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シナリオ詳細

<Closed Emerald>『枯渇の女王』浄化クエスト(2/2)

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●翡翠の異常事態
 R.O.Oに於ける『翡翠』方面のサクラメント一斉停止――それに併せて進行する翡翠の国境封鎖は、かの国内に現れつつある『大樹の嘆き』、その理由を考えれば合点のいくものであった。
 『大樹の嘆き』は、翡翠各所にある取り立てて成長した樹木、崇拝の対象となりうる『大樹』たちが傷つけられることにより防衛機構として発生する。
 それは基本的に意思疎通を可能とせず、無差別に敵と見做したものを排除しようとする制御不能の暴力だ。それを発生させ得る『余所者』を炙り出し、放逐するためにかの国は国境を封鎖し、内部の敵を処理すべく動いていたのである。
 しかし皮肉なことに、国境の封鎖は『余所者』……所謂『バグNPC』達による内部からの蚕食を歓迎するような下地を作ってしまったのだ。
 国境を封鎖したがゆえに外部の助けを借りられず、外部に情報が漏れ出ないがゆえに状況がつかめない。彼等は己の行いが尽く裏目に出たことを遅まきながら理解する。それでもなお、理解できない者もいるだろうけれど。
 兎角、翡翠の状況は風雲急を告げている。……そんな中で一部のイレギュラーズのクエストウィンドウには、ガイドビーコンが光り、クエストの開始を告げているのだが……。

●Quest Activated.
 ――私は詳しく知らないのだけれど……この体質を治す薬が必要なの。
 『枯渇の女王』こと、アリス・フェアリーテイル(p3x004337)と『混沌』で浅からぬ関係にある「玖珠来 えみる」という女は、そんな言葉を残してワープするかのように翡翠と砂嵐の国境線から姿を消した。
 或いは、新たなクエストのための再配置という形で、システムに操られたのかもしれない。アリス、そしてベネディクト・ファブニル(p3x008160)の2人にアクティベートされたクエスト名は『枯渇の女王の浄化(浄化シリーズ)』。いよいよもって彼女に対して何らかの解決策が生まれるのだろうか――クエストのガイドビーコンに従って翡翠に忍び込み、奥へ奥へと向かう一行の前に現れたのは大量の『大樹の嘆き』の姿であった。
 みれば、草で編んだ西洋龍めいた姿をしたそれらは『枯渇の女王』そっちのけで、というか、あろうことか彼女と共闘するかたちで目の前の巨体と闘っているではないか。
 枯渇の女王に戦闘能力は無かったはずだが、どうやら大樹の嘆き達を急速に衰弱させる代わりに強力な力を与えている……と、思われる。とはいえ、彼女の意思通りに動くわけではないらしく、時折彼女すらも襲おうとするのを必死に避けているように見えるが。
「私は、この木(こ)と話をしに来ただけなの。それなのにこんなに傷つけて……悲しみのまま生まれた樹液なんかに用は無いの。勿論、あなたみたいな無粋な人も嫌いよ」
「ハッハッハつれないなぁ娘! 私はこの地に新たな芽吹きを与えるために来たのだ! 何と言えばいいのか……その……まあ、なんだ。お前達が奉ずる『翡翠』の自然は醜くないかね?!」
 対する巨体は、幻想種の特徴を備えてこそいるが体躯が異常だ。或いは彼を包む外装が異常なサイズを担保しているのか。緑色で光沢を持ち、直線的な繊維を有す硬質の植物――隠すことなく言うと竹で出来た大鎧がその体を覆っている。更にその鎧にまとわりつくように蔦植物やらなんやら、おおよそ「侵略的外来種」と呼ばれがちな植物が多数まとわりついているではないか。なかには鮮やかな色彩を放つ植物もあるが生態系的には完全にアウトだ。時折巨体からこぼれ落ちる緑色の球体はカプセルトイめいていて、その中から新たに小さな植物と人をかけ合わせた謎生物が発生しているではないか。ていうかよく見ろ、あの男の頭をなんか、蔦? が貫通してやしないか?
「お犬さんに艶めかしいお嬢さん、この良くわからない人を追い払わないとこの『嘆き』の子達は無尽蔵に現れては誰彼構わず襲ってしまうわ。私はこの大樹の声を……ちょっとだけ、聞いたのだけど。喜んでいるときに少しだけあふれる樹液が、私を戻してくれるもののようなの。だから、この人……人? をなんとかして、『嘆き』の子達を全部倒してしまわないとこの大樹(こ)の気持ちは収まらないわ。助けてくれないかしら……!」
「ク、ハハハハハハ! 貧弱な手足に貧相な武具、そして美的感覚のカケラもない姿! この『ファイトゥフォリア・ノウゼン』を前にそのような姿で現れるとは甚だ愚か!!! 我が力を以てすれば貴様達など一捻りだぞ!」
 悲痛な声で嘆願する枯渇の女王を、今まさに奪われようとしている大樹の命を、そしてその嘆きから生まれたモンスターを、放っておくなど出来はしない。
 イレギュラーズは、高らかに笑うノウゼンと大樹の嘆き、そして今まさに生まれ続ける植物の塊達へと得物を向けて対峙する。

