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シナリオ詳細

大山鳴動して猫一匹

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 豊穣の東側に、廃墟となった街がある。
 かつては建物が立ち並び多くの住民も住んでいたそうだが……いつの日だったか大地震の被害を大きく受け、住民が逃げ出してしまったそうなのだ。事が静まれば戻ってくる予定もあったそうだが……
 しかし火災なども大きく広がり各所の家屋は燃え落ち。混乱に乗じて妖怪などが住み着くようにもなってしまえば――住人らは戻らずに新たな地へと移り住むようになってしまったそうだ。
 それ以降は廃墟と化し、新たな人の手が入る事もないままに放置されている……

「……で。このような所に迷い込んだ猫を探せ、と?」
「うむ――そう嫌な顔をするな。やむを得まい。気高き方からの命となれば、無視も出来んよ」

 そんな所へと訪れたのは、あるヤオヨロズに仕える者達だ。
 なんでも主人が愛していた猫が一瞬の隙を突いて家の外へと出てしまい、そのまま帰ってこなくなってしまったらしい。いくつかの目撃情報を下に考えるとこの街に迷い込んだ可能性が高いとの事だが……
 周囲を見渡してみれば人の気配が一切ない薄暗い街。
 妖怪もいるとされるのであれば、正直こんな所訪れたくはないものだ――が。主命を無視する訳にもいかず、彼らは溜息を零しながら足を踏み入れる。
「いいか。あまり物音を立てるなよ……
 妖怪が気付くやもしれぬし、そうでなくても猫に逃げられるやもしれぬからな」
 廃墟となった住宅街。足音が響き、周囲に反響する――
 故に可能な限り足音を殺して探索をするものだ。
 中々広い街であるが故、猫一匹探し出すのは骨が折れそうだが……しかしその猫は随分とふくよかな体型をしているらしく、あまり俊敏に動けたりはしないそうだ。故に一度でもその姿を見つけることが出来れば保護自体はそう難しい事ではないだろう。
 故になんとか根気よく探さんと目を凝らし耳を研ぎ澄ませて――いたら。
「むぅ……ここは行き止まりか」
 どうやら突き当りに辿り着いてしまった様だ。
 巨大な壁が目の前に聳えている。ここを通るには空を飛ぶ術でもなければ……
 やむなし。一度引き返さんと来た道を振り返る――
「……!? なんだ、この壁は! さっきまでは無かったはずだぞ!!」
「おかしい……囲まれている!!?」
 瞬間。なんと背後にも巨大な壁が聳えていた。
 妙だ――ここは間違いなく通ってきた道なはずなのに、どうして!
 戸惑う者達。しかし、やがて気づいた。『コレ』自体が――

「まさか、妖怪だというのか!!」

 気付いた時にはもう遅し。
 それはカムイグラに存在する妖怪が一つ――ぬりかべ。
 狭い路地に包囲された状態。その上でこちらへと倒れてくる『壁』に、押しつぶされた。


「……という状態で最早我々の手には負えないのです!」
 後日。数度に渡る猫の『にゃん吉』救出作戦は失敗に終わり――
 やがて神使達の下へと依頼が舞い込む。
 突如として現れるぬりかべがどうしても攻略出来ないらしいのだ。普段は只の壁として偽造しているのか、それとも地中にでも潜っているのか知らぬが……なにがしか上手く隠れているのかもしれない。あんなに巨大なのに……
「なるほど……とにかくその妖怪を突破して猫を、と」
「はい。まぁ別に妖怪どもが現れようと、全て倒す必要はございません。
 要は猫のにゃん吉様を救出して頂ければ、それで……!」
 あくまでも妖怪は街に入った者達を襲い掛かってくるだけ。
 その討伐自体は依頼の重要な点ではない。大事なのはにゃん吉の身一つ。
 妖怪たちは人間を中心的に襲う様な習性があるらしく、にゃん吉はまだ無事かと推察されている――そしてにゃん吉は恐らく廃屋など、どこかを寝床にしているだろう。だから家の中などに入って探索などをする必要があるかもしれない。
 にゃん吉は本当に凄くデ……いやめっちゃふくよかな体型をしているらしいので、見間違えたりする事はないだろう、との情報だ。とはいえどこにいるかの見当はまだついていないらしく根気強く探す他ないかもしれない。
 そして長く探していれば妖怪たちが集まってもこよう。
 最終的にはその包囲を突破して街を脱出する必要がありそうだ……
「やれやれ。猫じゃらしでも持っていくとするかね……」
 依頼主より齎された簡易な地図を見ながら――神使達は思考を巡らせていた。

GMコメント

●依頼達成条件
 猫のにゃん吉を見つけ出し、救出する事!

