PandoraPartyProject

シナリオ詳細

鍋やろうぜ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●鍋奉行の鍋
 とある幻想の遺跡の奥。
 初雪の降る頃に、その封印は解けるという。
「ここにあるんですかい? そのナベブギョーの鍋とかいう……」
「あるって話だ。そいつを使えばどんなものでも上手く仕上がるっていう……」
「へへ……高く売れやすぜ」
 幻想にはその手の変なものを買う貴族がたくさんいる。
 すでに2人は皮算用を始めていたが……たいした罠らしい罠もなく、その場所に辿り着いてしまう。
 そしてそこには、確かに祭壇に掲げられたかのような土鍋が1つ。
「陶器か……価値はよく分かんねーが……」
 男の1人が触れようとしてしかし、声が響き渡る。
―具材は如何に―
「は?」
―具材は如何に。芋か、ニンジンか、肉か。どれも持たぬように見える―
「な、何言ってんだあ?」
―具材も持たずに鍋とは……恥を知れ。ならば貴様を具材にしてくれる―
「あ、兄貴ィ……」
「う、うおおおおおお!?」
 鍋が消え、2人の眼前に出現したのはおたまと菜箸を持つ、超巨大な金属ゴーレム。
 ギラリと光るその輝きは、あまりにも強そうだ。
「に、逃げろおおお!」
「案ずるな。じっくり出汁をとってやろう」
「ふ、ふざけんなああああ!」
 男たちが逃げた後、ゴーレムの姿は消え……再び祭壇に掲げられた鍋だけが残っていた。

●鍋やろうぜ!
「というわけで、鍋の季節です」
 チーサ・ナコックの言葉に集まった面々があいまいに頷く。
 まあ、そんな季節ではあるだろう。
 ところによっては初雪も観測され始め、日々の気温も下がり気味だ。
 しかし、鍋と仕事に如何なる関係が?
「鍋奉行の鍋と呼ばれるものがあるです。この季節に封印が解かれる洞窟に存在する、決して動かす事叶わぬ鍋です」
 それは、あらゆる材料を最高の味へと引き出す力をもった鍋なのだという。
 しかし、鍋を使うには試練を受けねばならない。
 すなわち……具材と物理的に向き合うことである。
 牛肉であれば牛頭のモンスター、豆であれば豆頭のモンスター……それらと戦って勝利しなければならない。
 いや、豆頭のモンスターとはなんだろう。ちょっと何か異常な単語が通り過ぎた気がする。
「試練をクリアすれば、鍋を使う権利が生まれるです。絶対に失敗の有り得ない、何倍にも旨味の増幅される……そんな鍋を味わえるのです」
 この寒い冬が訪れようとしている季節に、美味しさが確定した鍋というのは……なるほど、確かに良い物だろう。
「地図は此処にあるです。頑張ってくるですよ」
 チーサはそう言うと、洞窟までの地図を渡してくるのだった。

GMコメント

与太です。
洞窟を通り抜けて鍋のところへ辿り着くと、持ち込んだ具材が巨大化して胴体が生えたような人型モンスターとプロレスをすることになります。
勿論、持っているスキルをプロレス技だと言い張ってもOKですし、ガチのプロレスを挑んでもOKです。
なお、味の良い食材ほど強くなります。また、野菜よりお肉やお魚のほうが強いらしいです。

無事に勝利数が敗北数より多くなれば、鍋を使う権利が得られます。
つまり強い食材を負け確として戦いに自信がない人をあてるのもOKってわけです。
また、持ち込む食材が多ければ連戦になりますが、タッグバトルなどにしてもOKです。

無事に勝てばお鍋が楽しめます!
こたつもついてくるので、楽しい鍋をしましょう!
ええ、そんな感じです。深く考えてはいけない。リングの神はノリに宿る。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • 鍋やろうぜ!完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年11月08日 22時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
エル・ウッドランド(p3p006713)
閃きの料理人
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
キルシェ=キルシュ(p3p009805)
光の聖女
津島 蒼弥(p3p010210)
いつだって俺は命懸けだ!
ヘルミーネ・フォン・ニヴルヘイム(p3p010212)
凶狼

