PandoraPartyProject

シナリオ詳細

思い出のオルゴール

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●懐かしい音
 伝承の、とある街の家の前には、ついこの間までNPCの兵士が立っていた。
 その家は、これまで非常に簡単かつ再受注可能なお使いクエストを発行することで有名なNPCの家だ。
 しかし、扉の前に兵士NPCにガッツリ立たれてしまっては入れない。
 だからこそ、アバターたちは自然とそこに近づかなくなっていたのだが……それは「チンピラをやっつけろ」という、それなりの難易度を持つクエストへの案内でもあった。
 モンスター退治からとんでもないステータスを持つチンピラボスとのバトルまで、非常に盛りだくさんのそのクエストも『かつての実像』いりす(p3x009869)を含む8人によってクリアされ、NPCの兵士も家の前から立ち去った。
 今、その家には……その家にいたNPCの甥にあたる青年が住んでいる。
 彼は「思い出の味」であるミートパイの材料をいりすに依頼し、今後も何かの頼みをするかもしれない……などと言っていた。
 そこで丁度様子見もかねて、いりすは何か依頼がないかと顔を出していた。
 ドアをノックして、開けて。中に入ると、あの時の青年がいりすに気付き振り返る。
「ああ、この前の方ですね。うん、覚えてますとも。丁度よかった……よろしかったら、僕の頼みを聞いていただけませんか?」

●オルゴールの修理に必要なものは
 青年の腕の中には、1つの少し大きめなオルゴールがあった。
 どうやらかなり複雑な機構のようで、オルゴールというよりは自動演奏機の類であるようにすら見える。
 近くのテーブルにある工具を見るに、整備か清掃でもしていたのだろうか?
「実はこのオルゴール……ふふ、それにしては大きいって表情ですね? 僕も同じ気持ちです。ですが、叔母はこういうちょっと変なものが大好きだったようでして」
 言いながら、青年はオルゴールを机にそっと置く。
 スイッチらしきものを押すが……反応は、ない。
「見ての通り、どうやら壊れてしまっているようでして」
 多少弄ってみた結果、どうやら部品の幾つかが壊れていると判明したらしい。
 しかし、残念なことにこの家には修理に必要な精密部品が存在しないのだという。
「なにしろ珍しいものですからね……街で部品を探しても見つからないのです」
 部品さえあれば青年が直せるのだが、部品が無ければどうしようもない。
 普通に考えれば諦めるしかなく、青年もそうするしかないかと思っていたのだが……。
「しかし、僕は幸運です。貴方たちが来てくれたんですから」
 ちょっと危険な手段ではあるが、部品を調達する方法がある。
 それを頼みたいのだと、そう青年は告げる。
「ギアリン……というモンスターを知っていますか?」
 それはこの街の近くにある「廃工場」と呼ばれるフィールドに生息しているモンスターだ。
 見た目はゼリリンに似ているのだが、どうやら機械仕掛けのモンスターであるらしくメタリックな見た目をしているモンスターで、ゼリリンと比べれば大分強いのだという。
「そのギアリンから、精密部品が手に入るんです。そうですね……10個もあれば充分だと思います。集めてきてくださいませんか? そうしたら、一緒にこの叔母のオルゴールを聞きましょう。かなり綺麗な音が出るんだと自慢されたことがあるんです」
 そう言うと、青年は優しげに笑うのだった。

GMコメント

『かつての実像』いりす(p3x009869)さんからのアフターアクションによるシナリオです。
ありがとうございます。
なお、オルゴールから流れる曲は「思い出の貴方に」。
切なくも綺麗な曲調で、もう会えない大切な誰かを想う曲であるようです。

