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シナリオ詳細

カルネと鉄帝殺人ロッジ(天狗の香りを添えて)

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●鉄帝に天狗ってなんだよ
「鉄帝に天狗って何!」
 サブタイトルとほぼ同じ事を叫んで、カルネ (p3n000010)は机をぶったたいた。
 それは冬のゼシュテル鉄帝国。大陸北部に位置するこの国は広大な領土のわりに寒くて暮らしづらい土地が多い。そのため冬場は地獄みたいだとすら言われるが、ところがどっこいカルネたちのような生物が活動困難な環境下でも活動できるオールドワン種族には案外やっていける。そんな場所である。
 とはいえ真冬にお外で半裸になる度胸はなく、煙突つきの木造家屋で暖炉にたき火をぱちぱちいわせながら暖かいココアなど飲みつつ、カルネたちローレット・イレギュラーズは依頼主の話を聞いていた。
 うん、わかるよ。急に混沌基礎知識を持ち出してないで冒頭の文章に応えろって君の気持ち。ミートゥー。
 だから机を挟んで向かい側でココアすすってたばーさんの話を聞いてみよう。
「その名も鉄帝天狗(Gestell TENGU)……極寒の地に住まうという怪物じゃ。夏場は秘境の森に引きこもるが、雪降る真冬になると食料を求めて人間を襲う。そういう伝説が、この土地にはあらうのじゃ」
「天狗、人間食べるの……」
 話がいきなり殺人鬼モノ映画みたいになってきたことを察したカルネは、あなたにそっと視線を向けた。
 何か言いかけた、その時。
 ばーさんが『ヴェアアア!』と叫んで両目をかっぴらいた。無意味に。
「イーライの森に山小屋がある。山小屋じゃ」
 『山小屋』の部分に強く重みをおいて身を乗り出すババア。
 言われずともこの先が分かる気がして、カルネはあなたの服の裾をちょっとだけつまんだ。
「毎年この山小屋でレジャーを楽しむ若い男女が現れる。そしてそのたび……誰一人として戻らぬ。誰一人としてェ!」
 もっかい『ヴェアアア!』と叫んでココアのコップを叩きつけた。無意味に。
 どうやらこの山小屋は何人もの手を渡り、買い手がつかなくなったことでババアが一時的に預かっているらしい。というのも、三年連続で山小屋を借りた男女グループ(パリピ)が行方不明になっているからだ。気味悪がって山小屋は売りに出され、そしてそんな山小屋誰も借りないからってババアが管理だけをしている状態らしい。
「過去には腕自慢の鉄帝ファイターたちが山小屋に入っていったが、結果は同じじゃった。
 事実を確認したいが……ワシもこの老体。山小屋までいくには身体がつらい。
 そこでじゃ。おぬしらは調査のために、この山小屋でレジャーを楽しむのじゃ」
 ババアの翳した鍵は、山小屋の鍵だ。
「天狗に全員食われてしまわんようになァ……ヒッヒッヒ!」
 最後に『ヒーッヒッヒ!』とエコーまでかけて笑うと、ババアは打ち合わせのための小屋を出て行った。

 そして始まる山小屋レジャー。
 カルネ含めた男女9人によるレジャーは、一夜にして絶望と恐怖に染まってしまうのか!?
 天狗の手にかかり誰一人として帰らぬ人となってしまうのかいしまわないのかいどっちなん――だい!

GMコメント

 しまわーない!

 皆さん薄々お察しかも知れませんが、このシナリオに天狗は出てきません。
 鉄帝天狗なんていないし、ババアがさっきからずっとあやしいけどホントは普通のババアですし行方不明事件もよくよく調べるとただのデマでした。
 そう、これは殺人鬼モノ映画の雰囲気をただただ味わってお楽しみいただくだけのレジャーシナリオなのです。

 PLの皆さんは山小屋にそんなの出てこないとわかってはいますが、ここはひとつ殺人鬼の恐怖に震え、ガソリンスタンドの店員の怪しさに顔をしかめたり隣の山小屋に住んでる暗い顔の男を警戒したり遠くから聞こえる鴉の声に震えたりしましょう。
 あとカルネくんは最初の犠牲者(誤解)として森の中で行方不明(迷子)になってくれるので、次の犠牲者になりたくないと怯えたり勇敢に出て行って帰ってこなかったりしてください。

