シナリオ詳細
喚び声、低く誘う
オープニング
●喚び声、低く誘う
冠位魔種と滅海龍リヴァイアサンが姿を消した、ここ、フェデリア海域。
過去の戦は既に今は昔となり、海の上で繋がりし種々の島々は交易船により結ばれている。
……しかし、そんな交易船が巻き込まれる一幕。
『ふぅ……今日も海の上は暗いものだなぁ……』
ぼんやりとぼやくのは、ある交易船において深夜の刻の操舵を任された若者。
彼にとっては、この海域は馴染みのある海域であり、いつも通っている、そんな海路。
……だが、そんな海路をいつものように航海していた彼の耳に。
『……♪ ……~~♪』
遠くの方から聞こえてきたのは、悲しげな歌声。
その歌声は、誰かへ呼びかけるかの様で……そして、誘うかの如く奏でられる。
……その歌声に、彼は。
『ん……何だ……? この歌声……』
いつもならば、気にも留めないであろう筈の、ささいなる歌声。
でも、今日は何故かその歌声に、自然と引っ張られるような……そんな感触を覚える。
『……』
その歌声を聴いた彼は……自然と操舵輪を、その歌声の聞こえた元へと回す。
勿論、それは交易路のルートから外れてしまうから、本来行くべきではない。
だが、その歌声に完全に魅入られた彼はその針路を取ってしまう。
そして……その交易船は、忽然と姿を消してしまうのであった。
●
「……あー、どうやらもう皆集まってくれた様だな。それじゃ、早速だが説明を始めるぜ?」
と、『黒猫の』ショウ(p3n000005)は呼びかけに応じ、集まってくれた皆に軽く労いの言葉を掛けつつ、早速。
「皆もこの海洋王国にいるからには、こんな噂話は聞いたことあるだろう? ……セイレーンの歌声、ってな」
セイレーンと歌声は、良く聞く話の一つ。
その歌声に誘われるがまま進んで行くと、その船は遭難やら難破の憂き目に遭うというもの。
でも、そんな事を突然言われるという事に、ちょっと眉を顰める者多数。
「まぁ……そうだよな。そういう反応をするのが普通ってもんだ。だが、その噂話と同じ現実が、どうやら最近このフェデリアの海域で起きちまっているみたいなんだ」
「つい先日、島を結ぶ交易船が突如消息を断っちまった。依然としてその船の残骸やら、痕跡とやらは見つかってねえ。で、そんな船の目撃情報を辿ってみたところ、ある海域で、航路外の霧の深い方に向かって行くのを見たって言うのが居るんだわ」
「普通なら、航路外のあえて霧の深いところに向かうなんて事はありえねえ。航路外のルートを進むって事は、座礁やら何やらの危険性があるんでな。だが、その船はその方向へと進んじまった」
「見かけた船は、灯りで合図をした様なんだが、止まる気配も無かったって話で、そいつらが言うには、その船を見かけた辺りで、ほんの僅かだが歌声が聞こえたって言ってたんだ」
「恐らく、この船を操舵していた奴は、セイレーンの歌声に魅了され、誘われるがままに進んで行った……ってな感じだろう」
そこまで言うと、ショウは皆に軽く笑い掛けながら。
「ま……セイレーンってのは、この海で死んでいった者の忘れ形見だって言う話もある。皆も知っての通り、この海域は過去の対戦で志半ばで沈んでいった船が多数沈んでいるからな……そいつらが、仲間を増やそうとしているのかもしれん。そうさせないためにも、今の内にしっかりと対策しとけ、ってな訳さ……という訳で、皆、宜しく頼むぜ?」
と、その肩をぽん、と叩くのであった。
- 喚び声、低く誘う完了
- GM名緋月燕
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年12月09日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●悲しき歌声を聴いて
広大な海の広がりしここ、フェデリア島近海海域。
過去、かなり大きな戦が繰り広げられて血潮が海に流れたであろうこの地。
その大戦はもはや、大多数のこの海域の住人については既に過去から騙られ続ける物語ぐらいの話であり、実感は殆ど無いという具合になりつつある。
……だが、そんな海域であるからこそ、今回の様な幽霊騒ぎが良く良く起きていた。
今回イレギュラーズ達がショウから聞いたのは、歌声を奏でる『セイレーン』と呼ばれている狂王種が現れるので、それを退治してきて欲しいと言われたのだ。
