シナリオ詳細
<ダブルフォルト・エンバーミング>その使徒、終焉を運びて
オープニング
●
伝承へと向けて進行してくるいくつもの影。
少し前、鋼鉄や砂嵐などが侵攻してきたことがあったが、それらとは違った異様な雰囲気を漂わせる怪物が多く、伝承を目指していた。
「我ら、終焉の使徒なり……」
「終焉獣(ラグナヴァイス)と共に、世界を終わらせる者なり……」
口々に終焉を語っていたのは、黒い神官服を纏った僧侶達。だが、彼らはとてもではないが、正義の神官などとはほど遠い。なぜなら、彼らは皆闇のオーラを纏っていたのだから。
そして、彼らが引き連れていたモノ。それは歪なる存在。
終焉の地から連れてきたと思われる終焉獣と呼ばれるモノ達だ。
「「グオオオオオ、オオオォォオオ……」」
「アウウウウ、グアウウウゥゥゥゥ」
終焉獣は様々な姿をしているというが、この場にいたのは、何者かの体の目と指を思わせる姿をしていた。
それらは口もないのに唸り声をあげ、浮かびながら終焉の使徒と共に伝承を目指す。
「な、なんだあれは!?」
それを、砂嵐方面へと向かおうとしていた行商人が真っ青な顔で見つめる。
終焉を語る存在。あの地域に近づくなど、行商人ですらもあり得ないこと。あんなのに襲われたらひとたまりもない。
「戻るぞ、急いで皆に知らせるんだ!」
彼らは大きくUターンし、伝承へと戻っていくのだった。
●
R.O.Oのバージョンアップが少しずつ起こる中、4.0へと至ったネクスト。
そこで、ついに悪意が形となってプレイヤーへと襲い掛かる。
ログアウト不可となるイレギュラーズ達。そして、彼らと同じ姿を象るパラディーゾ。
「バグっていうのは悪趣味極まりないね」
オリヴィア・ミラン(p3n000011)はこのネクストという世界に辟易した部分も抱いていた。悪意に満ちた自身と出会うなど、想像もしたくない、と。
ただ、ここには、今までの依頼で出会った人々も駆けつけており、彼らは一部イレギュラーズの現身、あるいは関係者である。
「伝承を破壊する存在なら、容赦しない……」
「なんかヤバそうだけど、オレに任しときな!」
やや気だるげな表情の天之空・ミーナだが、破壊を是とする存在には毅然と立ち向かう構え。清水 洸汰も同じく、意気揚々と今回の難敵に立ち向かおうと腕を鳴らす。
「終焉の使徒……いずれは正義にもやってくるはず」
「助けてくれた恩、この場で返して見せましょう!」
正義の地から駆け付けたアンナ・シャルロット・ミルフィールはハンマーを持つ手を強めており、神光からやってきたカプリセット・カロリーヌ・アルテロンドは得手としている徒手で戦いに臨む。
「まずは状況説明だ。よく聞きな」
伝承……混沌における幻想の地が襲われる状況はこれまでも多々あり、イレギュラーズはそれらを退けている。
ただ、今回は砂嵐の地で突如出現した終焉の大軍勢である。
終焉といえば、混沌においても魔種が多くを占めるという地。もはや近づくことすら憚られるのは、戻ってきた人間がほとんどいないからである。
「その一部をあんたらに請け負ってもらう」
まず、終焉獣と呼ばれる怪物達。現実の深緑でも見られる石花病や石花の呪いを振りまく者も多いと言われ、今回の化け物の一部、「絶望の瞳」もそれを所持する。
なお、幻想種の力を借りられれば、対抗する為の試薬を使うことができる。
さらに、「拒絶の指」は瞳に比べれば力を劣るようだが、人間ほどの大きさがあるそれらの指の能力も全てが把握できているわけではない為油断せずに対処したい。
最後に、終焉獣を引き連れる「終焉の使徒」の群れ。
黒い神官服を纏う彼らは世界の終焉をと口にしており、闇の力を直接、あるいは遠距離から叩き込んでくる。耐えがたい苦痛を引き起こすとも言われ、できるなら相手にしたくはない存在である。