GMコメント

 薬になるような樹液ならカブトムシとか寄らないんでしょうか。どうなんだろう。

●成功条件
・ファイトゥフォリア・ノウゼン撃退
・浸食素子の全滅
・大樹の嘆き全撃破

●失敗条件(いずれか)
 枯渇の女王の死亡
 大樹の完全損壊

●ファイトゥフォリア・ノウゼン(省略可。バグでもノウゼンでも)
 バグNPC。およそ侵略的外来植物に由来するいろんな要素を兼ね備えた姿をしており、本体(幻想種)も頭部がアレされている状態。
 全体的なステータスが極めて高く、近中距離をがっちりカバーした戦闘能力を有する。
 幻想種(本体)、フレキシブルバンブーアーマー、寄生蔦とその他部位の3つがそれぞれ行動を別としている。
 本体は魔術攻撃に長け回復などもマルチに行い、バンブーアーマーは「反」を有し中~大威力の物理遠距離~攻撃、寄生蔦は中距離までの束縛攻撃を放つ。
 なお浸食素子は毎ターン行動に関係なく自動生成。
 普通に倒そうとすると難易度が大きく上がるので、部位破壊とか浸食素子の大幅な掃討とかをメインにしたほうがよさげ。

●浸食素子×初期10、増援あり(毎ターンランダム。最終的にかなり増えると見込んだ方がよい)
 ノウゼンが生み出す、侵略的外来植物をパーツに用いた存在。
 形状は様々だが、非常にパワフル(物理攻撃偏重)なところは共通している。基本的にノウゼン護衛と大樹攻撃で半々。
 邪魔されればイレギュラーズと交戦する意思を見せるが、攻撃側は割と大樹をつぶすことだけを目的としている。
 ブロックするか物理的妨害を行うか、くらいの思い切りの良さが必要だろう。

●大樹の嘆き・ドラゴンタイプ×5
 蔦や草などが西洋竜のような姿になったもの。
 巨大なうえに枯渇の女王のバフ(とデバフ)をうけ凶暴性を増している。が、枯渇の女王も外来者なので敵とみなしているらしい。
 巨体を生かし、無差別に攻撃する。おもに爪や尾、蔦を伸ばした打擲など。
 優先順位は浸食素子>ノウゼン≧イレギュラーズ>枯渇の女王。
 1体で2人(体)をブロックでき、また、2人未満でのブロックができない。

●枯渇の女王
 OPにある通り。分類はバグNPCに該当するが、立派な研究者のアバターである。
 常時レンジ2以内のすべての『対象』(変更)に『ロスト250、すべての攻撃に「態勢不利」「不運」「ブレイク」を追加』の効果が働く。
 例によってそれなり頑丈なのだが難易度の前ではなかなか信用できない数字で、且つ痛覚共有をしているので数値次第で廃人になる可能性を有する。

●大樹
 今回の『大樹の嘆き』の発生源。枯渇の女王をもとに戻す樹液を特定の条件下で出すらしい。
 耐久は枯渇の女王より遥かに多いが、放置すればお察しなのはこちらも変わらない。ある程度の素子の攻撃はものともしないだろうが、それも時間と密度の問題であることを留意されたし。

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

●重要な備考
 <Closed Emerald>には敵側から『トロフィー』の救出チャンスが与えられています。
 <Closed Emerald>ではその達成度に応じて一定数のキャラクターが『デスカウントの少ない順』から解放されます。
 但し、<Closed Emerald>ではデスカウント値(及びその他事由)等により、更なるログアウト不能が生じる可能性がありますのでご注意下さい。

