シナリオ詳細
人肉樹宴
オープニング
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「うわあああああああ――!! た、助けてく……ぎゃあ!!」
霧で包まれた深緑の森で悲鳴が響き渡る――
周囲は霧で包まれているが、どことなく薄明るい。
夜明けを迎えて暫くしたぐらいだろうか?
悲鳴は一瞬で途絶え、代わりに微かに……骨や肉が砕かれる音がし始める。
――『何か』がいる。
それは明らかだった。尤も、霧の所為か『何か』の姿は見えづらいが……
と、同時。その霧の中を駆け抜ける一人の男がいた。
「はぁ、はぁ冗談じゃねえ! 皆やられちまったのか!!?」
息は荒く、必死に走っている様子が見て取れる。
何度も後ろを振り返り、何度も転びそうになりながらも前へ前へ。
――男は商人であった。深緑と繋がりのある、ラサの商人。
今日もまた首都ファルカウまで積み荷があって運んでいた最中だったのだが……しかしそれは叶わなかった。霧の中を馬車で進んでいれば――『何か』が襲い掛かってきたのだ。
護衛も、馬車自体も瞬く間に壊滅した。
アレはなんだったのだろうか……ハッキリとは見えなかったが『狼』や『熊』の類ではなかった。もっと巨大な……そう、あれはまるで……
「くそ、は、はぁ……と、とりあえずここまで逃げてくれば大丈夫だろ……!」
瞬間。男は大きな樹の傍に転がり込む様に逃げれば――息を整える。
影から後ろをもう一度振り返る、が。今の所『何か』が接近してくる気配はなさそうだ。
どころか、人や動物といった生物が動く様な気配も全くしないが。
……耳を澄ます。それでもなんの音もしなければ、男は深い息を吐いて――
直後。
「……ぁ? ぁあああああ!! なんだコイツ!! や、やめろ、離せ――!!」
男が寄り添っていた『樹』が突如として――動いた。
その『樹』は男をまるで掴み上げるかのように枝を伸ばす。無数に伸びてきた枝は男に絡みついて、決してほどけない程の力があり……抵抗してもそれは人の手の中で暴れる無力な虫の如く。
――そう。商人を襲ったのは『樹』のフリをした魔物だったのだ。
名を、トレント・ディシミディアス。
『樹人』とも呼ばれる樹木の精霊、いや魔物が――人に牙を剥いた瞬間であった。
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「概ね『トレント』と呼ばれる、樹木の精霊は深緑の森にも、前から存在していました――しかしその一部がどうやら狂暴化……いわゆる魔物と化してしまった様なのです」
深緑の首都ファルカウへ向かったイレギュラーズは、依頼主から説明を受けていた。
トレント。一言で言うならば、木の姿をした精霊と言った所か。
深緑にはなじみ深い精霊らしく、友好的な存在も多い……との事だ、が。
「しかし魔物になる事もある、と」
「はい。こうなってしまっては退治するより他ありません……商人や旅人などが、ある地域で消息を絶つ事件が増えておりまして。こちらで調査した所トレントの仕業であることが分かったのです。彼らは普段は『普通の樹』そのものに偽装していまして……」
まずは上手い事発見する必要がある、という事か。
かなり偽装は上手いらしく、よーく見ても看破しうるには時間が掛かるかもしれない。というよりも、迂闊に近くで様子を窺ったりすれば奇襲される方が先だろうか……? 遠くから見据える事が出来たり、或いは幻影などの囮を使うのも手かもしれない。
――いやいっそのこと獣種などがいればわざと奇襲させるのも手、か?
