PandoraPartyProject

シナリオ詳細

黒く広がる妖

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 豊穣の地も穏やかになり、この1年は比較的平穏に過ぎた。
 おかげで、農村部では鬼人種達が野良仕事に全力で精を出すことができ、今年は昨年以上の実りを得られそうだ。
「大きく育ったなあ」
 サクラダ村の人々は収穫の時を迎えて笑顔を浮かべる。
 両手で抱えるほどに大きな大根。籠一杯に採れたサツマイモ。
 作物は挙げればきりがないほどに色とりどりのものが畑で実り、間違いなく今年は豊作だと皆太鼓判を押す。
 これでしばらくは安泰だと、村人達は喜び合っていたのだが……。

 ここ最近、夜になると村に黒い何かが集まっている。
 折角、国の情勢も、村の食糧事情も改善したというのに、村に忍び寄る影に村人は怯え始める。
 それは少しずつ、確実に広がる。同時に、ペットが怯え、子供達も夜震えながら眠れずにいたようだ。
 徐々に広がる黒いもの。それらはある時一気に広がり、村を包む。
 ある日の夕暮れ時、いつの間にか虚空より村のあちらこちらに現れたのは、妖の群れ。
 黒い体躯で爛々と目を光らせるウサギ、同じく真っ黒な体毛で空を舞うサギ、そして、毒黒い霧を発する巨大な頭蓋骨。
 それらは少しずつ力を蓄え、ここぞと数で村を覆う妖達。
「「うわああああああああっ!!」」
 村人達はそれらに襲われないようにと家屋内に閉じこもる。
 一部、人々を狙って民家を破壊しようとする妖もいたが、彼らは収穫間近な作物も狙っている。
 クックックッ……。
 不気味な霧を発する一際大きな頭蓋骨。そいつは低く、ひどく耳障りな声で笑っていたのだった。


 カムイグラ此岸ノ辺。
 R.O.Oでの依頼が集中する状況だが、混沌でも事件は起こっている。
「以前、病魔を運ぶ複製肉腫に襲われた村の様子を覗いてみたのですが……」
 夜乃 幻(p3p000824)が初めてその村……サクラダ村を訪れたのは1年ほど前。
 今回、その村の様子を確認してみたところ、黒い何かに覆われるという状況もあって、幻は何か事件が起こるかもしれないとローレットに相談を持ち掛けた。
「はい、間もなくこの村は虚空より現れる妖の群れによる襲撃を受けてしまうようです」
 『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)も幻の話を受け、自身の持つ予知の力で状況を確認する。
 全てを把握することはできない彼女の力だが、村へと黒く広がるのは妖によるもので間違いない。
 妖らは夕暮れ時、大きな頭蓋骨の姿をした個体を中心に、黒いウサギと黒いサギの妖を引き連れて村の住居、人々、そして畑を荒らすのだという。
「突発的な襲撃もあって全てを守るのは難しいと思いますが、できるだけ守り切るように願います」
 サクラダ村は鬼人種数十人が暮らす小さな村で、野菜を中心とした農作を行うのどかな村だ。
 放置していれば、たとえ人的被害がなくとも作物や畑が荒らされて物的被害が拡大する。逆もしかりで、畑ばかりを守っていても、妖は人々を狙うべく民家を破壊して人々を襲うことだろう。
 村には急行しても、夕暮れ時となる。襲撃に間に合うかどうかはケースバイケース。即座に対処できる判断力、行動力、そして、妖を倒す実力全てが求められることだろう。
「全てを倒せば、村人達が鍋をごちそうしてくれます」
 村でとれた野菜を入れた寄せ鍋、みそ鍋を振舞ってくれるが、具材を持ち寄って自分の食べたい鍋を作ることもできる。
 逆に自分の鍋を振舞って、イレギュラーズの仲間やサクラダ村の人々をもてなすのもいいだろう。
「ともあれ、まずは妖討伐です」
 村も被害が甚大となれば、鍋どころではなくなるはず。
 そんな事態は避けてほしいとアクアベルは参加するイレギュラーズへと願うのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 こちらのシナリオは夜乃 幻(p3p000824)さんのアフターアクションによるシナリオです。
 カムイグラの農村に黒く広がる妖が現れるとの情報があり、その実態調査と討伐依頼が出ておりますので、解決を願います。

