シナリオ詳細
雪まつりを成功させて
オープニング
●積もらない雪
「明日には雪まつりだっていうのに、雪積もらないね」
ネクストにおける幻想、レジェンダリアに位置する小さな村で子供がそう呟いた。
辺りにはふわふわと綿のような雪が宙を漂うもののそれは決して積もることなく、レンガの敷かれた地面に落ちて溶けるように消えていってしまう。
「今年の雪まつり、もしかしたら開催できないかもしれないね」
「そんな……ボクずっと楽しみにしてたのに、どうして中止にしないといけないの?」
毎年、この時期になれば決まって雪の白い絨毯ができていたのだから、誰もが中止しなければいけない理由に答えることができなかった。
「でも、雪がないと雪まつりはできないでしょ?」
「どうして雪がないの?」
偶然居合わせたプレイヤーが訳を説明したとしても結果は変わらない。
この村のNPCにとってこの時期の明日に雪が積もることは当然であり、もっと言えばイベントを開催できないパターンが組まれていなかったのである。
「明日には雪まつりだっていうのに、雪積もらないね」
「…………」
会話パターンがこれ以上用意されていない子供の呟きに、そのプレイヤーは白くて小さなため息を漏らすことしかできなかった。
●雪を集めて
「どういう訳か、降る筈の雪が全然積もらないんです」
それはまた、とある人物にそっくりな姿をしたNPCも同じだった。
同じように電子の世界で生を受け、その世界をまるで現実世界のように――違う、彼らにとっての現実世界はこのネクスト世界なのだ。
「普段なら30cm以上は積もっている筈なんです。でも今年は何故か1cmも積もってなくて、このままじゃ雪まつりが開催できないんです」
聞けば雪まつりは、村のNPCがプレイヤーと共に積もった雪で“かまくら”や“雪像”を作って遊ぶ一種の季節イベントらしい。
現実世界であれば雪が積もらなければ中止になるのは仕方のないことだが、プログラムによりイベントが設定されているネクスト世界にとってイベントの日に雪が積もらないのは『イレギュラー』だと言えた。
「中止にしちゃ駄目なんです。だから、村に雪を積もらせてはいただけませんか?」
他とは僅かに異なるルーチンで動いていたそのNPCは新たなクエストを発行した。
想定されていない状況下、限られたプロセスを模索し辿り着いた唯一の活路……。
――NPCにより、クエスト『雪まつりを成功させて』が発行されました。
――これより、フィールド『吹雪く雪原』へ移動します。
- 雪まつりを成功させて完了
- NM名牡丹雪
- 種別クエストテイル
- 難易度-
- 冒険終了日時2022年01月14日 22時21分
- 参加人数4/4人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●
ネクストにおける天候はクエストと同じくプログラムによりイベント処理されている。故に、イベントにより雪が降ると予定されていれば必ず雪が降るし、それが雨なら必ず雨が降るのが道理だ。
では、『空から降る雪と地面に積もっている雪は同じなのか』という話をしよう。
それが現実世界であれば間違いなくそうと言えるが、ネクストにおける――少なくとも雪が積もる筈だった村とイレギュラーズが転送された雪原は違う。今まさに降る雪こそ『映像』として処理されているが、地面にある雪はあくまで『オブジェクト』なのだ。
「……ドロップアイテムで何とかできちゃうのがネクストらしいけど」
腰程度に満たない大きさのスノーゴーレムがうろつく雪原のサクラメントで『灰色模様』グレイガーデン(p3x005196)は白い息を吐きながら呟いた。
降る雪は積もらないのにオブジェクトの雪があるということは、究極的に言えば『雪が降らなくても雪は積もる』のである。村に雪が積もらなかったのは明らかなバグだ。
「私もお祭りは好きですよ、とはいえ雪まつりはまだ体験したことがないのです」
開催できるかはイレギュラーズの活躍に掛かっているが、防寒着を着込みつつも手を擦る『戦火よ舞え』アメベニ(p3x008287)は、村で開催される予定の雪まつりに参加する心づもりでいた。
やる気は十分、防寒着の隙間に入り込む冷たい空気が玉に瑕といったところだろう。
「贅沢(luxury)なOMATURIにしようじゃねーの! 正義の社長・崎守ナイト、社員のグレイも連れて参戦だ!」
雪の中でもずっしり構えるように見えた『(二代目)正義の社長』崎守ナイト(p3x008218)は、胸の中で現実世界の兄のことを思い出していた。今はまだ手の届かないクソ兄貴――立つはずのない鳥肌が立つ感覚は、きっと雪の寒さのせいだ。
「なぜむらのふきんで雪がふらなくなってしまったのか、それはわかりませんが――わたしはゆきがっせんを楽しむしょぞんです」
サクラメントからそう遠くない場所で雪をかき集める『弾丸の証明』樹里(p3x000692)は、純粋な眼差しで辺りをうろつくスノーゴーレムを見つめた。いつもは何もないかもしれないが、今回そこにはスノーゴーレムがいる。確かにいるからね!