機敏な感覚を持つものであれば奇襲にも十分対応できるだろうから。
「ああ、それと……トレント達は人を掴み、枝を突き刺したりなどしてその体力を吸い取ろうとする動きも見せる様です。要は――人を養分の代わりとしていると言いましょうか――」
「……なるほどな。そこまで行くと流石に精霊とは言えないな」
被害は人だけでなく、そこに住まう動物にも及んでいるのだとか。
やがては木々自体をも襲い、吸い潰していく怪物となり果てていくかもしれない……
その前に奴らを討伐してほしいとの事だ。
自然は深緑にとって親しき友ではあるが――
「多くに害を成すならばやむを得ない事もある、か」
木々を倒す事。深緑の民にとっては悲しい事ではあるが。
どうか頼むと――イレギュラーズ達に森の平和が託されるのであった。
- 人肉樹宴完了
- GM名茶零四
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年11月30日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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「……トレントが敵、か。今回はちょっと嫌な相手かもね。
僕も、気の良いトレントに世話になったこともあるしさ」
複雑だよ、と。迷宮森林に足を踏み入れた『澱の森の仔』錫蘭 ルフナ(p3p004350)は呟くものだ。迷宮森林は縁の深い者にとって――ゆりかごとも言える地だ。
その中で狂いし精霊……いや最早魔物が発生するなど残念でならない、が。
「普段は木々に擬態しているなんてな……放置していたらどこまで被害が広がるか分かったものでもないし、伐採しないとな」
「さてさて……もしかしたら悪意のある何かが入り込んでしまったりと、どうしようのない事情もあるかもしれんのう。じゃが、こうなってしまった以上切り倒すしかないんじゃなぁ……」
トレント。森の樹人――
その存在に対して『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)にしろ『揺蕩う老魚』海音寺 潮(p3p001498)にしろ、思う所はあるものだ。しかし止むを得まい。もしも仮にこれがなんらかの悪意によるものだとしても――最早倒す他ないのであれば。
進む。サイズは飛行し、空より異変がないかと捜索して。
ルフナは優れし感覚を周囲に張り巡らせて警戒を。さすれば潮はまずいつ奴らが奇襲してきても問題ないように『餓狼』シオン・シズリー(p3p010236)へと戦場の加護を齎すものだ。
「樹に擬態する魔物ね……確かに、森の中でそんなのに襲われたら厄介極まりねえな。
後は実際どこで出てくるか、って所だが……」
「――本来、生き物の多い森ならば色々な音がするはずだ。常に動物がどこかしらで動いているもの……だけど、彼らが本能的に危険を感じて離れていたりして不自然に『静か』であれば何かあるかもしれないね」
そのシオンは獣種としての勘と敵意を探知する術を張り巡らせ――更に足元に注意しながら歩を進める。
トレントは自ら動く事も出来るという……ならば、如何に動いていない間は擬態が上手かろうと、不自然な痕跡が残る事もある筈だ。
奴らが獲物を狩ろうとこの森で動いているのであれば――必ず。
更に他の仲間……『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)などとは少し距離も取っている。これもわざとトレントに発見されやすくし、なおかつ他の者への被害を減らす為、だ。しかし基本的には前面をシオンが歩いているとはいえ、当のイズマも警戒は怠っていない。
耳を澄ませて周囲を探る。トレント達が此方に気付く可能性もゼロでなければ……
「みんな、狂暴化したトレントさんたち止めたいの。どこにいるのか教えてくれない?
