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シナリオ詳細

Running cactus!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ラサの砂漠地帯。夢の都と言われるネフェルストから東……幻想方面へと歩む商隊があった。貴重な香辛料やら鉱物が手に入ったという事で、バルツァーレク領へと入り商売を行う為である。
 無論。万が一賊の類が現れてもいいように傭兵部隊が護衛に付いていた。
 されど杞憂と言っても良い程に順調な旅路で。
 もう何時間かすれば国境が見えてこようか――と思っていたその時。

 『ソレ』はまるで嵐の如く到来した。

「ん……なんだアレは? 土煙が見えるぞ」
「――敵襲か? 全員武器を整えておけ! いつでも戦闘に入れるようにな!」
 周囲を警戒していた傭兵の一人が、彼方より『何か』が接近する土煙を確認。
 さて。盗賊か、それとも魔物か。
 どちらであろうと構わない。役目を果たすだけだと布陣すれ――ば。
「お、おい待て……マジでなんだあれは。
 俺の見間違いじゃなければよ、アレは――サボテンか?」
 やがて至る、土煙を醸し出している正体。
 ――それは大量の『サボテン』であった。ただし、只のサボテンではない。
 それは足を宿している。見ようによっては人型に見えないこともなく、それらが大量に、群れを成す様にしながら進撃してきているのだ。めっちゃ全力疾走で。こっちに真っすぐ向かってきているッ――!
『サボッ――!! サボボボ、サボッ――!』
「た、隊長! まずいですよ、明らかにあっちの方が数が多……」
「ええい怯むな! あんな適当な叫び声挙げてる奴なんぞに臆したら末代までの恥だぞ!」
『なんつったテメェごらぁ!! ウチの一族に喧嘩うるたぁ良い度胸だな、おぉん!!?』
 普通に喋れんじゃねぇかアイツら!! なんだアレキャラ付けかよ!!
 激昂するサボテン達。怒りと共に傭兵隊へと襲来し――交戦が開始される。
 人間の腕の様な一撃が振るわれれば尖った棘が身を抉り。
 此方が攻撃しようとすれば、時としてその棘が当たりて痛みが走る――
「く、くそう駄目だ! こいつら微妙に強いし、何よりこの数は……うわああああ――!!」
 攻防一体。その戦い方に傭兵隊は徐々に押され始めて……
『勝ったどー! 打ち上げじゃ――!! あっ、サボサボッ!!』
『サボサボッ――!!』
 やがて勝敗は決する。
 勝ち鬨を挙げるかのように雄叫びをあげるサボテン達――
 彼らはサボテン型の魔物である『スパイク・カクタス』一族の者達であった……


「……走るサボテンの群れが現れた?」
 その情報を聞いているのはエクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)だ。
 『スパイク・カクタス』――稀に現れる魔物の一族であり、単純に言えば彼女が言ったように『走るサボテン』だ。好戦的な彼らはここ最近東側の砂漠地帯で目撃されており、幻想王国へと往く商隊が幾つか襲われているらしい……
 なんだかこの前も巨大なサボテンを相手取った様な気がするのだが、何かサボテン種が大発生でもしているのだろうかとエクスマリアは思考する――が、まぁ真実はともかくとして。
「で、それの討伐依頼という訳か?」
「ああ。なんでもこれ以上放置はしておけないという事でね。幸いというべきか――スパイク・カスタス達が根城にしている遺跡が発見されたらしい。そこへの攻撃が計画されているそうなんだが、イレギュラーズ達にも来てほしいとの事でね」
 依頼が出てるんだよね、と言うはギルオス・ホリス(p3n000016)だ。
 これ以上スパイク・カスタスの好き勝手にさせてたまるかと。ラサの被害にあった商人達が徹底的に奴らの拠点を探し出し――そして判明した。ハウベラ遺跡という、古い時代に存在していた元オアシスの地が奴らの根城になっているらしい。
 大量に確認された奴らの敵影。
 逃してなるものかと今すぐ動ける傭兵をかき集めているそうだが……
「サボテン達の数にはまだまだ及ばない様でね……結構大量にいるらしいよ」
「ふむ……しかし傭兵達も集まっている、という事はもしや共同作戦になるのだろうか?」
「ああそうだね。攻撃の時間はまだもう少しあるから、打ち合わせたい事があれば何か話をしてもいいだろうし、或いは特になければ各々で動くんじゃないかな。多分包囲して殲滅する動きに持っていくだろうし」
 攻撃を行うのはイレギュラーズ達だけではない――ラサの傭兵達もだ。
 全部で十六人。八人で構成された傭兵団が二つであり、彼らも共に戦うそうだ。
 ――しかしそれでもサボテン達の方の数が多いらしい。
 つまり油断は出来かねる、という事だ。奇襲し奴らを包囲する様な形には持っていけるだろうと思われるため、陣形的には有利かもしれないが……サボテン達は妙な、独特の武術らしきモノを扱うらしく近接戦闘に優れている。そして走る。
「ああ、気を付けるべき点として――奴らには『王』的な存在がいるそうだ」
「『王』……?」
「まぁ実際に王様かは知らない。群れの長というか、ただの称号的なものかもしれないけれど。とにかくちょっと大きめのサボテンでね。確認されている中では一番強いらしいから……その個体と戦闘する時には気を付けておいてくれ」
 ただ。その個体が倒されれば相手の士気はガタ落ちする事も考えられる。
 狙えるのなら一気に狙うのも手、か。