さておき、スノーゴーレムたちはやっとイレギュラーズのアバターを敵と認識したのか、雪玉を構えた。激しい雪合戦バトルが今、ここに始まる。
●
「これでまず、一体だ!」
グレイガーデンが投げた雪玉が鋭くスノーゴーレムを貫き、雪へ戻す。
わかったこと、まず普通のスノーゴーレムなら雪玉で簡単に倒せる。次に奴らは目が悪く、二十メートル程まで近付いてもこちらが見えていない。そして何より、例えこちらに気付いても軽く雪玉を投げて来るだけで、ダメージは全く無いことだった。
「あふぅ……やりましたね?」
丁度、スノーゴーレムが投げた雪玉が樹里の頭にポフンと命中したが、威力乏しく雪玉は砕けて消滅する。雪玉の飛距離が足りていないことすらあった。
「せいく、がいてんよりいっせつ、“右の頬を打たれたら左の頬を差し出せ”――ほんとーの意味はことばどおりでなく、もっとふかいものだったりするのですが……いまのわたしはようじょなのでよくわかりませんね」
ちなみに“右の頬を打たれたら左の頬を差し出せ“という言葉の意味は、”悪に対し同じ悪で仕返しをするな“という説もあれば、昔は自分より低い身分の相手を掌で殴ると手が穢れる為、”右利きの相手に左の頬を差し出し、掌を穢してやれ“という説もあるらしい。
頬を膨らました樹里が投げ返した雪玉に命中したスノーゴーレムは、仄かに光る雪の結晶をドロップし崩れてただの雪に戻る。先程グレイガーデンがスノーゴーレムを倒した跡にも同じような結晶が落ちていることから、確かに雪玉で倒した時のドロップ率は良いのだろう。
「実は私、雪合戦するの初めてです」
「いや嬢ちゃん、初めてなのは判るが――それはちと大袈裟すぎねぇか?」
式神と嵐の聖騎士を率いる三人がかりで小さなスノーゴーレムを引き寄せる崎守ナイトがそう言いながら眺める先は、まるで要塞を築くが如く雪の壁を作り、戦争でも始めるのか如く雪玉という砲弾を作り上げるアメベニ最終防衛要塞(仮)。
子供が喜びそうな、それこそ無邪気な樹里が見たら目を輝かせて穴を開けたくなるような綺麗な壁はスノーゴーレム如きの弱っちい雪玉では崩れたりしない。颯爽と素早い動きで壁の裏側から反撃を入れるアメベニは崎守ナイトの周りうろつくスノーゴーレムを瞬く間に倒していくのだが、何だろう……言葉に出来ないこの、この!
だがしかしだ、こんなほのぼの雪合戦している様子をただ御送りしているだけでスノーゴーレムたちは満足するのだろうか。否、満足するわけがなかろう!
「……中に石を入れても雪玉カウントだよね?」
ここが仮想世界でよかった! ――良い子は絶対真似しちゃダメだからね!
でも石の入った雪玉の威力は絶大。高いステータスを持つアバターが投げるのだから、それはスノーゴーレムの腹部に大穴を開けながら一直線に飛んでいく。
良かった! 雪の結晶を落としたから雪玉カウントだ!――そう思った束の間だった。
【ガタガタガタガタガタガタガタガタ、ウィーン、ボッ!!】
「!?」
次の瞬間、石入りの雪玉を投げたグレイガーデンに何かが飛んできて数メートル吹っ飛んだ。
「なんだぁ!? 何が起きた!!」
突然の出来事に崎守ナイトが声を張り上げ、何かが飛来した方角を確認すれば、そこにはやっぱり小さな子供が喜びそうな――それどころじゃない。高さは三メートル程度だが全長は十メートルオーバー、グレイガーデンを吹き飛ばしたとされる巨大な主砲を構えた大(きな戦車)型スノーゴーレムがいるではないか。
「くっ、は……全然痛くないけどびっくりした!」
「出ましたか、やはり備えあれば憂いなしですね! 皆さんこちらへ!」
真打登場に面白くなってきた様子のアメベニは、自ら作り上げた要塞へ崎守ナイトとグレイガーデンを招き入れ、徹底抗戦の準備を始める。
大(きな戦車)型ゴーレムは最終防衛要塞へ向けて、先までのスノーゴーレムとは比べ物にならないくらいの砲撃を行うが、その程度じゃ要塞はビクともしない。
「社長からのgorgeousなお年玉、受け取りやがれじゃ(ボフッ)」
おっと、要塞から顔を見せて雪玉を投げようとした崎守ナイトの声が途中で途切れたのは気にしちゃいけない。だって同じく雪玉を投げようとしたアメベニもグレイガーデンもまとめて砲撃にやられて雪まみれになっていたから。
さて、双方一歩も譲らない雪合戦争になっているが、何かお忘れでないだろうか。
「いちばん、樹里、いっきまーす」
声は大(きな戦車)型ゴーレムよりもっと坂の上の方から、高らかに手を挙げて宣言した樹里は何を考えたかゴロゴロ前転しながら坂を転がり下りてくる。
要塞にいた三人が気付いた時には、大(きな戦車)型ゴーレムが気付いて主砲を反転させようとした時には、はたまた樹里が目を回し始めた時には既に遅かった。