リプレイ

●鍋奉行の鍋
 冬は鍋。美味い鍋が食えるとあれば、その労力を惜しまない勇士たちも存在する。
 鍋奉行の鍋眠るこの遺跡にも、そうした勇士たちが集まっていた。
「さて、今回の仕事は、鍋を食う事だ……いや、持ち込んだ食材の擬人化とプロレスしなけりゃならないんだが。今更ながら、この世界は不可思議だな……」
『“侠”の一念』亘理 義弘(p3p000398)の感想は、もっともだとしか言いようがないだろう。
 何がどうなったら鍋をする為に食材とプロレスをすることになるのか。
 確かなのは、世界にはまだまだ不思議が満ち溢れているということだろうか。
「鍋の季節だな! 鍋はみんなでワイワイ食べられるから好きだぞ! 俺は肉が好きだぜ! ……どうして俺を見た? や、俺は食材じゃねぇからな!?」
「美味しいお鍋! 寒い時に食べるとすっごく美味しいって聞いたの! それをすっごく美味しくしてくれるお鍋があるなんて素敵ね! でも美味しいお鍋食べるためには、戦わなきゃいけないのね……ルシェ、戦うの得意じゃないけど、美味しいお鍋のために頑張るわ! カイトお兄さんとリチェは食材じゃないのよ!?」
『偉大なる大翼』カイト・シャルラハ(p3p000684)と『リチェと一緒』キルシェ=キルシュ(p3p009805)がそんな事を言っているが……食材適正のあるカイトに関してはちょっと説得力がないかもしれない。
「……そしてどうやら、あれがその鍋ってことみたいですね」
「そのようだな」
『見たからハムにされた』エル・ウッドランド(p3p006713)に『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)が頷く。
「鍋……鍋か。冬に嫌と言うほど食う機会が増えるからそこまで好きでは無いんだがな。しかしまあ、最高の味を引き出す鍋とは興味深い。どんな味か是非この機会に味わってみたいものだ」
「そして(闇)鍋と聞いてヘルちゃん華麗に参上なのだ! フフフ! ヘルちゃんほど(闇)鍋に精通した者などいないのだ! 皆に美味しい(闇)鍋を作ってやるのだよ!」
 そこに闇鍋と勘違いしたヘルミーネ・フォン・ニヴルヘイム(p3p010212)が自信満々の声をあげて……ヘルミーネたちの視線の先にある鍋奉行の鍋から声のようなものが響き始める。
「その意気や良し。ならば鍋を使うに相応しいかどうか……食材と向き合い、その身で示すがよい」
「よし、退院祝? に仕事ついでに美味しい鍋で腹ごしらえしましょうか!」
『狐です』長月・イナリ(p3p008096)が気合を入れ叫べば、鍋が消えリングが出現する。
 まるでそこに上がって来いと言っているかのようだ。
「鍋と向き合う(物理)ってなんだよ! 食材とプロレスってなんだよ! 少年漫画か? グルメアクション漫画なのか!? 普通に蟹鍋くーわーせーろぉー!!」
『いつだって俺は命懸けだ!』津島 蒼弥(p3p010210)は叫びながらも、両拳をガツンと叩き合わせる。
(ルールがよく分からんがとりあえず俺は負けたくないから勝って鍋を食う!! でも負けたくねぇとかガキ臭くて言えねぇよ。野菜なら勝てそうだな!)
 そこまで一瞬で考えると、蒼弥は叫ぶ。
「よし、野菜は俺に任せろ!! まぁ野菜は栄養あって体にいいしな! ワッハッハー! この野菜ハンター津島に任せなっ!」
 そう言って蒼弥はリングに現れた白菜と春菊を見てリングに上がる。
 1人で充分だぜ、と言わんばかりのその姿は……実に、輝いていた。