クエスト名:思い出のオルゴール
クエスト報酬:経験値
クリア条件:青年に「精密部品」10個を渡す。

フィールド:廃工場
廃墟となった廃工場と、その周辺の平原で構成されたフィールドです。
平原にはドロップアイテムを勝手に持っていくモンスター「ゼリリン」がいますが、無視して大丈夫です。
廃工場内部は壊れた機械が道を塞ぐ3階建てのダンジョンじみた構造です。
・サクラメントは工場入り口の警備員詰め所にあるようです。

・ギアリン(出現率:中)
ガション、と音をたてて跳ねる金属系モンスター。
結構タフですが攻撃力はそんなにありません。
周囲に電撃を放つショックウェーブを放ちます。
低確率でアフロになりますが、時間経過で戻ります。
精密部品ドロップ率:小。
・ボムリン(出現率:小)
ボムン、と音をたてて跳ねる爆弾系モンスター。
ちょっとタフ。一定確率で大爆発。
巻き込まれるとアフロになりますが、時間経過で戻ります。
精密部品ドロップ率:小。
・偽ギアリン(出現率:大)
外にいるゼリリンが鉄屑を纏ってギアリンに化けている。
何してんだてめえ。
弱いのですぐ倒せますが、ほっとくとドロップした精密部品を勝手に持っていかれるかもしれません。
やっつけても特に不利益は発生しません。
精密部品ドロップ率:ドロップしません
・マスターギアリン(常に1体のみ存在)
ガション、と音をたてて跳ねる全長3Mの金属系モンスター。
凄くタフで凄く強い。逃亡推奨。
周囲に超高威力の電撃を放つハイパーショックウェーブと口から光線を放つバスタービームを使用します。
当たると一撃で消し飛びそうです。
精密部品ドロップ率:大。でも割に合わないんじゃないかな。

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 R.O.O_4.0においてデスカウントの数は、なんらかの影響の対象になる可能性があります。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

  • 思い出のオルゴール完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年11月24日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

イチカ(p3x002871)
獲物を殺す者
九重ツルギ(p3x007105)
殉教者
シュネー(p3x007199)
雪の花
ダリウス(p3x007978)
尾を喰らう蛇
カノン(p3x008357)
仮想世界の冒険者
黒子(p3x008597)
書類作業缶詰用
ルゥ(p3x009805)
モフが好き
いりす(p3x009869)
優帝

