シナリオ詳細
<秘密結社フェチーズ>楽しいお酒の楽しみ方
オープニング
●秘密結社フェチーズの調査
『怪人暗黒騎士』耀 英司(p3p009524)は、とある秘密結社の調査を行っていた。
鉄帝の街に潜み、時として怪人を繰り出し街に迷惑をかけ、時として人助けを行う。
その組織の名は……秘密結社フェチーズ。
戦闘員や謎の組織力を持つ彼等はかなりの力を持っており、それでいて表にほとんど存在が出てこない。
調査を進めれば進めるほど、英司は組織の大きさに驚かざるを得なかった。
「しかし……奴らの目的は何だってんだ?」
得意のジョークも出てこない程に困惑してしまう、組織の謎さ加減。
それでも幾つか分かったことはある。
彼等の組織には幾つかの階級が存在する。
まずは「ヘンタイン」と呼ばれるドMの全身タイツ戦闘員。
そして他人に迷惑をかけやすい下級怪人。自分のフェチを制御できない連中である。
次に自分のフェチを制御した結果、なんか世間に役立っている上級怪人。
今までの事件を整理すると、この3種類が確認されている。
巨大合体ロボを持っているところからして、資金力も相当のものだ。
恐らくはコネクションもかなりのものを持っていると思われる。
彼等の情報をこれ以上探るには……やはり「フェチ」でおびき寄せるしかないだろう。
だが、人様に迷惑をかけては悪名高くなってしまう。
これでも英司はクリーンな怪人なのだ。
何か、他人に迷惑をかけず、なおかつフェチーズをおびき出せるようなもの……。
英司は何人かの知り合いを思い浮かべ、それを思いつく。
「……酒だな。間違いねえ」
●年末年始から酒が飲めるぞ
「ということで依頼になったわけですが」
チーサ・ナコックはそう言うと、隣に立つ英司をチラリと見上げる。
「要は酒を呑む仕事です」
ザックリ言い過ぎだが、本当にそうなのである。
フェチとは母なる海のように広大だが、その中には「酔いフェチ」というものが存在する。
つまり「私、酔っちゃった……」とか「貴方と飲むお酒って美味しいね」とか「君と居るせいかな。俺は酒なんて得意じゃなかったはずなんだがな……」とか、そういうアレである。
ほんのり酔って顔を赤らめる人って可愛さがあるよね的なフェチである。
なら、そういうのを演じればいいのか?
否、否である。
とことん呑んでダメ人間っぷりを晒せばいいのである。
何故なら酒でほんのり可愛らしさを晒したところで下級怪人しか釣れないのだ。
ならば酒クズっぷりを晒すことで、上級怪人をおびき寄せればいいのである。
いわゆる上級怪人に分類される連中は比較的常識人であることは分かっている。
おびき寄せてしまえばこっちのもの。
フェチーズに対する「理解」をより深めることができるし、上手くいけば新しい情報も手に入るかもしれない。
「まあ、要は……全力で宴会してこいです」
派手であればあるほど、ダメであればあるほど上級怪人が出てくる確率は高くなるだろう。
行け、イレギュラーズ!
呑め、イレギュラーズ!
ダメな大人の手本を見せつけてやるのだ!
