PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ワイルドチェイサー

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●邪悪なる種
「ハ、ハハ。とんでもないものが出来てしまったな」
 練達の科学者ハーレイは、思わずそんな事を呟いていた。
 空気感染する強力な毒。無効化するのは簡単だろう、然程複雑な構成でもない。
 しかし、その毒の恐ろしさは強毒性ではない。その感染速度にこそある。
 1度空気中に流れれば、恐るべき速度で四方八方へと広がっていく毒。
 人に注入すれば、その者は毒に侵されず、その者から毒が漏れ出て広がっていく自覚無き毒兵器となる。
 火で焼けば恐らく無毒化するが、それまでにどれだけの被害を出すか分からない代物だ。
 100人規模の被害で済めば御の字、といった凶悪性がコレにはある。
「……こんなものを世に出すわけにはいかんな」
 流石にハーレイにも倫理観というものはある。
 出来てしまったものは仕方ないし、これも次の為のステップになるだろうが……外には出せない。
 封印して、レポートを出すに留めておこう。
 そうするのが一番だと、ハーレイはそう考えていた。
 だが……何処にでも邪悪な者はいる。
 薄暗いルートで流れたこのレポートを元にハーレイの研究に辿り着いた者達が封印されたアンプルを奪って逃走したのは、数か月後のことだった。

●悪には悪を
「……事情は分かりました。それで、具体的にわたくしたちに何を?」
 練達に存在する、とある「地図には存在しない部屋」で、ライ・リューゲ・マンソンジュ (p3p008702)は依頼人の男にそう問いかける。
 依頼人の男……恐らくはその顔も「本物」ではなく何かの偽装なのだろうが「ジョン・ドウ」と名乗ったその男は、何かのカードのようなものを机に置く。
「何これ。カード? まさかコレに報酬入れたって話かしら」
 胡散臭げにカードを見るコルネリア=フライフォーゲル (p3p009315)にジョンは「それは鍵だ」と答える。
「カギィ? 何のカギですかぁ?」
「車の鍵だ。差し込めば起動する」
 その言葉に鏡 (p3p008705)が「あはぁ」と笑い、コルネリアが口笛を吹く。
 車の鍵。練達のエージェントがわざわざ用意した車。
 それが普通の車であるはずはない。どおりで此処が何かのガレージのようにシャッターで閉じられているはずだ。
 ジョンはカバーのかけられたソレへと向かっていくと、カバーを外し……現れたその姿にライが「あら」と笑う。
 それは見た目には真っ赤なスポーツカーのように見える。
 耐久性を捨ててスピードに全振りしたかのようなその車に何か異様な赤いボタンがついているのをライは目ざとく見つける。
「こちらのボタンはなんでしょう? 押せば讃美歌が流れるというわけでもないのでしょう?」
「それで敵がひれ伏すなら付けて構わんがね……ターボスイッチだ。いざという時に押せば10秒間、尋常ではない加速を得るだろう」
「そいつぁご機嫌だわ」
 イカれてる、とコルネリアが笑う。誰がそれを運転すると思っているのだ、この名無し野郎は。
「私とて、君たちを神の身許に送る為に、このイエーガーカスタムを用意したわけではない。それだけの相手だということだ」
「……へぇ? 楽しませてくれそうな話ですねぇ」
 こんな車を用意しなければいけない相手。それがどんな獲物なのか?
 考えるだけで鏡は楽しくなってきてしまう。
「此処から道に直接出られるが……そこから20km先。此処同様に地図には載っていない隠れ家で悪党どもが強毒「ボーンズレッド」のアンプルを取引している」
「乗り込んで神の下へ送ればよろしいのですね?」
「ああ。今から向かえば、丁度取引を終えた頃だろう。まずはアンプルを流したクソをぶち殺し、然る後にイエーガーカスタムで取引相手を追い、撃滅してくれたまえ」
 ボーンズレッドを取り戻せとは言わん、焼き払えとジョンは言う。
 その為の各種工作は惜しまない、とも。
 すでにある程度の人払いは済ませているとも。
「手段は問わない。これは表には出ない、いいや……出さない仕事だ」
 そう、これは間違いなく悪だ。悪の仕事だ。
 倫理とかいう綺麗な言葉を肥溜めにぶち込み正義とかいう概念で靴の泥をぬぐう……まあ、そういう類の代物なのだ。