 世間は冬。それでも他国よりは暑いラサの国でまた――戦いが始まろうとしていた。

GMコメント

 サボッ! サボボボッ! サボボボ……あ、エクスマリアさんからのAAでした! 以下詳細です!! よろしくお願いします!!

●依頼達成条件
 走るサボテン『スパイク・カクタス』一族の撃滅

●フィールド
 ラサの砂漠地帯の中にある『ハウベラ遺跡』です。時刻は昼です。
 元々は古い時代にオアシスか何かで発展していたそうですが、水が失われやがて人々が去り遺跡となってしまった地……と言われています。そのためか家屋の様な建物が各所に存在し、中央には泉があったような窪みが存在しています。

 シナリオ開始時、彼らはどこかの襲撃から帰還した後の様で。その窪みの様な所でなんか皆で勝ち鬨のダンスしてます。とりあえず奇襲一発かましてやりましょう!

●敵戦力
・『スパイク・カクタス』×40
 走るサボテン達です。『サボッ! サボッ!』って鳴いてますが、実は普通に喋れます。
 なんか独特の武術っぽいものを繰り出してきます。
 案外動きのキレがよく、近接戦闘に優れている様です。

 また全員がパッシヴとして【反】能力を宿しています。が、これは必ず発動する訳ではなく30%ぐらいの確率でしか【反】は発動しないようです。

・『スパイク・KING・カクタス』
 他のサボテンよりちょっと大きくて王冠っぽいのを被ってるKINGサボテンです。こやつも『サボボボボッ!』って鳴いてますが、普通に喋れます。キャラ付けか……?
 基本的に全ての能力が通常のサボテン達よりも一回り上です。
 サボテンの様に舞い、サボテンの様に刺す。
 華麗な(?)武術で翻弄(?)されないように気を付けてください――

 また、最大の特徴として通常のサボテンとは異なり必ず【反】が発動し、更に30%の確率で【棘】が追加発動します。この【棘】の確率はHPが減る程に高まり、最大で50%の確率で発動する様になる様です。

●味方戦力
・ラサの傭兵×16(8人×2傭兵団)
 共に戦うラサの傭兵達です。
 近接・遠距離にバランスの良い構成で纏まっており戦闘能力はそれなりです。
 基本的にはイレギュラーズとは別方面から攻め上がりサボテンを包囲する戦い方をすることでしょう。彼らに何か他の戦い方をさせたい場合、打診してみると応じるかもしれません(内容によりますので必ずではないです)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • Running cactus!完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年12月30日 22時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
アレックス=E=フォルカス(p3p002810)
天罰
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
ルクト・ナード(p3p007354)
蒼空の眼
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
エア(p3p010085)
白虹の少女
滋野 五郎八(p3p010254)
鶏ライダー

