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シナリオ詳細

砂上船、大渦を越えよ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ラサ傭兵商会連合――その中心都市にして、最大のオアシス都市として知られるネフェルスト。
 その一角にある商人達の溜まり場では近頃、小さく話題になっていることがあった。
「聞きましたか? あそこの商会が雇った傭兵の話」
「あぁ、総勢20人を綱でくくって降りてったっていう、あそこの話か……どうなったんだ?」
「ええ、結局駄目だったみたいですよ。全員、渦の中へ真っ逆さま。吸い込まれるように消えていってしまったようです」
「おっかないねえ……でも、あれだろ? あの渦の底にあるっていうお宝は」
「ええ……見つかった彼の手記から考えるに、魔銃が眠っているはず」
 年若い男女の商人がうわさ話に花を咲かせている。
(はぁ……やれやれ近頃の若いモンは噂話が好きだね……)
 カウンター席にて1人、ゆっくりと酒を嗜んでいた女は心のうちで溜息をもらす。
 やれちょっとばかし大物の商人が大金をつぎ込もうとしているだの、やれあの傭兵団に話を持ってったやつがいるだの。
 そこら中から聞こえてくる話は、似たような物ばかり。はっきり言って、拍子抜けだ。
(ちぃたぁ自分達で金を出そうって奴はいないもんかね……
 久しぶりに来たもんだけど、これじゃあ来るまでもなかったね)
 美しき四翼の黒き翼を従え、女はゆっくりと立ち上がった。
 年の頃は50を超えていようか。
 自信に溢れた表情は一般的な商人のそれとは異なっていた。
 その様子に気づいたらしい数人の囁き声がする。
 それらを無視して、女はそのまま立ち去って外へ。

(さて……と。とはいえ、どうしたもんかね……)
「カリーナ姐さん! お戻りになられましたか!」
「ん? あぁ、着いてたか。思ったより長い間、考えちまってたみたいだね」
 顔を上げれば見知った男。
 女――カリーナが抱えるサマラ商会の構成員だった。
 よく見れば見知った光景、いつの間にやら商会で使っている建物まで戻ってきていたらしい。
「で、どうでした? どっか手を組めそうなやつらはいましたかい?」
「いいや、ダメだね。どいつもこいつも気概がない足りない。
 大手に貸しは作りたくない……ってなるとやっぱり、あそこと結ぶのが吉ってところだろうね」
「そうですか。じゃあ、いつも通りですね!」
「そうだね。次の問題は、どこの誰を積むか……」
「それなんですが、うちらの方でおススメを見つけてきました」
「へぇ……どこの傭兵だい?」
「いいえ、傭兵じゃありません。ローレットですよ!」
「――――」
 その言葉に、カリーナは一度言葉を失って、ややすると大笑する。
「あぁ、そりゃあいい。ローレット! その手があったね!
 出来る事なら、ジグリの娘とも久しぶりに会ってみたいところだ」
 そう言うや否や、カリーナは直ぐに商会の面々へと指示を飛ばしていく。
「さぁ、大仕事の始まりだよ! 準備しな!」
 慌ただしく動き出した家族にも等しい彼らを見ながら、カリーナは短く息を吐くとくるりと身体を返す。
(さて、私は私で、ジグリと話を付けてこないとねえ……たしか、別件の相談があったっけ)
 考えつつ、商会の外へと足を踏み出した。


「あんたらに1つ依頼したい」
 後日、ローレットへと姿を見せたカリーナはイレギュラーズへそう声をかける。
「近頃、ある鍛冶師の残した手記が見つかってね。
 そこにはある魔銃の精巧なレプリカ――模写を製作後に隠匿した場所が書かれていたんだ。
 それで、ある商会から依頼された傭兵が手記に記されていた場所へ調査に赴いて――消息を絶った。
 そんなもんで、第2波がそこへ行くとそこには渦潮としか言いようのない光景が広がっていたんだ」
「私達の依頼はそこに行ってそのレプリカを回収してくることか……」
「まぁ、簡単に言うとそうだね。ただそう簡単にはいかない。なあ、あんた達、船は好きかい?」
 カリーナはにやりと挑発的に笑って見せる。
 不思議そうにするイレギュラーズへ、カリーナは砂上船のイラストを見せると。
「そいつはウチの商会が使ってる砂の上を走る船だ。
 今回、目的地まではその船で行く。なに、行くまではちょっとしたクルージングとでも思ってくれて構わないだろうね」
 少しだけ引っかかる言い方だった物の、イレギュラーズは話の続きを聞くように視線を向けた。


