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シナリオ詳細

冬告げ鳥の鳴く頃に

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●冬告げ鳥の鳴く頃に
 ヒュウ、ヒュウ……という音が聞こえる。
 風の音ではない。これは鳴き声だ。
 鳥の鳴き声。渡り鳥である「冬告げ鳥」の鳴き声である。
 色は純白。新雪の色に似たその羽毛と、ウミネコのような姿。
 しかしくちばしも含めたその全てが白であることから、すぐにそうではないと知れるだろう。
 冬告げ鳥。
 この時期になると、ちょうど海洋にやってくる渡り鳥だ。
 そして、海洋に向かう船の甲板で。
 1人の男が、飛び行く冬告げ鳥たちを見つめていた。
「もうすぐだ。もうすぐ会えるよ、スザンナ……」
 海洋から鉄帝に出稼ぎに出て、2年。
 かなりの金とツテを得て、男は……グレンは、凱旋にも近い形での帰還の途中だった。
 この船旅も、海洋の空気を思い出し慣れておきたいという、そんな感情からのものだ。
 幸いにも定期船は幾らでも出ているし、安全な船も選び放題であった。
 しかし、しかしだ。
 光の裏に常に闇があるように。
 成功者の影には成功しなかった者がいて。
 時として、理不尽なる怨みを買う事があって。
 時として、そんな時にだけ異常な行動力を発揮する者がいる。
 そしてそれは。大抵の場合は「望みが叶いそうな時」を狙って爆発する。
「海賊だー!」
「迎撃準備!」
 進路上に見える船と、騒がしくなる進路。
 しかし大丈夫だろう。
 この船は武装もしっかりしている。
 だから。
 だから、誰もが油断していた。
「……あ……クセル……何故、君が……」
 内部にクズがいる可能性を、失念していた。
 背後から深々と刺されたグレンは……死の瞬間、恋人のスザンナのことを想っていた。
「くく……ざまあみろ」
 手引したクズどもの手により防衛体制の穴を突かれた船「アーカール号」は……この日、海賊によって沈められた。
 残ったのは、なんとか脱出できた2人のみである。

●犯人を捕まえろ
「アーカール号という船が海賊に沈められた件は、耳の良い人なら知ってると思うです」
 チーサ・ナコックはそう言うと集まった面々を見回した。
 武装もしっかりしていて船員の教育も上質なアーカール号は、比較的安全度の高い船として有名だった。
 海賊如きには簡単に負けない、そんな船だったのだが……沈められてしまった。
 それ自体は気にするべきことではない。
 どんなに準備をしていても失敗することはあるし、海賊は警戒している船を襲うプロでもある。
 だが……今回の件にはどうにも怪しげな点が浮上していた。
 脱出して生き残った人間2人に、不審な点があるのだ。
 1人は、ジョウ。
 アーカール号の船員であり、客室担当。
 アーカール号の沈没後、毎日呑み歩いているようだが……そんな蓄えなどあるタイプではないのだが……と不思議がられている。
 1人は、クセル。
 VIP客として乗船していたグレンという客の友人で、同時期にグレンと共に鉄帝へと渡り、ボコボコに失敗して帰ってきた敗北者でもある。
 だが……こちらもどうにも不自然な点がある。
 また、鉄帝への渡航の準備を整えているのだ。
 一体何処にそんな金があったのか……依頼人であるスザンナは、そのヒントを掴んでいた。
「闇市に流れていた、グレンのロケット。つまり……海賊共の騒ぎに乗じたか、あるいは手引していたか。それにより報酬を得たクズの可能性が高い……ってことです」
 この2人を締め上げ、海賊どものアジトを吐かせねばならない。
 そして依頼人の望みは……恐らくはジョウかクセル、あるいは海賊どもがまだ持っている「婚約指輪」を取り戻すこと。
 魔法をかけた銀の指輪は、対となる指輪と反応するように出来ている。
「その対の指輪は此処に。新しい一歩を踏み出す為にも、想いを思い出に変える手助けが必要なのです」

GMコメント

婚約指輪を取り戻しましょう。
グレンの持っていた婚約指輪は、スザンナから預かった婚約指輪に触れると当時流行の恋愛曲が流れるようになっています。今となっては、少し古いらしいのですが……。
指輪は海賊のアジトの戦利品倉庫に入っています。
場所は出発地点となる町から少し離れた海域にありますが、ジョウをどうにかすることで地図が手に入るでしょう。
また、クセルをどうにかすることで海賊との取引の証拠が手に入ります。
ジョウは昼から酒場を渡り歩いていますが、チンピラ同然です。
しかし、かなり後悔が深いようです。上手く交渉できれば戦闘無しで地図が手に入るかもしれません。
……が、海賊がジョウが口を割らないように暗殺者を送りこんでいます。
交渉の結果次第ではジョウは殺されるでしょう。

