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シナリオ詳細

勇者進水GC:新たなる船出と、優しさの価値

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●蘇る黒
 大きな棺が開き、仲に溜まっていた煙が漏れ出すように床へ広がっていく。
 棺の数は三つ。どれも複雑な管や機械に繋がっていた。
「練達は今大変な状態だからな。手に入る機材はこれが精一杯が……」
 そう呟いたのは、棺の前に現れた貴族風の男性だった。
 ワニ風の頭部をもつ法衣の男であり、黄金の義翼には『運命は勇者に微笑む』という意味の古代文字が彫刻されている。
 彼の名はブレイブ・ペンドラゴン。海洋王国とも強いパイプをもつ幻想南方貴族エトワール十二家門がひとつペンドラゴン家現当主にして、海洋・幻想間の島にて発見された秘宝種グッドクルーザーの後見人である。
「ブレイブさん。では、彼らは」
 船にもにた造形をもち、非常に人型ロボットらしい外観をもつグッドクルーザー。彼はブレイブの後ろから現れ、棺を順に見つめた。
 棺にはそれぞれグッドクルーザーにやや似たタイプの、しかし異なる造形のロボットボディが横たわっている。
 そのひとつが、キラリと目と胸のコアに光を浮かべた。
「……ああ、成功だ」

●罪の歴史
 久しぶりに幻想南部の島に呼ばれたカイト・シャルラハ(p3p000684)と新道 風牙(p3p005012)そしてムサシ・セルブライト(p3p010126)は、貴族のもつプライベートビーチへとやってきていた。
 そこには近隣の子供達が集められ、常夏の太陽と温かい海風に晒されながらビーチボールで遊んでいた。
「広いビーチでありますなあ! それに綺麗だ」
 優しいさざ波と煌めく太陽。砂浜にはゴミのひとつもなく、よく手入れされているのがわかる。だからだろうか、潮の香りがやさしい。
 子供達の遊ぶ様子からは、日頃からこのビーチで遊んでいるのがわかる。
「冬は寒いこと多いしな、こういう場所に呼んで貰えんのは嬉しいけど……一体まだどうしてだ?」
「ブレイブさんのことだからグッディがらみなんだろうが……」
 グッディ(グッドクルーザーの愛称)の事をぼんやり考えつつ、カイトは少し前におきた出来事を思い出していた。

 もし今この瞬間からこの物語に触れる君のために、まずは粗筋を振り返ろう。
 幻想南部無人島にて発見されたワタツミ遺跡の調査を貴族ブレイブの依頼で行ったローレットは、隠し部屋にて封印されていた秘宝種グッドクルーザーを発見した。
 ――「勇気システム起動……正義プロトコル実行開始……作戦名……希望!」
 ――「当機の識別名称はグッドクルーザー。戦闘の必要を確認。希望の戦士よ、どうぞご命令を」
 一切の記憶を持たず、魔を払う使命だけを帯びて目覚めた彼を導くのは、先達たるローレット・イレギュラーズたちの役目だった。彼らも突然召喚され滅亡回避の使命を帯びたという意味で、先輩とも言えたからである。後にグッドクルーザーは己もまたイレギュラーズとして召喚され、名実ともにローレットの後輩となったのだった。
 そんな彼と共に様々な海の事件を解決し、時には怪物と、時には海賊と戦ったが、そんな中で彼の不思議な性質が徐々に明らかとなっていった。
 彼が勇気と希望を胸にしたとき、胸のコアに紋章が輝き、専用の古代船ブルークルーザーと合体し大きな人型ロボット『ビッグクルーザー』へと変形する『深層合体(パンドラフュージョン)』。
 更には仲間達と希望と勇気を分かち合った時、彼らの船に変形合体機能を与え巨大なロボット『ファイナルビッグクルーザー』へと変形する『最終希望合体(ファイナルパンドラフュージョン)』。
 そしてより深き使命と友情によって結ばれた仲間を中心にビッグクルーザー自身がパワードスーツとなり個々人の戦闘能力を飛躍的に向上させる『深層希望合体(ディープパンドラフュージョン)』。
 これらはグッドクルーザーが使命を共にした仲間達と繋ぐ、勇気と希望の『合体』であった。
 そうして多くの仲間達と絆を紡いできたグッドクルーザーたちは、静寂の青にて埋没していた秘宝種集団『メガロビア』を発見。
 まるで人類抹殺を使命とするマシーンのように抹殺を続ける彼らと戦ううち、元は彼らもグッドクルーザー同様人類を守るための秘宝種チームであったことが明らかとなった。
 はるか古代、恐ろしく強大な外敵との戦いに敗れ海を閉ざされてしまったメガロビアは、僅かに残った同胞たちを封印しはるか未来に再び外敵と戦うよう己にプログラム(使命)を与えたのだ。だがそのプログラムが新たに青を支配下に置いた海洋王国を外敵とみなしてしまったために悪く作用し、望まぬ戦いが起きてしまったのだという。
 グッドクルーザーのかつての同胞であり、使命をもって生まれた筈の三人の秘宝種ノワールクルーザー、ブラッククルーザー、シュバルツクルーザーとの決死の戦いは、グッドクルーザーとローレット・イレギュラーズたちの勝利によって幕を閉じた。
 (俺は、強さが欲しかった――それは何故)
 (オレは、ダチを守りたかった――それは何故)
 (当機は、使命を果たしたかった――それは何故)
 破壊され海底へと沈みゆく彼らの手を掴んだのは――。