「お、見えてきたね。あれが今回の私達が向かう先だよ」
 先頭に立つカリーナがイレギュラーズへ声をかける。
 視線の先、そこにはぽっかりと空いた穴と、砂が渦を巻きながら落ちていくさまが見えた。
 見た目だけであれば蟻地獄の穴をグンと大きくしたようにも見えるが――なるほど確かに、あれは砂地の渦潮とでもいうべきだ。
「さあ――おまえ達! 覚悟はできてるね!」
 首だけ振り返るようにしてそう告げれば、後ろにいる船員――もとい商会の構成員たちが応、と声を上げる。
「あんたたちも、振り落とされたくないなら捕まってな! 『突っ切るよ』」
「――は?」
 何と言ったか、一瞬、分からなかった。
 突っ切るよ、と――だが『突っ切る』ようなものは、視界にたった一つ。
「ちょっと待ってくれ、まさか――あれにか!」
 誰かが声を上げる。
 船室に入る者や捕まれそうな場所に捕まる者がいる中、砂上船が加速し始めた。
 それは真っすぐに、挑むように渦の中央めがけて砂上を疾走する。

GMコメント

 こんばんは、春野紅葉です。
 砂漠を走る船でのクルージングからの純戦でございます。

●オーダー
【1】魔銃『ディアナ=レプリカ』の回収
【2】魔剣『リュキオス=レプリカ』の回収

【1】は無傷での回収を望ましいとします。
【2】については努力条件とします。

●フィールド
 砂漠地帯のど真ん中、渦潮のような光景の中です。
 中は広大なドーム状の部屋が広がり、1辺100m四方の長方形のフィールドが存在しています。
 何故か光が放たれており、光源はばっちりです。
 フィールドの中央には天使を思わせるゴーレム2体がおり、迎撃してきます。

●リプレイ開始状況
 リプレイ開始時、皆さんは砂上船に乗って渦潮の中へ向かって突っ込んで行くところから始まります。
 今回のカリーナ達サマラ商会の運搬するものはほかならぬ皆様です。

●エネミーデータ
・『魔銃の守護者』ディアナ=レプリカ
 天使型ゴーレムの片方。
 独特な意匠を施されたライフル銃を持っています。
 この銃が皆さんの回収対象【1】になります。
 倒さない限りは回収できません。
 常にペナルティのかからない低空飛行状態にあり、射線確保のためには上昇、降下も行います。
 命中、反応、物攻が高め。素のCTは並みですが、攻撃時には連実用範囲程度まで上昇するものもあります。

<スキル>
アクションノイズ・ストライク(A):精密な計算により放たれた弾丸は対象の動いた先を撃ち抜きます。
物超単 威力大 【万能】【不殺】【必中】【連】

ウェイブショック・S(A):その弾丸は波のように広がり、壁の如く迫るでしょう。
物中扇 威力中 【万能】【不殺】【氷結】【氷漬】

ティアドロップ・レイン(A):広範囲に向けて放たれるは慈悲の弾丸。それはさながら涙の雫のように。
物遠範 威力中 【万能】【不殺】【識別】


・『魔剣の守護者』リュキオス=レプリカ
 天使型ゴーレムの片方。
 片刃でやや反りが強い幅広の長剣を持っています。
 この剣が皆さんの回収対象【2】になります。
 倒さない限り回収できません。
 常にペナルティのかからない低空飛行状態にあります。
 反応、神攻、EXA高め。