クセルは逆に一切後悔はないようです。アイツのせいで俺は成功しなかったんだ的な感じです。
皆さんが街に到着した2日後には鉄帝に向けて出発する予定です。
馬鹿なので、ちょっとどうにかすればすぐに悪事を吐きそうではあります……が、諦めも悪いです。
殺してしまっても問題はありません。

なお、クセルとジョウは結構有名になってしまっているので、聞き込みをすれば居場所はすぐに分かるかもしれません。

海賊のアジトについてですが、様々な武器で武装した海賊が20人程です。
危機管理も結構出来ているので、逃げられないようにする工夫は必要でしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 冬告げ鳥の鳴く頃に完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年11月23日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
海音寺 潮(p3p001498)
揺蕩う老魚
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
チェレンチィ(p3p008318)
暗殺流儀
綾志 以蔵(p3p008975)
煙草のくゆるは
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
唯月 清舟(p3p010224)
天を見上げる無頼

リプレイ

●罪と罰
「海賊に沈められた船、アーカール号ですか。生存者は二人……まあ、怪しいですよねぇ。恐らく裏で海賊と繋がっていたのでしょう。その繋がりを辿れば結婚指輪まで辿り着けるかと。調査はあまり経験がないですが、やれることはやりますよ」
「耳がいいかはさて置き、アーカール号の話はよく知ってるぜ。店の客連中の間でもその話でもちきりだったからな」
 今回の事件に挑むにあたり、『青き砂彩』チェレンチィ(p3p008318)と『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)はそう言っていた。
 アーカール号。武装船であり、普通であれば海賊にそう簡単に沈められるはずのない、そんな船が沈められた事件は……やはりそれなりに話題になっていたようだ。
 ちょっと調べれば「真相」にも簡単に辿り着くだろうソレは、縁自身はあまり興味を引かれはしなかったようだ。
 まあ、一々そういった事件に心を砕いていては、身が持たないというのも当然あるだろう。
 海洋に海賊が出るなどというのは、空に雲が浮かんでいるのと同じ程度には馴染みのある話ではある。
 そんなものの真相を暴いたところで、特に何かが始まったり終わったりするわけでもない。
 それを麻痺と呼ぶか順応と呼ぶかは、少々難しいところではあるだろうが……。
「俺としちゃぁ、終わった事件の真相ってのにはさして興味はねぇんだがね。そいつを暴いた所でなかったことにはならんし、死んじまったやつらも戻ってこねぇ……ま、それで依頼人の嬢ちゃんの気が晴れるって言うんなら、力を貸してやるとするか」
 結局は人が良いということであり、それが縁の名声の高さの理由なのかもしれないが……縁はその名声とコネクションを活かし、今回のキーマンである2人、クセルとジョウの2人の居場所を探っていた。
 そうすれば、大体の行動範囲というものは探れてくる。あとはチェレンチィたちが現地で詳細な居場所を探れば確実に見つかるだろう。
 クセル班は『若木』秋宮・史之(p3p002233)、唯月 清舟(p3p010224)、『揺蕩う老魚』海音寺 潮(p3p001498)、縁。
 ジョウ班は『煙草のくゆるは』綾志 以蔵(p3p008975)、『横紙破り』サンディ・カルタ(p3p000438)、チェレンチィさん、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)。
 あとはこのような内訳で行動することも決まった。
 どうやら後悔しているらしいジョウと、そんな様子は欠片も見せないというクセル。
 その辺りを基準にしたチーム分けである。
「クセルってのは人間のクズだね。まあそういうのをどうにかするために俺たちがいるんだけどね。依頼人は正しい判断をしたよ。それをこれから証明しに行く」
 そんな史之の台詞に、潮も静かに頷く。
「花嫁さんの新たな歩みの為に頑張らんとな。少しずつでも前に進めるように」
 そう、これは罪を清算し新たな一歩を踏み出す為の物語。つまりはそういうことなのだ。
 そして……別れたジョウ班の面々は、早速それらしい場所を見つけていた。
「いくら比較的平和な海洋とはいえ、これくらいはそんな珍しい話でもねーんだろーな。ま、レディの頼みならいくらでも聞くけど」
 サンディ・カルタにチェレンチィも頷き、以蔵も紫煙をくゆらせる。
「……ま、永遠に心に残るにしたって、ケジメ付いてるのとそうでないのとじゃ大違いだよな。ひとつ、手助けでもするかね」
「そういうことだな。さて、此処という話だが……」
 イズマは、1つの酒場の看板を見上げる。
 昼からやっている酒場を中心に聞き込みを続け、ジョウがいるらしい場所を見つけたが……中に入ってみると、なるほど。すでに潰れる寸前まで飲んだくれている男がいる。この男がジョウということで間違いはないのだろう。
「なんだあ……? ついに俺を殺しに来たかよ」
 いきなりのその台詞に以蔵は酒場のマスターに視線を向ければ、彼は軽く肩をすくめてみせる。
 どうやら「いつものこと」であるらしい。
「ま、罪の意識があるってんなら幸いだ。ここらで1つ償いってもんをしてみるのはどうだ?」
「ああ?」
「奪われたもんの中に婚約指輪があってな」
 以蔵の言葉に合わせ、イズマが依頼人から預かった指輪を取り出す。
「なにも取って食おうってわけじゃない。ちょっと協力してほしいだけなんだ」
 サンディの言葉にジョウは僅かに顔をあげ、イズマの手の中の指輪を見る。
「……見覚えのある指輪だ。ああ、思い出したぞ。あのバカが剥いでたやつにソックリだ。アイツも罪深ぇ奴だよ……」
 それはこちらに話しているわけではないのだろう。
 酔っ払いであるが故なのかどうか。けれど、それが「誰」を指しているかはよく理解できた。
(ここまで深く反省してんなら、いっそ依頼人に合わせた方が、追加の償罪のひとつもできるか……? ……まぁ、依頼人がどうおもうか分かんねー以上は難しーかもしれねーが)
 サンディはそんな事を考えるが、そういえば依頼人はそもそも断罪を望んでいるわけではない。
 ならば、そういう終わり方もあるだろうか。
「沈められたアーカール号……もし海賊に手を貸してて、それを後悔してるなら……罪滅ぼしだと思ってアジトの場所を教えてほしい。あの船に乗ってた人の大切な物がそこにある」
「持って行けよ」
 イズマの言葉に、ジョウは服の内側から羊皮紙を取り出して放る。
「いつかこんな日が来るとは思ってたよ。あのクセルの馬鹿っぷりを見た時からな」
 そんなことを言うジョウから視線を外し、チェレンチィは酒場の隅を見る。
(おや、どうやらボクと同類の存在……暗殺者が居るようです。殺す気なら殺されても文句は無いですよねぇ。あちらが仕掛けてくる前にスマートに始末出来ればいいのですが)
 どうやらジョウとの交渉は上手くいきそうだ。
 となれば、あとはクセルのほうだが……。

