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シナリオ詳細

ローレットPvP ~Cream or Jam~

完了

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●スコーンはクロテッドクリームが先か、ジャムが先か
 ホーミングする雷の魔術弾を連続したバックステップで回避し、最後のスパークを後方宙返りによってよけると、アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)は白黒チェック模様のタイル床へと着地した。
 汗ばむ眼帯にスッと指を通してから、弓に手をかける。
 つるはあるが矢のないそれは、まるで矢があるかのように引かれ、そして現に灰色の矢が生み出される。
 放たれた矢は青白い軌跡を描き、そして仮面を付けた相手の眼前で炸裂。巨大な線香花火のように電撃を散らした。
 相手は六角形を組み合わせたような魔術障壁を作り電撃を防御すると、黄金色のナイフを逆手に握り急速接近。
 アッシュもまた腕から青灰色のグラデーションがかかった魔法の刃を生やすと、接近してくる相手の斬撃を受けた。

「――そこまで!」

 鋭く響いた声に、アッシュも相手も、ぴたりと止まる。
 パチパチというまばらな拍手と、感嘆の声が周囲から漏れた。改めて周囲を見回してみれば、そこは広い広いダンスホールである。
 あまりに広く、サッカーでもバスケットボールでも好きなだけできそうなほどだ。
 しかしホールというだけあって天井は高く、縁側にはそれぞれテラスタイプの観客席が設けられている。
 美しくしつらえられた手すり越しに、身なりの良い貴族女性が立ち上がり手をかざした。
 手にしている指輪は何かのマジックアイテムのようで、手すりとホールの間にはられた強固な魔術結界を解除するためのものらしかった。
 一度複雑な紋様が空中にはしったかとおもうと、どれだけ強い衝撃をあたえても崩れない透明な魔術結界が解けていく。
 そして、指輪をしていた貴族の女性が威厳在る声で言った。
「ごくろうさまです。やはり、これでは決着のつきようがありませんわね」

●庭にティーカップを
 綺麗に整えられた芝生の庭に、白いテーブルが置かれている。
「晴れの日に、明るい場所でいただく紅茶がいちばん美味しいとおもうの」
 アッシュを挟んだ反対側では、ティーカップをつまんだ女性。年の頃は70程度だろうか。皺は深いが、上品で美しく、そして綺麗な目をした女性である。
 美しいまま枯れる花があるとしたら、きっとこんな風だろうと人に思わせる、そういう女性だが。
 アッシュたち……つまりはローレット・イレギュラーズたちが呼ばれたのは、彼女の管理する村であり、彼女の屋敷の庭である。
 この土地は古くから紅茶の産地として有名であり、この家の紋章がスタンプされた茶葉は貴族の間でも贈り物として重宝される。
「良い季節ね」
 カップに口をつけた女性が、赤く紅を塗った唇をやさしく歪めた。
 オータムナルが出回る時期だ。アッシュもその言葉に頷いて、同じようにカップに口をつけた。
 音もたてずカップを置くと、女性はどこかチャーミングに首をかしげてみせる。
「古くから、この時期になると村ではお祭りをやるのよ。茶葉ができあがって出荷されるから、畑の者たちが暇になるせいかしらね」
 それまで熱心に働いてきた者たちへの慰労でもあるし、今年の茶葉を盛大に売り出すためのキャンペーンでもあるのだろう。アッシュたちも、この村にはいってから皆のウキウキとした様子は目についていたし、広場が飾り付けられていたのも目にしていた。
 よもや、お祭りに招待するためだけにローレットに依頼書をだしたというのだろうか。
 ……などと思っていると、女性はぱちんと両手を合わせる仕草をした。
「けれど、村の若い子達がすこし困ったことを始めてしまったのよ。
 スコーンにクリームをつけてからジャムを塗るのか、ジャムをつけてからクリームを塗るのかで論争になってしまって、祭りの最中に取っ組み合って決めようっていうの」
 『おかしなことを言うでしょう?』と優しく笑う彼女に、アッシュはぱちくりと瞬きだけをして返した。
「きっと一年の労働から解放されて、気が大きくなっているのね。けれど……私はあんまり、止めてあげたくないのよ。ガス抜きをしてあげるのも、領主にとっては大切なことだから」
 でしょう? とでも言うように片眉を上げて見せる女性。
 彼女が指を鳴らすと、小柄な男性がポスターを持ってやってきた。
 それをスッとくるくると広げてみせる。
「それで、駆け試合をしたらどうかしら……って」
 ポスターには、『ローレットVSローレット』という刺激的なフォントが描かれ、アッシュや他のイレギュラーズたちの肖像画が描かれている。
 どうやら、クリーム先派とジャム先派に分かれて代理戦争をしようというはこびらしい。賭けるのはそれぞれの派閥のプライドといったところか。
 なるほどそれで初めに戦わせたのですね……などと呟いて、アッシュは了承の頷きを返した。
 満足したように頷きあう女性。
「ところで……あなた、『カップに先にミルクを注いでから紅茶を淹れる』のね?」
「このほうが美味しいでしょう?」
 互いの顔を見つめ合い、ぱちくりと瞬きをする二人。
 若干の不穏さに、ポスターを広げていた男性がゆっくりと後退した。

