シナリオ詳細
<lost fragment>死の使者
オープニング
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――『ソレ』は正義の大地に突如として現れた。
「くそ、踏み留まれ! せめて民の避難が完了するまでは持ちこたえるのだ!」
「弓隊構えッ――! ッてェ――!!」
R.O.Oの『正義』は精強なる騎士団を抱えた大国が一つである。
かつては過剰な弾圧や抑圧が問題視されていたが、様々な人物らの尽力により問題はかなり後退しており……今の正義は実に平和な大地であったと言えただろう。
――しかしそんな善意の努力など知らぬとする『モノ』はいるものだ。
正義のある街の外で騎士団が放つ弓矢――しかしソレを斬り伏せる影があった。
それは首なしの騎士。デュラハンが如き……漆黒の魔性。
暗き圧に身を包み、馬を駆って進軍してくる彼らの歩みは――止まらない。
やがて聞こえてくるは激しき金属音。
剣と剣が衝突しあい、意思と意志が鍔迫り合っているのだ。
この地を魔物などに蹂躙させまいと――しかし。
「うっ……ごふっ」
指揮を執っていた騎士の長がデュラハンの刃に倒れれば、一気に戦況は傾いた。
崩れる陣形。刃が鎧の隙間を貫き、また一人、一人と倒れてゆく。
――そして障害がなくなれば街へと殺到するものだ。
あとは無力な民を蹂躙する為に……
それは悲劇と言えるだろう。数多の悲鳴が轟くその場、地獄と形容する者もいるだろうか。
しかし。
「う、うわあああなんだこれは!!?」
その『地獄』はイメージと些か異なるものだった。
デュラハン達が街の中へ闊歩すると同時――その道筋にそって世界が『モザイク』に染まる。
刃を振るい、斬り捨てる者あらばその者もまたモザイク状に。
建物に触れればそこからまるで浸食するように、全てにエラーが――突き走る。
まるでそれは、世界が奴らに『喰われて』いるかの様であった。
「お父さん! お父さ……あ、あれ? 違う、私はずっと一人で……」
「騎士達は何をしているんだ!? どうしてこの街には騎士がいないんだ!!」
更には。そのモザイクに飲み込まれた者は――誰しもの記憶から忘れ去られてしまう。
まるで最初から存在していなかったかのように。
デュラハンを止める為に奮闘した騎士達も。
娘を逃がす為に囮となった父も。
記憶にある建物も――親友も――なにもかもなにもかも。
そうして『奴ら』は全てを喰らいつくしていく。
奴らの名は『ワールドイーター』
バグにより発生した怪物にして正義を呑み込まんとしている――存在である。
●
「ええい! 手が足りぬ手が足りぬ! 猫の手も借りたい程の忙しさじゃ!」
正義のNPCアストリア枢機卿は集まったイレギュラーズ達に乱暴な口調のままに説明を始めた――今、正義の国を悩ませている『ワールドイーター』達の事を、だ。
ワールドイーターとは一言で言えば魔物だ。だが只の魔物ではない――
奴らはこの世界そのものを『喰らう』かのように全てを塗りつぶしていくのだ。
「奴らに食われたモノは全て『なかった』事になるのじゃ。
家族だろうがペットだろうが――それこそ街そのものであっても、な。
その性質もあってか随分と発覚が遅れてしもうたわ!」
既に幾つもの街や騎士、無辜の民が『喰われて』しまっているのだという。
――そして今なお奴らの浸食は続いている。
「じゃが! こちらも奴らに対抗するための術はあるものよ――! いや厳密にはこれを生み出せたから気付いたという、順番はちょっと逆な所はあるが……まぁとにかく!」
言うアストリアが紹介したのは――『【偽・星読星域】(イミテイション・カレイドスコープ)』だ。それは未来を覗くという秘儀を成せる道具。ヒイズルの国にも似たものがあったが――それと同系統だろうか。
とにかく、これで正義の未来を覗かんとした結果『虚無』を観測したのだ。
ワールドイーター共に食い尽くされてしまうという、未来を……
しかし正義の国はまだ滅びてなどいない。
「幸いというべきかの――ワールドイーター共を倒せば、食われたモノは元通りになるようなのじゃ。じゃからお主らに頼みたいのはワールドイーターの討伐……もしくはワールドイーターの接近に伴う迎撃となる」
そして今回頼みたいのは後者だ。
デュラハンの様な魔物が――正義の街に接近し、騎士と交戦状態になっているという。
……残念ながら騎士の防衛ラインは突破されてしまう未来が見えてしまっているが、至急に向かえばまだ街が蹂躙され尽くす前には間に合う。ワールドイーターを一匹残らず殲滅すれば、街は取り戻せるのだ!