●正当なる罰
「クセルって悪党が国外逃亡を図っているようなんだ。協力してくれないかな」
 自身の名声を有効に使い史之は鉄帝行きの船を回っていた。
 たぶん港に近い安宿を取っているだろうから居場所を聞き込み調査という、そういう流れだ。
 ジョウと違いクズという話なので、色々と容赦のない面々がこちらのチームには揃っている。
 縁曰く「流石にこいつをこのまま鉄帝に行かせちまうのは海洋の恥だ」とのことだが……どの程度まで過激にやるかという点を除けば、全員大体同じ意見ではある。
 そうしてクセルをあっさり見つけると、まずは潮が声をかけた。
「ちょっとばかり良い儲け話があるんじゃが……」
 チラリと宝石を見せてやれば、身の丈に合わない欲ばかりの肥大したクセルはすぐに誘き出せてしまう。
 そうすれば、用意していた秘密の隠れ家の出番だ。
「あのね、君が行く先は鉄帝じゃないよ。もっと楽しいところ、ね?」
 そんな史之の恐るべき発言が飛び出していたが……まあ、クセルの所業を思えば一切同情は出来ないだろう。
「恨み妬み我欲で人を殺めちまえば遺るは拭えぬ業……血で汚れる事を否定はしねぇがクズはクズらしい終わり方しかせん。早々にローレットに目を付けられた事を後悔するんじゃなぁ」
 そうして目覚めたクセルに、清舟はそう脅しをかける。
「儂も大概ロクデナシではあるが、落とし前はきっちり付けんといかんのはわかる。吐くもの吐いて返ってくる怨みの念に怯えとれ。ボンクラがよ」
 端から痛めつけるのも悪かないが、上げて上げて落とした時の方が心にくるじゃろ、と考えていた清舟ではあるが、今回は仲間に強硬派が多いのでそちらに合わせる形でクセルに脅しをかける。
「な、なんだ手前等! 俺をどうしようってんだ!」
「どうもこうも。そうだなあ……《ワダツミ》って知ってるか?」
 海洋ギャングの名を出す縁にクセルはビクリと身体を震わせるが……縁はそこに更に脅しをかけていく。
「お前さんが後悔しねぇのは勝手だが、一応忠告しておいてやろうかね……この先、“後悔しなかったこと”を後悔する日がこねぇとは限らねぇんだぜ」
 実にブラックな脅しだが……ただの脅しではない、純粋な忠告でもある。
 潮はすでに水をなみなみと満たしたバケツを用意しているし、怪我しても治してまた「説得」すればいいと考えている。
「んー、じゃあかるく足の指を一本ずつ切りおとすところから始めようか」
 史之も全く同じ考えである辺り、クズに向ける慈悲は一切ないと考えている事がよく分かる。
 彼等の中ではどのように拷問していくかの道筋が完璧に出来ており、絶対に吐かせる自信があった。
 そして……当然のことではあるが、ただのクズであるクセルがそれに耐えられるはずもない。
 あっという間に知っていることを全て吐かされたが……元よりクセルが持っている証拠は悪事の証拠のみ。
 その証拠と共に官憲の元に潮によって放り投げられたが……あとはそちらで受けるべき制裁を受ける事だろう。
 そうして、手に入れた地図を元にサンディたちは海賊のアジトへと向かっていく。
「あとは乗り込むだけだな」
 サンディの視線の先にあるのは、それらしき建物の建っている小島だ。
 石造りのソレは古びてはいるが立派で、小規模ではあるが港も存在している。
 どう考えても海賊共が用意したものには見えないが、捨てられた施設の再利用と考えれば納得はいく。
 恐らくは何かの監視用の建物だったのだろうが、今となっては海賊共の根城というわけだ。
 よく見れば補修の跡も目立ち、しっかりと根城にしているのがよく分かる。