<スキル>
アウローラ(A):神秘性を帯びた剣身で対象を焼きながら切り刻みます。
神至単 威力大 【業炎】【炎獄】【必殺】【邪道】【反動】

ソルハーツ(A):己を焼きながら輝く魔性の光
神自単 【光輝】【HP回復】【反動】【反】【副】

シューティングスター・ブレイク(A):夜を裂く流星の如く、一条の斬撃を放ちます。
神中貫 威力中 【業炎】【炎獄】【必殺】【ブレイク】【反動】


●回収物について
 かつてラサにいたというさる鍛冶師が本物の魔銃を精巧に模写して制作した代物です。
 これまで完全に無名でしたが、この数ヶ月のうちに鍛冶師の手記が発見されたことで注目を集めつつあるのだとか。
 回収物自体はただの銃に過ぎず、ただの骨董品です。

 ただ、砂漠に大がかりな侵入者対策の罠を仕掛けていたことなどから信ぴょう性がある程度あり、
 考古学的には『かつてそんな名前の魔銃が存在していた可能性を示す』ものです。

 魔剣の方は皆さんがフィールドで会敵してから初めてその存在を確認されます。
 いわば姉妹作品のようなものです。

●NPCデータ
・カリーナ・サマラ
 ラダ・ジグリさんの関係者。
 50歳代の豪放磊落、自身に満ち溢れた壮健な女傑です。
 結婚後すぐに死別した夫に代わって夫の商会、サマラ商会を率いています。
 ジグリ家とは遠縁にあたるそうです。

 今回はそもそも容易には接近できない砂漠の渦潮を砂上船で突っ切って突撃。
 探索者こと皆さんを送り届け、皆さんと商品の回収を行ないます。
 ちなみに、戦後の修繕費はジグリ商会と交渉済みとのこと。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 砂上船、大渦を越えよ完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年10月23日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
天穿つ
亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
ルクト・ナード(p3p007354)
蒼空の眼
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)
砂漠の蛇

リプレイ

●疾走する砂上船
「行け行けー! こういう命懸けのスリル、ボク大好き!」
 砂塵をかき分け、渦を巻く砂めがけてぐんぐんと加速していく砂上船の上、『激情の踊り子』ヒィロ=エヒト(p3p002503)は眼を輝かせている。

「かっ飛ぶ砂上船、未踏破の遺跡、いいねー 実に冒険、これぞ! って感じ!」
 同じく『あの虹を見よ』美咲・マクスウェル(p3p005192)もテンションを高く加速を続ける船の上で興奮を禁じ得ない。

「今たしかに生きてるんだって実感できるよね!」
 興奮と好奇心に目を輝かせるヒィロだった。

 その最中、いよいよ船が渦へと突撃をかまし、激しい横揺れがイレギュラーズと船に襲い掛かる。
「うおっ! さすがに渦の中に突っ込むとすさまじいな……
 まさか、本当に船ごと砂漠の渦に突っ込んでいくとは、中々剛毅なやり方だ」
 大きな横ブレに、一応振り落とされないよう帆で自分の身体を支える『“侠”の一念』亘理 義弘(p3p000398)は、視線をこの船の持ち主に向けた。

「はっはっは! やるじゃないか! さあ、おまえ達!
 気合入れなおしてサマラ商会の底力をみせてやりな!」
 激しい揺れと衝撃にカリーナが大笑して、より力強く前を行くよう指示をする。

「ヒュウッ! 豪快! 気風の良い姐さんってえのは大好きですよ、私は!」
 その指示を聞きながら、『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)は不敵に笑って、被った海賊帽をしっかりと押さえる。

「……これまでで一番豪快な砂漠行だけど、これやっぱ修繕費うち持ち?
 不味いな、絶対に黒字にしないといけなくなった……」
 激しく揺れ始めた船の上、『剣砕きの』ラダ・ジグリ(p3p000271)の表情は少しばかり険しい。