 山小屋はこじんまりとした木造家屋で、暖炉があったり鹿の剥製が飾ってあったりします。
 近くには湖がありますが冬なので泳がないほうがいい気がします。さむいので。
 たき火を囲んで遊んだり酒呑んで踊ったりして夜をすごし、突然の犠牲者(カルネくん)によって恐怖プレイをお楽しみください。

 チイッ! これ以上殺人鬼のいるシナリオを解説していられるか! 俺は部屋にこもらせて貰うからな!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • カルネと鉄帝殺人ロッジ(天狗の香りを添えて)完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2022年01月07日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
バルガル・ミフィスト(p3p007978)
シャドウウォーカー
シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)
天下無双の貴族騎士
観音打 至東(p3p008495)
マッチョ ☆ プリン(p3p008503)
目的第一
三國・誠司(p3p008563)
一般人
ティヴァ(p3p010172)
笑顔を守るために

リプレイ

●山奥にミニバンで山小屋バカンスに行くパリピは大体殺人鬼にやられる
「天狗、か」
 とまった自動車の窓ガラスを見つめ、うつった自分の顔に目を細める『……私も待っている』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)。
 流れてゆく景色は、先ほどからかわらない。キラキラとした明るい日差しを木々の枝葉が遮り、すこしずつ暗くしていく風景だ。
 違いがあるとすれば、その暗がりが徐々に深くなっていくことだろうか。
「話を聞くに、妙な生物らしい、な。まあ、もし本当にいるのなら、だが。
 恐らく、よくある迷信の類、だろう。
 レジャーを楽しむだけで、依頼を遂行したことになるのなら、願ってもないこと、だ」
「そうだね。僕もそんな鉄帝天狗なんていう怪物、いるわけないと思ってるよ。行方不明の話もデマなんじゃないかな」
 カルネは運転席でハンドルを握りながら、そう言って笑った。
「だよねぇ。ま、ローレットの仲間がこんだけいるんだから怪物くらい出てもなんとかなるでしょ」
 その助手席で地図を広げる『一般人』三國・誠司(p3p008563)。山道は随分細く、地図によれば『道なり』ではあるものの、途中には店らしい店は殆ど無い。
 誠司はタンブラーを開くと、揺れる車内で器用にコーヒーを飲み始めた。
「この近くにガソリンスタンドが一件だけあるよ。売店もあるんじゃないかな」
 がたんと車が揺れ、コーヒーが膝にこぼれた。『あっつ!』という声と後部座席からの笑い声が響く。

 車はやがて、寂れたガソリンスタンドへと止まった。練達製とみられるコイン式給油機が一台据え付けてあるだけの、古い個人経営店だ。売店はあるが、店内に明かりはなく日の光だけが差している。
「給油しておく。何か欲しいものがあれば買ってくればいい」
 『チャンスを活かして』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)が給油機にコインを入れながら手で催促すると、『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)がお言葉に甘えてと言って売店へと歩いて行った。
 やや汚れた透明な扉には『OPEN』の札がさがっている。
 おそるおそる入ってみると、カウンターに人はいなかった。
「天狗、ねえ。そんなの本当にいるのかしら?
 きっと運悪く、冬眠から覚めた熊にでも襲われたのでしょう」
「ソレニシテモ、山小屋のあたり、すごいスゴーイ、ヒエルヨ」
 『enigma box』ティヴァ(p3p010172)がかたかたと身体をゆらし、暖まれるものはないかと店内を探し始める。
 ヴァレーリヤはヴァレーリヤで酒はないかと棚を眺め、そして目についたボトルを手に取っ――た途端棚の向こうからこちらを覗く男と目が合った。
「――ッ」
 黒縁眼鏡にくぼんだ目元。不気味な笑みを浮かべた彼は『いらっしゃいませ……』と陰鬱な声で言った。
 すげー『酔狂者』バルガル・ミフィスト(p3p007978)に似てるけどよくわからない。一体この男は誰ガル・ミフィストなんだ。
 ふと見れば、『破竜一番槍』観音打 至東(p3p008495)がキャンプに必要そうな菓子や酒類をまとめて籠に入れ、レジカウンターへと置いている。バルガル(名前言っちゃった)がスゥーっと幽鬼のように歩き、カウンターについてレジスターを操作し始める。
(天狗、聞いた事がある。山の中に住まう怪異で、速さ自慢……)
 バケツプリンを右手に、バケツトマトプリンを左手に持った『甘い筋肉』マッチョ ☆ プリン(p3p008503)が頭のプリンヘッドをカタカタいわせた。
「ナントイウ卑劣! プリンニ変ワリ、コノマッチョ☆プリンガ鉄槌ヲ下シテヤル!」