リプレイ


 灼熱の大地でサボテンが動くし走る――
 ついでに武術っぽい動きも見せるし喋りもする。
 うん。まぁこの世界ではこれくらいのことはよくあるよね。
「うん、うん……流石にボクも慣れてきたよ。うん……まぁ色々あるもんね」
「サボテン……動くサボテンか……いや、もう驚くまい。混沌ならありうる、そういうこともある、うん。種として根付いていても驚くまい……子ロリババア、エンジェルイワシ、その他もろもろの魑魅魍魎……うむ、走るサボテンぐらいはいるとも。むしろ他と比べれば大人しい部類に見えてきた気がするな」
 半ば達観している様な死んでいる様な目になっているのは『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)と『天罰』アレックス=E=フォルカス(p3p002810)であった――自らに言い聞かせるようにアレは現実だと呟きながら、ともあれ手は動かすものである。
 焔は使役する鳥を天へ。
 周囲の地形を空から眺め誘い込める場所がないかと探すのだ……その度にサボテンの影がちらちらと視界の端に映るのだが、いけない。心を乱されては……! お友達の植物学者がラサの緑化研究の一環としてそんなの作ってた気がするけど別種の何かだよね?
 そうだよね? まさかそんな事ないよね? ははははは――今度一応確認しておこうかな。逃げだした個体いないかとか。
「ふむ。だが喋る、動く、戦う、群れる。少なくとも、兵士としては申し分ないな」
「……まさか一族で生息していた、とは。そんな想像までは、していなかった、がな。
 しかし……攻撃手段が武術……武術? サボテンが?? ……まぁいい、か?」
 同時。『蒼空』ルクト・ナード(p3p007354)と『……私も待っている』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)もまた『奴ら』の様子を窺うものだ。まずは情報を収集する事が肝要と。
 特に奴らに遠方の攻撃手段があるかないか……ルクトの見た限りではそのような類はなさそうであるが。いやしかし魔物であれば油断は禁物かと――とにかく調べられる限り調べんとする。先日出逢った巨大サボテンをエクスマリアが想起すれば……やはり棘を飛ばすような手段を奴らも持っていないとは限らないのだから、と。
「とにかく、傭兵達と連動して、追い詰めていくべきだ、な。どうだろうか、周辺の状況、は」
「――正面からは少しぶつかりにくそうだな。もうちょっと近付いてみたい所だ……おっ。丁度いい所に廃墟がある。まずはあそこまでゆっくりと……」
 さすれば『剣砕きの』ラダ・ジグリ(p3p000271)は優れし視力をもってしてサボテンの様子を窺いながら下見を続けるものだ。周辺の建物の配置。敵共の位置。全てを見据え……ていれば、やっぱりなんとなしサボテン達に思考を巡らせてしまうもので。
「うわなんかいっぱいいる。びっしりと……びっしりといる……
 何これ。魔物? 意外と精霊種だったりしない? その化身とか?
 ……人を襲わなきゃ陽気な隣人だったろうに……たぶん?」
「なんか喋れたりもするみたいだしねぇ。わざわざ『サボサボ』とか言う意味は分からないけれど……いや喋れるサボテンって結構凄いな? やっぱり精霊の一種なのかな?」
 小声で。サボテン達を見据えながら『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)らと言を交わすものだ。勿論奴らの正体(?)を推察しながらも遮蔽物や、奇襲を仕掛ける地点に目星をつける事は忘れない――
「……襲いかかってさえこなければ面白い光景なんだけどな、これ。
 あ、なんか踊り始めてるぞ……? 奴らには文化もあるのか……?」
「なんだろう……サボテンって走りたくなるものなの? いかにも走り出したそうなフォルムしてるけどさ……でも本当の本当にそのままの意味で走り出すのはそもそもサボテンなの……?」
 まぁいいか! 何はともあれ、がんばろうね、ぼんちゃん!
 守護精霊たる鶏の梵天丸へと『ぼんちゃんといっしょ』滋野 五郎八(p3p010254)は指で首を撫ぜながら声を掛けるものだ――物静かな梵天丸もまた、周囲の索敵にと駆け巡る。後は同時に傭兵の者達が持っている情報とも照らし合わせて、地図でも作ろうかと。
 全ての準備が整えばサボテン共を襲撃だ。
 敵はちょうど窪みに。ならば包囲する陣形で戦うのがよさそうだ――更にはここにも小道があるからある程度は引き寄せる事も――と。イズマはそう推察し、傭兵達とも打ち合わせて。彼らの了承も得られればやがて布陣をも完了する。
 警戒してないサボテン達を陰より見据えれば。
「ではいきましょうか――動く……サボテン……? の、方がとにかく数が多いので」
 油断せずに行きましょう、と。紡ぐのは『特異運命座標』エア(p3p010085)である。
 彼女は周囲に力を満たす加護を与え。万全へと至らせれば――往く。
 あの本当にサボテンなのか胡散臭いサボテン達を……倒す為に!