「いずれも強敵だが、アンタらなら何とかしてくれるだろう?」
オリヴィアはこの場のイレギュラーズや協力者達へと問いかける。
全てが肯定の意を示したところで、彼女は最後にこう激励した。
「正念場さ。しっかりやってきな」
- <ダブルフォルト・エンバーミング>その使徒、終焉を運びて完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年12月07日 22時25分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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伝承西部の街道。
東に進めば街へと至る並木道へと、イレギュラーズが布陣する。
「あー……こうゆう光景なんていうんでしたっけ? 黙示録? 世紀末?」
「終焉が歩いてやってきた、ってやつ? やれやれ、世も末ってこの事を言うのかな」
『ステルスタンク』ミミサキ(p3x009818)、『灰の流星』グリース・メイルーン(p3x000145)は目の前の光景に素直な感想を口に出す。
「「グオオオオオ……」」
「グアウウウゥゥゥゥ」
やってくる終焉を名乗る集団。黒ずくめの神官に率いられる人体の部位を思わせる終焉獣は、おぞましい叫びを上げてこちらに向かってくる。
「おーおー、やばそーなのがいっぱいるなー」
『屋上の約束』コータ(p3x000845)は冷静を見つめていたが、それらが本当にネクストという世界を終わらせようとしているのだと実感する。
「世界を終わらせる獣と使徒、この存在がROOだけのモノなのか、現実にも存在する者なのか……」
『恋焔』ハウメア(p3x001981)は少々気に掛けるが、考えるのはことが終わってからでも遅くはないと切り替える。
「言う通り正念場だな。これ以上終焉の侵食を広げさせる訳には行かない、ここで食い止める!」
まだ少しばかり距離はあったが、『妖刀付喪』壱狐(p3x008364)は己の本体である刀に手をかけていた。
「オレの友達も生きているこの世界、壊されるわけにはいかない。ここで絶対、止めてやるもんね!」
コータが意識していたのは、ネクストにおける自身の現身である清水・洸汰の存在。
彼だけでなく、数人の関係者がこの事態を収拾すべく駆け付けてくれている。
「はー……やれやれ」
『死神の過去』ミーナ・シルバー(p3x005003)もまた自身の現身に視線を向け、こんな七面倒な戦場に顔を出すなんてと呆れすら見せる。
(……まあ、『私』であるなら、いるのは当たり前、か)
ただ、それでも納得してしまうのが本人故だろう。
(何故正義の令嬢であるわた……こほん、アンナさんがここにいるのでしょうか……)
同じく、『クマさん隊長』ハルツフィーネ(p3x001701)もまた気合を入れるアンナ・シャルロット・ミルフィールに対面し、わざわざ伝承まで出張っている自身の現身に驚きを隠せない様子。
「……カプリセットさんだけでなく、他の方まで救援に来てくれるなんて……!」
『クィーンとか名前負けでは?』シフォリィ(p3x000174)もまた神光からカプリセット・カロリーヌ・アルテロンドが駆け付けたことに加え、仲間達が紡いだ絆に感謝していた。
それだけではない。仲間内でも混沌での知人ではと考える者もいて。
(シフォリィはヒーラーか。ハウメア……彼女の正体は……)
グリースは正体を確信した自身の恋人を気にかけ、さらに知人と思しき相手にも注意を払う。
「まあいるものは仕方ありません。死ぬ気で石花の呪いだけは防ぎましょう」
ハルツフィーネが言う様に、終焉獣のうち、絶望の瞳は石花の呪いを振りまくという。