リプレイ

●オルゴールのために
 廃工場フィールド。ギアリンの巣窟であるその場所に、8人のアバターが踏み込んでいた。
 納品用のアイテム「精密部品」を探す為だが、効率の為に2チームに分かれている。
 A班は『バンデッド』ダリウス(p3x007978)、『仮想世界の冒険者』カノン(p3x008357)、『書類作業缶詰用』黒子(p3x008597)、『優帝』いりす(p3x009869)。
 B班は『獲物を殺す者』イチカ(p3x002871)、『アルコ空団“輝翼”』九重ツルギ(p3x007105)、『雪の花』シュネー(p3x007199)、『モフが好き』ルゥ(p3x009805)。
 今回の廃工場フィールドに出てくるモンスターは4種類。
 ギアリン、ボムリン、偽ギアリン、マスターギアリン。
 このうち気をつけなければいけないのはマスターギアリン1体のみ。
 それを考えれば、チームを分けるのは正解であると言えた。
 そしてAチームは、1階を静かに探索していた。
 特にダリウスは前兆の消失により、細かい部品など音が出やすい箇所を避けて足音を消しつつ気配も周囲に落とし込み、先手取れる様体勢を準備するという念の入れようだ。
「何か別の寿司食う依頼思い出すが、またちっと気を付けねぇといけねぇな」
 そんな事を言うダリウスだが、この廃工場内では気をつけすぎるということはないだろう。
 工場というだけに何かを作る機械やベルトコンベアらしきものがあるが……一体何を作っていたのやら。
「ギアリン……外見はゼリリンの近縁種に見えますが機械仕掛けなだけあり戦闘力はゼリリンと比べ非常に高いとか」
 そう呟くのはカノン。ゼリリン自体はR.O.Oではザコモンスターとして有名ではあるが、同時にアイテムを勝手に持っていくルートモンスターとしても有名だ。
「まぁ比較対象がゼリリンですし、戦闘の心得があればボス格でなければ多分大丈夫でしょうっ」
「確かにマスターギアリンとの戦闘は極力回避すべきです」
 黒子もそうカノンに同意する。
 ハッキリ言って黒子は、マスターギアリンの戦闘力に関し一切楽観的な考えを抱くつもりは無かった。
 可能な限り交戦を控え、迅速にその場から離脱。それが一番の方策だと考えている。
 R.O.Oのボスモンスターほど理不尽なものはいないからだ。
「それにしても……大きめなオルゴールでしたね。やっぱり大きさの分、長めの曲だったりするのかな? それとも曲が流れてる途中に中の仕組みが動くタイプ? 答えが何であれ、まずは部品を集めて直さなきゃですよね!」
 いりすがそう言って空気が少しなごみ……ベルトコンベアに載っている組み立て途中のギアリンらしきものに「ひょえっ」と声をあげる。
 本当に何を作っていたのやら、この廃工場は。
 さておき、いりすはaPhoneーalterを用いた通話での通信役がメインだ。
「こちらは今のところ問題ありません」
 B班の通信役の九重ツルギとそんな連絡をすると、再び周囲の警戒に戻る。
 そんなA班の近くをギアリンらしき何かが跳ねていくが……音が違う。ボムン、ボムンと跳ねている。
「偽ギアリンか……」
 その正体を即座にダリウスが看破する。
 鉄屑を纏ってギアリンに化けているゼリリンだが、ここまで音が違うと流石にすぐ分かる。
「……全身機械のギアリンと鉄屑を纏っただけの偽ギアリンなら移動音も若干異なるとは思っていましたが……」
 カノンも、思わずそう呟いてしまう。
 いくら何でも違い過ぎだ。とはいえ見た目がソックリなのが実にイラッとする。
「この状況を考えるに、もう少し大胆に行動しても問題は無さそうですね」
 少なくとも、近くにマスターギアリンらしき足音はない。
 2階に行っているB班から同様の連絡がないことを考えても、現状でマスターギアリンは3階にいる可能性が高いと黒子は考えていた。
 ならばもう少し探索速度を上げ探索範囲を増やしてもある程度は問題ないと思われた。
 無論、マスターギアリンの行動パターンは不明なので即時修正していく必要はあるが……。
 そんな黒子の提案に全員が頷き……ガション、という音が響く。
「しー、だぞ」
 ダリウスの言葉に全員が静かに頷く。
 ガション、と音が響く。その音をカノンはしっかりと聞き分けようとする。
 然程重くはない足音だ。マスターギアリンではない。
 この音を覚えておけば、後々絶対に役に立つ。
 カノンはそう確信しながら、近づいてきたギアリンを視界に入れる。
「今です!」
 近くに邪魔な偽ギアリンはいない。ならばこの絶好のチャンスを逃すわけにはいかない。
 事前の打ち合わせ通りの陣形でA班の面々はギアリンに襲い掛かっていく。

