PandoraPartyProject

シナリオ詳細

海蛇様の結婚式

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 その日は良く晴れた日だった。
 暖かい陽気は人々を清涼と雄大さを求めて海へと誘う。
 青と白の混じりあう美しき海に浮かぶ幾つもの帆船では、漁師たちが今年の漁の準備を始めていた。
「そういえば今年はあの年でねか?」
  一人の火に良く焼けて浅黒い肌をした筋肉質な男が言う。
「あーそうだべ。でもあのお二人ならお似合いと思うだ」
「それもそうかー」
 壮年の男性がそう答えると、筋肉質な男はそう言って頷いた。
「二十年に一度の話だべ。今回もいい感じに済んでくれりゃええんやけどなぁ」
 そう言いながら、壮年男性はふとそう言いながら大いなる海を見つめる。
 大規模召喚の影響なのか、今年の海域は大荒れだという。
 光が差せば影が生まれるように、或いは悪の発芽に善が鳴動するように、イレギュラーズの大量召喚以来、世の乱れは徐々に幻想以外でも起き始めていた。


「はわわ、こういうのって不思議な気持ちになるのです」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は目を輝かせながら、イレギュラーズに語りかける。
「この国の海岸沿いのある町の話なのです。その町ではうんと昔から、近場の海域で暮らしている海種の人達と交流してきたらしいのです」
 曰く、人間側はある程度の漁を許可してもらう代わりに中央や町の特産品、海中ではあまり手に入らない物を供給し、人間種は陸上からの外敵を守り、海種は海上での保護を保証する。相互に共存関係を確立していた。
「それで、数十年に一度ぐらい、海種様の代表と人間種の代表が結婚する儀式があるらしいのです」
 お互いがお互いの代表を互いの所に嫁がせて、よりよい共存を願う。ありふれた儀式――悪意を持っていえば生贄ともいわれかねないことだ。
「じゃあ、なんだ。もしかして気にくわない人と結婚させられるのを止めてくれとかか?」
「そんなことなさそうなのです。お似合いの方々だったのです」
 そう言った話ではよくある話だと思って一人のイレギュラーズが問うと、ユリーカは首を振って。
「我々が皆様にお願いしたいのは、道中の護衛なのです」
 不意に、イレギュラーズ達の後ろから声がして、振り返るとそこには男女の二人組がいた。
「私の名はジェラードと申します。情報屋にお願いしておきながら、私の方から話を遮って申し訳ございません」
「シェリルっていうわ。よろしくね」
  やや色白の肌をした美丈夫のジェラードと、日焼け跡の目立つ健康的な小麦肌の女性シェリル。ジェラードの耳元は魚のエラのようになっている。
「依頼主か? 道中の護衛とは?」
「ここ最近、幻想を始めとして、魔物が活発化しておりましょう? この婚姻の儀式は、あの町の両種の友好を願うもの……失敗したくありませんし、何より、この子を失うのは避けたいのです」
 そう言いながら、ジェラードはシェリルの肩を抱いて引き寄せる。
「それで、イレギュラーズ様に私たちの目的地まで連れて行ってほしいのです」
「なるほど、そういうことか」
「そういう感じなのです!」
 仕事を奪われてしまった形のユリーカはぱたぱたと目で羨ましそうにも恥ずかしそうにも見える仕草で手で顔を覆った。

GMコメント

祝勝会がテンション上がってるしついでにめでたい事を成功させてきませんか。

というわけで、護衛依頼になります。

●達成条件
護衛対象を無事に海種の住処へ送り届ける。

●護衛対象
ジェラード:海蛇の海種。やや色白の美丈夫。穏やかな性格と思慮深さから人間種側、海種側の両方から尊敬されています。

シェリル:日焼け跡の目立つ健康的な肌の女性。
漁師の家系に生まれ、海辺であったジェラードと会話したり海辺デートやってたら肌がいい感じに焼けました。

護衛の海種の皆様。
海種の方々です。ざっと3人ぐらい。
戦力にはなりません。

●特殊ルール
【海蛇の宝珠】
件の海種が先祖代々、今回の儀式の際に用いている門外不出の宝珠です。
今回の依頼中に限り、水中での活動がある程度可能になります。
なお、ジェラードが気絶もしくは死亡した場合、宝珠の効果がきえます。海の中も通るため、ご注意ください。

