PandoraPartyProject

シナリオ詳細

砂塵吹きつけし命の種

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●砂塵吹きつけし命の種
 一面に広がる砂漠の地、ラサ。
 とても暑い気候と、所々に点在するオアシス以外には、殆ど水の出る場所はなく、人々は乾いた生活を続けざるを得ない……そんな地域。
『……はぁ、はぁ……』
 荒れた呼吸で歩くのは……タガーと革鎧に身を包んだ集団。
 ただ、革鎧もいろんなものをつなぎ合わせたような感じの具合で、タガー自体お世辞にも手入れが行き届いていない。
 そう、この集団を構成するメンバーの装備は全てが『ちぐはぐ』であり、統一感が無い。
 それもそのはずで……彼らはこのラサの、とある村『だった』の村人達。
 盗賊達によって、村は突如襲撃されてしまい、人々は村を諦めざるを得なかった。
 そして、村を追われた彼らが、自分達が生きる為に選んだ選択肢は……自分達も盗賊となる事。
 奪う者から奪われる者になる事で、必死に生きようとする彼らは、装備は貧弱ながらも人数の多さ、つまり質より量で、小さめの村を襲うことで何とか食い扶持を繋げていた。
 そして、そんな彼らのターゲットにする村が、目前に。
『はぁ……あの、村だ……よし……今日の夜……襲撃するぞ……』
 途切れ途切れに喋りながら、仲間達に指示を与える男。
 ……彼は昔、副村長だった者。
 村長は殺され、彼が今のリーダーであり指導者。
 その言葉の端々には、そういう事をしたくない……という感情が見て取れるが、最早引き返すは出来ない状態に陥っているのであった。


「あ……イレギュラーズの皆さん、来て頂き、ありがとうございます……」
 静かに頭を下げるのは、『深森の声』ルリア=ルミナス(p3n000174) 。
 あまり浮かない表情の彼女ではあるが、彼女が皆を集めたという事は……依頼である、という事。
「その……ラサの村で、最近大人数で村を襲う事件を起こしている盗賊の一団がいるのですが……彼らはどうも、昔は極々普通の村人だったそうなのです……」
「村を襲われ、棲む場所をなくした彼らは、自分達も奪う者になり、命を繋いでいるようなのです。この様な哀しみの連鎖は……どうにか止めたい所です……放置しておけば、ラサの自警団の方々に返り討ちに遭って、殺されてしまう可能性は十分にあるでしょう……どうにか皆様のお力で、この哀しみの連鎖を止めてきて欲しいのです……」
「幸か不幸か、難しい所ではあるのですが……彼らの戦闘能力はそこまでたかくありません。ただ人数が多く、その人数で押しきろうとしてくる傾向がある様です。また、深夜の人々が寝静まった頃に奇襲を掛ける様です。皆様にとっては深夜の刻と、負担を掛けてしまいますが、どうか宜しくお願いします……」
 と、深く頭を下げた。

GMコメント

 皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)です。
 ラサの国、貧しい者が虐げられ、更に貧しい者を虐げるという哀しみの連鎖が起きてしまっている様です。

●成功条件
 盗賊団を討伐する事が目的となります。
 今回の討伐は、『殺す』事も含みますが、『生き残らせて改心させる事』も討伐に含むこととします。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●周りの状況
 ラサの国に属する小さな村が、今回襲撃される場所となります。
 小さな村なので、住まう村人も40人程度です。家も数軒しか有りません。
 そこに敵となる盗賊達は、深夜、皆が寝静まったタイミングを狙って仕掛けてきます。
 皆様は事前に村に到着出来ますが、昼過ぎの時点から敵は村の監視を行っている為、表だって村人達にコンタクトを取ると警戒されてしまう可能性がありますので注意して下さい。
 又、襲撃時において敵陣は村を囲う様に、四方八方から仕掛けてきますので、襲撃後に村人を村から逃すという方法は取れませんので、ご注意下さい。

●討伐目標
・やむにやまれず手を染めた『エデルグロス』村の村民達 x 50人
  村を襲われ、盗賊に手を出してしまった村人達です。
  年齢は20代~60代位まで幅広く、戦闘技能はそこまで高くありません。
  その代わりに村を追われても一致団結して戦う『絆』及び、『人数』で小さめの村を次々と襲いかかり、食べ物などを奪って食いつないで来ました。
  戦闘能力よりも、その絆(連携)で対抗してきますし……可能ならば不殺で倒して頂ければと思います。