●『パラディーゾ』イベント
 <Closed Emerald>でパラディーゾが介入してきている事により、全体で特殊イベントが発生しています。
 <Closed Emerald>で『トロフィー』の救出チャンスとしてMVPを獲得したキャラクターに特殊な判定が生じます。
 MVPを獲得したキャラクターはR.O.O3.0においてログアウト不可能になったキャラクター一名を指定して開放する事が可能です。
 指定は個別にメールを送付しますが、決定は相談の上でも独断でも構いません。(尚、自分でも構いません)
 但し、当シナリオではデスカウント値(及びその他事由)等により、更なるログアウト不能が生じる可能性がありますのでご注意下さい。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <Closed Emerald>『枯渇の女王』浄化クエスト(2/2)完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2021年11月09日 22時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

神様(p3x000808)
R.O.Oの
夢見・ヴァレ家(p3x001837)
航空海賊忍者
リースリット(p3x001984)
希望の穿光
アリス・フェアリーテイル(p3x004337)
艶魔
リュティス(p3x007926)
黒狼の従者
ベネディクト・ファブニル(p3x008160)
災禍の竜血
リラグレーテ(p3x008418)
憧憬の聲
現場・ネイコ(p3x008689)
ご安全に!プリンセス

リプレイ


「名ばかりの女王にしては難儀な人だねぇ……ホント……」
「珠来えみるのアバター、だったか。彼女が異常から戻れる方法が見つかったのならば喜ばしいが、現状は芳しくないらしいな」
 『大樹の嘆きを知りし者』リラグレーテ(p3x008418)に抱えられるようにして現れた『大樹の嘆きを知りし者』ベネディクト・ファブニル(p3x008160)は、目の前の状況の混沌さをシンプルに表現した。リラグレーテの方はといえば、枯渇の女王、もといえみるのアバターのやりたい放題ぶりに完全に頭を抱えていた。今回『も』巻き込まれているだけのようだが。あと、『黒狼の従者』リュティス(p3x007926)の視線がちょっとどころではなく痛い今日このごろ。
「さ、えみるをリアルで慰める為にも気張っていくわよ。私の宿主様を困らす悪い子にはおしおきが必要ね」
 『艶魔』アリス・フェアリーテイル(p3x004337)にとって、枯渇の女王は混沌世界に於ける『宿主』、端的に言えばアリスは彼女のヒモみたいなものらしい。つまり彼女がいないとちょっとだけ困るし、彼女(を含めた何人かに)に養ってもらう身としては当人のケアはとても重要なのである。いや割と真面目に。
「私も大変困っているのだがね! 君達如きがこの完成された美の力を前に相手にできると思っている、その思い上がりにこそとても嘆かわしい!」
「随分と変わった御仁のようですね。どうしてそのような姿になったのか……」
「……うわぁ、何て言うかホントにうわぁ……って感じだよね、うん。あの人こそ頭が……えっと、ナニカされてるみたいだけどホントに大丈夫?」
 リュティスはリラグレーテから視線を切ると、改めてノウゼンへと向き直る。『ご安全に!プリンセス』現場・ネイコ(p3x008689)同様、相手のあまりの姿にややヒき気味になっているのが否応なしに伝わってくる。無理もない。頭部に植物が突き刺さり、竹の鎧に「閉じ込められた」ようにも見える外見で己の強さを標榜する異常者が常識を持っているかのように振る舞う姿はいっそ笑い話にすら思えてくる。
「あの『バグNPC』、大樹を狙ってる。『嘆き』を発生させる事が目的なのか、それともそれ自体が何らかの布石なのか……」
 そんな冗談めかした状況ながら、しかしリースリット(p3x001984)は一切の油断がない。倒すことが難しい、と言われるバグの影響を受けたそれが、冗談のような外見からは信じがたい存在感を醸し出しているからだ。
「コレが現実だったらどえらいこっちゃ。……まあ現実でもどえらいこっちゃしてるし、強いて言えばもっと酷い場合もあるケドも」
「『君達の世界の模倣』のように此方を扱い、あまつさえ目の前の現実を放棄使用などとは許せぬ話だ。――だが、言うほどの実力はあるということかな?」
 『R.O.Oの』神様(p3x000808)の外見は如何にも冗談めかしたそれで、ひと目見ただけではその実力を下に見かねぬところだ。が、ノウゼンは神様の、言葉だけではない確かな実力を認識していた。
「GYAAAAAAAUUUUUUU!!」
「あれはドラゴン! ということは、巣穴にはきっと財宝が!」
「いや、あれは大樹から生まれたものだし、大樹にも『うろ』はなさそうだから宝は期待できないな」
「元気なお嬢さんには申し訳ないけど……この木(こ)、そういうのに興味がないみたいで……」
「えっ、そういうのじゃないんですか? 残念です……」
 『航空海賊忍者』夢見・ヴァレ家(p3x001837)は吠えかかる樹竜に目を輝かせたが、ベネディクトと枯渇の女王、両者から即座に否定されてしまった。金と酒との欲求に目がない彼女にとって、この事実はかなり重い。……いや、この戦局に問答無用で押しかけて即座に襲いかからない樹竜の根はかなり温和な気もするが……。
「それはさておき、女王様とはお仲良くしたいトコですなぁ」
「あら、私のえ……女王に手を出す気?」
 枯渇の女王に視線を向けた神様にアリスが牽制気味に割って入ると、その状況を見かねてネイコが声を上げた。
「と、兎も角っ! 大樹をこのままにしておく事なんて出来ないし私達も一緒に戦うよっ!」
「いきますよっ! ポメディクトさん!」
「ああ、このままでは被害は広まってしまう一方だ。早々に退散して貰うとしよう!」
「Gr....」
「ははは、やる気か! いいだろう、その大樹もそちらの不愉快な色のバグも、纏めて捻り潰して差し上げよう! いけ、我が種子達よ!」
 ネイコの言葉に応じたリラグレーテとベネディクトを見て、心から不愉快そうにノウゼンは顔を歪めた。
 撒き散らされた侵食の種は植物のキメラとなり、大樹めがけて一目散に突っ込んでくる――!


