シナリオ詳細
『モズの早贄』連続殺人事件
オープニング
●モズの早贄
モズ、という鳥がいる。
肉食系の鳥であり、虫やカエルなどを捕らえて食べる。
そしてその際、モズは木の枝などに獲物を突き刺すという。
これはモズの生態が原因とされているが……その中で、モズに食べられずに残される獲物が存在する。
ミイラになってもなお残り続ける、串刺しにされた獲物。それがモズの早贄だ。
贄、という言葉があるが……どういう経緯でそう名付けられたかはさておき、確かにそれは贄のようであるだろう。
いと高き場所の何かに捧げるように串刺しにされミイラとなっていくソレに、人は何かの意味を見出してしまうこともあるだろう。
しかし、しかしだ。
「あ、ああ……」
幻想のとある町の路地にて「ソレ」を見てしまった男は、まさに不憫であるとしか言いようがない。
普段あまり人通りのない路地。地面から生えた棘のようなものに貫かれ、天高くさらされる死骸。
だくだくと流れる血の湖は、殺されてすぐであることを、男に伝えてくる。
それも当然だ。
目の前にいる黒服に鳥の面をつけた男。
その男が何か呪文のようなものを唱えると、今さっきまで会話をしていた友人が死んだのだ。
何故、何故なのか。
ほろ酔い気分で良い具合だったところに、どうしてこんな目に合わなければいけないのか。
「……いと高きところにおわす方々よ、今宵の生贄をお受け取りください。ですが、ええ、ええ……」
一体何と会話しているのか。
鳥面の男はくるりと振り向くと、男へ問いかけてくる。
「コレとは……友だったのか? もしそうなら、私は謝罪しなければならない」
なんなのだ、この狂人は。
男は怒りと共に「そうだ」と叫ぶ。
「なんなんだ、お前は! 天義の連中なのか⁉ こんな無法、必ず裁」
「……【贄を捧ぐ】」
ぞむっと。
男の身体が貫かれ、不気味なオブジェが並ぶ。
「すまなかった。友の死を見るのは辛かっただろう。せめて同じところに送ろう」
そう呟き、本当にすまなさそうに嗚咽を漏らすと、鳥面の男は去っていく。
もし鳥に詳しい者がいれば、気付いただろう。
それはモズの面だ……と。
●連続殺人事件を終え
「怪人モズ、と名付けられたです」
チーサ・ナコックはそう言うと、小さく溜息をつく。
怪人モズ。
それはモズの早贄になんとなく着想を得た官憲による命名だ。
しかし、誰もそれに反対しなかったという。
それほどまでに何か儀式めいている、と。そう感じたからだ。
「この怪人モズは毎夜最低1人を殺害しているです」
選ばれる条件はほぼ不明。
しかし、ある一定以上の年齢は狙われていないことから、それなりに若い世代ではないのかと推測されている。
殺害方法は、なんらかの魔法的能力による串刺し。
恐らくはそれでトドメを刺す事により「串刺し」という結果が確定する系統の能力だ。
他に傷はなく、串刺しにして天高く晒すという「結果」に異常なこだわりがあることが伺える。
モズの早贄のごとく人を天高く晒し、何をしようというのか。
恐らくは、永遠に理解できない理由だろう。
だが……この事件は、早急に解決しなければならない。
この怪人モズの凶行を許す事など、できるはずもないのだから。
- 『モズの早贄』連続殺人事件完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年12月22日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●事件解決のために
「何が「贄をお受け取りください」だ。生命をなんだと思ってやがる、胸糞悪いクソ野郎がよ」
『ヒュギエイアの杯』松元 聖霊(p3p008208)は言いながら、自分で自分を落ち着かせていく。
「だが頭に血が上ったら負けだ、何時だって医者は冷静沈着でいないとならねぇ。その上でキッチリ此処で仕留めてやらねぇとな」
「ええ、そうね!」
聖霊にそう頷くのは『リチェと一緒』キルシェ=キルシュ(p3p009805)だ。
怪人モズ。そう呼ばれる男を止めなければならない。
そう考えるのはキルシェも一緒だ。