●オルゴールを聞かせて
 廃工場2階。
 1階とは違い大量の機械部品を詰め込んだと思われるコンテナが積まれたフィールドだ。
 しかしコンテナは相当重く、動かす事は出来そうにないが……動かす為の巨大な機械のアームらしきものがあるのが実に印象的だ。
「オルゴール、というより音楽自体があまり好きではないのだけど……仕方ないわ、これは依頼だもの。ちゃっちゃと部品を回収して、依頼主に渡しましょ」
 そう言うイチカの手には、手に入れたばかりの精密部品が1つある。
 こうして見るとかなり特殊なアイテムであるようで、「精密部品」であることは分かるのに、どういうモノなのかはサッパリ分からない。
「変なアイテムね……」
 思わずそう呟いてしまう程度には変だ。しかしクエストアイテムというのは、そういうものなのかもしれない。
 暗殺者の心得で気配を殺しているイチカにとっては、いつ爆発するかも読めないボムリンやマスターギアリンさえ警戒すれば、然程難しい仕事でもない。
「ハローハロー、パパですよー」
 そんな事を言っているミスターアフロマン、もとい九重ツルギはaPhoneーalterでいりすに連絡をとっているが……ボムリンはちょっと油断するとああなる。
「青年のお役に立つべくはせ参じましたが、この九重ツルギ……未だかつてないピンチを迎えています。一応これでも意識高い系男子、いわゆる美形キャラで売り出しておりますので、アフロだなんて冗談みたいな髪型になればそれこそ世界規模の損失! 盾役という立場もありますし、慎重に事を進めなければ」などと言っていたが、もしかするとそれが何かのフラグだったのかもしれない。
 このR.O.Oではそういう事が起こらないとは言えないのが実際のところである。
 まあ、あのアフロも時間経過で治りかけているが……右から左へ治っていくせいで半アフロになっているのが妙なおかしみがある。
「恐ろしいですね……」
 そんな九重ツルギの月の満ち欠けの如きアフロ具合にシュネーがぶるりと震える。
「距離があればアフロにはならない……のでしょうか? いえ、なってしまったら仕方ないのですが、常に綺麗な身だしなみでいたいのが乙女心。こう、ちょっと、しょんぼりしてしまいそうです。アフロ……」
「大丈夫! 次にボムリン来たらわたし頑張るね! ボムリン爆発しそうになったら盾になるの!」
 そう言ってシュネーを元気づけるルゥは、どうやら本気でそう言っているらしい。
「爆発巻き込まれたらアフロになっちゃうけど、わたしアフロ面白そうだから大丈夫! 髪の毛くるくるもふもふになる機会なんて滅多にないもん!」
「ふふ、ありがとうございます。そうですね、元気を出さなきゃ。私も決して誰も殺してしまわぬよう、全力を尽くしましょう!」
 そんなルゥの姿にシュネーも元気になり、ルゥは安心したようにオルゴールに思いを馳せる。
「想い出のオルゴールかぁ……きっと大切な思い出いっぱい詰まってるんだろうね。思い出振り返れるように頑張るよ!」
「ええ、そうですね。マスターギアリンとの遭遇さえ避ければ死ぬこともないでしょうし」
 通話を終えた九重ツルギ(現在アフロ2、ストレート8)は頷く。
 今の通話によるA班との情報交換もそうだが、マスターギアリンとの遭遇を避けるための工夫は怠っていない。
「アレもギアリンと同じ音を立てるようですが、サイズ感が違えば音の大小で区別をつくでしょう」
「そうですね、それにマスターギアリンほどの大きさであれば、動く音もするでしょう」
 今のところマスターギアリンの現物とは顔を合わせてはいない。
 いないが、サイズが違えば同じ種類の音でも異なるはずだ。
 そして偽ギアリンも明らかに音が違う……というか足音が完全にゼリリンだ。本当に何なんだろうかアレは。
「今まで何度もゼリリンを狩りましたからねぇ。厄介なモンスターではありますが愛着も沸きました。一匹持って帰ってペットにしたいくらい……」
 確かに見た目は可愛いのだ。ぬいぐるみなどのアイテムもあるようだが、ゼリリンは可愛い。
 色違いのゼリリンもかわいい。たまに能力値が可愛くないのもいるが。
「けれど、マッピングはして正解ですね。迷路みたいです」
