シナリオ詳細
<ダブルフォルト・エンバーミング>偽りだらけの盗賊団
オープニング
●
翡翠、迷宮森林。
普段は鳥獣らがあちこちで囀り、囁く合う楽園であるこの場に、全くそぐわない男どもが森の一角に鎮座する。
「…………」
「…………」
ここしばらく、彼ら……元砂蠍の一団が森を根城としているのには理由がある。
この世界、ネクストにとって異物にも等しい存在となり果てたバグNPC達。彼らは皆「大樹の嘆き」が持つ力の片鱗を行使することができる。
部下ですら、そうなのだ。それらを率いる盗賊団の長、ルボルの力は部下とは比べるまでもない。
ルボルは特に自身や集団を別の何かに偽装する力もあるようだ。
例えば、パサジール・ルメス。その効力は限定的なようで、戦いでは発揮できないなど、制約もあるようだったが……。
「チッ、力は完全ではないのか……?」
自身の力はかつてないほどに高まっていると疑っていなかったルボルだが、先の戦いでそれでは足りないことを思い知っていた。
「もっとだ、もっと力を……!」
人間種であるルボルだが、飽くなき強さへの願望な鋼鉄の鉄騎種にだって負けない。砂嵐とて強くなければなりあがれぬ実力社会なのだ。
「ぼ、ボス……?」
「止めましょう。なんかヤバいですぜ……」
部下達も身体を震わせるルボルを心配して声をかける。
だが……。
「ううう、うおおおおおおおおおおおっ!!」
その体へと集まる大樹の嘆きの力。その身に大きな力を取り込んだ彼はさらに体を膨れ上がらせていった。
●
翡翠の森林迷宮入り口。
先日、<Closed Emerald>での戦いにおいて、別れたイレギュラーズ、森林警備隊、それにパサジール・ルメスや砂嵐所属アッシラらが集まる。
「改めて、ルボル一味の討伐を依頼するっす」
まずは、パサジール・ルメス代表、リヴィエール・ルメスが口を開く。なお、彼女はROOでのリヴィエールであり、混沌での本人ではない。
「奴ら、また力を高めているらしい。もはや、ルボルは俺の知る奴とは別物だ」
アッシラとルボルは元砂蠍の同胞だが、バグNPCとなり果てたルボルは大樹の嘆きすらもその身に取り込んで只ならぬ力を得ている。
パサジール・ルメスを偽って翡翠の民を惑わし、関係者にまで迷惑をかける彼らはなおも思うがまま、やりたい放題振舞うのだろう。
「傲慢にも程があるね」
じぇい君(p3x001103)の言葉に皆頷くが、その中にはイレギュラーズではなく、かつ前回いなかったメンバーが2人いる。
「金の臭いにつられてきてみれば、きな臭いこのこの上ないぜ」
狼の毛皮を纏ったジェイク・太刀川は以前、鋼鉄でシャドーレギオンがらみの事件でイレギュラーズと共闘経験がある。賞金稼ぎとしてここまでやってきたらしく、ルボルの首に興味もあるらしい。
「俺達を襲った奴と共闘ってのは気に入らないが……」
伝承スラムでグレン・ロジャースは砂蠍と交戦した際、アッシラの顔を覚えていた彼は再会するなり睨みつけていた。アッシラ自身は多少罰が悪そうだったが、それでも自らの信念に従ったまでと謝ることなかったようだ。
「状況だが、奴らは以前いた場所へと戻っているようだ」
森林警備隊隊長であるラウルが今回の討伐作戦について話を進める。
ルボルらは森で木々に擬態し、油断した相手を襲うことが分かっている。
ただ、前回の作戦から、場所を移動していないこともあり、相手は逆にイレギュラーズらを誘っている可能性もある。
「ただ、大樹の嘆きや精霊を多数従え、その勢力は拡大している」
その為、露払い役を森林警備隊やアッシラ隊が請け負い、本丸であるルボル一味へとイレギュラーズを中心に切り込んでほしいとラウルは話す。
グレンやジェイクも腕を鳴らし、思う存分戦う構えだ。
「正直、貴様らを信用したとまではいかない、が」
作戦へと臨む前に、ラウルはリヴィエールを一目見て頷き合い、他のメンバー達へと視線を巡らす。