- <秘密結社フェチーズ>楽しいお酒の楽しみ方完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年01月10日 22時22分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●経費で落ちるか落ちないかは重要
「これは仕事で、俺達ぁプロだ。こいつらを見ろ、面構えとアルコール臭が違う。決して遊び半分じゃねぇ、って事で領収書ローレットでいいんだよなチーサ。な?」
事前にギルド・ローレットで『やらかしスト』耀 英司(p3p009524)がそんな圧をチーサにかけていたのは、訓練された酔っ払いたちが集まったからである。
英司の財布で呑まれたら、ちょっと泣いてしまうかもしれない。
勿論、領収書はローレットである。安心してほしい。ただし請求書は依頼の経費として英司に行く。慈悲はない。
大丈夫、もやしは安く大量に買えるから。あとレオンだってちょっとくらいは手加減してくれるかもしれない。
さておいて。
野外に年末年始で設営される「星見酒場」を借りきり、飲み放題プランである。だから安心してほしい。本当に。
ちなみに現在、待ち合わせの2時間前。
だというのに星見酒場には『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)の姿。
本人曰く「そうこれはゼロ次会」である。カッコよく言えばいいというものではない。
「お酒を飲むのが仕事で、全力で宴会していいなんて! うっうっ新田さんの顔を見るだけで憎き社畜の記憶が湧いて来たけど……今日は楽しく飲んでいいのよね! 思いっきりダメな新年会、お見せしましょー!」
一方、某ダンジョンでの小芝居に入り込み過ぎてトラウマになっているのは『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)だ。
寛治と同じく2時間前に来ているが、酒の勢いで間違い(物理攻撃)が起こらないか心配ではある。
「いやー、お酒飲むだけの依頼なんて、久しぶりですねー」
まだ酒を呑んでいないのに真顔で大嘘をつく寛治は11月に温泉で呑んでいる。
「全く年寄りになると早起きになっていかんが。こうやって早くから酒が飲めるならいくらでも早起きするんじゃがな」
そうしてサラリと混ざるのは『ろくでなし』ナール・トバクスキー(p3p009590)だ。
「外は寒いからの。儂の奢りじゃ、これでも飲んで温まるといいわい」
「おや、これはご丁寧に」
「美味しそうねー!」
ナールはホットワインの持ち込みまでしている。すでに始める気満々だ。
「おぉ、新田さんアーリアさんも奇遇っすね!」
と、そこに更に『赤々靴』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)も加わる。
何度も言うがまだ集合時間の2時間前である。
「わーい! やったー! お酒だお酒っす! 全力で楽しんで(宴会して)こいって言われたのなら! 全力で早くきて飲みまくるしかないっす! タダでお酒飲めるなんて滅多にないっすからワクワクするっす!」
そう、集まった面々からすればこれはタダ酒なのである。
お財布の中身というリミッターは完全に外れた。
2時間前から集まって、もう少しでも多く呑もうという気合が透けて見える。
「お酒を飲むだけの依頼なんて最高なのだー! わっはっはっー! ヘルちゃん普段は酒に呑まれない飲み方をしてるけど……今回の依頼、駄目な飲み方の方が推奨されてるから仕方なく、本当に仕方なく駄目な飲み方をするのだー」
そして更に、そこに『呑まれない才能』ヘルミーネ・フォン・ニヴルヘイム(p3p010212)が加わった。
何度でも言うがまだ2時間前である。
「じゃあ、駆け付け『M』の果実酒とヴォードリエワインね」
「ゼシュテル・スピリッツ&ヴォードリエ・ワインで過酷耐性(酔)を取得して本番に挑むのだ!」
寛治にもアーリアは、どんどんお酌をして身体を温めていく。
これは戦いの初手に付与スキルを使うような大事なことであるらしい。
そして得るのは過酷耐性(弱)である。もしかするともう酔っているのだろうか?
さて……そうしてゼロ次会が始まって。
集合時間少し前に英司と『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)、『トライX』ムサシ・セルブライト(p3p010126)の3人が現れる。普通はそうである。
「さて、今回の依頼は……は? 酒を飲んで騒ぐだけ? それだけか? うん、まあそれでいいならいいが……凄いなローレット。俺は困惑を隠せないぞ」
「ああ、勿論だ。酒も飲まずに騒いだら官憲に言い訳ができないからな」
戸惑うエーレンに、英司のジョークも絶好調だ。
「うっ、すでに酒臭いであります!?」
そして……この中で唯一の未成年のムサシがすでに出来上がっているダメな大人たちを見て後退る。
直視してほしい。そして、こんな大人にはならないでほしい。
「……お? 寛治もう飲んでんの? まだ一時間前……えっ、集合の二時間前から居た? アンタの事すげぇ好きになってきたわ」
「準備運動(アップ)は済ませてますから、乾杯即全力疾走で大丈夫です!」
ビアポンとかしながらエンジンも友好も温めたいなー、とか思っている英司も結構ダメかもしれない。
「じゃ、細かい事は置いといてかんぱァーーーーーーーーい!! ッカー!最高!払い先はローレットだァ!! あっちの方角にあざーーーーっす! 今日は店の酒蔵空にすんぞ!!」
「イェェェェェェェイカンパーーーーイ!」
モード:パリピカイジンで頭にネクタイの英司が音頭をとれば、酔っ払いたちが乾杯に続く。
ちなみに同じ格好の寛治はモードチェンジ:パリピリーマンである。
『ダメな感じの飲み会』で上級怪人バーテンダーを引っ張り出すという目的を忘れていないことを祈るのみである。
「えぇ、作戦は手筈通りに……」
アーリアが自然な動きで寛治からジャケットを受け取り特設のコート掛けのハンガーへ掛けていく。
どうにも、まだ社畜が抜けていなさそうだ。
「う? 作戦っすか? とりあえず飲んで楽しんで日頃の辛い事は忘れていこうっす」
レッドはもう忘れかけている。ちょっと危なさそうだ。
「バケツの準備はできている……ヨシ」
指差し確認などしているが、どうしてそれがヨシだと思ったんですかね?