●概要
 黒く広がる妖らの討伐

●敵……妖×多数
 多数現れ、村と畑を襲う3種の黒い妖の討伐を願います。

○アヤメウサギ×8体(うち、1体が大柄なリーダー)
 黒ウサギ。全長1~1.5mとウサギにしてはかなり大柄。ウサギのリーダーは3mほどあります。
 収穫間近の野菜を狙う他、腹を空かせれば人をも襲うという恐ろしい殺人ウサギです。ボスは巨躯を活かした体当たりや、ジャンピングプレスなども追加で行います。

○ヨドミサギ×10体(うち、1体がサギの長)
 黒い色をしたサギ。1.5~2m。群れの長は2.5mほどと一回り大きい体を持っています。
 通常個体は鋭いくちばし、汚れた羽散布を。長は強烈な羽ばたきによって畑の作物を巻き上げ、群れ全体でそれらを持ち帰ろうとするようです。

○マガズガイ×3体(うち、1体が群れ全体のボス)
 黒い霧を発して浮遊する黒い頭蓋骨。全長1.5~2m。ボスは4mほどもあり、群れ全体も統べています。
 かぶりつき、ボディプレス、呪力弾を使い、ボスは広域に呪詛の霧を発してきます。

●状況
 豊穣にある農村の一つ、サクラダ村に力を蓄えた妖の力の広がりが確認されています。
 夕暮れ時、虚空より突然現れる妖の群れから農民と畑を守りつつ、これらの撃退、討伐を願います。
 なお、OPで説明もありますが、拙作「病魔を運ぶ『ヤカン』」と同じ舞台です(前回シナリオを読む必要はございません)。

 事後は村の収穫物を使って、鍋など如何でしょう。指定があればそちらを優先して、なければ寄せ鍋、みそ鍋をメインに村人たちが作ってくれます。
 少しずつ寒くなってきていますので、ほっこり温まりつつお召し上がりくださいませ。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 黒く広がる妖完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年11月29日 22時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
鹿ノ子(p3p007279)
琥珀のとなり
カナメ(p3p007960)
毒亜竜脅し
志岐ヶ島 吉ノ(p3p010152)
手向ける血の花
ニャンタル・ポルタ(p3p010190)
ナチュラルボーン食いしん坊!
シオン・シズリー(p3p010236)
餓狼

リプレイ


 夕暮れ時、此岸ノ辺より豊穣へと至ったイレギュラーズらは、現場となる村へと急ぐ。
「懐かしのサクラダ村で異変が起きたようで御座いますね」
 『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)が昨年の夏にこの地を訪れた時、病魔を運ぶ妖による襲撃を受けていた。
 今回、収穫末期であるこの時期に、多数の妖が現れるとの情報を受け、一行は向かっていたのだ。
「ひと仕事終えたら鍋が食べれると聞いて飛んできたぞ! ……というのは建前で、困っとる者がおったら放ってはおけぬしな」
 帽子を被った黒衣の『ナチュラルボーン食いしん坊!』ニャンタル・ポルタ(p3p010190)は人命に関わるならなおさらと意気込みを見せる。
「何何、お礼は鍋でいいぞぃ!」
 その後、ちゃんと建前じゃぞと小さく笑うニャンタルはしっかりと本音も漏らしていた。
「……妖、ッスか」
 一方で、普段は明るい『琥珀の約束』鹿ノ子(p3p007279)だが、ややトーン低めに呟く。
「野菜泥棒なんてひどい事する妖もいるんだね、みんなの大事な食事を奪うだなんて許せないよ!」
 その双子の妹、『二律背反』カナメ(p3p007960)は姉との依頼とあって気合を入れる。
「妖ってヤツも人を襲うだけじゃなくて野菜も食ったりするんだな」
 鉄帝出身『餓狼』シオン・シズリー(p3p010236)は畑を襲う妖の存在に興味を示すが、ある意味で野生動物と変わらないと感じて。
「人様が大事に育てた農作物を横から掻っ攫うとかふてぇ野郎どもだ!」
 大柄な豚の獣人、『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)は普段から稲作などに従事していることもあり、害獣の存在に怒りを露わにしていた。
「ただ、厄介なのは、一般人にゃどうしようもねえってところか」
 シオンの一言に、狐の獣種『無限陣』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)が頷いて。
「食料を取るだけならまだしも……ヒトを殺めるのならただの獣ではない、か」
 いずれにせよ、ヒトに害する存在である以上、処分するのに変わりないとマニエラは素っ気なく告げる。
「畑も村の人も守らなくちゃいけないのは大変だけど、やるしかないよね」
「鬼人種の皆様をお守りしたいところで御座います」
 カナメ、幻がサクラダ村の人々の助けようと意気込むと、それまで黙っていた豊穣の武人である『風雅なる冒険者』志岐ヶ島 吉ノ(p3p010152)も口を開く。
「この冬の備えも必要な時期に、作物も命も狙う妖とは危険極まりない」
 吉ノは黒く広がる妖という表現に面妖さも感じてはいたが、刃の握る手に力を込めて瞳鋭くこう続ける。
「我が刀の錆にしてくれよう」
「じゃあ、みんなでお鍋をするために頑張ろー☆」
 カナメは元気に掛け声を上げたが、大好きな姉の様子がいつもの違うことに気付いて。
「……お姉ちゃん? 元気ないけど、大丈夫?」
 妹の声に、鹿ノ子は僅かに反応するが、なおも思考を巡らす。
 ――世界は回っている。自分の悩み事、体調、そうした鹿ノ子の状態など関係なく、この村人達は脅威にさらされている。
「……豊穣のため、そして遮那さんのため、僕は、戦うしかないんス」
 今は忘れようと小さく首を振り、鹿ノ子は妹や仲間達へとついていくのである。


