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シナリオ詳細

エイサホー! 或いは、化石掘りの歌…。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●化石掘りの歌
『エイサホー!
 エイサホー!
 渇いた大地にツルハシひとつ
 
 エイサホー!
 エイサホー!
 日焼けた肌に汗水ふたつ
 
 エイサホー!
 エイサホー!
 地面に埋もれた竜骨みっつ

 エイサホー!
 エイサホー!
 竜骨売った金貨がよっつ

 エイサホー!
 エイサホー!
 宵の酔いにとエールがいつつ

 エイサホー!
 エイサホー!
 エイサホー!
 エイサホー!
 朝日が昇ればすっからかん!』
 
 ※ラサ民謡集・莫邪編
 “化石掘りの歌”より抜粋

●前略、遥か太古より
 ラサ。
 砂漠の果ての岩山に、ツルハシ担いで向かう男女の姿が3つ。
「なぁ、本当にここで合ってるのか? 人の気配なんて微塵も無いぞ?」
 砂色をした岩肌をぐるりと一周、見渡してサンディ・カルタ (p3p000438)はそう問うた。
 赤茶けた、錆色とでもいうべき髪をなんともなしに掻いてみれば、パラパラと乾いた砂が零れて落ちる。
 緑の外套も、ここまで至る道中ですっかり砂と埃に塗れているではないか。
「えぇ、もちろん! こう見えてラサの事情には詳しいのよ!」
 ふふん、とどこか得意気に胸を張って応えを返したエルス・ティーネ (p3p007325)は、炎天下の下、汗のひとつもかいてはいない。
 見ればその白く細い指に嵌った指輪から、微細な魔力が漂っている。
 ひやりした風……本来は氷を整形するための指輪を、今現在に限り冷風の発生に使用しているらしい。
 ラサの砂漠は過酷なのだ。
 備えあれば憂いなしとは、砂漠を旅する商人たちの口癖である。
 ちなみにこの場合の憂いとは、つまるところ“命を落とす”ということだ。
 準備も無しに砂漠へ出かけた者の辿る末路など、想像するに難くないのは世の常である。
「そっか。本当に信じていいんだな?」
「大船に乗ったつもりでいてくれてもけっこうよ!」
「……こんな砂漠の果てで大船に乗ったってな。渡れるのはあの世へ続く川ぐらいのものだろうに」
 なんて、そう呟いたサンディは視線をチラと後ろへ向けた。
 そこに立つは、赤い外套で頭をすっぽり覆い隠した小柄な少女。
 リコリス・ウォルハント・ローア (p3p009236)である。
「最終確認なんだけどさ……リコリスは、ここに何をしに来たか分かってるよな?」
「んぅ? 化石を掘って……食べる」
「……よし」
 良しじゃないが。
 暑さに参っているのだろうか。
 リコリスの目は据わっている。
 意識が朦朧としているのかもしれないが、それでも咥えた干し肉を咀嚼し続けている辺り、一応正気は保てていると見てよさそうだ。
 咀嚼さえ忘れる状態になったら、注意が必要かもしれない。
「美味しい化石を掘り当てましょうね。ここでならきっと、それが見つかるはずだわ」
 慈愛に満ちた眼差しをリコリスへと送り、エルスは告げた。
 美味しい化石とは何なのか。
 石に美味いも不味いもあるのか。
 多くの謎を残したまま、サンディ、エルス、リコリスによる化石掘りは開始と相成ったのである。

●化石掘りが化石に
 事の発端は数日前。
 以前、とある依頼の折にリコリスは貝の化石を喰らった。
 当然、貝の化石は硬く、味も石のそれだった。
「納得がいかないよ。貝の形をしていたのに、貝の味がしないなんて」
 そんな風な不満を口にしたところ、それを傍で聞いたエルスは化石掘りのやり直しを提案したというわけだ。
 つい先だって、エルスが耳にした噂話に「化石」にまつわるものがあった。
 噂の真偽を調査するついでに、皆で化石の1つでも掘れば楽しいじゃない、とそのような思惑であったのだろう。