「モズおじさん、生贄求めるような神様に信仰捧げる前はどんな人だったのかしら……? 信仰はその人の自由だけど、他の人に被害や犠牲を強いるような信仰はダメなのよ。これ以上被害者出ないようにここで止めて見せるわ!」
「実際のモズの早贄みたく食料にするわけじゃなさそうだけど、儀式的な意味で生贄とかそういうつもりの可能性はあるのかな」
『malstrøm』リュビア・イネスペラ(p3p010143)もまた、怪人モズの行動を分析していく。
「ほぼ無差別殺人を毎日で、串刺しにこだわりがあるのって、猟奇的って感想しか出てこないよね」
「毎夜一人、いや最低一人ってことは‥‥被害者の数は考えたくねぇな。信者でも神でも、生贄強制するヤツは大抵ロクなもんじゃない。俺らは別に神様じゃないけど、報いってヤツは与えなきゃな」
「何が目的かは知らんが、イカレた猟奇殺人鬼には天誅あるのみだ」
『特異運命座標』囲 飛呂(p3p010030)と『紅い怨念』イルマ・クリムヒルト・リヒテンベルガー(p3p010125)もそう頷きあい、 飛呂は『呑まれない才能』ヘルミーネ・フォン・ニヴルヘイム(p3p010212)にファミリアーの蛇を手渡していた。
「確かに受け取ったのだ」
言いながら、ヘルミーネは蛇を服の袖へと入れる。
「信仰だか何だか知らねーけど、生贄求めてる時点で碌でもねーのは確かだし、やり方が胸糞悪すぎて反吐が出るのだ。これ以上の被害が出る前に見つけてぶっ飛ばしてやるのだ」
これからヘルミーネは『餓狼』シオン・シズリー(p3p010236)、そして『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)と共に三姉妹として囮になる予定だ。
「怪人モズね……ただの狂人か、それとも何か本当にいるのか……」
「それは分かりませんの。でも……」
シオンにノリアはそう答え、ぎゅっと拳を握る。
「だれかが、だれかを、殺すこと。それにとやかく言えるほど、わたしも、なにも食べてこなかったわけでは、ありませんけれど。生きるため……食べるでも、危険からのがれるためでもなく、殺しつづけるだなんて……おそろしい事件は、終わらせねばなりませんの」
そう、その為にも。
「そのためにも……わたしたちは、囮役に、なりますの」
本番は、怪人モズの儀式が始まる、夜。
それまでの間、少しでも情報を集めるべく全員が行動開始する。
「ねぇ、この辺りでお面被ったおじさん見た事ないかしら?」
キルシェは、自然会話を活用し植物から「怪人モズがよく現れる場所」を絞り込もうとする。
イルマも聞き込みを開始していた。
まずは不審な煙を手掛かりとし、それが線香の匂いかしないかも確かめていく。
もし夜にそういったモノがあれば、それは怪人モズに繋がる可能性が高い。
そこに鳥の仮面をかぶった人物の情報があれば、ほぼ確定と考えていい。
ヘルミーネたちも早速三姉妹として行動開始し、霊魂と疎通することによる情報の収集に挑戦していた。
具体的には犠牲者達にわかる範囲でいいので「怪人モズ」の情報提供を呼び掛けていたのだ。
報酬は制裁後にヘルミーネのギフト「死出の番人≪ニヴルヘイム≫」で成仏させる事。
「万が一霊達が見つからなかった場合は本当に生贄されてる線を疑うのだ……」
そして霊たちは存在していた。何人か足りないが、成仏したのか本当に生贄になったのか。
分からないが……ヘルミーネが会った霊は「怪人モズ」のことをしっかりと覚えていた。
どうやら裏路地に「出る」ようだが、同じ路地で犯行に及んだ例は、今のところないようだった。
「となると……あたしの出番か」
シオンは超嗅覚で「お香の匂い」を頼りに向かう先を決定する。
怪人モズはお香のような匂いがするという情報がある。
ならば……その匂いを辿れば、自然と怪人モズの視界に入る。
つまりは、そういうことだからだ。
●怪人モズ
三姉妹が、夜の路地裏を歩いている。
ヘルミーネ、シオン、ノリアの3人だ。
髪色が比較的似ている3人は、普通に姉妹に見えるかもしれない。
(海では、捕食者にねらわれるのは、得意でしたけれど。怪人も、わたしを、ねらってくれるでしょうか?)