敵は強大。抗わねば、世界は終わってしまう。
ならばこそ、終焉の獣の侵攻を止めるべきとシフォリィは力説する。
「とにかく、絶望の瞳を何とかしなければ終わります」
「私たちは元より、支援にきていただいた方々に石花の呪いへと触れさせないようにしませんと」
応じる壱狐は絶望の瞳を早期撃破するための工夫として、敵が到達するまでの間、持ち前のスキルでバリケードを構築する。
「あの可愛くない不気味な目は私達が止めます。絶対に近づかず、貴女方はあの不届き者な破滅主義者達をお願いします」
「使徒の抑え、頼んだぜ」
ハルツフィーネやコータが4人の支援者達へと願うと、皆頷く。
この世界の住人が石花の呪いを受けたなら。想像もしたくない事態になるのは間違いない。
「まぁ、任せてよ」
「何であろうと止めるのが私達の仕事ですからね」
グリース、ミミサキがイレギュラーズとして、胸を張る。
終焉を口にする神官。そして、不気味な終焉獣。それらはもう間近にまで迫っていた。
「……絶対に、この世界を壊させやしません!」
「全力で行きましょうか」
防衛ラインを守り抜くことで伝承を守ることにも繋がると、ハウメアも壱狐も全力で身構える。
「それじゃあ一つ、手伝っていくとしますかね」
「では……いきますよ、クマさん」
終焉の集団に向け、ミーナ、ハルツフィーネは仲間と共に攻撃を仕掛けていくのである。
●
何者かの生物の目や指を思わせる姿の終焉獣は耳にするだけで寒気を感じさせる叫びを上げる。
「「グオオオ、オオオオ」」
「「オアアアアウウウウ」」
そいつらが仕掛けるよりも速く、ハルツフィーネが飛びかかる。
出し惜しみはなし。速攻で数の不利を覆そうと、彼女は早くも月閃を宣言する。
禍々しいオーラを放つ彼女は神々しい輝きも合わせて身に纏ってクマの力を得て、伸ばした魔法の爪で敵陣を薙ぎ払う。
とりわけ、石花の呪いを振りまくという絶望の瞳は確実に。加えて拒絶の指複数も捉え、封殺を狙う。
「クマさんの威光を前に、自由に動けるとは……思わないことです!」
ただ、相手も瞳が狙われることは想定していたのだろう。指2体が瞳を庇う様に前に出ていた。
ならばと、ハルツフィーネも庇われた瞳へと接近してマークし始める。
「私は支援しかできませんが、やるべき仕事をやるのみです!」
後続の仲間達数名の支援を優先させるシフォリィ。
まずはコータを見定め、シフォリィはクイーンの如き光を纏わせる。その光は命中補正を与え、彼の狙う封殺付与の確率も上げてくれるはずだ。
「石花の呪いは使わせないぞー!」
その光を纏うコータは遊び球を飛ばして敵を翻弄する。
じっと見つめてくる絶望の瞳を困惑させ、輪を乱すのがコータの狙いだ。
「終焉こそ我らが望み……」
神官服を纏う終焉の使徒達は口々に語る。
そいつらは闇の力を顕現し、黒い塊として放出するだけでなく、直接武器や体に纏わせてぶつけてこようとする。
彼らをメインに相手取る協力者達は全力でそれらと対する。
「おっし、行くぜ!」
野球用のバットで洸汰が殴り掛かると、気だるげな態度をしたROOのミーナが剣で追撃をかけた。
「はっ……!」
別の敵には、カプリセットが闇の力纏う敵の杖を素手で抑えており、そいつ目掛けてアンナがハンマーで殴り倒す。
初めて共闘するとは思えぬメンバー達は善戦してはいるが……。
「敵の数は此方の倍以上……」
ハウメアは協力者達の負担は決して小さくないと察する。
彼らに向けられた闇の力は少しずつ、確実にその体力を、精神力を削っていたのだ。
「皆さん、頭上にご注意を」
できるだけ、その負担を減らしたいと願うハウメア。
彼らを巻き込まぬようハウメアは細心の注意を払い、奈落の紫焔で形成された魔矢の雨を敵陣へと降らせる。
