PandoraPartyProject

シナリオ詳細

バーニャ? バーニャ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●白さ
 ヴィーザル地方、ノルダイン。
 積もる雪が、きらきらと日を照り返している。
 そこには、一面の雪景色が広がっていた。……もしも耳を澄ませるのであれば、鳥の声が聞こえたはずだ。このような場所でも生き物が懸命に生きているのがわかるだろう。
 標高の高い丘の上までくれば視界はずいぶんと開けている。
「よし、行くぞ、ベルカ、ストレルカ!」
 ラグナル・アイデ(p3n000212)は襟巻を深く巻き直し、狼ソリの手綱を握り締めた。
 以前、領地に盗賊が入り込んだおかげで(リプレイ『仔狼の足跡に惑う』)群れの設備の整備が遅れていた。
……もともとの目的は「橋の修理」だったのだが、何やら野生動物が小屋を荒らしているらしいということで、ラグナルがイレギュラーズたちを頼んだのだった。
 折れた看板をたどれば、先の吹雪で落っこちた橋がある。
 向こう岸に、切れたロープが頼りなく風で揺れている。
 ラグナルの呼び声に反応して、狼たちは走り出した。
 臆することなく加速してのジャンプ。
 ソリは弧を描いて、向こう岸までたどり着く。
「オッケー、よぉし。ロープを張りなおすとするか」
 白い吐息が漏れる。
 ここでの呼吸にはコツがいる。深呼吸でもしようものなら、肺から忍び寄る冷気が体の芯から凍えさせてしまうだろう。
 忍び寄る冷気は、この極寒の地において身を切り刻む凶器だ。
 崖下に、白骨化した動物の姿があった。鹿の亡骸だ。どんなにきれいな景色に見えても……。油断すればああなる。

 ラグナル・アイデは、ノルダインに生まれたノルダインの男だ。
 そして、まあ、おそらくここで死ぬだろう。
 だから、「冬」のことは知り尽くしていると自負していた。

 けれど、今回ばかりは勝手が違うようだった。

 狼たちの注意と、イレギュラーズたちの進言で、ラグナルは見慣れぬ足跡を見つける。
 巨大な獣の足跡。
 山小屋のほう――あれは、たしか、『バーニャ』がある場所だ。
「……吹雪いてきそうだな……」
 狼たちがやめとけ……という目をしている気がしたが、ラグナルは「大丈夫だ」と頷いた。
「大丈夫だ。心強い同盟もいるしな。だろ?」
 そう言ってイレギュラーズを見る。
 群れのリーダーとして、良いところを見せなくてはならないとでも思っていたのだろう。


「どわあああああ!?」
 イレギュラーズたちの目の前で、ラグナルが巨大な白熊にブンと放り投げられて湖に落っこちた。
 なんだって?
 しかしそうとしか言いようがない。
 巨大な白熊にブンと放り投げられて、ラグナルが湖に落っこちたのだ。
……もしかすると、イレギュラーズたちの何人かも巻き込まれたかもしれない。
 極寒の地、ノルダインの湖はもちろんしゃれにならないくらい寒い。
「さむさむさむさむ! なんだこいつ!?」
 氷を突き破って池に落っこちたラグナルは震えながら這い出してきた。
 仁王立ちするように白熊が立っていた。
「死ぬ死ぬ! 凍え死ぬっての!」
 慌ててラグナルが駆け込んだのはバーニャ小屋――。
 バーニャ。
 それは、ノルダインに伝わる伝統的な蒸し風呂である。

 すきっ腹でバーニャに入るのは良くないため、備蓄の平パンをもぐもぐとする。
 装備を脱ぎ捨て、それから、思い切りなだれ込んだ。
 小屋の外からはフンッ、フンッと白熊が大木でウェイトリフティングをする音が響いている。
「え? あれ? 魔物ってあれ? ……もしかしてあいつらかよ、ここを荒らしてたのは……!?」
 武器をとりかけたが、体は思うようには動かなかった。もう少し温まってから出たほうがいいだろう。ラグナルは石の上に水をばーっとかける。蒸気がもうもうとして辺りを覆いつくした。
 ええと、なんて?

GMコメント

金塊とかはないです。

●目標
バーニャ!

●バーニャ? バーニャ!
 ノルダインの伝統的なバーニャ(蒸し風呂)です。
 いちおう、男女で分かれていますし、適宜いい感じにフィルターがかかるでしょう。
 備え付けの枝で殴り合ったら身体が温まるんじゃないかな。そうか?