「デュラハン共は鎧で全身を包んでおる上に、馬に乗って機動力もあるようじゃ――中々の難敵やもしれぬが、お主らに託す他ない……頼むぞ!」
奴らの好きにさせてしまえば、何もかもが忘れ去られる。
記憶もデータも何もかも……
――『lost fragment』イベント開催中! お楽しみに!
そんなふざけた表示がプレイヤーの眼に見える中。
ワールドイーターの進軍を防がんと――イレギュラーズ達は歩みを進めんとしていた。
- <lost fragment>死の使者完了
- GM名茶零四
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年10月31日 22時06分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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あらゆるモノをなかった事にする。それが――ワールドイーター。
記憶も思い出も存在そのものも何もかも……奴らは逃さない。
「……許されないことです。似て非なる仮想世界とは言え、そこに住む人々にとっては現実の出来事……あった物が、あるべきはずのモノがなくなるなど。どこの誰かは存じませんが、神様気取りで好き勝手にしすぎです」
真なる神はクマさん只一人だという事を奴らに教えてやらねば――
ワールドイーターの行い認めがたいと『魔法人形使い』ハルツフィーネ(p3x001701)は思考する。故にまずは一直線……『Lightning-Magus』Teth=Steiner(p3x002831らと共にデュラハンの一組へと襲来せん。
召喚したドローンと、作成したクマの天使により空から状況は見ていた。
故に最短ルートも既に割り出してあるが故に――
「ハッ。しかもワールドイーターたぁ……随分と御大層な名前まで背負ってるもんだぜ。
名前の通りであってくれよ――? 見掛け倒しの木偶の坊は御免だぜ」
まずは奴らを止めるのだ。これ以上奇妙な『モザイク』を広げさせる訳にはいかない……
首無し騎士よ、その命頂戴せん。
「正義のクマさんが神様に代わって、不届きものを成敗してあげましょう」
故に二人は二か所に展開。
ハルツィーネが煌びやかな宝玉を抱く盾を掲げ、その背後より――クマの爪にて襲わん。
それは注意を引く為でもある。一瞬の間隙に続いてTeth=Steinerは。
「一体ずつ、きっちり確実に消滅して貰う。こういう時のセオリーってヤツさ」
十字砲火となる様な形で、余すことなく彼らに火力を集中させよう。
自動反撃ドローンが彼女の動きを支援しつつ展開する数術結界が敵を逃さぬ。
形成される次元の連続性がやがて虚数を生み出し崩壊の一途を辿る。
――巻き込まれる騎士達。されど強引に抉じ開け、踏み留まらんとするはワールドイーターの面目躍如か? 紡がれる刃が二人を襲う――上等だ。元よりこれだけで終わるなどとは思っていないのだから!
