PandoraPartyProject

シナリオ詳細

月面からのSOS

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●空の果てには何がある?
「無辜なる混沌がどうなのか分からないけれど、空よりももっと上に何があるかご存じ?」
 昼下がりの境界図書館。拘束された足を艶めかしく折って椅子に座した『境界案内人』ロベリア・カーネイジは天井を指さした。
「一部の異世界には、宇宙というものが広がっているのですって。今日向かってもらうのは月の裏側。月面に建てられた小さな基地からSOSの電波が届いたの。正確に言うと、この『Dreamlands(ドリームランド)』というライブノベルの世界ね」
 キラキラと無数の金の箔押しで星が描かれた群青色の表紙には、中央に凸凹の大きな月と、小さなウサギが描かれている。
 黒いマニキュアの塗られた指先で表紙をなぞりつつ、ロベリアは話をつづけた。
「依頼の内容はシンプルよ。この異世界でSOSを出している誰かを助けてあげて。
 事前に調べたところ、幸いなことに空気は潤沢にあるみたい。だから余計に、この異世界の住人が何に困っているのか分からなくて」
 本来であれば、もっと情報をとってきて特異運命座標に提供するべきなのだろう。
 ただ、ロベリアは訳あって足を拘束している身だ。無重力の中、うまく身動きのとれない姿でたった独り偵察に行くのはリスクが非常に高い。やむなく断念したという訳だ。
「現地にあなた達が行く時は、ちゃんとサポート役として同行するわ。やり切れるという根拠はないけど、私も境界案内人ですもの。プライド分の働きは見せないと」

――だからお願い。ついて来てくれる?

 小首をかしげ、悩まし気に細められる赤い瞳。
 その頃、月面では同じように真っ赤な瞳が、困惑気味に伏せられていた。

●月のうさぎ
「こまったロボ、どうしたらいいロボ……」
 銀色の髪をした兎耳の少女は、荒らし尽くされたニンジン畑を目の前にして途方に暮れていた。
 自分の住処の月面基地は『人間もどき』にバレる事は無かったようだが、自分という存在をもう彼らは気づいているのだ。
 これはきっと、彼らの忠告。――次にこうなるのはお前だ、と。
「シロロはまだ死にたくないロボ。助けて、誰か……」
 ぽろぽろと零れた涙が宙を漂い、どこかへ流れて消えていく。広い月に、ひとりぼっち。
 孤独な子兎アンドロイドは、貴方の助けを待っている。

NMコメント

 今宵も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董です。
 久しぶりのLNは月面からお届けします。秋だもの。

●ライブノベル『Dreamlands(ドリームランド)』
 月の裏側を切り出したような異世界です。重力はなく、ふわふわ浮きます。移動は何かしら工夫をしないとペナルティがかかるでしょう。SOSの信号はどうやら着陸した小型船から出ているようです。船の周囲にはニンジン畑がひとつ。他は月面らしくクレーターが無数にあり、でこぼこしています。

●目標
 シロロを襲う『人間もどき』を追い払う

 敵の生死は問いません。シロロを助けてあげてください。

●エネミー
『人間もどき』×10
  角と蹄を有する人間のような生物。奇妙な唸り声を発するのみで、言葉は通じないようです。みな一様に太い首輪を首につけており、角での頭突きや蹄での蹴りのほか、ボウガンで遠くの獲物を攻撃してきます。攻撃には【出血】のBSがつく場合があるようです。

●その他登場人物
 シロロ
  ふわふわの兎耳をもつ少女。口癖は「ロボ、メカ」で、自身を子兎アンドロイドと認識しています。
  大好物はニンジンで、月面基地(小型船)に暮らしながらニンジンを食べて生活しています。普段は生でかじりつくだけのようなので、調理してあげたりすると喜ぶかもしれません。食いしん坊で、他のごちそうにも目がないようです。

『境界案内人』ロベリア=カーネイジ
 元いた異世界では『解放の聖女』と呼ばれていた妖しげな境界案内人。善意で働いているというより、何か目的があって特異運命座標たちに力を貸し続けているようです。いつも足をベルトで拘束しており、神秘術を使って浮遊して移動しています。
 呼び出されれば簡単なサポートを特異運命座標にしてくれるようです。

 説明は以上となります。それでは、よい旅路を!