●遥かなる鍋を求めて。
「知ってっか、春菊って春じゃなくて冬の食べ物なんだぜ!!食らえっ! 俺の百裂鉄拳オラオラオラオラァアアって手ぇイッダッッッッッ!!」
 拳闘と蹴戦で後先何も考えず突っ込んだ蒼弥だが、カットに入った白菜の見事な防御技術に驚きの表情を見せる。
 だって今まで戦うとか野蛮なことしたことないもん、とは本人の談だが……リングは忖度をしてくれない。
「俺は負けるとかしないし! どっからでもかかってこいやァ!! 矯激の津島の実力見せてやんよ!」
 挑発する蒼弥に春菊のドロップキックが炸裂し、蒼弥はロープに叩きつけられ……戻ってきたところを白菜のエルボーが迎撃する。
 レベル1とか以前に、人数差が大きい。それを悟った義弘がリングに乱入し、春菊にギガクラッシュドロップキックを放つ。
「俺はプロレスはよく分からねえが、それらしくやってみるしかねえな!」
 これはルール違反ではない。相手も2人なのだから、タッグマッチとして機能しているのだ。
「……どうやら今ので春菊はダウンみたいだな」
 起き上がってこなくなった春菊が消滅したのを見て、義弘がニヤリと笑う。
「いくぞ、さっきのなんとか拳に合わせていく」
「お、おう!」
 蒼弥の百裂鉄拳という名の拳闘攻撃に義弘の一撃が加わり、白菜も見事KO。
「ダーッ!」
「よっしゃああああ!」
 見事勝利のゴングが鳴らされ、蒼弥と義弘の勝利が確定し……続けて戦う義弘をリングに残し、蒼弥がリングを降りる。
 そうしてリングに現れたのは、鮭の頭を持つ怪人だ。
(鮭は煮て良し、焼いて良しの万能魚介だ。万能なだけに、敵にした場合はかなりの強さだと思われたが……まあ、実際強ぇなコイツは)
「うまい鍋を食う為にも、相当気合い入れなけりゃならないだろうよ」
 そして始まりのゴングと共に義弘の電撃デスマッチばりのギガクラッシュドロップキックが放たれる。
 先程の様子見とは違う本気の一撃を鮭は腕をクロスさせてガードするが……ロープに吹き飛ばないだけでも相当だ。
 しかも魚の目ではいまいち、どの程度効いているのか義弘としても判断し辛い。
 だが引くわけにはいかない。伝家の宝刀、バスタースマイトVのラリアットで殴り付けて……そこで、義弘は攻撃を中止する。
「プロレスとあらばこちらも攻撃を受けなくてはならねぇ。正々堂々受け止めてやらぁ」
 なんたるプロレス精神か。
 その心意気に応えるかのように、鮭のフライングクロスチョップが義弘に炸裂し、その衝撃で義弘はリングのマットに倒れる。
 なるほど、中々キレのある一撃だ。
 だが……それでも、10カウントはいらない。
 トドメを刺しにこようとした鮭へと起き上がりざまのバスタースマイトVのラリアットが炸裂し……酒はマットに倒れ起き上がってこなくなる。
「ダーッ!」
 勝利のゴングが響き、義弘はタッグ戦に続きソロ戦でも勝利をきめる。
「よし、次は私です! どんな食材でも美味しい鍋料理になる鍋がある…と聞きまして! 私がいつも食べてる物も美味しい鍋料理になりますよね?」
 義弘とハイタッチで交代したエルの前に現れるのは……干からびたパンだ。
 正直おいしくない……パンとしての役目を果たすのが難しそうなパンだが、エルは「噛めば噛むほど味が出る」と言っていたりする。
「アレって……パン、か?」
「はい、「干からびたパン」です!小さい頃から食べ慣れてる、大抵のパン屋さんでは、廃棄処分されてるパンです」
 蒼弥の疑問に、エルは頷く。
「おつとめ品だから安いし、よく食べてます……それに私のギフト能力でも作れるし。なんで……捨てているのかな? まだまだ食べられるのに」
 そう、エルのギフト「手のひらの恵み」は1日1回だけ干からびたパンを作り出せる。
 それ自体は素晴らしい能力だし、捨てているのは売り物にならないからだが……とりあえずさておこう。
 その辺りは無闇に突っ込んではいけないものだ。
 とにかく干からびたパン頭の怪人は、あまり強そうではないが……タフそうではある。