「さてさて……デバックに励むなんて僕の趣味じゃないんだがね。まぁ依頼主のご意向とあらばやむを得ない所もあるが――愚痴の一つも零したくなるものだよ」
同時。別方向の騎士達の眼前に至るのは『夢現の奇術師』夜乃幻(p3x000824)だ。
彼方此方もバグバグと喧しいこと……いっそのこと練達の上層部には文句の一つや二つ言っても問題ないように思えるのだが、まぁそれは後にするとしようか。愚痴を言ってる間にお嬢さんが苦しむのなら――僕の行く道も決まったようなものだから。
「レディ。僕の後ろにてご安心を……宝石たる輝きに、傷一つたりとも付けさせませんよ」
「――これはどうも。その言葉、頼りにさせてもらうとしようか」
であればと彼が言の葉を向けるのは『蒼穹画家』スキャット・セプテット(p3x002941)だ。女性を……スキャットを護る様に立つ夜乃幻の背には有無を言わさぬ力強さがあるが――だからこそスキャットは思考する。
自らが……現実の自らが男だという事はバレない様にしなければ申し訳ないぐらいだと……
だが余念抱く暇もなく首無し騎士らは認識した『敵』を滅すべく刃を此方へ。
――動く。駆け抜ける馬の速度の儘に、邪魔者を振り払わんと。
「数の不利があるなら、敵を味方につけるだけだ――彩に狂え、惑いの灰色!」
しかしそうはさせぬとスキャットの一撃。
彼らの機動力にも負けぬ加護を身に宿しながら――狂気を誘うものだ。
数の不利があろうと戦いようはあるというもの。
それを証明するかのように――夜乃幻も動き出して。
「よろしい。誰であろうとレディを傷つけるものは僕の敵と認定致しましょう。
向かって来たという事はそれを是とするという事で構いませんね――?
では、そんなあなた方へ一言申し上げるならば……」
『死ね』と。スキャットの一撃により鈍った彼らへと投じるは奇術が一つ。
青く強い輝きのスピカが堕ちる如き夢の有り様。
一瞬にして、しかし永遠とも見間違うが如きソレを幻だと気付いた時には。
「死が近い」
五指を開けば花開く。夢の終わりを断じれば――騎士らの身に衝撃が走るが如く。
そうして街の各所で騎士らを止めるべくの戦いが開かれつつあった。
三つの班に分かれて各所で打ち倒そう。数の不利がある所は中々厳しい戦況になるかもしれないが、しかし。
「取り戻さなくてはね、街を、住民達の想い出を」
この街を奴らの好きにはさせられないのだからと。
『夜告鳥の幻影』イズル(p3x008599)は言の葉を零しつつ――前を見据える。
そこにいるは一際巨大な圧を持つ首無し騎士。此処のワールドイーターの、首魁たる者だ――
●
イズルは当初、空より俯瞰していた。
助けを求める声が刹那に失われる――それが最前線なのであろう。
そしてその近くには必ず奴らがいるものだ……
「ヒトが生きた証、紡いだ糸を喰らいに来るとは……とんだ輩だね」
「『倒せば元通り』ってのは、まぁなんともゲームらしいと言えばゲームらしいけどな」
故に降り立つ。その隣には『竜空』シラス(p3x004421)もおり、敵を見据えている。
不幸中の幸いと言うべきか――騎士達を見つけるのはそう難しい事ではなかった。特にイズルやシラスは飛行する事が可能で……広い視点をもつ彼らにとってはモザイクがどこまで広がっているかを目視出来るからだ。
そうなっていない場所に彼らが進軍してくるし、その中でもリーダー格は目立つが故に見分けも付きやすかったもの。シラスによく似たミニドラゴンも索敵に頑張れば――迅速に見つけるに容易く。
「――行こうぜ。どうやらお喋りしてる暇はなさそうだからな」
「正義の街をこんな形で浸食するなんて……絶対に許さないよ!」
であれば、後は奴らの浸食を止めるのみ。
殺意と共に正義の街を、そして民を襲わんとしている首無し騎士共を、先手を取る形でシラスの息吹が襲えば――更に続く形で『天真爛漫』スティア(p3x001034)も往く。彼女もまた、自らを慕うサメちゃんにより奴らの位置情報の入手に成功していた――
故に割り込むのが間に合った。今まさに振り下ろされんとしていた大剣と民の間に。
「もう大丈夫だよ! ここは私達に任せて避難して! 皆と一緒に外へ急ぐんだ!!」
「は、はい! ありがとうございます!」
鍔迫り合い。上より重力と体重に任せて圧を掛けてくる大剣を防ぎ続けるのは容易くないが……負けるものか。民が慌てながらも駆け抜けていく暇ぐらいは稼いでみせる。
許せぬのだこの者達は。虚構とはいえ故郷の一片を今、呑み込まんとしている。
存在自体をなかったことにしようとなど――
「絶対に、許せない!」
直後、逸らす。いつまでも受け続けてやる義理などないのだ。地上に奴の大剣が着弾すれば激しい衝撃が周囲へ――しかしその間隙を縫うように、スティアは騎士の腹を一閃していた――であれば。
「今までは気付く事も出来なかった……けど、これからはそうはいかないよ。
君たちの好きになんてさせるもんか! 皆、皆――必ず守ってみせるんだから!」
続けざまに『ご安全に!プリンセス』現場・ネイコ(p3x008689)も一撃。彼女もまた飛行しつつ駆けつけてくれば家の屋根を蹴り、直上より強襲するように至るものである。
「急いで逃げて!! 私達が時間を稼いでる間に、早く!!」
同時。彼女の言葉は周囲で混乱している街の民へと。
奴らに呑まれれば『消えて』しまう。なんとか倒せれば元通りと聞いてはいるが……しかしそれは刹那とは言え現実の『死』と何が違う?