『サボー!(敵の奇襲だー!) サボボボ!(総員迎撃態勢に入れー!)』
 吹き飛ばされる。多くのサボテン達が、まるで天舞う様に。
 その一撃はまずもって焔により紡がれたモノであった。気配を極力殺し限界まで近づいた彼女の一閃が炸裂したのである――それは戦場を穿つように。炎の槍が顕現し密集していた場所へと奇襲気味に紡がれれば多くを吹き飛ばすもので。
「どーんっ! ってね! よーしこっちだよ、鬼さんこちら、手の鳴る方へ……
 いやサボテンさんこちら……? うーん……???」
 で、あれば。そのまま焔は彼らを引き付ける様に。
 戦いやすい様にと彼らを移動させれば。
「よう間抜け共、もう一生分踊ったろう? それでもまだ踊り足りないというのなら……
 冥府の底へのチケットをくれてやろうか。そこなら存分に踊れるぞ――」
「――降伏し共存を選ぶなら、私としては赦さなくもないがな。ただ、その場合でも最低限の報いは受けてもらおう。でなくば、納得しない者達がいるだろうし、な」
 更にラダの一撃もまた建物の影より振るわれ、上空からはルクトの爆撃が。
 焔に導かれ小道などに入り纏まった連中を薙ぎ払う様にするのだ。
 その中でもラダの狙いはひときわ大きなサボテン……つまり、KINGへと。
「アレックスさん、KINGへの道を切り開きましょう! 邪魔なサボテン達を押しのけなければ!」
「ああ――さて。奇怪な……いや混沌では普通……普通、の? サボテン達よ。
 その歩み。ここで止まってもらうとしようか――」
 次いで五郎八とアレックスもKING以外のサボテン達に狙いを定めるものだ。アレックスからカバーを受け取れる位置にありつつ、五郎八は敵へと撃を一つ。創成されし疑似生命がサボテン達の身を食い破らんとし――アレックスは前へと。
 あえて目立つように立ちはだかるものだ、さすれば。
『サボボー! 我らに歯向かう人間どもを突破するサボー!』
「そうはいきませんよ――ここは絶対に通しません! 風竜結界……!」
「おぉぉイレギュラーズに遅れるんじゃねぇぞ! 俺たちも続けッ――!!」
 多くのサボテン達は状況を打開するためにも殺到せんとするものだ――しかしそこへと暴風紡ぐのは、エアの指先。元なる世界で風の竜たる力を受け継ぐ彼女にとって風を操るなど造作もない事だ――
 刃の如き風を操りながら同時に彼女は壁や柱にも一撃を。
 それらを纏めて簡易なれど塹壕を作らんとするのだ。じっくりと本格的な代物を作る暇はないが、凌げるだけでも十分――! 後方より射撃を行うラダなどの援護になればと動き続け。
 そして乱れた陣形へと友軍の傭兵達も突入する。
 奴らを包囲する様にしつつ交戦が各地で加速し……

『何をしている! よく見ろ、数はそう多くないぞ!
 纏まって相手取り奴らを各個撃破していくのだ――あっサボボ!』

 だが。声を張り上げたのがKINGであった。
 ラダの射撃を受けながらも未だ揺るがぬその身体。成程、他より強そうだ……幸いというべきか王冠がやたら目立つので巻き込んで攻撃する事自体は非常に容易なのだが――
「って、痛って! サボテンのトゲがすごく刺さるんだが!? ていうかコレどうやって飛んできてるんだ! 反射的に攻撃受けた方に飛ばしてるのか!?」
『サボ! これが我らが一族に伝わる極意、その名も『棘飛ばし!』サボ!』
「いやそのまんますぎるだろ! ていうかそのキャラ付けいつまで続けるんだ?」
「そうそうせめてブレちゃダメ! せめて語尾をサボにするくらいにしとくサボよ! 無理にキャラ作ると後が辛いって誰かが言ってたサボね。でも作ったキャラは最後まで貫くサボ! それが――『キャラ』としての使命サボ!」
『ハッ、それはいいアイディアサボ!! 行くサボー!』
 しかし配下サボテン達とは異なり確実に反撃してくるKINGは些か厄介であるとイズマや五郎八は感じるものであった。イズマは奇襲からの一閃、広範囲を強烈に揺さぶる音色にて多くを纏めて薙いでいる――が。奴らの生態なのかなんなのか棘をこれでもかと飛ばしてくる。
 自らの傷を修復する一手を持ち、五郎八やエアなど治癒を放てるイレギュラーズもいれば今の所致命傷には至っていないが。しかし珍妙な武術で殴りつけてくるサボテン達もあらば――油断は出来ない。
「……全く、中々厄介な性質も、あるよう、だな。とはいえ、やりようはあるもの、だが」
 故。エクスマリアは――彼らの精神を乱す。
 彼らを魅了せんが如き声の導きが惑わすのだ。さすれば生じるは同士討ち。
『サボ!』
『なにするサボ! このやろー!』
 近くの奴に拳一撃。であれば返しの蹴りが紡がれて……
 これならばイレギュラーズ側に棘が飛んでくる事もない――永続的なものではないにせよ、しかし。
「――狙うはキング、だ。奴を収穫……違う、仕留めれば、全て終わる、からな」
『今収穫って言ったサボ!!? 何この人間たち怖いサボ!!』
「まぁ最初に言ったように降伏しないなら――後は『報い』の時間だけだからな」
 KINGへ攻撃しうる混乱を巻き起こすには十分だと。
 エクスマリアとルクトが奴を見据える。
 襲うのであれば、襲われる覚悟もあるのだろう?