●新たなる船出へ
「ここは一体……それに、俺らは……」
 場面は戻ってプライベートビーチ。そこには三人の秘宝種(ロボットタイプ)が呆然とした様子で座って居た。
 砂浜に体育座りする三人のロボットというのはシュールだが、赤黄白の三色で色分けされているせいで、なんだかそういうオブジェにすら見える。
 依頼人が来るまで待つかーとぶらぶらしていたムサシや風牙たちがその前を通りかかり……ふと目が合った。
「「お、お前らは!」」
 思わず立ち上がった秘宝種たちに、遅れて通りかかったグッドクルーザーがスイカ片手に振り返った。

「紹介しましょう。レッドコプター、イエロージェッター、ホワイトドライバー。
 以前戦ったブラックノワールシュバルツの新しい姿です」
 冷静に説明するグッドクルーザーの話を、ムサシたちはほえーっていう顔で聞いていた。
「あのボディは殆ど破壊され修復が不可能な状態でした。ですので、ブレイブ氏が当機の改良のために研究していたブランクボディを転用したのです」
「まぁよぉ、オレら的にはこのボディにまだ慣れてねえんだが……ブラックとかシュバルツとか、正直色が一緒でややこしいと思ってたんだよ。丁度良かったよなァ! な!」
 背にプロペラめいた十字手裏剣を背負ったレッドコプターが、隣のシュッとしたデザインのイエロージェッターの肩を叩く。うるせえなと言って腕をはらうイエローだが、ホワイトドライバーはといえば体育座りの姿勢のまま『然り』と頷いている。
「本日の任務は『交流』だと聞いている。まずはこの島の子供達とふれ合い、己の使命を自覚するべきだと……ブレイブ氏はそう説明していた」
 とつとつと説明するホワイトドライバーの表情には、どこか苦々しいものがあった。
「だが、当機らは誤ったコードや魔の狂気に支配された結果とはいえ、多くの人々に手をかけてしまった事実は消えない。当機のような罪をもったロボットが、果たしてあのような純粋な子供達に触れてよいものか、どうか……」
 お堅い考え方をするホワイトドライバーだが、その点はレッドコプターとイエロージェッターも同じ考えだったようだ。
「オレらだってそりゃあ、真の使命が分かったんだし、ああいうガキたちを守りてえよ。けど……あいつらはなんて思うんだろうってな」
「人殺しの道具に守られたくなんてねえ、って思うかもしれねえぜ」
「む、むう……」
 うなだれた彼らを前に、グッドクルーザーは困った顔でカイトたちへと視線を向けた。
「当機は、魔を払う使命を帯びた勇者……しかし、こんな時、友になんと声をかけたらいいのかわからないのです。情けない話です……」
 だが、カイトたちはそんな彼の肩をポンと叩いてやった。
「そんなことないさ。大丈夫、また俺たちが教えてやるよ!」