「それじゃあれっつぱあぁぁりぃいいい!」
「ともあれ依頼であるならば大いに酒を飲んで、そして騒がねばなるまい。幸い酒は嫌いなわけではないし。かんぱーい!」
「おお、カンパイじゃ!」
エーレンもナールも乾杯のコールをあげてグイッと酒を呑む。
「全てのお酒に感謝して……カンパーイ!」
ヘルミーネもすでに顔が赤い。
「大丈夫で……ありましょうか……」
もうダメかもしれない。
●蒸留! バーテンダー!
「ふふーん、苦しゅうない近ぉ寄れ~ってね。よーしよしよしもっと飲みましょうねぇ、おねーさんのお酒が飲めない……!? そんなぁ!」
そんなアーリアの雑絡みもジャブ程度。お酒ジャブジャブ。
ダメな大人たちの宴はどんどんダメな方向へと進んでいく。
「一番新田! 『瓶ダ・瓶ダ』やります!」
「はい、寛治も飲まない訳がない! 瓶だ瓶だー!」
ビンダビンダーとリズムに合わせて飲むという悪い遊びを寛治が始めるが、コールする大人たちも相当ダメである。
ちなみに寛治曰く「通常はビール瓶ですが、焼酎ボトルでもまあいいでしょう」らしい。
どうしていいと思ったんですかね。どうしてですかね……。
そうして寛治が一気をきめると、アーリアが狙いすましように覚醒する。
「ご馳走様がぁー聞こえなぁーい!」
「はい、ご馳走様です!」
コールを受ければ即座に寛治は新しく一本瓶でキメる。
当然だが悪い呑み方である。こんな大人になってはいけない。
そして煽られれば応えた上で煽り返す。ダメな大人のダメ作法である。
「アーリアさんの! ちょっといいトコ見てみたい! そーれイッキイッキ!」
当然アーリアも一気に飲み干せば、コールは第2段階に移る。
「アーリア飲んで~英司が飲まない~~? わけがなーーい!」
「呑めないわけがわけがなーい!」
エーレンまでコールに参加すれば、アーリアが凄い動きで瓶を持って英司に接近する。
「英司くんも飲みなさ……そのマスクどこで飲むの!? んー、まぁこの辺かしらね!」
「女王陛下! さっきのウソ泣きとかキツいからやめ……えっいやまてまてそこはダメもっと右あーっそこそごぼごぼごぼ!!」
大惨事になっているが……英司の注文で此処には巨大な桶とポンプで噴水のように作られたシャンパンタワーが完成している。
そう、英司曰く此処はパリピのスペイン広場。浴びるように飲みたい。浸かってもいい。
周り中巻き込んで楽しみたいという、そんな酒臭い想いが結実したものである。
「シャンパンタワーか……」
その様子を見ながら、ナールは小さく呟く。
「酒による煌びやかなタワーは綺麗じゃが儂としては酒が零れると勿体ないの気持ちが先に出てきて余り楽しめないのう、と言っとるそばから零れとるじゃないか、やめー! それ以上注ぐなら儂の口に注ぐんじゃ!」
「問題ございません」
「む?」
バーテンに差し出された酒を受け取り、ナールは首を傾げる。
「こぼれたものも再利用できるような構造にしております」
「おお、そうかそうか」
ならば問題はない。
「ムサシの旦那は未成年じゃったな、流石に仕事でお主に飲ますと後がこわそうじゃのう」
「ええ。ノンアルコールドリンクも準備しておりますので」
そのムサシはさっきから勢いに呑まれているが、なるほど未成年なのでテーブルの上に乗っているのはノンアルコールだ。
「レッドさん、野球拳で勝負です。負けた方は一枚脱ぐか一杯飲むか。いざ、いざ!」
「新田さぁん面白い遊びっすね! いいっすよぉ、なんなら連戦! どっちかじゃなくて飲むも脱ぐもお互い両方!」
ちなみに結果として寛治がメガネクタイパンツマンになってレッドが服の上からスーツを着込んだ。
酔っ払いに理屈とか合理性とかを求めてはいけない。