それは全てを焼き尽くす業火であり、全てを侵す猛毒でもある。終焉の使徒はそれらに苦悶を声を上げていたようだ。
続けて、ミミックであるミミサキが半身を隠す箱から外を覗くことで反撃態勢をとって。
「なーにが終焉の使徒ですか。突然出てきた割に覇気が全然足りないんスよ」
使徒達に向けてミミサキが自らの存在を主張すると、相手は彼女へと群がっていたようだ。
再び、終焉獣を相手にするメンバーへと視点を移せば。
防衛地点で壱狐がサイバー空間に干渉し、持ち前の職人魂もあって前方へとバリケードを構築していた。
終焉獣はホバリングするように地面を移動してはいたが、高く飛ぶことはできないらしい。
その為、壁に遮られれば、それを迂回しようと動く。
陽光の如き攻撃態勢をとった壱狐はその隙をついて、拒絶の指目掛けて神刀で切りかかっていく。
「浮かんでいれば、踏ん張りも効かないでしょう!」
その剣圧をもって彼女は一気に敵を吹き飛ばす。
「ラッキー、イイ感じだね!」
指の態勢が崩れれば、瞳への攻撃もしやすくなる。グリースは敵陣を狙って弓を引き絞り、重撃を撃ち込んでいく。
一度攻撃を行えば、グリースは壱狐の築いたバリケードに身を隠すが、グリースのスキル「ヴォーパル・スター」は無傷だと真価を発揮できないこともあり、多少なりは指の叩きつけを甘んじて受けていたようだ。
さて、シフォリィの支援はミーナにも及ぶ。
「分かっていたけれど、拒絶の指が庇ってくるのは面倒ね」
そのミーナもまたクイーンのオーラを纏い、しばし敵の行動を注視していたが、厄介な絶望の瞳の行動を封じようと動く。
「さあ、行くよ」
月閃によってオーラを纏ったミーナが飛ばす粘り蜘蛛の巣は、捕えた獲物は逃げ出すのが困難とさえ言われる糸を模倣した技。
それに絡まれた瞳は大きく目を見開いてもがき、糸を振りほどこうとする。
「「…………!!」」
だが、力を高めたミーナの糸は簡単に切れず、瞳は自らが冠する名の通りに絶望を感じていたようだった。
●
ハルツフィーネやミーナの使った月閃は、神光の地から駆け付けたカプリセットがもたらしてくれた、一時的に夜妖を纏うことができる力だ。
惜しみなく瞳への猛攻を仕掛け続けるハルツフィーネは仲間も攻撃の為に散開したこともあって、仲間を巻き込まぬスキルへと切り替える。
「がおー!」
両手を突き上げた威嚇のポーズと共に、ハルツフィーネは咆哮と衝撃波を放つ。
夜妖の力とはすさまじいもので、終焉獣も攻めあぐねていた様子である。
その間に、コータが子供の容姿を活かし、駄々っ子のように喚き、暴れ回ることで拒絶の指1体を追い込む。
「まさに手も足も出せないだろー?」
指にそのようなことができるはずもなく、コータはチョップを叩き込んで指を叩き倒してしまった。
「別の指が来るよ。気を付けて」
グリースは鷹の目によって広く視野をとり、仲間へと注意を促す。
そんなグリースにも、シフォリィはオーラを纏わせて。
支援に感謝しつつ、グリースは個人的な理由に加えて今作戦のキーマンとなるカプリセットを援護する。
「囲まれているよ」
「……っ!」
徒手空拳で戦うカプリセットが飛びのいたその場所は、ミミサキが集めた敵が群がる。
「私の戦場はここだけじゃないんスから……とっととぶっ倒れて道を開けてくださいねー?」
ミミックとして牙を剥くミミサキは敵を捕食し、飲み込んでしまう。相手が何であろうと関係ない。彼女は自身の養分としてしまうのみだ。
(ちょっと躊躇してしまいますね……)
そのミミサキが引きつける終焉の使徒達へ、ハウメアは仲間のうちミミサキのみを巻き込む形で魔矢の雨を降らす。
「「…………!」」
まさか、ハウメアが仲間を巻き込むとは思ってなかった使徒達。
ただ、ハウメアもそれが効果的であることを実証し、しっかりと活用する。