  • 月面からのSOS完了
  • NM名芳董
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年11月05日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
秋縛
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
首塚 あやめ(p3p009048)
首輪フェチ

リプレイ


「足を拘束していてうまく偵察に行けなかったんなら大人しく拘束を解けばよかったんじゃないですかねぇ」
「ふぅん?」
「……嘘です何でもないです」
 付け足す頃には手遅れだった。ロベリアから激辛の棒つき飴を口元に押し付けられ、『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は逃れようと首を振った。無重力の中では、すぐ逃げる事が難しい。どんな危険が潜んでるか分からない場所に単独で偵察なんて、その手のプロならともかく境界案内人には難しいだろうというのが彼の見解だ。
「クヒヒ! まさか月に来ることが出来るなんて……人生何があるかわからないものですねぇ…?」
 ひと悶着起きているすぐ横を、すいーっと『首輪フェチ』首塚 あやめ(p3p009048)が横切り。
「あやめさん、どこまで行くんですかー?」
「よく考えたら重力をどうにかするなんてする術なんて持ってなかったので、わかりませぇん!」
 それを聞いて、大変だと慌てて追いかけた『しろがねのほむら』冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)も結局、共に無重力の空へ流れていってしまう。
 二人の動きが止まったのは、ロベリアの放つ光鎖に身体が引っかかったからだ。
「そっちは目的地と逆方向よ」
「「はーい」」
 ふよふよと、あやめは来た道を戻りながら考える。
(無重力空間がこれほど大変なものとは……移動も一苦労…だけどこれはこれで――)
「首輪みたいな束縛感があって、最ッ高ですねぇ!!」
 ぱあぁと黄色い幸せそうなオーラを背負って喜ぶ彼女はさておき。仲間の視線が集まる中で『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)は縦横無尽に宙を舞い、感覚を確かめ終えて「ふむ」と呟いた。
「凄いな、もう自由に動けるのか」
「要は、推進力の伴わない浮遊状態というところだろう? 簡易飛行などは姿勢制御や推進に応用できないかと思って用意したんだ」
 追装着型エンジンスラスター、GF――装備者の耐久性を無視して加速する代物も、身体能力の高いアーマデルには慣れたものだ。
「ジャンプや投擲等には注意が必要だな、投げ上げても落ちてこないだろうから」
「菓子をぶち撒けない様に気を付けるか……」
 気だるそうに世界が頭を掻いたところで、進路咆哮に黒い尖った影が見えてくる。月面にぽつんと立つ一機のロケット。護衛対象がいる場所だ。


「シロロさん、こんなところに独りで……。きっと心細かったでしょうね」
 睦月があたりを見回しても、乾いた土地とクレーターが見えるばかり。月面というのは寂しい場所だと睦月は眉を寄せる。そんな彼女の声を聞きつけて、ロケットの入口が薄く開き、長い兎の耳がゆんゆんと左右に揺れた。
「誰ロボ?」
「貴方を助けに来たんです。人間もどきに襲われてると聞いて……でももう大丈夫です。僕たちが来たからには」
 きっと守り抜いてみせます。おずおずと姿を現したシロロの手を握り、優しく語り掛ける睦月。するとシロロは目を輝かせ、ぱぁと表情を明るくした。よくも悪くも、人を疑う事がないらしい。
「嬉しいロボ! でも、本当に大丈夫ロボ?」
「嗚呼。そのために来たからな」
(シロロ殿は寂しかったのだろうか。俺にはまだあまり分からない…いや、
近くにいる筈の人がいないのは、この気持ちこそがきっと『寂しい』というのだろう
俺に加護をくれた一翼の蛇は…寂しかった、らしい。対等な友もなく、ひとりで)
 まずは敵について知るべきだ。そう考えたアーマデルは月面に向け、疎通できる霊を探ろうと意識を集中する。
(宇宙…それは星の海で……ああ、知っているさ。故郷では、それ(故郷)のような箱舟(小世界)が揺蕩う『海』なのだと言われる
 そしてその遥か果てより、ヒトも精霊も神をも蝕む《瘴気》を吐く凶星が流れ着いたと――)

 ビリ、と背筋に悪寒が走った。
 薄暗い中にぬるりと浮かび上がる灰色の肌。目があるべき場所は落ち窪み、異形の姿を隠す様に湿った触手が近づいて――

「いあ……」
「おい、アーマデル!」
 最初に異変に気付いたのは世界だった。ほぼ同時、あやめがブラックストーンを握って宙を薙ぐ。守り石にナニカとの意識を切り離され、アーマデルが目を見開く。
「大丈夫ですかァ?」
 彼が何かしら不吉な物を見たのは間違いないが、ゆっくり話す時間は無いようだ。
「敵襲です! いつの間に、こんなに近くに……!」
 歯噛みする睦月へ振り落とされる人間もどきの角。しかしそれは彼女の身を傷つける事なく、あやめがしっかりと受け止めた。青き血の本能――研ぎ澄まされた神経は獲物を捕捉し、奇襲を難なく退ける。
「クヒヒ! 見てくださいよ皆さん、この人間もどき……首輪をしているじゃないですか!
 ここの人種もよくわかってる! ええ、首輪は素晴らしい!奴隷だから更に素晴らしい!!」
「一応くぎを刺しとくが、持ち帰るなよ」
「えっ、ダメ? そんな~……」
 なんとなくオチを予想した世界からの一言に彼女は肩を落としたが、すぐ気を取り直して盾となるべく前線にあがっていく。
 幾度もの戦いであやめの立ち回りを理解した睦月は、彼女を巻き込まない様に、神気閃光で敵の体力を削り取る。放たれた神聖なる光は人間もどきによく効くようで、異形の呻きをあげながら、怒りを込めたボウガンをあやめに向けて撃ち放った。鮮血が宙を舞い、赤い点となって虚空に漂う。
「待ってろ、すぐに治す」
 自身の調和を賦活の力へ、あやめの身を包む様に。ミリアドハーモニクスで回復しつつ、世界は場を観察する。
 人間もどき。奴らはいままで、シロロ相手に大きな怪我を負う事はなかったのだろう。

 ヴオォオオオ!!