「たしかに金に関してはジグリに貸してもらうが、これも一応win-winの契約だからね。
 あんたのとこは金を出して、うちは出してもらった分だけあんたのとこにタダでこの船と漕ぎ手を出す。
 ようは先行投資、そう言う契約さ。一番肝心な部分がお釈迦になると流石に笑えないぐらいのえらい額になっちまうけどね!」
 実家の負担に思わずつぶやいた言葉に、カリーナはからりと笑う。
 流石に商人だけあって、どうやら一方的な話ではない――らしいが。

「たしか、この先にあるのは古の魔銃でしたか。浪漫で御座いますね。浪漫を追い求めるのもまた一興」
 いきなり揺れが逆になった頃、『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)もまた呟く。
「そうさ! やっぱり浪漫っていうのは突っ込まなきゃ損ってもんさ!」
 幻にカリーナが頷いて答える。

「持ち帰れたら知り合いに構造の調査でもさせたいものだな」
 少しばかり考えた『蒼空』ルクト・ナード(p3p007354)の言葉にカリーナが少しだけ考えてから小さく首を振った。
「今回のは流石に人には渡せなさそうだね。
 曰くがあるならあるで、こっちでもっと詳しい事を調査することになりそうだしね」
「……何、依頼という事なら無理は言わん。任された仕事をし、回収するだけの事だ」
「悪いね、そうしてもらえると助かるよ」
 少しばかりバツが悪そうな顔してから、再びの衝撃に微かに身体ゆらす。

「――さあ、あんた達もしっかり衝撃に備えな。いよいよ、大一番だよ」
 解を上げたカリーナがイレギュラーズへ不敵に笑って視線を前へ投げかける。
 ますます加速していく砂上船は遂に中央へと突入する。
 四方から感じる激しい衝撃に、船が明確に軋む音がした。
 一瞬にして、視界を黒が覆いつくしたかと思えば、一瞬の後に、まばゆい輝きに思わず目を閉じる。

●在りし日の模造品
 微かな上下運動を感じて目を開けば、そこは目的地――と思われる場所だった。
「……回収するだけ、とは言ったが……
 こんな場所にあるとは聞いていないぞ……それに」
 まずルクトが声を上げた。
 周囲を見渡す限り、広大なドーム状の部屋を思わせる。
 視線を最後に中央あたりへ向ければ、そこには正方形のフィールドが存在していた。
「……天使型の飛行可能なゴーレム、だと……!
 ここからでも見える、フィールド中央に存在する2体のゴーレムらしきものは、確かに天使のような形状を取っていた。
「さあ、Step on it!! …って、敵が二体!?」
 ウィズィの言う通り、フィールドに立つゴーレムは2体だった。
 思わず振り返るが、カリーナの方は気にしている様子はない。
「流石にこうなってるとはあたし達も知らなかったよ。
 守護者ぐらいはいるだろうけどとは思っていたんだけどね」
 豪快に笑い飛ばしたカリーナの指示を受けて、船がフィールドへ進んでいく。
「守護者とのバトル……やっぱり、遺跡探索はこういうのがないとね!」
 興奮を隠さぬ美咲はむしろ心躍るといった様子であった。
(とはいえ、心に釣られて厚くなりすぎてもダメ。心は熱く、思考は冷たく、ね)
 少しばかりの深呼吸で自分の思考を纏めなおして、視線を挙げる。
「面白かったー! 次はあれを倒せばいいって感じかな?」
 ヒィロが目を輝かせる。
「そうだね、あいつが持ってるのが目的のブツっぽ、い、ん、だけど……」
 望遠鏡で守護者を見たカリーナの声がここに来て突然の歯切れの悪さを見せる。
「あはっ! もっともっとワクワクできそうだよ!」
 ヒィロの眼の輝きは衰えるどころか、より一層と楽しそうに揺れている。
「もう片方のゴーレム、銃ではなく、何か――あれは剣、でしょうか」
 ほぼ同時、『砂漠の蛇』サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)はゴーレムの片方が握る武器を見つめて、ぽつりと呟いた。
「素人目に遠目で見てるから正確には分からないけど、あの感じ、雰囲気が似てるみたいだね……
 聞いてないし、手記にゃ書かれちゃいなかったけど、ありゃあ姉妹作ってとこかい」
「どうします、ラダ? 最後に修繕費を出すのは貴方のご実家ですから、貴方の意向を尊重します」
 サルヴェナーズの言葉を聞いて、ラダは視線をカリーナに向けて。
「……で、聞いてない奴がいるわけだけど、あの剣も回収できたら報酬に上乗せは?」
「――はっ。言うじゃないか、ジグリの娘。当然、ここまで来てもう一本は出さない、なんてしょうもないことは言わないさ。
 その代わり、あんまり傷つけないでおくれよ。銃はともかく、剣となればアレで防いでくるかもしれないしね」
「その言葉、忘れないからな」
 言い残して船からフィールドへと降り立てば、その後ろから視線を感じた。
「ええ、分かりました。貴方がそういうのなら」
 ラダの意向を受けたサルヴェナーズは静かにうなずくと、続けてその場を跳躍してフィールドへ。
「……破損してしまった、となれば洒落にならねえか。
 獲物に当たらないように気を付けてやる必要はありそうだな」
 義弘は少しばかりのストレッチをしてから、跳躍する。
「天使の姿のようですが、飛べるのは貴方だけじゃないことを、墜落させて思い知らせて差し上げましょうか」
 幻は自らの羽で緩やかに低空を飛行して船の上から飛翔する。