●経路
シェリルの故郷にあたる港→【A:海上航行】→【B:水中潜行】→ふたたび【C:海上航行】→目的地

●出現する敵
以下の3種のうち、二度の海上航行、海中潜行に突入した段階でどれかが出現します。

鮫型の魔物×2
攻撃力、機動力が高い。
噛みつきによる物至単。
サメ肌による【反動】。

クラゲ型の魔物×4
HP、防御技術が高い。
毒針による物中範【毒】。
触手による物中単。

カジキマグロ型の魔物×8
機動力がものすごく高い。
物近貫の突撃。
猪突猛進に突っ込んできます。
マグロらしく止まったら死にます。

どの敵も総数(鮫なら2匹で、クラゲなら4匹で)でイレギュラーズ8人と互角になります。

●ラスボス
目的地直前でハチャメチャにでかいイカが出てきます。

クラーケン
触手による物至範
墨による物近範【暗闇】
触手による物至単

なお、すべての敵は絶対に出てきますが、クラーケンを除き、どのエリアでどれが出てくるかは不明です。

ただし、最大でも2種類までしかでてきません。

●情報精度
このシナリオの情報精度はBとなります。

依頼主の言葉やこの詳細に嘘はありません。上記のどこ出てくるかの不鮮明さから確度はBとなります。

  • 海蛇様の結婚式完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年08月02日 20時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

北斗(p3p000484)
遠い海からやってきたトド
シエラ・バレスティ(p3p000604)
ヨハン=レーム(p3p001117)
(((´・ω・`)))
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)
春告げの
美面・水城(p3p002313)
イージス
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
竜胆 碧(p3p004580)
叛逆の風

リプレイ


 じりじりと照り返す陽射しの今日、素足で浜辺に立ちなどしたら軽く火傷しかねない陽気だ。
「いい天気。結婚式日和だよね」
  『輝きのシリウス・グリーン』シエラ バレスティ(p3p000604)は言いながらぐっと気合を入れる。
 種族を超えたラヴロマンス必ず守ると意気込みは十分だ。
「ええ、こんな一大イベントをローレットに任せて下さっている期待に応えませんと!」
 『闘技場サンドバッグ』ヨハン=レーム(p3p001117)がコンセントのような形の機械尻尾をゆらゆらと動かしながら頷いている。
「人間種と海種の婚姻か……それぞれの種族の街同士の友好のために婚姻を儀式とするなんて、まるで外交のよう。海洋王国らしい習わしですね」
「やー、同じ海種のはずやけど、初めて聞く結婚式やね。あ、はい。仕事はきっちりしますよー」
 幻想種の女性、『終焉語り』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)の言葉に海種である『海洋の魔道騎士』美面・水城(p3p002313)はのんびりとそう返す。同じ海洋とはいえ、舞台は雄大な大海原。探せば異なる風習もあるものなのだろう。
「悲しい風習かと思ったら、こんなにも幸せそうな出会いになるなんて、素敵な話ねぇ……私達が守るから、安心してくださいなぁ。折角のおめでたい日なんだもの、招待状のないお客様はご退場願いましょうねぇ」
「うむ! めでたい事に油断は禁物! 吾がどーんとお二人を守ってご覧に入れよう!」
 『酔興』アーリア・スピリッツ(p3p004400)に対して『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)が自身ありげに胸を張った。
「今回はぁ、結婚式のぉ、護衛ですよねぇ。まぁ、無事にぃ、島まで届けられればいいんだけどねぇ」
「護衛、でありますね。問題はないと見ます。行きましょう。我は役目を遂行するのみであります」
 『遠い海からやってきたトド』北斗(p3p000484)がいえば『叛逆の風』竜胆 碧(p3p004580)が肯定する。
「ありがとうございます。早速ではありますが、行きましょうか」
 半径10cmほどの水晶玉のような代物を携えた依頼人、ジェラードとその隣に寄り添うシェリル、 イレギュラーズと道案内役でもあるらしい三人の海種。
 総勢13人からやや離れ、港には多くの町人が集まっていた。重要な儀式でもあるからか、人々の関心はそれなりに大きいようだ。
「行ってきます!」
 シェリルが振り返り手を振って、ジェラードと腕を組む。ジェラードはそれにやさしく笑って、水晶を空に掲げた。
 すると、水晶は太陽の輝きを通して輝き、やがて道案内も務める海種達、続いて依頼人、それからイレギュラーズを包む丸い膜を形作る。
「なんていうかぁ、不可思議なかんじですよぅ」
 北斗の言葉に同意をしながら、13人は大海原へと歩き出した。