「そう! お酒は百薬の長! どんどん飲むのら! イッキ‼ イッキ‼」
ヘルミーネのコールで寛治がビールの一気飲みを始めているが……本当にダメな大人である。
「英司さーん! ほら遠慮は無用っす! もう一本あげるからイッキにいくっす! ソレソレソレッ!」
「あ、映像には「※特殊な訓練を受けています。真似しないでください」って注釈よろしくチーサちゃん☆」
アーリアは此処には居ないチーサが見えている。もう結構ダメっぽい。誰もいない場所にいる何者かを抱き寄せているが、イマジナリーチーサがいるのかもしれない。怖い。
「一発芸! 焼酎の眼鏡割り、やります!ハイ!」
「眼鏡割にはこれ、あっ手が滑ったわぁ」
「目、目がああああああ!」
ついには寛治が焼酎のグラスに眼鏡をぶち込み、ノーガードの寛治の目にアーリアがレモンの果汁をシュートする。
「男子! 脱いで筋肉見せて、さもなくば一発芸しなさいなぁ!」
社畜の恨みを果たしたアーリアがパワハラとセクハラの混合技を繰り出し始める。
しかも筋肉フェチであろうか。
あと眼鏡を失った寛治がネクタイパンツマンになった。
「ヘルミーネさん、はろはろーっす。酒のツマミにワインなんてどうっすか??」
「お初にお目にかかりますヘルミーネさん、新田と申します。お近づきの印に乾杯を……はい、乾杯とは~? 『杯を干すと書く!』」
「うはは、さっきから一緒に飲んでるのだ!」
「ナールさんもはじめまして! このダメ人間! ダメ人間!」
「ガーハッハッハ! どうも初めまして、ダメ人間じゃ!」
レッドとネクタイパンツマンから何か見覚えのあるスーツマンになった寛治が意味の分からないことを言い始めた辺りで、いつの間にかマスクドネクタイパンツマンに変身していた英司がアーリアにコールをしている。
どうやら寛治が着ているのは英司のスーツであったようだ。
ちなみにフェイスマスクを外さないのは英司の嗜みだ。
「あー最高ゥ! はい女王様の言う通りーーー!!」
「女王様といえば! ここにパリピな飲み会の定番、王様ゲームのご用意があります!」
おおっと、この2人。どうやら王様ゲームを仕込んできていたようである。
「王様げいむ?なにそれ、面白そうじゃないっすか……! クジをひく……うぅん? これぇほぼ同じ数字なの気のせいっす?」
「あ、まだ仕込み中よぉ!」
「イカサマっす! こいつは一気っす!」
いきなりイカサマを仕込もうとしているアーリアが一気になっている横で、寛治が立ち上がる。
「王様わーーれ(我)だ! はい! 2番と3番が手元のグラスをイッキする! はい、2番は!?」
「寛治じゃ!」
「ご馳走様! はい、3番!」
「寛治なのだ!」
「はい、ご馳走様でした!」
「イエーイ!」
無茶苦茶である。あとせめてクジを引くフリはするべきである。
ちなみにナールもイカサマを仕込もうとしたので一気である。
「周りの青年の方達が……大変なことになってるであります……最初は皆和気藹々とした飲み会であったのに……なんか駄目な感じの飲み会に……なぜ、こんなことになってしまったでありますか……」
ムサシが呟くが、ダメ人間ばかりが集まったからである。
「あい、1番と4番が飲みくらべ勝負すっるるっす!」
「英司と英司なのだ!」
「よっしゃあ!」
もはや呂律も回らなくなってきている……が。
「全員王様のお酒を飲むのら!」
ヘルミーネは脱ぎ出そうとしたあげく、エーレンとムサシに止められ結果として寛治のスーツを着ている。
更に言えばキス魔と化したヘルミーネは今アーリアの手の中に納まっている。一番後々の被害が少ないからである。
それにしても寛治のスーツは今日無事に返ってくるのだろうか?