GMコメント

町中カーチェイスアクション(悪属性)でございます。
真っ赤なスポーツカー「イエーガーカスタム」を駆り、アンプルを持って逃げる悪党を周囲の被害など一切気にせずぶち殺しましょう。
なお、敵の一味は以下の通りの構成です。
■建物内にいるターゲット
・黒服×3
たぶん1人が主犯でしょうけど、特に気にする必要はありません。
拳銃が主武器です。

■建物から出発していくターゲット
・ブルートーチカスタム
青いスポーツカー。2人乗り。ターボスイッチがついています。
運転手はマシンガン装備、同乗者はムキムキの筋肉男。銃も使いますがブレードも使います。
アンプルはこの車の奴が持っています。
なお、この2人が一番強いです。

・ブラックアント×6
黒いカスタムバイク。ターボはついてませんが、かなり速いです。
途中から合流してきます。全員サブマシンガン装備です。

・グリーンロック×1
緑色のデカい装甲車。さほど速くはありませんが衝突するとイエーガーカスタムが一方的に吹っ飛ばされそうです。
比較的後のタイミングで背後に現れるでしょう。
4人乗りで、マシンガンとダガーを装備しています。なお、ロケットランチャーも車内にあるようです。

■味方に用意される車両
・イエーガーカスタム×2
真っ赤なターボスイッチ付きのスポーツカー。速さだけを重視したマシン。
4人乗りが2台用意されています。
・マザーアント×必要な人数分
真っ黒な大型バイク。耐久性とスピードを重視しています。
ターボスイッチはありませんが、小回りが(イエーガーカスタムよりは)効きます。
でも大人しくイエーガーカスタムに乗ったほうがいいんじゃないかな。
うるせー俺はソロが輝くんだっていう人向けです。

●注意事項
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『練達』における名声がマイナスされます。
 又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

■最後に
今回は悪党同士の潰しあいです。
途中で相手からマシンを奪うのも自由ですし、建物とか壊しちゃっても大丈夫です。
全部揉み消してもらえます。
それでは、グッドラック。

  • ワイルドチェイサー完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年10月10日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪しき魔女
クシュリオーネ・メーベルナッハ(p3p008256)
血風妃
三國・誠司(p3p008563)
一般人
ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)
あいの為に
※参加確定済み※
鏡(p3p008705)

※参加確定済み※
えくれあ(p3p009062)
ふわふわ
コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)
慈悪の天秤
※参加確定済み※
ブライアン・ブレイズ(p3p009563)
鬼火憑き