 さて、エルスの聞いた噂の舞台は、砂漠の果ての岩山だ。
 山といってもさほどに高いものではない。
 せいぜいが、建物2つ分程度。
 高さは無い代わりに横に広く、いわば岩盤地帯のようなものである。
 通称“竜骨峰”と呼ばれるその場所には、太古に存在した竜の骨が埋まっているのだそうだ。
 長い時を経て、骨の成分はすっかり石のそれへと変じた。
 つまりは、化石と化したのである。
 かつて掘り当てられたのは、翼の無い巨大なトカゲの化石であった。
 竜に似ているということで、その地は竜骨峰と呼ばれているらしい。
 トカゲ、或いは翼の無い竜の骨はかなりの高額で好事家に買い取られたという。
 一攫千金とはまさにそのことだろう。
 結果、竜骨峰には多くの発掘者が訪れた。
 しかし、それ以降、竜骨峰で化石が発掘されることは無かった。
 そして、発掘者たちはただ1人の例外を除き、誰も帰還しなかった。
 生きて帰った者が言うには、竜骨峰にはある種の“呪い”がかけられているとのことである。
 曰く、発掘者たちは“何か”を掘り当て歓喜した。
 前祝いだと、その夜は盛大に酒盛りをし、大いに騒ぎ……翌朝には【石化】して命を落とした。
「ただ1人、帰還したその発掘者は、たまたま体調不良で仕事を休んでいたから助かった……とのことよ」
 それが、竜骨峰の呪い。
 ラサに古くから伝わる伝承であった。

「以来、竜骨峰は“呪われた土地”として名を馳せた。ここまでは俺も知ってるが、エルスの聞いた噂ってのはそういうことじゃないんだろ?」
 化石掘りへ向かうと決めたその日の夜。
 リコリスの誘いを受けたサンディは、エルスの口にした“噂”という単語についてを問いただした。
 サンディの問いを受けたエルスは、ほんの僅かに表情を曇らせ、次のように告げたのである。
「ここ最近、竜骨峰で夜な夜な人影と声が聞こえるのですって。“化石掘りの歌”を歌うその人影は、かつてその地で命を落とした発掘者たちの霊だと……そういう噂を聞いてしまった以上、何か行動を起こすべきよね」
 それがラサのためになるなら、多少の苦労は無いも同然。
 噂が単なる噂に終われば、笑い話として処理するだけの話である。
「それはそれとして、ぜひ化石は手にいれたいけれど」
「うん。今度こそ美味しいといいよね」
「そうだな。化石、うまいといいな……じゃない。いい値段で売れるといいよな」
 3者3様、理由は様々ではあるが目的だけは一致している。
 ならば、彼らが手を取り合ってことを成すのになんの支障があるだろう。

GMコメント

※こちらのシナリオは部分リクエストシナリオとなります。
 
●ミッション

“翼のない竜の化石”を発掘する


●ターゲット

・化石になった化石掘りたち×?