 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • 砂塵吹きつけし命の種完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年10月20日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)
ロロン・ラプス(p3p007992)
見守る
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
キルシェ=キルシュ(p3p009805)
光の聖女
ウルファ=ハウラ(p3p009914)
砂礫の風狼

リプレイ

●悲哀の輪廻巡る流砂
 視界一面に熱砂の砂漠が広がりし地、ラサ。
 その地を包むは暑い気温と、所々に点在するオアシス。
「うわぁ……ラサって、深緑と全然違うのね……! さらさらの砂がいっぱいで、緑が殆ど無いわ」
 そんな光景が目新しいのか、目を爛々と輝かせているのは『リチェと一緒』キルシェ=キルシュ(p3p009805)。
 深緑から出て来て数ヶ月……お隣の土地ではあるけれど、あんまり来た事が無かったこの地。
 そんな渇いた地に蔓延るは盗み。
 ……略奪を繰り返す盗賊と、それに苦しめられる人々。
 そういった事件は今迄度々聞いた事はあるが、苦しめられた人々が盗賊になってしまい、彼らが更に弱い者へ襲い掛かるという……悲しみの連鎖が今回の事件の切っ掛け。
「……こんな国だ。似たような者はたくさんいる」
 と辛辣ながらも真理を突いた言葉を紡ぐ『剣砕きの』ラダ・ジグリ(p3p000271)。
「うむ。盗賊に奪われ仕方なく、盗賊に身を落とすか……やるせない話じゃな」
「ええ。奪われた悲しみはそれ相応だとは思うけれど……でも、奪う側になったからと言って、薄まる物ではないわ……」
 『砂礫の風狼』ウルファ=ハウラ(p3p009914)と、『竜首狩り』エルス・ティーネ(p3p007325)がやるせない気持ちで呟く。
 しかし、そんな悲しみの連鎖を止めてきて欲しい、というのが今回の依頼な訳で……その解決策としては、彼らが襲い掛かろうとするのを止める他に無い、との事。
「うーん……これ、あんまモテる類いの仕事ってわけじゃーなさそーだよな……」
 と『横紙破り』サンディ・カルタ(p3p000438)は肩を竦めると、それに『無垢なるプリエール』ロロン・ラプス(p3p007992)も。
「そうだねぇ……本当、こういう事例があるから、奴隷管理も有意義だと思うんだけどねぇ……」
 確かに奴隷という言葉の響は悪い……だが、奴隷であっても幸せに生活している者が居るのも確かだろう。
 とは言え今回の者達はその選択肢を選ばず、自己の利の為に奪う事を選んでしまった……その選択は誤っていると言わざるを得ない。
「ま、状況については……特に言う事も無いだろう。生きる為に他者に迷惑を掛けるなんてのはよくある事だ。だから、さっさとやる事やって帰ろうぜ」
 と『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)が肩を竦める。
 呆れたかの様な口調ではあるが……今ならまだやり直せる、その期待を込めての一言。
「まぁ、今ならまだやり直せるじゃろ。悪行を嫌がっとるうちはな……」
 そうウルファが瞑目しながら息を吐くと、それに。
「……まぁな、かつて私が居た世界でも、逆境に立たされた人間をたくさん見てきたさ。そしてその中には、逆境を乗り越えた人間ももちろんいた。人間は意外と強いものだからな」
 『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)が唇を噛みしめながら言うと、ラダ、エルスも。
「ああ。こんな国だ、似たような者はたくさんいる。ただ、だからといって見捨てるのも性に合わなくてね」
「そうね。彼らの悲しみを憐れむこともないし、ね……罪には罪。ちゃんと罰を受けてもらわなくちゃ!」
 そんな二人の言葉に、キルシェは純粋に。
「うーん……ルシェ、村人さんには助かって欲しいの! その為なら琉シェ、頑張って頑張ります!!」
 純真に目を輝かせるルシェの言葉。
 ロロンはそんなルシェの言葉にこくりと頷き。
「そうだね。みんなの望みは彼らを生かして新しい生活を送って貰う事らしいし、その望みに沿うようにボクの機能を活用させて貰うよ」
 そして、最後にサンディは。
「それじゃ取りあえず、彼らがどこから来るか分からないし、ファミリアーで周囲を観察させとくか」
 と小さなトンビを召喚し、空へと放つ。
 今回の彼らは、昼から村を監視しているというからこそ、察知手段は最大限に活用しなければなるまい。
 そして空高くから、村の周囲を観察させる様にさせつつ、イレギュラーズ達は村へと急ぐのであった。