リプレイ

●カーチェイスの始まり
「マジで召される五秒前みてーなスリルを味わいに来たんだ! 代金だって抱え切れないほど用意してあるぜ! 一人一人順番に渡してやるよ! 一発幾らの弾丸払いだ! ハッハー! 満足するまで食らって、そのまま逝っちまいなァ!」
「狙いは5時から7時の方角ぅ、一帯穴だらけでお願いしまぁす、あぶなっ」
 そんな『鬼火憑き』ブライアン・ブレイズ(p3p009563)の笑い声と鏡(p3p008705)の声、無数の攻撃音。
 それが収まったのは、僅かな時間の後だろうか。
 彼等の居た建物の中が、血化粧で赤く染まっている。
 中に居た黒服3人は全員無惨に死に、恐らくは代価だろう金が散らばっている。
 こんなものの為に彼等は命を散らしたのだろうか?
 それを考えると命というものの儚さや軽さを知ることが出来るだろうか?
「へぇん、毒物ねェ。怖い怖い。熱に弱いみたいだし、車で逃げた奴ら諸共爆破すりゃイイらしいが。派手なカースタントになりそーだなァ。映像化したら出演料貰えそー」
 煙管を手の中で遊ばせながら『悪しき魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)がそう呟く。
「ええ。ド派手に、映画の様にド派手にいきましょお?」
 この惨状を作り出した1人である鏡が、そう囁く。
「あっははは♪ 今夜は祭りです、派手にやりましょう。神も、ポップコーン片手にこのバイオレンスアクション映画を喜んでおられます!」
 楽しそうに笑うのは『あいの為に』ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)。
「……いやー、すんごい所に通りすがっちゃったなぁ……これ、聞かなかったことにするからおりれ……ない? あ、そう?」
『一般人』三國・誠司(p3p008563)がそんな事を言うが、許されるはずもない。
 地獄の超特急に途中下車など無い。終点に辿り着くまで、降りる事など不可能だ。
「ほら、はやくはやくぅ、カッコいい所見せてくださぁい」
 鏡がペシペシと叩くのは『慈悪の天秤』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)だ。
「イェーガーカスタムねぇ……まぁゴテゴテのデカブツよりは良いのだわ。アガる曲でも流しながらかっ飛ばしてやろうか!」
 そう、用意された赤いスポーツカーの名はイエーガーカスタム。
 速度でならば練達で常にトップを争う「イエーガー」シリーズの……恐らくは未発表のモデル。
 ただでさえピーキーなそのマシンを更に速度が出るようにカスタムした、正気をゴミ箱に投げ捨てた車だ。
 そんなイエーガーカスタムのスロットにカードを入れて、システム起動。
 エンジンの動く音が聞こえ始め、コルネリアと誠司はそのリズムに身を任せる。
 追いかけるのは、此処を出て行った青いスポーツカー……ブルートーチカスタム。
 すでに見えないその姿を脳裏に浮かべ、2台の「赤」は発進する。
 もはやスピードさえあれば安全性など要らぬと宣言するかのような急加速。
 コルネリアはハンドルに身体を馴染ませつつ【輪動制御】でブルートーチカスタムと同じ速度を出せるように、後方からプレッシャーを掛けながら窓からサブマシンガンを撃ちにくいように車体を後ろから重なるイメージで追いかける。
「おーおー、いいねぇ……随分と速度出るじゃねぇの」
「ヒュウ! 速ェ速ェ! 風が気持ちいいぜ!」
「すごーい! はやーーーい!! ぼく、こんなかっこいい車はじめてみた!!」
 ブライアンがゲラゲラと笑い、『ふわふわ』えくれあ(p3p009062)も楽しそうに笑う。
 そして誠司の運転するイエーガーカスタムも、コルネリアのイエーガーカスタムと横並びで走っている。
 そう、なんだかんだ言ったところで……こんな所に来てこんなマシンに乗っている奴の頭に「マトモ」なんて要素が一かけらも残っているはずがない。
「ふふ、とても速いです……♪ 速過ぎて、ちょっと色々我慢できなくなっちゃいそう、ですね……♪」
『血風妃』クシュリオーネ・メーベルナッハ(p3p008256)がそんな危ない事を言っているが、この場に危なくない奴など1人もいない。
 さあさあ、走ろう。走り尽くそう。スピードを緩めた奴から死んでいく。
 なに、心配など何一つない。
 この「走り」の悪も罪も、依頼主が保証してくれる。
 今日は、そんな素敵な日なのだから。