●フィールド
 豊穣のとある廃墟となった街中です。時刻は昼でも夜でも選択できます。
 かなり広い様で多くの民家などの建物が広がっています。
 ただ街は廃墟となって久しく、人っ子一人いません。

 この街のどこかににゃん吉がいる様です。
 どうにか妖怪らを退け、にゃん吉を確保してください……!

●敵戦力
・ぬりかべ×4~(総数不明)
 巨大な壁の如き妖怪です。
 自身と接敵している人物全てをブロック出来ます。
 また自身に対する【飛】の効果が無効化されるようです。

 普段は只の壁として偽造しているのか、地中にでも潜っているのか知れませんが突如として背後などに現れ、見つけた人間たちを取り囲む習性がある様です。巨大な存在なので、飛行でもしない限りはそう易々とは超えられなさそうな気がします……
 ただ、巨大な存在故に攻撃を当てる事は容易く、また範囲攻撃や域攻撃が効果的かもしれません。

 攻撃方法としてはその巨大性を利用して倒れてきたりします。
 また他に『重力波』を発生させ、空中にいる者を地上に引き摺り堕とそうとする事も可能な様です。これは特別な攻撃で地上方面への【飛】効果があり、また【足止系列】や【不吉系列】のBSを付与することがある様です。ただしあくまで攻撃の一種ですので、回避力などが高かったり、なんらか攻撃を予測出来れば回避する事も可能でしょう。

 数は不明ですが、情報によると最低でも四体は居る様です。
 人の存在を感知すると動き出したり集ってきたりするので、ご注意ください。

●にゃん吉
 保護対象の猫です。
 甘やかされてるのか、とってもデ……ふくよかでまんまるい猫です。
 その体格の為かあんまり俊敏ではないし狭い所に入れたりもしないので、一度見つける事が出来れば捕獲自体はそう苦労しないことでしょう。ただ、ちょっと重いかもしれません。いや割とガチで重ッ……お前……ここから無事に出られたら痩せろよ……!!

 にゃん吉を抱えている人物は機動力などに影響がある可能性があります。
 ただ、運搬性能に優れていたりするとその影響を軽減させられるかもしれません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 大山鳴動して猫一匹完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年11月30日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
アルヴィ=ド=ラフス(p3p007360)
航空指揮
紅華禰(p3p008277)
シガー・アッシュグレイ(p3p008560)
紫煙揺らし
希紗良(p3p008628)
鬼菱ノ姫
鬼灯 長門(p3p009738)
特異運命座標
嘉六(p3p010174)
のんべんだらり
ニャンタル・ポルタ(p3p010190)
ナチュラルボーン食いしん坊!

