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シナリオ詳細

鋼鉄の荒野に花咲きぬ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 『鋼鉄内乱(フルメタルバトルロア)』。『ネクスト』に飛び込んだイレギュラーズ達にとっても記憶に新しい鋼鉄国での動乱は、陥落した首都を奪還することでローレット(と、彼らを雇い入れたゼシュテリウス派閥)の勝利に終わった。新たな鋼鉄皇帝を迎え入れはしたものの、国内には未だ戦乱の余波が残る。鋼鉄国に真の平和が訪れるのは、恐らくもうしばらくは咲きの話になるだろう――。
 閑話休題。
 鋼鉄国は、そのベースとなった国家と同様に、荒涼たる大地の広がり、厳しい冬に襲われる非常に『生きづらい』国である。されど、人々はそんな国にあっても逞しく生き、明日への希望を追い求めている。
 無論、鋼鉄国の南方に座する『カメリア』もそんな中のひとつだが、この都市はそれでも、比較的恵まれた環境にあるといえた。
 何らかの天候上の都合か、はたまた『ネクスト』における気候条件設定の悪戯か、荒れ地が多い中で、この都市は内外にサザンカの木が群生しているのである。
 これらの木を守り神として愛する人々は、その花言葉に従うかのように困難へと進んで挑み、開拓精神が特に旺盛な性分として根付いたのである。
 そんな都市がこれまでの動乱で狙われなかったのは、単純に幸運だったのがひとつ、南方とは言えだいぶ辺境であったことがもうひとつ。首都からみても、敢えて接触するメリットが薄い土地だったのである。
 なら、なぜ今になってその都市の話が話題にあがるのか。答えは当然、『終わっていない鋼鉄の混乱』の余波にある。
「城塞砲発射! なんとしても奴らを近づけるな! 射程なら此方が上だ!」
 カメリアに築かれた簡素な外壁に据えられた大砲から、滑空砲が打ち出される。粗末で脆そうな砲身作りに反して近代的な砲弾は、今まさにカメリアへと近づいてくる異形へと打ち込まれ続けている。
「鋼鉄国に新王あり、正義は我等の手に還ったと聞く! 奴らが如き動乱の亡霊に、切り開かれる我々の未来を奪わせてはならん! なにより――祝祭が近いこの時期に、神樹様に飲ませるのが我等の血であってなるものか!」
 防衛隊長と思しき男の勇ましい声とともに、矢継ぎ早に滑空砲が火を吹く。壁面外周に備えられた(やや型式の古い)榴弾砲は接近区域に向けて、密度は薄いが弾幕を張ろうと必死だ。
「……(発射)」
 だが、それをあざ笑うかのように、頑強な異形――砲撃型エクスギアEX『アルティレーリヤ』は超長距離から砲弾を放ち、炸裂した弾頭から数多の杭状物体が降り注ぐ。それは隊長もろともに防衛隊員たちと砲塔に襲いかかり、周囲に数多の赤いシミを作り出した。
 ……無論、これが街の内外に、そしてサザンカに突き刺さるのは時間の問題でしか無かった。


「現在、辺境の街カメリアにエクスギアEXの編隊が向かっているとの情報が入った。私達も現場へ急行し、エクスギアEXにて迎撃することになる」
 『覆面鉄人』ドムラ・ミンミン (p3y000097)はイレギュラーズ達にそう告げると、自分の背後にある盾を複数マウントした機体(何故か両手は空いている)に視線を向けた。
「ハイ! 質問していいデスカ?!」
「どうしたうるふ。まだ敵の情報も戦場情報も明らかにしていないが」
「イエ、そうではなク……」
 うるふ(p3x008288)は話の触りだけきいて、そわそわとした様子で手を上げた。彼女を示したドムラは、その様子の正体に薄々気づいている筈である。が、指摘するほどの話でもなかったので敢えて視線を反らしていた。
「エクスギアEXに乗れるんデスカ……?」
「そうだが?」
「生体接続型で?」
「希望次第だが」
「戦闘データを反映されて?」
「前のままだとデチューンされてしまうだろう。よくない」
「敵のエクスギアEXとドンドンバチバチと……?」
「そういう依頼だからな」
 うるふは矢継ぎ早に質問を向け、その大体が望みどおりであることに呆然としてから、こみ上げてきた喜びが信じられずに居た。
「なお、敵はどうやらアンカー型のクラスター弾とでも言うべき砲弾を用いる長距離砲撃型を軸に、中後衛メインの編成のようだ。近付かれてもある程度の抵抗ができるらしいから、余り敵の『弱さ』はアテにならないな」
 元の世界どころか私の世界でも条約違反だろうが、とドムラはぶつくさ文句を言っていたが、ロマンに生きるイレギュラーズ各位には聞こえちゃいなかった。