 石炭や薪をくべ、水をぶちまけてバーニャで温まり、猛吹雪の中マッスルベアーと闘いましょう。
 寒くなったらバーニャ(蒸し風呂)です。
 気が済むまでこれを繰り返します。

●敵
マッスルホワイトベアー×8
 巨大な白熊です。
 特技は筋肉と筋肉と筋肉です。バーニャに住み着き、勝手にサウナを楽しんでいました。

・バーニャ(蒸し風呂)パート
 たぶんお色気パートです。
 ひたすらに蒸し風呂に入ります。
 室温を上げて耐えれば耐えるほど血行が促進され、戦闘パートがやりやすくなるはずです。
 また、バーニャは紳士淑女の社交場です。
 おしゃべりなどして交友を温めるのもいいでしょう。
 白熊もくるかもしれませんが、ガチ戦闘はしてはいけません。
 備え付けの枝葉で殴り合うことが可能です。

 待機用の部屋があり、お茶やビールが備え付けられています。
 平パンや簡単な食べ物もあります。
 水分補給は忘れずに! ラグナルとのお約束だぞ!

・戦闘パート
 たぶん戦闘パートです。
 猛吹雪の中マッスルベアーと殴り合います。
 肉体やあるいは色気を誇示しながら戦闘をキメましょう。
 動けなくなったらバーニャで気力を回復させましょう。

●味方NPC
ラグナル・アイデ(p3n000212)
「こうなったらノルダインの意地を見せてやる……!(自棄)」
 見栄とか男の意地っぱりだけでいちおう頑張っています。

狼たち
 今日はほぼわんこ。(暑いので)外で待機しています。着替えを持ってきてくれたり、水とか石炭とかを運んできてくれます。お風呂は嫌いな奴と好きな奴がいます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外のバーニャは絶対に起こりません。

  • バーニャ? バーニャ!完了
  • GM名布川
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年11月07日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

レッド(p3p000395)
赤々靴
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
ジルーシャ・グレイ(p3p002246)
ベルディグリの傍ら
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
サイモン レクター(p3p006329)
パイセン
橋場・ステラ(p3p008617)
夜を裂く星
ルナ・ファ・ディール(p3p009526)
ヴァルハラより帰還す
ユー・コンレイ(p3p010183)
雷龍

リプレイ

●バーーーーニャッ!
(チッ……あの馬鹿が……!!)
 襲い来る白熊。『月夜に吠える』ルナ・ファ・ディール(p3p009526)の青き血の本能がうずいた。犬……もとい狼たちは主人をそのままに急停止した。その意味を考えるべきだったかもしれないが、目の前のうっかり野郎を救うためだったのであり、ルナに落ち度はない。
「キャ――――ッ!?」
 黄色い悲鳴を上げる『月香るウィスタリア』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)。次々と仲間たちが投げ込まれる中、『花盾』橋場・ステラ(p3p008617)がクマと応戦する。
「大丈夫!? どうしましょう……!?」
 こんなとき、どうすればいい?
 どうすれば……。

 バーニャッ!!!
 荒ぶる猫のポーズを決める『赤々靴』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)。
 カメラ目線の『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)と肉体を見せつける。酒瓶が横に転がっている気がするが、空だ。
「ばーにゃっ!」
 二人の真ん中でステラはアリクイの威嚇のポーズ。
「え、やらないといけないんですよね???」
「ふっ……」
『雷龍』ユー・コンレイ(p3p010183)はセクシー美女のサービスショットだ。
『パイセン』サイモン レクター(p3p006329)はカメラを意識した視線を飛ばし、肉体を見せつける。
「こうかしら」
 ジルは薄布をまとい、露出は少なめの上品なバーニャだ。
「……で、なんの意味があるんだこのポーズ? ノルダインのしきたりか?」
「え? どこもこうじゃないのか?」
 ルナは離れたところでクールに窓を睨みつけていた。敵の奇襲を警戒しているのが馬鹿らしくなってきた。
「……なぁ……帰っていいか?」
 げんなり顔でベルカとストレルカに零すルナ。
 どうしてこうなったのか。説明するには時をさかのぼる……。