敵がその雨によって弱れば、洸汰やアンナがすかさず殴り掛かっていた。
そこにROOのミーナが加わるのを、アバターであるミーナは目にしていたが、今は終焉獣の殲滅が優先。
「指が2本ほど弱ってきている」
終焉獣の体力を死神の瞳で見ていたミーナは、最も危険視する絶望の瞳が余計な動きを見せぬよう縛り付けつつ、弱った敵を指し示す。
「見た限り何かの部位、なのでしょうか? 全体像を想像しても愉快な気分にはならなそうですね」
指が5本あれば、掴みかかられて厄介なことになると壱狐は見ていたが、それも1体がすでに沈んでいる。
ともあれ、指が瞳を庇いに向かわぬよう、かつ指同士が集まらぬように、壱狐は術式を纏わせた一撃で広範囲に敵を散らす。
しかしながら、弱った指1体が力を高めて爪を振るってくれば、壱狐も深い傷を負ってしまう。
だが、敵の注意をうまく自分に引けたならば。
「いざ、守って見せます。行きます──!」
握る刃が黒くなり、壱狐の体も靄がかかるようぼやける。
視覚があるかは疑問だが、ただならぬ様子に戦慄した指へ、壱狐が星をも超える一撃で切り込む。
なすすべなく消え去っていく2本目の指。
「こいつを倒せば、瞳への攻撃も楽になるだろ!」
さらに、コータが月閃によって速度を高め、幾度も狙った指へとボールの雨を降らせていく。
コータにとっては遊びの範疇だが、力を高めた彼のスキルは弱った指には耐えられず、その巨体を地面へと倒してしまう。
同じとき、シフォリィもまた月閃を使い、その姿を大きく変える。いつの間にか、露出高めの衣装を纏っていた自身に、シフォリィも驚いていたようだ。
「……予想よりすごい服ですが、これが私の有り得た可能性なんでしょうか……いえ、考えるのはよしましょう」
ともあれ、今は目の前の敵と戦う仲間を全力で癒す。
この世界にも、生きているシフォリィがいるはず。ならば、その自身を守ることこそ、私が今やるべきことだと確信する。
「私ではない私であっても、彼女達の幸せを壊させません!」
そんなシフォリィの言葉に、ハルツフィーネは思わずアンナを見やる。
一気に難敵を倒すべく、ハルツフィーネが再度衝撃波を放てば、絶望の瞳は弾けるようにしてその姿を消す。
直後、月閃の効果が切れ、ハルツフィーネは元に戻っていたようだった。
危険な瞳が1体倒れことで、終焉獣の相手がかなり楽になったイレギュラーズは一気に終焉の集団を攻め崩す。
壱狐がさらに1体の指を切り捨てた直後、ミーナも死神の瞳で1体の指が弱っていることを察知し、自ら敵の周囲より斬撃を連続して切りかかり、完全に沈黙させてしまう。
「その瞳ももう長くないようだ」
ミーナの呼びかけを受け、グリースも一気に切り札、月閃を使って勝負をかける。
「終焉をもたらす存在? 君たちだけに教えてあげるよ」
オーラ纏うグリースは刃弓を二刀モードに換え、連撃を見舞っていく。
「僕、本当は“死神”なんだ。って」
「グオオオオ……」
目を見開いたまま嗚咽を漏らす瞳は、その目を血走らせたまま果てていった。
全ての終焉獣を倒したイレギュラーズだが、終焉の使徒らは思いのほか手強く、抵抗を続ける。
それでも、協力者らのおかげもあり、その数は半数程度にまで減っていたようだ。
少し前に、月閃きを使っていたハウメアの姿は堕天使へと変貌していて。
「あなた達が世界を終わらせる者なら、私はあなた達に終を与える者よ! 消えなさい!!!」
力を高めたハウメアが発するより威力の高まった魔矢の雨が終焉の使徒らの体を焦がす。
「この程度で、終焉は免れぬぞ……」
闇の力を糧として、なおも交戦の意志を示す使徒達。
だが、終焉獣が倒れ、そちらからメンバーが駆け付ければ流れは一気にイレギュラーズ側へと傾く。