「――見逃しがたい点は其処にある」
故、イズルは戦線を支える。癒しの薬液がさまざまな不調を癒すのだ――騎士に受けた傷を急速に治癒し、戦う力を蘇らせる。素早く、迅速に皆の体力を癒していこう。
ここには敵のリーダー格もいるのだから。
再度、激突。
四対四の戦いは熾烈を極めていた。シラスが雷の力を纏うブレスで敵を引き寄せ、その間にスティアやネイコが攻めたて――イズルが治癒する。それでもワールドイーターたるデュラハン達の攻撃も苛烈であり。
「さぁ――そろそろ幕としておきたい所ですね。
踏み留まるも結構ですが……僕に野蛮な言葉をなるべく話させないでください」
そして数で劣る他の戦線でもまた、戦いは続いていた。
夜乃幻が跳躍し、再びの星堕としの奇術を一つ。あぁ、ああ全く。どうしてこうまでデバックに必死にならねばならぬのか――佐伯女史のような美しい女性にこのようなことを言うのは憚られますがね。やはり他のお歴々には後程、言の一つや二つ投じても問題ないではないかと、思考しつつ。
「天義――いや、正義で大事件が起こってるなんて『彼女』に知られたら、絶対に首を突っ込んでくるんだ……ここで終わってもらおうか。彼女に無理をさせる訳には――いかないんでね!」
同時。騎士の一撃を辛うじて躱すスキャットが、デュラハンの足とも言える馬を狙う。
奴らの足を潰せばタダではすむまい。動きは乱れ、その機動力にも影響がある筈だ。
なるべく多くの数を狙えるように行えば――目論見通り。
が、騎士らも反撃とばかりにスキャットへと大剣を文字通り『投じる』
それは超質量の投擲となりて、彼女の身に突き刺さ――
「させません、と申し上げたはずですがね?」
らない。代わりに飛び込んだ夜乃幻が、有言実行の如く。
――死など恐れるものか。それよりも彼女が傷つく事こそが恐怖であらば。
「では、一度だけ口に致しましょう――『死ね』」
同時の一閃。紡ぐ奇術が奴らに降り注ぎ……死の領域へと引きずり込んでやった――
流石に、死なずに騎士らを打ち倒す事は至難の業か。だが、それでも勝利できたのならば良し――他の戦域に急ぎ向かうかとスキャットが状況を確認せんとすれ、ば。
「あなた達に時間をかけてはいられないので。速やかに撃破させて頂きます。
お覚悟を。クマさんの鉄槌を、その身に知ると良いのです」
「あっちもこっちも忙しいんでな――全力で行かせてもらうぜ」
ハルツフィーネとTeth=Steinerらの戦域も佳境を迎えつつあった。
倒れるよりも先に倒す。一体分とはいえ、数で劣る以上長期戦になれば倒れるのは彼女達かもしれぬのだから――全霊をもってして火力を集中させ、とにもかくにも落としていく。
クマさんの爪が引き寄せる騎士達を纏めて捉え、空いた横っ腹があればTeth=Steinerが穿つ。
――時間をかけてなどいられない。モザイクを止める為にも、ここはッ!