「……セイレーンの歌声、か……」
と、そんな話を聞いた『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)は、広大に広がる海原を眺めながらぽつり、と零す。
それに、彼と良く依頼を共にする『若木』秋宮・史之(p3p002233)も頷きながら。
「そうだね。セイレーンの歌声だね。古くから船乗りを魅了してきたという……死へと誘う歌声だ。俺の世界には、マストへ縄でくくりつけてもらって、自分だけ歌声を聴いた音楽家がいたっけな……」
「そうかい。ま……確かに海洋じゃ、そう珍しくもねぇ話だ。かと言って、そう気軽にコンサートを開かれちゃぁたまったモンじゃねぇワケでな」
肩を竦める縁。
そんな仲間達の言葉にははっ、と軽い口調で笑うのは『死と戦うもの』松元 聖霊(p3p008208)。
「セイレーンね。ま、俺と名前が似てるし、歌うところもそっくりで笑えるぜ……?「
綺麗な顔立ちながら、荒めの口調の聖霊。
一方で、そんなセイレーンの歌声……というのに、色々と思う所がありそうな縁。
……そんな二人に対し、船縁から静かに海を眺めてていたのは、『海淵の祭司』クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)。
彼女は目を閉じながら、暫し波の音に耳を傾ける。
そんな彼女に、『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)が。
「ん……どうした? セイレーンの歌声でも聞こえたのか?」
と問い掛けると、クレマァダは。
「……似ても似つかぬ、あの歌は、もっと美しかった。だと言うのに、どうしても気になってしまうのじゃ」
そう呟くと共に、空を見上げて。
「……うみのつき、ゆらゆら さそわれて、ふらふら。ただよい、さまよい、しずんでく……♪」
一際澄んだ歌声で、彼女も歌う。
そんな歌声を聴きながら、船の舵を取るのは『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)。
イレギュラーズ達は彼の船に乗り、その海域へと向かっていたのである。
そんな船に乗った『春を取り戻し者』プラハ・ユズハ・ハッセルバッハ(p3p010206)は、目新しい大きな船の装備などに眼を奪われながら。
「船……実は、わたし大きな船に乗るのは初めてだったりします。楽しい航海……になりそうもないけれど。無念を残した魂が彷徨っているなんて、悲しいですね」
とプラハの言葉に、イズマも。
「そうだな。今回のセイレーンは、かなりの無念を内に秘めたままに死に絶え、この海底に沈んでしまった様だしな……だからこそ、その恨み辛みを歌声に込めたのかもしれない。でも……歌を聴かせて欲しい、と思う所もあるんだよな。魔性の歌声なんだろう。正気を蝕まれると判ってても、聴いてみたいと思ってしまう性なんだ。歌を含めて、俺は音楽が好きで好きでたまらないものでな」
音楽一家に生まれたからこそ、他の仲間達に比べて強い想いをもつ彼。
勿論、その歌声に傾聴してしまえば、己が身が破滅しかねないだろうし……その歌声は人型の者ではなく、半人半妖の姿から繰り出される事になる訳で。
「なるほど……この世界でのセイレーンはハーピーの類いなのか……たまにセイレーンが人魚の時はあるが、この手の依頼はまさに俺向きだな?」
僅かに笑みを浮かべるエーレン。
……魔物が美少女化し、男と添い遂げようと狙ってくる世界の出身故、彼にとってはそれが日常茶飯事の事。
イレギュラーズだからこそ、様々な世界、様々な舞台からこの混沌に呼び寄せられてきている訳で、そのバックグランドも様々。
ともかく、今回の依頼はセイレーンの歌声が元凶であり、それを退治しない事には解決しないだろう。
「ま、今回の敵はかなり魅了に長けている様だからね、その対策で人格演算をオフらせてもらうから、ちょっと固いなー、って思うかもしれないけどよろしく!」
と『機械仕掛の畜生神』來・凰(p3p010043)が、そう仲間達に告げる。
それに聖霊、プラハ、縁が。
「ああ、判った。俺の冗談はさておいてよ、数多の船を沈め、多くの死者を出し、あまつさえ亡霊として侍らすなんざ気に入らねぇ。それは生命への冒涜以外の何ものでもねぇ。此処で奴はきっちりと殺菌してやる」