「なんでパンなのかは……ミルク鍋やポタージュ鍋にカレー鍋、トマト鍋、ブイヤベース鍋のシメになるって前に調べましたから。たまにはうどんやご飯以外のシメも良いと思うんです、駄目ですか?」
 別にダメではない。鍋奉行の鍋は干からびたパンを食材と認定しているのだから。
(う~ん、食材を……攻撃するのは気が引けるのですが)
 そこは大丈夫だろう、干からびたパンは食材だが干からびたパン頭の怪人は断じて食材ではない。
 ともかくそんな怪人相手にエルの射撃が突き刺さる。
 堂々たる凶器攻撃である。だが凶器攻撃もプロレスである。
 見事な引き撃ちに干からびたパン頭の怪人は動かなくなり……エルの勝利が確定する。
 そして、次は出てきた人参怪人を義弘が沈め……世界の番である。
(正直この機会に菓子をぶち込んだ甘い鍋を堪能したい気持ちもあるが……好奇心であって興味は然程無いし、何より他のメンバーに悪いからな)
 持ち込んだ人参はすでに義弘が倒した。そして世界の相手は蟹だ。
 蟹鍋といえば、鍋界の四天王の1人といっても良い程だが……現れた蟹怪人は、相当強そうだ。
 腕の太さなど、世界の首の2倍くらい太い。
「ところで俺の攻撃力の無さを知っているか? 下手すりゃ新米のイレギュラーズにすら負けかねない低さだぞ。どう考えても無理ゲーだ……負ける気で挑もう。肉弾戦には向いてないモヤシ野郎だからな」
 響くゴング。負ける気で挑み……それでも世界はただ負ける気はない。
(さて負ける気でとは言ったが、だからと言って何もせずに負けるというのは駄目だろう。あと俺だけ負けたとかだと地味にカッコ悪い。できる限りはやってみよう)
 世界が選んだのは茨の鎧を纏いながらミリアドハーモニクスでの耐久戦だ。
 これだけでも、とんだ泥仕合になりそうだ。
 ついでにジーニアス・ゲイムで防御面をこれでもかと強化する。
 更に攻撃する機会があればブラックアウトで敵を削る作戦だ。
「こっちの準備を待ってる……か。なるほど、プロレスだ」
 かかってこい、と。クイッと手招きをする蟹に世界は攻撃を仕掛け……反撃とばかりに繰り出された蟹のローリングソバットからのバックドロップで見事にリングのマットに沈む。
 やはり蟹は強い。良い蟹だから更に強い。
 世界は蟹に優しくリングの外に運ばれたが……1敗くらいはどうということはない。最終的に勝利数で勝ればよいのだ。
 そしてやれることをやった世界は、それだけでカッコいい。
「世界お兄さん、無茶はメッ、なのよ」
「それについては言い訳もできないな」
「次はルシェの番なのよ!」
 そうしてリングに入るのはルシェ。相手は……豆腐頭の怪人だ。
 鍋には付き物の豆腐だが、単体で主役を張ることは少ない。
 何故ならば味としては主張の強いものではないからだ。
 むしろパートナーとして戦う時の味に定評のある豆腐。
 ならば、ルシェには充分以上に勝機がある。
「お豆腐さん、ルシェが勝てるか分からないけど、勝てるように頑張るわ!」
 キルシェが選んだのはマリオネットダンスでぐるぐる巻きにしたり、食べやすいサイズにカットする戦法。
「お豆腐は、凄く簡単に切れる食材って聞いたから!! 小さくカットし過ぎたら……勝負終わったら、元に戻ると信じるわ!」
 それは迷いのない凶器攻撃。だがそれもプロレスだ。
 豆腐怪人は一瞬で切り刻まれ、ルシェの勝利が確定する。
「よし、この勢いでヘルちゃんもいくのだ!」
 ルシェと交代でリングに入ったのはヘルミーネ。なんと連戦希望である。
「まずはキルシェちゃんご希望の「ネギ」なのだ! お鍋に欠かせないよね、ネギ! そんなド定番のネギは必ず入れてやるのだ! ……って、食材の擬人化キモッ!? な、何なのだ! このネギ頭のモンスター!?」
 そう、ヘルミーネの目の前にいるのはネギ頭の怪人。
 今更ながら、凄いキモい。
「だが、ヘルちゃんは容赦しないのだ! オラァ! 食材置いてけなのだ!」
 ドロップキック的なバーストストリームはネギ怪人を一瞬で倒すが、まあ順当な結果だろう。
 そして次はカレールー。勿論カレールー頭の怪人である。
 これは難題だ。何しろカレーはいるだけで場をカレーに染める最強具材だ。