 咆哮を上げて怒りのままに怒突する化け物達は、仲間同士で連携をとる様子もない。
(今回の事件の発端、ロケットからのSOS。最初はこいつらが発した可能性もあると思っていたが……滅茶苦茶攻撃して来るし元気そうだし話通じないしで100%ありえない)
「つまりこいつらに加減をしてやる事はなさそうだな」
「嗚呼。調査に1人は生け捕りにしようと思っているが」
「無茶をするなよアーマデル。もう具合は大丈夫なのか?」
 霊魂疎通をした直後、尋常ならざる反応を見せたアーマデル。しかし彼も仕事人だ。狂気の一端に触れようが、仲間の足を引っ張る真似はするまいと気持ちを戦闘へ切り替える。
「この状況を解決するのが最優先だ。何の為にシロロ殿を襲うのか、わからねばまた繰り返すかもしれんしな」
 人間と牡鹿のような角と蹄。奇妙な取り合わせの生物だとアーマデルは思う。襲い来る人間もどきの身体をデッドリースカイで宙へ叩き上げ、蛇銃剣アルファルドの一撃で呪殺を刺し、体力をこそぎ取る。気絶したソレを抱えると、GFの逆噴射で上へ向かう勢いを殺し、仲間の元へと帰還した。
「おやァ? 図らずもお持ち帰り用の奴隷が1人」
「あくまで調査のためですって!」
 ニヤニヤするあやめに睦月は呆れ混じりに返したが、これで残りの人間もどきは容赦なく倒せるという訳だ。
「アーマデルさん、最大火力でいきましょう!」
「やる気だな睦月。……いいだろう」
 閃光が乱れ飛び、星の海に負けないくらいの輝きで敵対者達を殲滅していく。勝敗が決するのは、もはや時間の問題だった。


「それで、結局SOSを出したのはお前だったんだな?」
「ひゃいでふロボ……もぐもぐ」
 大きなマフィンにかぶりつき、シロロは幸せそうにほっこりと息をついた。
「救難信号を出したという事は、この辺鄙な場所に住んでるのは仕方なくか」
「不時着ロボ。ロケットが隕石にぶつかって、パパやママとはぐれたロボ……」
 最初は警戒していた彼女も、特異運命座標が人間もどきから自分を守ってくれた事ですっかり信頼を寄せるようになったようだ。世界が持って来ていたお菓子を味わいながら、白い耳をふわふわ揺らす。
「すみませんシロロさん。僕がもっと料理が出来たらよかったんですが……」
「睦月が持ってきてくれた『まろんぐらっせ』も美味しいロボよ!」
(言えない……それはフィアンセが作ってくれた物で、僕はピーラーでニンジンスティックを量産してなんとか料理と呼べる代物を用意しようとしていたなんて…!)
 料理の腕前を隠せはしたものの、気持ちの上では完敗である。心が死ぬ前に話題を逸らそうと、睦月は捕虜の人間もどきを相手していたアーマデルとあやめに視線を向けた。
「そ、そういえば料理を用意している最中に、何か情報を得られましたか?」
「心配ないぞ睦月殿。料理は俺にも敷居が高いからな。焼くだけなら、なんとか……」
「せっかく話を逸らしたのに、戻そうとしないでくださいよ!?」
 がっくんがっくん睦月に肩を揺さぶられつつ、アーマデルは月面の地平へ視線を投げる。
「分かった事といえば、あの『人間もどき』という生き物、特に人間が魔改造されて姿を変えられたとか、そういう類ではないという事ぐらいだ」
「なんだ。つまり俺達は"人殺し"にならずに済んだって訳か。それはそれで有用な情報じゃないか」
 手にしていたフォークを揺らしながら世界が横から口をはさむ。アーマデルが霊魂疎通で人間もどきを調べると、魂のカタチが人と根底から違う事が分かったのだ。
「そりゃあそうでしょう。彼ら異星人ですからァ」
 さも当然の様に言うあやめに皆の視線が集まる。戦闘中、彼女は人間もどきを"奴隷だから"と断定していた。つまり――
「あやめ殿は最初から彼らの正体を知っていたのか?」
「半分ハズレで半分正解です。確信したのは最初からではなく、コレを見てからですねェ」
 倒した人間もどきの首輪を外し、ベルトに刻まれた謎の文字を指先でなぞる。奴隷商人の家系である彼女だからこそ知り得る知識、その末端。

「彼らは"レンの人間もどき"。月の裏側に潜む都市ドリームランドに住まう奴隷。主人たる神の名は――嗜虐王、ムーン=ビースト」

成否

成功

状態異常

なし

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