大丈夫。ルシェ達は味方よ。この辺りを荒らしに来たんじゃないの」
「さて。恐らく大丈夫ですが……私達以外の第三者がいないかも注意しておかないと、ですね」
更に『リチェと一緒』キルシェ=キルシュ(p3p009805)は周囲の自然に語り掛け情報を得んとし『勇往邁進』リディア・T・レオンハート(p3p008325)は万一を考え、助けを求める声が無いか――探知の術を走らせるものだ。
今の時刻は昼。もしかすれば事情知らぬ者が近くを通っているからもしれぬから。
「うんうん……なるほど……あっちの方で、そうなのね。ありがとう!」
で、あれば。断片的な情報とは言えキルシェは情報を入手すれば――キルシェは一つの幻影を生み出す。
それは彼女の傍にいるジャイアントモルモットのリチェ。
ぽてぽてと歩く可愛らしい姿をシオンと共に先行させる様な動きを再現するのだ――
「リチェが走る姿は毎日見てるから良く出来てるでしょう? リチェは可愛いんだから!」
わざと転ぶ様な動きも再現してトレントらの囮にせんと。
一分切れればもう一度。何度でも生じさせて――トレントを見つけんとするものだ。
「うむうむ……人間を襲っている樹が先に見つけることが出来たらよいのじゃが……」
「さてどこにいるだろうね――どことなく、気配はするのだけれども」
そしてキルシェと同様に木々や精霊と意志を疎通させんとするるのは潮とルフナもだ。人間か動物の悲鳴が聞こえた方の方角だけでも分かれば、おおよその位置は特定できそうなのだが……と潮は思考し。
ルフナは天地を統帥するが如き指令にて精霊に支援を求む。
通り過ぎた後の道で異変がないかと。
先行するシオンに掛かるなら作戦としてはそれでも良いが……油断は出来ない。不自然な揺らぎ、血の匂いを敏感に察知し、対応する筈の己らが奇襲されるなどという――お笑い種だけは避けたい所でもあるから。
慎重に進む。森の中を、ゆっくりと。
あえて隙を見せながら歩くシオン以外は足音も極力殺して……その時。
「――でやがったなこの野郎」
シオンが気付いた。己のすぐ近くに『奴ら』がいると。
直後。真上から降り注ぐのは――樹で出来た『拳』
トレントの一撃か――ッ! しかし警戒していたシオンは跳躍し、回避を成す。
態勢を立て直し視線をそちらへと向けてみれば――おお確かにいる。樹の化け物が。
「悪意に寄るものなのかそれとも別の何かか、真偽の程は確かではないけども
放置しておけない――せいぜい派手に暴れさせてもらおうか」
で、あればと。戦いの牙を研いでいた『ただの死神』クロバ・フユツキ(p3p000145)は往くものだ。
被害を齎すのならばやるしかない。元は善良であったかもしれないが……しかし。
最早こうする事でしか救えないのならば。
クロバの一閃がトレントに対して――紡がれた。
●
「静まり給え! 樹木の精霊よ、貴方達は何故そのように荒ぶるのですか!?
最早言の葉も通じないというのなら……
残念ですが、降りかかる火の粉は払わせて頂きます!」
トレントは――はたして一体どこから声を出しているのか分からないが、雄叫びを挙げている。その声色は周囲を恐怖させる攻撃的な意思を秘めている事を、リディアは肌で感じていた……
――止められぬか。分かってはいた事だが、ならば容赦はすまいと踏み込むもの。
放つ斬撃は数多を破砕するかの如き――武技の一端。
トレントが巨大であり元々が樹木であるからだろうか、対物破壊に特化しているその一撃は、トレントに対しても非常に有効な様で……奴の身体が揺らげば。
「現れたトレントは――二体かの。情報通りならまだいる筈じゃ、油断は出来んな」
「戦いが長引けば森自体にも被害が出そうだしね……一刻も早く討伐しようか」
そのままの勢いで攻め立てる為に潮が、戦いに駆り立てる加護をシオン以外にも。
さすればイズマは周囲の破壊を少しでも抑制する為に保護の結界を張る――
森を破壊しに来たわけではない、むしろ護る気持ちで来ているのだから。
同時。トレントの身を貫かんとする一撃が放たれる。
深く、抉りこませるように。
治癒させぬ為のソレがトレントの身を削る――
「ごめんねトレントさんたち。でも……これ以上トレントさんたち放っておけないの」
だから、戦うとキルシェの意志は固い。
まずは彼らが木々に紛れたり出来ないようにカラーボールを投げつけるものだ。万が一逃げたとしてもこれで即座にまた敵だと判別できると……さすれば、直後に展開するのは数多の負を内包する漆黒のキューブ。
それがトレントを包むのだ――苦しめるつもりはないが、一刻も早く打ち倒す為に。
『――――!!』
「さぁ躍れ木々たちよ、ここからは死神の収穫祭だぜ!!