「やーいやーい、お前の母ちゃん出べそ! 悔しかったら掛かって来なさい!」
 ヴァレ家はホバーで上昇するなり高速機動に移り、巧みに侵食素子のみを狙って挑発する。一歩間違えば樹竜を巻き込みかねないが、タイミングを計算した上での攻撃だ。計算違いはまずあるまい。彼女の挑発は2体ほどを引きつけることに成功し、大樹から狙いを逸らす。
「燃えろ燃えろォ!!!!! ははは!!!」
「も、燃やしちゃ不味いんじゃ……ええい、行くよ、プリンセスストライク!!」
「とはいえ、纏めて倒す、かつ植物の敵ですから薙ぎ払うのが適切かもしれず……」
 リラグレーテはなにか吹っ切れたような勢いで焼夷の空想弾を撒き散らし、侵食素子を蹴散らさんと迫る。彼女のノリと笑いにさしものネイコも顔を歪めたが、リースリットも涼しい顔で火炎術式を使うもんだから正義の所在がわからなくなってしまっていた。……大樹を倒そうとする者を倒すのは、正義に違いあるまいが。
「リュティス、あのアーマーは物理攻撃に耐性が強いが神秘にはその限りではない。……君の出番だ」
「有難きお言葉です、御主人様」
 ベネディクトはリュティスに指示を飛ばしつつ、敵の出方を静かに伺う。後手に回るは承知の上、侵食素子が倒されるのを座して待つとも思えない――。
「危ない、避けて!」
「――っと」
 思索に耽っていたベネディクトの耳朶を打った警句は、なんとか間に合ったらしい。身を反らした彼の目の前を、樹竜の爪が過る。
「痛ったあ……この子達、アレを最優先で倒すんじゃなかったの!?」
「さあー? 近くに攻撃できる相手がいなかったら、優先順位を下げてでも殴りにくるよねえ。ごちゃごちゃしてるから余計にさ」
 他方、アリスは避けきれず尾の一撃をまともに受け不平を漏らす。当然の抗議だが、神様の反論も然り。敵を減らして同士討ちを狙う以上、誘導する際の導線を塞げば先に狙われるもする、というわけで。
 そこまで面倒見きれないとばかりに、神様は飃で手近な樹竜を吹き飛ばしてノウゼン側に押し付けようとした。
「私の種子をこうも好き放題燃やしてくれるとは、また随分と元気がいいお嬢様方だ! 嫌いじゃないが、好きでもないね!」
「拙者達も、貴殿のような存在に好かれたくはないのでお互い様です!」
 ノウゼン本体は劣勢にある至近の侵食素子に強化術式を施すと、竹鎧から強烈な衝撃波を放ち、ヴァレ家(と射線上の数名)を巻き込んでいく。蔦は暫し所在なげに震えたが、神様がふっ飛ばした樹竜を叩き返す勢いで受け止め、その動きを鈍らにいく。ヴァレ家は衝撃波の威力に喉奥で呻くが、さりとて忍者の2文字は伊達ではない。素早く身を捻ると、新たに生まれた侵食素子の姿に声を失った。
「数に頼ろうと、この一撃の下に斬り伏せれば同じ事……!」
「一撃で倒れるような弱卒を生むようなタマではないのだよ、私は!」
 ベネディクトの苛烈な威力を秘めたオーラが空間を切り裂きながら侵食素子を蹴散らし、ノウゼンへと迫る。が、彼にその一撃が到達する刹那、身構えていた素子の一体が飛び出し、弾き飛ばされていった。連携、そして献身。生んだ者と産み落とされた者との奇妙な連帯が、彼を守っているようだ。
「ちょーっと想像と違う展開だけど、神様は全部お見通しさ。つまりあのドラゴンが自分から攻めに行かないなら、ドラゴンを飛ばしてけしかければいいんでしょ?」
「神様さん……さん? 大胆! その流れで行こう!」
 神様は割となんでも知っている。だからこそ、奇策とも思える方針を思いついた。神様がそれをできる能力があるから、というのもあろう。ネイコもそれに賛同しつつ、追加で現れた侵食素子の迎撃に向かう。
(この状況は現状、私達に圧倒的に有利……の、ように思えますね。だからこそ引っかかる。バグNPCは女王に興味がある素振りでしたが、攻撃に巻き込んでも狙ってこない……?)
 順調に見えた戦局は、しかし癒し手を兼務するリースリットだからこそ感じる危機があった。仮想現実特有のステータス表示で状況を見誤ることはないが、優位なことは間違いない。問題があるとすれば、言葉以上に皆の消耗が早いこと。ぞっとするような陥穽の匂いが、彼女の鼻先に漂っていた。