「ねーえ、今日の私の気分に合うお酒をお願い……今夜は飲みたい気分なの」
アーリアもバーテンに絡み始めている。
「バーテンダーさんも一杯どうです? 客の奢りを断っちゃあ、バーテンダーの名折れってもんですよ?」
「申し訳ありません。仕事中ですので」
「ガーハッハッハいやー酒が上手いなバーテンダーの旦那次のオススメをお願いじゃ、ガーハッハッハ」
寛治もナールもダメな感じにダメなダメ人間になってきて。
「あ~あ! こんなにも美味しい物を飲めないなんて可哀そうなのだー! ……今ならヘルミーネお姉さんの飲みかけのお酒をちょこっと融通してもいいのら? それともヘルちゃんのお酒は飲めないの? ……ヘルちゃんの事嫌い? 一緒に悪い子になろうよ……」
そしてついにはヘルミーネがムサシを涙目上目遣いで悪い道に誘惑し始める。
「――いや待て。待てヘルミーネ。さすがに未成年に飲ますのは看過できぬ。自分で取ったグラスは自分で飲むかせめて大人に飲ませなさい!」
そこに、流石に看過できなかったエーレンがムサシとの間に立ちはだかって腕でブロックする。
「ほら自分で! 未成年へのアルコール提供はハイ・ルールで禁止されております!」
ヘルミーネに呑ませながら、エーレンは思わず叫びたくなってしまう。
「なんかこういう格闘戦練達の映画で見たなぁ!? こんなダメなやつじゃなかったけど!! あと英司もコール禁止だ!」
「あ? 未成年ん? ウチのシマじゃ15歳以上成人だから大丈夫大丈夫内なるパンドラもそう言ってる。よく考えろよ、普段の依頼でモツ抜いたり抜かれたりしてる以上に体に悪いと思うか? 見ろよこの瓶……キラキラして綺麗だよなぁ、はい、ジュース」
「酒の瓶だなあ!?」
孤軍奮闘するエーレンを見ていたバーテンダーが、ふうとため息をつく。
「本来であれば関わるつもりはなかったんだが……此処までダメだと見過ごせんなあ」
「あ、やっぱり『そう』なんだな」
なんかこんな場所にいるバーテンにしては無駄に美形なので絶対そうだろうとエーレンは考えていたのだが……バーテンは腕をビシッと前に向けると叫ぶ。
「蒸留!」
ブオッと沸き上がるのは水蒸気じみた何か。およそ0.05秒のうちに金属スーツのヒーローじみた姿になったバーテンが、そこに登場する。
「酒乱特効バーテンダー! ダメな呑み方をするダメ人間ども! 一発その酔いを醒ましてくれる!」
「よし、この際バーテンダーと協力して実力行使だ。数名なんか叩いて直すまでもなく自分でダウンしてるやつもいるが」
そう、さっきからレッドがバケツに頭を突っ込んでいる。さておいて。
「……っとと! 困惑している場合ではないでありました……! 宇宙保安官として、やるべきことはひとつ! 暴漢達を鎮圧する! それが自分のやるべきことであります!」
おっと、ムサシの中で英司たちの分類が暴徒になっている。完全にダメな大人に分類されてしまっているようだ。
「バーテンダーさん、ヘンタインの皆さん、行くでありますよ! フェチーズ云々抜きにしてまずはこの場を抑えるであります!」
「……! なるほど、これは作戦か……作戦、か……?」
「作戦であります!」
「その通りだ!」
ムサシとエーレンが勢いで押し切って、バーテンダーが指を鳴らせば黒タイツの戦闘員「ヘンタイン」たちが「イイーーー!」と叫びながら現れる。
酔っ払いでも歴戦のイレギュラーズたちは勿論強い。あっというまにヘンタイン達は蹴散らされていく……が。
「トウッ! シェリーフキーック!」
「ここが!(ぽこ) 貸切で!(ちゃか) 良かったな!(カーニバル!)」
「よし、今だ……! バーテン……ダイナミック!」
ムサシとエーレンの酔い覚ましの一発からの、必殺バーテンダイナミック。
一気に酔いの覚めた悪い大人たちが死屍累々となった中でエーレンが全員に布団をかけていく。
「なんかなあ……ひとたび宴会となるとみんな気持ちよく酔っぱらってしまって、俺はこういう役回りが多くてなあ……でも嫌いじゃないのはなんでだろうな……」
「分かりますよ。私たちの組織も似たような感じです。まあ、組織に組み込むことでコントロールしている部分はありますが……」
聞きながらエーレンはなるほど、と思う。
どうやら上級怪人と下級怪人の関係は酔っ払いの制御に似た部分があるらしい。
フェチーズは思ったよりもマトモな組織……なのだろうか?