●環襲の時
 そして襲撃予定の村に辿り着くイレギュラーズ。
「さて、と……取りあえずこの辺りの地図は手に入れて置いたけど、一応見ておくか」
 と地図を元に周囲の立地を確認するサンディ。
 周囲を見渡せる物見やら、監視にするに絶好のポイントが無いかの見当を付けつつ、そこに先程のトンビを向かわせ、巡回監視させる。
 ……だが現状、トンビと共有する視界には、かの盗賊達の姿は発見出来ない。
 まだ辿り着いていないのか、それとも隠れた所から監視しているのかは分からないが……今の内に準備を整えておく必要があるだろう。
 そんなサンディの情報を元にして、イレギュラーズ達は村へと足を踏み入れる。
 村と言えども、極々小さな集落といった感じの村であり、家は十件程度で、住人は40人程度という具合。
 ……そんな村もまた、かなり貧しい生活をしている様で……訪れたイレギュラーズ達に。
『どうしたんだぁ……冒険者さん達ぃ……この村にはぁ、何もないだよぉ……?』
 と声を掛けてくる。
 そんな村人さん達に、キルシェが。
「村人さん、この村にはお水はあるの?」
 と問いかける。
 それに村人達は。
『いんやぁ……あるはあるけどよぉ、分け与える程は無いだよぉ……』
 と溜息一つ。
「そうなんだね。そう話を聞いて、ボク達は来たんだよね」
「そうなんです! ルシェたち、この村が喉カラカラ-って聞いて、お水を持ってきたんです!」
 とキルシェはギフトの力を活用し、その手に持った水瓶一杯分のお水を満たす。
 更にロロンも、キルシェほど早くはないものの、砂を詰めた花瓶をじわじわと純粋へと変化させる事で水を生成。
 そんな二人の水生成能力に目を丸くさせ……すごい、助かる……と冒険者達に頭を下げる。
「大丈夫です! 皆さんの分、ちゃんと作りますから、落ちついてください!」
 と村人達に落ちつくよう呼びかけながら、更に水を作る二人。
 ……そう二人が村人達と接している間に、ラダやエルス、ウルファは村人達に声を掛け始める。
 この村のリーダーは誰か、最近この村の周囲で何か事件が起きてないか、とか。
 そんな情報を聞き出す事で、村人達の信頼を得ると共に……この村に、スパイとして潜り込んでいる盗賊がいないか、という事を確認。
 幸い村人同士、見覚えが無い人は居ないという事で、スパイとかは居ない様ではある。
「……良し。取りあえず今の時点での村は安全そうだ。後は……盗賊達が襲ってくる前に、村の外で迎撃出来れば幸いだが」
「そうだな。となると……」
 モカの言葉に世界はサンディの持ち込んだ地図を前に、暫し考察。
「……こうして、こう、と……うし。これである程度は居場所を絞れるだろう」
 世界の予測が地図の上に記され、幾つかの敵の襲撃ルートを予測。
 村を危険が及ばないように、盗賊達が襲撃するよりも前に仕掛ける事が、今回の作戦。
 その為にも、村人達よりも自分達に注目を集めることは必要。
 それこそが、先程水とかを村人に渡していた理由。
 敢えて村で目立つ行動を行う事で、村を監視しているであろう盗賊達の注意をこちらに向けるのが目的。
 ……そんな作戦を遂行していると、サンディが巡回させていたファミリアーから、静かに身を潜めていた者達の影を発見。
「うーん……あっちの方の様だな」
 視線で仲間達に合図するサンディに、モカとウルファが。
「分かった。まだ日が出ている時だから、彼らは襲撃の時を待っているんだろう……日没を待って、そこに向かうとしようか」
「そうじゃな」
 とそれぞれが頷き……そして目立つ行為を行いつつ、日没の時を待つ。
 周囲が暗くなり、村人達は各々の家へと帰り、村は夕刻を過ぎ、次第に寝静まる時へ。
 その間にイレギュラーズ達は村を離れ……盗賊達が潜む小高い丘へ。
『……ハァ……さ、さぁ行くぞ、皆……今日は、あの村を……襲う……!』
 息を切らせながら、仲間達に指示を与える、ボロボロの装備に身を包んだ盗賊達。
 そんな盗賊達が、村に襲撃を掛ける為に動き始めた瞬間に。
「させないよ」
 パッ、と立ち塞がるはイレギュラーズ。
『っ……何っ!?』
 驚愕の表情を浮かべた盗賊達に、エルスが開口一番。
