」
 ゴスロリ衣装を纏う『善行の囚人』イロン=マ=イデン(p3p008964)もまた初めて内部に足を踏み入れ、興味深そうに内部を見回す。
 その際、イロンは列の後ろ側に位置し、こまめに後方の安全を確かめつつ皆についていく。
「此処といえば、冒険者を様々なトラップとかで待ち受けると聞いた事があるですよ!」
 ブランシュは皆さんのお役に立てるよう、しっかりとバーニアを調整してきたとトラップ攻略にも強気の姿勢。
「ティヴァのニワ、幻想にアルヨ。お世話なってるトコロの人のためにガンバルヨ」
 ブラウン管を頭部代わりとする小柄な『enigma box』ティヴァ(p3p010172)も一緒になり、その攻略に強い意欲を見せていた。
「デモ、……果ての、迷宮、フシギナトコロ」
 暗い通路に少し恐怖を感じていたティヴァはそれでも、冒険に大事だからと、カンテラを体に下げ、通路を照らす。
「フシギふしぎダヨ。ティヴァがスキな歯車トカ、オチテナイカナ?」
 ティヴァもまた探索を楽しんでいたようだ。


 前回探索終了地点でセーブした地点へと転移するイレギュラーズ一行。
「さあ、いくのだわ!」
 『総隊長』ペリカ・ロズィーアン(p3n000113)の合図で28階層フロア内へと突入すると。
『虚構の存在に打ち勝つ自信はあるか……?』
 頭上からの呼びかけの後、イレギュラーズがそれぞれ参戦表明していると、10の人影が並び立つ。
 ペリカのみ参加表明を控えたことで、イレギュラーズと同数。それらは……。
「あ、目の前にいるのはR.O.Oのブランシュたちですよ!? こんな事も出来るですよ!」
「自分のキャラが具現化するっていいなー。ツナ缶海賊団にスカウトしたいね」
 ブランシュや鷹の飛行種である『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)が目にしていたのは、弓使いの青年に2足歩行する小柄な猫。R.O.Oにおける自分のアバターと寸分違わず、まさに虚構の自分である。
「虚構の自分。ROOっていうと……」
 スーツ着用、幻想貴族の小間使いである『幻想の勇者』ヲルト・アドバライト(p3p008506)が自らのアバターを視認する。
「ティヴァがタタカウヒト、すこし、覚えあるケド、ダレダッケ
……ティヴァの……」
 人の姿をした自分のアバターが思い出せないティヴァはさておき。
 メンバー達は続々と、自らのアバターを視認する。
(敵は……当時のワシじゃとッ!)
 髭を蓄えた大柄で屈強な『黒鉄守護』オウェード=ランドマスター(p3p009184)は若い自分自身と対し、大きく目を見張っていた。
「む、あれは……ワタシ、ワタシだ……!」
 イロンは善行家である自身のアバターを前にし、大きく目を見張る。
「なるほど、ああやって見ると我ながら完成度高いっスね」
 元の世界でエースストライカーだった『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)は水色の短髪少女……シャドウウォーカーを見つめる。
 ただ、ただ鑑賞してくれというわけでなく、シャドウウォーカーは敵対の姿勢をみせる。
「倒さないと進めねぇなら、倒すまでっスよ。ところで……」
 葵もシャドウウォーカーと対する気満々、なのだが。
「ばぶぅ……」
「何か向こうに赤ちゃん混じってね? あの髪型……えっ?」
 一通りアバターを見回していた葵は死んだような瞳の赤ん坊の後、同じ髪型をした『刀身不屈』咲々宮 幻介(p3p001387)に視線を向ける。
「はぁっ!」
 聞こえよがしに溜息をつく司書を偽名とする『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)を含め、この場には、不本意なるアバターと対したメンバーも少なくないようで。
「……えぇ? いや、あの……これは、その。違うので御座る、あれは拙者が自発的にああいう姿にした訳ではなく!」
 操作ミスであの姿となったり、変更方法が分からずそのままにしていただけと、幻介は主張する。
「……決して拙者の趣味という訳では! やめて、そんな目で見ないで欲しいで御座るぅ!?」
「……ああ、アレか」
 いたたまれないと両手で顔を隠す幻介の隣では、性別違いで似た姿のメイドに冷ややかな視線を向けていたヲルトが首を振って。
「一度ログインしたっきりだな。正直言って黒歴史だ」
「アレ戦わないといけないなんて……最悪」
 同じく首を振るイーリン。対するのは、自律AI搭載型二足歩行戦車型アバター。
 それを前にし、彼女は大きく頭を振るのである。