 それは極端なカレー信者であるヘルミーネも知るところだ。
「鍋だろうが何だろうが「カレー」にしてしまえば美味しいのだ! って、カレーモンスターもキショいのだ! でも、容赦しねぇのだ!死にさらせぇ、オラァ!」
 ラリアット的なバーストストリームは……しかし、カレーに受けきられる。
 仕方ない。カレーは最強に美味しい。その強さも最強に近い。
「ぐあああああああなのだー!」
 故に、カレールー怪人のスリーパーホールドは強烈で。耐え切れずにヘルミーネがタップしたことで1敗が確定してしまう。
 だが、大丈夫。1勝はしているのだから。
「最後は「唐揚げ」なのだ! 酒のお供にピッタリのおかずなのだ! 異論は認めねぇのだ! えっ? 鍋に関係ない? うるせぇ! ヘルちゃんが食べたいから入れるのだー!」
 極端な唐揚げ信者であるヘルミーネの玉砕覚悟のバーストストリームは、見事唐揚げ怪人に受けきられる。
 唐揚げの美味しさを思えば仕方がない。
 コーナーから飛んだ唐揚げのプランチャ・スイシーダが炸裂し、ヘルミーネはKOされる。
 だがそれでも問題ない、勝ち越している。
「さ、次は私ね!」
 リングインしたのはイナリだ。
 用意したのは8人前の鍋の具材……質の良いバナメイエビ・伊勢海老・ロブスター。そしてパイプ椅子である。
 パイプ椅子は食材ではないが、どれも素晴らしいものだ。
 となれば、なんとトリオでの勝負になる。
 これにはカイトと義弘が参戦し、戦力的には充分だ。
「とはいえ私はプロレスは初経験、そんな初心者の私に最適なのがこの試作型ルチャリブレマシーンってわけね」
 技の名前を叫べば、マシーンが自動でプロレス的な行動を実行する素敵な品物であり、なんだかこの日の為に用意されたかのようなベストアイテムである。
 最初に【アニェスの孤高】で準備を整えたイナリは空手チョップ、16門キックで攻めつつ、隙を見てラリアート、頭突き、を仕掛けていく。
 技の名前を叫ぶという弱点があるにせよ、プロレスは基本的に避けないので何も問題はない。
 義弘とカイトもそれぞれ伊勢海老とロブスター相手に苦戦しつつも善戦している。
 敵が倒れたら顔面にエルボードロップ、ジャイアントスイングで追撃、後は卍固め、逆エビ固めで関節技で止め……と、そこまでイナリは試合を組み立てながらも思う。
「このマシーンがあるから華麗な技を繰り出せるってわけよ! 今回は欠陥品の対策も完璧、誤作動で腕の関節が増えたり、誤作動で頭部とか上半身が180度回転したり、人体構造を無視した動きをしてもEXF100だから怪我はしないはずよ! たぶん!」
 何やら恐ろしいことを言っているが、今のところ暴走はしていない。
 不利になった時の為のパイプ椅子も用意したイナリの戦術は見事に功を奏し……ここで3つの勝利が確定し、ラストのカイトへと繋がっていく。
「さあて、ラストは俺だな!」
 カイトが持ち込んだのは焼き鳥屋の立花・五郎兵衛から仕入れた鳥肉だ。
「流石に使い魔兼食材のふぇにっくすたんを借りると強さが段違いになると思われるので普通の鶏肉。ただ、そこんそこらの肉では妥協しない漢なので、ちゃんと「鍋用」の美味しい「鶏肉」をくれたのだ。一流の焼き鳥屋だからね、食もこだわるよね。当然だよね」
 カイト自身もちょっと食材を見る目で見られていたのは秘密だ。
「ところで、俺を食材として選んだ場合は強い俺が出てくるのか? ちょっと興味あるな」
 持ち込まれた食材に反応する場所だが……さて、どうだろうか。
 出てきたのは鶏肉頭の怪人だ。
(さて……俺は筋肉質のとりさんだが、結局は鳥なので比較的軽い。ので、真正面からぶつかるのはやや不利。基本的には飛びかかって上から強襲する形になるな)
 となれば、スピード勝負。カイトはリング上を走り、あるいは飛んで。翻弄するような動きを始める。
「フェザースラッシュ!」
 キス・オブ・ストークをあくまでそう言い張りながら、カイトの攻撃が炸裂する。
 強い。この鶏肉怪人は強いが、それは味の保証の証でもある。
(武器は使わねえ。パフォーマンスが大事。観客居なくてもプロレスだからな……いや鍋奉行が居たわ)