最近、ラサに流行り始めた奇妙な噂。

竜骨峰にて、夜な夜な「化石掘りの歌」が聞こえるというものだ。

命を落とした化石掘りたちの霊が現れているのだ……と噂されているが真相は不明。

不吉な曰くのある土地なので、誰も真実を確かめに訪れるようなことは無いのだ。

※対象を【石化】状態にする能力を持つらしい。


・翼のない竜の化石

竜骨峰でかつて発掘された非常に高価な化石。

巨大なトカゲ、翼のない竜、などと呼称されている。

いかんせん太古に滅んだ生物であるため、元はどんな姿をしていたのかは不明。

※これを掘り当てることが今回の依頼の目的となる。


●フィールド

ラサ。

砂漠の果てにある岩山。

高度はないが、範囲は広い。

かつては発掘者で賑わったが、不幸な事件があり現在はすっかり人が立ち寄らなくなっている。

夜な夜な、発掘現場からは「化石堀りの歌」が聞こえてくるらしいが……。


●その他

・化石掘りの歌

ラサに古くから伝わる歌。

発掘現場で働く化石掘りたちが、好んで歌っていたらしい。

一攫千金を夢見て化石を掘る男たちの栄華と零落を自嘲した歌だという説もある。


ラサ民謡集・莫耶編 『化石堀りの歌』の項より。


●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
 

  • エイサホー! 或いは、化石掘りの歌…。完了
  • GM名病み月
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年12月30日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
剣砕きの
レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)
赤々靴
サンディ・カルタ(p3p000438)
横紙破り
※参加確定済み※
東雲・リヒト・斑鳩(p3p001144)
胡乱な渡り鳥
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
祈りの先
エルス・ティーネ(p3p007325)
竜首狩り
※参加確定済み※
チヨ・ケンコーランド(p3p009158)
元気なBBA
リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)
( ‘ᾥ’ )の化身
※参加確定済み※

リプレイ

●初日の情熱
 夕暮れ時。
 ラサの砂漠にツルハシの音が鳴り響く。
「一攫千金! いい言葉でございますわ! ここで化石を掘り当てれば、私も24時間お酒飲み放題の生活に!」
 普段はメイスを力いっぱいに振るっているのだ。
 ツルハシ程度、重いとは感じぬ祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)である。
 ここはラサの採掘場。
 かつては翼のない竜の化石が掘り起されたと、大勢の発掘者で賑わっていたこともある。
 けれど、ある日、発掘者たちが石化し命を落とすという異常事態に見舞われたことで、すっかり人気は失せて久しい。
「エーーーイサホーーーー!! 太古のローマンを掘り出すのじゃーーーー!!!」
 そんな砂漠の採掘場に、久方ぶりに響くツルハシの音とラサに伝わる“化石掘りの歌”。
「あぉ……エイサホー!」
 歌を奏でるは矍鑠とした老婆『元気なBBA』チヨ・ケンコーランド(p3p009158)に、口の端から唾液を垂らす『狼殺し』リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)の2人である。
「ラサの方々は本当に音楽が好きなのね。化石掘りにだって歌をつけてしまうなんて……素敵!」
「まぁ、なんかよく分かってねー奴もいそうだし、謎も多いけどな」
 額に滲んだ汗を拭って『竜首狩り』エルス・ティーネ(p3p007325)はチヨと一緒に掘り返した土をせっせと隅へと運んでいった。一方『横紙破り』サンディ・カルタ(p3p000438)はというと、明かりを灯した手甲を掲げ、堀った穴の深くへ潜ったリコリスへ視線を向けていた。
「んぅ? ……あれ? みんなどうしたのその顔? なんだかすごくかわいそうな目で見られてる気がする」
「目がシイタケみたいに……。いや……ま、当てれば一攫千金よォ!!」
「アォーン! そうだよね! 今日こそは! 食べられる化石を発掘するぞ!」
 既に認識に齟齬が発生しているが、不思議なことに目的だけは一致していた。

 近くの街で“採掘場の噂”や“化石掘りの歌”について聞き込みを行い、採掘場に到着したのは午後も遅くなった時間だ。早々にキャンプを張って、一部の者は早速とばかりに発掘作業へ向かった。
 時刻は夕暮れ。
 もうじきすっかり日が落ちる。
 今日の作業終了時間はもうすぐそこだ。
「意外と化石って良い商売になるんだな。大きさと量によっちゃ運び出すのも一苦労だろうが……何でも昼間に立ち寄った街が出来た理由も、化石の取引目的だそうだ」
「化石掘りで一攫千金とはまたなんとも浪漫のある話……とはいえ何やらきな臭い気もするけどねぇ」
 キャンプを張った一角で、焚火に薪を放り込むのは『剣砕きの』ラダ・ジグリ(p3p000271)。対面に座った『胡乱な渡り鳥』東雲・リヒト・斑鳩(p3p001144)と聞き込みによって得た情報についてを軽く交換していた。
「斑鳩もそう思うか? 私も怪しいと思っていたんだ。特に、生きて帰ったのが1人という辺りがな」
「採掘者たちは“何か”を掘り当てたそうだけど、それが“何”だったのか、今に至るまで不明なままというのがね」
 水を満たした薬缶を焚火にかけながら、斑鳩は苦い笑みを浮かべた。
 2人が話しているのは、採掘場……竜骨峰に古くから伝わる“呪い”についてだ。
「最近になって“化石掘りの歌”についての噂が広まったのも気にかかるな。滅多に人の寄り付かない場所の噂がどこから立ったやら」
「まぁ、のんびりやろうじゃないか……どうせ本番は夜なんだから」
 なんて。
 遠くに聞こえる仲間たちの喧噪に耳を傾けながら、2人は静かに言葉を交わす。
 と、その時だ。