●ワイルドチェイサー
「おにごっこするんだよね! ぼく、うんてんはできないけどがんばっておてつだいするね!」
 そう、えくれあの言う通りにこれは「鬼ごっこ」だ。
 捕まったら負けの冥府行き。スリリングな大人のダーティスポーツだ。
「おーおー、見えた見えた! あれがブルートーチカスタムってわけだ!」
 遥か前方に見える青いスポーツカー。
 イエーガーカスタムに勝るとも劣らぬ速度で爆走するそれこそはブルートーチカスタム。
 練達で「イエーガー」シリーズと最速を競い続ける「ブルートーチ」シリーズの最新モデル……のカスタム品だろう。
 どのみち、イカれたカスタムであることは間違いない。
 そして、それが見えた瞬間。黙っていた誠司がぼそりと呟く。
「なんで僕の前走ってるわけ? ダメだよ、一番速いのはこの僕なんだから──殺すよ?」
 ああ、なんということか。
 どの面下げて一般人を名乗るのか。
 やはり誠司も今日に相応しい1人ということだ。
「ふふ、楽しくなってきましたね!」
 クシュリオーネの放つ攻撃をブルートーチカスタムは驚異的な動きで回避し、助手席の男が振り返って射撃を加えてくる。
 だが、当たらない。向こうが避けるなら、こっちにも避けられないはずがない。
 2台のイエーガーカスタムは銃撃を回避し、ブルートーチカスタムへと迫る。
「ふふ、とても斬り甲斐のある逞しいお方と車ですね♪」
 クシュリオーネは思わず、そう微笑んで。
 だが、そこに追いすがる影がある。
 黒いバイクに乗った一団。バイク「ブラックアント」だ。
 こちらに銃口を向け乱射してくるそれらを、コルネリアも誠司も華麗にハンドルを操り避ける。
「あのブラックアントにぶちかまして轢き殺しましょう! 神も、事故なら仕方ないと仰っていますよ!」
 ライの言葉を受けてすぐ、誠司のイエーガーカスタムがブラックアントの一台を強烈な幅寄せで吹っ飛ばす。
 ドカン、と。凄まじい音をたてて空へと吹っ飛んだライダーを、我慢できずにライがロザリオを向けぶっ放す。
「ケチケチしないで撃っていきましょう! どうせ弾は経費で落ちるんだろ?」
 ああ、ああ。
 壊れた人形のように吹っ飛ぶライダーの姿のなんと滑稽なことか。
 きっとこの空間には、陽気な音楽が良く似合う。
「よいしょ、この辺いじったら音楽とかかからないんですか? ゴスペルとか、もしくはぁ……うわっと……フフ、頭の悪いロック」
 何処のインディーズだろうか。いや、こうして流れているならプロ?
 鏡が適当にチューニングしたラジオから流れるロックは、とにかくトサカを立てずにはいられない世代の心情を体現したかのような曲調だ。
「ハッハー! さあて、全部潰されねえうちにやんねえとな!」
「ま、楽勝でしょ」
 ブライアンにコルネリアは答え、掌を車外へと向ける。
 放つはCall:N/Stuck。光と轟音。ライダーが吹っ飛び、鏡が笑う。
「おらぁ! ブライアン! 膳立てはしてやったんだ、しくじるんじゃねぇぞ!」
「この速度失敗したらジャムですねぇ……元気にいってらっしゃーい」
 コルネリアと鏡に見送られ、ブライアンはイエーガーカスタムから跳ぶ。
 万が一にでもブラックアントのライダーが戻ってこないように銃弾を浴びせておくのも忘れない。
 そうしてライダーを失ったブラックアントに乗ると、そのまま輪動制御を駆使して崩しかけた車輌のバランスを戻す。
 いいマシンだ。ブライアンは素直にそう思う。
 依頼人が用意していたマザーアントも頑丈そうだったが、コレも中々ご機嫌なマシンだ。
 無駄な重さはなくてスピードはあるのに、随分と頑丈そうだ。
「ハッハー! お優しいぜ! 俺の代わりに落っこちてジャムになってくれるなんてな!」
 ついでに銃弾もトッピングした特別製だ。きっと感激のあまり冥府で呪詛を吐いているだろう。
「二輪特有の軽快な足回りと、俺の糞度胸と、リボルバー。これが揃えば怖いもの無しだぜ!」
 銃を撃てば、他のブラックアントのライダーが吹っ飛んでいく。
「あっはははははは!! 生きてるってのは、やっぱこういう感じだよなァ!! サイコーにイカすぜ!!」
「みんな、がんばってー!」
 脱落したブラックアントが道路をスピンして爆発炎上する中、えくれあの応援の声が響き付与がかけられていく。
「纏めて裂けてしまわれませ♪」
 クシュリオーネのプラチナムインベルタが、ことほぎの監獄魔術『ペッジョーレ』がブラックアントを吹っ飛ばす。
 ドカンドカンと重厚な音が響く中、ことほぎはブルートーチカスタムを見失わないように前方へと視線を向ける。
 近道できそうなルートは、なし。
 ……身代わり用意して二手に別れるとかクルマの色変えたりも、今のところはなし。
 トラックの荷台に車ごと乗り込むとかも定番だが……今のところ前方を走るのはブルートーチカスタム。
 隣から聞こえてくるのはキレっぱなしの誠司の舌打ち。今すぐにでもターボスイッチを押しそうで押さない。