「終いだぜ、お前。このまま微塵に砕けちまいな!」
押し切らせてもらうのだと、Teth=Steinerが強く一歩を踏み込んだ。
騎士の斬撃が降り注ぐ。大剣の一撃は重く鋭く、しかし当たらねば良いだけだと。
死を躱し。己が死を相手へと齎さんとする。
全てを喰らう者よ――虚数の彼方に消え失せるがいい。
苦悶も断末魔も挙げさせる事なく、Teth=Steinerの放つ次元は全てを呑み込んで……
「これが真の神たるクマさんの力なのです……さて」
では、とハルツフィーネ達もまた最後の戦域。
シラス達が戦っている最も数が多い激戦区へと――飛び込んでいくものだ。
体力には決して余裕がある訳ではない。能力値に優れるリーダーがいなかったとはいえ……あの騎士達もそれなりに力を宿していた。効率的に攻撃を叩き込めたが故にこそ打ち倒す事叶ったが、余裕かと言われればそうではないと言えるだろう。
可能であれば体力の回復を行いたい所だが――万全整える暇などなし。
至急向かいて、この戦いを終わらせなければならないのだから。
「行くぜ」
跳躍する。力を振り絞りながら、あと一戦を制する為に。
●
マントを羽織りし個体の一閃は、他のよりも明らかに鋭かった――
「だけどよ。それがどうしたってんだ……
ボス級が強いなんてのは、最初から分かってんだよ!」
が、シラスは踏み留まる。重き一撃が至ろうと早々に崩れたりなどするものか。
とにもかくにも己が役目はこの個体を押さえる事とし、魔法の鱗が剣撃を反射し――敵の体力を確実に奪っている。総反撃は、もう少し後だ。今はまだとにかくこれらを押さえる!
「負けるもんか! 貴方達の思い通りにはさせないんだから!」
そして万が一にもシラスが破れそうになっても、スティアがそのカバーに入れるようにいつでも注意しているものだ。デュラハンらの重き一撃に対して紡ぐは――左手からの神速の居合。
一撃、二撃と氷の花弁を舞い踊らせながら敵を斬るものだ。
彼女の俊敏性は群を抜いており、相手が一行動する間に複数の手を絡ませるモノ。もはや只人には追えぬ程の神速が彼女の身に宿っていれば……最前線にて立ち回り刃を抜いて応戦す。奴らの剣筋は攻撃に偏っているのであれば、必ず硬直の隙がある筈だからと。
「――もう何も喰らわせない。私達が相手取る以上、絶対に!!」
そして騎士らを纏めて穿たんとするのが――ネイコだ。
彼女の輝かしきエフェクトの一撃が騎士らを襲う。
逃さない。見逃さない。絶対にここで彼らを倒すのだと強き意思が此処に在り。
――だが堅き鎧に身を包む騎士らもまた、簡単には倒れぬものだ。
ネイコの一撃に耐え、鎧の奥より見える怪しげな視線が――彼女達を向く。
斬撃、一閃。
堅牢なる身と、岩をも砕かん一撃によって強引に戦線を抉じ開けんとしてくる。
だめだ――行かせられるものか――
スティアが大剣を受け止め。しかし捻じ伏せられんとした――正にその時。
「待たせたな――だが、間に合った以上はこっちのもんだ」
敵の背後より一撃が投じられた。騎士の身が揺らぐ――その一撃は。
「こっから一気に畳み掛けていこうぜ!」
「正義のクマさん、再度参上です。駆逐していくと――しましょうか」
Teth=Steinerのものだ。その隣にはハルツフィーネもいる。
間に合ったか――いやそれだけではない。別の方から近づいてくる気配もあって。
「やれやれ……! 連戦の上に一番多いとは、なんとも苦労しそうだが」
「しかし、さぁここが正念場という所でしょう――麗しいレディ達の明日の為。死力を尽くすのみです」
スキャットと、再度ログインを果たすことが出来た夜乃幻の力も至るものだ。
その形は奇しくも包囲する様な形。同数であったが故にこそ真正面からのぶつかり合いの様な形になっていたが……こうなってしまえば戦術的にもイレギュラーズが優勢であった。各所より至る攻勢が首無し騎士共を追い詰めてゆく――
勿論、今再ログインしてきた夜乃幻はともかくとして体力はそのままだ。
故にこそ圧倒、とまではいかない。
『――――』
リーダー格のデュラハンが何か指示を出したのか、この場を突破せんと動きを見せる。
このままでは包囲殲滅されるだけと理解したか――故に向かうはハルツフィーネらの側。馬の機動力をもってして突き破らんと……