GMコメント

 このシナリオでは依頼主およびギルド公認のPvPが発生します。
 クリーム先派とジャム先派の代理として、3対3のバトルを行ってください。
 これ自体は、別に自分がどちらの趣味でなくても構いません。きのこたけのこ代理戦争のようなものだと受け取ってください。

●試合序盤
 2チームに別れバトルを行います。
 特別なルールはなく、OP冒頭で描いたような屋内の仕切られたホールでの試合になります。
 特別な結界のおかげで周囲の観客に流れ弾がいくようなことはないので、自由に戦ってください。
 ホールとしているのは遮蔽物や自然環境の影響をカットするのと観衆をつける目的以外にはないので、広さやその上限に関してはあえて気にしない方向でいきましょう。やりたくなったら馬で突っ込んでもいいよ。

 ぶっちゃけ『どっちが勝ったから得』みたいなこともないので、気軽にお楽しみください。パンドラ復活(通称)を適用するかどうかも気軽にご選択ください。

●乱入
 ネタバレしますが、試合後半になると両派閥の若者達がヒートアップして乱入してきます。
 一応彼らの代弁者として戦っているので自派閥の若者達がやられては困ります。相手派閥の若者達を鎮圧したり、逆に守ったりしてわちゃわちゃしましょう。

 若者達も結局の所ガス抜きの材料が欲しいだけなので、楽しくわちゃわちゃしていると最終的にはみんなスッキリして落ち着くことでしょう。
 新たな火種でもなげこまんことには。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。が実質的にはAです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もありますがなんとなくわかっています。

  • ローレットPvP ~Cream or Jam~完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年01月10日 22時22分
  • 参加人数6/6人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(6人)

ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)
不遜の魔王
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)
Le Chasseur.
※参加確定済み※
天城・幽我(p3p009407)
孔雀劫火
ネフェルティ(p3p010259)