GMコメント

 サザンカ:花言葉は「困難に打ち克つ」「ひたむきさ」など。

●成功条件
 カメリアの街の防衛
 エクスギアEX『アルティレーリヤ』撃破
(オプション)カメリア市街地内への敵勢力の侵入阻止
(オプション)『神樹』の一定以下の損壊状態での戦闘終了

●アルティレーリヤ
 長距離狙撃型のエクスギアEX(戦闘ルール上最大射程4)。受ける距離によって性能が変化する『パイル・クラスター弾』などを有す。近接武器は格闘行動や使い捨て砲身による打擲。
 【反】を有し、本体の体力もそれなりに高め。稀に「エネルギーフィールド(神至範:副、【炎獄】)」を発生させる。
・パイル・クラスター弾:クラスター砲弾よろしく、一定距離の滑空の後に拡散する砲弾。
 基本性能は『物超域:ダメージ中、【万能】【スプラッシュ:中】【滂沱】【崩れ】』だが、レンジ2より近距離で受けた場合、性能が「物中単:ダメージ大【ブレイク】【暗闇】【混乱】【反動小】」に変化。

●護衛機体×15
 アルティレーリヤを護衛、援護射撃を行う兵団。
 兵装はサブマシンガンとヒートブレード、ヘッド・パイルバンカー(隊長機のみ)など。
 基本は包囲戦闘を主とし、付かず離れずの戦闘に終止する。

●神樹
 カメリアの外壁に張り付くように枝を張り巡らせたサザンカ。街の象徴となっている。
 外壁が傷ついた場合、こちらにも傷が及ぶと見て間違いなさそうだ。

●ドムラ・ミンミン
 友軍。盾を複数マウントした見るからにタンクって感じの機体で援護に入る。
 割と死なないので雑に扱うことも考慮すべき。

●超強襲用高機動ロボット『エクスギア・EX(エクス)』
 エクスギアEXとは大型の人型ロボットです。
 『黒鉄十字柩(エクスギア)』に附随した大型オプションパーツを超複雑変形させそれぞれの戦闘ロボットへと変形します。
 搭乗者の身体特徴や能力をそのまま反映した形状や武装をもち、搭乗者にあわせた操作性を選択し誰しもが意のままに操れる専用機となります。
 能力はキャラクターステータスに依存し、スペックが向上した状態になります。
 武装等はスキル、装備、アクセスファンタズムに依存しています。
 搭乗者のHPがゼロになると破壊され、多くの場合爆発四散します。
 搭乗者が装備する剣と同様の剣で斬りかかったり魔術砲撃をしたりと、搭乗するキャラクターによってその戦闘方法は変わるでしょう。
 もしお望みであれば、普段と違うデザインをオーダーしてみるのもいいでしょう。
 ※すべてが専用にカスタムされているため、別の人物が乗り込んだり敵のエクスギアを鹵獲し即座に使用することはできません。逆もまた然りです。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 鋼鉄の荒野に花咲きぬ完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年11月25日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

梨尾(p3x000561)
不転の境界
ハルツフィーネ(p3x001701)
闘神
Teth=Steiner(p3x002831)
Lightning-Magus
モモカリバー(p3x007999)
桃剣舞皇
うるふ(p3x008288)
銀河を狩る獣
カノン(p3x008357)
仮想世界の冒険者
黒子(p3x008597)
書類作業缶詰用
Λ(p3x008609)
希望の穿光