 壁をまるで感じさせぬほど広い部屋。
 そこで20人が相対し、火花を散らす。
「……ウウン、ワカラナイ、でもティヴァがちゃんと、タタカッテタオスヨ!」
 この段になっても相手を思い出せないティヴァだったが、割り切って討伐に臨む。
「因果応報、勧善懲悪! 裁きの時は来たのです! 善行と悪行を、秤の上に乗せるのです!」
 自らの信念を叫ぶイロンの前には大柄な自らのアバター、イデンが立つ。
 立ち塞がるなら尚の事。自分のような大悪人など許さないだろうと疑わない。
「……ハッ、危うく我を忘れそうになるところだったのです」
 これはあくまで仕事なんだと、イロンは気を強く持つ。
 世界の為の善行。冷静に、確実に果たさねばならない。そう自分に言い聞かせて。
「ワタシはあのワタシを野放しにする気はありませんが、それは向こうも同じはず」
「此処は一気に突破させてもらうですよ」
 続くブランシュが言う様に、イレギュラーズの目的はこの場を突破すること。その為には虚構の存在を撃破せねばならない。
「はぁ……憂鬱で御座るなぁ」
 戦い間際になっても、幻介はいまいち乗り気ではないようだ。
 始末人として活動していた幻介は今の世の為であれば、神だろうが、悪魔だろうが切り捨てると考えている。
 それでも、アバター……雪之丞は自分であるものの、赤ん坊。
 しかも、この迷宮の探索は世の為になるかどうかは未知数なのだ。
「とはいえ、油断出来る相手ではない事は拙者自身が一番良く知っている事……」
 赤ん坊の見た目でも刀を操る術を持っており、相手を寸断する力を十分に持っている。手を抜くわけにはいかない。
(自分との戦闘がとうとう来たのかね……ガハハ……ゾクゾクして来たワイ……)
 若き日の自身との戦いに、オウェードは武者震いする。
 皆、アバターに思うことはあれど、この迷宮の先に進むならば思いは一つだ。
「迷宮ってすごーいですよ! でも、ブランシュたちも負けるわけにはいかないですよ」
 ブランシュの言葉に、皆同意する。
「気合いを入れる必要があるだろう。妥協は許されない」
「この迷宮はいつも不思議な現象で満ちているよ。それでこそ挑む価値があるというものだ」
 果ての迷宮が甘くないことをヲルトは知っている。『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)も探求心を満たす為、自身の現身である人型ロボットのアバターとの戦いに勝つ気でいる。
「此処、きっと倒さないと通してくれナイ、ティヴァ、遠慮せずにタタカウ!」
 ゆるふわの長い髪を1つの三つ編みにしたアバター、シャディはじっと本人であるティヴァを見つめてくる。
「……最悪。ええ、創造した私が一番よくわかってるわよ。だからこそ!」
 皆やる気になっている中、相性最悪の相手に二の足を踏んでいたイーリンがいつもの調子を取り戻して。
「神がそれを望まれる」
「行こう」
 オウェードの言葉で、リアルと虚構はぶつかり始めるのである。