一度魅入られれば二度と逃れられないと知れッ――!」
同時。多くの攻撃がトレントに振るわれれば――奴の感情に憤怒が生まれるものだ。
巨大な質量をそのまま武器としイレギュラーズ達に振るってくる……しかしそれこそクロバにとっては望むところ。奴の拳を受け止め、しかし代わりに斬撃二つ。
虚を突く様に放つ一太刀目を始まりとして、直後には剛撃、更に重ね合わせる様な剣閃が――正に瞬きの刹那の間に放たれるものだ。
無論、トレントと近場でやり合えば彼とて無傷とはいかぬ。
――だが痛みこそが彼を強くする。痛みこそが彼を彼たらしめるのだ。
「まぁ別に殴られるのが好きって訳じゃねえからそこんとこは誤解するなよッ――!
ってぇッ! こんにゃろうやりやがったな許さねぇ!! 切り刻んで薪にしてやらぁ――!」
深手を負えば追う程に彼は強靭なる一撃を紡げる。
足を狙って奴らの動きを縛り、逃げられないように重点的に攻撃を重ねて――
「他のがまだ気になる所だな。警戒はしておこう……いざ後ろから来られても溜まったものじゃない」
「離れた所にいるのかな。いずれにせよ肉を切らせてでも迅速に骨を断つ方針で行こうか」
であれば空中より飛来するサイズの一撃もまたトレントへと放たれるものだ。
サイズの自然に対する知識で近くに、何か存在が『妙』だと感じる……普通以外の樹がないかと警戒しながら。氷の加護を自らに纏わせ――穿ち貫くは直死の一撃。
更にルフナはそれらの動きをサポートするように場を見据えながら動くものだ。
今回は治癒に回れる者も多い。勿論、一気に敵が攻めたててくる可能性もあるが故に油断は禁物だが――攻撃にしろ支援にしろいつでも行えるようにと。そう深く傷ついた者がいないのであれば、周囲の者らの活力を満たすマナを解放せん。
それはルフナの故郷たる『澱の森』の再現だ――
肉体を精神を常住の状態に戻さんとする秘儀。さすればイレギュラーズは万全の状態でトレントへと向かう事が出来。
「――まだだ、来るぞ! 潜んでたトレントだ!!」
瞬間。シオンが気付く――横よりまた別の敵意が迫ってきている事を。
それは残りのトレント。戦闘の気配を感じて出てきたのか――これで四体全てだ!
一体は積極的に前に出ていたシオンを狙い、そしてもう一つは。
「ふふーん。それはリチェの幻影よ! かかったわね!」
キルシェが放っていたジャイアントモルモットの幻影を殴りつける。
――無論それは幻影であれば何の影響もない。ふぅ、可愛いモルモットが潰されたかと思ったぜ……! 一瞬の困惑をトレントが見せるが、瞬時には偽物だと気づいてイレギュラーズの方に向き直し。
『――!!』
そして放つものだ。彼らが、獲物を捕食する為の――枝を。
それは先端が鋭く尖った代物。これを用いて彼らは人を、動物を狩り続けてきたのだ。
養分を。命を。
全てを吸い尽くす、恐ろしき魔の鎖が如きソレで……
しかし。
「しゃらくせぇ。養分になってやるつもりなんてサラサラねえぞ!」
シオンは恐れぬ。構えし刃で枝を両断し、むしろ更に踏み込むものだ。
近付く悪意などに屈してたまるか。
止まらぬ前進。止める為に複数の枝場がシオンの足に突き刺さるが――それでも。
「むしろ、テメエらがあたしの糧になりな!
生き残ってやるぞ――あたしは、どこまでもな!」
進む。枝に貫かれようが、叩かれようが。
この程度。彼女がここまで至る数多の辛苦に比べれば何ほどのものがあろうか――!
踏み込み、叩き斬り。
流血の果てにすら彼女の牙は樹人の喉笛を捉えた。
●
「自分たちだけが捕食者、とでも思ってたのか?