リプレイ

●オペレーション・スタンバイ
「戦禍はまだ収まらないか……まったく、大人しくしていればよいものを……はてさて黒幕は何者なのやらだね?」
「もう戦禍は収束して勝ち目は無いでしょうに、嫌な相手ですっ! 街に、無辜の民に、被害が出る前に片づけるしかありませんね……!」
 『仮想世界の冒険者』カノン(p3x008357)が義憤ゆえに頬を膨らませる傍らで、『黒麒』Λ(p3x008609)は諦めの悪い敵陣営に呆れを滲ませつつ、この一件の背景に思考を向けた。平和に向けて舵を切ったこの国で、未だ暴れる意味があるのか。敵の背後により大きな勢力があるのではないか……その憶測にひとつの回答が示されるのは後のことになるが、今まさに街が蹂躙されようとしているのは間違いない事実である。
 小柄な人形でありながら魔力球がひときわ目立つ『クロス』と、可変機特有の関節系統の多さが特徴的な『黒麒』。両者が駆るエクスギアEXは、何れも普通からややズレている。それが両者の強みということでもあるが。
「超嗅覚ってこういう時つらいですね。残った血の臭いが機体越しでも分かって、間に合わなかった事を知ってしまう……」
「ですが、『間に合わなかった』分の被害になった方々が無辜の民を守れる状況を作ってくれたと考えれば収支は合います。その分を我々が担うと思えば」
 『ここにいます』梨尾(p3x000561)は自分の機体『ホムスビ』の調整を進めつつ、エクスギアに設置されたモニター越しに見えた惨状へ顔をしかめた。乾いた風に乗って届く血腥さは、そう拭えるものでもない。彼の神経を不快にさせるのは、無理からぬ話だ。『書類作業缶詰用』黒子(p3x008597)の言葉は状況の取捨選択を行える冷徹な者の言葉……と取れなくもないが、防衛任務に徹した者達あっての戦場という意味では、亡くなった者に一定の敬意を持っているのが伺える。無個性な外観の機体は、その実敵に回すと厄介な特性を持ち合わせていた。
「キャヒヒ、またコイツに乗れるなんて嬉しいデスネー」
「殲滅型クマさん機『狂熊王』。おっきな木と人々の平和を守る、可愛い正義のクマさん……私専用ならこれしかありませんね」
「専用機は浪漫だから仕方ないよな。俺様の『フラガラッハ』も戦いたくてウズウズしてるみたいだ」
 『アイアンウルフ』うるふ(p3x008288)は専用機『アイアンウルフ』の機体に触れながらどこか恍惚とした笑みを浮かべていた。義に則って戦う状況なのはわかっている。されど、この興奮を抑えよというのはなかなかに無理な話でもある。それは『クマさん隊長』ハルツフィーネ(p3x001701)とか『Lightning-Magus』Teth=Steiner(p3x002831)も同じらしく、それぞれの専用機を見上げて感慨深げであったことから察せよう。一同にはちゃんと使命感はあるのだが、それはそれとして専用機だのエクスギアEXだのが醸し出す浪漫の輝きというのはどうにも目を引いてならないのは事実である。
カメリアの神樹が壊されし時、それはすなわち街の人々の平和な暮らしが壊されし時! "桃剣舞皇"モモカリバー、平和を護りに参上せり!」
「……元気がいいな、君は。現場でも成果が出せれば何よりだ」
 得物を掲げ高らかに宣言した『桃剣舞皇』モモカリバー(p3x007999)の姿に、『覆面鉄人』ドムラ・ミンミン (p3y000097)はゆるく笑みを浮かべ応じた。まあ、顔が概ねマスクに隠れているため、その真意はいまいちつかめないのだが、モモカリバーの専用機が「いかにも」な雰囲気を放っているため、それに気圧されているのだろう。きっとそうだ。
「街を守って亡くなった人々がいる。脅かす者達がいる……彼らが守ったものは自分達が絶対に守り抜きます!」
「システム起動、各部問題無し……エクスギアEX・うるふ機改め"アイアンウルフ"、出る! 暴れるぞ、相棒!!」
「『黒麒・改』、出る」
 うるふとΛ、対象的な2者の合図にあわせ、各々の専用機が射出される。
 落下予測地点はカメリア外壁からやや前、街からアルティレーリヤの射線を切るに絶好の位置。
 要は、落着してすぐ臨戦体制に入る、ということだ。