そんなことをノリアは考える。
この3人は、怪人モズに狙われる範囲であるはずだ。
だからこそ、更に興味が深くなるように楽しげでおちゃらけた、しかし怪人モズであれば確実に興味を持つようなことを話し始める。
具体的には……そう、『最近巷を賑わす事件』についての噂話をくり広げていた。
「神様にささげているというのは、ほんとうでしょうか? きっと、おそろしい邪神に、ちがいありませんの」
些細な話題の間にそうした話を織り込み、ノリアたちは路地裏を歩く。
時おり何もない路地の先を、なにかが出てくるのではないかと、不安そうにじっと見つめたまま、2人に一瞬だけ置いてかれたりしてみる。
それで相手が出てくるようであれば儲けもの。
定期的に「隙だらけ」になるノリアが、文字通りの釣り餌。
そうして……何度目かの「置いて行かれる」演技の直後。
「【儀式を妨げること能わず】」
ノリアの背後に、黒服の男が現れる。
まるで闇の中から現れたそれは「神意、推し量ることならず」なる能力が解除された合図でもあるのだろう。
「あなたは……!」
「【贄を捧ぐ】」
ズン、と。地面から生えた棘がノリアを貫く。
「か、はっ……!」
恐ろしいまでの威力。だが、この程度でノリアは倒れはしない。
「大海の抱擁に身を委ねて……わたしからも、水の【棘】を、お返ししますの!」
「よう、あんたが噂の怪人か!」
「もう逃がさねえのだ」
シオンの金色夜叉(偽)とヘルミーネのフェンリスヴォルフが炸裂し、怪人モズは僅かに後退る。
人間の域を超えた、まさに怪人らしいタフさ。
だが、数の暴力とは常に偉大だ。
蛇のファミリアーを通して、近くで待機していた仲間たちが駆けつけてくる。
たとえ外部から認識し辛いことになっていても、正確な場所さえ分かっていれば辿り着くのも容易だ。
「手加減が上手くできなかったら、ごめんね?」
奇襲をかけたリュビアの黒顎魔王が炸裂し、イルマの精密射撃が怪人モズを貫く。
「……増援。罠、か」
「まるで人身御供を捧げているようなありさまだが何が目的だ? まさかただの愉快犯ではあるまい?」
対物ライフルDominatorを向けたまま、イルマはそう問いかける。
「貴様が信じる『神』とやらの啓示か? 信ずる神すらまともに選べぬとは、哀れな奴だ」
「さて。神意は人如きが推し量るものに非ず。それを知らぬとは言うまい」
言いながら、怪人モズは飛ぶ。いや、跳ぶ。
翼が生えたかのような不気味な跳び方と共に、壁と床に張り付きながら進む様は……なんだろう、そういうゴムか何かの玩具の動きに似ている。
「動きくっそ気持ち悪いな……」
飛呂のプラチナムインベルタが怪人モズに命中すると、やはり気持ちの悪い動きで吹っ飛ぶ。
身体能力は間違いなく高いのだが、それを使いきれていないような動きだ。
「なあ、あんた、何に贄を捧げてるんだ? 捧げてどうなるってんだ?」
「神意は人如きが推し量るものに非ず。どうなるかは、いずれ蒙昧なる身にも分かる形で示されるのだろう」
シオンは、やはりマトモな返答が返ってこないことに舌打ちする。
だが、それも織り込み済みだ。
「まあ、何を信仰しようが自由だがよ、どうやらその『いと高きところにおわす方々』とやらは、あんたのことなんざどうでも良さそうだな! あんたが窮地に陥っても、何もしねーんだからよ!」
「それもまた良し。それもまた信仰の道である」
中々冷静さを失わない。いや、そもそもデフォルトが「冷静」であるのかどうかも分からない。
「へぇ? じゃあなんでお前が贄にならねぇんだよ。そんなに大事な方々ならお前が身を捧げれば良いじゃねぇか!」
だからこそ、シオンに続くように聖霊はサンクチュアリを発動しながら叫ぶ。
「結局お前は自分じゃ贄になる勇気なんてないから他者を犠牲にしてんだろ。だいたい本当にその方々とやらは存在してるのか?