GMコメント

 島の子供達とふれ合い、正義のロボットとして再スタートした仲間達ともまたふれあうという依頼をローレット・イレギュラーズたちは受けました。
 一度罪を犯した者たちが抱える『本当に自分達がこの子達に触れていいんだろうか』という悩みと、『本当は触れたいが恐れられるんじゃないか』という不安によりそい、時にはアドバイスをしたり一緒に遊んでその不安を解消してあげたりしてあげましょう。
 今回は、そういうお話なのです。もっというと水着回です。

●グッドクルーザー
 このシナリオにはNPCグッドクルーザーが同行します
 専用のクルーザーを相棒とする正義のスーパー秘宝種ロボットです
 https://rev1.reversion.jp/character/detail/p3n000117

・これまでの勇者進水グッドクルーザー
 https://rev1.reversion.jp/scenario/replaylist?title=%E5%8B%87%E8%80%85%E9%80%B2%E6%B0%B4

・レッドコプター
「空ってェのはいいもんだぜェ! こいつで今度こそオレはダチを守ってやる」
 消防用の赤い水上ヘリコプターをモチーフとした赤い秘宝種。
 飛行能力と高い偵察能力をもち、消防装置を備えている。

・イエロージェッター
「速さは強さだ。俺のジェット推進に追いつけないものねえ」
 レスキュー用水上ジェットスキーをモチーフとした黄色い秘宝種。
 高い機動力や反応、それに附随する高火力の近接戦闘能力をもつ。

・ホワイトドライバー
「当機の使命は平和の維持。なればこそ、同じ過ちは犯さぬ!」
 救急搬送用水陸両用車をモチーフとした白い秘宝種。
 お堅い性格だがとても博識。医療知識に優れ、高い治癒能力をもつ。

  • 勇者進水GC:新たなる船出と、優しさの価値完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2021年12月25日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
リサ・ディーラング(p3p008016)
特異運命座標
クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)
海淵の祭司
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
耀 英司(p3p009524)
諢帙@縺ヲ繧九h縲∵セ?°
ムサシ・セルブライト(p3p010126)
宇宙の保安官

サポートNPC一覧(1人)

グッドクルーザー(p3n000117)
勇者進水

リプレイ

●なんのための道具
 グッドクルーザーたちの話が纏まったところで、『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)はたれてきた前髪をなで上げた。元々、目にかかって仕方ない長さではあったが、左右にわけるにも半端な長さになってきてしまった。そろそろ切り時だろうか。
 前に切ったのは……と考えて、グッドクルーザーと冒険をした海の思い出がよぎる。
 あの頃の風景と、三色のロボットと視線を交わす風景をかさねた。
「なんだ、暫く見ねぇ間に、随分と賑やかになったみたいだな」
 人は変わるものだと、思う。
 十夜は足を取られがちな砂浜を器用に歩き、グッドクルーザーの二の腕のあたりをトンと拳でノックした。
「こうして依頼を受けるのも久しぶりだな、グッドクルーザー。舎て……」
「シャテ?」
 十夜は咳払いをしてごまかすと、言葉を探した。
「弟分が3人もできたのかい?」
「弟……いや、わかりません。彼らは当機の兄弟機の筈ですが……」
 すこし意図を外した回答に、十夜は苦笑した。
 昔なら『じゃあおじさんは、あっちで酒でも呑んでていいかい?』とでも言い出すところだ。
「とりあえず、難しく考える前にまずはやってみりゃぁどうだい?」
 砂浜に並んで座るロボットたちにも聞こえるように、十夜は声を張った。
 人は変わるものだ。きっと彼らも、変われるだろう。そう望むのであれば。