――もう遅い。今日というこの日、狩られるのは自分達だと悟ってもな」
イレギュラーズとトレントの激突は激化の一途を辿っていた。
トレント達は奇襲こそ失敗したものの、巨大な手や持ち前の『枝』にてイレギュラーズを絡め捕らんと攻勢を強める――が。『狩っている』のはこちらなのだと往くのはクロバである。
味方の位置を確認。誰も巻き込まぬと確信すれば、彼の左腕が変質。
――それは空間ごと引き裂く魔性の一撃。死神たる所以の一つ。
「逃すほどお人よしでもないんでね――! 消えてもらおうかッ!」
全てを抉り取る。トレントがどれほど大きかろうが、無意味だとばかりに。
「じゃがまだまだ敵もおる――決して無理はせんようにな」
「ああ。だが一体は倒した……あとの三体が立て直す前にケリを付けたい所だッ!」
そして前線にてトレントを押さえる者達を支援するのが潮だ。
クロバやイズマは体力が低い程火力が上がる故に優先度は低めだが――潮は周囲の状況を的確に把握しながら、活力を満たす号令を放っていた。余力があらば敵のみを穿つ閃光を放つものだが、基本としては支援を主に。
そして潮からの支援を受け取ればシオンが再び往く。
先程のシオンの攻勢で一体は倒せた――残りは三体。
しかしいずれもがやはり巨大かつ大きな腕力を持っており、長引かせるのは危険だと感じていた。奴らが此方の体力を吸い取れないように致命たる一撃を幾度も放ってはいるが……しかしそれでなくとも、枝でこちらの動きを絡みとってくる撃は厄介。
故に攻め立てる。切れ目の無い刺突と斬撃の繰り返しでトレントを切り裂け、ば。
「シオンさん! ご無理なさらず――後は私にもお任せを!」
直後。横から放たれたトレントの剛腕――を受け止めたのがリディアだ。
「大丈夫です! 私、割と体力ある方なので! せぇ、のぉッ――!!」
地を踏みしめしかと防御――そのままに押し返してやる。
勢いをつけ、鍔迫り合いから敵を弾く様に。
されば蒼炎に似た闘気を瞬時に武器へと宿す。それは力となりて――敵を一閃し。
そしてイズマもまた、引き続き奴らの身へと斬撃を轟かせる。
「全て討伐するまでは気を抜けないな。奴らの枝も中々に鋭い事だし……!」
「でも、トレントさん達も大分傷がついてると思うわ……もう少しかも!」
トレントの拘束技。魔術と格闘の混合で弾き、なんとか絡め捕られぬ様にイズマは立ち回る。
同時。そんなイズマが傷つけた個体へとキルシェは呪いの唄を紡ぐものである――
それは敵の身を穿つ魔性の呼び声。悲しき亡霊の慟哭が敵の全身を揺らして。
――押し込む。
やはりシオンが矢面に立ってトレントの奇襲を潰したのは大きかったか。もしも奇襲をマトモに受けていたのであれば、イレギュラーズ側の疲弊はもっと大きかった筈だ――しかし、奴らの一撃を回避でき。
そしてあの枝による養分吸収も、徹底的に致命による阻害を行っていればトレント達の回復効率は劇的に下がっている。数多の戦略がやがて、トレント達の体力限界を先に近づけており……
「悪いけど……自然を大切にするってのはただ放置することじゃない。必要があれば間伐などの手入れはするんだよ。特に――君たちみたいな性根の曲がった奴をね!」
故に。駄目押しとばかりにルフナが治癒の力を放つものだ。
それは『澱の森』との魔力的な繋がり。対象の傷痍をも拒み癒す一手が――トレント達との差を広げるものである。如何にかつてからこの森にいたであろうトレントと言えど……迷宮森林に害を成すならばこのまま倒させてもらおう、と。
「親しい妖精達にも、いつか害が及ぶかもしれないからな――伐採させてもらう!」
『――!!』
で、あればと。
倒れ伏すトレント達の中で、辛うじてまだ立ち塞がらんとするトレントへ――サイズが往く。
これで終わりだとばかりに。苦難を破り、栄光を掴み取るはその一手がトレントを抉りて。
直後にトレントの全身を両断するが如き一撃を――天上より解き放つ。
咆哮、一閃。
狂いし樹人の終焉の断末魔が――響き渡るのであった。
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トレントは全て撃退できた……これでこの辺りもまた平穏になるだろう、が。
「さて。欠片でもなんでも持って帰って調査してみたい所だな……
痕跡を調べれば何故こんな存在が出てきたのか分かるかもしれない」
「ああ。元は精霊だったんだろ? 人の味を覚えたクマでもあるまいし……魔物になったのは何か原因でもあるのかもしれないな。森に擬態する魔物なんて増えたら厄介極まりねぇ」
そもそもなぜトレント達が狂ってしまったのか――気になるクロバとシオンは残骸を手に持つものだ。もしかしたら何か陰謀でもあったのではないかと訝しんで。
「倒したトレントの……枝? はどうする?