「ドラゴン達が痛めつけてくれたおかげで、やっと本領発揮ってところよ♪ もっともっと、私にエナジーを貢いでね♪」
 アリスは体力が四割を切ったところで動きが明らかに早くなり、テンションもそれに伴って上がっていた。いたのだが、魔力はほぼほぼ底を打っている。アリスの技能は魔力を必要としないが、しかし――。
「枯渇の女王、と言ったね。君が周囲の生気を奪い、それを力として振りまくことの意味を考えたことは?」
「わからない、私は最初はこうじゃなかったはずなのに、こんなのは望んでいないはずなのに、この役割を与えられたから……そこから逃げたくて……」
 ノウゼンの不意の語りかけに、女王はたじろぎながらも言葉を紡ぐ。「そうだ!」とノウゼンが手を打つと、女王の手前に黒い魔力塊が顕現する。術式の一種だろうが、多くの者にとっては竹鎧の攻撃のほうが苛烈ですらあった。
 あったのだが、それに巻き込まれたアリスが跡形も無く消えている。リースリットの視界の端にちらつく『Rebooting』の赤文字は、戦場の外から復帰すべく向かっていることを指す。
「皆さん、魔力残量は?!」
「大丈夫っ、安全マージン確保ヨシ!」
「拙者は前に出てますので安心安全です!!」
「私もまだ大丈夫です」
 リースリットの叫びに似た問いかけに、ネイコ、ヴァレ家、リュティスが応じる。リュティスは「御主人様、いま少し時間をいただければノウゼンにも手が届きます」と続けると、黒死蝶を生み出し侵食素子を蹴散らしていく。
「僕も大丈夫だよ。でも、これはいよいよ余裕ぶってられないねえ」
「俺はまだまだ……いや、俺達のことはいい、女王は」
 神様の表情筋が、僅かばかりひくついた。ベネディクトはリュティスの言葉に頷きつつ余裕の表情をみせたが、問題はそこじゃない、と気付く。
 ……救護対象だが『仲間』でも『パーティー』でもない女王。体力も魔力も、まして精神状態も定かではない彼女に『なにか』起きてやしないか。
「GROOOOYAAAA!!」
 樹竜のうち、神様の飃を逃れた一体が突如として女王へと襲いかかる。女王は、目の前の出来事――こと、アリスが消滅した事実に身を震わせ、声を失っていた。
 爪の一撃、深々と切り裂かれたそこから血ではなくデータブロックが漏れ出る様はゲーム的であったが、冗談も言っていられない。
 残った4体の樹竜がノウゼンと侵食素子に襲いかかって、そこで漸くノウゼンにスキが生まれた。
「樹は女性って言うし、女王も女性。守って当然」
「無理はするなよ、神様! 全員で彼女を守る、そしてノウゼンを追い返すぞ!」
「御主人様のご命令のままに」
「ポメディクトさんが張り切ってるなら、私も気合を入れ直さないとね……!」
 神様が樹竜から女王を守るべく身を挺して割って入り、ベネディクトとリラグレーテはノウゼンを追い返す為に前に出る。魔力のあらん限りを叩き込むリュティス、そして治癒を打ち切って短期決戦へと切り替えたリースリットの猛攻は、間違いなくノウゼンに届いている。……いるが、侵食素子が攻めに回り、その数を更に増やせば話は別だ。どころか、女王が恐慌状態に入ってから、加速度的に魔力の消耗が激しくなっているのがわかる。
 倒れ、立ち上がり、死を迎え――女王の目の前で、イレギュラーズの死と植物の枯死、そして『バグ』の哄笑が乱舞する。