 ビーチボールを高く掲げ、走ってくる人影が見える。
 『よをつむぐもの』新道 風牙(p3p005012)だろう。シーレジャーにうってつけのウェットスーツを着て、振り返りながらボールを放った。
 あとから駆けてくる子供がソレをキャッチして、また風牙へと投げ返した。
「お、いい弾投げるなカーク! ほらオーブリー、パス!」
 両手を網のようにして受け取り、跳ね返すかのように別の少年へと投げる。バスケットボールの高速パス回しに使うフォームだ。
 そのまま戻ってきたボールを、素早いターンでホワイトドライバーのほうへと放った。
「ほら、キャッチだドライバー!」
「は、あ、了解!」
 思わず立ち上がりボールを受け取ると、そのまま棒立ちになっていた。
 走ってくる子供が『パスパス』といって手を上げる様子に、ホワイトドライバーは困惑しているようだ。
 その様子に、『なんか昔のグッディっぽいなあ』と思いながら風牙はあえて強めにホワイトドライバーの腕をひじでもって小突いた。
「パスだよパス。さっきみたいに軽く投げろ」
「軽く……か」
 おぼつかないフォームでビーチボールを山なりに投げると、少年達の向こうへと飛んでいく。彼らはそれをきゃっきゃと笑いながら追いかけ、そしてキャッチボールに戻っていった。
「お前、まだ気に病んでんのか?」
 少年達の背を見つめるホワイトドライバーに、問いかける。
 返答はなかった。沈黙が、最大の答えであるらしい。
「気にすんな、とは言えないな。実際、たくさんの人が傷ついた」
 風牙の脳裏には、虐殺された島の人々や青の探索中に行方知れずになった人々のことがよぎる。顔も知らない誰かだが、だからといってだ。
「オレだってあの時のお前らを簡単には許せない」
「許されるものとは、思っていない。たとえ許容されたとしても、過去が変わりはしない」
「……だな」
 なぐさめる文句はいくつも浮かんだが、風牙はどれも違う気がしていた。
「ま、それでいいんじゃねーの。『一生気に病むの刑』だ」
 風牙は『ほら遊ぶぞ!』と言って走り出した。