 激突するイレギュラーズと虚構の存在。
 ペリカは相手について、完全には把握していなかったようではあるが、それでも倒すべき敵だとは認識していたようで。
「サポートは任せねぃ。絶対に倒すんだわさ!」
 イレギュラーズの勝利を信じ、ペリカはメンバー達のバックアップに当たる構えだ。
 動き始めるメンバー達の中、葵はいち早く自らのアバターであるシャドウウォーカーと対する。
(元々、シャドウウォーカーは奇襲や強襲を得意としてる。なら……)
 布陣として後ろにいた葵。相手が真正面から勝負を挑んではこず、不意打ちからの攪乱をしてくると踏む。
 実際のゲームでも、その動きができるプレイヤーは強かったと葵はしみじみ思い返すが、悠長に考えている暇などない。
(んでも、ゲームと現実は違うからな、さて……どう出るっスかね)
 何もない空間での戦いだ。遮蔽物などもない為、シャドウウォーカーは仲間である虚構メンバーの陰から仕掛けてくるつもりらしい。
 そんなシャドウウォーカーを、葵は見逃さぬよう絶対に視野から外さず、一度灰色のサッカーボール「残影ワイルドゲイルGG覇IV」を蹴りこむ。
「…………っ!」
 声を出さずにいたのはさすがだが、シャドウウォーカーを完全に捉えていた葵は不敵に笑いかけて。
「よぉ、ご自慢のステルスも張り付かれたら意味ないっスよね!」
「…………」
 相手は多少苛立ちながらも、気配を消す隙を窺いつつ両手の刃で葵へと切りかかっていた。
 見れば、オウェードやティヴァもアバターにタイマン勝負を挑む様子。【鋼鉄の女帝】ラムレイへと跨るイーリンもまた、騎兵であるアバター、IJ0854へと仕掛ける。
(あれは防御と対多数戦に特化した機体)
 だから、IJ0854のような1対1で対する相手ならば最悪のはず。
 絶対に落とすと意気込み、イーリンは同じくアバターとタイマン勝負を仕掛ける。
『攻撃を開始します』
 遠距離からガトリングを備えた左腕より掃射してくるIJ0854は、イーリンが思った通りこちらを足止めしようとしてくる。
 おそらく、このまま状態異常攻めにし、弱らせる気なのだろう。
(狙うは、左腕……!)
 その前にと、イーリンは炎を振り払い、相手へ突っ込む。
 IJ0854はガトリングが突出しており、回転機構もある。
 そこにはためかす戦旗を、イーリンは開幕早々に叩き込み、へし折ってみせた。
『アーム破損、戦闘に支障なし』
 相手にとっては多少の手傷のレベルだったようだが、イーリンは1本でも折ることができ、次の段階へと戦法を進めることにしたようだった。

 ヲルトと同名のメイド女性は手にする槍で激しく突きを繰り出してくるようで、どうやら力量を備えていたようだ。
 ほとんどログインもせずじまいだったそうだから、ある意味でヲルトはメンバーの中で本人とアバターが一番乖離した存在であるかもしれない。
 ただ、その戦法はヲルト自身を思わせる。強気な様子で攻め立ててくるのはやはりヲルトの半身故だろう。
(オレ1人じゃ決定力にかけるからな)
 自身の立ち回りもあってヲルトはアバターを攻めきれないと判断し、利害の一致したゼフィラと即席のタッグを組み、2人分のアバターを纏めて相手することに。
 金のポニーテールを躍らせるゼフィラのアバター、レインリリィは閃光を宿すレイピアを手に切り込む前衛タイプ。
 目下、レインリリィは元の自分を含めたイレギュラーズを敵とみなし、果敢に切りかかってくる。
 ヲルトはその2体のアバターを纏めて抑え、パートナーとなるゼフィラへと攻撃を一任する。
 ゼフィラもヲルトのブロックを信じ、ひたすらアバターへと攻撃するが、ヲルトを優先して狙い、中距離から機械式義手を突き出して弾幕を張る。
「当然、そう出てくるよね」
 ヲルトアバターを庇う様に、レインリリィが前に出る。
 アバター、レインリリィ。それは、ゼフィラが「誰かを切り捨てること無く、手の届く限りの人を助ける」……そんな理想を仮想世界で貫く為に作った。
 実際にそうしてネクスト……R.O.Oで戦い抜いた誇らしい半身。
 ゼフィラは……黎明院・ゼフィラには、今更そんな生き方はできないと感じていたからこそ、余計そう感じるのかもしれない。
 だが、例え目の前の敵はレインリリィそのものだとしても、ゼフィラの探求心を止めることなどできない。
「悪いね。私はこの迷宮の果てを見るまで、足を止めるつもりはないんだ」
 ゼフィラがネクストで戦っていた時と同じ思考であるなら、仲間を守るのが第一と考える。
 ならば、敢えてレインリリィに仲間を庇わせ、回避できない状況を作る。
 後はヲルトが纏めて抑えにかかる。
「二人まとめてかかってこいよ」
 挑発しつつ、ヲルトは戦いを有利に進めるべく自らの血液を沸騰させ、疑似的な走馬灯を巡らす。
 加えて、ヲルトは浮上を即座に血液と共に外へと排出できるよう聖骸闘衣を覆う。
「虚構の自分? 笑わせるなよ。オレの方が優れている」
「さすがオレ、ですね」
「上等だよ。全力で相手させてもらうよ」
 2人のアバターは笑顔すら見せつつ武器を振るってくる。
 気を抜けば1発でかいのを貰い、大ピンチになりかねない。ヲルトは後方のゼフィラに通さぬようそれらを同時にブロックして攻撃を防いでいた。