 不気味な店主と寂れたガソリンスタンド。ここから一刻も早く出て行きたいと思ったのか、ティヴァたちは車に乗り込み出て行った。
 その車を、店から顔を覗かせたバルガルはじっと真顔で見つめていた。

●パリピはエロいことし出したヤツから死ぬ
 キャンプは楽しく、そして順調だった。
 至東はハウスメイドのようにテキパキと仕事をこなしていたし、シューヴェルトは常に周囲を警戒し続けていたがそれだけだった。彼の警戒は良い意味で無駄になってくれた。
 ヴァレーリヤは安心したのか酒をかっくらってソファで眠り初め、マッチョ☆プリンはバケツプリンを片腕に抱きしめ『コレハオレノプリンダ!』と言ってスプーンでがつがつかっくらっていた。
 暖炉を囲むように三つ並んだソファのうち、一人がけのソファはマッチョ☆プリンが、三人掛けのソファはヴァレーリヤが占有し、残る二人がけのソファに座っていた誠司は暖炉の明かりで本を読んでいた。
「天狗、出ないね」
「結構なことです」
 至東は短くそう言って、床に立ってかたかたいっているティヴァにマフラーをまいてやった。
 なんでもティヴァは小屋の周りを明るくしたり熊のぬいぐるみを並べたりして、天狗が出てきたらびっくりさせるんだと言っている。効果があるかどうかそもそもが分からないので、試せることは皆試してみればいいと送り出したのである。
「少し散策に出てくるよ。安全そうだし、散歩もしたいしね」
 カルネは冬の森にも関わらずそんなことを言った。過酷な環境に慣れているのか、それともみんなとキャンプをすることでテンションが上がってしまったのか。彼の頬はちょっと高揚している。
「出かけるのか。ではマリアも、同行しよう」
 エクスマリアがすっくと後ろのロッキングチェアから立ち上がり、カップを至東の差し出したトレーへと置いた。
「誠司は?」
 一緒に行く? と問いかけるカルネに、誠司は手を振ってこたえる。
「もう少し本を読んでからにするよ」
 『そう、わかった』と言ってカルネは歩き出し、壁に腕組みをして寄りかかるシューヴェルトにも手を振った。
 エクスマリアが扉を開けると、冷たい風が小屋の中へと吹き込んでくる。あと扉のスキマから覗いていたバルガルが不気味にニイッと笑ったけど奇跡的に誰も気付かなかった。
「迷子にならぬよう、気を付けること、だ」
「はは、まさか。行ってらっしゃい」