 ホワイトドライバーが連れ出されたことで、レッドコプターとイエロージェッターは顔を見合わせた。
 さて自分達はどうするか、という顔である。
 そこへ、陽気な音楽が聞こえてきた。
 砂浜をずしんずしんと歩いてくる『機心融解』フリークライ(p3p008595)から再生されている音楽らしい。このボディのどこにスピーカーがついているのかまるでわからないが、周りを飛んでいる小鳥たちはどうやらその音楽が気に入ったらしい。ちょこちょことついてくる子供達もだ。
「逃ゲル ダメ。子ドモ達 ガッカリ ションボリ 傷ツク」
 フリークライは振り返った二人の顔をそれぞれ見てから、両目のライトをちかちかと点滅させた。
「フリックモ ションボリ。ミンナデ 体育座リ ナッチャウヨ?」
 言われてから、フリークライが横に並んで体育座りをいつまでもしている風景を想像してレッドコプターが『ぐえ』という顔をした。
 厳密には口元だけがなめらかに動作するので、表情が現れたのは口元だけなのだが。
「自ラ 行イ 思ウ アル 理解。
 デモ 子ドモ達 君達ドウ思ウ 子ドモ達自身 心 決メル。
 君達 決メル 違ウ。失礼。
 ン。ダカラ 子ドモ達自身ニ 見極メル シテモラウト イイ。
 コレモ 縁」
 フリークライの言い分が分かったらしく、レッドコプターはすっくと立ち上がった。
「勇気 出ス」
「わかったよ。しっかしアンタよォ……しゃべり方変わってんな」
「……?」
 首をかしげ目をちかちかさせるフリークライ。
 肩に止まった青い小鳥もまた、首をかしげた。
「OK、そうと決まったら!」
 声がした途端、フリークライやまわりの子供達がふわりと浮かび上がった。白い羽根が舞うような幻がかかり、その中心には『空の王』カイト・シャルラハ(p3p000684)が舞い降りてくる。
 子供の一人が足のつかないことにばたばたしつつ、カイトへと振り返った。
「これ、空を飛べる魔法!?」
「そういうこと。ハイペリオンさまの加護ってやつだぜ」
 カイトは親指を立てて見せると、レッドコプターを指さした。
「今から鬼ごっこだ。鬼はおまえら全員。捕まえるのはレッドコプターだ。加護が途切れっと厄介だから、全員あんまり高い所にはいくなよ?」
「あァ!? なんだと!? オレぁこのボディに入ったばっかなんだぞ、そうポンポン飛べるわけ――」
 カイトは子供達に翼を広げてみせると、くいくいと手招きをした。
「なーに、空の飛び方は俺が教えてやれるぜ。
 俺は同じく赤いけど!! レッドコプターより早いから!! 三倍だから!」
 カッカッカとくちばしを広げて笑うカイトに、レッドコプターは思わず身構えた。
「言ってくれんじゃねえかテメェ! かかってこいオラァ!」
 飛び上がり、背中のプロペラ型十字手裏剣を回転させて飛び始めるレッドコプター。
「よーし野郎ども、いくぜ!」
 カイトは子供達を先導するように飛ぶと、いきなり海の上の空中で追いかけっこを始めた。
(子供はとても純粋で、なおかつ強い。お前の繊細さなんて、吹き飛ばしてやらァ!)

 一方、イエロージェッターは『怪人暗黒騎士』耀 英司(p3p009524)と『海淵の祭司』クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)に挟まれていた。
「人殺しの道具、ね」
 英司は仮面をしたまま焼きそばを器用に食べながら、紅ショウガ部分を割り箸でつまみあげた。
「ま、どんだけ綺麗事を言おうが、その事実は変わんねぇわな。
 過去は変えられねぇ。出来るのは忘れる事だけだ」
 罪は生涯に刻みつけられる。焼き印をおされたように。
 忸怩たる思いが。身を焼くような辛さが。
 それゆえに闇の底で這いずることに慣れてしまうヤツもいれば、だからこそ這い上がって光に手を伸ばそうとするヤツもいる。
「誰かを守りたい気持ちを、使命を刻みつけとけ。
 戦え。ヒーロー。胸の奥に突き刺さった痛みとよ。
 痛みを知ったアンタ等は、そこらの二流とは一味違うはずだぜ」
「……オレは、それでいいかもしれねえ」
 イエロージェッターはは胸の辺り、コアの部分に手を触れて目元の光を弱めた。
「ガキどもはどう思うんだ? 俺らには、遠くから見守るってやり方もあるとおもうぜ」
「かもな、けど……」
「成せるなら、成すのじゃ」
 クレマァダは水着についた砂をはらって立ち上がり、海へと歩き出す。
 振り返って手招きすると、シャツを脱いで水着姿になった子供達が駆け寄ってくる。
「子供達よ、泳ぎのことなら任せておけ。海で最も速く深く泳げるもの……それは、我らクジラの仲間じゃからな!」
 わーわーといいながら海へと入っていく彼女たち。英司は立ち上がり、イエロージェッターに手を差し出した。
「子供たちから逃げるんじゃねぇ。
 守りたいなら、一番近くへ行くんだ。
 怖いのは、恐れられる事でも、望まぬ称賛を受ける事でもねぇ。
 この手が届かない事。守れねぇ事。そうだろ?」
「……うるせえ」
 イエロージェッターは顔を一度顔を背け。そして英司の手を掴んだ。
 クレマァダが『勝負じゃ!』と言って泳ぎ始めると、イエロージェッターも海へと飛び込んで背面のスクリューを起動させた。