 大海原は静かなままで、依頼人の二人は楽しそうに幸せそうにのほほんと海を楽しんでいるようだ。円陣を組むようにして玉に揺られながら歩くイレギュラーズ達は周囲の警戒を怠ることなく進んでいた。
 アーリアが海鳥を使役して空から偵察してみても、何もない、ただひたすらに涼しげな潮風の香りと穏やかな波だけで、敵性存在の影は感じられない。
「もうすぐ海中潜航に移行するようですよ」
 視線の向こうには、島がある。どうやらそこの下を通り抜けていくようだ。
 ここまでは何もなかった。そう思った時だった。しゅるりと飛んだ半透明の何かが、ジェラードへ襲い掛かった。それを咄嗟に動いた水城が割り込んでいく。
「くっ!!」
 その一撃を始めに、海面へぷかりぷかりと浮かび上がってくるのは、半透明な体をした大きなクラゲ。
「きれいー、毒抜きしたら食べられるかな?」
「やー、難しいと思うんやよ?」
 一撃を受け止めた水城が、食欲をみせるシエラに答え、やや穏やかな波濤を一匹へとぶつける。それに続くようにしてシエラは天狼牙をコンビネーションよく攻撃を打ち込んでいく。
「お二人は下がっていただけますか?」
 リースリットは事前に決めていたとおり、護衛対象を後ろに下げて、一匹へと接近し、オーラを放つ剣を叩き込んだ。
「行くであります」
 続くように碧が走り、その手に握られた漆黒の刀身が大剣を閃かせる。
「やぁやぁ、吾こそは白百合清楚殺戮拳! 咲花百合子! いざ尋常に勝負!」
 幻惑のステップを踏み名乗り口上を上げた百合子に向けて、一匹のクラゲがゆらゆらとよっていき、百合子の軽やかな投げ技が炸裂する。バシャンッと音を立てて一匹が飛んでいく。
 北斗の体当たりがそれに続きぐんにゃりとクラゲの柔らかな表面に傷を刻む。止まらぬ衝撃と共にクラゲはさらに遠くへと飛んで行った。
 また別の場所ではクラゲが氷の鎖に絡めとられていた。
「いくわよ~」
 ぱきぱきと音を立てて海面をわずかに凍てつかせたアーリアはいつものようにゆるふわっとした雰囲気のまま攻め立てていく。
「守りきってみせます!」
 保護結界を張り巡らせたヨハンは莫大な雷エネルギーを放電させて駆け、伸びてきた触手の一本にあわせ、強烈な一撃を叩き込む。
 ぷかぷかと浮かぶクラゲたちから、お返しとばかりに毒針を仕込んだ触手が放たれる。
「つっ――」
 護衛対象を動くように動いた碧はその針をしたたかに打ち込まれた。
「思ったほど痛くないであります。これなら」
 グッと力をこめ、思いっきり引っ張る。ずりっとクラゲの図体が一つ、海面に上がる。リースリットが接近して、剣を振り下ろすと、クラゲの身体に火が移る。
 痛むのか、クラゲがバシャバシャと触手を振り回して、その余波が近くのイレギュラーズ達を捉えて殴りつける。
 それでも、一匹、一匹とクラゲは減っていく。中距離から飛んでくる触手の攻撃をイレギュラーズ達は庇い、かわしながら確実な一撃を叩きこんでいった。