 ボォーン、と振り子時計が鳴った。ちっくたっくという秒を刻む振り子の音が、小屋の中に響いている。
 はじめは気にならなかったそれが、今は何倍にも大きく聞こえるようにすら思えた。
 気のせいだ。誠司はパタンと本を閉じて首を振った。静かな時間は気分を不安にさせるのかもしれない。
「夜食でも作っていようかな」
 そう言って席を立ちキッチンへ向かう……と、バタンという大きな音がした。
 なんだろうと思いながら、つい壁に背を当て身を隠し、そおっと(天井に張り付いていたバルガルと一緒に)キッチンを覗き込んでみた。
「ふふ……」
 キッチンの様子。それは、至東が棚を横向きに押して動かしているところだった。
 カーペットにかくされたレール仕掛けの移動棚の裏には、驚くべき事にぼんやりと光るライトと地下への階段があった。
 至東は蝋燭を手に取ると、階段を下っていく。
 不審に思った誠司(と天井を吸着バーでヤモリみたいに這ってるバルガル)が階段へ近づこうとすると……。
「オイ」
 突如肩を掴まれ、誠司は飛び退いた。
 振り向くとヤツが、というかマッチョ☆プリンがいた。
「ソレハ、オレノトマトプリンダ!」
 マッチョ☆プリンはキッチン中央のテーブルに置かれたバケツサイズのケースを指さし、強めに言う。
「フッ、どうやらプリンをとられると思っているらしい。だが心配するな、あのようなプリン、今のところ誰も食べようとしていない」
 いつのまにか壁に背を預けて腕組みしていたシューヴェルトがキリッとした顔でこっちをむいている。さっきからこのポーズしかしてないけど彼、このままずりずり移動してきたんだろうか。まさか。
「そうだよね。ごめん。それよりあそこに……」
 誠司が気を取り直して隠し階段のことを言おうとした、その時。
「カルネたちの帰りが、遅いな」
 シューヴェルトが意味ありげに呟いた。小説なら全部に強調ルビが振られてそうなくらい明確な発音で。
「まさか……何かあったか?」
「え、そんな……」
 突如として湧き上がる不安に身を震わせる誠司。天井から落ちそうになってプルプルしているバルガル。冷蔵庫から新しいプリンを取り出してがつがつ食ってるマッチョ☆プリン。
「こうしちゃいられない! 探しに行かなきゃ!」
「待て、もし遭難したなら二重遭難を避け……ハッ!」
 シューヴェルト(壁によりかかったまま)が走り出す誠司をとめようと手を伸ばし、そして振り返る。
 マッチョ☆プリンが、トマトプリンを手にじーっとこちらを見つめていた。
「トマトプリン……明日マデトッテオクベキカ? ソレトモ、今カ!?」
「今では?」
 謎のモールス信号入力装置を小脇に抱えトンツートンツーしながら、いつのまにか隣に立っていた至東が言った。あとバルガルはドシャアって地面に落ちたけど偶然マッチョ☆プリンが『アアアアアプリンガ減ッテイル!!!!』て叫びながらテーブルをぶったたいたのでバレなかった。あと至東の口の周りがなんかめっちゃ赤かった。

「おかしい。山小屋へ、戻れない。まさか、天狗、の仕業か?」
 ちらちらと雪の降る森の中、エクスマリアは周囲を見回した。
「迷子になっただけじゃn――」
「まさか、実在していたとは、な。天狗とやら」
 重々しく呟くエクスマリアは、真顔でスッと方位磁石を取り出すカルネを掴みバッと押し倒した。
「隠れろ!」
「うわっ!?」
 雪の地面に倒れた二人は、木の陰から向こう側を覗き込む。
 ヴォーといいながら走り抜ける巨漢の影が、うっすらとだが見える。
「あれは……!」
「シルエットからしてマッ――」
「安心しろ、カルネ。一人なら恐ろしかっただろう、が。今はマリアが、居る」
 ぽんと肩をたたき、エクスマリアがめっちゃ頼もしい顔(?)をした。
「なんとかして皆と合流しなければ……む? あれは」
 ゆっくりと這うようにして進むエクスマリア。彼女はなんと……木から逆さにぶら下がり白目を剥いたヴァレーリヤを発見したのだった。