●いやさかのぼってもわからないんじゃないか?
「おぉ……見事に湖に投げられましたね」
 熊と向き直るステラ。
 ここからは、サシの真剣勝負だ。
「取り敢えず、湖にぶん投げられた方が回復するまで一勝負といきましょうか?」
「そんな、ステラ……っ!」
「犠牲は忘れないでありますよ」
 苦しそうなヴァレーリヤと、敬礼するエッダ。
「生きて会おうぜ、あのバーニャでな!」
 サイモンの言葉に親指を立てたステラは、思い切り白熊を湖に落とした。
「なあ、勝ってねぇかアレ」
 と、コンレイが言う間にステラはもう一体が湖に沈んだ。
 ステラは強かった。

「あー無理無理! クソ寒ぃ!! 練達(おんしつ)育ち舐めんな!! スラムだが!!!
こんな極寒の中河に放り込まれたら心臓おしゃかになるだろうが!!!!」
「あばばば……さむさむっ、さむいっす!」
 装備を脱ぎ捨ててバーニャ小屋に滑り込むレッドと、それを追うコンレイ。
「ううっ、寒い……近くに小屋があってよかったわ、死んじゃうかと思ったもの……! みんな、いる?」
 ジルは仲間と狼たちの数を数えて、皆がいることを確認する。ステラは…………まあ、そのうち来るだろう。
「バーニャっていうのねぇここ……サウナ、とは違うのかしら?」
「バーニャにはノルダインの知恵が詰まってるんだぜ」
 博識のサイモンは慣れた様子でバーニャになじみ、平パンと干し肉をつまんでいる。ついでに手にはビールを持っている。
「外は吹雪だ、あの熊やっつける前にしっかりあったまって英気を養うとすっか」

「あーあったまるな~! いてっ」
「……なに気持ちよさそうにあったまってやがんだよ」
 元凶のラグナルを軽くどつくルナ。
 寒さには強いといえ、冷えた身体は死活問題だ。温まらなくてはならない。
「野郎の裸なんざ見ても嬉しかねぇな。おぅ、ちょっと場所あけろや」
 体格が良いルナはぎゅむぎゅむと詰まる。
 レッドの靴はいつのまにかビーチサンダルになっていた。
「ほあぁ……この中温かくて生き返るっす」
「えっこっち!? わーーーっ!! 事案だ!! 助けてくれジルーーーーっ」
「え? あっちに行けっす?」
「にぎやかだな」
 続けてやってくるコンレイ。
「うわーーっ。あれ!?」
「あ、今男だ」
「ならいいか」
 混沌の性別は神秘が多い。すみやかに納得するラグナル。
「くぁー! あっちー!
コイツがバーニャか……わるかねぇぜ!」
 悠々自適のバーニャを楽しむサイモン。
「皆もちゃんと温まってる? 身体冷やしちゃダメよ、特に女の子!」
「ええ! もちろんですわ!」
「こちら問題ありません」
 と、元気そうな声が聞こえた。
「あれ? なんか俺、全然あったまんないんだけど!?」
「あったけぇー」
 熱の精を呼び寄せあっためてもらっているコンレイ。暖かさが集中しているのだった。
「さむっ! 毛皮! 毛皮が欲しい!」
「ああ?」
「なんでもないです、ハイ」
 できればルナで暖を取りたかったが、さすがに怒られそうだ。でももふもふである。
「この蒸気体に沁みるねぇ。
もうちょい蒸気わかしてもいいか?」
「頼んだサイモン……!」
「しっかり温まりましょ。
ね、アロマ水も使ってみていいかしら?」
 ふわりと、良い匂いが立ち込めた。
「うわ、いい匂いだな」
「ジンジャーとティーツリーをベースに調香してみたの」
 嗅覚の鋭いルナにとっても、いやなにおいではなかった。そこにはジルの気遣いがあるのだろう。
「はー……気持ちいいわねー……♪」
 女子の方からは賑やかな談笑の声が聞こえてくる、かと思えば、どかばきと妙な音が混じり始めた。
 あっち、何してるんだ?

●熱い闘い
 ヒュオオオオオ……。
「そろそろ拙と決着をつけましょうか」
 吹雪の中、白熊と一対一で相対するステラ。
 コキ、と肩を回す熊。
「勝負の方法はどういたしましょうか? いえ、必要ないですね」
(やり方は勿論……力比べで正面衝突ですとも!)
 ステラは小柄ながらその迫力だけで言えばゆうに白熊を上回る。ステラの指輪が反応し、巨大な拳を作り出す。
 力と力がぶつかり合った。
 ステラの黒の大顎が、氷ごと熊を狩りとった。距離を詰めたところで、さらにステラは加速を選ぶ。
「拙が倒れるのが先か、オマエが倒れるのが先か! 勝負……っ!」
 ぐおおあああ、と咆哮があがった。