『エイサホー♪ エイサホー♪ 渇いた大地にツルハシひとつっす♪』

 キャンプを張った裏手から件の歌が2人の耳に届いたのは。
 ラダはライフルを手に立ち上がり、音を立てぬよう移動を始めた。懐に手を入れた斑鳩もラダの影に隠れるようにして後に続く。
 ゆっくりと、テントの影から歌の聞こえる辺りへと2人は顔を覗かせた。
 果たして、そこにいたのはツルハシを担いだ『赤々靴』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)である。
「……君か。歌うのは結構だけど、紛らわしいから夜の時間帯はやめてほしいね」
 懐に忍ばせていた手を外へと出すと、斑鳩はわざとらしくため息をひとつ零して見せた。
 斑鳩の溜め息に気づいたレッドが振り返る。
「え? 夜の作業中に歌うのは紛らわしいっすか?」
 きょとん、と。
 何も分かっていないみたいな瞳を見ると、ラダと斑鳩はそれ以上何も言えなくなった。

●2日目の喧噪
 初日の夜は賑やかだった。
 テントの外に転がっているのは、焚火の灰と幾つかの酒瓶。
 昨夜のメニューはシチューであった。
 ちなみに2日目はバーベキューを実施の予定となっている。
「これは…ツノ? 爪? どっちだろ? かっこいいからツノにしちゃえ!」
 朝日が昇ると同時に起きた一行は、リコリス主導の元、昨日の成果を整理している。広げた敷物に並べられた化石の数は合計3つ。
 1つは何かの爪か角、もう1つは骨のような何か、そして最後の1つはというと……。
「そしてこれはね〜〜……サンダルの化石!!」
 土に塗れた履き物である。
 薄い胸を張ってリコリスが頭上に掲げたサンダルを、斑鳩がそっと取り上げた。

