PandoraPartyProject

シナリオ詳細

小瓶に夢ひとつ

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「ユリーカ!!!」
「あれ、ミーロさんじゃないですか」
 顔を上げた『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は、いつになく切羽詰まった様子の彼女に目を瞬かせた。
 ミーロと呼ばれた女性はローレットを贔屓にしてくれる顧客の1人である。そして『瓶詰め屋』という少し不思議な店の店主でもあった。シーズンによっては忙しい彼女の店は、まさにその多忙な時期を終えたところではなかろうか。
「予約殺到で材料が足りないですか? それとも受けすぎて今後の予定に差しさわりが……ああ、雑貨市でしょうか」
「話が早くて助かる! 人手貸してぇー!」
 この通り、と両手を合わせるミーロ。今年も面白そうなオーダーが多かったのだろうか。店主であるとともに芸術家である彼女は、作品の制作で周りが見えなくなることが少々、いや多々ある。
 今もそう――シャイネンナハト直後に控える『雑貨市』の商品がまだできていないのだ。
 雑貨市、崩れないバベルにかけて『同人即売会的なもの』とか『クリエイターズマーケット』などの意味である。出店し、お手頃な価格で手作りしたものを来場者へ販売するイベントには、子供や貧しい人も訪れると言う。
 ひとときの優しい夜と、ささやかなプレゼント。それを喜ぶ彼らの顔が見たくて、来年出店者たちが頑張っているのだ。
「でもミーロさん、手先が器用な人ばかりとは限りませんよ?」
「それなら案を持ち込んでくれるだけでも! ゼロから考えるのとは違うし、ひとつひとつ違う方が買う人たちも楽しいだろうし! ね!!」
 量産はできないだろうが、それはもはやミーロの落ち度である。来年に対策することを願うしかない。今は少しでも数を増やすため、複数人の手と頭が必要な時であった。
「あれ、何か急ぎの依頼ですか?」
「あ、ブラウさん! ……は、今日はお休みでしたね」
 ブラウ(p3n000090)の姿にユリーカは手伝ってもらえるかもと目を輝かせるも、彼が非番であったことを思い出す。確か遊びに出かけるんだと言っていたような。
「ミーロさんのお手伝いなのです。今年も雑貨市に出店するそうなのですよ」
「あぁ……開催日って確か、そんなに遠くないですよね? 手伝いますか?」
 ローレットにも開催のチラシが舞い込んでいたのを思い出すブラウ。どの程度手伝いが必要なのかわからないが、かなり緊急のようだ。
「お休みでは?」
「手伝いついでに雑貨市を見て回れると思えば、特に気にならないですよ。それにミーロさんのお手伝いなんて『やりたい』だけで出来るものではないですし」
 ミーロは店主だが、特に店員を雇っているわけではない。全て1人で切り盛りできる能力があるのだ、普段なら。これは普段よりいくらか質が落ちていても問題ない……と言うと聞こえは悪いが、破格値で売る以上、芸術品と言われるまでに昇華しなくても良い。ある意味『手伝わせてもらえるチャンス』なのである。
「君がいいなら、人手があるに越したことはないよー。依頼書の作成、頼める?」
「ミーロさんからの依頼なら出さないわけにはいかないのです。急いで依頼書を作成しますね! ブラウさんはお手伝いよろしくなのです!」
 すちゃっと羊皮紙、ペンを取り出したユリーカ。それから程なくして、ローレットへ依頼が掲示されたのだった。



「さむいねぇ」
「はながいたいよー」
 はぁ、と息を吐けば白くなり。
 言葉に振り向けば鼻の頭が赤くなっている。
「おうちに入ればだいじょうぶだから、行こ!」
「うんっ!」
 手を繋ぐ姉弟。もう少し歩けば家が見えてきて、玄関扉を開けたら暖かい空気に乗って美味しい匂いが鼻をくすぐる。くぅ、と姉弟のお腹が揃って空腹を訴えた。
「ただいまー!」
「ただいまぁー!」
「おかえりなさい。あら、こんなに鼻を赤くして」
「こっち暖かいぞ」
 子供を見て母親は目を丸くし、父親は暖炉の傍で2人を呼ぶ。近づき過ぎないように気を付けなさい、とも付け加えて。
「ねぇおとーさん、また『ざっかいち』いってもいーい?」
「いきたいいきたい!」
「去年も行っただろう」
 何て言いながらも、ちゃっかりカレンダーへ目をやって予定が空いていることを確認する父。子供らは暖炉の上を指さしてまたあれが欲しいのだと訴える。
「小瓶?」
「うん!」
「ぜーんぶちがうんだよ」
 これは去年のものだから、今年は今年のものを。きっと来年もまた欲しいと言って増えていくのだろう。
「いいじゃない。飾っておいても綺麗だわ」
 料理をテーブルへ運んできた母が笑いかけた。この1年で邪魔になるものでもなく、子供達が飽きなく眺めていたのを彼女は知っている。
 問題は今年も出店があるかどうか、だが――。