「現実でも虚構でも、この手の破滅主義者達の考えていることは理解に苦しみます、ね」
「全くね」
ハルツフィーネが威嚇のポーズをとって使途を怯ませれば、共感を示すアンナが追撃をかけてそいつを倒してしまう。
「お待たせ、オレ! Wコータ様の力、見せてやろうぜー!」
「おう、いくぜー!」
もはや、負ける要素はないと、コータと洸汰が息を合わせて暴れ、使徒を殴り倒す。
ここにきて、疲弊していたミミサキが最後に月閃を使うと、入っていた宝箱が怪しげな紫に変色する。
「なんか、呪われた装備が入っていそうな感じでス」
いつの間にか、仲間達がほとんどの敵を倒していたこともあり、ミミサキはその宝箱の中から伸ばす舌で攻めよってくる敵を殴打し、薙ぎ払い、締め付ける。
「しゅ、終焉は、すぐそこに……」
最後の最後まで終焉の接近を主張していた使徒はがっくりと事切れて崩れ落ちたのだった。
●
終焉の手勢を掃討した一行。
皆、その勝利を喜び合いはするものの、各地に多数現れる使徒が新たな終焉獣を運んでくるはずだ。
「……戦況全体ではここからが本番でしょうか」
ハルツフィーネは正義へと帰って自国を守ろうと考えるアンナへと呼び掛けて。
「くれぐれも無理はせずに」
大好きな勇者は強い。だからこそ、生き残ることを第一に考えてほしいと願う。
「はい。あなたも」
2人は笑顔で握手し、互いの無事を祈る。
「お前はさ、なんで【悪】を刈り取ろうと思ったんだ?」
ミーナもまた、自身の現身に呼びかけて問う。互いにこの世界の生まれではない為、放置しても誰にも咎められぬ立場であったはずだ。
だが、ミーナは最初から、相手がこう言うと分かっていた。
「人間を嫌いになれない。今を生きる者は助けたくなる。アンタもそうなんだろ?」
それは神の傲慢というやつなのだろうと、ミーナは考えるのである。
一行は程なく、再び別の場所へと散っていく。
別の場所を守る為、ネクストの地を侵す存在を倒す為。関係者達もまたそんなイレギュラーズを最後まで見送っていたのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは開幕で月閃を使い、一気に敵の攻勢を削ぐ一助となり、瞳1体を討伐した貴方へ。
今回はご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
<ダブルフォルト・エンバーミング>のシナリオをお届けします。
●目的
伝承西部の防衛、及び終焉獣の殲滅。
●概要
昼間、砂嵐で発生した終焉獣(ラグナヴァイス)の一部が伝承西部の街道を移動しています。
現場は並木道で、街道の両サイドに数メートル間隔で樹高が5m強ある樹が植えられています。街道の幅は5mほど。それ以外は草原地帯が広がっています。
街道を突破されぬよう、全力で阻止を願います。
●敵……終焉獣と終焉の使徒
○終焉獣(ラグナヴァイス)
大量の怪物達です。これまでに類を見ない凶悪なモンスター達であり、その姿は様々です。
・絶望の瞳×2体
全長2mほど。薄紫の皮に包まれた大きな瞳です。浮遊して移動しています。
怪光線を発射する他、睨みによって相手を足止めする力を持っている他、石化病を振りまいてくる恐ろしい敵です。
(『石花の呪い』はバッドステータスと種別を同じくする特殊ステータス状態です。
敵の攻撃がクリーンヒットした時に20%程度の確率で『石花の呪い』が付与されます。『石花の呪い』に感染したキャラクターは3ターン後に体が石に転じ死亡します(デスカウントが付与される状態になります)
なお、幻想種がいれば、R.O.Oにて作られた試薬(要1ターン)を使ってその呪いに対抗できます)
・拒絶の指×5体
全長1~1.5mほど。付け根のところで切れており、僅かに地面から浮いています。肌は薄紫色ですが、それぞれ人間の片手5本の指を模したような姿です。