「あ、連絡先とか交換できるでありますか?」
後々の為にとムサシがそう聞くと、バーテンダーはちょっと気遣うような視線を向ける。
「君……うちの組織がフェチーズと知って尚入りたくなるほどに抑えがたいフェチがあるんですか……?」
「は!?」
「そういえば宇宙保安官がどうとか……うちにフェチレッドっていうのがいるんですが、話が合うかもしれませんね……」
「いやいやいや! 誤解があるでありますよ!」
「隠す事はありません。フェチは制御できる。方向性を正しくすれば世界を救うことだって」
「ともかく! よい子とよいイレギュラーズの皆さんは酒は飲んでも飲まれるなでありますよー!」
ムサシがそんな風に叫んで締めに入る。
ちなみにだが……連絡先の交換は出来た。全員で共有したので、今後の窓口となるだろう。
あと寛治のスーツは後日ちゃんとクリーニングされて返ってきたそうである。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
すごい……見事にお酒にプレイングを振り切っている……!
愛すべきダメ人間の皆様、ありがとうございました!
GMコメント
依頼にかこつけて人の金で酒を呑むシナリオです。
未成年の方はジュースです。ダメな大人を見て「こうはなるまい」と決心しましょう。
というわけで、野外に年末年始で設営される「星見酒場」を1日借りきれます。
いつから飲み始めるかは皆さんの自由です。
皆さんのダメっぷりによって出てくる怪人が変化します。
・和気あいあいとした何の問題もない呑み会をしている場合
(下級)怪人酒男
程良く顔が赤くなる程度の酒を見極める能力を持った怪人。エプロンをつけた店員さんっぽい姿。
「貴方への奢りです……」とか言いながら酒を出してきます。
いざ戦闘となると戦闘員のヘンタインを多数繰り出してきます。
攻撃技はお酒を射出する「アルコールビーム」。喰らうと足腰がフラフラになります。
質が悪いので間違いなく戦闘になるでしょう。
・なんかもうダメな感じの呑み会をしている場合
(上級)怪人バーテンダー
ある時はバーテンダー。しかしてその実態は!
「蒸留!」の掛け声でメタルヒーローっぽい姿の「バーテンダー」に変身するのである!
冷凍ビームガンとブオンと鳴るアイスブレード(光るやつ)で攻撃を仕掛けてきます。
どんな酔っ払いも一撃で酔いが覚める「バーテンダイナミック」も使用可能です。
こいつも戦闘になるとヘンタインたちを繰り出してきますが、戦闘になるかは皆様次第です。
※なお、「バーテンダー」ルートを選んだ場合は「タチの悪い酔っ払いの皆さん」VS「普通の酔っ払いの皆さん&バーテンダー」に持ち込むことも可能です。
この場合、タチの悪い酔っ払いの皆さん(プレイングにてご指定ください)を叩いて治すことがクリア条件となります。バーテンダーとも仲良くなれそうです。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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