「間違いなく、ルボルという男は害悪にしかならないという認識を、この場の皆が持っているはずだ」
後のことはそれからだと、ラウルは続きをリヴィエールに促す。
「あたしは後方支援に徹するっす」
そのリヴィエールはこの場に留まり、サクラメントなどイレギュラーズの支援を行う形だ。もし、この場に戻ってきても、馬を走らせて再戦には間に合わせたいとのこと。
「だから、あたし達を騙ったあの一団を……確実に倒してほしいっす」
改めて、リヴィエールは同胞と共にこの場の面々へと頭を下げ、ルボル一味の撃破を願うのだった。
- <ダブルフォルト・エンバーミング>偽りだらけの盗賊団Lv:15以上完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2021年12月07日 22時26分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●
翡翠、迷宮森林。
その入り口に集まる50名ほどの集団に、『オオカミ少年』じぇい君(p3x001103)が呼びかける。
「みんな集まってくれてありがとう! 皆で力を合わせて、翡翠に巣食う悪鬼達を討ち滅ぼしましょう」
この場に集まる様々な者達。じぇい君のアクセスファンタズムによって皆笑顔を見せ、士気を高めていた。
「再戦か、今度こそ決着つけてやるぜ」
『わーるどいずまいん♂』アンドレイ(p3x001619)は歩きながら、腕を鳴らす。
バグNPCと化した砂嵐の盗賊、ルボル。
それらが異能の力を得て、翡翠を中心として様々な事件を引き起こしている。
パサジール・ルメスの民代表、リヴィエール……ROOのであって混沌の本人ではない……が同席する中、この場のメンバーは情報を確認し合う。
「ふむふむ、バグPCね、おっけー、なんかワルそうなのは理解した!」
『野良猫』みゃーこ(p3x009529)は、旅人である背後が昔一緒にゲームやっていた男の子がやっていた、いわゆるチートというヤツだよねと語る。
みゃーこ自身もラクするのは好きで、面倒くさいのは嫌だそうだが、それでも。
「そーいうのはどうかな~って思うな~?」
「何か、違う気がするがな」
「え? ちょっとちがう? そーなの? んにゃー?」
樹上の枝から話を聞いていた迷宮森林警備隊のリーダー、ラウルのツッコミにみゃーこは首を捻る。
「そも、ゲームでチートとはどういう状況だ?」
砂嵐の一団を率いるアッシラも、みゃーこの言葉がいまいち理解できず、問い返す。
「昨日戦った敵と今日共に戦う事もある……傭兵稼業ってのも大変だな」
『ブッ壊し屋』レニー(p3x005709)がそのアッシラへとそう告げたのは、グレン・ロジャースが強い警戒心を抱いていたからに他ならない。
レニー自身もそうだが、恨まれない為には生まないようにするのは一番とのこと。
(まっ、直接相手にした分、厄介さは頼りになるだろ)
そう感じていたのはレニーだけではない。
「なかなかの手練れのようだな。一度手合わせ願いたいものだ」
アッシラの技量を見抜いたROOのジェイク・太刀川。
その姿に、混沌のジェイクであるじぇい君は元気そうだと頷いて。
(アッシラさんやラウルさんも力を貸してくれる。今の僕達が奴らに負ける筈がない)
ルボルを今度こそ倒す。じぇい君の気概は人一倍強い。
「ルボル様といいましたか。僕の命よりも大切なじぇい君に何をするおつもりですか」
傍にいた『夢現の奇術師』夜乃幻(p3x000824)もまた、並々ならぬ敵意を燃やす。
「じぇい君を殺されたりなど決してさせません」
(嫁も側に居るし、気合を入れねえとな)
そんな幻……背後である嫁の姿に、じぇい君はルボル討伐への意気込みを一層強めるのである。