GMコメント

●すること
 ミーロのお手伝い
 雑貨市で過ごす

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●章構成・スケジュールについて
 手伝い&雑貨市当日の2章構成です。だいたいシャイネンナハト後~年末あたりのお話になります。
 ペア・グループ参加の場合、タグか同行者IDをプレイング1行目へご記載ください。
 また、複数人で描写希望の場合、ほぼ同時に出す必要はございません……が、あまりばらつくと全員集まる前にリプレイが出てしまう場合がありますので、24時間以内程度でメンバーのプレイングを揃えて頂けると幸いです。
 年末年始あたりでシナリオとして締める想定ですが、人数によって前後します。

●瓶詰め屋『エアインネルング』
 ミーロが店主をしている瓶詰め屋。オーダーメイドで瓶詰めを作ってくれます。お値段はピンキリですが、シャイネンナハトには安価に大量の小瓶を作って売るようです。

関係作:
瓶に込められしモノは(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/1457)
瓶詰め屋『エアインネルング』(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/1550)
記憶と想いを込める瓶(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/3164)

●NPC
 店主のミーロとブラウ(p3n000090)が2章通して参加しています。その他、当方が扱うNPCであれば登場する可能性があります。
※レーヴェン・ルメス(p3n000205)は豊穣を訪れているため、登場できません。

●ご挨拶
 愁と申します。
 ミーロさんのお手伝いついでに雑貨市へ遊びに行ってみましょう。
 雰囲気を知りたい方は以下シナリオをご参照ください。
 それでは、どうぞよろしくお願い致します。

関連作:<Scheinen Nacht2020>瓶の中に夜を詰めて(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/4893)

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●第一章『小瓶作りのお手伝い!』
 雑貨市も目前だと言うのに商品が足りません。
 材料自体は揃っているので、自分で作ってみたり、ミーロに案を出してみましょう。

●具体的に何するの?
 ミーロの小瓶は中に小物を配置して、特殊な液を流し込み、蓋をします。ハーバリウムに似たものとお考え下さい。
 特殊な液の流し込みはミーロが一手に引き受けますので、皆さんは小瓶の中身、小物の配置や雰囲気を考える事になります。
 自分が持っているならこんなものが良い、かつて見たあの景色の雰囲気を小瓶に閉じ込めてみたい……などなど。複数人で来られるならその場で案を出し合ってみるのも良いでしょう。
 小瓶の中に入れる小物は大体用意があるでしょうし、小瓶を満たす液体も着色可能だそうです。

 大量に作る必要があるので、雑貨市へ持って行くために箱詰めしたり、個数を数えたりといった作業者も募集中です。

●場所
 ミーロの工房です。たまにワークショップなどするため、ちょっと広めの作業場所があります。
 6人掛けテーブルと椅子が置かれており、今は一部のテーブルを材料が埋め尽くしている状態です。ここから必要なものを持って行って作業しましょう。

●NPC
 ブラウは作業机に向かって小瓶を作っているようです。シャイネンナハトのような星降る夜を作りたいのだと分かります……が、少々苦戦気味です。
 ミーロは皆さんの作る小瓶へ液を流し込んだり、材料を補充したり……ちょっと忙しそうですが、話しかければ作業しながらでも答えてくれます。

  • 小瓶に夢ひとつ完了
  • GM名
  • 種別ラリー
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2022年01月11日 21時40分
  • 章数2章
  • 総採用数10人
  • 参加費50RC