リプレイ

●Cream or Jam
 空を、鳥たちが飛んでいく。
 ここは村の広場だ。刈り揃えられた芝生と、腰くらいまでの高さの柵でできた広々としたフィールド。その両サイドには、村を真っ二つに割る『スコーンにはクリームを先に塗る派』と『スコーンにはジャムからが正義派』がそれぞれの旗やタオルを掲げて並んでいる。
 今にも飛び出していきそうな彼らがそうしないのは、代表として三人のイレギュラーズがフィールドへと入っていったからだ。
「Nyahahahahahaha――!!!
 勿論、当たり前だがクリームだ。
 ホイップとカスタードはベーコンを彩る理で憎らしさの添えに相応しい。
 何、ジャムだと。柘榴は生で齧るべきだと解せないのか」
 いきなり常人に理解できない持論をぶちかます『同一奇譚』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)。
 が、高まったボルテージは既に充分であるようで村人のクリーム派たちは「そうだー!」と声高く吼えた。
 その勢いに乗って、ワインの瓶(村人提供)を振りかざす『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)。
「スコーンは、口に入れた時にジャムが華やかに香り、続いてクリームの優しい味が広がるのがあるべき姿。
 語るまでもない世の道理を捻じ曲げようとするなど、言語道断! そうでしょう、皆?」
 さっきよりずっと分かりやすい持論をうけ、村人達はより強い『そうだー!』を叫んだ。
「この戦いに勝って、私達の正しさを世に知らしめましょう! 薄汚い異教徒は、粛清でございますわー!」
 中にはヴァレーリヤの勢いにあてられて『異教徒に死を!』とまで叫ぶやつもいるあたり、祭りの空気はだいぶ暖まっているらしい。
「鬱憤晴らしの代理戦争とは、よくお考えになったものです。
 代理戦争という言葉にあまり良い思い出はありませんが……。
 其れは其れとして。此れも仕事ですゆえ、己が務めを果たすのです」
 クリーム派の代表として立った『plastic』アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)がヒュンと弓を振る。
 そしてぽつりと呟いた。
「あと紅茶はミルクが先です」
「あぁん?」
「なんだぁ?」
 後ろの方からちょっと不穏な声が聞こえたが、アッシュはスルーした。この先の展開がなんとなく分かった気がしたから、である。
 一方、ジャム派の面々も豪華だ。
 『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)は頭にさくっとフリルつきのカチューシャを被ると、はるか天空より飛んできたガントレットへ向け両手を掲げた。
 ばちんと手にキャッチするように当たり、展開し腕へとハマるガントレット。
 指を伸ばして開閉させると、握った拳を左右打ち合わせた。
「クリームがすべての味の土台。しっかりとした基礎の上にこそジャムの香りと甘みが成り立つのでありますよ。それをわからぬお子様舌めが!!
 クリームが先派など薙ぎ倒してやるであります!!」
 ウオーと叫ぶジャム派たち。もうフーリガン状態である。中には『殺せー!』とまで叫ぶやつもいた。
 毎年こんな感じでヒートアップしてる割に祭りが成り立っているのだから、きっと今日だけのテンションなのだろう。
 それを察してか、『どっちもおいしいと思うんだけど……』と小声で前置きしてから『孔雀劫火』天城・幽我(p3p009407)は咳払いをした。
「個人的には、ジャムから先に塗ってその上にクリームをかぶせた方が後味がすっきりするというのが利点だと思うんだ。
 ほら、ジャムって酸味があるし……そういう意味では甘いの苦手な人やもったりしたものが苦手な人でも食べやすい、という観点からジャム派に所属させてもらうね」
 ね? と念押しするように振り返ると、割とおとなしめのジャム派フーリガンたちが腕組みをしてうんうんと頷いた。
 そんな中に放り込まれて怖いのはネフェルティ(p3p010259)である。
 まともにぶつかったら瞬殺されかねない戦力差だが……だからこそここでは弁を立てねば。
「クリーム派の皆さん。よく口が回るようで結構ですが、欺瞞を撒き散らすのは捨て置けませんね」
 そう啖呵を切ると、ネフェルティは短い魔法の杖を取り出し斜め下へと振った。カチカチンと三段階に展開して伸びるワンド。隠されていた先端部のパープルクリスタルが淡く輝き、連動するように白いリングのはまったパープルクリスタルがネフェルティの周囲をくるくると周回飛行しはじめる。
 ネフェルティの首輪とリングは連動しているようで、首輪にはまった紫の石がちかちかと点滅をみせた。
「スコーンを口にした時に最初に触れるのがクリームだからこそ、そのクリーミーさとジャムの瑞々しい味わいが際立つのです。さる高貴なお方もお認めになられている事からも伺える通り、私達の主張こそが”正統派”なのです。邪道を正道と語り、世に広めんとしている不届き者は征伐しなければなりません!」
 語尾をあえて強めに言い切ると、ネフェルティはワンドを掲げて見せた。
「さあ行きましょう。正道は我にあり、です!」
 斜め上に飛び、カーブを描いて敵陣へと襲いかかるように動くパープルクリスタルが飛行する。追従するように同時に幽我も孔雀の羽のように広げた青藍色の炎を燃え上がらせ、エッダが先陣を切るように走り出す。
 対抗するようにヴァレーリヤが走り、アッシュが弓を構え、オラボナが嗤(わら)う。
 ヴァレーリヤのメイスとエッダのガントレットが激突したのと同時に、村人たちが一斉にオオと歓声とも咆哮ともつかぬ声を上げた。