 アルティレーリヤは飛来する影を見やり、そして外壁のシミと化した防衛隊に目を向けた。大したことのない連中、勝ち目なき闘争。何のためにあえて向かってきたのかもわからない連中は、しかしこの瞬間の為の僅かな暇を作ったらしい。
 護衛を任せた無人機にコンソール上で指示を飛ばした乗り手は、前進するそれらと入れ違いに後方へと退いていく。
「逃がしませっ……!?」
 機敏にその動きに食らいつこうとしたホムスビはしかし、体当たり気味に突っ込んできた護衛機体に行く手を遮られる。落下地点に向かってくる周到さは、相手の警戒心が強いことを認識させるだろう。……しかるに、放たれた火は何体かの護衛機体の注目を彼に向けることに成功する。
「近づかれれば距離をとる。当たり前の動きだね。つまりそれは、壁から遠ざかるということ」
「張り付いて全力を出させぬ工夫も必要ですが、相手の狙いを考えれば後退させるのもひとつの手ではあります」
 黒麒から響いたΛの言葉に、黒子は操縦席で首肯する。イレギュラーズ側を包囲して足止めし、最長射程から仲間も厭わぬ砲撃を狙う……手はずとしてはそんなところだろうか? 出来たとして、押し込まれれば後退を続け、カメリア襲撃がならず。足を止めれば、戦局を覆したイレギュラーズが張り付いてくる。アレは此方を警戒するあまり、安全策に身を振りすぎだ。
「まずは数的不利を覆す。丹念にお掃除させて貰うぜ?」
「雑魚とはいえ弱敵ではないだろうな。油断はすまい」
 フラガラッハは用心深く距離をとった数体目掛け呪雷を放ち、モモカリバー機は果敢に攻め立てる個体へと斬撃で応じる。呪雷を受けた機体は前進する足を止め、何が起きたのかを理解できぬまま互いを見やった。隙だらけだ。狙ってくれといわんばかりに。
「クマさんの愛らしさの前に、ひれ伏すといいのです」
 そこに飛び込んできた狂熊王の咆哮の威力たるや、筆舌に尽くしがたい。天使のごとき光をまとった機体から放たれた音響爆撃は、その外見の可愛さからは到底想像し難い猛威を振るった。……然るに、それを避ける術のない機体群が相次いで爆発四散したのも頷けよう。
『……(面倒)』
「なん、だっ」
 アルティレーリヤがいる方から聞こえた若い女性の吐息に、モモカリバーが問い返しかけた。が、横合いからの衝撃にたたらを踏み、次いで自分がいた位置に降り注ぐアンカークラスター弾の猛威に息をのむ。見れば、フラガラッハも近い位置で膝をついているが、敵の射線から逃れている。不幸にも巻き込まれた敵機があるようだが、その程度潰されても問題ないという判断だろうか?
「2人とも機体は無事だな? 無事じゃないなら脱出してほしい、私のはまだ耐えられる!」
「ドムラ! お前はうるふに頼まれごとしてただろう、そっちはどうした!?」
「雑兵を抑える役目は果たすとも。その前に味方が居なくなっては私も立場もないだろう」
 Tethの焦りを含んだ言葉に、しかしドムラは気にした風でもない声で応じた。彼の役目は護衛の足止め、以て仲間の接近を容易たらしめること。つまり仲間を守ることは勘定には入っていないのだが……。
「キャヒヒヒ、梨尾サマに群がった連中の脇ががら空きデスよ!」
「行け、黒麒! 魔導砲で薙ぎ払え!」
「各機、ノリがいいのは結構ですが損耗率が心配ですね。こちらで動きを止めますので、損傷のある機体は私の周りへ。支給、修理します」
 アイアンウルフが気前よく炎の砲弾をぶちかますと、黒麒は前進しつつ魔導砲を放つ。拡散されたエネルギーはパイルクラスター弾で受けた不調を見る間になおしていく。
 黒子の機体を見れば、妨害行動を繰り返しつつも周囲に治癒の霧――転じて、治療用ナノマシン群体が漂っている。口数は少ない黒子であったが、されど確実に仕事を熟す能力は、十二分な経験を窺わせた。
 そして、黒子によって動きを止められ、前進したドムラ機や黒麒らによって護衛機から解き放たれたホムスビは、アルティレーリヤを射界に収めるべく前進する。邪魔をすべく追いすがろうとした個体は、狂熊王の咆哮の前に次々と重篤な損傷を余儀なくされた。
「神樹に水ではなく血を飲ませるなんて……機体が異形なら心も異形ですか。街や外壁は時間と資材があればいつか直せます、でも人や植物は戻ってこない。自身の為に争いを起こし、悲しみを増やすその行い……ここで終わらせます!!」
「ええ、それ以上はやらせませんとも。お覚悟を!」
 梨尾の声をホムスビが増幅させ、自らを狙えとばかりに咆哮をあげる。カノンが駆るクロスは乱戦となった状況で先んじて前に出ていたが、ホムスビが追いつくまでの間に少なくない損傷を負っていた。だが、クラスター弾の拡散を体を張って止めたことで味方の損害を最大限軽減することに成功する。
 ホムスビによる挑発行為に『乗り手』がどう感じたかは定かではない。ただ、アルティレーリヤの制御系統はホムスビを明確に敵とみなし、照準を定めた。――回避は困難、貫通力は十分、決して無傷では済まされまい。だが、それでいい。ただの攻撃で、ホムスビを倒せはすまい。