第2章

第2章 第1節

 感覚もなくなってしまいそうな寒さも、この日ばかりは和らぐ。代わりに空気を満たすのは人々のざわめきと雑踏の音だ。
「おとーさん、こっち!」
「まってぇー」
 大人の合間を子供がかけて行き、後ろから危ないぞと叱る声。落ちる六花がふくふくとした子供の頬に乗って溶ける。
「すごいですねぇ」
「そうでしょー。ブラウも見て来なよ」
 ほう、とあたりを見渡すブラウにミーロが促す。彼女は当然ながら店番だ。誰かが代わればひととき歩いて回るだろうが、彼女としても店に来てくれる客の顔を見たいのだろう。
 前回と同じように幻想の集会場を借りているが、風が凌げるだけではどうしても寒く思えてしまう。離れた場所にある数カ所の暖炉に近づけば多少はマシだろう。くつろぎスポットにもなっているようで、大人たちがホットココアなどを飲んでのんびりしている。
 では子供は、というと年長者が見守りながら遊んだり、出店を覗いたりしているようだ。集会場の中からも外からも楽しそうな声が聞こえてくる。
「もしかしたら、イレギュラーズでも出店してる人はいるかも。回ってたら見知った顔に出会うかもしれないよー」
「それは楽しそうですね!」
 どんな店が出ているのか、考えるだけでワクワクする。

 これはそんな、優しい夜のおはなし。


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●できること
・NPC、ご友人等と店を回る
 ※ミーロは店番を離れられる場合のみ可能です。
・自分の手作り品を出店する
・外で雪遊びする子供達に混ざって遊ぶ

●雑貨市
 幻想にある大きめな集会場を借りてのイベントです。同人即売会のような感じで机やいすを並べています。
 何ヵ所かに暖炉がありますが、換気のこともあり暖気はそこまで全体に行き渡りません。
 暖炉前はくつろぎスポットにもなっているようなので、一休みする際はご利用ください。

 ミーロの瓶詰め屋を始めとして、職人たちがお手頃価格で様々なものを出店しています。その名の通り雑貨が多く、中には掘り出し物もあるかもしれません。
 手作り品が多いためペアルックのようなものは難しいかもしれませんが、それに似たようなものがあったり対になった商品などはあるかもしれません。シャイネンナハトや冬のデザインが多めですが、季節感のない商品もあるようです。


第2章 第2節

イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って

「すごいね、シャルル嬢! 手作りがいっぱいだ!」
 きょろきょろと物珍し気に辺りを見回す『秋の約束』イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)。視界にミーロが映ると、手を振ってくれた彼女に振り返す。
(職人さんが店番をしてるお店は多いのかな?)
 疲れている体であろうが、買い物ついでに作品の話を聞けるかもしれない。貴重な場を逃すわけには――。
「あ、」
「ん? えっと……おかえり?」
「や、やっぱり今、ひとりで別の世界に行ってた?」
 『Blue Rose』シャルル(p3n000032)は彼の様子にくすりと笑う。それを止めるにはあまりにも真剣で、楽しそうだったから。きっと次があっても、やはり我に返るまで待っているだろう。
『たまには良いんじゃない? 急かされる用事もないんでしょ』
「オフィーリアまで……!?」
「ふふ。さて、そろそろ回ってみる?」
 シャルルの言葉にはっとして頷くイーハトーヴ。まずはミーロの店から行こう。
「やあやあ、いらっしゃいー」
「俺たちの作った小瓶が並んでるところを見たいなって思って、一番最初に来たんだ! それと、俺も小瓶をひとつ買ってもいい?」
「勿論。好きなのを選んで」
 ミーロの前に並べられた小瓶たちが照明の光にキラキラと輝く。きっと2人が作った小瓶は、誰かの手元で輝き続けるだろう。
(俺は――)
 また1年、この世界を生きた証にどの子を迎えようか?

成否

成功


第2章 第3節

囲 飛呂(p3p010030)
きみのために

 2人が買い物を終え、また別の店へと立ち寄る後ろ姿を見ていたミーロは顔を上げた。
「あれ、どうしたのー?」
「見て回るのはあとでも出来ると思ってさ」
 店番代わろうか、という『特異運命座標』囲 飛呂(p3p010030)の言葉にミーロは少し考える素振りをして、お願いすることにしたようだ。
「折角ならお友達の店も見て来なきゃねー。そこまで遅くならずに戻ってくるよ」
 行ってきますと手を振るミーロを見送り、飛呂は彼女が座っていた場所に腰かけた。ほんの少し温もりが残っているが、ここで座りっぱなしでは足が凍ってしまいそうだ。
 それでも。歓声を上げてやってくる子供を見れば、立っていたって座り直してしまう。
「どういうのを探してるんだ?」
「ひとつだけなの!」
「なの!」
 小さな兄妹は、与えられた小銭で一緒に小瓶を買いに来たようだ。一点物を示してやれば、あれでもないこれでもないと2人で悩み始める。
「すみません、お揃いになるようなものはありますか?」
 次にそう声をかけてきたのはカップルのようだ。普段は会えないから、揃いの雑貨が欲しいのだという。
「それなら――」
 まばらに、しかし途切れることなく客足は続く。飛呂はミーロが帰ってくるまでの間、皆が喜んでくれるようにと商品を勧めていった。