 さて、村が近づいたことで、一部のメンバーが一層速度を上げて村に向かう。
 先発として、村へと到着したのは、幻、ゴリョウ、吉ノ、シオン。どうやら、妖の群れより早く到着できたらしい。
「皆様、僕達に協力を願います!」
 徐々に広がる黒い何かに怯えていた村人達を目にした幻は声をかけ、村長の家など広い場所への避難、合わせて腐った作物などを集めるよう願う。
 備えの時間はほとんどないとみる吉ノだが、できる範囲でクズ野菜を譲り受けてもらえるようにと家屋や畑を回っていく。
 その作物がある程度集まったところで、ゴリョウが料理スキルで香りが引き立つよう炒める。
 そのゴリョウが調理したクズ野菜を、幻が陣地構築のスキルを活かし、「クズ野菜戦線」と称して畑から離れたところへと並べていった。
「食えりゃあなんでもいいって感じなら、こんなのでも食いつくだろうさ」
 そう言うシオン自身だって同じ状況ならそうするだろうと呟きながらも、しかるべき場所へと野菜を設置していく。吉ノもある程度クズ野菜を集めたところで、設置の手伝いへと切り替えて動いていた。
 ゴリョウの狙いとしては、嗅覚が鋭いウサギをターゲットとしておびき寄せる意図がある。
「どこから来るのか分からねぇなら、むしろこちらから進行ルートを絞らせるよう囮を用意するってわけだな」
 目の前に盛られた香り高い野菜と、掘り返す手間の必要な畑の野菜。どちらを選ぶかは明白だ。
 このクズ野菜ラインを防衛線とすることで、村人の居る中心部へと妖が突っ込むリスクが減るだろうというゴリョウ発案の作戦だ。
 加えて、幻を中心に畑の作物に土を被せ、急ごしらえではあるが柵を作って侵入を防ぐ一助とする。
 その間に、他のメンバー達も駆けつけ、カナメが鹿ノ子と人々の誘導に動き始めて。
「大丈夫! みんなも野菜も、カナ達が守ってみせるから!」
 カナメは畑から遠い村長の家へと向かうよう村人達へと指示を出す。
 その間、周囲を警戒していた鹿ノ子がこちらへと近づいてくる妖の群れを注視する。
 群れを構成するのは黒い集団、アヤメウサギ、ヨドミサギ、そして群れを統べるマガズガイ。総数は20体ほどだ。
「それぞれ、狙いは違うッスけど……」
 ハイセンスとエネミースキャンで敵の動きの把握に努める鹿ノ子。ウサギとサギは明らかに農作物優先。ズガイはあわよくば人命を奪い取ろうとしているようだ。
「ウサギとサギは先頭、頭蓋骨は後ろに統率者がいるッス」
「うん、わかったよ」
 近づいてくる敵は畑を狙っている。ある程度避難が進んだところで、カナメは鹿ノ子と敵の迎撃へと向かう。
 すでに敵に不意打ちに備えていたマニエラはクズ野菜へと一直線に向かうウサギやサギを見据え、スキルによって視野を広め、追撃態勢をとっていた。
「さて、妖先陣は見事にクズ野菜に気を取られておるな」
 ニャンタルは仲間の作戦が功を奏したことに頷いて。
「よし、前衛で暴れるとするか!」
 アタッカーとしての役割を果たすべく、ニャンタルは前方へ飛び出していくのである。