リプレイ


 迷い猫探し……というだけならば簡単な依頼だったのが、妖怪までいるとは。
「なんとも厄介な依頼だニャ。家で育った猫は危険意識が低くて困ったものである」
「全く。せめて御守はちゃんとしろって感じだよな。猫が可愛いのは分かるけどよ」
 困ったものだと紅華禰(p3p008277)と『隻腕の射手』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)周辺を窺いながら進む。ただし、周辺を窺うと言ってもアルヴァがいるのは地上ではなく、空中だ。
「――マジで世話の掛かる猫め。無事でいてくれたらいいんだが」
 地上と空中の両面からにゃん吉を探す作戦である――
 案外に屋上で日向ぼっこでもしているのではないかと。故に『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)と共に眼を張り巡らせるものだ。空を飛んでいる事が気付かれぬ様に慎重に声を潜めながら……
「にゃん吉君……さぁどこかな! ふふん、ネコ科の頂点、虎のように獰猛な軍人である私が必ず助ける! さー出ておいでーおやつもあるよー……と、探したい所だけど、声は要注意だね。ふふっ、虎はいつだって抜かりないよ……!」
「ふむふむ。じゃが、いつ何時にぬりかべらが現れるか知れぬ……用心はせねばな!」
 そして地上では紅華禰と共に『ナチュラルボーン食いしん坊!』ニャンタル・ポルタ(p3p010190)が探偵の如く周辺を探るものだ。街の北側より南の方へと、にゃん吉を捜索していく――
 だが同時にニャンタルはぬりかべを警戒する事も忘れぬ。
 奴らの偽造がどこにあるのか。どこに潜んでいるのか。
 それを看破しうることが出来れば大きく有利となるのだから――そして南側でも。
「斯様な場所に迷い込んでしまったとあっては、さぞや寂しい想いをなさっておいででありましょう。早くお助けせねばであります……はてさて一体どちらを宿にされている事やら」
 探索が行われている。その一人が『鬼菱ノ姫』希紗良(p3p008628)だ。
 彼女は班として別れる前にファミリアーで使役した小鳥を託している――それを用いて簡易なれど連絡を取れる手段としているのだ。取り決めた合図が出ればにゃん吉を見つけたという合図だと。
「アッシュ殿は此度の戦、空中に上がられるとの事。
 空を舞えるとは、キサも飛んでみた……ではなくて。頼りにしているでありますよ」
「ははは。空を飛べるのは衣装のおかげだからね、機会があれば貸してあげるよ……と言いたいところだが、流石にサイズが合わなさ過ぎかな。これは希紗良ちゃんには大きいだろうね」
「むむっ。なにやら子ども扱いされたような……気のせいでありますか?」
 さすれば、空へと飛翔する前に希紗良と言の葉を交わすのは『スモーキングエルフ』シガー・アッシュグレイ(p3p008560)である。抱えて飛ぶ事も出来ない訳ではないだろうが――それでは『自分で飛んでる』感は無い筈だ。希紗良の望みに沿えぬと軽く応答すれば。
 往く。アルヴァらと同様に空からにゃん吉がいないか眺めて。地上からは希紗良と『特異運命座標』鬼灯 長門(p3p009738)に『特異運命座標』嘉六(p3p010174)の三名で行動だ。
「猫ちゃんの捜索……にゃん吉さま。聞く限りさぞかし立派な体をしているんでしょうね。それもヤオヨロズに飼われていたという事であれば、毛艶も良いだろうし後程余裕があれば堪能……いえ、いえいえ。なんでもありませんよ」
「――いやしかしよ、なんか、こう……デカすぎね? 幾らなんでもってーか……」
 長門はいざやにゃん吉を保護出来た時に備え、乗用馬を街の入り口に待機させて此処に来た。広き視点をもってして周囲を探索し――また、妙な温度が無いか。温かな猫の気配がないかと目を凝らすものだ。
 同時。嘉六はにゃん吉の姿を脳裏に思い浮かべ……しかしあれは『ふくよか』の範囲にないのではと、運ぶのはパスしたい心算で溢れている。うん……
「うおーい猫。どこだ猫。
 ……はあ。ま、呼びかけて出てくる様な素直さがありゃ苦労はしねぇか。
 猫じゃらしでも持ってくりゃよかったか?」
 ともあれ雑念払う様に頭を振って。周囲を警戒しつつ進む。
 猫を見つけるのが先か妖怪との接触が先か……分かりはせぬのだから、と。


 ゴーストタウン。その名に偽りなく街は静寂に包まれていた。
「ううむ……ニャンとも言い難いが、近くに居る様な気はするニャ。
 しかと出会えたら少しは外の危険を教えてやらんとな、ニャハハ!」
 紅華禰は捜索の為、スターバードの効力をも用いてファミリアーにて猫を二体使役するものである――主に狭い場所や薄暗い場所を中心に捜させるのだ。如何にふくよかな猫と言えど、その辺りを好むのに変わりはあるまいと。
 無論ファミリアーだけで探すのではなく己が耳も澄ませ周囲の音を窺う事も忘れない。
「さてさてどこに潜んでいる事か。ぬりかべの前に見当は着けておきたい所じゃな。随分と温室育ちの様ではあるし、デブ猫となればあまりに狭すぎる所はおるまい――日向ぼっこが出来つつ、ある程度己が空間を得られる様な場所にいるんではないかの?」
 同時。ニャンタルもにゃん吉捜索に全力を尽くすものだ。
 家の中を見据えて――しかし一切の気配がなければ次へ、と。この辺りに住む者らの存在がない故にこそ、生物の気配が判断しやすいのだけはゴーストタウンである事の利点といえるだろうか。
 少しずつ捜索の範囲を広げていく。そして空の方でも。
「うーん? にゃん吉君、いないね。ぬりかべも見当たらないのは幸いかもしれないけど」
「つっても猫一匹より妖怪の方が多いんだろうしなぁ……早く見つけたい所だぜ」
 マリアとアルヴァが全霊をもって捜索していた。
 空から地上を眺めれば幅広く視点を広げる事が出来ている、が。にゃん吉の姿はまだ見えぬようだ。上手く見つける事が出来ればマリアは空に幻影を書きて地上の者達にも見えやすい合図を出すつもりなのだが――全く。どこににゃん吉君は居る事か!
 そして南側の方でも長門が式神を用いてにゃん吉がいないかを探していた――
「昼間も薄暗いとなると、日向ぼっこは望めないですね……
 やはり屋上側にいるのでしょうか? ともあれ……
 おーい、猫ちゃーん。でておいで~」
 鍵がかかって入れなかったり、或いは扉が壊れていたりする場所へとは式神を差し込むのだ。周囲を俯瞰する様な広い視点をも持ってして……だが中々見つからない。もしかすれば屋上などのやはり太陽に接しやすい所にいるのでは?
「あり得るでありますな。ですが、猫故やはり狭いところに隠れているやもしれませぬ……いずれにせよもう暫く地上より目を張り巡らせましょうか」
 しかしそれならばそれで空にいる者達が見つける筈だと希紗良は言う。
 このまま地上と空の両面から探すのがきっと効率が良い筈だと。
 もしかしたら向こうの班が先に見つけるやもしれぬし――と、思ったその時。