「けっこういるみたいだね。準備はいい、みんな?」
 史之のエネミーサーチが中に居る海賊の数が事前情報通りであることを感じ取り、それを仲間たちに伝えていく。
 この構造であれば港を抑えれば逃げられはしないだろう。
 サンディが軽く調べても、そのくらいしかありそうにはなかった。
 潮が逃走に使えそうな手段を全て破壊すれば、それが突入の合図になる。
「秋宮史之、知ってる人は知ってるよね。さあかかっておいでよ、それとも怖いのかな?」
「か、カチコミだとお!? くそ、お前等! やっちまえ!」
 クセルやジョウからの情報入手の迅速さに、対応できる暇がなかったのだろう。
 海賊たちは慌てたように武器を抜く。
「1人も逃がさない……!」
「どうやらツキは回ってこなかったようだなぁ。儂らがここに来た運の悪さをあの世で恨んどけや」
 イズマが、清舟が襲い掛かり海賊たちを倒していく。
 数は多くとも、奇襲をかけてしまえば然程のものでもない。
 すぐにその全てを薙ぎ倒し、海賊のため込んでいた品を探す。
 どいつもこいつも「素直」ではないので全滅させる羽目にはってはしまったが、略奪品を持ち逃げされる心配はなくなった。
「……といっても、目的の品以外に興味はねえがな」
 言いながら縁は略奪品をひっくり返していく。
 指輪だけに絞ってもかなりの数があるが、銀色のシンプルな婚約指輪となれば探すのがこれまた難しい。
 宝石がついている類のものは即座にポイしても、結局のところ合わせてみないと分からない。
「……これか?」
 以蔵が取り出した指輪にイズマが預かった指輪を合わせれば、静かに曲が鳴り響き始める。
「古い曲じゃの」
 潮がそう言ってしまう程度には古い曲。
 しかし、色褪せない名曲ではある。
 間違いなく、コレだろう。そしてそれが分かれば必要以上に曲を聞く必要はない。
「それはスザンナさんの為の旋律だからね」
 イズマがそう呟き……誰も、何も言わない。
 何も言うべきことは見つからないからだ。
 過去は決して戻らず、未来に向かって歩いていくしかない。
「辛いかもしれんがこれで少しでも前に進めるようわしも願っとるよ」
 そんな潮の呟きが、小さく響く。
 これを返してもグレンは戻らない。けれど、少なくとも区切りはつく。
 だからこそ、この指輪はスザンナに必要なのだろう。
 これを取っておくにせよ捨てるにせよ、まずは「必要」なのだ。そういう儀式であるのだろう。
 ヒュウ、ヒュウ……という音が聞こえる。
 風の音ではない。これは鳴き声だ。
 鳥の鳴き声。渡り鳥である「冬告げ鳥」の鳴き声である。
 色は純白。新雪の色に似たその羽毛と、ウミネコのような姿。
 しかしくちばしも含めたその全てが白であることから、すぐにそうではないと知れるだろう。
 冬告げ鳥。
 この時期になると、ちょうど海洋にやってくる渡り鳥だ。
「冬告げ鳥……か」
 縁が小さく、そう呟く。
 冬が来る。寒い冬。
 けれど、冬が終われば春が来る。
 スザンナにもきっと……この別れの後に、新しい春が来ると。
 今は、そう信じるしかなかった。

成否

成功

MVP

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍

状態異常

なし

あとがき

コングラチュレーション!
無事に指輪を取り戻しました!

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