「不幸の連続なんて繰り返さなくてもいい。貴方達……止める切っ掛けが欲しいんじゃないのかしら? もちろんこれは、少し私の願望も入って居る訳だけども」
 彼らの想いを見透かしたかのように告げる一言……一瞬戸惑ったかの様な表情を浮かべる盗賊達。
 それに、更にウルファとキルシェが。
「考え直さぬか? 格好を見るに、根っからの盗賊という訳でもなかろう? この砂漠は厳しいが懐は深い。やり直すなら口添えをしてやるぞ?」
「そうです! ルシェ、盗賊さん達がお水欲しいのなら、ルシェのお水で良ければあげる! ずっとは無理だけど、今だけでも思う存分、皆さんの喉の渇きを癒やせるくらい、できるよ!」
 しかし二人の言葉に盗賊達は。
『う……う、うるさいっ!! お前達に、何が分かるってんだ……!!』
『そうだそうだ!! 俺達の苦しみなんて……解る訳ないだろう!!』
 聞く意思はありそうだが……限界間近な状況故、心を開く迄には至らず。
 それと共に、各々が所持する短剣や鍬などを手にし、イレギュラーズ達に攻撃を仕掛け始める。
「そうか……ならば仕方ない。熱砂の神の沙汰を受けよ。聖なる陽光よ、夜を照らせ!」
 と早々にウルファは神の光を展開し、攻撃してきた盗賊達に不殺の一撃を食らわせる。
『ぐぅっ……おい、あいつだ、アイツを先に倒せ!!』
 と声を荒げる盗賊の男。
『う……わ、分かった……!!』
 そしてその声に、周りの者達は頷き、従う。
「どうやら彼がリーダーの様じゃな……皆、作戦通りに行くぞ」
「うん、分かったよ」
 ウルファに頷くロロン。
 更にサンディとキルシェも戦列に加わり、先程声を上げた男……そう、この盗賊団のリーダー側に対峙する。
『くっ……こっちに来るな!』
 彼は唇を噛みしめ、退避しようとするのだが、そんな彼らにサンディが。
「申し訳無いけど、逃がす訳にはいかないんだよな……取りあえず、俺達が相手させて貰うぜ」
 と言いつつ、彼の怒りを買いつつ、ロロンが水鉄砲の非殺の一閃で攻撃する。
 その一方で、他の盗賊達の方にはラダ、モカ、エルス、世界の四人が対峙。
『っ……くそっ、倒すしか、無いのか……!!』
 と唇を噛みしめて自責の念に駆られている盗賊達。
 ……そんな彼らにエルスから。
「……私達があなた方をただ殺すのは……きっと簡単な事だわ。けれど……私達はあなた方に改心して欲しい。わかって、もらえるかしら……ね?」
 そんな彼女の言葉に、戸惑いを覚える盗賊達はかなり居る模様。
 しかし。
『……くそ、くそっ……!!』
 やはり追い詰められた状況故か、その戸惑いを吹っ切って攻撃をしてくる者も。
 そんな盗賊達へ。
「そう……なら、仕方ありません……加減はするけど、最後は皆、御願いね」
 エルスが放つは、己が生命力を犠牲にした呪いの一撃、更に世界も暁と黄昏の一閃で攻撃。
 ただ、二人の攻撃は不殺はなく、下手に当たり所が悪いと……彼らを殺して仕舞いかねない。
 だからこそ二人の攻撃は出来る限り控えめで、モカが気功による加護と気力の破壊を伴う攻撃を放ち、続けラダはゴム弾を撃ち放つ。
 ……そんなイレギュラーズ達の攻撃が一周した後、盗賊達の破れかぶれの攻撃が次々と放たれる。
 決して小さくないダメージが積み重なり、盗賊達からは攻撃が効いていると思った事だろう。
 だが、最後に動くキルシェが、そんなダメージを喰らった仲間達を回復。
「盗賊さん! お話、聞いてくれるならお水あげます! だからまずは、お話聞いて下さい!!」
 と、説得に応じるよう、懇切丁寧に御願いする。
 ……そんなキルシェの言葉に、更に惑う盗賊達。
 だが、リーダーの言葉に従い、攻撃をし続ける事数刻。
 50人居た盗賊達は次々と気絶し、地面に転がり……残るはリーダと、2名の盗賊達……。
「勝ち目はないと分かっただろう? 反対側でも同じ事が起こってる。だが、どちらも死者はでていない筈だ。剣を納めて欲しい……話したい事がある」
 真摯に瞳を見つめるラダの言葉。
 ……それに、彼の周りに居た盗賊の仲間達からも。
『……も、もう……やめましょう……』
『そうだよ……! リーダー……!』
 そんな仲間達の言葉に、リーダーである彼は。
『……わかっ、た……』
 と、頭を垂れて……その場に武器を落とし、降伏するのであった。