「んっ……待て、今なんかそこの通路を横切らなかったか?」

 行動を共にする嘉六が――視界の端にて『何か』を見かけた気がした。
 長門自身も俯瞰の視点により微かに見えた。それはぬりかべ、にしては小さい影……
 まさかと思い歩を進める。
 ゆっくりと。驚かせぬ様にゆっくりと通路の先を覗き込めば――
「……ンニャア?」
「いやがったぞ――ああ間違いないわ。あれがにゃん吉だわ」
「なんと、まぁ……こんな物置に隠れていましたか。
 周囲を囲ってるから居心地がいいのでしょうかね」
 いた。にゃん吉だ。情報通り――滅茶滅茶ふとましい。
 それは物置小屋。周囲は壁で囲まれており、猫にとって過ごしやすい場所と言えるような場所だ――全く。こんな所にいるとは、人騒がせな猫である……
 ともあれならばと手を伸ばす。
 確保した後に猫を見つけた事を示す、巨大なクラッカーを嘉六は準備した――瞬間。

「嘉六君――まずいぞ、ぬりかべだ!! 後ろにいる!!」

 直上。響く声は――シガーか!
 咄嗟の判断。嘉六はクラッカーを天に向けて鳴らし、同時に背後を振り向くものだ。
 超絶の反射神経と共に。瞬時に愛用のリボルバーを構え、銃撃を行いながら。
 そこにいたのは――情報通り巨大な、壁。
「なんと――にゃん吉殿! おさがりを!! ここはキサ達に任せるであります!」
「ンニャー! ニャニャニャー!」
「おっと、音にビックリしたのか? まぁまぁ暴れないように、な?」
 であればと希紗良も戦闘の構えを取るものである。
 にゃん吉を守護する様にぬりかべ側へと立ち――しかし怯えたのかビックリしたのかにゃん吉がちょっとじたばたし始めた。やれやれ、こういう事態もあるかもしれなかったから可能であれば迂回して回避したかったのだがとシガーは思考して。
「く、くぅ……これは、本当に重いですね……かなりずっしりと、とぉ!?」
 それでもにゃん吉を護るべく長門が抱っこ――したらホントに重かった。マジで重ッ!
 上手く動く事が出来ない程だッ……しかし、泣き言を言う暇もありはしないと長門は周囲に戦の加護を与えんばかりの強化を施し。それを受けた希紗良や嘉六、シガーがぬりかべへと撃と紡ぐものである。
 嘉六が引き付けんとし、希紗良とシガーの抜刀一閃。
 されど――ぬりかべはものともしない勢いで『倒れて』きた。
「くっ、にゃん吉殿を逃がすであります!!」
 それは全てを圧し潰さんが如く――
 希紗良の声。咄嗟ににゃん吉を抱えながら建物の中に体ごと滑り込む長門であった、が。
「ニャー!」
「ああ、にゃん吉さま!」
 瞬時の事。にゃん吉がするりと長門の腕の内から逃げ出した。
 まずい。ここで見失う訳にはいかない。ぬりかべも危険だ!
 すぐさま追うイレギュラーズ。と、そこへ至ったのは……