●火花
 クリーム派一番の脅威は何か。頭数が合っている場合、大抵の場合決定的な有利不利がつきづらいこの世界ではあるがごく一部の偏った能力をもった者は例外である。
「何で在れ私の為す事は変わらず、嗚呼、肉襞に甘美を塗り憑けると好い!」
 オラボナはNyahahahahahahaと笑いながらずんずんと詰め寄り、エッダの攻撃を阻むべく割り込みをかけにいった。
 その様子に、僅か以上に目に嫌そうな光をうかべるエッダ。
 真面目に割り込まれた場合その対応にかなり手を焼くことになる。殴り倒すにはあまりに体力がありすぎ、無視しようにも必ずヴァレーリヤを庇いにくるだろう。実質的にヴァレーリヤのHPが7倍になったようなものである。
 オラボナを夢想拳で黙らせようにも、そのために手数を割けばその分ヴァレーリヤに打ち負かされる可能性が高まるのだ。
「こちらは任せてください!」
 そこで動いたのがネフェルティだった。
 パープルクリスタルをオラボナめがけて飛ばすと、紫色の魔糸を放ちオラボナを縛り付ける。
 実戦経験が浅いせいで狙いが甘いが、それでもゆっくりと動くオラボナを捕らえるには充分だ。オラボナは身体を縛り付ける糸を、自らの肉体を僅かに犠牲にしながら無理矢理解き突き進もうとする。だがそのたびに、ネフェルティの糸はオラボナに絡まり続けた。
「ほう……」
 オラボナに対する最大の対策は『無視すること』であり同時に『動かさないこと』である。
 彼女が味方をかばえない状況になれば容易に無視することができる。思い切り後回しにして最後は比例ダメージ型のBSを目一杯浴びせかけるなどしてじわじわ削ることで勝利できるのだ。
「今の実力で最大の成果を出すには……」
 ネフェルティは更にクリスタルを直接叩きつけオラボナの特殊能力を封殺しにかかる。特化した能力者だからこそ、『極端に弱い部分』があるものだ。ネフェルティはそこを的確についたのである。レイド級の強みをもつハイエンドタンクであるオラボナを止めるという、ネフェルティによる最小にして最適な指し手だ。
「然らば。
 たまには、本気で喧嘩するでありますかね。
 勝負でありますヴィーーーシャァ!!!」
「アッシュ、相手の回復役は任せましたわよ! この鉄くずのなりそこない(エッダ)は私が!」
 ヴァレーリヤは大技を繰り出すのを一旦やめ、メイスに激しい炎を纏わせ早口で詠唱を行った。
「『主よ、慈悲深き天の王よ。彼の者を破滅の毒より救い給え。毒の名は激情。毒の名は狂乱。どうか彼の者に一時の安息を』――」
 詠唱が始まると同時にエッダのラッシュが始まった。ガード姿勢のヴァレーリヤへとガントレットによる連続パンチを打ち込んでいく。
(正味なところ、スコーンだろうがズッペだろうがどうでもいい。
 敵として、”彼女”の真正面に立つならば……その役は譲れないのでありますよねぇ)
 詠唱が終わる前にエッダの夢想拳(パンチ)が綺麗に決まればこちらの勝ち。だが、ヴァレーリヤはカッと目を見開き最後のワードを叫んだ。
「『永き眠りのその前に』!」
 ゴオッと暴風の音と共に迫る灼熱のメイス。エッダは衝撃を覚悟し、フルガード――などはせずに拳にエネルギーを全て込めてたたき込んだ。
 ボウッと黄金に輝く拳が迸る。
 両者顔面に炸裂するメイスとガントレット。いびつなクロスカウンターは両者を派手に吹き飛ばした。
「追撃――ッ」
 幽我はここぞとばかりに青藍炎を燃え上がらせ、鳥のような形にして解き放った。
 まるで高く鳴く鳥の如く音をたて、ヴァレーリヤへと迫る炎。
 それを、白銀の矢が空中で打ち抜き破壊した。
「去る高貴なお方がジャム先派であることを表明し、邪道とも呼ばれるクリーム先派。然し、其の反骨の意気や良し。
 我ら小さな灯が、大火となって全てを飲み込む様を、見せつけるとしましょう」
 アッシュは弓に矢をつがえるような動作をすると、魔法の矢をそこに生み出した。矢は二つ。走って距離を詰める彼女の狙いは、なんと幽我とネフェルティの二人であった。
 二人はハッとして、そして両サイドに開くように散開。だがそれよりも早く放たれた矢がネフェルティの脚を射貫き、複雑怪奇な軌道を描いたもう一本の矢が幽我の手にキャッチ――された次の瞬間さらにもう一本が脇腹へと刺さる。
 バチンと走る電撃のしびれに、幽我は表情を崩した。
 アッシュは容赦なくネフェルティへと狙いをつけ、今度は白銀の矢にまばゆい光をこめてつがえた。
 凄まじい威力の矢を放つつもりだ。こんなものをうければネフェルティもただではすむまい。
「――させないよ」
 幽我は咄嗟に青藍炎の翼を広げるとその全てを凝縮。アッシュめがけて解き放った。
「――ッ!?」
 背に受けた炎がアッシュを包み込み、彼女の力を喰らっていく。更にもうひとつの炎がぶつかり、彼女の身体を焼き始めた。
 一進一退。どちらが勝利してもおかしくないような激しい戦いだ。
 だからこそだろう。(割と知っていたが)我慢できなくなった村人たちが一斉に柵を乗り越えフィールドへと飛び込んできた。