「まさかとは思いますが……あなた達のような量産機が、ラブリーなクマさん機に勝てるとでも本気でお思いで……?」
「そりゃあそうだな! 俺様達の芽が黒いうちに鋼鉄でどんぱちやろうとした時点で負けてんだよ、お前等は!」
 狂熊王から響いたハルツフィーネの声には、心からの疑念と哀れみがありありと表れていた。護衛、それなりに頑丈。それは結構、だが『それなり』で勝てると本気で思っていたのか? 彼女の言葉には傲慢でもなんでもないただの事実が潜んでいる。Tethもフラガラッハのコクピット越しに見える相手の惨状を笑うでもなく観察している。……破壊されることを気にもとめず、ただ目的達成のために突き進むこれらの哀れを。
「ドムラサマ、残りは抑えて頂いて大丈夫デスカ?」
「引き受けよう」
 うるふの問いかけに二つ返事で応じたドムラは、誘引信号弾を放ち残り数機となった護衛機を引きつける。外壁から離し、アルティレーリヤからも遠ざける。撃破には至らぬかもしれないが、時間稼ぎの用は足せるか。
「あとはお前だけだなアルティレーリヤ! この黒麒の力を存分に見せてやる!」
「動きは十分に鈍らせました! もう逃げられませんよ!」
 Λの威勢のよい声にたじろぐように後退の構えを見せたアルティレーリヤだったが、しかし足周りの状態が芳しくない。クロスに、そしてホムスビに執拗に纏わりつかれたことで大きな負荷がかかった影響だろう。
 エネルギーフィールドを展開し、その奥から吐き出されるクラスター弾はたしかに脅威ではあった。単発砲撃としてみても、相応に見るところのある破壊力を秘めていたのだ。
 それでも、尚。イレギュラーズ相手の数的劣勢は覆し難く、逃げ難い。
「クマさんのツメは魔法のツメ。どんな距離をものともせず、獲物を狩ります!」
「……と、いうことです。残念ですが、ここまでです」
 ハルツフィーネの可愛らしい宣言は、しかし可愛げのない威力で放たれる。黒子も眼前で繰り広げられる暴威には、もはや多くを語る口を持っていない様子だった。

 ……そして、戦闘終了から数時間後。

「いいですねお祭り! サザンカの香りも、この食事とかも!」
「食わせて貰えるなら断っちゃいけねえからな! ……ちょっと後ろめたいけど!」
 カノンとTethを中心とした『女性陣』は、カメリアの町の祭りに招かれるままにあちらこちらへと歩き回っていた。全体的に裕福と言い難い鋼鉄国の町で、こうも豊かな祭りができるとは。これも神樹の思し召しということなのだろうか? などと梨尾はちらりと考えたが、仲間達が楽しそうなので深く追求することはやめておく。
「外壁の復旧も考えねば、だな。まだ無事なエクスギアでなんとかなるだろうか?」
「飽くまで戦闘用だから作業はできないでしょうけど、足場にはなるのでは?」
 他方、Λや黒子、ドムラといったそれなり真面目な面々は外壁補修への算段をつけつつ、いかに外壁を抱え込んだサザンカの根を切らずにすすめるかで頭を悩ませるのだった。
 外壁の高さそのものも、結構な悩みのタネではあるのだがそれはともかく。
 ともあれ、『終わった後』を考えられるのは、町に迫った危険を回避したからだ。今の彼らには、『その後』を楽しみ、思い悩む権利がある。――この時点では。

成否

成功

MVP

ハルツフィーネ(p3x001701)
闘神

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。
 引き撃ちしても移動妨害しても蹴散らされていく……。

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