「ウ……これがいちばんはやいと思います」
迫真のゴーレム討伐RTA決め台詞と共に小さな段差で跳ねた樹里入り大きな雪玉は、一直線に主砲の真上を捉えると体重を乗せた絶大な威力でゴーレムを薙ぎ倒した。
【ピキッ】
ついでに、入れちゃいけないヒビも入れて――。
「ねえ」
「おう、どうした?」
「『雪だるま式に膨れ上がる』って言うじゃない?」
「おう、それで?」
「斜面でも同じような事が起きるだろうしさ……」
「「…………」」
そこまで聞いた崎守ナイトとアメベニは、どうしようも無いと一目散に逃げだした。
【ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ】
「ウワー! だから嫌な予感がしたんだよ! 雪崩、雪崩だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
●雪像に命を
「雪、積もったね」
「おう、積もって良かったな!」
「えへへ、今年も雪で遊べるんだ!」
相変わらずNPCの振る舞いは単純だったが、雪の絨毯の上で子供達とスノーゴーレム達が雪合戦する様子は中々に新鮮なものだった。
あれからというもの、巨大な雪崩に襲われた御一行はあえなく全滅かと思われたが、雪に揉まれながら奇跡的に全員無事。サクラメントを掘り起こす必要こそあったが、多くのスノーゴーレムが雪崩に巻き込まれ、結晶へと姿を変えていた。
「……これ、お持ち帰りできない? やっぱり無理? そっかぁ、暖かい屋内じゃ溶けちゃいそうだもんね……」
集めてきた雪の結晶はスノーゴーレムたちの核のようなものだったらしい。
淡い冷気を放つそれは、暫くすると沢山の雪を纏いながら元の姿に戻り、雪の降らなかった村に雪を積もらせたのである。
「がくしきある人のえいちは、かんかのきかいによりてもたらさる……いみはわかりません」
「難しそうな言葉ですね。私も意味は分かりませんけど」
「ふふん、えっへん」
グレイガーデンはロボット兵の形をした大型スノーゴーレムに目を輝かせているし、アメベニと樹里は遠くの方でスノーゴーレムや村の子供達と雪合戦の続きをしている。
「祭りやるなら、俺らも出店していいだろ? B.R.Cはズバリこれ!『ダンシング金魚掬い』を提供するぜ! 極寒の地でレッツ金魚すくいじゃねーの!」
その日の村はいつまでも、ずっと活気で溢れかえっていた。
きっと来年も祭りは開催されるのだろう。
もしかしたら、来年もバグが起きて雪が積もらないかもしれない。
それでも多分何だかんだ解決できると思うから、きっと、きっと……。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
牡丹雪です。
初のクエストテイルになりますが頑張ります。
●状況
とある村では毎年『雪まつり』を開催しているそうです――が、バグの影響か前日になっても全く雪が降らず、このまま開催できないとNPCはバグの影響でどういう挙動を起こすか分からないとのこと……。
というわけで、皆さんには雪山でドロップするアイテムを集めて頂きます!
●目標『雪の結晶を沢山集める』
皆さんが転移した雪山にはスノーゴーレムと呼ばれるエネミーが無数に存在します。
そのエネミーは倒すと確定で雪の結晶を落すらしく、それを出来るだけ沢山集めることが今回の依頼の目標になります。
なお、開始地点はフィールド『吹雪く雪山』のサクラメントから始まります。
●フィールド『吹雪く雪山』
吹雪いて視界が少し悪い雪山です。
雪が積もっているので足元も悪いですが、どちらも戦闘にそこまで支障はありません。
サクラメントには明るい松明が設置されているので、遭難の可能性も限りなく低いでしょう。
●敵
・スノーゴーレム×無数
1mくらいの雪だるまみたいな可愛いゴーレムです。
地面の雪を投げつけて攻撃してきますが、戦闘力はほぼ皆無です。
通常攻撃で倒しても雪の結晶はドロップしますが、丸めた雪を投げつけて倒す方がドロップ率は格段に良いとか何とか。
・スノーゴーレム(大)×数体
5mくらいあるカッコいい雪像のゴーレムです。
例の如く戦闘力はあまりありませんが、大きな雪玉を投げつけてきます。
特性は通常のスノーゴーレムとほぼ変わらないので、こちらも大きな雪玉をぶつけてやりましょう。
●サンプルプレイング
例)雪山の斜面を生かして大きな雪玉を転がして攻撃するよ!
それでは、ご参加お待ちしております。
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