「そうだね。あいにく暇はなさそうだし、俺には護るべき人がいる。そのためにも無事に帰らなくちゃならないんだから」
「……わたしでも、彼らを救えるのでしょうか……? 不安は多いですが、今やるべき事をやるしかありませんね……」
「ああ。これ以上交易船に被害が出れば、噂がさらに広まって、海洋に出回るいい酒が減っちまう。そうなる前にさくっと片付けるとしようかね? というわけでイズマ……よろしく頼むぜ?」
そんな仲間達の言葉にイズマは頷き、そしてイレギュラーズ達は歌声がきこえたという、その海域に向けて梶を取るのであった。
●悲哀の声
そしてイレギュラーズ達は、セイレーンが出没した、と言われる海域へと到着する。
……とは言えども、この海域は他の海域と何か違う……という事も無く、今迄の海域とさほど変わった事は無い。
「さて、と……この辺りの筈、なんですけど……」
周域の海域図を見比べながら、プラハが小首をかしげる。
だが、今の所歌声は聞こえないし、事件が起きている様にも見えない。
「ふむ……まだ尻尾を出していない様であるな。となれば、この海域で暫し漂う事とするかの?」
「ああ、そうだな。それじゃ波に任せて、暫し漂うとしよう」
あえて無防備を装い、波に船を任せる。
寄せては返す波に薙がされるまま、左へ、右へ……波の流れに任せる。
……そうして波間を漂う事、1、2日。
周囲に他の船はおらず、おおうなばらにぽつんと一隻のみの状況になってから暫しの頃合いに。
『……♪』
注意して聞いていないと聞き逃しそうな位、微かな歌声が遠くの方から響いてくる。
その歌声にするどく気付いたのはクレマァダ。
仲間達にそっと、有る方角を指さして。
「そう……あっちの様じゃ」
歌声が聞こえた方角には、うっすらとモヤがかかってるほかは、舟影も見受けられない。
「判った。取りあえずちょっと近づいてみよう」
とイズマが舵を取り、その方角に船を進めると……最初は微かな歌声が、段々と聞こえ始める。
……その歌声は、どこか寂しげであり、悲哀を誘う悲しげな歌声。
次いで歌声が聞こえたのは、縁と史之。
「……聞こえたな。どうだい?」
「うん、、聞こえたよ。皆、戦闘準備はいいかい? 恐らく、もうすぐ襲い掛かってくると思うからね」
クレマァダ、史之、縁には、その歌声ははっきりと聞こえているものの、他の仲間達には聞こえない、そんな不思議な歌声。
ともあれ、そんな歌声に誘われるがまま、船はさらに波に揉まれていく……すると、周囲には急速に立ちこめ始める、靄。
視界が一気に悪化すると、突如として他の仲間達にも、その歌声が聞こえ始める。
悲しげなその歌声を目の当たりにしたエーレンは、眉を僅かに動かすと共に。
「……なるほど。当地の魅了の歌とはこういうものか……」
それにプラハも。
「歌に呼ばれる……わたしにもきこえましたが……うーん、わからない……」
と複雑な表情を浮かべる。
だが、そう言っている間にも、さらに靄は強く立ちこめ、完全にイレギュラーズの皆の視界を奪い、さらに歌声は悲哀を強める。
さらには、ぼんやりとイレギュラーズ達の船の前に、影が出現。
「出て来たさまだな。ならば」
と凰は船の領域に結界を張って、最低限沈没しない様に策を取る。
そして……靄の仲から響きわたる、それぞれの心を揺さぶる歌声に加え、幽霊船員達が、次々と姿を表し、イレギュラーズ達の船へと乗り込んでくる。
咄嗟に聖霊が幽霊船員の攻撃を受け止め、その太刀筋を弾く。
一旦間合いを取りつつ聖霊は。
「はーん……成る程。お前達は心の弱さにつけいり、戦況を優位にすすめながら仕掛けようという魂胆の様だな? だが……そう易々と俺が負けるとでも思ったか? 俺はよ、俺の弱さも受け入れて、後悔も挫折も全部抱えて前に進んでいるんだ。あの非、救えなかった父親の分まで多くの患者を救うって、俺は決めてんだよ。おきれいな歌声ごときで俺につけいろうなんざ、百万年はえーんだよ!!」
ぐぐっと拳を握りしめた聖霊の言葉は、迷いを振り払うが如く。
その言葉に史之とクレマァダ、イズマも。
「そうだね。今回の戦いは心と心の戦いになりそう。皆、その腹はくくってきたんだ。この戦場は俺たちのものだ。敵に先手は取らせない!」
「うむ。自分が襲われている事を自覚しておけば、心までは折られまい」
「そうだな。これ以上の被害が出ないように、狂王種類を討伐するぞ!」