●環の行き着く先
 降伏した彼らに、キルシェの作り出したお水を配布して暫し。
 どうもかなり喉が渇いていた様で、一杯の水はすぐに無くなり、二杯目、三枚目……とがぶ飲み状態。
「さて、と……落ちついたかしら?」
 とモカが声を掛けると、こくり、と頷く盗賊村人達。
「まずは一言……あなたたちがやろうとしていた事は、一時しのぎを繰り返しているだけであり、根本的な解決にはならないわ。そして、あなたたちの問題は解決しないまま、同じ境遇の人を増やすだけになる……それは、分かって居るのかしら?」
 責める訳ではなく、諭す様なモカの口調。
『……分かってる、けど……よぉ……俺達だって、生きるのに必死なんだ。その為には、こうするしかなかったんだよぉ……』
 唇を噛みしめ、口惜しそうに喋る彼ら。
 ……そんな彼らの中に、小さな子どもが居ないのに気付いラダが。
「……キミ達は村を襲われた者達と言っていたよな? 子ども達は? どこかで帰りを待っているだけならいいんだがね?」
 と問いかける。
『子ども達……はみんな、殺されちまったんだ……』
 目を伏せる彼ら……子ども達を殺された恨みも、恐らく彼らを凶行に走らせた理由であろう。
「そうか……それはすまなかった」
 ラダは一言告げ、深く頭を下げる。
 そして彼らに、キルシェは純真無垢な言葉で。
「そうなんだ……でもね、盗賊さんたちは生きる為だったけど、盗賊さんたちに襲われた人たちの事は考えたのかしら?」
『……っ』
 自分達が襲われたからこそ、その痛みは彼らに痛感出来る事だろう。
「そうよね? 過ぎた事はもう戻せないけれど、奪った以上に今度は沢山ラサに返して償いましょう?」
「そうじゃな。熱砂は汝らの命は奪わなんだ。やり直す機会と選択肢を与えよう。生まれ育ったラサでやり直すか、外の世界で真面目に働くか」
 キルシェとウルファの提案に、モカが。
「そうだな……もし君達が働き口が無いと言うのなら、自分の領地に来て働いてみてはどうだ? 君達のような働き手を求めていたのだよ! もちろん、しっかりと仕事の報酬も支払うと約束する」
『……ほんとか?』
 ちょっと驚いた風な彼らに、キルシェも。
「そうね! モカお姉さんのところで頑張って欲しいわ、ルシェも!」
 と目を輝かせながら、元副村長の手をぎゅっと握る。
 更にウルファも。
「他所の地に行くのが不安であれば、我の地でも構わぬ。不安になる事は無い。行き先は同じイレギュラーズの領地じゃ。今度の住処は盗賊など撃退する武力つきじゃぞ?」
 と笑うウルファ。
 しかし、どちらに行きたいというのは、すぐには決まらない。
 此の地で盗みを働いた故に引け目はあるが、この地への愛着もある。
 ……そんな村人達の迷いに、サンディとロロンが。
「取りあえず、そんなに急いで決める必要は無いだろ? 暫しではあるけど腰を落ち着けて、そこで悔いの無い様に選択すりゃーいい。それまでの分の食料や水くらいなら用意出来るしな」
「そうだねぇ……あの村に頼んでみようかー」
「そうだな……んじゃ先に断りを入れてくるぜ」
 サンディが先行して村へ向かい、そして元盗賊達を護衛しながら、村へと向かう。
 歩く彼らの表情や仕草を見ていると……今迄のことを悔いている様には見える。
(「……今回は何とかなったかしら……? 悪から目を覚ます事が出来たなら……」)
 そんな村人達の雰囲気に、エルスは内心、彼らの更正を確信。
 彼らの将来の選択はどうなるかは分からないものの、今の時点で出来る最良の手は取れた筈。
 そんな彼らの将来を願いながら、イレギュラーズ達と元盗賊達は村へと赴くのであった。

成否

成功

MVP

モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera

状態異常

なし

あとがき

ラサの悲しき盗賊シナリオに参加頂き、ありがとうございました。
彼らにもやむにやまれぬ事情があった様ですが、皆様のお陰で更正の第一歩を踏み出せたことでしょう。
皆様、ありがとうございました……!

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