 アクセル、イロン、幻介、ブランシュの4人はチーム戦でアバターと交戦する形となる。
 ブランシュは最初、自身のアバター、CALL666と対していた。
(向こうの動きは、恐らく……)
 その思考を読み取るブランシュ。
 CALL666は獲物である弓で広域に状態異常をもたらし、遠距離からじわじわと追い詰め、トドメが差せそうなら一気に最大火力の一撃で仕留めに来るというもの。
「ブランシュが散々R.O.Oでやってきた手ですよ。手の内は……見えるはず!」
 速攻戦に臨むことにしたブランシュは、自身のアバターを放置して幻介の方へと向かう。
 その幻介は意を決し、目の前のアバター雪之丞を見据えて。
(こうなったら八つ当たりで申し訳無いが、斬って捨てるで御座るかね)
 戦法もその動きも、幻介は熟知している。ハイハイするか、誰かに投擲された勢いで切りかかってくるか……。
「ならば、やる事は速攻で倒すか、動きを止めて最後に仕留めるかの二択!」。
 ともあれ、まずはタイマンで抑えること。相手は思考こそ大人だが、機動力は赤ん坊のそれであり、ほぼ皆無なのだ。
「裏咲々宮一刀流 陸之型」
「ばぶ、ばーぶ、だぁー」
 迅速の一太刀を見舞う幻介。相手も赤ん坊でありながら高速ハイハイで近づいてくるが、丁度進路を塞ぐ形となる。
 行く手を阻まれた雪之丞はしばらくじたばたとその場でもがくように動いていたが、幻介はそれを放置してイロンの方へと向かう。
 入れ替わるようにそちらへとやってきたのはブランシュ。速攻戦と考えた彼女は幻介のアバターを最初に叩くことにしたのだ。
 機動の慣性を切れ味に変え、相手へと接近するブランシュは自身の安全装置を解除して。
「一気に片を付けますよ」
 瞬時に加速した彼女は超新星のスピードを破壊力へと転化し、雪之丞へと叩きつける。
「ばぶー!」
 だが、一撃に耐える相手はやはりただの赤子ではない。
 傷つき、復讐による強化が起こる前にと、ブランシュはさらなる一撃を繰り出す。
 さて、イロンはというと、考え方をも模倣した相手の思考を読む。
(ワタシを野放しにする気はありませんが、それは向こうも同じはず)
 イロンの考え通り、アバターであるイデンは一直線にイロンへと接近戦を挑む様子だ。
 いつものイロンであれば聖光で応戦するのだろうが、相手の力に押されてしまいかねないと判断して。
「しかしワタシは、善行を成し終えるまでは黙ってやられるわけにはいかないのです」
 そこにやってきたのは幻介だ。彼はここでも雷光を思わせる一太刀でイデンへと切りかかる。
 前線を支える仲間の存在というのは実に頼もしい。
 イロンは幻介の消耗を見ながら、支援の為にと皆の恐怖を打ち払い、さらに練達の治癒魔術を施し、万全の状態で戦えるよう支援していく。
 アクセルは自分のアバター、エクシルを見た。
「いくニャ!」
 相手は此方へと接近を試みており、近距離から攻撃を打ち分けてくることをアクセルはすでに見透かしている。
「まずはそれを崩していくよ!」
 早速、アクセルはハガルのルーンを描き、敵陣へと雹を降らす。
 不可避とも言われる雹に打ち付けられるエクシル。それに、ブランシュのアバターであるCALL666も巻き込み、身体を凍らせていたようだ。
 エクシルは身体を凍らせてなお突っ込んでくるが、アクセルはさがりながら再び雹を降らす。
「ニャニャッ!」
 身体のあちこちが凍り、叫ぶエクシル。
 しばらくタイマン勝負の様相ではあったが、アクセルは徐々にメンバー達へと合流し、チーム戦へと移行する。
「アバターの皆はえっぐい構成を組んでるからね」
 アクセルはチームを組んだメンバーの状態を見て、一旦回復に回って態勢の立て直しをはかっていた。