 どぼん、と水しぶきがあがった。
 金塊のヒントとかは特にない。

「やー、絶景だし、極楽極楽。もう外に出たくねぇ……」
「っすね!」
 気を取り直して、女バーニャにやってきたコンレイとレッド。
 みんな温まってるか見てきてね、というジルからのおつかいだった。
 あったまっている。
 具体的には、エッダがジュウジュウと焼けている。
「うわ」
「触らないほうがいいでありますよ」
「お肉も焼けそうっす!」
「ふう、池に落ちてしまった時は凍え死ぬかと思ったけれど、なんとか人心地つきましたわね
身体の芯から温まっていい気持ち、溶けてしまいそう……」
 台の上に寝そべって、うとうととするヴァレーリヤ。
 を、唐突に枝で張り飛ばすエッダ。
「きゃあー!?」
「寝るんじゃないヴィーシャ!! 寝たら死ぬでありますよ!!」
「いだだだ、なんて事しますの! せっかく人が良い夢を見かけていましたのに!」
ええい、これでも喰らいなさい!」
 枝で反撃するヴァレーリヤだった。
「甘い、甘いでありますな」
「ぜえぜえ、今日はこれで引き分けにしておきましょう」

●二度あるバーニャは三度ある
「ふう、それじゃ気を取り直して行きましょう」
 なんとか体勢を立て直して、再戦である。
「体温まったっす! そして暑さにもう耐えられないっす!
バーニャ仲間といざゆかん決戦のバトルフィールドへ……寒っっす!?」
「あ、拙はちょうど3体倒したところで」
 わりと無事だったステラであった。

「さあ、ぞんぶんに殴りあおうぜ!」
 こぶしを打ち鳴らすサイモン。吠えるクマ。
「そうだ、戦いの基本は格闘だ! たまには小細工抜きの殴り合いも悪かねぇ!」
「いざ尋常にっす!」
 闘争魂を燃え上がらせるレッドの中で、パンドラが燃えている。
 腰を落としたタックルで組みついた。が。
「組みついてやr……あ、あぁぁぁ…!」
 あえなく持ち上げられ、ばしゃーんと派手な水しぶきがあがった。
「やるじゃねぇか…それじゃあここから先は技を解禁するぜ」
 シロクマたちは、サイモンの姿を見失う。
 スニーク&ヘル。気配を完全に消失させての、奇襲攻撃。この隠れる場所の乏しい雪原と凍った湖において、姿を隠すことは並大抵のことではない。
 だが、サイモンはやってのけた。
 一体がそのまま耐えた、が…………。
「くたばれっ」
 コンレイの風の一押しが、決め手となって湖に突き落とした。
 ルナは地面を蹴り、一歩引いた。
(今回は足場が悪ィ)
 ここでは、縦横無尽の立ち回りはできない。……だから、遠くからの牽制となる。
 バーニャの燃料も無限ではない。早めに決着をつけなければ。
 ルナの弾丸が熊をつぎつぎとなぎ倒していった。
「やってやるぜ」
 コンレイのエーテルガトリングがそれに加わった。巧みな射撃は何度もかわせるものではない。
「うー、やっぱりボクに近接格闘は無理ムリっす……」
 ふらふらとしたレッドは小屋に立て掛けた旗をふる。
「フレーフレーっす!」
 仲間の応援はありがたい。多少なりともあたたかくなっていくようだった。
「ありがとう。この熱さを力に換えて――」
 ジルが使うのは、鮮やかな赤を纏う、身を火照らせる熱い香りだ。
「見なさいアタシの肌ツヤを」
 寒空の下、ポーズを決めるジル。
「バーニャのおかげでツヤッツヤよ!
筋肉? ないわよ、フィジカル8舐めんじゃないわよ! だからね。アタシの分まで精霊たちに殴って貰うわ!」

 そして、…………。ぐらっと氷塊がひっくり返る。
「キャ――――ッ!? ちょっとおおおおおまたなのおおおおお!!?」
 寒中水泳おかわりである。
「これひょっとして堂々巡りなんじゃない……?
もうこうなったらヤケよ、とことん付き合ってやろうじゃない!」
「さむっさむさむさむっ! 狼さんへルピミーっす!!」
 狼たちになんとかバーニャ小屋前まで引きずってもらうレッドであった。