 あと観戦モードに入っている仲間たちも観客だ。故にプロレス精神は大事だ。
 1回でも被弾したら九天残星。そう決めていたカイトは、攻撃を受けると同時に、ふわりと低空飛行モードになって本気を出す態勢に入る。
「俺に触るとは中々たいしたもんじゃねぇか。ならもう1段階上げていくぜ!」
 鶏肉に負けるとか猛禽に許されねぇからな、などと言っているカイトの必殺技は闇の帳で一瞬気配を消し、その間に飛び上がって前方に2回転のプレスの『フェニックス・スプラッシュ(レッドコメット・TS)』だ。
 翼も使ってしっかりとプレスする一撃は、鶏肉を見事撃破する。
「あとは喰われちまいな!!」
 そんな決め台詞を放つカイトに、第2回戦の相手が現れる。
 やはり自分か。そんな事を思うカイトの目の前に現れたのは……座禅を組むミニカイトが頭部になっている怪人だ。
 頭部のないビキニパンツの男にカイトが座禅しているような、そんな不気味を極めたような怪人だ。
「ひえっ」
 キルシェは思わずそう言いながら後ずさってしまうが……流石に義弘もドン引きだ。キモさのチャンピオンが過ぎる。
 思わずカイト本人もドン引きなその怪人の……閉じられていたミニカイトの目がカッと見開かれて。
 その後のジャンピング・ニーパットから繋がるコンボは実に見物だったが……とにかく、全体の勝敗数で言えば勝利である。
「味噌仕立てに石狩鍋風味……まあ、どんな出汁だろうと鮭がうまくないのはありえないがな」
 心に強い攻撃を受けたカイトがちょっと呆けているが、義弘は軽く突いて治す。
「しっかりと煮込まれた鮭に味の染み込んだ野菜、それらを楽しみながら白飯を食う……と。日本的で懐かしいな……」
 そして仲間内で鍋をつつきあうのも懐かしい、などと義弘は思う。
(昔はおやじや組の連中とよく鍋をした酒を酌み交わしたもんだ。まあ、今となっちゃ思い出なんだがよ)
 古き任侠の世界を思い出す義弘だが、しっかりと意識を取り戻したカイトはその間に鍋戦争にしっかりと参戦している。
「肉、魚、少し野菜、肉! お鍋も戦争だ! 今までの戦闘とか比じゃない。弱肉強食!」
「うーん、パンも美味しくなってます!」
 エルも美味しそうに食べている中……世界は皆の皿に積極的に取り分けていた。
 好きな奴が好きなだけ食べる方が鍋奉行の鍋も喜ぶってもんだろう……とは世界の談だが。
 1人だけ何も食べないのも白けるからと、人参とか、あと持ち込んだ菓子折りとかを食べていた。
「やはり甘い物は欠かせない……」
「エビも美味しくなってるわね! ふふふ、完璧」
「美味しい出汁がしみ込んでみんな美味しいわ! みんなほどお肉も量も沢山食べられないけど、みんなと美味しいお鍋食べるって幸せね!」
 イナリにキルシェも、美味しく鍋をつつく。
「蟹だ蟹だ!! 蟹はあるか? あるか?! よし早速食べよう。流石世界だ、それでこそ男だ! よっイケメン !二枚目! 男の中の男! お前のお陰で俺は蟹にありつけるぜ。ぐへへへ、金を出さずに食う蟹はいつもの倍美味いなぁ!! 異世界転生したらタダ蟹鍋できた件って小説書いたら売れるだろコレ。よし、無事日本に帰れたら編集長の頭企画書で叩くぞォ!」
 蒼弥が世界に感謝しながら蟹をつつきながら何か金権に塗れたことを言っているが、それもまた蟹のなせるパワーなのだろうか。
「あはは、蒼弥は元気なのだ! それにしても……くぅ! やっぱり酒を飲みながらの鍋は最高なのだ!」
 上機嫌にヴォードリエ・ワインを飲みながら、ヘルミーネも鍋をつついて。
 そして、思うのだ。鍋は全員で食べるからこそ美味しい……と。
 そんな、終わってみれば素晴らしい一日であった。

成否

成功

MVP

カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽

状態異常

なし

あとがき

コングラチュレーション!
皆で鍋を楽しみました!

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