PandoraPartyProject

シナリオ詳細

Exgear-EX,The unknown

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●巣を知らぬ鳥たちは
 エクスギアエクス移動ハンガー。大型トラックのコンテナ部分を稼働させ、まるでタンカで運んだ人間をそのまま立ち上がらせるかのように展開するこのハンガーは整備士たちの努力と工夫の結晶である。
「オーケー、ロックしろ」
 『整備長』イルミナ(p3x001475)の命令に応じて止まったそれを見上げれば、黒い巨人――否、人型ロボットが立っている。紅いラインの入った軽装甲高機動タイプのそれは、イルミナ専用機『Covert』。帝国軍の開発するエクスギアエクスの中でも最新鋭のメカだ。
 念のためにとイルミナはレンチでタイヤまわりの固定足を叩いた。やや小型のタイプとはいえトラックのスプリングが耐えられる重量ではない。タイヤとブレーキパッドなどでは踏ん張らず、その側面から伸びた油圧式の足でもって状態を固定している。
「さあて、本当に現れるのかね……その所属不明機ってやつは」

 ザーバ軍閥が加わったことでS級闘士の顔ぶれが揃った鋼鉄帝国。陣容の豊かさもさることながら『帝国最大の個人戦力』と『現代の皇帝』を手に入れたゼシュテリウス軍閥は実質的に帝国そのものといっていい。そしてそんな立場になったからこそ、国防という問題はつきまとう。
 であると同時に、それを『自分だけで』こなさなくても良いというのが、今の帝国のよいところだ。
「まずは例を言っておこう。私の商品たちを無傷で取り戻すというサブオーダーに応えたことに」
 ソファに腰掛け足を組む白い軍服姿の男、リアム・クラーク。ひどく若い青年のような容姿をしているが、人を外見で侮ると痛い目に遭うというのがこの世界の常識だ。
 実際、彼の左右後方には(ROO世界の)イルミナとイングという二人の戦闘特化型アンドロイドが立っている。だが付き従っているというより、『心配だからついてきた』という親身な雰囲気に見えた。
「なに、ザーバ軍閥を撃退するついでだ。既に報酬も貰ってるしな」
 だろ? と振り返るイルミナに沙月(p3x007273)が眼鏡に指をそえつつ頷いた。
「対価に見合った労働、ですね。私達の『専用機』まで仕立てて貰ったのです。むしろ貰いすぎとすら……」
 ちらりと窓の外を見ると、彼女の専用機『花鳥風月』がメンテナンスハンガーにかけられていた。美しい花模様と軽鎧の武者めいたその姿は、鋼でできた芸術品だ。
 そんな彼女たちに、リアムは口の端だけをあげて笑った。
「無欲だな。無欲な女は好きだ。安く済む。機械の女であれば尚良かった」
「…………」
 イルミナが半眼で天井を見た。何か思うところがあったのかもしれない。
 それらに対してかなり他人事だった沙月は肩をちょっとだけすくめ、そして『本題は?』と目だけでうったえた。
 リアムが組んでいた足を解く。
「労働には適切な対価を。といっても金で済ませるのは性に合わないんでな、こちらからは情報を支払わせて貰う。……おい、シュピーゲル!」
 ドアの向こうに呼びかけると、がちゃりと開いて美しい少女が顔を見せた。白い髪に白い肌。まるで妖精のような彼女はしかし、手足を初めとする身体の大半を機械化したデザイナーズチャイルドである。
「……なに。解析なら、終わってる。これを渡せばいいの?」
 少女シュピーゲルが翳したのは、手のひらに載るくらいのカード型情報記録媒体だった。
 そして扉が更に大きく開かれ、ジャック翁(p3x001649)が姿を見せる。シュピーゲルの手からカードをとった。
「ザーバ軍閥に彼女たちが洗脳され、エクスギアEXのパイロットとして配備されていた。だがそれはどこから得た技術か? ザーバ軍閥が好む手法ではない。そもそも、機体自体ギアブルグ探索時には無かったものだ」
 イルミナたちの元へと歩き、そしてカードを指の上でくるりと回して見せた。
 ザーバ軍閥にエクスギアEXの技術を提供した存在がある、ということだ。
「鋼鉄帝国南西部に多数の所属不明機が目撃されている。これはかなり特殊な兵器だ。大型軍閥でないにも関わらずそれだけの兵力を備えているなら、『黒』の可能性は高い」
「なるほど……」
 沙月は窓の外をもう一度見た。
 整備員たちがメンテナンス作業を終え、いつでも機体を運び出せるように機体をトラックへと運搬を始めていた。
「金を払えばそれまでだけれど、情報を支払えばもう一働きを期待できる、というわけですか」
 満足げに頷くリアムに、沙月はやれはれといった様子で目を瞑る。
 だが、悪くない展開だ。
 悪の芽を潰すことは、こちらにとって望むべくもない。