 ――今こそ決着を付けんと、王冠宿すKINGを視界に捉えて。


『サボボッ!』
「ええいやかましいわ普通に喋れよ!!」
 周辺。混戦状態へとなりつつある戦場では傭兵とサボテン達の激闘も続いていた。
 状況としては一進一退。
 奇襲包囲する様に紡がれた戦いはサボテン達の不利に始まったが、数の多さでなんとか挽回せんとしているのか未だ激しい抵抗が続いている為である。故に状況が動くとすればイレギュラーズ達が押し込まれるか、或いは――
「『王様』が倒れるか――だな! 撃ち抜かせてもらうぞッ!」
「皆さん無茶はされません様に……! 少しずつ追い立てていきましょう!」
 サボテン側の主柱であるKINGが倒れるか、であろう。
 故にラダは放つ。心のどこかに感じる調子の良さと共に、撃ち抜く鋼の驟雨は――決して敵を逃さない。周辺にて立ち回っているサボテン達も同時に薙ぎ払えば、同時に五郎八は周囲の状況に応じて攻勢と治癒の役、それぞれに転じるものだ。
「さぁ、耐えられる、かな。試してみよう、か――このサボテンは、どこまでもモノ、なのか」
 直後にはエクスマリアの全霊も紡がれるものだ。
 ソレは万物を砕く鉄の星。数多を貫き滅ぼす究極の一端――
『ぐあ! だ、だがこの程度で崩れると思うかサボッ!』
「やれやれ。随分と大きな声で吠えるサボテンだ……かといって出し惜しみしてもいられん、な」
 が。KINGは腕を振り上げ拳を打ち下ろす。イレギュラーズ達への撃を成すソレは鋭い棘も相まって強靭な威力を宿しているものだ……しかし受け止めるアレックスの瞳に苦悶の色はない。
 むしろ奴への道を維持する為に攻勢の意志を見せる程だ。
 ――それは天罰の記憶の中の禁忌の一つ。戦場を貫く雷光の輝きは、麗しく。
 戦争と死の神の槍、その再演が標的を穿つのだ。
 雷光一閃。金色の輝きが、KINGをも貫いて。
『サボ――! ぐぐぐ、この程度で――!!』
 さすれば放つ無数の棘。
 それはKINGの放つ反射の一端。攻撃に応じて繰り出される生命本能。
 天にいるルクトだろうが捉えるその棘は誰しもを狙い定めるものだ――故に。
「させません! 響き渡れ、癒しの風の音……天使の歌っ!」
「誰も、彼も、落とさせは、せんよ。どこまでも、どこまでも――支えて、みせよう」
 エアとエクスマリアは即座に治癒の力を皆に行き渡らせる。特にエアはラダの死角をカバー出来るような位置取りを常に気にしつつ、だ。周辺の状況も気を付けてはいるが、サボテンらの武術が自身に及ぶ危険性が薄いと判断すればダメージのケアに努めて。
「エア、あまり無理はしてくれるなよ。私も多少耐えられるしな。
「はい、勿論です――ですがご心配なく! まだまだ余力はありますから……ね!」
 飛び掛かってきたサボテン一体。暴風にて吹き飛ばし――言を紡ぐ。
 さすればラダもトドメとばかりに吹き飛んだサボテンへと引き金引き絞る。
 ――守ってもらった分は撃って返すさ!
「それになにより」
 同じラサの大地で営む商人たちの仇も返さねばなと。
 KINGへと再度狙いを。瓦礫に身を隠し、棘の反射を逸らせる様な位置取りをしながら。
『小癪な! むむむむ、だがそれならそうと直接殴りにいくだけ……むっ!?』
 直後、業を煮やしたKINGがより前に出んとする――正にその時。
 KINGへと一撃が放たれた。それはイズマの一閃だ……
 だが、ただの攻撃ではない。
 彼の一撃を受けてから――棘がしなびている。まさか、これは!!?