 やがて全てのクラゲが海面にぷっかりと浮かび上がり、微動だにしなくなったところでイレギュラーズ達は一息ついた。
「大丈夫~?」
 碧を始めとする最前衛で毒を浴びたメンバーにアーリアはいつもの調子の声で祈祷の癒しを齎した。
 リースリットは自分に加え、自分での回復手段を持たないシエラとアーリア、碧の傷をいやし、それ以外の百合子、水城、ヨハン、北斗の四人は自前の回復手段で小休止を取る。
「これ以降は魔物も出なければ問題ないんだけどねぇ」
 無理そうだと半ば思いながらも北斗が漏らす。
「潜ります。準備はよろしいですか?」
 依頼人のジェラードがそう問いかける。ふと前を見れば、眼前には岩でできた不思議な風景があった。恐らく、空から見れば橋のように見えるのだろう。
 ぽっかりと空いた空間の向こうに船で出るにはそもそもあまりにも狭く、不思議な形状をしていて流れは、あまりにも煩雑で激しい。
 イレギュラーズ達が合意すると、徐々に水晶玉が沈み始める。並の影響もなく、やや暗がりの海の中へと入って行く。
 海底から見上げれば、太陽光のカーテンに照らされ、小魚たちが流れるように泳いでいた。
「きれいー、海の中ってこんな風に見えるんだ」
「えぇ、とても幻想的です」
 シエラに対してリースリットが頷き、球体の中から海中の様子を興味深げに眺めていた。
「それにしても、海蛇の宝珠ってすごいわねぇ」
 アーリアは魚を使役しながら、使い勝手が普段であることにほうと息を吐く。
「海種の皆さん、経路を教えて貰える~?」
 振り返り、指示を仰ぐ。海種の案内人達のいう方へ向け、使役した魚を走らせた。
 すいすいと滑るように軽やかに魚たちが泳いでいく。それに景色を楽しみながらイレギュラーズ達が続いていった。
 やや深いところまできて、少しばかり浮上して、泳ぎ続けていると、不意にアーリアは停止を告げた。
「何か来てるわ~」
 彼女の言葉に導かれるように一同が前を向く。そちらの方から、八つの影がこちらに向けて猛スピードで突っ込んできていた。
「マグロ……お持ち帰りしたい……」
 じゅるりと膜の内側で呟いたのはシエラだ。
「そんなことを言ってる場合ではなさそうである」
 まっすぐに突っ込んできているマグロの群れに対して、百合子が構えを取った。名乗り上げ、マグロの注意を引かんと前に出ていく。
 その間に散開し、間合いを取ってマグロの突撃に巻き込まれないよう距離を取っていく。
「うぐっ!?」
 吸い寄せられるように動きを変えたマグロが、音もなく百合子の懐へと突撃していった。
 ぶしゃあと血飛沫を上げ、ずきりと痛みが走る。血が海水に溶けて消えていく。
 痛みに耐え、しかししっかりとマグロを捉えて、百合子は猛る。そして、大きく振り回して、遠心力を以ってそれを吹っ飛ばした。
 ぶんぶんと身体ごと車輪のように回りながら飛んでいったマグロは強かに海中の岩へと体をたたきつけ――そのままぷかぁと海上の方へと浮かんでいった。
「……あれで死んでしまうのであるか!?」
 拍子抜けと言わんばかりに、百合子は思わずそんなことを漏らした。
 二匹目のマグロが百合子に向けて進み行く最中、海中が断ち割れるようにして、斬撃が飛ぶ。それは静かにマグロの身体を浅く裂いて、そのままどこかへと消えていった。
 それを放った碧は剣を構えながら距離を取りながら剣を振るおうと近づいて、思いっきり剣を振り下ろした。マグロの血が、海へ溶けていった。
 マグロに追いつかんばかりに接近して、北斗が頭突きをかまし、身体を揺らめかせたところへ、ヨハンが近寄って強烈な一撃を打ち込んだ。ゆるゆると動きを止めたマグロは、そのままあっさりと死んでいく。
「あと六匹ですか?」
 確認するようにヨハンが言いながら周囲を見渡す。マグロはイレギュラーズを囲うようにしながら旋回している。
「良く動くわね~」
「マグロやし、止まったら死んじゃうみたいやね」
 アーリアが言う横で、水城は二匹を相手に狙いを定めた。旋回するマグロたちに注意を向けながら、ふとアーリアは顔を上げてイレギュラーズから見て後ろに当たる方角に視線を向けた。
「新手だわ~」
 迫りくる二つの影は、誘われるように百合子の方へと進んでいる。
「鮫……吾が流した血の臭いであるか」
 ハッとしつつ、偶然近づいて真っすぐに飛んでくるマグロへと反撃の拳を叩きこむ。
「鮫がいるよぅ……」
「数多の鮫は我が食材となった! 恐るるに足らずー!」
 過去を振り返り少しテンションが下がった様子の見える北斗と裏腹に、そう元気よくシエラが告げる。ぐっと力を込めて気合十分に、寧ろ高級食材を見つけたと言わんばかりに目を輝かせて、シエラは笑ってさえいた。
 そんな彼女の陽気ともいえる思考が、一同の気持ちを軽くしていく。
「そうですね……たしかにそうかもしれません」
 リースリットは笑って、遠距離術式を発動する。
「よっしゃ、この二匹はひとまずうちに任せいっ!」
 そんな中、前に出た水城は高らかに告げると、水鏡の如き盾を構えて二匹の鮫の前に割り込んでいく。
 それに続くようにして動いたのは碧だ。大剣を振るい、水城と同様に鮫の注意を引くように走る。斬り下ろした剣に対して、サメ肌のざらつきに碧の身体が浅い傷を得た。
「はぁぁっ!」
 噛みつかれた百合子は丹田に力を込めて反撃を受けながら一匹の鮫を投げ飛ばす。