GMコメント

 鋼鉄帝国南西部にて所属不明機の一団を発見しました。
 どうやら量産機十機程度に加え、カスタムされた強力そうな機体が数機ほどある模様。
 エクスギアエクスによる戦闘は必須となるでしょう。
 現地に向かい、彼らを倒し謎を探りましょう。

●超強襲用高機動ロボット『エクスギア・EX(エクス)』
 エクスギアEXとは大型の人型ロボットです。
 『黒鉄十字柩(エクスギア)』に附随した大型オプションパーツを超複雑変形させそれぞれの戦闘ロボットへと変形します。
 搭乗者の身体特徴や能力をそのまま反映した形状や武装をもち、搭乗者にあわせた操作性を選択し誰しもが意のままに操れる専用機となります。
 能力はキャラクターステータスに依存し、スペックが向上した状態になります。
 武装等はスキル、装備、アクセスファンタズムに依存しています。
 搭乗者のHPがゼロになると破壊され、多くの場合爆発四散します。
 搭乗者が装備する剣と同様の剣で斬りかかったり魔術砲撃をしたりと、搭乗するキャラクターによってその戦闘方法は変わるでしょう。
 もしお望みであれば、普段と違うデザインをオーダーしてみるのもいいでしょう。
 ※すべてが専用にカスタムされているため、別の人物が乗り込んだり敵のエクスギアを鹵獲し即座に使用することはできません。逆もまた然りです。

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●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 R.O.O3.0においてデスカウントの数は、なんらかの影響の対象になる可能性があります。

  • Exgear-EX,The unknown完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年11月18日 16時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

イルミナ(p3x001475)
冒険者
ジャック翁(p3x001649)
リアナル(p3x002906)
音速の配膳係
アウラ(p3x005065)
Reisender
沙月(p3x007273)
月下美人
Λ(p3x008609)
希望の穿光
鬼丸(p3x008639)
鉄騎魔装
いりす(p3x009869)
優帝