 砂漠といえば、気温が高く過酷なものと相場が決まっているだろう。
 けれどそれは、灼熱の太陽が大地を炙る日中の話。
 夜間は凍えるほどに気温は下がるし、太陽が沈んで時間の経った早朝などは涼しく過ごしやすいのだ。
「ほっほっほ!! ババア・レッグは荒ぶる健脚!! どこまでも石を運ぶぞい!!!」
 気温の上がりきらぬうちにこそ、発掘作業を進めるべきとチヨを初め、一行は精力的に地面を掘り返していた。
 土砂を運ぶチヨの後ろにはサンディの連れて来た陸鮫が飛んでいる。
 積み上げられた土砂を見て、サンディは顎に手をあてた。
「おーい、リコリス、レッド!」
 それから、地面を掘り返していたリコリスとレッドの元へ近寄っていく。
「掘る場所を変えよう。それ以上深く掘ると生き埋めのリスクが……って、何やってんだ2人とも?」
「……おっと」
 見ればレッドは何かを懐へ仕舞っているし、リコリスの頬は膨らんでいる。
 サンディに声をかけられた2人がビクリと肩を跳ねさせたところを見るに、どうにも何かの悪さをしていたらしい。
「化石掘りってなかなか楽しいわよね。でも今回は食べようとしちゃダメよリコリスさん」
 吐き出しなさい、とサンディの横から顔を覗かせエルスは言った。
 渋面を作ったリコリスだが、大人しく口に含んでいたものを吐き出して見せる。透き通った薄いオレンジの結晶……琥珀と呼ばれるもののようだ。
「腹減ったならスイカあるけど、切ろうか。だから石齧るなよ。歯が欠けるぞ」
 近くで様子を見ていたラダはそう問うた。
 褐色の肌に浮いた汗がつぅと頬を伝って渇いた地面に落ちる。その頬が僅かに引き攣っているのは、暑さのせいか、はたまたリコリスの行為に引いているからか。
「飴だもん」
 飴ではないが。
 断じて、琥珀は飴ではない。天然樹脂の化石である。
 リコリスの手から唾液塗れの琥珀を受け取り、エルスはそれを太陽の光に翳した。琥珀の中には、小さな蠅のような虫が閉じ込められているのが見える。
 ぬらり、とまるで濡れているかのように……否、唾液で濡れてはいるのだが……輝く化石は美しい。
 一方、レッドはと言うと、懐に手を突っ込んだ姿勢のままでサンディと睨み合いを続けていた。
 無言の時間は数秒ほど。
「ヴァレーリヤさん!」
 初めに動いたのはレッドであった。
 腰の後ろへ手を回し、ヴァレーリヤの名前を呼ぶと同時に何かをサンディの頭上へと投げる。
「これをッッ……どうぞっす!」
 ちゃぽん、と液体の揺れる音。
 投げられたそれは酒瓶だ。開いた口から紫色の酒と、アルコールの香りが散った。
 酒精に気づいたサンディが顔を青ざめさせる。
 直後、横合いより飛び込んできたヴァレーリヤのタックルを受け、サンディはたまらず姿勢を崩した。
 リコリスとレッドの堀った穴へと落下するサンディ。見事、酒瓶をキャッチしたヴァレーリヤ。そして素早く穴から飛び出していくレッド。
 視界の隅にレッドの赤い靴を見て、サンディは彼女の狙いを悟る。
「持ち逃げだ! 捕まえろ!」
 渇いた叫びが、砂漠の空に響き渡った。

 日中、発掘作業は行わないことと決めている。
 正体不明の“何か”がいる状況に加え、化石掘りのための体力も温存せねばならないからだ。当然、明かりのある昼間のうちが作業もしやすいのだろうが、体力の消費はそれ以上。メリットとデメリットを秤にかけた結果であった。
「キャンプらしくBBQなんて良いかも知れませんわねっ!」
 事前準備の段階で、そんな提案をしたのはヴァレーリヤだった。
 嬉々として肉や野菜を買い込んでいたのはつい昨日の話である。
 そんな彼女は現在、レッドの持ち込んだ酒瓶を片手に、焚火にかけた鉄網で肉や野菜を焼いている。
 ちなみに野菜の下拵えをしたのは、サンディの連れているモルダーという名の少年だ。
 疲れた顔で肉を食むサンディは、横目でレッドとリコリスを見ると僅かに頬を引き攣らせた。2人とも砂漠の暑さにうだることもなく、いつも通りの健啖ぶりである。
 肉肉野菜肉野菜、時々スイカのリズムを刻み、生焼けだろうと構わずに次々口へと運んでいるのだ。働いた後の食事と酒がいつにもまして美味く感じるのは道理である。
 なれば食欲旺盛な2人を誰が責められるだろうか。
 否、責められはしない。
「ほっほっほ。たんとお食べ。食べ終わったら風呂に入ってはどうじゃ? 効能は筋肉痛に効くやつにしとくからの」
 いい塩梅に焼けた肉を、リコリスの口へ運びながらチヨは上機嫌に笑っていた。田舎のお祖母ちゃんといえば、孫にやたらと色々食べさせたがるものだが、今のチヨはまさしくそれだ。
 既にドラム缶風呂も沸かし終えている辺り抜かりがない。商人ギルド・サヨナキドリの支部長を任せられていることからも分かる通り、気の回る性質なのであろう。
「あら、ところで斑鳩さんとラダさんはどちらに行っているのかしら?」
 ふと、酒を煽る手を止めてヴァレーリヤはそう問うた。
 ぐるりと周囲を見回してみれば、ラダと斑鳩の姿が見当たらない。
 