「大樹は守りきったし敵は全員倒したし、これでこともなし……なーんて、言えないよねぇ、こりゃ」
「……嘘でしょ?」
 神様はできることを、最善を尽くした。それはその場に居た誰もが理解している。だからこそ、リラグレーテは目の前で繰り広げられる事実を消化しきれていない。
「大樹よ、樹液を分けて貰う事はできるだろうか」
「あ、ああ、そうですね! 樹液を女王に与えるのが目的の一つだったんですから、分け与えてもらえば助かる見込みは」
 ベネディクトは大樹、ひいてはそれに宿っていると思しき精霊へと語りかけ、訪れた理由である『枯渇の女王を解呪できる樹液』を分けて貰うよう掛け合った。ヴァレ家も目前の状況に呆気にとられていたが、すぐさま彼の提案に同調して「ほらっ、さっさと樹液をよこすのです!!!」と大樹に蹴りを入れている。この上なく罰当たりな行為だが、この混乱の後に見咎める者がいるとも思えない。
 だが、彼女らのその行為をもってしても尚、大樹が何らかの反応を示すことはなかった。
「御主人様、流石にこれは……もう……」
「あまり近付かない方が賢明です。何が起こるのか皆目検討もつきません」
 ベネディクトの言動に否定を示すのは従者のすべきことではないのだろう。そう分かっていても、リュティスは口を挟まずにはいられなかった。リースリットは、つとめて冷静に現状を理解しようとする。
 ――枯渇の女王、もといえみるのアバターだったものは小刻みなノイズを発しながら消滅シークエンスへと移行している。通常であれば死亡後はサクラメントから復活できるのだろうが、数多の死を経験したベネディクトなら理解できよう。それが『R.O.Oのアバターの消滅』ではないことを。
 バチバチとひときわ大きなノイズが迸ってから、大樹の根本に石造りの十字架が生まれた。
 『枯渇の女王』と無機質な書体で書かれたそれの意味を理解できぬ愚図はこの場にはいないだろう。NPCとなる前の本来のアバターについても、分からずじまいだ。
「大樹は無事、ノウゼンは撤退、大樹の嘆きは撃破……実際、上手くやった筈だよ。アリスさんはきっと翡翠の外で復活してるだろうけど――」
 ネイコは自分達の功績を指折り数え、どれだけ『よくやった』のかを早口で並べていく。されど、それがどの程度の慰めになるのかは彼女自身がよく理解している。
 アリスは未だ、『宿主』の結末を知らない。

 玖珠来 えみる、R.O.Oより帰還せず。
 脳波微弱ながら生命活動は継続しており、接続解除による状況悪化を懸念し引き続き接続状態にて経過観察とする。

成否

失敗

MVP

神様(p3x000808)
R.O.Oの

状態異常

神様(p3x000808)[死亡]
R.O.Oの
夢見・ヴァレ家(p3x001837)[死亡]
航空海賊忍者
アリス・フェアリーテイル(p3x004337)[死亡×2]
艶魔

あとがき

 戦闘はかなり良かったと思います。戦闘面、攻勢や能力的なところでは。
 恐らく、私が『彼女』の物語を紡ぐことはもう無いものと存じます。
 ご参加、有難うございました。

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