リプレイ

●砂のにおいがする頃に
 キャリートレーラーが停車し、スチームエンジンの音を止む。運転席の扉を開いて太陽の下に出た『整備長』イルミナ(p3x001475)は、早速運び込んできたエクスギアエクスたちを素早く組み立て始めた。
「ちぇ……仲良くしちゃってまぁ。
 商品って言う割には結構長い付き合いにも見えるし……アレか、アイドル的意味での商品か?
 ……いや、まぁ別に良いんだけどよ、こっちのイルミナとヤツが仲良くっても……」
 などとぶつくさ文句をいうのは、今回の依頼主(というかクエストギバー)のリアムへ向けてのことだろう。
 スパナでボルトをしっかりしめて、試しにコツコツと叩いて調子を確かめる。
 彼女の愛機『Covert』は、真っ赤なボディに白いラインのひかれたとてもスリムな印象の人型ロボットだ。
 アタッチメントパーツを用いて愛用のザンバー・ブレードをナイフのごとく装備させ、最低限の走行によって身軽に動き回るというのがこの機体の特徴であり強みである。
 その一方では、『音速の配膳係』リアナル(p3x002906)が愛機であるところのマギラニアRに『星詠の翼』を装着。更に恐竜めいた力強い足と両腕パーツを接続し人型のシルエットを作り出していた。
 マギラニアRあらため『マギラニアREX』である。
 このREXはどうやら王や法を意味する言葉であるらしく、佇まいもどこかどっしと貫禄があった。
「ま、エクスギアエクス自体が強襲装置のエクスギアにオプションパーツをつけたもんだしな。この発展の仕方は妥当っちゃあ妥当か。そっちはどうだ、いりす」
 振り返ると、やや独特な登場待機姿勢をとっていたエクスギアエクスがゆっくりと立ち上がった。
 黒いボディを中心に赤と白で可愛らしくカラーリングをまとめた『戦闘機械』である。
 優帝専用エクスギアエクス試作機『R×H』。
 勝利と団欒の意味を持つ紅玉(Ruby)と紫陽花(Hydrangea)の頭文字を合わせたもので、カラーリングにもその影響が現れている。
 さすがにリボンだらけにはならなかったが、どこか『優皇』モードのいりすのアバターコスチュームやメイン武装のそれに近い印象をもたせる機体だ。
 コックピット内で各種スイッチを弄りつつ、レバーを握ったいりすはサイドモニターに視線をやった。
「良い調子です。小回りもききそうですし、武装もオーダー通りで……」
 そこまで喋ってから、ふと不安げな表情になるいりす。
「今回の所属不明機……一体何なのでしょう。もしパイロットが洗脳された鋼鉄民や他国の民だったなら、助けてあげなくちゃ」
「むしろ、そうだったら幾分か楽、かな……」
 騎馬形態から変形した『黒麒』Λ(p3x008609)が片手を顔の前に翳し、マニピュレーターを小指から順に握るようにして動かした。
「ディアナの作ったシャドーレギオンがいくらか国内に残ってるけど、こいつらは曲がりなりにも元はどっかの軍閥あがり。所属はある程度わかる筈。『所属不明機』ってことは……」
「場合によれば、他国からの侵略である……と?」
 『陰』ジャック翁(p3x001649)が大十紋字丸(ダイジュウジマル)をキャリーから起き上がらせ、頭部を振り向かせる形で会話に入ってきた。
「砂嵐砂漠で正体不明の『終焉獣』が現れたとも聞く。鋼鉄南西部といえば、そちらに近いエリアだ」
 穏やかでないジャック翁の口調に、『Reisender』アウラ(p3x005065)は『RapidーWave』のコックピット内で考えを巡らせていた。
(所属不明機、ねえ。
 どこの誰だか知らないけど、折角鋼鉄の決戦が終わって修復やらなんやらが終わったばかりだというのに。
 まあ、この国の事だから来てもらっても構わないんだろうけど。
 私としてはちょっと……というのは建前で、エクスギア・EXに乗ってみたい、というのが本音なんだけどね)
 起き上がったRapid-Waveが専用のライフルを手に取り、機体と武器の間で認証をかわす。
 その一方で、既にいつでも戦闘可能な状態にある『月下美人』沙月(p3x007273)の『花鳥風月』が遠くを見つめる姿勢をとっていた。
「砂嵐からの侵略? それとも、かつて逃がしたディアナ勢力の復讐? または……」
 沙月の中で、いくつかの可能性が泡のように浮かんでは消える。
 そして『ダブルフォルト・エンバーミング』という言葉が浮かんだ。
 すこし前に先行告知されたROOバージョン4.0のタイトルである。二度の失敗を意味するテニス用語と、死化粧。もしかしたら、今回の事件と関係があるのかもしれない。
 いずれにせよ、戦って倒せば何か分かる筈だ。
「少しでも情報を手に入られるように頑張ると致しましょう」
「同感」
 『鉄騎魔装』鬼丸(p3x008639)が己にそっくりなフォルムのエクスギアエクス『鎧闘騎兵アハト・弐式改』の武装を機体に装着しながら答えた。
 ダブルドリルに追加装甲。両肩のミサイルポッドとかなりの重武装だ。機動性を維持するために脚部のパーツも拡張しているせいでかなりどっしりとしたシルエットに変わっている。
「ザーバ軍閥にエクスギアエクスの技術を流した勢力がある。あれだけの規模の物資と技術をすぐに提供できるだけの戦力は、今のところ国内にはないはず。
 私達が見逃しているだけか、そうでなければ……」
 強大な敵。いずれぶつかるであろう壁。
 ならば、その時少しでも立ち向かう備えができるように、今得るべきものは得ておきたい。
 鬼丸はアハトの目をギラリと光らせた。
「さ、準備OK。鬼丸――鎧闘騎兵アハト・弐式改、出るよ!」