 黒く広がる妖の群れ。
 少し前から、サクラダ村の周囲に陣取ったマガズガイが黒いウサギやサギを呼び寄せ、その規模を拡大させていたと思われる。
 それもあってか、群れは完全に統率できているとは言い難く、先行して飛び出していたウサギがクズ野菜ラインに到達していた。
 ゴリョウはその囮となるクズ野菜群ですらも本気で守ろうと、先陣を切ってくるアヤメウサギを迎え撃つべく突っ込んでいく。
「ぶははっ! 調理中に纏った野菜の香りとでっかい腹肉はさぞかし食いでがあるように見えるだろうよ!」
 自身の存在をアピールし、ゴリョウはウサギどもの攻撃を一身に引き受ける。
 実際、多数のウサギがゴリョウへとかぶりつこうとしていた。
 そして、それらのウサギを捉え、マニエラが呪符に魔力を込めて。
「味方に当たらないよう気を付けないとね」
 マニエラが展開するのは、霧氷の嵐。渦巻くように前方へと放たれたそれらに、ウサギらは凍えてしまう。
 それだけでマニエラは止まらず、高濃度の魔力を圧縮して蹴りかかり、ウサギを仕留めにかかっていた。
 しかしながら、ゴリョウも全ての敵を抑えきるとはいかない。
 狡猾なウサギは大きく迂回していたし、空からはヨドミサギも飛来してくる。
「こちらだ、私が相手になるぞ」
 吉ノは引きつけた妖をゴリョウの方へと誘導し、敵が散らばるのを防ぐよう動いていた。
 そうした仲間の体力を幻は逐一確認しながらも、クズ野菜戦線の内側へと入ろうとするウサギやサギをブロックし、畑へと立ち入らせない。
 その上で、幻はステッキを操って魔術の刃、あるいは魔砲を飛ばして応戦する。
 戦場を走り回るシオンは見落としがないよう広域俯瞰で全体を見回し、敵の配置を確認しながら倒すべき敵を逐一チェックし、討伐に当たっていた。
 マガズガイは後方で様子を見たままだったが、今は畑を狙う小物が先。
 ウサギの大半はゴリョウが抑えてくれているが、空を飛び回って急降下してくるサギがかなりうっとうしい。
 シオンはそうしたサギ目掛け、焦燥破刃から斬撃を飛ばして撃ち落とす。後は汚れた羽を撒き散らす前に懐へと潜り込み、至近距離から拳を叩き込んで倒してしまう。
 だが、もう1体、畑に向かうサギがいたが、シオンの位置からでは届かない。
「すまねえ、そっちは任せた」 
「させはしないッスよ」
 シオンの呼びかけもあり、鹿ノ子がローテンションながらも冷静に野菜を狙って降下してくるサギに対して白妙刀【忍冬】を構えて。
「猪・鹿・蝶……」
 鮮やかに刃を振るい、3連撃を叩き込む。
「アアァ…………」
 苦しむサギは大きく翼を羽ばたかせるが、鹿ノ子はしっかりと耐えて次なる一撃に備え、さらなる連撃で仕留めていた。