 水城と碧、それに百合子が鮫を抑え込む間、他のイレギュラーズは残ったマグロを順調に狩り落としていた。
 アーリアの手から放たれた氷の鎖がマグロを捉え、その動きを抑え込むと、ヨハンの機械剣が大きく切り刻む。
「少しお腹すきましたね」
 依頼主たちを守りながら、マグロを着実に潰し、勢いをままに鮫もうち倒して終えると、リースリットがぽつりと呟いた。
「もうお昼時のようでありますし、昼食をとるのも良いかと考えるであります」
「向こうに洞窟みたいなのがあるみたいよ~?」
 アーリアが指をさす方向を見て止めて、振り返る。依頼主たちは小さくうなずいた。
「僕、お弁当持ってきました」
 ヨハンが言うと、どこかでお腹の音が鳴った。


 洞窟のような場所で一休みをしたイレギュラーズ達は、昼食を終えて再び出立した。浮上の合図を受けて再び海上に出たイレギュラーズは、やや中天を過ぎた陽射しのまぶしさに目を細めてから、ほうと一息をついた。
「ここまで来たらもう少しです。ほら、あちらに小島が見えましょう?」
 ジェラードが指さした方向を見れば、たしかにそちらには島があった。逆光となったその島を目指して、イレギュラーズが再び歩みだした時だった。
 不意に、波が激しくなる。淀みと共に海面は揺らぎ、突如として盛り上がりを見せる。
「何かぁ、出てくるんですよぅ」
 北斗が海面を見下ろすようにいう。
 そして、それは姿を見せた。
 大波を余波に撃ち出して、ひょっこりと顔を出したそれは、イレギュラーズをぎょろりと丸い目で見降ろした。
「あー……やっぱりでっかいイカ、かぁ!」
 見上げて水城はほうと呟いた。
 彼女の言う通り、そこに現れたるは、大きなイカだった。海面から四本の触手を持ち上げ、特徴的な面長の頭部を天へとそびえさせる。
「やたら大きいですが、目的地は目の前、油断せず、落ち着いて参りましょう」
「えぇ……さっさと終わらせましょう」
「そうねぇ、折角おめでたい日なんだもの」
 碧に応じるようにリースリットが頷き、アーリアも頷いた。
「くっ! こんなおめでたい日じゃなかったら高級食材のオンパレードなのに!」
 そんな悔しそうなことをいうシエラがいる一方で百合子はそれを見上げながら構えを取った。
「うむ、腕が鳴りそうなのである」
 威風堂々、かつての熱き闘争の日々を胸に、少女は拳を握りなおす。
 最初に動いたのは、敵だ。
 ゆらり、触手の一つをもたげ、直後、風を鋭く裂きながら最前衛の碧を襲う。鞭のようにしなる触手に絶魔剣をそえるようにして弾き、少しだけ目を細め――飛ぶように跳ねる。
 そのままイカの胴部まで飛び込むと、怒涛の勢いで剣を閃かせた。ぐんにゃりとした皮膚の感覚が手に返ってくる。
 しかしそれだけは終わらない。剣豪らしく、その我流なる剣撃は、尋常ならざる速度で二度目の剣閃を全く同じ場所へと叩きこむ。
「ゴムでも殴ってる気分であります」
 タンと胴部を蹴り飛ばして後退すると、いまま振り下ろされてきた触手を躱す。叩きつけられた海水が、大きな水しぶきを上げて視界を包む。
「いくよー!」