●荒野を走る
 砂嵐砂漠地帯にほどちかい、砂の大くなってきた鋼鉄南西部。
 エンカウントを知らせるアラートに、いりすは正面モニターとセンサーに目を走らせた。
「敵機接近。所属不明機です! 攻撃可能距離到達まで、12秒!」
 いりすは『R×H』をガシガシと砂の上を走らせつつも、背部に背負う形で保持していた88mmオートキャノンを装備。両手で構えるような姿勢で固定すると、前方から砂煙をあげて迫る複数の機体にマーカーをあわせた。
 黒く、どこかまるみを帯びたフォルム。ザーバ軍閥やディアナ軍が量産していた正士にシルエットが似ているが、そこからトゲトゲした印象を除きカラーリングを黒くしたような、そんな機体である。
 統一されたフォルムやその動きからわかる。おそらくは量産機。鋼鉄軍で正式採用されている百合華と性能は同等程度だろう。
「まずはあの量産機群を撃ちます。リアナルさん、援護を」
「あいよ」
 『オーバーロード』による射撃を仕掛けるいりす。
 と同時にリアナルは『マギラニアREX』の背部から『星詠の翼』を展開。
 『R×H』の機動性を大幅に引き上げるためのブースターを装着させる。
 ブースター点火と同時に敵集団めがけ斜めに走り出した『R×H』が銃を連射。
 激しい音と舞い散る空薬莢が砂地にしずみながら足跡代わりに刻まれていく。
 リアナルはそれを確認すると周りの味方機にもブースターパックを装着させ、自らのマギラニアREXを加速。腕パーツをぐるんと反転させミサイルランチャー部分を前方へ向けると、敵機の群れめがけて弧を描くように発射していく。
 爆発。そして破壊の音。
 数機の破壊を確認した所で、煙を突き抜けて敵量産機がこちらへと突っ込んできた。
「距離を詰めるつもりかな? けど――」
 ブースターを点火。凄まじい加速を見せた鬼丸の『鎧闘騎兵アハト・弐式改』はミサイルを乱射。激しい弾幕をこしらえながらも瑪駕閃光砲・捌式(メガビームカノン・アハト)を腰だめに構えた。
「瑪駕閃光砲・捌式――発射!」
 側面に回り込むように放たれた光線が敵機を四機ほどまとめて貫いていく。
 が、四機目はその動きを読んでいたのか腕に装着した盾を翳すことで防御。盾が大きく壊れたが、すぐさまビームサーベルを抜いて斬りかかってきた。
 そこへ割り込むアウラの『RapidーWave』。
 銃にそなえたバヨネットナイフで斬撃を弾くと、ウィングを広げ飛行状態にシフト。急速に距離を離しながらライフルで銃撃を浴びせ敵機に死の舞踏をおどらせた。
「可能なら行動不能にしたうえで搭乗者を捕縛したいところだけど……」
 猿ぐつわでも噛ませてね、と呟くアウラ。
 その横をイルミナの『Covert』が駆け抜けた。
 さらなる敵反応。両側面からこちらを待ち構えるかのように出現した同型機たちがアサルトライフル型の武器でもって一斉射撃を仕掛けてきたのだ。これまでレーダーにうつらぬように、砂漠迷彩の大きなステルスシートで身を隠していたようだ。
「こいつ、味なマネを……!」
 飛来する銃弾をザンバーナイフで弾くと、ジグザグな乱数軌道で弾をかわし敵集団へ接近。
 焦って飛び退こうとしたところへブースターを点火すると、急速接近によって相手の首をはねた。
 一機撃破。残る二機がビームサーベルを抜いてCovertを狙うが、その注目こそ望んだもの。
「伏兵がそっちだけのモンだと思ったか? ――ジャック!」
 不敵に笑い呼びかけるイルミナに、ステルスシートを払いのけたジャック翁の大十紋字丸が立ち上がった。
「直ちに停止せよ。此処は鋼鉄帝国の領土内である。
 直ちに停止し、国籍と所属を明らかにせよ」
 警告を放ちつつも、一機の胴体をその剣によって切く。
 コックピット内で流れてくるカード型のアイコンの一つをタップで選択。スキルコマンドのタイトルが画面に流れた。
「ジゲン・ダイジュウジ斬」
 特殊なゲートから召喚した巨大な剣を握りしめ、敵機を十字に切り裂く大十紋字丸。
 爆発が起きたその様子に、残る敵機たちは走り出した。
 こちらに向けて……ではない。
 離れるように、言ってしまえば逃げ出すようにアフターバーナーをふかして飛び出したのである。
「逃がさぬ」
 ジャック翁もとい大十紋字丸は振り返り、そして天空を指さした。
「彼らが、な」
 キラリと空に光が瞬いた。
 それは、はるか天空よりフライトキャリーユニットから降下した沙月の花鳥風月であった。
「せっかくエクスギアを使っているのですから普段できないことを試してみるのも一興というもの」
 優しい声で囁くと、自らの上品な動きをそのままトレースした花鳥風月を反転、回転、超大上段からの手刀唐竹割りによって敵機を頭から切り裂き、そして破壊し尽くした。
 大爆発。その衝撃と風圧から逃れるように加速し反転し、花鳥風月へライフルの狙いを定める敵機。
 だが、上空から狙っていたのは花鳥風月だけではない。彼女を運搬していたフライトキャリーユニット――もとい『黒麒・改』騎馬形態が猛スピードで急降下。
 マギラニアREXから予め付与されていたブースターによって加速すると――。
「ツインエーテルブレード、展開」
 鳥の翼のように広げた両腕をエーテルが纏い、剣へと変える。
「連装魔導噴進砲、発射」
 肩から伸びた折りたたみ式魔導砲から特殊弾頭を発射し大爆発を起こすと、その中を駆け抜けていった。
 逃げようとしていた敵量産機たちを花鳥風月による手刀とあわせ次々に切断すると、あとには敵機の残骸しか残らなかった。
「これにて一件落着……いや、まって?」
 ラムダは敵のシグナルが消えたところで、ふと振り向いた。
「報告された所属不明機って、『これだけ』じゃなかったよね?」
 そう呟いた途端、彼女の機体後方に『宇宙』が出現した。
「「――!?」」
 あまりにもおぞましい空気の変化にラムダも即座に気付き、『宇宙』としか言いようのないようなゲートから飛び退いた。
 歪んだ円形のような巨大なゲートが空中に開き、その先には黒い背景に星々のような光が点在する『なにか』が広がっている。
 すぐに解析プログラムを走らせるリアナルといりす。
 あまりに広大に見えるそれは、実際『ゲート』によって全くの別空間に繋がっていることがわかった。
 そして……。
「敵機の反応……例のカスタム機です!」