 最高速度で射程圏内へと移動した幻はステッキに魔力を収束させていく。
「――堕天使になるのも、また一興でしょう?」
 収束する魔力は濃く、激しく。
 限界まで収斂された魔力は、蒼薔薇の花弁の奔流となって、直線上を真っすぐに走り抜けていく。
 花弁は退避行動を試みるゴーレムの片方――ディアナ=レプリカへ追いつくにつれてやがて青い蝶に姿を変えて、その身体を包み込み、焼き付ける。
 それに反応したように、ディアナ=レプリカが動きを見せた。
 反射的な反応を示すようにして、手に持つ魔銃を静かに幻へと向け、引き金が弾かれた。
 その弾丸は退避行動を試みた幻の動きに合わせたように太腿辺りを撃ち抜いてくる。
 受けた攻撃の衝撃に微かに止めた動きを縫うように、もう一度。

 続けるように動こうとしたのはもう1体のゴーレム――リュキオス=レプリカ。
 幻めがけて突貫して追撃を果たさんとするその直前へ、割り込むようにして身を躍らせたのはヒィロ。
「さぁボクが相手だよ! あっちにはいかせない!
 そのご立派な剣が飾りじゃないって見せてもらおーか!」
 間合いを開けたリュキオス=レプリカは、魔剣の模造品から眩い輝きを放ち、一閃。
 業火を帯びる邪道の剣捌きを、ヒィロは踊っているかの如く軽やかに躱して、挑発的な笑みを浮かべる。
 その所作をゴーレムが理解する知性を持っているのかは分からないが、少なくとも動線を塞ぐように動くヒィロへ意識が向いたのは確かだった。
 注意を引いたが故か、より鋭さを増した連続する斬撃を、躱し続ける。

 それを見て、義弘は前のめりに踏み込み、一気にディアナ=レプリカへと突貫する。
(狙いを気を付けないとな……)
 懐へ飛び込んだ義弘に反応しようとしたディアナ=レプリカより早く、握りしめた拳を真っすぐ、最短で叩きつける。
 みしりとゴーレムの身体がきしむ音がする。
 どうやら、思ったよりも硬くはない。
 ――いや、寧ろ軽すぎる。素なの塊を殴ったような感覚だった。
 よろめいたディアナ=レプリカが至近距離から義弘に銃口を向ける。

 ――その弾丸が撃ち抜かれるより一瞬前、3発の弾丸がゴーレムの首筋、肩、腰当たりを直線に撃ち抜いた。
(ヒィロには面倒なのの抑えを任せてばかりだな。あとで一杯なり奢らないと)
 着弾を確認したラダはちらりと視線はヒィロへ。
「こんな大掛かりな罠を仕掛けられてるとなると……厄ネタじゃないかと疑いたくなるな。
 あのレプリカを調べればそれも分かるだろうか」
 視線をディアナ=レプリカへ戻して、呼吸を深く。
 極限の集中力を。いかに慣れた狙撃とはいえど、敵の獲物に絶対に当てないようにしながらとなれば否応なしに集中力が必要だ。