 子供達が水鉄砲で遊んでいる。
 かかる水を手で払いながら、『スチームメカニック』リサ・ディーラング(p3p008016)は土を積み上げて作った壁の裏へと身をかがめた。
 拳銃型の水鉄砲を翳し、にやりと笑って身を乗り出す。
「遊ぶときはしゃんと遊ぶ! 仕事ん時は仕事に集中! 悩んでうだうだするくらいならばしって切り替えていくのが一番っすよ!」
「ぐおっ!?」
 リサの放った水流がホワイトドライバーの顔にかかり、『今っす!』と叫ぶリサにあわせて別の土壁から飛び出した子供達が水鉄砲を撃ちまくった。
 集中砲火ならぬ集中放水をうけて後じさりするホワイトドライバー。
「包囲網に誘い込むとは、だが負けん!」
 ホワイトドライバーは手にした放水器を起動し、子供達やリサたちへと水を浴びせ……かけようとして、レバーにかかって手が止まった。
 手をかざして水をさけようとした子供達が、不思議そうにこちらを見ている。
「…………」
 ホワイトドライバーの手はレバーの前で固く止まり、そして表情には苦々しいものが浮かんでいる。
「ホワイトドライバー……」
 彼の横に立ったのは、『トライX』ムサシ・セルブライト(p3p010126)だった。
「何故そんなに怯える必要があるんでありますか? 今は彼等を傷つけたいと思ってないのに」
「しかし……」
 レバーから離した手のひらを自らに翳す。
「当機は望んで人を傷つけた。この手を血に染めることも、当然と思っていた。当機は所詮、人を殺すための道具にすぎない……」
 ムサシはその腕に軽く手を置いた。
「ホワイトドライバー。あなたの使命はなんでありますか。使命を果たしたいならば、やるべき事は一つ!」
「しかし、できるのか。そんなことが、許されるのか?」
 迷うのは、当然だ。
 だからムサシは、初めて銃を握った時のことを思い出した。
 人殺しの道具。確かにそうなのだろう。
 この技術は戦争によって、効率的な殺人のために開発されたものだ。その経緯は拭いようがない。
 だが、本当にそれだけだったか?
 自国の民。あるいは自分の家族や友や、今目の前の通りを歩く人々を守るために開発したものでもあったはずだ。
「道具。確かにそうであります。しかし道具は、使う者の意志によって用途が変わるのであります」
 水鉄砲を翳し、ムサシは頷く。
「ホワイトドライバー。あなたが『ただの機械』ではなく、意志と感情をもった超AIを搭載したのはなぜでありますか。
 用途を、使命を、あなた自身が決めるためでありますよ!」
「当機が……決めていい……?」
 放水器を見つめるホワイトドライバー。
 ムサシは笑い、そしてリサたちへと水鉄砲を向けた。
「まずは任務を遂行するであります! 任務は『交流』! その力をもって、子供達を笑顔にせよ!」
「――了解!」
 放水器を使って子供達に水を浴びせるホワイトドライバー。
 リサは笑いながら『隠れるっすー! 反撃っすー!』と子供達に叫んだ。

●希望の戦士
 子供達との遊びが始まってしばらく経った頃、英司はハッと海の沖へと振り返った。
「かすかだが、助けを呼ぶ声がする。センサーにはかかっていない……距離があるぞ!」
「なんじゃと!?」
「それは本当ですか!」
 クレマァダとグッドクルーザーが振り返り、そして子供達に下がるように言った。
 十夜が子供達の肩にそっと手を置き、クレマァダへと振り返る。
「この子らは俺が見ておく。行きな」
「感謝します、戦士十夜!」
 海へ向けて走り出すグッドクルーザーたち。
 十夜は身をかがめ、子供と視線の高さをあわせて彼らを指さした。
「見な、旦那が友達を助けに行くぜ」