「確かにね」
 シュネーにイチカも頷き、周囲に怪しげな音がしないことを確認する。
 重たいコンテナが周囲に置かれたこの場所は、まるで迷路のようだ。
 1階も似たような感じだが、工場としては色々と失格な気もする。
「ん、この音は……」
 ガション、という足音。ちょっと軽めな感じなのでマスターギアリンではなくギアリンだ。
 しかし同時にボムン、という足音も聞こえてくる。
 どうやらギアリンとボムリンが偶然同じ方向に向かっているようだ。
 イチカとしてはボムリンが爆発してマスターギアリンに気付かれるような事態は避けたいのだが……先程爆発しても大丈夫だったことを考えると、それほどマスターギアリンは戦闘音に興味がないのだろうか?
「よし、仕掛けましょ」
 数はギアリンとボムリンが1体ずつ。ならばとイチカは飛び出しアクティブスキル2を仕掛ける。
 爆発阻止を考えた攻撃であり、その意思を汲んだシュネーのアクティブスキル1がボムリンを貫く。
「お持ちの精密部品、落としていただきますっ!」
 ガシャンッと音をたてて壊れたボムリンにホッとするのも束の間、ギアリンのショックウェーブが周囲に放たれる。
 幸いにも新しくアフロになった人間はいないが、危ないところだった。
 ルゥのアクティブスキル1がギアリンにトドメを刺し、成果は精密部品が0個だ。
 そして1:9くらいになっていた九重ツルギのアフロが10:0に戻った。
「フフ、今更ジタバタせず堂々としますよ。しますとも! 何故なら俺は! どんな姿でも! 美しいから!! なお甘いマスクで殺意は2倍! よっしゃ覚悟しろスクラップにしてやりますよ我楽多エネミーども!!」
 なんか凄い殺意に目覚めた九重ツルギだが、角の向こうからボムン、ボムンとボムリンが3体やってくる。
 出現率:小とは一体。それとも九重ツルギがフラグを建てるのが悪いのだろうか。
 とにかくA班と合流する瞬間まで九重ツルギは……いや、B班全員がアフロで。
 イチカが少し不機嫌な顔をしているのが印象的だったが……さておき、部品は無事に青年に届けられた。
 いりすの提案で予備を5個追加で集めて渡したのだが、青年はそれにニッコリと微笑んで答える。
「こんなにたくさん……ありがとうございます。それでは少々お待ちくださいね」
「ハハッ、なんとか死なずに集められたぜ」
「何よりです」
 ダリウスに答えながら、青年はオルゴールを直していく。
 精密部品が凄い速度で取り換えられていくが、実に芸術的な速度で直っていき……予備の部品をそのままに、青年は笑う。
「ふう、出来ました。また壊れても、こちらの予備の部品があれば安心ですね」
 そう言う青年に、シュネーも笑う。まさにその為に予備の部品を集めたのだから。
「では、早速ですが……動かしてみましょう」
 そう言って青年がスイッチを入れると、予想よりもずっと複雑な音をオルゴールは奏で始める。
 どうやら複数の演奏装置が組み込まれているのだろう、だからこそあのサイズなのだと、いりすは納得できていた。
「綺麗な音……」
「ええ、素敵ですね」
 いりすに、カノンも……黒子も、静かに曲に耳を傾ける。
 イチカも表情を変えずに静かに聞いていた。これも依頼の内だと言う風に。
 曲名は「思い出の貴方に」。
 切なくも綺麗な曲調で、もう会えない大切な誰かを想う曲は、静かに奏でられて。
 およそ3分ほどの演奏は、静かに終了する。
「素人意見だけど……まあ、良い音色だったんじゃない?」
 イチカの感想に青年は「僕もそう思います」と笑う。
 その笑顔を見て、シュネーは思うのだ。
 直してよかった、と。
 これで思い出は記憶だけでなく、物としても残るだろう。
 記憶は褪せてしまうかもしれないけれど、物は大事にしていれば残り続けるから。
 これはそんな、1つの小さな幸福を守った物語であった。

成否

成功

MVP

いりす(p3x009869)
優帝

状態異常

なし

あとがき

コングラチュレーション!
オルゴールを無事に修理出来ました!

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