 いりすが『R×H』を走らせようとすると、それを阻むようにゲートを通じ数機のエクスギアエクスが飛び出してきた。
 両腕に加え背から四本の副腕をはやしそれぞれにビームライフルを握る機体。頑強な戦車に逆関節型の足とガトリングガンの両腕を備えた機体。どちらも特徴的ながら強力そうな機体だ。
「おっと、無粋なことされちゃあ困るんだよね」
 リアナルはすかさずマギラニアREXに備え付けた機銃を乱射。
 スラスター噴射と足の力によって飛び退いた逆関節型の敵機がガトリングガンによる反撃を開始した。
 撃ち合いが始まる中、アウラのRapid-WaveとイルミナのCovertがもう一機を両サイドから殴りつけるように襲撃。
 副腕を展開して防御する敵機の横を、ジャック翁の大十紋字丸がすり抜けていく。
「この特殊空間、何かある。ラムダよ――!」
「任せて! 黒麒、重装騎馬形態!」
 翼を広げて走り出す黒麒。その上に大十紋字丸が跨がり、騎馬状態となって謎の『疑似宇宙空間』へと突入した。
 迎え撃ったのは巨大な、そして足のないエクスギアエクス。であった。両腕と頭を分離し、その全てから激しい光線を放つ敵機の中を凄まじい機動力で駆け抜けていく。
「この空間、飛行能力がなくても『宙(そら)』を走れるのか」
 ラムダの言葉にぴくりと動くジャック翁だが、すぐさま光線直撃の反応を受けて剣を翳した。
 直撃コースの光線を剣で切り裂くように突き進み、距離を詰める。
「任せた、ジャック」
「応――迅刃(じんば)逸体(いったい)!!! ジゲン・イッキセンプウ斬!」