程なく、イレギュラーズ含む混成隊は迷宮森林入口のサクラメント付近にパサジール・ルメスのメンバーを残し、ルボル一味が縄張りとする区画を目指す。
「森林内なら、擬態されたら何処に隠れてるか分かったもんじゃないもんね」
敵が木々に期待するという。みゃーこは猫スキルの感覚で。『Error Lady』デイジー・ベル(p3x008384)も周辺に注意し、警戒を強める。
グレンもそうしていたが、彼はROOでのレニー本人。
混沌では深緑に思い入れのあるグレンだが、深緑を模した翡翠へとこちらのグレンが来てるのは意外だとレニーは思う。
「なあ、少しいいか?」
「何だ」
レニーが呼びかけると、グレンは構えた態度をとる。慣れ合いの嫌いな彼がなぜここに来たのか、レニーは知りたかったのだ。
「砂蠍が動いてるって聞いて、落とし前をつけようと考えたんだ」
悪人には罰を。そんなヒーローたらんとする思考がグレンを突き動かしたのだろう。
「そろそろだぜ」
「あれかなー?」
アンドレイのラヴティメットワールドに反応があったらしい。
みゃーこも前方の木々に違和感を示せば、敵もすぐに正体を現す。
「「へへへ……」」
わらわらと小さな木々が盗賊達の群れへと変わっていく。
「2度目はごまかせんか」
確かに2度目だが、それ以上に中途半端に巨大化したルボルはもはやその体のほとんどを樹と化していた。
「ちょっと見ない間にルボルもずいぶん大きくなりましたねー」
「イイ男……ってもうほとんど木じゃねえか! そんな身体じゃまともな生活すら送れねえだろうに」
『ステルスタンク』ミミサキ(p3x009818)は一月にも満たぬ期間で変貌した相手に呼びかける。続き、アンドレイが折角のいい男が台無しだとその見た目を嘆く。
「力さえあれば、見た目など構わぬ……」
ただ、それを『合成獣』アルス(p3x007360)などは憐みを向けて。
『あんな姿になってまで、NPCとはいえ哀れだな』
「プログラムの強制力に抗うのは、中々難しいのにゃ」
CPUと話すアルス。なお、現在オートパイロットとしており、表面に出ているのがCPUである。
『うーん、仮にもAIを自称するお前がそれを言うのか』
「にゃっふ、アルスちゃんはあんなポンコツNPCとは違うわーけ♡」
「……ポンコツかどうか、確かめてみるといい」
さらなる力でルボルは大樹の嘆きを呼び寄せ、風の精霊をも従える。
「貴方たちは騙されているんです! 貴方たちは大樹になど従っていないんです!」
ルボルに従う精霊達に、幻が大声で静まってほしいと呼びかける。
「もしできるなら、僕たちに力を貸していただけませんか」
「あ、うう……」
「…………」
一部は抵抗しているが、あまりに強大は力に抗えないようだ。
「自由な風の精霊を束縛するなんて」
現状のままでは説得は難しいと、幻はルボルの討伐に意識を切り替える。
じぇい君がアッシラの率いる傭兵やラウル率いる森林警備隊にその精霊の相手、大樹の嘆きの討伐を依頼すると、デイジーもまた視線で促しつつ、改めてルボルを見上げて。
「まさか人と大樹の嘆きがここまで融合するとは」
姿を変えてまで力を求める姿勢だけは、デイジーも素直に賞賛するが。
「害あるならば、此処で貴方たちを絶つ」
「ま、アレが森林の外から見えてもうっとおしいだけでスので、一足早い大掃除と行きましょうか」
デイジーは荷電粒子砲を構えると、ミミサキもまた普段隠れる容器から相手を観察し、その力を見定めようとしていた。
「それじゃ、ボクらもいくよ」
「にゃっふ~! 美少女合成獣のアルスちゃんだよ☆彡」
みゃーこの言葉に合わせ、ここぞと名乗るアルス。
そのアルス達に合わせ、イレギュラーズを含む混成隊もまたバグNPCらの掃討を始めるのである。
●
ネクストにおける異分子、バグNPC。
「うおおおおおおお!!」
森林内に響くルボルの怒号。それに震え上がる大小の大樹の嘆き達や精霊が動き出す。