「全く、連中は馥郁に抗えないと視えた。
 つまり我等『物語』と同じと謂えよう。
 嗚呼、我が身を蹂躙し搾り尽くして味見し給え!
 Nyahahahaha!!!」
 俺も俺もと突っ込んできた村人に対し、オラボナは紫の糸を引きちぎって振り返りがしりと両手でそれぞれ一人ずつに掴みかかった。
「――珈琲にのせたクリームの悦びも忘れてはならない
 ――重要視すべきはワンダーの頭部だと知らないのか
 ようこそティーカップの中身は蜂蜜と砂糖と牛乳! 苦さは不要なのだよ!
 全ては総て嗜好品だ、因みにチョコレートはホワイト一色が良好!
 そろそろ茶葉が不足しているのではないか、何せ私がムシャムシャしたからな!
 NYA――HAHAHAHAHA!!!
 ハツは誰にも渡さない、さあ、終幕(フィナーレ)を賞味在れ!」
 相変わらず言っている意味が半分もわからないが、オラボナの超然とした空気は村人たちを恐怖させる。
「やっぱりこういうのは、拳で語り合ってこそですわよねー! ほら、アッシュもこっちに来なさい!」
 やっぱりこうでなくてはとばかりに起き上がったヴァレーリヤが、襲いかかってくるジャム派の村人めがけて神罰飛び膝蹴り(一旦神のせいにしておいて相手の顔面に膝をめりこませるヴァレーリヤの必殺技である)をたたき込んだ。
「結局のところ、騒げればなんでもよかったのではと、思いますが。
 これで禍根がなくなるのであれば重畳」
 アッシュは空に向けて白銀の矢を放つと、降り注ぐ神気の光でジャム派たちを一斉に鎮圧させた。
「人は自由で、選択する生き物です。其の上でクリームもジャムも、互いを尊重出来ればいいのですが。……紅茶はミルクが先という揺るがぬ真理がありますが」
「あぁん!?」
「はぁぁあん!?」
 クリーム派の一部が目をギラッとさせてアッシュを睨んだ。
「ミルクを先に入れたらカップの熱が逃げるだろ!」
「ミルク先入れ派には死を!」
 蟷螂の構えでとびかかってくる村人にキッと矢を向けるアッシュ。
 一方で。
「ええっと、どうしようかな……落ち着いて欲しいなあー!? 年末年始に怪我するのは尚更よくないと思うなー!?」
 幽我は両手をばたばたさせて村人から距離をとり、同じく逃げに徹したネフェルティと一緒に大量の村人たちを引き連れることになった。小動物を使役するファミリアーでは小鳥やリスを呼び出すので精一杯で、クマやらデカい鷹やらを呼び出して威嚇するまではできそうになかった。
 クリーム派の村人たちがその辺の棒きれを振りかざし追っかけてくる
「どうしましょう。殴り合いに参加するのはちょっと……」
 困り顔のネフェルティに代わって、エッダがザッと村人たちの前に立ち塞がる。
「なんだオラーやんのかコラァ!!
 掛かってこいやスッゾオラー!!」
 エッダぱんち(素手)で村人をまとめて吹き飛ばすと、シュッシュとシャドウしながら吼える。
「超党派新党ジャムもクリームも全部おさけにぶち込む党結成であります!! ヴァレーリヤ、お前を倒すのは自分であります、それまでは誰の手も……」
 とか言ってると群れで取り囲み殴りかかってくる村人。ぬわーと言いながら波にながされるエッダ。
「あああっエッダーーーー!?」
 お待ちなさいと言って酒瓶をぶん投げ走り出すヴァレーリヤ。

 もうしっちゃかめっちゃかになった会場を、パラソルの下で眺める貴族女性。
「今年も、いいお祭りになったわね」
 満足げにそう呟くと、召使いの男性に指でサインを出す。
 頷き、男性は空のティーカップにミルクを注いだ。

成否

成功

MVP

ネフェルティ(p3p010259)

状態異常

なし

あとがき

 今年も祭りは大賑わいだったようです

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