 疑似宇宙空間に同じく飛び込んだ鬼丸、いりす、沙月。
 サーフボードのようなユニットに乗った黒い機体が彼らの横を駆け抜け、その反対側を戦闘機から中途半端に腕と脚をはやしたフォームに変形した機体が回り込んでくる。
 ブレードを叩きつけるサーファーギアを手刀による打ち払いで防御する沙月の花鳥風月。一方で無数のミサイルを鬼丸のアハトはミサイル乱射で相殺。残るミサイルをドリルアタックで強引に突っ切り、相手の機体へと叩きつける。
 一方コックピット内で解析画面を見たいりすは、口元に縦を当てた。
「この空間……やっぱり変です。『何か』によって強制的に生み出されてる。それに……」
 レーダーに反応。
 望遠モードでウィンドウを開くと、巨大な星型の岩石がうつった。否、岩石などではない。それはあまりにも巨大な怪物であった。
「まさか、あれは……『終焉獣』……?」
 星型岩石から無数の怪獣めいた存在やカスタムされたエクスギアエクスたちが出現し、こちらへと向かってくるのがわかる。
 対抗できる規模じゃない。もしこの場所で力尽きれば……。
「皆さん、撤退です! 情報は手に入りました、重要なのはこれを『持ち帰る』ことです!」
 リアナルから付与されたブースターを小脇に挟むようにして反転し、急速バック走行状態のまま『広域EMP弾』を発射。
 激しいEMP爆発が起こる風景から遠のくように、彼女は疑似宇宙空間から飛び出した。
「重力の檻に囚われろ。螺旋重縛波!」
 同じく鬼丸も特殊な砲撃を放つことで交戦していた敵機を氷のフィールドに閉じ込め、素早く離脱。沙月はちゃっかりと敵機の首をその隙に切り落としてから空間を離脱した。
 爆発を背に離脱した直後、ゲートが閉じる。
 振り返ってみても、そこには砂漠地帯しかなかった。
 厳密に国境が定められたわけではないが、ここから先はおそらく砂嵐盗賊団のナワバリだろう。
「大量の終焉獣を呼び出す母体と、特殊空間……あの場所に生身で飛び込むのは、肉体(アバター)が耐えられないかもしれませんね」
 また、この機体の力が必要になるだろう。
 沙月はそんな確信を得つつも、味方たちとの合流を急いだ。

 一方で、アウラたちは倒したカスタム機からパイロットを引きずり出し拘束することに成功していた。
「なんなら殺しても構わない。情報をはかないなら生かしておく必要はないからね」
 そんなふうに言うアウラとは別に、イルミナたちは機体を素早くバラして使われている技術を確かめていた。
「リアナル、これ……」
 イルミナが指さした箇所を覗き込み、リアナルは顔をしかめた。
「最新鋭のエクスギアエクスの技術がまんまパクられてるな……例の『疑似宇宙』でこいつらを活動させるため、か」
 振り返ると、パイロットの男はどこか涼しい顔で空を見ていた。
「無駄だ。私の命など、取引の材料にはならない」
 そう語るパイロットの額に銃を押し当て、引き金をひくアウラ。
 突然何をと身を乗り出すリアナルだが、パイロットの男は黒い砂や泥のようなものになって消えてしまった。
「これは……インスタントタイプのシャドーレギオンか」
 鋼鉄首都進撃の際、ディアナが用意した『即席のコピー人形たち』である。
 腕組みをするイルミナ。
「それに今の男、見たことがあったと思ったんだが……思い出した。伝承王国に攻め込んできた砂嵐盗賊団のひとりだ」
 砂嵐盗賊団のコピーと、最新鋭のエクスギアエクス。そして疑似宇宙と巨大終焉獣。
 戦いの気配に、身が震えた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

リアナル(p3x002906)[死亡]
音速の配膳係
アウラ(p3x005065)[死亡]
Reisender

あとがき

 ――重要な情報を獲得し、鋼鉄帝国へ持ち帰りました。

 ――最終決戦が近づいているようです……

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