「先に行かせるな!」
「我々も行くぞ」
イレギュラーズの要望を受け、アッシラ隊、森林警備隊が大樹の嘆きと精霊の対応に当たる。
「さあ、かかってきなよ!」
子分達は大樹2体から引き離すべく、じぇい君が挑発するような仕草で引付を行う。
「できるだけ多くの敵を集めたいでス」
同じく子分に対し、ミミサキが前回のルボル一味戦と同じくタンク役として対し、レアドロップの予感を使って敵の引付を行う。
「「ひゃっはあああ!!」」
子分達は得意げにナイフを振るい、弓で矢を飛ばし、風を操る。それらをじぇい君やミミサキは一斉に浴びる形となる。
今回もという点では、アンドレイもまたルボルの抑えを請け負い、電撃を伴う拳を打ち込んでいく。
「大樹はほぼ動かねえからな。皆も離れて戦ってくれよ」
「余所見とはいい度胸じゃねえか!」
頭上から伸びる樹の腕でルボルがアンドレイを攻め立てるが、彼としては望むところ。
がっしりと枝を受け止め、アンドレイは次なる攻撃に備えていた。
「にゃふ、今日のアルスちゃんはフットワーク軽いよ! シュシュシュシュッ!」
アルスは自身の反応速度を高めた後、仲間達の命中補正を高めるべく支援を行う。
そのまま、アルスは回復支援役をメインに立ち回るようだった。
その間にも、他メンバーが子分の殲滅を急ぐ。
単純な暴力装置だと自らを位置づけるデイジーは予め自己強化を施し、敵を倒すための行動力を高める。
「ならば此方も、巨大な物をぶつけましょう」
その状態で、デイジーは巨大な骨の手を顕現し、仲間に群がる子分らへと掴みかかる。
「迅速に、対処させていただきます」
相手の力を考えれば、タンク役もどれだけ耐えられるかわからない。デイジーは手早く敵を握り潰し、叩き潰し、穿ち潰す。
「乱戦になる前に……」
レニーも纏まる敵だけを捉え、風を纏わせたおもちゃの剣を振り回す。
それによって巻き起こる一陣の風が周囲に落ちていた木の葉や小枝、石などを巻き上げて吹き飛ばす。
そうした敵は一時樹に擬態してこちらへの奇襲を狙おうとするが、みゃーこがそれを許さない。
擬態した敵へと飛びかかったみゃーこは馬乗りになる。
倒せればベターだったが、相手の存在を仲間に示せればみゃーこにとってはオーケーらしい。
「まだいくよ」
みゃーこはさらに周囲へと呪縛と狂気を振りまき、敵の動きを止めようとする。数の多い子分は抑えておきたい相手だ。
「僕の手数の多さに、美しい奇術『流星スピカ』をご覧ください」
幻はというと、子分を殲滅する為に宣言通り奇術を使う。
「あ、え……?」
次の瞬間、子分は幻に導かれて刹那にして永遠の夢を見る。
落ちていく青く強い輝きのスピカはどこまでも落ちていくかのように思えたが、気づけば子分の意識は途絶え、前のめりに崩れる。
バグNPCとなっていた為か、そいつの体は跡形もなく消え去ってしまった。
タンク役として、子分らを抑えていたミミサキもある程度敵を集めたところで一時攻撃にも出ていた。
ミミサキもまた前回の戦いを踏まえ、殲滅力を高めて今作戦に臨む。ミミックである彼女は入り込む容器から伸びる舌を振り回し、子分達へと反撃も行う。
とはいえ、その頻度は高くなく、ミミサキは子分達が自分から意識を逸らさぬようにと注力する。
一方、じぇい君は一時的に子分達へと対するスタンスであり、多数の敵が自身へとナイフや風の刃を剥けてくる間は、仕込み刃で奇襲をかけつつ個別に仕留めていた。
そのじぇい君の傷に気を払いつつ幻は立ち回るが、現状は大丈夫だと確認し手からさらに奇術を披露する。
「くそっ!」
敵もタンク役から切り替えて応戦してくる者もいたが、ジェイクがすかさず二丁拳銃を発砲してその子分を撃ち抜く。
グレンがそこで追撃し、剣で切り伏せて子分を倒していた。
そんな自身の現身を目にしながら、レニーは自身との距離によって攻撃手段を切り替える。