「――おいおい。事前にサボテンの話を聞いておきながら。
 トゲ対策をしてないとでも思ったか? 行くぞKING!
 その立派な王冠も蒸発させてやる!! 最後は潔さをみせてみろッ――!!」

 それは深い、灼熱が如き瞳を携えた魔物の力を宿した一閃。
 かの魔物の呪いを受けし者は防の加護を一時的に失うのである。で、あればKINGの脅威は激減する。勿論、奴の殴りは未だ健在なれど……それでも反撃に頓着しなくよくなったのであれば。
「一気に攻める時だよね――ッ! さぁ燃やし尽くしてあげるよ!
 サボテンステーキになりたいのは誰かな! うんうん、前に出てきなよね!」
「植物であれば炎が弱点と思わしいな……場合によっては燃え広がりもするだろうか? まぁいずれせによ――共に生きるならいざ知らず。多くを襲い、一方的に搾取するのみで生き延びれると思わない事だな。斯様な者達に幸運も訪れはしまいよ」
 焔が燃えていないサボテン達を焼き尽くすものだ。続けざまにルクトも爆撃を続行。
 残存のサボテン達を討ち取りKINGの身も打ち倒すのだ――
 一部のサボテンからは反撃の棘が投じられる、も。
「ふふん! 棘を燃やしちゃえば、そもそも棘自体を飛ばす事も出来なくなるよ――ね!」
『サ、サボボー!!』
 しかし見据えた焔はその棘諸共、灼熱の渦に飲み込まんとするものだ。
 飛ばすモノがないのであれば反撃も受けまいと。
 そうして包囲の輪を縮めていく――
 傭兵達も攻め上がり段々サボテンの数が明らかに減り始めていて……
『そ、そんな馬鹿な……! 我らが一族が、こんな所で!!』
「どんなモノにも終わりはあるものさ――今がその時だってことさ、KING!!」
『サ、サボッ――!!』
 で、あれば。動揺したKINGへとイズマが閃光一つ。
 その一閃は武装に拠らず、切れ味無双の如し。
 洗練された一撃は、奴が棘の機能を復帰させる前に――その身を両断するものだ。
 イズマの一撃にてKINGが朽ち果てる。直後。
「あー、あー、聞こえるかー! 君たちは包囲されている! 武装を解除し降伏せよ! こんな暴走族みたいなことはお袋さんが悲しむぞー! お袋さんの声を聞くかー! どうだー!?」
『サボボボッ!? ク、クイーンが!? クイーンがここに!!?』
 五郎八の降伏勧告になんだかざわめくサボテン達。あれ。KINGだけじゃなくてQUEENもいるの……? まぁ勿論今のお袋さん云々は嘘なのだが、しかし広がった動揺は明らかに動きの鈍さにも繋がっていて――
「今だ! 動揺してる内に残りのサボテンも一気に討ち取っちゃおうよ!
 どこかを襲撃して来た帰りなら、もう本当に体力の余裕もない筈!!」
「ああ。ここが攻め時だな――皆行こう! この戦いを終わらせる時だ!!」
 瞬間。総攻撃の時だと悟った焔が再度炎を身に纏い踏み込んで。
 イズマの周囲を統率するかのような声が響けば――傭兵らも呼応するものだ。
 やがて打ち倒れていくサボテン達。
 妙な武術……武術? の抵抗もこうなってしまえば碌な効果も見込めずに。
 そして最後の一体も――倒れ伏す。
「……まったく。なんとも不思議な生命体共だったな。この大地もまだまだ広いものだ……」
 さすれば。ラダが残存がいないか周辺を窺うものだ――
 この砂の大地でそれなり以上に過ごしているが。
 知らぬ生命。知らぬ武術。知らぬサボテン……? も多くいるものだと。
 零す吐息。
 さぁ全ての掃討を確認出来たらネフェルストに戻ろうかと――思案を巡らせながら。

成否

成功

MVP

イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

状態異常

アレックス=E=フォルカス(p3p002810)[重傷]
天罰
イズマ・トーティス(p3p009471)[重傷]
青き鋼の音色

あとがき

 砂漠に住まう一族は皆さんのおかげで倒されましたサボ!
 ありがとうございましたサボ! サボボボー!!

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