と声高らかに宣言すると共に錨を降ろし、船をその場に固定。
乗り込んでくる幽霊船員達を、それ以上先へ行かせない様にしっかりと足止めをしつつ、後方の靄の仲に居るセイレーンの狂王種『シリア』の場所をしっかりと視認する。
しかしシリアは決して前に出てくることは無い……後ろに立ち、周りの幽霊船員達を、まるでチェスの駒の如く前へ、前へと進めてくるのみ。
そして進み出てきた幽霊船員達は、ウウウウ、と呻き声を上げながら立ち塞がるイレギュラーズ達に命なく、襲い掛かってくる。
そんな幽霊船員達に先んじて対応するのはエーレン。
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。……お前たちに恨みはないが、押し通らせてもらうぞ」
と冷静なる言葉を投げかけると共に、手当たり次第斬り祓う。
ただ、一人の攻撃位では、大ダメージは負うもののしぶとい幽霊船員達は倒れはしない。
「ふぅん……確かに中々しぶといみたいだね。でも……愉しいお遊戯はおしまいだよ。おまえなんかにやられてあげないんだからさ!」
と、史之が声高らかに宣言し、幽霊船員達の怒りを買う事でターゲットを自分へと集中させる。
わらわらと集まってきた敵……ひとまとめに乱撃を放ち、纏めて攻撃。
さらにクレマァダは。
「ふんぐるい むぐるうなふ くつるぅ るる=りぇ うがふなぐる ふたぐん♪」
と夢見の歌声を奏でる事で、敵同士の同士討ちを誘発する様にし、さらに裏はからも神の光を放ち、纏めて集中砲火を行う。
……そんなイレギュラーズ達四人の総攻撃のお陰で、立ち塞がる幽霊船員達数隊が倒れ、シリアへと攻め入る道筋が僅かに生まれる。
「良し……ここは任せておけ」
と凰が背中を押す様にし、仲間達を前に進める。
勿論、それを妨害するべく、攻撃を受けていた幽霊船員達は身を持って阻もうとする。
「すまないが、余りお前達を構って居る暇は無いんでな……」
縁は躱せる時は躱し、躱せなければダメージを受けようとも特攻を行う。
そして、そのダメージを凰と聖霊がバックアップする様に回復を飛ばして、倒れないようにサポート。
その結果、縁とイズマの二人は先行してシリアの下まで到達することが出来る。
『……うぅ……』
二人の姿に、シリアは悲しげに呟くが、続くメロディは……悲哀の歌声。
その歌声は当然、、イレギュラーズの心に罪悪感を刻み込み、揺さぶる魔性の歌声。
それに誘われ、魅了……されそうになるが、縁は。
「ま、ご自慢の歌声を披露してぇって気持ちはわかるがね。誰彼構わず呼び寄せると、俺らのようなおっかねぇのも引き寄せちまうことになるぜ?」
とおどけた口調ながらも、血の乱撃を振りかざす。
その一閃に、歌声とは違う悲鳴を上げるシリア……そして、その悲鳴に回りの幽霊船員達は、彼女を護ろうと、怒りよりも縁の攻撃を優先。
しかしそれを妨げるはイズマ。
「確かに彼女はいい歌声かもしれない。だが、そろそろそれも終わりにしようか!」
踵を返して襲い掛かってくる幽霊船員達を纏めて閃撃で討ち倒す。
次の刻、シリアは再度悲しげな歌声と共に更なる幽霊船員を己と縁の間に呼び出す事で、盾と化す。
しかしその数は2体。
イズマと縁、さらに後方からのプラハが飛ばす神の光により、一刻の内に幽霊船員の数はさらに減少。
最初に取り巻いていた幽霊船員達は続々と倒れて行き、相対的な数が減少。
さすれば手隙となる者はシリアに向けて進み、彼女への攻撃手になる。
……取り囲まれるが、悲しげな鳴き声は変わらない。そんな彼女へ史之は。
「帰りを待ってくれる子がいるんだよ。おまえごときが触れて良い部分じゃないんだ……」
柔和な表情と声ながら、その瞳に含まれるのは……憤り。
そして竜の一撃を確実に放ち、彼女に深い傷を負わせると共に、エーレンも。
「いいか、人には誰もが弱さってものがある。抗えない時もある。それらを利用し、生命を弄んだことを後悔しやがれ、この鳥野郎!!」
と、辛辣な言葉を投げかけながら、仲間達を治療し、背中を後押し。
そして、更なる数撃を喰らわせ、全ての幽霊船員を倒し、残るはあと一人。
『……♪』
命を乞うが如く、歌を奏でる彼女。
だが……。
「ふ……我の歌と貴様の歌、果たしてどちらがより強いかな?」
とクレマァダは彼女よりも力強く奏で、彼女を魅了。