 採掘場からほど近い街。
 ラダと斑鳩は、昼の時間を利用して再びそこを訪れていた。
 しばらく、ラダの友人や街の商人たちに話を聞いたり、マーケットを覗いたりした結果、分かったことが1つある。
「火のないところに煙は立たないっていうが……なるほど、こういうわけか」
「あぁ。つい最近、採掘場に出入りしていた者がいることに間違いはないというわけだね」
 なんて。
 マーケットを覗き込みながら、ラダと斑鳩は言葉を交わす。
 それからラダが懐から取り出したのは、土に塗れたサンダルだ。
 そして2人が覗き込むマーケットには、デザインも素材も、まったく同じサンダルが飾られていた。

●3日目の騒動
 発掘作業も3日目となれば、疲労も蓄積するものだ。
 時刻は夜。
 ドラム缶風呂に肩まで浸かり、エルスは夜空へ視線を向ける。
 湯加減は完璧。流石はチヨと言わざるを得ない。
「憧れとかそんな感情もあるけれど」
 空気が澄んでいるからか、今夜は星が良く見えた。すっと伸ばした白い手で、幾つかの星を線でつなぐようになぞる。なぞったのはオリオンか? 否、エルスが線で繋いだ星座は“りゅう座”と呼ばれるものである。
「なんだか親近感とか……そんなちょっと自分でもよくわかってないんだけど。温かな感情も……竜を見てると湧くのよね」
 “りゅう座”の竜は、蛇のように胴が長く、2つの翼と四肢を備えたものだ。
 砂漠で掘り当てられたドラゴンの化石には、翼が存在しない。
 化石として残っていないだけか、それとも元より無かったのか。
 伸ばした腕を湯へと漬け、エルスは静かに目を閉じた。焚火の燃える音に、仲間たちの声、それから渇いた風の音。
 それらの音に混じって、数かな歌声が耳に届いた。
「……これって“化石掘りの歌”?」

『エイサホー!
 エイサホー!
 渇いた大地にツルハシひとつ』

 夜闇に響く男たちの陽気な歌声。
 一行がキャンプを張った位置から幾らか離れた場所……ちょうど、斜面が崩れて積もっている辺りから、その歌声は聞こえて来た。
 現場に辿り着いて早々、サンディは手甲に光を灯し高く掲げる。
 しかし、人の姿は見えない。
「いやああああんおばけええええ!!!!」
「リコリス、少し黙っててくれ」
「ねぇぇええええ!? おばけええええ!!!!」
「駄目だ、聞いてねぇ……なぁ、ヴァレーリヤ、任せていいか?」
 リコリスを?
 否、霊の対応である。
 頷くと、ヴァレーリヤが前へ出た。
 胸の前で手を組んで、闇の帳へ向けて静かに声を投げる。
「もし、石化の原因や、化石が埋まっている場所を知りませんこと? 約束はできないけれど、もしかしたら石化を解く手段が見つかるかも知れなくてよ」
 ヴァレーリヤの問いかけは、姿の見えない男たちへ届いただろうか。
 否、歌声は止まらない。
 ヴァレーリヤへ問いへの返答もない。
「皆さん、化石掘りに囚われたままのようですわね。ずっと、肉体を失っているにも関わらず、化石を掘り続けているのですわ」
 しかし、と。
 ヴァレーリヤは、積もった土砂へ視線を向けるとそちらへ向けて歩いて行った。
 瞬間、歌声はピタリと止まる。
 そして、空気が激しく震えた。
 見えない衝撃がヴァレーリヤの身体を撃ち抜いた。
「ゴーストの類かな? っていうか、銃弾って効くのかなぁ?」
 懐から抜いた魔銃を構え、斑鳩は暗闇へと狙いを定める。
 姿こそ見えないが、ヴァレーリヤを襲った衝撃の方向からおよその位置は特定できた。
「まあとりあえず撃ってみるよ」
 2度の銃声。
 放たれた弾丸が夜闇を切り裂く。
 斑鳩の宣言通り、牽制にはなったのだろう。ゴーストたちの攻撃対象は斑鳩へと向いたらしい。
 ドン、と空気が大きく震え、斑鳩の身体が後ろへ飛んだ。
 骨の軋む感覚と、全身に走る激痛。
 手足の先から石へと変わる。
 咄嗟に仲間たちは散開し、各々の得物を構えた。その間にも、斑鳩と姿の見えないゴーストたちは銃弾と衝撃派を撃ち合っている。
 数体分の衝撃を受けた斑鳩が、とうとう口の端から血を零して膝を突く。
「斑鳩っ! 退れ、私が纏めて撃ち抜いてやる」
 ライフルを構え、ラダはその場に膝を突く。
 姿が見えないというのなら、辺り一面に弾丸の雨を降らせればいい。
 銃口を空へ。ラダの指が引き金にかかる。
「っ……いや、その必要は無さそうだ」
 ラダを制止し、斑鳩は肩を竦めて笑う。
 その視線の先には、たった今、積もった土砂へと辿り着き、大上段にメイスを構えたヴァレーリヤの姿があった。
「皆さんがこの場所を掘っているのは分かっていました。埋まっているのでしょう……何かが!」
 どっせーい! と怒号を放ち、ヴァレーリヤがメイスを振るう。
 衝撃。
 そして地面が揺れた。
 叩きつけられたメイスを中心に土砂が飛び散る。
 その中に、幾つかの骨……否、化石が混じっているのが見えた。
 それから、もう1つ。
 ドサリ、と鈍い音と共に乾いた誰かの遺体が1つ、落下した。