 戦場を移し、こちらもタイマン勝負へと持ち込んだ面々。
 オウェードはアバターと互いを戦略眼で観察していたが、初手は相手が先に仕掛けてくる。
「ガハハハ!」
 オウェードの隙を見たアバターは豪快に笑い、長剣で切りかかってくる。傷を負わせて血を流させ、一気に切り崩してくるつもりなのだろう。
 反撃態勢をとり、オウェードも片手斧で切り返すが、血を流せばそれだけで消耗が激しくなる為、審判の一撃を交えて血止めを試みる。
 ただ、相手は気力が大きく上回ることに加え、復讐スキルもあって消耗するごとに攻撃力が増していく。
「段々と威力が増して来たじゃと……よ……鎧が受けきれぬ……」
 オウェードは早くも消耗し、一度距離をとってから不滅の如く闘志を燃やして傷を塞ぐ。
 相手は至近距離からの攻撃は基本だ。じっと耐えつつ、オウェードは粘り強く虚構の自分と対することにしていた。

 ティヴァは忘れているようだが、アバターのシャディは人の形をした足でしっかりと歩もうとしている。その為にティヴァを倒すつもりらしい。
 ティヴァは剣を得手としているが、シャディは魔法を使うようだ。
「距離置いて攻撃サレルノ、厄介ダヨ」
 実際、シャディはマジックブックを手に中距離から魔力弾を放出してくる。
 ティヴァとしてはタイマン勝負を仕掛けてはいるが、他の人に流れ弾が飛ぶ可能性も否定できない。
「ほかのヒトにいかないうちに、ガンバッテタタクヨ!」
 飛行してその魔法を避け、ティヴァはギアチェンジを使い、一気に距離を詰める。
「さすがボクだね。来なよ」
 思った以上におしゃべりなアバターへ、ティヴァは秘剣を振るって強烈な一撃を叩き込む。
 さらに、ティヴァはシャディのみを捉え、仲間を巻き込まぬよう確認して。
「まだ、終わらナイヨ!」
 思う存分ティヴァは暴れ、アバターを痛めつける。
「いいね。やっぱりボクはすごいよ」
 その力にシャディは嬉しそうに語らい、なおも魔法を飛ばしてくるのである。


 現実の自分と虚構の自分。
「フレー、フレーだわさ!」
 ペリカはメンバー達を力の限り応援する。
 唯一、この場で虚構の自分を持たない彼女は全力で現実のイレギュラーズの勝利を信じていたのだ。
 相手……シャドウウォーカーは淡々と葵を奇襲する隙を狙っている。
 近距離は不利だと判断した葵は適度に距離をとり、雷鳴の神を冠する一撃を叩き込む。
 上手く攻撃を続けられるタイミングを葵は利用し、さらに紫色の重力エネルギーを纏わせた蹴りをアバターへと見舞う。
「ううっ……!」
 相手が動きを止めれば好都合。葵は一気に畳みかけにかかっていた。
 イーリンもIJ0854の左腕を破壊したことで、自ら好機をつかむ。
(思ったより死角ができたわね)
 自分と同じ思考をする相手がただ闇雲に乱射するはずもない。再生能力を持つこともあり、左腕を修復する時間を稼いでいるのだろう。
 そんな敵の弾幕の穴をかいくぐり、ラムレイから飛び降りたイーリンはIJ0854のスカートアーマーの下に潜り込もうとする。
 狙うはその脚。相手の逆関節部目掛けて紫色の光を叩き込む。
『左脚、損傷……』
 無論、相手もそれを察して飛び上がるものの、知識の砦のワイヤーで無理やり引っ張り上げてもらうイーリンである。
「逃しはしないわ」
『飛行に支障あり……邪魔者を排除』
 左腕のガトリング銃でIJ0854はイーリンを狙い撃ちするが、彼女はすぐに簡易飛行で逃れ、着地する。
「守る相手が居ない相手が、ポンコツじゃなきゃ何なのよ……!」
 少し距離を離されたことで、イーリンは一旦態勢を立て直すべく、魔術によって十字に傷口を縫っていた。