成否

成功


第2章 第4節

閠(p3p006838)
真白き咎鴉

「まさか……ボクも、お店を出せるとは、思いませんでした」
 ようやく客足が途絶えた『真白き咎鴉』閠(p3p006838)はふぅ、と息をつく。大分売れたようだ。
 ギリギリまで出店受付があることを知った閠は、自分がこれまで作って来たものを売ろうと申し込んだのだ。暇さえあれば色々な物を作って来たので裁縫の腕はめきめきと上がったが、同時に自分だけでは使い切れないほどの作品が溢れかえったのである。
 例えば、クローバーの刺繍のしおりはそれこそ売れる程にある。縫い物だけでなく編み物なども手を付けていたので、マフラーやセーターなども売り物に出していた。
(こうして、多くの人の目に……留まることも、そう、無いですし、ね)
「これくださーい!」
「はい……しおり、ですね。お代、ありがとうございます」
 子供がクローバーのしおりを指し、貨幣を出す。傍らにいる霊魂たちの助けを借りながら、利益はほぼゼロの値段分だけ貰って釣りを返し、閠は大きく手を振る子供を見送った。

成否

成功


第2章 第5節

古木・文(p3p001262)
文具屋
イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って

「あったかい……」
 『ぬいぐるみ達の救世主』古木・文(p3p001262)はほぅ、と小さく息をつく。室内とはいえ、換気される室内がぽかぽかに暖かいというわけにはいかない。こうして暖炉の傍へ近寄って、温かなココアを飲むとようやくほっとできる。
 周りを見てみれば、文と同じようにくつろぐ者が多い様だ。子供達は暖炉の前で火にあたるより、外で遊んで体を暖めているようだが。
「こんにちは。皆さんはどちらから?」
「ああ、俺達は隣町からだよ。毎年楽しみにしてるんだ」
「安く素敵なものを売っているから、ついつい買ってしまうのよね」
 ほら、と夫婦が見せてくれたのは子供用のセーターや柄違いのマフラー。それに細かな雑貨など。そこにある小瓶はミーロのものだろうか。
「すごいですね」
「兄ちゃんも客としてきたのかい? 俺は革細工を扱ってんだ、良かったら後で顔見せてくれよ」
 今日はまけるぜ、と隣に座っていた男性が文の背中をたたく。今日なんて利益が出るギリギリまで下げているだろうに、まだまけてくれるつもりらしい。
「はい、是非」
 文は頷く。とはいえ店番も手伝いたいし、その後になるだろう。そういえばそろそろ交代した方が良いだろうか。
 自分はそろそろ、と文は腰を上げる。そこへ聞き慣れた声がして、彼は顔を上げた。
「「あ」」
 2人分の声が被る。目をまん丸にする『秋の約束』イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)の後ろから、ひょっこり顔をのぞかせた『Blue Rose』シャルル(p3n000032)はやあ、と片手を上げた。
「来てたんだね」
「イー君とシャルルさんこそ」
 あちらは丁度休憩に来たらしい。入れ違いのようだ。
「店番してるから、またあとでね」
「うん!」
 文にイーハトーヴは手を振って、シャルルへ暖まりに行こうと促す。懐から取り出したのはアップルティーの水筒だ。
「ねえ、オフィーリア。部屋の棚に小瓶を並べるの、楽しみだね!」
『楽しいのは良いけれど、散らかさないでね? せっかく整理整頓したんでしょう?』
「うっ……! こ、こういうのって一期一会だから必要な出費なんだよ。それに君の分もあるから!」
「ふふ、」
 そのやりとりにシャルルはくすりと笑い、気づいたイーハトーヴはちょっぴり恥ずかしそうに彼女から目を逸らす。オフィーリアの声は聞こえていないはずだけど、それでも見透かされているような気がして。
「そうだ、シャルル嬢は何を買ったの?」
「ええと、栞と、あとは小さいポーチ……」
 問えば彼女は買った物を1つずつ出してく。オフィーリアの『お揃いじゃない』という言葉に今度はイーハトーヴが小さく笑った。
「?」
「ううん。何だか、いつも通りだね」
 最近は忙しかったから、気持ちもふわふわとしていたけれど。ようやく日常が返って来たような気がして、ほっとする。
 願う事なら――こんな日々がずっと、続きますように。

成否

成功

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