至近距離からナイフを食わらぬように、レニーは少し間隔を開けてから刃を大降りに振るいつつタイミングをずらして子分の防御を崩していた。
また、遠方から弓を射かけ、風を操ってくる敵もいる。
そうした相手には、レニーも先程自身で巻き上げた小石や枝に雷を纏わせて蹴り飛ばすと、直撃した子分は意識を失ってしまった。
多少力を得た子分達が思い上がっていたと気付いた時にはもう遅い。
戦術に勝るイレギュラーズら混成隊によって、次々と仲間が倒されていて。
「畜生。大樹の嘆きは何してやがる!」
毒づく子分だが、そちらはアッシラ隊や森林警備隊がしっかりと抑えており、ルボル一味とイレギュラーズの戦いへと介入させない。
だが、子分がそれを確認する暇もなく、デイジーが具現化させた骨の手が掴みかかる。
「私の怨念骨腕は、我ながら尋常でない火力を誇ります……覚悟はいいですか」
「ひっ、ひああああああぁぁぁ!!」
デイジーは有無を言わさず、その子分の体を完全に握り潰したのだった。
●
大樹の嘆きと交戦するアッシラ隊。
彼らは大樹から距離をとり、個別に樹の姿をした相手を切り倒す。
一方、ラウルら森林警備隊は、風の精霊を倒さぬようにと抑えていた。
「うおおおおおおお!!」
時折吠えるルボルが更なる手勢を呼び寄せようとするが、アンドレイがそれを制する。
(斧には注意だな)
あの一撃で前回、戦闘不能に陥ったアンドレイ。
度重なる相手の攻撃に疲弊していた彼だが、子分を倒した仲間達が駆け付けてくる。
ミミサキが残る子分を捕食している間に、じぇい君がこちらへと駆けつけ、盾役をスイッチする。
「こっからは僕が相手だ!」
「覚悟しな」
合わせて、攻め来るジェイクと共に、じぇい君が仕掛ける。
「今度は僕達の恐ろしさを刻み込んでやる! たっぷりとね!」
その姿が2人のジェイクに被るルボル。
威圧を感じる敵へと、傷つくアンドレイが倒れるのも上等とばかりに拳で攻め入る。
「回復するなら、リスポーンの方が速えからな」
「リアルで問題が起きてる以上、皆のデスカウントを増やす訳にはいかにゃいの!」
そんなアンドレイに、アルスがすかさず光輝く癒しを振りまく。
「にゃふ、癒すことしかできないボクでも、これくらいのことはできるから! だから皆、絶対に負けないで!」
諦めず、必ず翡翠を惑わし、パサジール・ルメスを貶めた元凶を倒すようにとアルスが叫ぶ。
「なめるなあああああ!!」
だが、いきり立つルボルがイレギュラーズへと木の葉を乱舞させて切りかかり、さらに斧を大きく薙ぎ払ってくる。
いつの間にか大樹へと近づいていたルボル。大樹に攻撃を仕掛けていたみゃーこにも大斧が襲い掛かる。
「みゃっ!?」
思わぬ一撃に深手を負うみゃーこだが、大樹へと背水の一撃を叩き込んで打ち倒してみせる。
同じく、大斧で傷を負ったレニーに、グレンが近づいてくる。
「おい、大丈夫か?」
「ああ、好き好んで死にたかないんでな!」
だが、レニーとてやられるつもりなどなく、防御して致命傷を防いでいた。
子分が倒れ、大樹の片割れもみゃーことアッシラ隊が請け負い、さらに精霊達もルボルの力の弱まりに伴って我を取り戻すものが出始める。
それでもなお、抑えているはずのメンバーをも翻弄するルボルは戦場を動き回り、強大な力を放出する。
「この力ならああ!」
止まらぬルボルの猛攻。
もう1体の大樹を相手にしていたみゃーこが大斧に裂かれて姿を消し、さらに伸びる樹の腕がじぇい君を狙う。
「ルボル様、男の執着は嫌われるもので御座いますよ。」
しかし、そこで幻が彼の前に飛び出し、その腕を受け止めて。
「漢なら潔く負けを認めては如何ですか」
「負けはせんんん!!」
だが、ルボルは負けを認めず、腕を強く突き出して幻の体をも貫く。
(死んだとしても、僕は何度だってじぇい君を守る!)