 ゴリョウの集める敵の討伐も進む。
 吉ノは向かい来るウサギの勢いを卓越した防御でいなしながらも、妖刀で見事に切り裂いてみせる。
 カナメも緋桜【紅雀】で切りかかりつつ敵の注意を引いていたが、自身よりも大きなアヤメウサギリーダーを相手取る形となる。
「もふう」
 そいつは見た目に似合わぬ跳躍力を見せ、カナメに向けてジャンピングプレスを見舞ってくる。
「体格の差から来る強めの攻撃、最高……うぇへへ……♥」
 地響きすら起こす一撃だったが、カナメは恍惚としながらもしっかりと反撃を見舞っていた。
 ニャンタルは応戦を続ける妖全てを仲間達が引きつけたことを確認し、カナメが相手するリーダーへと殴り掛かる。
 ニャンタルの拳を受けていたリーダーはふてぶてしい動きで体当たりを繰り出してくるが、再びカナメが受けたところで、魔術と格闘の合わせ技でリーダーを圧倒し、その腹を切り裂く。
「やはり、感覚で動く方が我には合っとるの」
 崩れるアヤメウサギリーダーを一瞥し、ニャンタルは頭上を舞うヨドミサギを相手取っていくのだった。


 気づけばアヤメウサギがほとんど倒れていたが、入れ替わるようにしてマガズガイが音もなく攻め入ってきていた。
 黒い霧を発する巨大な頭蓋骨達は大きな口を開けて食らいつき、さらに呪力弾を発してくる。
 仲間達の引きつけにもまだかかっていなかった敵。
 それらが暴れるのに巻き込まれ、ヨドミサギへと霧氷の嵐を巻き起こしていたマニエラは対処が間に合わず、体力を大きく消耗してしまう。
 パンドラを使うことでマニエラは黒い霧の中尻尾で態勢をとりつつヨドミサギの殲滅を急ぐ。彼女の支援には幻が動き、自身の力を回復魔力へと転じて癒しを振舞っていた。
 なお、マガズガイ2体の抑えにはカナメが向かう。
 マガズガイ……人物大ほどもある頭蓋骨は何とも不気味な相手。
 ウサギリーダーに続けての引きつけではあったが、彼女に辛そうな様子は見られず、むしろ、痛みを感じて嬉々としていたようだった。
 引付役となるゴリョウの周囲は若干クズ野菜が食い荒らされ、柵が破壊された部分もあったが、畑自体は無事そのもの。
 ヨドミサギを誘導してきた吉ノはそれらの特攻に合わせて刃を刻み込み、黒い羽根を地面へと落とす。
 翼さえもいでしまえば、ヨドミサギもほぼ無力。吉ノも難なくとどめを刺していた。
 ギャアアアアァァァ!
 ヨドミサギの長も配下が倒されたこともあってか、大きく翼を羽ばたかせて威嚇してくる。
 仲間達が抑えるサギの長は強烈な羽ばたきによってクズ野菜を巻き上げ、残る配下と共に持ち帰ろうとしたのだが、ほとんど倒れていて叶わぬ様子。
 そこを鹿ノ子が狙う。
 統率した者がいなくなれば、戦いやすくなるはずだと、彼女は苛烈に連撃を叩き込む。
 猪・鹿・蝶。
 最後の一撃の刃を首深くに刻まみこまれ、サギの長は自らを地に染めつつ倒れてしまった。