深緑の人々は樹を切ったらどうするんだろう。成り行きのままに任せるのかな」
「確かにそんな感じもしますね。枯れた木々も、やがては大地の肥料になるでしょうし」
同時。イズマはトレントの残骸をどうすべきかと悩んでいた、が。
リディアは推察する。深緑ならば――あえて自然のままにしておくかもしれないと。
彼らは巡る。例え枯れても。やがて次なる命の為に……
「後は――失踪した人たちもいるんだよな。遺品があれば回収してもいいかもしれない。
遺族に届けられるだろうし……後はどうするか。墓でも作ろうか……」
そしてサイズはトレントに犠牲になった者達の遺品が無いか探すものだ。仇は取った的な意味でトレントの死骸で墓を作っても問題ないか――いやでも魔物で墓を作るのもどうかと――悩みながら。
「おお、そうじゃそうじゃ……協力してくれてありがとの。うむ、これでもう大丈夫じゃ」
「ええ――もう大丈夫」
そして最後に。潮とキルシェは近くの草木に語るものだ。
――怖がらせてごめんね。
お詫びとばかりにキルシェは聖なる水を周囲へと。お水を欲しい子にあげていこう。
「ふふ。ルシェの聖水は、元気になるのよ!」
トレント達が倒されれば警戒していた動物達もきっと戻ってくるだろう。
その未来に想い馳せながら――イレギュラーズは帰路に就くのであった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ。
迷宮森林は深い、深い森の中……何が起こっても不思議ではないのかもしれませんね。
ありがとうございました!
GMコメント
●依頼達成条件
トレント・ディシミディアスの全撃破
●フィールド
深緑の森の一角です。時刻は「朝」でも「昼」でも「夜」でも選べます。
指定が無ければ昼でシナリオは始まります。
森の中なので、周囲は当然として木々に満ちています。雑草などに満ちていたり、木々が密集などしている場所が多々ありますが、動きづらいという程ではないでしょう。
この中に後述するトレントが潜んでいますのでご注意ください。
●トレント・ディシミディアス×4
樹木の精霊とも呼ばれる『トレント』という精霊……もとい魔物です。
その外見は普通の木々と変わりないように見えますが――実際は動く事が可能であり、動く際はまるで『樹人』とも言うべき人型であり、足の様なモノもあります。滅びのアークが影響しているのか不明ですが、狂暴化してしまっている様です。
『動かない限りは』かなり高い偽装能力を持っている様です。
傍目には普通の木々にしか見えません。そうして油断させておいて奇襲してくるようです。なんらかの工夫によって看破する事が出来るかもしれませんが、いっそのことわざと奇襲させるというのも手かもしれません。
奇襲後の攻撃方法としては、巨大な手で殴りつけようとしてきたり、枝を伸ばして絡め捕ろうとする手段も持つようです。最大の特徴としては枝を突き刺して体力と気力を吸収してくる攻撃でしょう。
それはまるで人を養分としているかのようです。この攻撃は『HP吸収』と『AP吸収』の効果があります。(効果量としてはAP吸収よりもHP吸収の数値の方が大きいようです)
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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