 その間、チーム戦に臨むメンバー達が一気に戦況を進める。
 満足に移動できぬ雪之丞へと攻撃を仕掛けていたブランシュ。
 赤子とはいえ、成人の知能を持つ相手。迂闊に近づけば身体を切り裂かれねかねない。
 合間に、幻介自身がアバターの足を止める合間に、ブランシュも一気に力を高めて破壊力を込めた一撃で雪之丞を叩く。
「ばぶー……」
 体力の尽きたアバターはかき消えるようにその場から消えていく。やはり、虚構の存在ということなのだろう。
 傷つくブランシュの癒しを行っていたアクセルは残るアバター達を神聖の光で包み込み、怯んだところで指揮杖を振るって神秘の一撃を叩き込む。
 いずれも広範囲に及ぶものだが、アクセルの攻撃はアバターのみに襲い掛かる。
 不吉なる状況に苛まれるアバター達はアクセルのもたらす呪いの影響も色濃く受け、徐々にその体力をすり減らす。
「ううっ……」
 すぐに、イデンがわずかに表情を歪める。
 イデンは本当の自分であるイロンを注視し、正義の心を燃え上がらせる。
 だが、イロンは淡々と仲間の治療を優先しており、イデンの方に視線を向けていない。
 何より、その前には自らのアバターが消えたことで戦いに集中出来ていた幻介がいて。
 戦術は変わらず、幻介は相手の脚を止め、抜刀術を始め鮮やかな剣術でイデンを攻め立てる。
 気力も尽きかけたが、幻介は流れる様に刃を操る。
 無風のはずの迷宮内にそよぐ風に花びらが舞う。だが、その花びらは毒花のごとく、相手の体を弱らせて。
「善行は、空間を選ぶことはありません……!」
 先に力尽きたイデンはそう叫び、この場から姿を消す。
 続き、ブランシュのアバターであるCALL666。
 言葉少ななアバターはただ矢を放ち、イレギュラーズの動きを止めてさらなる矢で体力を削り続ける。
 しかしながら、アクセルやイロンがすぐさま異常を振り払うことで、ブランシュは満足に戦うことができていた。
 まず、ブランシュは身体機能を生かし、アバター目掛けて超速度の一撃を叩き込む。
「…………!」
 相手を逆上させ、接近させられたらこちらのもの。
「みんな合わせていくのですよ!」
 仲間達と力を合わせ、ブランシュは先程同様に加速し、破壊力ある一撃をCALL666へと見舞っていく。
「…………」
 最後の最後まで、CALL666は言葉をほとんど紡ぐことなく潰えていく。
 残るアクセルのアバター、エクシルは身軽に飛び回っていたが、さすがに4人に囲まれれば多勢に無勢。
「負けないよ!」
 窮地に陥ったエクシルは地が出ていたようで、それがまたアクセルっぽさを感じさせる。
 オリジナルであるアクセル目掛けてステップを踏むエクシルは渦巻く風を巻き起こし、チームを組むイレギュラーズですら追い込む。
 だが、アクセルも負けてはおらず、踊りながらエクシルにリズムを合わせて切りかかる。
「根性みせるよ!」
 その根性は少しだけアクセルの方が上回っていたようで。
「ふふ、最初のお誘い、できるなら受けたい、ニャ……」
 最初、海賊団に誘いたいというアクセルの言葉が聞こえていたらしく、エクシルはそんな希望を呟きながら消えていった。
「まだ、戦っている人がいます」
「援護するのですよ」
 イロンヤブランシュに同意し、幻介やアクセルもタイマン勝負を挑むメンバーの援護へと回っていく。