「…………ニャー(お前がにゃん吉だな? ずっと捜しておったのだ)」
「ンニャア?」

 猫と心交わす術を持つ――紅華禰であった。


 紅華禰は、隅っこで警戒するにゃん吉を落ち着かせるべく言の葉を。
「ニャーニャー(此処は化け物が出て危ないし、地面が冷たくて寒かろう。さぁ来るのだ)」
「ンニャニャ……?」
「ニャオン(家に帰ろう。家族が待っておるぞ。温かい食事もある筈だ)」
「ン~~~ニャ……」
「……ニャウン?(帰りたくないとは言うまい。そんな事言うと儂が代わりに飼われて贅沢三昧を送ってやるぞ?)」
「ンニャー!!!」
 咄嗟。紅華禰に猫パンチアタック! やれやれ、我儘な奴だと吐息を零すものだ――しかしパニックに陥ったにゃん吉をどうにか宥める事には成功した。さぁ後はどうやって離脱したものか。
 外にはぬりかべ。イレギュラーズが戦闘に入っているとはいえ下手に出れば危険が――

「しゃらくさい! 壁なんて――打ち倒せばいいだけの話だよね!!」

 瞬間。援軍として現れたのは――マリアであった。
 その身は膨大な紅雷の力に溢れており、まるで電撃そのものが如く。
 超速度にすら至らんとする雷の化身は嘉六が放った合図の下に到来したのだ――
 直後に穿つはそのままの勢いを保ったままに。
 自身を弾丸の如く見立て、白雷出力での電磁投射砲の行使をすればぬりかべを貫かん。
「やぁ遅くなったね! 皆、大丈夫かい!?」
「マリア、まだだ! ぬりかべがそっちにもいるぞッ!!」
 紅き閃光が地上で戦っていた長門らを見据える、ものの。
 言葉を即座に繋いだのはアルヴァだ。優れた機動力を有する彼は、マリアの複数回にわたる行動速度にすら劣らない――迅速に戦場に到達した彼の目に映ったのは、別方面より至ろうとするぬりかべ。
 あちらも倒さねばまだ危機は脱していないと。故に。
「すばしっこさなら自信があんだ、潰してみろよ――その図体で出来るならなァ!」
 更に超越へと昇華する。神の軍馬の如き神速が彼に至れば、誰が追いつけようか。
 注意を引く様に低空飛行。ぬりかべから放たれる重力波が空間を歪め――
 しかし。彼の速度はその重力波が放たれるよりも早く撃を成した。
 彼もまた雷の申し子の様に。
 全てを置き去りにする閃光が突き走ったかと思えば――ぬりかべに直撃。
 その全身を衝撃にて震わせるものだ。
「いやはや、凄まじいものですね……私は非力なもので、なんとも」
「――まずいぞ! ぬりかべの連中……どうやら地中から生える様に出現しているようじゃ。このままだと囲まれる――走るのじゃ!」
 その光景に支援特化とも言える長門はなんとも圧巻されるような気分を味わうが――合流したニャンタルの言うように、余裕はなさそうだ。戦闘の気配を感じてか潜んでいたぬりかべが増えてきている……!
 ニャンタルの一撃がぬりかべに放たれる――も。これは急がねばならんと思うものだ。
 拳一撃。集中力と共に織り交ぜる変幻自在の攻撃が活路を開いて。
「よし急ぐか――って、ぬ、ぉ、ぉお!? 重っ!? てめ、何食ったらこんなデカくて重くなるんだ!! 運んで貰ってるってのにふてぶてしい顔しやがって……痛っ、暴れんな! 後ろ足で蹴ってくんなコラ――!」
 故、急いで運び手としてアルヴァが来るものだが――猫の習性。後ろ足蹴りアタック! なんでだ! こら! 遊んでるんじゃないんだぞ! ええい遊びたい気持ちは夜妖憑き『猫神様』でなんとなく察せられるが、後にしろ後に!!
 ともあれ脱出を急ぐべく、アルヴァが運ぶものだ。
 やはりずっしりと重さを感じるが……しかし彼の機動能力は卓越している。
 ある程度にゃん吉が加わろうとも尚に速いのであれば。
「はっ。そういえばにゃん吉殿に怪我はないでありますね?
 然らば御身、しかと守るであります! 道中はお任せあれ!」
「よし来た――おいおい、でかぶつよ。どこ見てんだ、こっちだぜ」
 その動きを援護するように希紗良と嘉六が動くものである。
 変幻邪剣。魔性の切っ先で希紗良がぬりかべを切り刻まんとすれば、にゃん吉より視線を逸らすべく嘉六が立ち回る。撃鉄に妖しく狐火が灯り、放たれる一閃はぬりかべの様な巨大な存在外す方が難しい――
 勿論敵の反撃もあるものだが嘉六は物ともせぬ。
 奴らの齎してくる負の要素など一切合切効かぬかの如く……
 更にはそれ以上近付くならシバき倒すとばかりの気配を醸し出しなが、ら。
「ま、最終的には猫だけじゃなく俺たちもこの街から脱出しないといけないしな……
 殲滅するつもりで行こうか。倒れてくる攻撃にだけは――皆注意だな」
 更にシガーも敵の挙動を観察しながら応戦するものだ。多重に残像を生じる速度を伴いてぬりかべを翻弄せん――重力波を放つのも倒れるのも動きが大きく予測出来て戦いやすくはあるものだ。
 ――尤も敵の数がどれほどいるのかは未知数。
 退路確保の為にも避けられる攻撃は避けようと機敏に行動するものだ。
「今だ――一角が崩れたニャ! ぬりかべ共を押しのけて、突き進むんだニャ!」
「重力……厄介だけど、攻撃を立て続けて余裕を出せないようにしよう! そうすれば行けると思う!」
 直後。倒れ込んできたぬりかべに撃を放ちながら相打つ紅華禰が言葉を叫んで。
 マリアが近場のぬりかべに連撃を叩き込むものだ。
 脱出の邪魔はさせない。
 誰かを護るための軍人である己が――ぬりかべらの悪意に押しつぶされようものか。
 走る。道中で幾度ものぬりかべが出てくるが、奴らの足は遅い様だ。
 故に囲まれたりしない限りは振り切る事が出来て……