 繰り返されるバーニャ。
 輪廻と永劫。
 ばったりと倒れたレッドは意識が遠くなりそうになる。
「しっかり、しっかりして!」
 ジルがぺちぺちと頬を叩く。
「アレ……本体はどこ……?」
 意識の薄れるレッドであったが、ルナが靴を持ってきてくれた。
「ありがとうっす」
 頷き、震えて水滴を弾き飛ばすルナ。
 水滴もしたたる良い獣種となっていた。
(……濡れた奴を運ぶと、俺ももっかい小屋に入らねぇとか……)
 想定外の戦闘で帰還が遅れることとなるようだ。長期戦を覚悟したルナは仕事もこなしておくことにする。
「狼共が消耗しちまっちゃ不味いな」
 古びた倉庫を片付ける。ここならば多少、狼もましだろう。備蓄の食べ物を補充する。ラグナルはのんきにバーニャしている。
(……これ、お前が先にやるべきことだろ?)
 まだまだ未熟だよねー、と愚痴る狼としばし交流するルナ。

「温かい此処でコレを叩き合えばさらに血行が良く健康になるって噂っす!
ビシバシ! ソレソレーっす!」
 枝で叩き合うレッドと、反撃するラグナル。
「俺も巻き込んでる俺もっ! くそお、燃えろノルダイン魂っ!」
「あいたっイタタタッ!」
「ふぅふぅ…今日のところはこれで勘弁してやるっす……ちょっと火照ってきたっすから飲み物……」
 手を伸ばすレッドの手に、「飲み物」があった。
「グピグピっぷはーっす! なんか気分が乗ってきたっす!」
「いい飲みっぷりだねぇ!」
 と、サイモン。
「あのさ、それ…………」
「そーれそれっす! あえ、これ……水じゃなくお酒っす??」
 じゃばじゃばと石に水をあけるレッド。
「えっそれなんかアルコー」
「まさにバーニャ、だな!」
 むおっとアルコールの臭気が満ちた。
 ガラララ……。
 ついに、バーニャにやってくる熊。
 だが、バーニャの中ではノーサイドだ。
「どうした! こんなんじゃ血行が促進されねーぜ!」
 枝葉をしならせるサイモン。
「このやろっ! やったな!!」
 巻き込まれて反撃するコンレイ。
「それにしても、やっぱりラグナルも皆も鍛えてるわねぇ。羨ましいわ」
 きゃあきゃあと男子トークに花を咲かせるジル……に混じる白熊。
「えっ、白太郎も今度好きな子に告白するの? やーん素敵、うまくいくといいわね♪」
「オイ」
 ツッコむのにも疲れてきたルナ。
「やっぱり恋バナは心も温まっていいわね
成功を祈って喝を入れてあげるわ!」
 枝葉で殴り合い、ユウジョウを深めるジル。
「うまい酒でものまなきゃやってられねぇぜ」
 ヴォードリエ・ワインをあけるルナ。
「あっいいヤツ! すげぇいいやつ!」
「……あ゛?やらねぇぞ」
「酒ェ!?」
「まずいなんかくるなんかくる」
 具体的には女子バーニャが騒がしい。

「いやぁ~いいでありますよね殴り合い。このひやっこいところでやるのまた格別であります。
出立てほやほや限定の鉄腕焼き印パンチが唸るであります! あっ、もう冷めちゃった」
「こ、今度こそ死ぬかと思いましたわ……だ、誰か早く蒸気を……」
 震えながらバーニャに入り直すヴァレーリヤ。
 ヴァレーリヤの身体にバスタオルを巻きつける親友。
「オラァ!! タイマンで来いやオラァ!!」
「ここでお水の追加だぁ!!
あれっ、自分の飲んでたビールはどこに?」
 きょろきょろするエッダ。
「…………何かお酒臭くないですか????」
 バーニャに入り、周りの様子を見習うステラ。
「サウナでアロマ水をかける、というのは聞いた事がありますけど、お酒もかけるものなんですか???」
「その通りです」
「いえ、まあ、そういう物なのでしたら良いんですが……」
 とりあえず、パンで小腹を満たすステラは酒を注いだ。
「あ、お茶で水分補給も確りしないと、ですね」
「さらなる熱気となると……ビールではなく、より強い。
度数の高い命の水。これしかない」
 どん、とたたき付けるように現れる酒瓶。
「ビールなんざなまぬるいぜ! ウォッカをくらえであります!!」
「ちょっと、石にお酒をかけているの誰ですの!?
そんな勿体無い事をするくらいなら、私の口に注ぎなさい!」
「やるかぁああ!?」
 ここはアルコールの戦場だった。
「勿体無い事したお詫びにヴァレーリヤさんに一升瓶飲ませてあげようっす」
 レッドの差し入れが飛んでくる。
「苦しゅうないですわーーっ! エッダの腕でBBQですわ! お肉! お肉持って来なさい!」
「わぁ、あったまったらさらに美味しいっす」
「なるほど。バーニャとはそういうものだったのですね」
 ステラが妙な方向にバーニャを理解する。
「ひっく。美味しいお酒にビールの蒸気。そしてお肉。幸せでごらいまふわー
あら貴方、ずいぶん毛深…い…熊?」
 目をこするヴァレーリヤ。
「このお酒、思っていたより強いみたいでふわね」
「………あの、白熊も入ってくるんですか?」
 ヴァレーリヤが白熊に絡んでいってる。だが、そういうものなのだろう。誰も文句言わないし。
「大丈夫かしらー!?」
 見回りジルの声に返事をするステラ。
「拙は……大丈夫じゃないでしょうか、ちょっとフワフワした心持ちで、楽しい感じがする位ですから」
「ブオオオオー」
 クマの咆哮。と、分かり合うジルとの女子トークの良い声。