 時を遡ろう。
 マッチョ☆プリンが『プリンタベタノダレダ!』といつも以上にモンスターみたいな口調で叫んで小屋を飛び出していったのと同時に、ヴァレーリヤはうーんと唸って目を覚ました。
 酒瓶を抱きかかえソファで寝てしまっていたらしい。
 目を擦り、起き上がる。
「どうしたんですの?」
 そう尋ねたのは、部屋のすみに経つ誠司の蒼白な表情を見たからだ。
「カルネくん、が……」
 ヴァレーリヤが酔っ払いかつ寝起きにも関わらず早口で経緯を喋る誠司。ヴァレーリヤは『完全に理解しましたわ』とオメガ口で言うと、ゆらりとソファから立ち上がる。
「私には分かります。犯人は、この中にいるに違いございませんわ!」
「なっ……!」
 壁に寄りかかりハッとするシューヴェルト。
 真っ赤な包丁を右手に握って首を振る至東。
 きょろきょろとする誠司。
 窓の外で『雪ガー!』と言ってじたばた埋もれるティヴァ。
 同じく窓の外から両手と頬をぺったりと窓に貼り付けて話を聞いてるバルガル。(奇跡的に気付かれていない)
「馬鹿な。僕が常に警戒し続けているが、この小屋には誰も侵入してなどいない」
 シューヴェルトがキリッとしたイケメンフェイスで言うと、バルガル(窓の外)が自分の顔を指さした。
 次に至東が包丁を取り落とし、二歩三歩と後じさりする。
「わ、わわわわ私は一切なにも怪しいところのないごく普通のハウスメイドです! 皆様に危害を加えることなど一切絶対100パーセントありえません!」
「いいわけは結構! もう貴方達は信用できません! ここからは独りで行動させて頂きますわ! 近付かないで頂戴!」
 酒瓶を握りしめナイフみたいに構えると、『そこを退いてください!』と言いながら扉を蹴り開け外へと飛び出していった。
「アッ」
「あっ」
 同時に振り返るティヴァ(雪から首だけ出した状態)とバルガル。
 ヴァレーリヤは凍ったくまぬいに躓き転倒すると並べといた玩具やランプで連鎖的にあーなってこーなってそして……こうじゃ!
「ああああっ!? 突然雪ダルマのごとき雪に埋もれて頭だけ出た状態になって斜面を転がり始めましたわ!」
「イヤソウハナラナ――」
「なってるでしょうが!」
 ヴァレーリヤはそのままヴァーといいながら転がり、そして謎のジャンプ台で宙へ舞い、一旦月をバックにシルエットになったあと、適当な木の枝にぶつかって逆さにぶら下がった後気絶した。

「ティヴァ……ティヴァ、朝にナッタラ、きっとミンナのコトサガシに行くカラネ……!」
 やっと小屋に戻ってきたティヴァが、よほど怖いものを見たのだろう、ぷるぷる震えて暖炉の前から動かない。
 シューヴェルトは壁に寄りかかったままずりーっと移動してきて、温かいココアを差し出した。
 一方。
「もう我慢できない! 僕はカルネくんたちを探しに行くよ!」
 誠司は大砲を担ぎ、外へとダッシュ。
 そして何故かヴァーという声と共に空に謎の巨大雪玉が射出された。

「ナントイウコトダ……!」
 マッチョ☆プリンは驚愕した。木にはヴァレーリヤと誠司がぶら下がり、彼らの頭は赤く染まりなにかがぽたぽたと雪に垂れているではないか。
「マモレナカッタ……」
 マッチョ☆プリンはがくりと膝をつき、両手もつく。
「オレの……トマトプリン……」
 そう呟くと、空っぽになったバケツを置き、そこに自分のヘルメット(?)と肉襦袢シャツもそなえてやった。
「プリン食ベタノハ、絶対天狗……許サナイ!」
 マッチョ☆プリンは再びヴァーと叫んで立ち上がり、甘い匂いのする方向へと駆けた。

 暗いキッチンに、蝋燭だけが灯っている。
 包丁を手にした至東は、じっと何かを見つめていた。
「そこで何をしている!」
 壁に寄りかかったまま剣に手をかけるシューヴェルト。至東はハッと振り返り、今まで見ていたものを背に隠した。
「いいえこれは――」
「オレノトマトプリン!!」
 マッチョ☆プリンがヘッドミサイルフォームで窓を突き破りキッチンに突っ込んできた。小脇にはバルガルを抱えて。
 咄嗟に剣を抜くシューヴェルト。炸裂するマッチョミサイル。はじけ飛ぶバケツトマトプリン。
「ミンナ……!」
 騒音を聞きつけたティヴァが駆けつけ、そして頭部ディスプレイにウワアっていう顔文字を表示させた。
 キッチンは赤いものに塗れ、シューヴェルトもマッチョ☆プリンもあとバルガルも、そして包丁を握った至東も倒れていた。
「ア、アア……」
 ティヴァは崩れ落ち、まるですすり泣くかのように両手をディスプレイに当ててジジ、ジジ……と軋む音をもらした。





 翌朝。
 森の中やら小屋の中やらで見つかった彼らは『天狗だ! 天狗の仕業だ!』と供述したという。ババアはより一層ヴェアアしたし天狗の噂も暫く広まったが、グラオ・クローネブームによって二週間くらいで忘れ去られたという。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

めでたしめでたし!

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