 飛び散った土砂から拾い集めた太く大きな骨を並べて、出来上がったのは全長3メートルに近い“翼の無い竜”の全体像であった。
 広げた布に置かれた竜骨と、その脇に安置された半ばほどが石化した遺体。乾いてこそいるが、そう古いものではないことがわかった。
 石化した方の脚にだけサンダルを履いているところを見るに、リコリスが掘り当てたのは彼の持ち物で間違いないか。
「死者は財を得られないが、せめてもの手向けだ」
 そう言ってラダは金貨とエールを化石の横に並べて置いた。姿の見えぬ採掘者の霊たちにとって、それは幾らかの慰めにはなるだろか。
 そんな中、ヴァレーリヤはと言えばリコリスへと何かを手渡している。
「よーしよしリコリス、良い子ですわね。骨をあげるからゆっくり食べるんですのよ」
 骨に齧りつくリコリスの頭を優しく撫でると、化石を纏めて広げた布で包んだ。
 巨大な竜の化石である。
 布包みの数は都合2つにもなった。そのうち片方をヴァレーリヤが、もう片方はレッドが担ぐ。
「……おい、何やってんだ2人とも」
「サンディさん。採掘は終わってないっす」
「あ? 何を」
「悪いけれど、化石は全部、私たちが頂戴致しますわー!」
 サンディの問いに答えを返し、強く地面を蹴飛ばした。
 まさに脱兎。
 或いは、砂漠を疾る赤い彗星の如く、2人の姿は遠ざかる。
 そんな2人を、ラダとチヨが追いかけた。

 濡れた髪もそのままに、エルスは急ぎ仲間たちの元へと駆けていく。
 入浴中であったことが災いしすっかり出遅れたのである。
 そんなエルスの前方から、布包みを担いだ赤い髪の女が2人。
「あら、その荷物……いい報告は出来そうかしら? ふふ、ラサの歴史に触れられて嬉しいわねっ。きっとディルク様もお喜びになるわ」
 なんて。
 微笑むエルスの両脇を、必死の形相を浮かべた2人が駆け抜けた。

成否

成功

MVP

ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
祈りの先

状態異常

東雲・リヒト・斑鳩(p3p001144)[重傷]
胡乱な渡り鳥

あとがき

ヴァレーリヤさんとレッドさんは、その後すぐに捕まりました。
拳骨を喰らった模様です。
無事……依頼は成功です。

この度はシナリオリクエストおよびご参加いただきありがとうございました。
縁があれば、また別の依頼でお会いしましょう。

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