魅了下の中に縁、史之、イズマ、エーレンの熾烈な一撃が立て続けに決まり……彼女は抵抗する事も出来ずに、崩れ去る他になかった。
●息巻く海底
そして……セイレーン亡き痕。
イレギュラーズ達の周囲に立ちこめていた視界不良の靄はいつの間にやら晴れ渡り、視界は良好と化す。
ただ、イレギュラーズ達の心に残るは、すっきりしない気持ちが依然として渦巻いていた。
そんな気持ちを吐き出すが如く、聖霊は立ち上がり、船縁にて静かに跪いて。
「……全ての生命の光あれかし。迷える魂よ、どうか天の国にて安らかであれ……」
亡くなりし船乗り達の魂が少しでも安らぐよう、祈りと共に天使の歌を奏でる。
……その歌声が響きわたり、この場に漂いし悪霊達に一時の休息を齎す。
そして、天へと還ろうとするべく死者の亡霊の霊魂に向けてプラハからも。
「もう、冠位魔種はいなくなりました。この海は平和になりました。だから安心して……もう、誰も怖がらなくて良いですよ……」
との言葉で、霊魂を落ちつかせると共に、弔いの祈りを捧げて行く。
そんな二人の言葉が届いたのかどうかは分からないけれど、幽霊船員らの影は全てが消え失せる。
そして、残りしセイレーンの残骸については、史之は後始末をすると共に……深い深い海へと沈める。
……その身が蒼き海に消え失せて行くのを見下ろしながら、史之は。
「……人の心の中へ入ってきたらね、こうなるんだよ」
と、辛辣に言葉を紡ぐ。
幽霊船員達は被害者、セイレーンは加害者であり、被害者。
そんなもやもやとした感情を心に抱えたまま、弔いを終えたイレギュラーズ達は、その海域を静かに発つのであった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
海洋依頼に参加頂き、ありがとうございました。
悲しげな歌声は、皆様に届いたでしょうか。
彼女が何故セイレーンとなってしまったのかは判りませんが……少なくとも、迷わずに逝けた事でしょう。
GMコメント
皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)です。
海洋に響く、悲しき歌声の正体は……皆様を誘うメロディになるでしょう。
●成功条件
歌声の元である狂王種『悲壮なる音色『シリア』』を倒す事です。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●周りの状況
セイレーンの狂王種『シリア』は、人が寝静まった深夜の刻……突如としてその海域に響きわたります。
その歌声に波長があってしまった一般人の方々は、魅了され、その方向に航路を取ってしまっている様ですが……イレギュラーズの皆様も、その歌声は聞こえますので、察知する事は可能です。
ただ、参加者の内、誰かの心の弱い所を鋭く狙ってくる性質がある様です。
誰を狙うかは、皆様のプロフィール・経歴+プレイングを参照させていただきます。
勿論皆様はイレギュラーズなので、すぐに魅了……という訳にはならないでしょうが……その歌声に誘われるがまま航路を進むと、彼らが襲い掛かってきますので、それを迎撃する、という事になります。
●討伐目標
・狂王種『悲壮なる音色『シリア』』 x 1人
正しくセイレーンと言われる、上半身が人間の女性、下半身が鳥の姿をした異形の者です。
その歌声は人を強く魅了する効果があり、戦闘時においてもその歌声は皆様を蝕むことでしょう。
また鳥の様な羽、かぎづめ等が備えられており、勿論それらの部位を武器として攻撃を仕掛けてきます。
又彼女の歌声に魅了された被害者達が、その周りを取り巻いているので、それらを倒さないとセイレーンへの攻撃は難しいでしょう。
・彼女の歌声に誘われた『幽霊船員』達 x 14人+α
彼女によって沈められた船と、この海域に元々沈んでしまっていた船の船員達が亡霊となって姿を現します。
最初は14体ですが、戦況が彼女にとって不利になると、その歌声でさらに幽霊船員達を召喚してくるので、戦闘が長引けば無尽蔵に敵の数は増えていってしまいます。
そんなに強い敵ではないものの、結構しぶといのでご注意下さい。
それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。
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