 水しぶきが収まるよりも前に、シエラが放った気弾が飛沫を穿ち、イカの表面に叩き込まれる。
 もう一つ、飛来した触手が百合子に向けて飛ぶ。百合子はそれを受けきると、そのままその脚部を投げんと体をひねる。しかし、流石に重いのか、イカを海面に持ち出すことはできなかった。
 雷エネルギーを放電しながら、ヨハンは静かに走り、メイド服を靡かせ強烈なカウンターを叩きこんだ。
「硬くはないですが、どうにも攻め切れません」
「させませんよ」
 反撃のつもりか放たれた触手は、リースリットの砲撃が弾き飛ばす。
 最前衛まで進んだ水城は自らの意思抵抗力を破壊力へ変換すると、そのまま思いっきり波濤をイカへと放つ。
 海面が俄かにざわめき、意思を以って大波となって走る。押し流され、イカがバランスを崩す。
 それを見逃さず、アーリアの氷の鎖が海中から伸びてイカを捉えた。
「行くんですよぅ」
 それに追いついて海中から飛びあがり、イカの眉間へ北斗が体当たりをかましイカが痛みに悶えるように体を動かす。
 嫌がるようにイカはぷるぷると震え、海中から他の触手を持ち上げると、それを大きく横になぎ、百合子と碧に掠りながら去っていく。
「何かしてきそうだよぅ」
 北斗が呟く。その返事とばかりに、大きく振りかぶり、イカは墨を撒き散らす。
 煙幕のようにイレギュラーズ達の視界を覆った墨は振れてしまった百合子とヨハンの視界を暗く染める。
「回復は私達がやります」
「皆は攻撃に集中して」
 静かに告げたリースリットといつもの調子のアーリアのゆるっとした口調が聞こえ、ライトヒールと祈祷が傷と毒を浄化した。
「なら――決めるであります」
「うむ、行くのである」
「時間かけてもいいことないやろね」
 怒り心頭と言わんばかりにすべての触手を海面に浮かべたイカの触手が一斉にイレギュラーズ達へと殺到していく。対するようにイレギュラーズも動き、刹那。
 激しい攻防の果て、到達したのは、ヨハンだった。海洋の国名を冠するその巨大なる盾が、勢いよくイカを押し倒し、水城の波濤がイカを更に押し流し、北斗の喧嘩殺法が炸裂し、ほぼ同時に碧の大剣と百合子の腕がイカを捉えた。
 盛大な音を上げて投げられたイカが水面に柱を打ち立て数秒。イカが微動だにしなくなったことで、イレギュラーズ達は構えを解いた。


 その後、何事もなく島へとたどり着いたイレギュラーズ達を島人らしき海種が出迎えてきた。
「いやはや、予想以上の大冒険と相成ったのであるな! しかし、この危険を予期できる慧眼の持ち主であればこれから先も大丈夫であろう! どうかお二人、お幸せに!」
 披露宴にも似た宴会の中で、イレギュラーズを代表して百合子が告げ、アーリアは祝儀代わりの歌を歌い、穏やかな一日を過ごしていった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

春野紅葉です。

この度は遅れてしまい申し訳ございませんでした。

ご心配をおかけして大変申し訳ございません。楽しんでいただければ幸いです。

PAGETOPPAGEBOTTOM