 残るはマガズガイのみ。
 2体は荒ぶるままにカナメへと攻撃を仕掛け、残る巨大な1体をゴリョウが受け持つ形となる。
「これ以上、物騒なものを撒き散らさないでもらおうか!」
 下手に呪詛の霧を展開されると、厄介なことになる。ゴリョウは身を挺してそれを抑え、少しずつ体力を削る。
 その間に、他メンバーが人物大の頭蓋を破壊すべく、攻撃を重ねて。
 敵の数が減ったことで、幻もブロックや回復から攻撃の回数も増やし、魔術の刃を飛ばして頭蓋に亀裂を増やしていく。
「畑はもちろん、村人の命は奪わせないのじゃ!」
 その片方の頭蓋の亀裂が大きくなったところで、ニャンタルは拳の殴打を連続で浴びせる。
 さらにニャンタルが鮮烈なる蹴りを見舞えば、頭蓋1体の全身が崩れ落ちる。
 もう1体もまた、引きつけていたカナメが両手の暗器で切りかかり、頭蓋に付与した毒でじわじわと弱らせ、追い詰める。
 頭蓋はボディプレスでカナメを倒そうとするが、吉ノがその勢いを利用した妖刀で切りかかり、頭蓋を砕いて見せた。
「…………!」
「煙を吐くのがこいつであれば、コレが消えればなんとか収まるのだろう?」
 持ち直したマニエラが仲間と共に、群れを統べる巨大な頭蓋と対する。
 すでに群れは全壊に近い状態だったが、この群れのボスを倒せば新たな敵を呼び寄せられることもなくなるはず。
 仲間の攻撃がそいつへと集まる中、シオンは自身の生命力と引き換えに髑髏の呪いを刻み込む。
 それでも、呪詛の霧で応戦し、ボスは範囲攻撃でイレギュラーズを追い込もうとしてくるが、丁寧に群れへと対処した一行はそいつを抑え、数で圧倒する形となる。
「人のモンに手出したらどうなるか、覚えて死にな!」
 シオンは一気に畳みかけ、傲慢な左でその顔面を破壊してしまう。
「…………!!」
 そんな馬鹿なと体を震わせ、マガズガイのボスは全身を黒く霧散させてしまった。
 一行はその消滅を見届けてから、周囲を見回して群れの全滅も確認する。
「よし、後は村人の集まるお家へ報告して来なきゃ」
 カナメはその伝達役を請け負い、早速向かっていったのだった。


 群れを殲滅する頃には日は沈んでおり、イレギュラーズはサクラダ村の人々から感謝され、鍋をご馳走になることに。
 カナメが野菜や食器を運ぶ手伝いをする中、ニャンタルが嬉々として叫ぶ。
「待ちに待った食事の時間じゃ!」
 運ばれてくる鍋の傍へとどっかり座ったのはゴリョウだ。
「肉ばっかり食うなよ、ここのは野菜も美味いからな!」
「色んな鍋が楽しめそうでいいのぅいいのぅ!」
 ゴリョウは鍋奉行として、村でとれた野菜を入れていく。それに、ニャンタルはムフフと笑いを浮かべる。
(人から飯貰うのはあんまり好きじゃねえんだが……)
 育ちもあって猜疑心、警戒心も強いシオン。ただ、断るのも悪いと、彼は一応貰うことにしていた。
(……食料事情が改善したからと言って、そう易々と宴会など開けるものでもないだろうに)
 マニエラも折角の行為は受け取るべきとしながらも、諸事情あって鍋を遠慮する。
 その分、酒を所望するマニエラは吉ノと共に村人が持ち寄った地酒を口にして互いの無事を喜び合っていた。
「そして鍋と言えば酒だ、間違いない」
 特に鍋の味にこだわりはなく、吉ノは勧められる鍋も食べていたが、傍のニャンタルの勢いが止まらず。
「ハフハフ、めちゃウマなのじゃ!! おかわり!」
 動き回った分以上、腹いっぱい食べる彼女に、酒を飲むマニエラや吉ノが注目しつつ語らい合う。
「お鍋、お鍋~♪」
 自分達が頑張ったからこそ野菜もたくさん残って良かったと、カナメもまた嬉しそうに鍋をつつく。
「おいしー、あったまるー……」
「鍋ッスか……」
 終始テンションの低い鹿ノ子はだったが、差し出された皿はありがたく口をつけて。
「あたたかい食べ物は気持ちが落ち着くッスね……」
(……ちょっと最近、お姉ちゃんがやつれてるような? 無理してなきゃいいけど……)
 そんな姉に、カナメは何か手伝えることはないかと相談することにしたようだった。
 楽しく語らう晩餐も早いもので終わりに近づくと、ゴリョウは〆に自身の領地で作った米を使い、雑炊にして皆にふるまう。
「村人らもたっぷり食って、暖かくして寝て、明日への活力にしてくんな!」
 その雑炊を食べながら、幻は村の人々を眺めつつ思う。
(鬼人種の方が笑顔でいられる世界を守りたいですね)
 この先もずっと、作物もお鍋も、そして村の人々も。幻はココロからそう望むのだった。

成否

成功

MVP

ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは農地防衛の為、万全の策を講じたあなたへ。
 今回はご参加、ありがとうございました。

PAGETOPPAGEBOTTOM