「…………っ!」
相方の無事を願う幻の姿がかき消えたことで、じぇい君も強く相手へと切りかかり、気を轢こうとする。
「まだ、まだ戦えるよ!」
仲間達が消えていく中、アルスも癒しに全力を尽くし、仲間達を支える。
これ以上、好き勝手にさせられぬと、ミミサキも入っている容器から舌を伸ばして相手を締め付け、デイジーも骨の腕でルボルの巨体を叩き潰し、穿ち潰さんとする。
デイジーの怨念骨腕とて、並の火力ではない。いかにバグNPCと化したルボルでも一溜まりもないはずだ。
「おおっ、おおおお!」
地面から生やす草でイレギュラーズを絡め取り、その草ごと大斧で刈り取らんとするルボル。
レニーは深手を負いながらも、屈強な敵の巨体につけた傷目掛けて、斬撃を叩き込まんとする。
すると、同じくルボルの斧を受けていたグレンがやや先行する形で仲間の傷を切り広げて。
「ヒーローなら、当然だろ?」
そんな自身の現身の行動に笑みを零しつつ、レニーは相手の防御を切り崩して。
「邪道のコンビネーション、受けて見な!」
態勢を崩した敵へ、彼女はさらなる一撃を叩きこむ。
「ぐおおおお!!」
森の木々が振動する程に大音量のルボルの咆哮。
それにひるむことなく、アンドレイは味方のつけた傷を注視する。
「世界をも犯す俺様の一撃、災厄の黒炎に呑まれて枯れちまいな」
強く地面を殴りつけたアンドレイ。
直後、地面から災厄の炎が燃え上がり、瞬く間にルボルの巨体を飲み込んでいく。
「ぐおお、おおおおおおおお!!」
信じられないと首を振るルボルは迷宮森林から、ネクストの地から消えてなくなってしまったのだった。
●
ルボルがいなくなり、風の精霊達は我を取り戻す。
残る大樹の嘆きは混成隊によって、瞬く間にその姿を消していった。
「本当に、お疲れ様っす」
ルボル一味完全討伐の知らせを受け、リヴィエールらパサジール・ルメスの民も現地へと駆けつけ、全力を尽くして戦ったメンバー全員を労う。
彼らとしては、自分達を騙る偽物を討伐してくれた恩人。それだけに、せめて手当や物資提供で恩義を返そうとしていたのだろう。
「お疲れさまでしたー……」
挨拶するミミサキだが、あちこちで多少の不信が残っていることを察して。
(後のことはそれからって話をするフェイズでは無いと思いまスけどね)
だが、この場に漂う微妙な空気を、じぇい君が一言で変えてしまう。
「みんな、ありがとう! 僕はみんなと友達になりたいな」
これまで様々な衝突はあったが、こうして事件を解決できたとじぇい君はアクセスファンタズムを使いつつ皆に感謝を述べる。
そこで、拍手をする幻、そしてジェイク。呼応するように、あちらこちらから拍手が巻き起こる。
それでも、まだまだ翡翠の外は大騒ぎだとミミサキが告げる。
「ひとまずは外の手伝いをしてくれるとありがたいんスけど」
とりわけ、迫りくる世界の危機に、この場の皆が前向きに返答していたのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPはこの混成隊を纏め上げ、労いの言葉をかけたあなたへ。
今回はご参加、ありがとうございました……!