 海へと飛び込むのはクレマァダとイエロージェッターが最も早かった。
「イエロージェッター、お主の背を貸せ!」
「――応!」
 高速航行モードをとったイエロージェッターの背にクレマァダがサーフボードのごとく飛び乗ると、加速の暴風の中で呟いた。
「己の行いは消えぬ。何があっても。悪いことも、良きことも。
 己の罪悪感に負けるな、ジェッター! 例え資格がなくとも、力あるものにはそうする義務がある!!」
 二人は子供達と遊んでいた間、海の中を競争しながら昔のことを話していた。
 コン=モスカの一族に産まれたクレマァダ。防人としての使命に対して一度、『どうして我らがこんなに大変な使命を負うのか』と父へ尋ねたことがあったという。
 それに父はこう応えた。『僕たちには、それを成せる。成せるなら、成すのだ』。
「望みを成せる力があるなら、それを誇るのじゃジェッター。
 それがきっと原動力(エンジン)になる。正しさで進めなくなったなら、胸に誇り(オリジン)を思い出せ!」
 クレマァダの言葉に応えるように、イエロージェッターは胸のコアを輝かせた。
「これは……!?」
「グッドクルーザーと同じ……」
 クレマァダとイエロージェッターは視線を交わし、そして一瞬で決断した。
「「深層希望合体(ディープパンドラフュージョン)!」」
 パーツ分解しアーマーとなったイエロージェッターを『装着』したクレマァダは、とてつもない速度で海中を直進。
 溺れて沈みゆく二人の子供をキャッチすると、水面をわって飛び上がった。
 あまりの勢いに海面から二メートルほどジャンプしたイエロージェッター・XZ・クレマァダは振り返る。
「このまま海中へと戻してはだめじゃ。空を――」
「「任せろ!」」
 カイトとレッドコプターが声を揃えた。
「「深層希望合体(ディープパンドラフュージョン)!」」
 プロペラと美しい翼をアーマーとして装着したレッドコプター・XZ・カイトは折りたたみ展開式の運搬性能装置を展開。二人の子供を空中でキャッチしてターンすると、ジェット噴射による加速で浜へと舞い戻った。
 浜で待ち構えていたのはリサとホワイトドライバーたちだ。
 連れ戻された子供達へと駆け寄ると、ホワイトドライバーは診察ビームを目から放ち状態を確認。
「クラゲの毒だ。この季節には少ないが、沖に残っていたのだろう」
 バックパックから医療道具を取り出し治療にあたるが、砂浜で仰向けに倒れ唇を青くした二人の子供を前に固まった。
「ホワイトドライバー!」
 リサががしりと腕を掴んだ。
「手を貸すっす!」
 すると、ホワイトドライバーの胸のコアに紋章が輝いた。
 やるべきことは決まっている。
「「深層希望合体! ――ホワイトドライバー・XZ・リサ!」」
 アーマーを装着したリサは展開した複数のアームを使い、ヘッドマウントゴーグル内に表示された医療手順にそって子供達の治療を素早くおこなった。
 毒を抜き出し血の巡りを止め、暖めるためのシートで胴体をくるむ。
 子供達の顔色は徐々に戻り、浜へ戻ってきたイエロージェッターたちがほっとした顔をした。

 夕暮れの海辺。
 子供達にからまれ、苦笑しながらも遊ぶ三体のロボットたちが見える。
 グッドクルーザーは、風牙たちへと振り返った。
「ありがとうございます、希望の戦士。彼らは……きっともう大丈夫でしょう」
「ああ、だな」
 腰に手を当てる風牙。
 フリークライや英司、ムサシたちも頷き、そして子供達へと歩き出す。
「さあ、行こうぜグッディ。子供達が待ってる」
「……はい!」
 グッドクルーザーもまた走り出し、子供達の輪へと入っていった。

成否

成功

MVP

クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)
海淵の祭司

状態異常

なし

あとがき

 ――レッドコプター、イエロージェッター、ホワイトドライバーが仲間になりました!

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