「――将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、だっけか。正にその言葉通りにしてみようかね」
が。逃さない。事ここに至りて攻勢に加わるシラスが狙うのは――馬だ。
奴らの足を奪う。騎兵が歩兵となれば戦力も落ちようと、ブレスを一つ。
同時。続く形でスキャットも貫く一撃を。
されば――転倒する騎士もいるものだ。それでも、刃を振るいて突破せんとするが……
「テメェがモザイク野郎共の親玉か。今から、その命を発禁モノにしてやっから覚悟しやがれ! テメェは存在自体がいらねぇんだからな!!」
Teth=Steinerが通さない。リーダーの一撃を受け止め、しかし返しの一撃を叩き込み。
その鎧の一部を破砕させる。
痛みか、苦しみか。悶える様な動きを見せ――直後には暴走。
近くの家を切り刻み、少しでもモザイク化を進めんとして。
「貴方達にはもう、この街を食べさせないよ……! 大人しく滅びるんだ!!」
が、それもさせぬとばかりにスティアが身を呈して守るものだ。
街の損壊を防ごう。モザイクの浸食を……これ以上進める訳にはいかない!
『――!! ――ッ!!』
「ああ断末魔か――? それを挙げたいのは、お前たちの犠牲になった者らだろうに」
故、最後の一撃をイズルが紡ぐ。
味方に当てぬ様に紡がれるソレが――騎士ご自慢の鎧を全てぶちぬき、全てを滅す。
――されば、街を喰らっていたモザイクが、止まった。
直後には晴れる。数秒と立たぬうちに、街は元の景色を取り戻して……
「……街は全て復元されただろうか? 念のため確認だけはしておくか」
「すぐにまた襲われる可能性もあるからな――町長とかに状況説明しといたほうがいいか」
「傷ついたレディ達もいるやもしれません。僕も見て回りましょう」
しかし終わりではないかもしれぬとイズルやシラス、夜乃幻は付近を見て回ろう。
万が一にもモザイクが残っていれば……また浸食が始まるかもしれぬのだから。
「……早く元凶をどうにかしたい所ですね」
ハルツフィーネはクマの人形を微かに強く、抱きしめる。
ワールドイーター。この世界を喰らう連中の不穏さは――始まったばかりなのだから。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ。
新たな敵ワールドイーター。R.O.Oのバグも活発になってきたという事でしょうか……
敵の親玉もいずれは出てくるかもしれませんが――それはまた別の物語にて。
ありがとうございました。
GMコメント
●依頼達成条件
街が喰われる前に、ワールドイーター全ての撃破
●フィールド
正義の東部に存在する『ヘルズベルク』という街です。
風光明媚な街として有名だったそうですが……現在はワールドイーターに襲撃されています。防衛の為に奮闘した騎士は無念ながら全滅し、ワールドイーターは既に街中です。
現在、街はモザイク化が進んでいます。
これはデュラハン達を全滅させると解除されますが、デュラハン達が生きていて動きが自由な状態だと逆に早まっていきます。全て呑み込まれるとこの街は『忘れ去られて』しまいます。そうなると依頼失敗になりますのでお気を付けください。
●敵戦力
・ワールドイーター:デュラハン×10
『首なし騎士』というべき存在です。
全身に鎧を身に包み、その手には大剣が握られています。
何体かは弓矢も持っており遠距離攻撃も可能とします。
暗きオーラを纏った馬にも騎乗しており機動力も中々のものです。
一体だけマントを羽織っているリーダー格の様な存在がいます。
この個体は他のデュラハンよりも全体的に能力が高いようです。
また、デュラハン達は街の中を4・3・3の3組に分かれて蹂躙しています。(4にリーダー格のデュラハンがいます)民を追い詰め殺害したり、モザイク浸食(喰らう)を速めている様です。
※重要な備考『デスカウント』
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
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