 もうめちゃくちゃである。

「生き返りますわーーー!!!」
 バーニャはすっかり酒蒸し風呂とかしていた。
「暖かなお部屋、ウォッカの香り! 人間はこれさえあれば幸せだったのだと、改めて気付かされますわね」
「これ蒸気だけで酔えるでありますよ」
 エッダがじょぼじょぼとウィスキーを注いでいる。
「おお、主よ、お恵みに感謝致します」
「ついでに道連れにクマ公の一匹二匹もウォッカ爆弾の道連れにするでありますヒック」
「ちょっとこれまずくない!? ねぇ!? 違うからな、ステラ。バーニャつーのはさ」
「あれ、ラグナル様おひさーでありますウィッヒ。
中々いいでありますよウォッカバーニャ」
「いや俺は」
「お前も一献いけよ。
なに行けない?
うるせえ行け!!」
「うわーーーっ!」
 男部屋にラグナルと酒瓶を投げ込むエッダ。サイモンがキャッチして飲み始める。
「気分がいいでありますがはは!!
やはり酒は全てを解決するのであります!!」
「この世の心理ですわね!!!」

 飲酒後のサウナは大変キケンなのでよい鉄騎種は真似しないようにしましょう。

「表に出ろ表にぃ!」
「武器も持たず防具も纏わず殴り合う……これこそがスチェンカ! これこそが闘争の原典!」
「バーニャ仲間と雌雄を決するにふさわしい戦いでございますわ!」
 しゅっしゅっとパンチを素振りするヴァレーリヤ。
「でやあーーー!!」
 ぐるぐるとしたラリアットが炸裂する。きらきらとした目をしている。
「タ、タフですわね。流石の私も身体が冷えてきましたわ……。
でもこれがあれば……もっと強力なパンチを……」
 偶然小屋にあった鎌とハンマーを振り回し始めるヴァレーリヤ。
「おほほほ、私のパンチで倒れなさい!
そして私に次のバーニャタイムをひああああ!?」
 冷たい湖に投げ込まれるヴァレーリヤ。
「あーあ凶器攻撃なんかするからそういう目に遭うんでありますよ」

●試合の後はノーサイド
「ううっぷ」
「大丈夫か」
「だいじょぶでごめんなさいやっぱムリですわ」
 頷き、そっと場を離れるルナ。
「ああ!? そんなもんでギブアップとは情けないでありますな」
 きれいな虹が咲いたという。

「やれやれ、すっかり冷え切っちまったな」
 熊たちと友情を深めたサイモンはバーニャに入って、酒を酌み交わした。
「試合の後はノーサイド、だ。
ほれ、ビール飲むか? 動いた後に飲むのは格別だぜ」
「帰るぞー! あれ!?」
 狼たちがジト目をしており微妙にルナの方に寄っている。
「自業自得だろ」
 とはいえ、こっそり裏で何か言い含めてやると仕方ねぇなあ、という感じで戻ってきた。
 シロクマたちが並び、イレギュラーズに別れを告げる。
「もうここには来ないこと。バーニャ仲間との約束でしてよ!」
 ヴァレーリヤがタオルを振る。酔っぱらった熊たちは北を目指すことにしたようだった。人がいないところへ……。

成否

大成功

MVP

なし

状態異常

ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)[重傷]
願いの星

あとがき

バーーニャッ!

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