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
<ダブルフォルト・エンバーミング>のシナリオをお届けします。
●目的
バグNPC化したルボル一味の殲滅
●概要
迷宮森林内でルボル一味と交戦します。
森の入り口からは徒歩で小一時間ほどの場所。拙作「<Closed Emerald>樹に擬態する盗賊」と戦闘場所は同じです。
下記の通り、死亡してデスペナルティを負っても、翡翠迷宮森林入口のサクラメント近くにいるリヴィエールらパサジール・ルメスの民が馬を走らせて戦闘場所へと急行してくれます。数ターン掛かる為、馬の数も限られる為、多用は禁物です。
●敵……バグNPC
パサジール・ルメスを装い、翡翠の民に疑心を生み出す一因として暗躍しているようです。
大樹の嘆きの力を取り込んでおり、完全な人形態になれる他、樹に擬態する能力もあるようです。
〇ルボル
大柄でガタイのよい40歳前後の大男。大樹の嘆きの力をその身に取り込んだ上、さらなる力を得て全長4mほどと体の8割ほどを樹へと変貌させています。
大斧を扱うほか、伸びる樹の腕、木の葉乱舞、草絡めを使用。
〇子分×25体
ベースはチンピラ風の青年達ですが、やはり大樹の嘆きによる力で半身が樹と融合してモンスター化してしまっています。
半数がナイフでの攻撃、半数が弓を使いますが、全員が土ミサイルや風の刃を操る術を持っています。
〇大樹×2体
ルボルの意によって操られる「大樹の嘆き」です。
樹高10mほどあり、巨体ゆえにほとんど移動はしませんが、地面から草を生やして足止めする他、木の葉乱舞や枝での薙ぎ払い、土属性のミサイルと多様な攻撃を行います。
○大樹の嘆き×15体(初期状態)
こちらもルボルの意によって操られた「大樹の嘆き」達。
人物大の木を思わせる姿をし、枝や根で相手を拘束、締め上げてきます。
○風の精霊×20体(初期状態)
同じく、ルボルの意によって操られた森の精霊です。
大きさは全長50~70センチ程度。渦巻く風や鋭い風の刃を中心に攻撃を仕掛けてきます。
●NPC
状況もあり、多数のNPCが協力してくれます。
〇グレン・ロジャース
ROOにおけるグレン・ロジャース(p3x005709)。
伝承のスラム裏社会に所属する彼は、砂蠍の残党が今回の黒幕として動いていることを知り、翡翠の地まで単身駆け付けてくれました。
剣を手にする彼は他者との慣れ合いを苦手としながらも、共闘してくれます。
〇ジェイク・太刀川
ROOにおけるジェイク・夜乃(p3p001103)。
ワイルドな見た目をした賞金稼ぎの彼は翡翠の騒ぎが金になると睨んだようで、二丁拳銃を手にしてこの戦いに協力してくれます。
〇アッシラ
「<大樹の嘆き>毒をもがれた蠍達」で交戦した砂嵐の一隊のリーダーです。現実の彼は敵対勢力のまま死亡していますが、じぇい君らの説得もあって停戦状態にあります。
今回は部下を引き連れ、森林警備隊と共にルボルの呼び寄せる大樹の嘆きや精霊の討伐、撃退に当たってくれます。
〇迷宮森林警備隊×10体
隊長、弓の名手であるラウルをメインに、弓、風魔法、風精霊を操る幻想種で構成された警備隊です。後方、樹上からの攻撃を得意としています。
今回はアッシラ達と共に、ルボルが呼び寄せる大樹の嘆きや精霊の討伐、撃退に注力してくれます。
○リヴィエール・ルメス
パサジール・ルメスの一員。ROOでの彼女であり、混沌のリヴィエールとは別人です。
パサジール・ルメスの一団と共に森林迷宮入り口付近のサクラメントに待機し、戻ってきたイレギュラーズを馬で戦場まで送り届ける役を担ってくれます。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
●ROOとは
練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline
※重要な備考『デスカウント』
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
●重要な備考
<ダブルフォルト・エンバーミング>ではログアウト不可能なPCは『デスカウント数』に応じて戦闘力の強化補正を受けます。
但し『ログアウト不能』なPCは、R.O.O4.0『ダブルフォルト・エンバーミング』が敗北に終わった場合、重篤な結果を受ける可能性があります。
又、シナリオの結果、或いは中途においてもデスカウントの急激な上昇等何らかの理由により『ログアウト不能』に陥る場合がございます。
又、<ダブルフォルト・エンバーミング>でMVPを獲得したキャラクターに特殊な判定が生じます。
MVPを獲得したキャラクターはR.O.O3.0においてログアウト不可能になったキャラクター一名を指定して開放する事が可能です。
指定は個別にメールを送付しますが、決定は相談の上でも独断でも構いません。(尚、自分でも構いません)
予めご理解の上、ご参加下さいますようお願いいたします。
それでは、よろしくお願いします。
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