 タッグ戦を続けていたヲルト、ゼフィラの2人。
 アバターヲルトとレインリリイの攻撃を、オリジナルのヲルトが一身になって受け止め続ける。
 しかしながら、かなり傷が深まったヲルトは不意にその動きが機敏になり、アバター達の攻撃を避け始める。
「その程度か?」
「負けられません……!」
「流石だね」
 やや頬を上気させるヲルトアバターは小さく首を振って槍を振るう。一方、レインリリィは不敵な笑みを崩さず、この戦いを楽しんでいたようだ。
「確かに痛いがそれだけだ。オレに足をつかせる程じゃない」
 誰よりも強気な態度で、ヲルトは胸を張る。敵にも、味方にさえも、隙を見せたら終わりだと強く思いながら。
 そのヲルトのアバターも弱みを見せぬよう戦うが、ゼフィラが彼女を狙って弾幕を展開する。
「ボクがいる限り、仲間を傷つけはさせないよ」
 ただ、レインリリィが嬉々としながら立ち塞がる。
 そんなアバターでよかったとゼフィラは改めて感じていた。
 互いに盾役を立てながらの消耗戦。
 ただ、他者からの援護を受けられないレインリリィが次第に消耗して。
 幾度目かのゼフィラが展開した弾幕。
 ついにレインリリィが膝をつく。
「最後に、オリジナルに心からの礼を、こんなボクにしてくれて、ありがとう……」
 まさか、自分に礼を言われるとは。ゼフィラは思いもしなかったが、そこに前方から槍が突き出されてくる。
「…………っ!」
 メイドの見た目をしながらも、捨て身の一撃ともとれるような力強い突き。それを、オリジナルヲルトが食い止めて見せる。
「逃げることは叶わないだろう。それはお前自身がよく分かっているはずだ。」
 そして、ヲルトはその傷から流れる自らの血を操ってアバターの感覚を狂わせる。
「いまだゼフィラ!ㅤやってくれ!」
 頷くゼフィラは呪鎖を操り、ヲルトアバターへと葬送を刻む。
「オレは、認められたかった、だけ、なのに……」
 虚空へと消え去るメイド姿のアバター。
 それは、黒歴史とされた虚構のヲルトが紡いだ最後の本音。
 誇らしいと感じて消えたレインリリィを傍で見ていたからこそ、一層そう感じていたのかもしれない。


 アバターとのタイマン勝負を繰り広げるメンバー達も決着が近いようだった。
 葵は相手、シャドウウォーカーに得意な戦いをさせない。
 距離を離したアバターだったが、すでにアバター陣営は半数ほどにまで減っており、仲間の陰に隠れるのも難しい。
「逃げ場なんてないっスよ」
 元エースストライカーである葵は狙い通りにシャドウウォーカーへとボールを叩き込む。
「ああっ……!」
 その時、シャドウウォーカーの姿がスクール水着のみへと変わる。
「脱げた! もう少しか!」
 HPが減ると、アーマーブレイクするという設定を持つシャドウウォーカー。葵にとってこれ以上分かりやすく相手を追い詰めたサインはない。
 後は仲間から距離をとりつつ、葵がシュートする。
 テンペストバウンスと呼ばれる一撃は、重く鈍い光を発し一定範囲を飛び回る。幾度もそれに全身を打ち付けられたシャドウウォーカーはついに力尽きて。
「思う様に戦わせてくれないなんて、さすがワタシ……だよ……」
 満足気に消え去るシャドウウォーカー。
 近場ではイーリンもIJ0854を追い込んでいたようだ。
 地上に降りて掃射を行っていたアバター。
 その内部は改造しているかもしれないとイーリンは考えつつ、とあることを閃く。
「バッテリーの位置は……R.O.Oのアバターと同じ」
 ギフトの効力によって、その情報制度を疑わぬ彼女は再びラムレイに跨り、一気に近づく。
 相手の押し倒すように胴体上へと陣取ったイーリンは、自らの魔眼を怪しく光らせて。
「止まれぇえ!!」
 放たれた光はコクピットごとIJ0854を撃ち抜く。
『機能、テイシ……』
「さすが私ね。私ごと機体を貫く、なんて――」
 その機体は爆発することなく、虚空へと消え去ってしまう。