地面を叩きつけて揺らすことがある他、指先を叩きつけたり、爪でひっかりたりしてきます。
場合によっては身を盾とし、絶望の瞳を守ることもあるようです。
○終焉の使徒×20体
ラスト・ラストを信奉する破滅主義者達。
神官のような見た目ですが、その思想は破戒僧といった印象です。
遠近問わず叩きつけてくる闇の力は肉体、精神共に耐えがたい苦痛を与えてきます。
●NPC
状況もあり、多数のNPCが協力してくれます。
○アンナ・シャルロット・ミルフィール
「行き過ぎた正義が生み出す呪い」で登場。
ネクストにおける、アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)さんです。ハンマーで果敢に敵へと立ち向かいます。
〇天之空・ミーナ
「無差別なる救済の手」で登場。
ネクストにおける、天之空・ミーナ(p3p005003)さんです。気だるげな印象に反し、剣を手にして敵へと攻め入ります。
○清水・洸汰
「湿地に舞う浮遊茸」で登場。
ネクストにおける、清水 洸汰(p3p000845)さんです。
野球用のバットとキャッチャーミットを手にして、敵に殴り掛かります。
○カプリセット・カロリーヌ・アルテロンド
20代人間種女性。赤い着物、赤いリボンが特徴的です。
混沌に実在する彼女はシフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)の関係者で、ROO側の彼女はほぼ本人と同様の外見、性格です。
徒手での戦いを得手としており、「<月没>異世界カフェは茶屋の味?」での恩義を返すべくはるばる神光の力駆け付けてくれました。
なお、カプリセットさんが駆け付けたことで、魔哭天焦『月閃』が利用可能です。詳しくは下記をご確認くださいませ。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
●ROOとは
練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline
※重要な備考『デスカウント』
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
●魔哭天焦『月閃』
当シナリオは『月閃』という能力を、一人につき一度だけ使用することが出来ます。
プレイングで月閃を宣言した際には、数ターンの間、戦闘能力がハネ上がります。
夜妖を纏うため、禍々しいオーラに包まれます。
またこの時『反転イラスト』などの姿になることも出来ます。
●重要な備考
<ダブルフォルト・エンバーミング>ではログアウト不可能なPCは『デスカウント数』に応じて戦闘力の強化補正を受けます。
但し『ログアウト不能』なPCは、R.O.O4.0『ダブルフォルト・エンバーミング』が敗北に終わった場合、重篤な結果を受ける可能性があります。
又、シナリオの結果、或いは中途においてもデスカウントの急激な上昇等何らかの理由により『ログアウト不能』に陥る場合がございます。
又、<ダブルフォルト・エンバーミング>でMVPを獲得したキャラクターに特殊な判定が生じます。
MVPを獲得したキャラクターはR.O.O3.0においてログアウト不可能になったキャラクター一名を指定して開放する事が可能です。
指定は個別にメールを送付しますが、決定は相談の上でも独断でも構いません。(尚、自分でも構いません)
予めご理解の上、ご参加下さいますようお願いいたします。
それでは、よろしくお願いします。
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