 プライドが誠司にスイッチを押させていない。
「必要なら前を走ってる一般のクルマのタイヤ撃ち抜いて進路塞いだりもしなきゃなー! いやぁハイルールがあるからやりたくねェんだケドなー! 必要なことだからなー!」
 仕方ない仕方ない、と叫びながらもことほぎは笑っている。
 まあ、建前は大事だ。とても、とても大事だ。
「……ところで現金輸送車とか走ってねェ? ねェか。ちっ」
 おおっと、現金輸送車は撃つと危険だ。マイナスな意味でのボーナスポイントが半端ない。
「みんなー、緑のおっきいのが来たよ!」
 えくれあが叫ぶと同時に、道路を砕きそうな爆音をたてながら装甲車「グリーンロック」が現れる。
 なるほど、アレに当てられればイエーガーカスタムは成す術なく吹っ飛ぶだろう。
 だが、そうはならない。何故ならば。
「走りなんてのはなぁ、ビビった方が負けなんだよ!」
 コルネリアの放ったCall:N/Glanzが、グリーンロックに叩き込まれる。
 そして此処にきて、鏡がゆらりと立ち上がる。
「あ、えくれあちゃん、ちょっと失礼しますねぇ」
 後部座席に移動し、グリーンロックからロケットランチャーが取り出されたのを見て……笑う。
「そうそう、そういうの待ってましたぁ」
《居合抜刀術構え【破鏡之嘆】》で構え、《示現絶刀【破鏡不照】》でロケット弾を左右に切断する。
 なんたることか。さながら伝説の剣豪の如きである。
「ふぅ、普通はぶつかったら即爆発でしょうねぇ。でも大丈夫なんです。私の剣は速いので……成功してよかったぁ、なんて」
「ご機嫌じゃねーか! そんじゃ、行ってきな!」
「ええ、行ってきまぁす」
「いってらっしゃーい!」
 コルネリアとエクレアの声援を受け、鏡はグリーンロックへと飛び移る。
「どうもぉお邪魔します」
「なっ……!」
「しかし疲れちゃいましたからね、この車の装甲を断つのは大変そうです。なので、もう斬っちゃいました、タイヤ」
 示現絶刀【破鏡不照】。タイヤを切られたグリーンロックはその場でスピンしながら文字通りのコースアウトだ。
 その頑丈な車体の前では、落下防止用の安全柵など無いも同然。
「あ、しまった……この車からどうやって逃げましょうか」
 バキャッと。落下するグリーンロックから鏡が何処かへ跳んでいく……まあ、無傷とはいかないが死んではいないだろう。
 少なくとも、下まで落下して大爆発したグリーンロックの乗員よりは大分マシなはずだ。
 そんな姿を視界の隅に、コルネリアは隣を走る誠司へと視線を向ける。
 誠司は、いわゆるゾーンに入っている。
(最速を表現するのが僕らドライバーの腕の見せ処。最も気にしなきゃいけないのはタイヤマネージメント……!)
 安易にハンドル左右に大きく切ってタイヤに熱は持たせず直線は加速力と味方の射撃に頼る。
 車を振る時は声で周知して踏ん張らせる。
 コーナー侵入時は角度から侵入速度の凡そを割り出す。
 ギアを落しフロントに加重を作り、ブレーキで車体を振りつつ侵入速度に抑えこむ。
 アウトからインに入るまではアクセルを抜いて内側に寄り切った所でアクセルを踏み込む。
 ターボの使いどころは味方がここでターゲットに食いつきたいと思うならその場で。
 そこまで考えて、誠司はコルネリアの合図に気付く。
 もうすぐコーナーを抜ける。抜けた。瞬間、コルネリアと誠司はターボスイッチを押す。
 流石にその速度についていけないブライアンが置いて行かれたが、むしろそのイカれすぎた速度を見て楽しそうに笑っている。
 ブルートーチカスタムへ斜め後ろから突撃した2台のイエーガーカスタム。
 クラッシュなどという言葉も生ぬるい壊れ方をしながらブルートーチカスタムはスピンして止まり……なんとか車から脱出しようとする男に、武器が突き付けられる。
「楽しい時間は終わるものです、あなたはもう死んでしまうのですから」
 クシュリオーネが笑う。
「派手に死ね! 貴方達の人生最大にして最後の見せ場ですよ!」
 すっかりテンションが最高潮に達したライが、笑う。
「表沙汰にゃなんねぇ仕事だ、悲しいよなぁ互いによ。名前ぐらいは聞いといてやるよ」
 コルネリアが、そんな言葉を手向けて。
 ブルートーチカスタムはライの宣言通りに「派手」に爆発炎上する。
 火に弱いという強毒のアンプルもこれで消滅し、壊れた道路も何もかも、闇に葬り去られる。
 全ては闇から闇へ。
 悪は悪に葬られ、一片の善もありはしない。
 それでいい。これは、そういう仕事なのだから。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

鏡(p3p008705)[重傷]

あとがき

コングラチュレーション!
見事に全員仕留めました!

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