 続々と虚構の自分を倒すメンバー達。
 ただ、ティヴァは魔法を使うアバター、シャディにやや苦戦していたようだ。
 ティヴァは接近戦、シャディは遠距離戦と得手としている分野が異なることで、追いかけっこの様な形となって戦いが長引いていたのだ。
 それでも、ティヴァは斬りかかる際、強烈な怒りと闘争心を呼び覚まして相手の体に深手を負わせようとする。
「ティヴァ、剣ツカウの、ちょっとずつ慣れてキタカラ、軽々あつかえるカラ!」
 魔法を使う隙を与えはしない。そんな心意気で追いすがり、攻撃をしていたのだが……。
「きみだけは倒さなければいけない。そんな気がするんだ」
 シャディも儚げな雰囲気を漂わせつつも、強力な魔力をティヴァへと叩き込んでくる。
 意識が途切れかけたティヴァ。しかし……。
「ハジメテヒトリでタタカウ! デモ怖くナイヨ!」
 この場には同じく戦う仲間達がいる。応援しているスピカがいる。何より、自分は少しずつでも強くなっている。
「ティヴァ、ガンバル!」
 パンドラの力を砕くティヴァは再び一気に距離を詰め、滅茶苦茶に暴れてシャディを攻め立てた。
「頑張って。たまには、ボクのことも思い出して――」
 消えゆく虚構の自分の言葉にも、ティヴァは首を傾げていたのだった。
 残るはオウェード。
 彼も若き日の自分をベースとした相手に苦しむ。
「ワシは確かに腕は鈍っていた……それは認めざる得ない事じゃ……」
 力、速さ、体力、技の冴え。全てにおいて、全盛期のそれではないとオウェードは認める。
 実際、絶え間なく切り込んでくるアバターは止まることを知らない。考え事をしていたオウェードは一瞬の隙をつかれ、その刃を身体深くにまで受けてしまう。
 だが、運命の力をつかみ取ったオウェードは強く意志を保つ。
「しかし……、お前さんは若い頃のワシでは無い……あくまでもROOのアバターのワシじゃッ!」
 因果関係は不明であるが、その姿はネクストにいたアバターだと感じていたオウェード。
「即ちまだ完成されていないッ! それがお前さんの唯一の弱点じゃよッ!」
「ぬううっ!」
 息を荒くしていたアバターオウェード。ただ、苛烈に攻め立てることこそが勝利への近道と疑わず、相手は今いる本物のオウェードへと刃を振り下ろさんとする。
 だが、次なるアバターの攻撃前にオウェードは先手を取っり、防御の構えをとりながら相手の勢いを利用して強力な一撃を片手斧「ノルダイン風アックス改」で見舞う。
「虚構……それがお前さんの強みであり、最大の敗因じゃ……」
「俺は、まだまだ、なのだな」
 何かを悟ったアバターオウェードは小さく笑ってかき消えていったのだった。


 無事、イレギュラーズが勝利したことで、フロア奥の扉が開く。
 その先にはセーブ地点があり、地上へと戻れそうだ。
 戦いを終えたメンバー達がフロア内を探索する中、オウェードもまた戦場となったフロアを見回して。
「ワシは何か目覚めた様な気がする……リーゼロッテ様の為の……」
「手当てするねぃ」
 そこにやってきたペリカに、オウェードは思わず赤面して言葉を詰まらせる。
 素早く傷口を塞ぎ、包帯を巻きつけるペリカ。その手際は実に鮮やかだ。
「これで終わりだわさ」
 ペリカはすぐさまもう1人、倒れかけていたティヴァの治療へと向かう。
「――ねぇ、ペリカ」
「何だわさ?」
 そのペリカへと、イーリンが息を切らせながら呼びかけて。
「貴方はなにか、守りたいものとか、ある?」
 不意に思ったイーリンは問わずにはいられなかったようだ。
 ペリカは少し唸ってからひと言。
「一緒に穴を掘ったみんなの夢かねぃ」
 彼女はそう笑いながら、探索を一区切りして地上へと戻っていくのだった。

成否

成功

MVP

黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは虚構の自分に礼を言われ、誇りすら感じさせていた貴方へ。もう一方、黒歴史と感じていたアバターから思わぬ一言を告げられた貴方にも称号をお送りしました。
 今回はご参加、ありがとうございました!

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