 美咲は連続するリュキオス=レプリカの斬撃の1つが、深くこそない物のヒィロに傷を入れたのを見た。
 独特の呼吸法を用いてこちらも低空飛行をしながら、魔眼をもってヒィロを見つめた。
「美咲さん! ありがと!」
 大天使の祝福に相当する魔眼の魔術は温かな光の魔力を持って傷を受けたヒィロの傷を一気に取り除いていく。
「私も続くよ――」
 そのまま、励起した魔眼の出力をほぼ無理矢理に変質させ、リュキオス=レプリカを視界に入れる。
 紫色の強くなった魔眼が鮮烈に輝き、リュキオス=レプリカの生命力と魔力を奪い取り、その身体に傷を刻み付けていく。

 心臓辺りにて拳を握り締めたウィズィは呼吸を均してヴァルハラ・スタディオンで英霊の魂を降ろす。
 心なしか、全身からオーラのような物を溢れださせながら、ハーロヴィット・トゥユーを振り回して、石突き部分を地面へ叩きつけた。
 そのまま、堂々と告げる名乗り口上に、2体の視線が今度はウィズィの方を向いた。
 威風堂々と、不敵な笑みを零したウィズィの挑発的な存在感に、2体のゴーレムが誘われるように動き出す。

「飛行可能な相手に飛行を利用せず相手取るなど、私の道理に反するというものだ」
 一気に速度を跳ね上げ、ルクトは戦場のはるか上空へと飛び立った。
 上に上ってみれば、屋根のようになっているのが渦を巻いて滞留する砂の塊であることが分かった。
 それに何か良からぬものを覚えつつも、義肢に装備したポットを開き、炸裂弾を叩き込む。
 複数の機動を描きながらもやがて集束し、狙い定めたディアナ=レプリカへと幾度も弾丸が撃ち込まれていく。

 暗い輝きを放つ泥が粘り気の強い音を立ててサルヴェナーズの周囲に溢れだす。
 大地へと零れ落ちたそれらがフィールドの床へと広がり、蛇や蜥蜴、羽虫が姿を見せ始めたあたりで、サルヴェナーズは視線をディアナ=レプリカに向ける。
「――貴女に感情の類があるのかは知りませんが……」
 それはイブリースの囁き。
 思考への阻害、簡易なものだが、感情の操作を可能とする催眠魔術。
 魅入られたディアナ=レプリカはだらりと魔銃を持ったまま、頭を押さえながらゆるゆると振り始めた。


「……しかし、レプリカ程度でこの凝りよう、本物に期待がかかるな」
 



●ジグリとサマラ
 ラサ傭兵商会連合の都にして、大都市らしい大都市としてはほぼ唯一のオアシス都市『ネフェルスト』の内部、2つの商会の主がひっそりと会合を開いていた。
「今回の修繕費だよ」
 そう言って一枚の紙をカリーナがつきつけると、それを受け取った男が少しばかり表情に険しいものを浮かべた。
「なんだい。そう険しい顔しないでおくれよ。これでも意外と安く済ませたんだよ?」
 カリーナはそう言って肩をすくめると、そのまま椅子に腰を掛けて、一息ついた。
「それより、あんたの娘。今回の仕事に来たけど、立派に育ったじゃないか」
 カリーナが事も無げに言った瞬間、男の表情が微かに自慢げになって、嬉しそうに緩んだ。
「現場のとっさの判断とは言え、あたしに向かって報酬の上乗せを言ってきたよ。
 全く、強かでいい女になったもんだ。……うちにも、ああいうのが欲しいんだがねえ」
 小さくため息を吐いたカリーナに、男は無言のまま。
 だが、娘を褒められたこともあってか、当初より表情の険しさがなかった。

成否

成功

MVP

ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃

状態異常

なし

あとがき

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