お前が人殺しがしたくて創り上げた妄想じゃねぇのか?」
信仰を謳うなら、その信仰を攻撃する。
実にエグい手法ではあるが、有効ではあるだろう。
(この手の『信者サマ』は自分の信仰心を疑われたら頭に血が登りやすいもんだ)
つまりは、そういうことだが……人間っぽくない動きをするモズの仮面がこちらをギロリと見てくる様は、なんとも不気味が過ぎる。
そしてノリアもたまに痛そうに蹲って、隙だらけになってもう少しで贄にできると勘違いさせて、撤退判断を誤らせようとする。
「それにしても、怪人の、あの動き……どちらかというと、贄にされる、ヤモリのほうでは、ありませんの……?」
そんなノリアの当然の呟きは、戦闘音にかき消されて。
「このまま圧し潰す……!」
「眩い。贄とすればさぞ喜ばれるだろう」
リュビアの攻撃に合わせヘルミーネが隠されし悪意の氷嵐を発動し、怪人モズの自己回復を阻害していく。
「てめぇが早贄にした人達の分の苦しみ、少しでもわかるのだ?」
殺すつもりはない。
捕らえるつもりで動いているが故に、無力化は必須だった。
そうして……リュビアのノーギルティが、ついに怪人モズを無力化する。
素早く拘束すると、リディアは怪人モズからリーディングで思考を読み取ろうとする。
「初めまして、ルシェはキルシェです! おじさんのお名前教えてください!」
「名前は捧げた。今の私はモズだ」
リーディングで返ってくる答えも同じ。
「おじさん、普段何してるのかしら? ルシェはお勉強したり遊んだりしてます!」
「この身はいと高きところにおわす方々の為に。それ以外のものは要らず」
これも、やはり同じ。
「あのね、なんでこんなことしたのか教えてくれるかしら? 神様に捧げてたの? じゃぁおじさんは神職なのかしら! ルシェも神職のおうちなのよ! ならお仲間ね!」
「……神職」
リーディングは違う、と告げてくる。
「私はそのようなものに非ず。ただ身命を捧げしものに過ぎない」
他に同じ神様を崇めている人がいないか、という問いには「知らぬ」という答えが返ってくる。
リーディングの結果も同じ。少なくとも……怪人モズは「いと高きところにおわす方々」とやらを心の底から信じていることは確かなようだった。
「こいつ単独ならいいが、そうじゃなかった全滅させねーと根本的な解決にならねえからな……」
まあ、コレが連携している類の何かが居ないことが分かったのは収穫だろうかとシオンは思う。
居るでも居ないでもなく「知らない」というのは、つまりはそういうことだ。
「いつからこんな事をしてるのか」、そして「何を崇めてるのか」。
これに返ってきた問いは「分からぬ」と「いと高きところにおわす方々」であった。
そうして、そこまで聞けば大体分かる。
この「怪人モズ」は、すでに壊れているのだ。
狂信者とは得てしてそういうものかもしれないが……これは「人」として壊れている。
誤魔化すことすらしないこの様子も……すでに怪人モズが人ではなくシステムじみた何かになっていることを、これ以上ないくらいに示している。
ならば、もうコレに聞くべきことは残ってはいない。
「おじさんの身柄は然るべき所に預けるわ! 二度と同じ事態を起こさせないためと、被害にあった人の家族や知り合いにたいしてちゃんと償ってほしいもの!」
怪人モズは答えない。何を言っているか分からないと、そういった様子だ。
「……死んで終わりなんて許さねーぞ」
だからこそ、飛呂はそう呟く。
官憲に引き渡した怪人モズがどうなるにせよ、二度と外に出てくることはないだろう。
「犠牲者の死出の旅路の先に安息と救いがあらん事を」
ヘルミーネは、これから成仏させるべき人たちのことを考え、そう黙とうする。
怪人モズの恐怖は去った。
犠牲者の魂も、これから行くべき場所へと行くだろう。
それが救いになるかは分からないが……これが、1つの夜明けになることを、誰もが祈っていた。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
コングラチュレーション!
怪人モズは官憲に引き渡されました!
GMコメント
怪人モズを見つけ倒しましょう。
死んでしまっても何の問題もありません。
●事件について分かっていること
・毎夜、路地に現れ被害者を「トドメ時串刺し」効果のある攻撃で殺す。
・被害者は毎日1人~複数人。ただし複数人の場合は同じ場所。友人関係など。
●聞き込みで得られる情報
・目撃情報は不自然なほどになし。何らかの「興味を失わせる」か「記憶に残らない」系統の能力持ち。
・なんか遠目に鳥の仮面をつけた真っ黒い人を見た気がする。気のせいかも。
・あえて言うなら、時折お墓のお香みたいな匂いをふと感じる事がある。
・アンパン安いよ。買わない?
●怪人モズ
モズの仮面をつけ、全身黒ずくめの怪人。
他者には理解できない「何か」に贄を捧げることを目的としています。
それが本当に存在するのか妄想なのかは、不明です。
凄まじい身体能力を持っていますが、振り回されているのか動きが気持ち悪いです。
(壁にビタンと両手両足で貼りついたりする)
■能力
・贄を捧ぐ
地面から太い円錐状のトゲを生やします。
これで殺害されなかった場合は一瞬でトゲは消えますが、これで殺害された場合「トゲに貫かれた」状態でその場に残されます。
・慈悲よあれ
傷を癒し、BSを回復します。使用時、キラキラとした光が対象を包みます。
・儀式を妨げること能わず
半径15Mほどの空間で発生する騒音、光などの「平穏を乱す事象」を周囲から認識し辛くなります。
この効果は夜にしか使用不可能であり、夜が明けるまで続きます。
ただし、平穏を乱さない弱い香り、煙などは漏れる場合があります。
・神意、推し量ることならず
存在感が限りなく薄くなります。常時発動しており、他者に危害を加えるなどの積極的な行動を行わない限りは、ほぼ認識されなくなります。
この効果は「儀式を妨げること能わず」の能力内では無効化されます。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
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