 やがて街の外へと到達する。

 長門が用意していた馬車に乗り込んで――そこには保護したにゃん吉も当然いて。
「ふふ! 良かったね! でもね、少し痩せた方がいいよ? ご飯が美味しいんだろうけど、こんなに太ってちゃいつか後悔する日が来てしまうかもしれないからね!」
「ンニャン?」
 ちゃんと分かってるかなぁ? にゃん吉の肉球を触りながらマリアは首を傾げるものだが、最終的にはにゃん吉自身の意志が大事だし良しとするか。
「はぁ、しかしまじまじと見ると……本当に重そうだな。
 ま。痩せてるよかデカい方がいいよな。女も猫も」
 ……あん? なんだよその目は?
 嘉六。頭を掻きながら、なんとなく感じた視線に周囲を見据える――そして。
「イッテェ! お前、帰ったら絶対ダイエットさせてやるからな……こら! なんでお前俺にだけ後ろ足蹴りアタックしてくるんだよ!! お前、マジさては俺の言葉分かってるだろ!!?」
「ンニャ~?」
「にゃん吉どの。ちょっと、ちょっとだけもふもふしても酔いでありますか?」
 くそ! ふてぶてしい声出しやがって!!
 何故かにゃん吉に沢山蹴られるアルヴァ。何故か気に入られたのだろうか……? ともあれ安全になったので希紗良はにゃん吉に猫じゃらしを振りながらその毛並みを堪能するものだ。ああ~ふくよかな猫のふくよかな質量と素晴らしい毛並み~!
「はぁ。さてさて……とんだ追いかけっこになりましたが、終わりよければ全て良しでしょうか」
「――とはいえにゃん吉。家族にあまり迷惑をかけないようにと注意だニャ」
 そして長門はにゃん吉の無事な様子を確認すれば――馬車を走らせるものである。
 揺れる馬車。その中で紅華禰はほんの少しばかり警告を。
 あんまりオイタが過ぎると、先程の警告――嘘ではあったが真になるやもしれぬと。
 猫同士の会話にて伝えるものであった。

成否

成功

MVP

紅華禰(p3p008277)

状態異常

なし

あとがき

 依頼お疲れさまでしたイレギュラーズ!
 にゃん吉は皆さんの手で無事に保護されました。でもにゃん吉……痩せろよ……!
 機動力に影響があるレベルってどれぐらいふくよかなんでしょうね。
 ともあれMVPはにゃん吉と心交わせ落ち着かせた貴方へ。

 ありがとうございました!

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